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こんにちは。tomokilog はマルチリンガル翻訳例比較サイトです(たまに言葉あそび)。読みくらべ、調べものにご利用ください。動画多数。世界120か国以上からアクセス頂いてます(国名リスト世界地図)。

当初は、もっぱら言葉あそびブログでした。サブタイトル「うただひかるまだがすかる」は、こちらの投稿に由来します。

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Friday, 30 March 2018

А. П. Чехов. Смерть чиновника The Death of a Government Clerk by Anton Chekhov チェーホフ 「役人の死」「小役人の死」「官吏の死」

◾️はじめに Introduction

  • 「役人の死」はチェーホフの初期の短篇のうちの一つ。1883年発表。筒井康隆の先祖が書いたかと思われるような作品。

◾️日本語訳 Translations into Japanese

  1. 沼野 2010
    • 「口をききたくもないってことか。そんなつもりはまったくありませんでした、これは自然の法則なんです、と説明しないと……。そうじゃないと、わざと唾をかけたと思うだろう。いまは思わなくても、きっと後でそう思うに違いない!……」
  2. 浦 2010
    • 《口をきくのもいやなんだ。その気がなかったことを説明しなければ……。自然の摂理だと説明しなければならん。さもないと、わざとつばをかけたと思われかねない。今はそう思っていないかもしれないが、きっとあとになったらそう思うにちがいない!》
  3. 松下 1994
    • 「口もききたくないんだな。釈明せにゃならんだろうて、そんなつもりはちっともなかったって……これはごく自然な要求なんだって。でなきゃ、わざと唾をはきかけたと思うかもしれん。いま思わなくたって、あとで思うかもしれん!……
      • 松下裕(まつした・ゆたか)=訳 「官吏の死」 チェーホフ全集 1 ちくま文庫 1994
  4. 東郷 1964
    • 『口もきくのも嫌なんだ。彼に説明せにゃなるまいて、自分は決してやるつもりはなかったのだ……これはごく自然の法則なんだと。さもないとぼくが唾をはきかけようと思ってたなんて考えるかもしれん。今は考えなくても、あとで考えるかもしれん!……』
  5. 池田 1960
    • 『いや、口もきくのもいやなんだ。こいつはどうあっても、僕がそんなつもりじゃなかったことを……あれは自然の法則だということを、説明しなくちゃなるまい。さもないと、ぼくが唾をかけようと思ったと思うだろうからな。今はそう思わなくても、あとでそう思うにきまっている!……』
  6. 中村 1933
    • 《それで口を利くこともいやがつてるんだ。こいつあどうしても、自分は決してそんなつもりではなかつた、これは自然の法則だといふことを説明してやらなければならぬ…… でないと、おれがわざと唾をかけたと思ふかも知れぬ。今は思つてないにしろ、あとではきつと思ふに違ひない……》
      • 中村白葉(なかむら・はくよう)=訳 「官吏の死」 チェーホフ全集 1 金星堂 1933(昭和8)
  7. 瀬沼 1908, 2000
    • 而して何だか話をするのも厭になつた。『自分が故意にしたのではない……そして又是は最も自然な事なのであると、奈何うしても、云譯をしなけりやならん さうしなければ、故意に唾を吐き掛けたものと思はれる。今さう考へないでも、後に屹度さう考へるだらう!……』

◾️イタリア語訳 Translation into Italian

  • Translator to be confirmed
    • «Non  vuol  nemmeno  parlare.  Bisognerebbe  spiegargli 
      che non desideravo affatto... che questa è una legge di natura,
      se no penserà ch'io volessi sputare. Se non lo penserà adesso, lo penserà poi!...».

