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Tuesday, 29 March 2005

A Cat Named Lunch: A Novella 2 of 4

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     A Cat Named Lunch 2 of 4
     ランチという名の猫 第2話(全4話)

前回お話したのは、中国・広州の食品市場で食用に売られていたメスの子猫を、留学生「新四人組」のTomoki & JsのうちJ1、J2、Tomokiの3人がお金を出し合って買い受けて、ランチと名付けて北京に連れて帰ってペットとして飼うことにした——というところまででしたね(1)。

さて、彼女の世話はスタートからつまずきました。トイレのしつけがなかなか出来なかったのです。日本にあるような、猫のトイレの砂は、1988年当時の北京では、大学からタクシーで小1時間の某アメリカ系高級ホテルに付属する外国人専用のスーパーマーケットにでも行かないと手に入りませんでした。トイレの砂を買いに行くまでの数週間、寮の部屋の布団を、ランチの出す液体や固体で汚されたのには弱りました。汚れた布団を消毒する消毒薬とて、そこらに売っているわけではないので、J1がマウスウォッシュのリステリンを脱脂綿に含ませて布団カバーを拭き取る気休めの一時しのぎの処置を思いついて、Tomokiにも教えました。このリステリンも、たぶん同じホテルのスーパーかどこかで買ってきたのだったろうと思います。

ここで約80年さかのぼって、舞台は1988年の北京から1905年の東京に移ります。1905年は明治38年。日露戦争で日本が勝利を決定的なものにしつつあった頃です。登場人物は3人。多々良三平君と苦沙弥先生夫婦。多々良君は、筑後の国・久留米の出身で、苦沙弥家のもと書生。1905年当時はサラリーマンをしています。今から一世紀前の、次の会話をお聞きください。

「奥さん犬の大か奴を是非一丁飼ひなさい。——猫は駄目ですばい、飯を食ふ許りで——ちつとは鼠でも捕りますか」
「一匹もとつた事はありません。本当に横着な図々/\敷い猫ですよ」
「いやそりや、どうもかうもならん。早々棄てなさい。私が貰つて行つて煮て食はうか知らん」
「あら、多々良さんは猫を食べるの」
「食ひました。猫は旨う御座ります」
「随分豪傑ね」
 下等な書生のうちには猫を食ふ様な野蛮人がある由はかねて伝聞したが、吾輩が平生眷顧を辱うする多々良君其人も亦此同類ならんとは今が今迄夢にも知らなかつた。況んや同君は既に書生ではない、卒業の日は浅きにも係はらず堂々たる一個の法学士で、六っ井物産会社の役員であるのだから吾輩の驚愕も亦一と通りではない。
(中略)
「然し一番愚なのは此猫ですばい。ほんにまあ、どう云ふ了見ぢやらう。鼠は捕らず泥棒が来ても知らん顔をして居る。——先生この猫を私に呉んなさらんか。かうして置いたつちや何の役にも立ちませんばい」
「やつても好い。何にするんだ」
「煮て喰べます」
 主人は猛烈なる此一言を聞いて、うふと気味の悪い胃弱性の笑を洩らしたが、別段の返事もしないので、多々良君も是非食ひ度とも云はなかつたのは吾輩にとつて望外の幸福である。(夏目漱石『吾輩は猫である』五)

ランチと同じく「吾輩」も命拾いしたと聞いて、100年前のことながら、ほっとさせられます。しかし問題は、多々良三平君です。法学士で卒業後、日が浅く、六っ井物産勤務で猫を食ったと言っています。いっぽうTomokiも法学士で卒業後、日が浅かった当時、六っ菱化成(2)勤務で猫を食ったと言っています。してみると、日本の法学士で会社員になるものは、80年たっても全く進歩せずに野蛮人のままなのかしら。そうかもしれません。もっとも、Tomokiのほうは、自分で「煮て喰べます」とまでは言っていないから、少しは進化が見られるのでしょうか。

人類あるいは日本人あるいは法学士あるいは会社員が進歩したかどうかは知りませんが、ランチは成長しました。猫の砂を買ってきたら、じきに粗相をしなくなったのです。お利口さんだね、ランチ。


(1)「A Cat Named Lunch 1 of 4 / ランチという名の猫 第1話(全4話)」
http://tomoki.tea-nifty.com/tomokilog/2005/03/a_cat_named_lun.html を参照。
(2) 旧・三菱化成(現・三菱化学)の誤りか。


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