◾️英訳 Translation into Englis

  • Garnett
    • "And he doesn't want to talk. I ought to explain to him . . . that I really didn't intend . . . that it is the law of nature or else he will think I meant to spit on him. He doesn't think so now, but he will think so later!"
      • The Death of a Government Clerk by Anton Chekhov. Translated by Constance Garnett
      • E-text at Wikisource

◾️ドイツ語訳 Translation into German

  • Czumikow
    • – Nicht einmal sprechen will er mit einem. Man müßte ihm auseinandersetzen, daß ich es ja gar nicht gewollt habe ... daß das ein Naturgesetz ist ... Sonst denkt er noch, daß ich auf ihn spucken wollte ... Wenn er es auch jetzt nicht denkt, so kann es ihm doch später in den Sinn kommen! ... –

◾️ロシア語原文 The original text in Russian

  • Чехов
    • -- И говорить не хочет. Надо бы ему объяснить, что я вовсе не желал... что это закон природы, а то подумает, что я плюнуть хотел. Теперь не подумает, так после подумает!.."
      • Антон Павлович Чехов. Смерть чиновника
      • E-text at Lib.ru

◾️関連音声・動画 Audio & Video

  • 英語版オーディオブック Audiobook in English

    上の引用箇所の朗読は 2:34 から始まります。 Reading of the excerpt above starts at 2:34.
     
  • ウクライナのアニメ作品 Ukrainian animation

    上の引用箇所に相当する部分は 4:47 から始まります。 The scene corresponding to the excerpt above starts at 4:47.
     
  • Смерть чиновника

    上の引用箇所に相当する部分は 3:13 から始まります。 The scene corresponding to the excerpt above starts at 3:13.

◾️外部リンク External links

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Thursday, 22 March 2018

А. П. Чехов. Устрицы Oysters by Anton Chekhov チェーホフ 「牡蠣」「かき」

◾️はじめに Introduction

  • 通りで父親とふたり、物乞いを始めたばかりの子どもが、意地悪な大人にレストランへ連れていかれて、食べたことのない、食べたくもない高級シーフードを無理やり食べさせられてトラウマになる……という悪い冗談のような話。
  • チェーホフならではの、おもしろ悲しい短篇。いまから130年以上まえの1884年に発表された作品だが、国と時代を超えてアピールする。チャップリンやウディ・アレンの思想的先祖ともいえそうだ。

◾️日本語訳 Translations into Japanese

  1. 沼野 2010
    • 「父ちゃん、カキって精進料理、なまぐさ料理?」と、おれは聞く。
      「生きたまま食べるのさ……」おやじは言う。「亀みたいに、殻をかぶっていてな……でも、殻は二枚あるんだ」
       そのとたん、美味しそうな匂いは体をくすぐるのをやめ、幻が消えうせた……。なんだ、そういうことか!
      「キモい!」おれはつぶやく。「キモいぜ!」
  2. 浦 2010
    • 「父ちゃん、かきって精進料理? それとも肉料理?」
      「生きたまま食べるんだ……」と父は言った。「そいつは亀のようにかたい殻のなかに入っているのさ。もっとも殻は二枚だがな」
       ぼくの体をくすぐっていたかぐわしい匂いは、この言葉を聞いてぴたりと止んだ……。これですっかりわかった。
      「ああ、気味わるい」ぼくはつぶやいた。「気色わるい」
  3. 松下 1994
    • 「とうちゃん、かきって、精進料理なの、それともふだんの料理なの?」と僕はたずねる。
      「生のまま食べるんだよ……」と父が言う。「殻をかぶってるんだ、亀のように、でも……二枚の殻だがね」
       うまそうな匂いはとたんにぼくの体をくすぐるのをやめ、まぼろしは消えてしまう……。これで正体つかめたぞ!
      「なんていやらしいんだ!」と、僕はつぶやく。「なんていやらしいんだ!」
      • 松下裕(まつした・ゆたか)=訳 「牡蠣」 チェーホフ全集 2 ちくま文庫 2009
      • ルビは省略しました。
  4. 神西 2002
    •  「とうちゃん、かきって、精進料理なの、それとも、なまぐさ料理なの?」と、ぼくはたずねる。
       「生きたままま食べるんのさ。……」と、父が言う。「かめのように、かたいからをかぶっているんだよ。もっとも……二枚のからだがね。」
       おいしいにおいは、とたんに、ぼくのからだをくすぐるのをやめ、まぼろしは消えうせる。……なんだ、そうなのか!
       「おお、いやだ!」と、ぼくはつぶやく。「おお、いやだ!」
  5. 東郷 1951
    •   「おとうちゃん、牡蠣って精進料理に使うの、それともなまぐさ料理に使うの?」と、ぼくは訊ねる。
        「それはなまで食うんだよ……」と、父がいう。「それは龜のこみたいに殻に入ってる、でも……二枚貝になってるのさ」
       おいしそうな匂いは一瞬にしてぼくの肉體をくすぐることをやめ、幻想は消えうせる……これでみんなわかった!
        「なんてげがらわしいもんだ」と、ぼくは囁く。「なんてげがらわしいもんだ!」
      • 東郷正延(とうごう・まさのぶ)=訳 「牡蠣」 喜び・仮面 岩波文庫 1951
  6. 中村 1934
    •  『パパ、かきは精進ものか、それともなまぐさかい?』とわたしは訊く。
       『それはね、生きたまゝで食べるんだよ……』と父は言ふ。『それは殻の中に入つてゐるのだ、龜のやうにな、併し……殻は半分のが二枚重なつてゐる。』
       おいしいにほひが忽ちわたしの身體を擽るのを止めて、幻影は消える……今こそわたしはすべてを了解する!
       『何ていやなんだらう。』とわたしは囁く——『何ていやなんだらう!』
      • 中村白葉(なかむら・はくよう)=訳 「牡蠣」 チェーホフ全集 1 金星堂 1934(昭和9)
  7. 廣津 1919
    • 『父ちゃん、斷食日でも牡蠣食べていゝのかい?』と私は訊いた。
      『生きたまゝ食べるんだよ……』と父は答へた。『貝殻に這入いつてゐてね……まるで龜の子のやうなのさ、唯殻が二重になつてゐるけれども』
       そそるやうな香ひは急に私の鼻の孔を擽らなくなつた、幻影は消えて了つた。今は私は了解したのである!
      『あゝ、恐い!』と私は叫んだ。『怖(おつ)かないなァ!』
      • 廣津和郎(ひろつ・かずお)=訳 「牡蠣」 チエホフ全集 2 新潮社 1919(大正8)
  8. 長塚 1912, 2000
    •  「お父つさん、牡蠣は精進日にでも食べられるの?」
       「今度、生きたまゝでお食べ」と父が返事をした 「殻の中に居るものだ……龜を見た樣にナ、只殻が兩蓋に成つて居る。」
       私の鼻を擽ぐつてゐた、そヽる樣な臭は忽ち止んで、空想は消えた。漸く分つて來た。
       「オー厭だ! オヽ氣味が惡い」
  9. 馬場 1909, 2000
    • 『父樣(とうさん)。斷食日(だんじきび)でも、牡蠣(かき)は食(く)つて宜(い)いの』斯(か)う問(き)くと、
      『生(い)きてるのを食(く)うんだ……殻(から)のなかに入(は)いつて居(ゐ)る……龜(かめ)の子(こ)のやうに、けども、殻(から)が二枚(まい)ある』
       甘(うま)さうな香氣(にほひ)が、パッタリ、鼻孔(はなのあな)を擽(くす)ぐら無(な)くなつた 幻象(まぼろし)は消(き)えた。……あゝ、解(わ)かつた。
      『あゝ、恐(こわ)い。厭(いや)だ、厭(いや)だ』

◾️フランス語訳 Translation into French

  • Roche, 1928
       – Papa, les huîtres, demandé-je, est-ce un plat maigre ou gras?
       – On les mange vivantes... dit mon père. Elles ont, comme les tortues, une carapace, une coquille... mais composée de deux parties...
       La succulente odeur cesse instantanément de me chatouiller, et l’illusion disparaît... Je comprends tout maintenant!
       – Quelle saleté, murmuré-je, quelle saleté!
    • Les Huîtres by Anton Tchekhov. Translated by Denis Roche. Paris, Librairie Plon, 1928
    • E-text at ebooksgratuits [PDF]

◾️英訳 Translation into English

  1. Garnett, 1922
    • "Papa, are oysters a Lenten dish?" I asked.
       
      "They are eaten alive . . ." said my father. "They are in shells like tortoises, but . . . in two halves."
       
      The delicious smell instantly left off affecting me, and the illusion vanished. . . . Now I understood it all!
       
      "How nasty," I whispered, "how nasty!"
      • Oysters. Translated by Constance Garnett
      • E-text at Wikisource
  2. Edward & Long, 1908
    • “Father, can you eat oysters on fast days?” I asked.
       
      “You eat them alive . . .” he answered. “They are in shells . . . like tortoises, only in double shells.”
       
      The seductive smell suddenly ceased to tickle my nostrils, and the illusion faded. Now I understood!

      “How horrible !” I exclaimed. “How hideous!”
      • Oysters. Translated by Robert Edward and Crozier Long
      • E-text at Wikisource

◾️ロシア語原文 The original text in Russian

  • Чехов
    •    — Папа, устрицы постные или скоромные? — спрашиваю я.
         — Их едят живыми...
         — говорит отец. — Они в раковинах, как черепахи, но... из двух половинок.
         Вкусный запах мгновенно перестает щекотать мое тело, и иллюзия пропадает... Теперь я всё понимаю!
         — Какая гадость, — шепчу я, — какая гадость!

◾️"Какая гадость — какая гадость!" の訳
 Translations of "Какая гадость — какая гадость!"

  • 日本語
    1. 沼野 「キモい!」 「キモいぜ!」
    2. 浦  「ああ、気味わるい」 「気色わるい」
    3. 松下 「なんていやらしいんだ!」 「なんていやらしいんだ!」
    4. 神西 「おお、いやだ!」 「おお、いやだ!」
    5. 東郷 「なんてけがらわしいもんだ」 「なんてけがらわしいもんだ!」
    6. 中村 『何ていやなんだらう。』 『何ていやなんだらう!』
    7. 廣津 『あゝ、恐い!』 『怖かないなァ!』
    8. 長塚 「オー厭だ! オヽ氣味が惡い」
    9. 馬場 『あゝ、恐い。厭だ、厭だ』
  • Français
    • – Quelle saleté, quelle saleté!
  • English
    1. Garnett: "How nasty," "how nasty!"
    2. Edward & Long: “How horrible !” I exclaimed. “How hideous!”

◾️関連音声・動画 Audio & Video

  • Audiobook in English

    Reading of the excerpt above starts at 5:56
     
  • Radio drama in English

    The scene corresponding to the excerpt above starts at 4:42
     
  • ロシア語原文オーディオブック Audiobook in Russian

    Reading of the excerpt above starts at 5:54
     
  • Антракт в Литературном музее. На основе рассказа А. Чехова «Устрицы»

     
  • Chekhov Museum in Moscow

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Wednesday, 21 March 2018

А. П. Чехов - Ванька Vanka by Anton Chekhov チェーホフ 「ワーニカ」「てがみ」「ワンカ」

◾️はじめに Introduction

  • 「ワーニカ」はチェーホフが1886年に発表した短編小説。表題のワーニカは9歳の男の子。この子が世界一おもしろくて世界一かなしい手紙をつづる。
  • 両親をなくし、田舎からモスクワへ丁稚(でっち)に出されたワーニカは、奉公先で虐待される毎日を送る。クリスマス・イブの晩、皆が出かけたすきに、ワーニカはSOSの手紙を書く。「お願い、ぼくを助け出して」。宛先は、たった一人の肉親である田舎のおじいちゃんだ。
  • ワーニカの文面は、たどたどしい。それが、おかしく悲しい。ワーニカは郵便の宛名の書き方を知らない。「村のじいちゃんへ」では、手紙は届かないだろう。かりに奇跡的に届いたとしても、じいちゃんは文盲で読めないにちがいない。
  • この短編が、どれほど面白悲しいか。理解するには、ロシアの人名についての基礎知識が必要だ。本名・愛称・父称・卑小形など。沼野充義氏の新訳 チェーホフ短篇集を読むのがベストだと思う。
  • ワーニカの手紙の結びちかくから抜粋して引用する。

◾️日本語訳

  1. 児島 2012
    • 〈いつまでもずっとあなたさまのマゴのイワン・ジューコフ、大すきなおじいちゃん、とんできて〉
       ワーニカは[略]ふと考えて、ペンをインクにひたして、宛先を書きました。
         村のボクのおじいちゃんへ
       それから、ちょっと頭を掻いて、少うし考えて、つけ足しました。〈コンスタンチン・マカールィチへ〉と。
      • 児島宏子(こじま・ひろこ)=訳 ワーニカ チェーホフ・コレクション 未知谷 2012
      • ルビを省略しました。
  2. 沼野 2010
    • 「いつまでもあなたの孫のイワン・ジューコフおねがいだからじいちゃん早くきて」
       ワーニカは[略]ちょっと考えてから、ペンをインクに浸して、宛先を書いた。
       
        村のじいちゃんへ
       
       それから頭をかいてまたちょっと考え、「祖父のコンスタンチンどの」と書き足した。
  3. 浦 2010
    • 「ぼくはいつまでもおじいちゃんのまごです。大好きなおじいちゃん、どうか助けに来てください」
       ワーニカは[略]しばらく思案したのち、ペンをインクに浸して、こう宛先を書いた。
       
         村のおじいちゃんへ
       
       それから頭をかいて考えて、「コンスタンチン・マカールイチさま」と書き足した。
  4. 松下 2009
    • 「まごのイワン・ジェーコフの敬具。ぼくのおじいちゃん、ここへ来てください」
       ワーニカは[略]ちょっと考えてから、ペンをインクにつけて、宛名を書いた。
       「村のおじいちゃんへ」 
       それから頭を掻(か)き掻き、ちょっと考えて、「コンスタンチン・マカールイチさま」と書き添えた。
  5. 鈴木 1975
    • 「さやうなら。ユウコフより。ほんとうに、だんなさま、きつとですよ。」
       [略]ユウコフは[略]しばらく考へてから、あて名をかきました。
      「ゐなかの、
      コンスタンチン・マカリッチの、だんなさま。」
  6. 原 1960
    • 『孫のイワン・ジューコフより。おじいちゃん、早く来てください。』
       [略]ちょっと考えてから、少年はペンにインクをたっぷりつけて、宛名を書いた。
         村のおじいちゃんへ 
       そのあと頭をかきながら少し考えて、『コンスタンチン・マカールイチさま』と書き足した。
  7. 中村 1934
    • 『いつまでもお前の孫のイワン・ジューコフ、かしいお祖父よ、早く來ておくれ。』
       [略]ちよつと考へてから、彼はペンをインクに浸して、宛名を書いた——
       『村のお祖父へ。』
       それから、ちよつと頭を掻いて、考へて、書き足した——『コンスタンチン・マカールイチ樣。』
      • 中村白葉(なかむら・はくよう)=訳 「ワーニカ」 チェーホフ全集 4 金星堂 1934(昭和9)
  8. 廣津 1919
    • 『[略]
                          あなたの孫なる、
                                     イワン・ジュウコフ
          お祖父樣、どうぞ御いで下さいまし』
       
       [略]彼は一寸考へてから、ペンをインクにひたして、そして宛名を書いた。
       
           『村のお祖父樣(ぢいさま)に』
       
       それから頭を引つ掻いて、一寸の間(ま)思案して、そしてかう附加へた。
           『コンスタンチン・マカリッチ』
      • 廣津和郎(ひろつ・かずお)=訳 「ワンカ」 チエホフ全集 2 新潮社 1919(大正8)

◾️英訳 Translation into English

  • Garnett
    • "I remain, your grandson, Ivan Zhukov, dear Grandpapa, do come."
         [Omission] He thought a little, dipped the pen into the ink, and wrote the address:"The village, to my grandfather." He then scratched his head, thought again, and added: "Konstantin Makarych."
      • Vanka by Anton P. Chekhov. Translated by Contance Garnett
      • E-text at Wikisource

◾️ロシア語原文 The original text in Russian

  • Чехов
    • "Остаюсь твой внук Иван Жуков, милый дедушка приезжай".
         [Omission] ... Подумав немного, он умокнул перо и написал адрес:
         
         На деревню дедушке.
         
         Потом почесался, подумал и прибавил: "Константину Макарычу".
      • Антон Павлович Чехов - Ванька
      • E-text at Lib.ru

◾️関連音声・動画 Audio & Video

  1. 英語版オーディオブック Audiobook in English

    上に引用した箇所の朗読は 10:14 から始まります。 Reading of the excerpt above starts at 10:14
     
  2. ソビエトウクライナ・アニメ (1981)

    上の引用箇所に相当するシーンは 6:51 から始まります。 The scene corresponding to the excerpt above starts at 6:51
     
  3. ソ連映画

    上の引用箇所に相当するシーンは 26:48 から始まります。 The scene corresponding to the excerpt above starts at 26:48

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Monday, 19 March 2018

The Veldt (The World the Children Made) by Ray Bradbury レイ・ブラッドベリ 「草原」「かべの中のアフリカ」

■はじめに Introduction

  • 「草原」はレイ・ブラッドベリが1950年に発表した短編小説。翌1951年に出版された短編集『刺青の男』に収録されました。バーチャルリアリティを描いたSFの草分けと言われる作品です。その一部を下に引用します。

■日本語訳 Translations into Japanese

  1. 日暮 1995
    • 部屋の中は、しんとしていた。暑い真昼のジャングルにある林間の空き地のように、がらんとしている。三方の壁はまっさらで、凹凸は感じられない。だがジョージとリディアが部屋の中ほどに立つと、壁はゴロゴロと音を立てて後退していった。どこまで動いたのか、やがて壁がまったく見えなくなったかと思うと、そこにはアフリカの草原が現れた。どちらを向いても完全に立体的で、天然の色がつき、小石や藁の一片にいたるまで本物そっくりの草原だ。頭上には抜けるような空が広がり、黄色っぽい太陽がぎらぎら輝いている。
  2. 川本 1978
    • 子ども部屋は静まり返っていた。暑い昼下がりの、ジャングルのあいだの空き地のようにガランとしている。ジョージとリディア・ハドレイのふたりがその部屋のまん中に立つと、四方の壁が音たててうしろに後退し始め、ついには水晶のように透明に、遠くかなたに遠のいたように見えた。そしてアフリカの草原があらわれた。三次元で作られ、どの面も色がついている。小石やワラはほんもののようだ。頭上の天井は深い空に変わり、そこには暑い黄色い太陽が輝いている。
      • 川本三郎(かわもと・さぶろう)=訳 「草原」 万華鏡 サンリオSF文庫 1978/7/25
      • 原書: The Vintage Bradbury 1965
  3. 福島 1970, 1996, etc.
    • そこには、アフリカの草原があった。
      焼けつくようなみどり色の草原。遠くにはジャングルがひろがって、その上の青い空に、黄色くぎらぎらかがやく太陽が照っていた。
  4. 小笠原 1960, 1969, etc.
    • 二人は、子供部屋の草ぶきの床に立っていた。そこは、暑い真昼のジャングルのなかの空地みたいに、がらんとしている。壁はまっしろな平面である。ジョージとリディア・ハードリーが、おもむろに部屋の中央に立つと、壁はごろごろ音を立てて、無限の彼方まで後退するように見えた。まもなく、アフリカの草原が立体的にあらわれた。どこもかしこも、小石や藁屑に至るまで、みごとな天然色である。あたまの上の天井は、黄色い太陽がかがやく深い空に変化した。

■英語原文 The original text in English

  • Bradbury
    • The nursery was silent. It was empty as a jungle glade at hot high noon. The walls were blank and two dimensional. Now, as George and Lydia Hadley stood in the center of the room, the walls began to purr and recede into crystalline distance, it seemed, and presently an African veldt appeared, in three dimensions, on all sides, in color reproduced to the final pebble and bit of straw. The ceiling above them became a deep sky with a hot yellow sun.

◾️関連音声・動画 Audio & Video

  1. 音楽 deadmau5 feat. Chris James - The Veldt

     
  2. オーディオブック(朗読) Audiobook read by Leonard Nimoy

    上の引用箇所の朗読は 1:19 から。 Reading of the excerpt above starts at 1:19
     
  3. テレビドラマ The Veldt (1989) - The Ray Bradbury Theater - S03E11
     
  4. 映画 The Illustrated Man (1969) Trailer

     
  5. ラジオドラマ The Veldt (1951) - Dimension X Episode 43, NBC Radio

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Saturday, 17 March 2018

The End (Now We Are Six) by A. A. Milne A・A・ミルン 「おわりに」「おしまい」「6つになった」「おしまひ」

◾️はじめに Introduction

  • 「おわりに」は『クマのプーさん』の作者として有名な A. A. ミルンが書いた詩。1927年に出版された子供向けの詩集『六つになった』に収録されている。「おわりに」は詩集の最後にある作品なので、このタイトルが付いている。

◾️初版本 First edition
Nowwearesix

◾️日本語訳 Translations into Japanese

  1. 山田 1981
    • 一つのときは
      はじまりで ホンノ

      二つのときも
      あたらしい マァマァ

      三つのときは
      ぼくになり ヤット

      四つのときも
      かわらない ソレホド

      五つのときは
      生きていた ソレダケ

      だけど こんどは六つです
      そして 大へんおりこうさん
      だから 六つでおりたいな
      イツマデモ イツマデモ
  2. 小田島+小田島 1979, 1997
    • 一つのときぼくは
      まだはじまったばかりだった

      二つのときぼくは
      まだうまれたてのままだった

      三つのときぼくは
      まだまだぼくじゃなかった

      四つのときぼくは
      そうたいしてかわっていなかった

      五つのときぼくは
      ただげんきいっぱいだった

      いまぼくは六つで だれにもまけないおりこうさん
      だからぼくはこのままいつまでも六つでいたい
  3. 周郷 1978
    • 一つの ときは、
      なにもかも はじめてだった。
       
      二つの ときは、
      ぼくは まるっきり しんまいだった。
       
      三つの とき、
      ぼくは やっと ぼくに なった。
       
      四つの とき、
      ぼくは おおきくなりたかった。
       
      五つの ときには、
      なにから なにまで おもしろかった。
       
      いまは 六つで、
      ぼくは ありったけ おりこうです。 
      だから、いつまでも 六つで いたいと
      ぼくは おもいます。
  4. 松原 1940
    • 僕が一歳(ひとつ)だつた時(とき)、
      丁度僕は初まつた。

      僕が二歳(ふたつ)だつた時、
      初めて僕は氣がついた。

      僕が三歳(みつつ)だつた時(とき)、
      やつと僕は僕だつた。

      僕が四歳(よつつ)だつた時、
      まだ僕はそれだけだつた。

      僕が五歳(いつつ)だつた時、
      やつと僕は元氣が出た。

      だが、今は六歳(むつつ)になつて
      僕はとても利口だ。
      だから僕はいつまでも
      いつまでも六歳でゐよう。
      • 松原至大(まつばら・みちとも)=訳 「おしまひ」 幼き日のこと 冨山房 1940-12-25 

◾️フランス語訳 Translation into French

  • Translator unconfirmed
    • Quand j'étais un,
      Je venais juste de commencer.
      Quand j'étais deux,
      J'étais presque nouveau.
      Quand j'avais trois ans
      J'étais à peine moi.
      Quand j'avais quatre ans,
      Je n'étais pas beaucoup plus.
      Quand j'avais cinq ans,
      J'étais juste en vie.
      Mais maintenant je suis Six,
      Je suis aussi intelligent que malin,
      Donc je pense que je serai six maintenant pour toujours et à jamais.
      • Maintenant, nous sommes six by A. A. Milne
      • E-text at Sytyson

◾️英語原詩 The original poem in English

  • Milne
    • When I was one,
      I had just begun.
      When I was two,
      I was nearly new.
      When I was three,
      I was hardly me.
      When I was four,
      I was not much more.
      When I was five,
      I was just alive.
      But now I am six,
      I'm as clever as clever.
      So I think I'll be six now
      for ever and ever.
      • The End (Now We Are Six) by A. A. Milne
      • E-text at Wikiquote

◾️関連動画 Video

  • Now We Are Six

    上に引用した詩の朗読は0:19から始まります。Reading of the poem quoted above starts at 0:19

◾️更新履歴 Change log

  • 2018-03-19 フランス語訳を追加しました。

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