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May 2006

Wednesday, 31 May 2006

Evelyn Waugh "Decline and Fall" 011

20030220waugh
Source of the image: Hertford College | Alumni Web Site | Famous Alumni


   第一部 母校よ永遠に
   第一章 天与の職
 「素行不良で退学処分……というわけかね? まあ、きみのお父さんがこういう不面目を知らずにすんだのがせめてもの救いだ。まったく言葉もでない」
 オンズロー・スクウェアはしんと静まりかえっていた。その静けさを破るのは、ポール・ペニーフェザーの身元保証人の娘の蓄音器が、階段の上にあるピンクの小部屋から流しだすギルバート=サリヴァンの軽快な曲くらいのものであった。
 「娘には知らせるわけにいかん」と、保証人氏は続けた。
 そこでもう一度、間。
 「いずれにしても、お父さんの遺言にどう書いてあったか、きみも承知のはずだ。お父さんの残されたのは五千ポンド、その利子をきみの教育費にあてて、あとは二十一の誕生日にそっくりきみのものになるはずだった。そのときまであと十一ヶ月、そうだね? きみのお父さんはたいへんに慎重なひとで、それ以前に教育が終って、しかもきみの生き方がかんばしくないと思えるときには、月々のお金を渡さぬようにという委任があった。今度のような事態になったのにお金を渡しつづけたんでは、わたしとしては、お父さんの信頼に応えることにはならん気がする。それにだね、きみが娘とひとつ屋根の下に住むのをこちらから認めるわけにいかんことくらい、言わなくても分ってくれるだろう」
   富山太佳夫=訳『大転落』岩波文庫 1991年6月


   第一部
   第一章 天職
「品行不良で退学になったって?」とポールの保護者は言った、「まあ君のお父さんをこの恥辱にあわせないですんだことはせめてものことだ。わたしの言うことはそれだけだね」
 オンスロー・スクエアはしんとしていて、ただ保護者の娘の蓄音機が二階のピンクっぽい彼女の部屋でギルバート=サリヴァンの喜歌劇を鳴らしている音だけがした。
「うちの娘にはこのことを話してはいかん」と保護者は続けた。
 また間があいた。
「ところで」彼はまた話しだした、「君もお父さんの遺言の条件を知っているだろう。全部で五千ポンドお父さんはのこされたが、その利子を君の教育にあて、君が二十一歳の誕生日を迎えた時に全額が君のものになるはずだった。わたしの計算にまちがいなければ、それは今から十一カ月後にあたる。それ以前に君の教育が終った場合で、もし君の生活ぶりが満足いくものでなければ、この仕送りをさしとめてもよい権利をわたしは与えられている。もし今の状態で仕送りを続けるなら、君のお父さんが与えられた信頼にわたしは十分にこたえたことになるまいと思う。その上だれよりも君がわかってくれようが、わたしは今後君に娘と同じ屋根の下で住むようにすすめるわけにはいかないのだよ」
   柴田稔彦=訳『ポール・ペニフェザーの冒険』福武文庫 1991年4月


   Part One
   Chapter I Vocation
'Sent down for indecent behaviour, eh?' said Paul Pennyfeather's guardian. 'Well, thank God your poor father has been spared this disgrace. That's all I can say.'
   There was a hush in Onslow Square, unbroken except by Paul's guardian's daughter's gramophone playing Gilbert and Sullivan in her little pink boudoir at the top of the stairs.
   'My daughter must know nothing of this,' continued Paul's guardian.
   There was another pause.
   'Well,' he resumed, 'you know the terms of your father's will. He left the sum of five thousand pounds, the interest of which was to be devoted to your education and the sum to be absolutely yours on your twenty-first birthday. That, if I am right, falls in eleven months' time. In the event of your education being finished before that time, he left me with complete discretion to withhold this allowance should I not consider your course of life satisfactory. I do not think that I should be fulfilling the trust which your poor father placed in me if, in the present circumstances, I continued any allowance. Moreover, you will be the first to realize how impossible it would be for me to ask you to share the same home with my daughter.'
   Evelyn Waugh "Decline and Fall" 1928


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Tuesday, 30 May 2006

The Purloined Letter by Edgar Allan Poe エドガー・アラン・ポー 「盗まれた手紙」「盗難書類」

          目次 Table of Contents

 Image gallery  表紙画像 Cover photos
■中国語訳(簡体字)Translation into simplified Chinese
■中國語譯(繁體字)Translation into traditional Chinese
 Audio 1  日本語版オーディオブック Audiobook in Japanese
■日本語訳 Translations into Japanese
  (J1) 巽 2009
  (J2) 堀内 2001
  (J3) 富士川 1989, 1992
  (J4) 松村+繁尾 1987, 2010
  (J5) 谷崎 1985
  (J6) 小鷹 1984
  (J7) 深町 1984
  (J8) 岡上 1984
  (J9) 中野 1978
  (J10) 志貴 1978
  (J11) 砧 1975
  (J12) 丸谷 1974
  (J13) 八木 1974
  (J14) 小川 1968, 1973
  (J15) 大橋 1966
  (J16) 田桐 1964
  (J17) 松村 1962
  (J18) 谷崎 1962, 1969, etc.
  (J19) 鈴木 1961
  (J20) 佐々木 1951, 2004
  (J21) ダイジエスト・シリーズ刊行會 1950
  (J22) 山本 1934
  (J23) 谷崎 1929
  (J24) 江戸川 1929
  (J25) 森田 1896, 1996
 Audio 2  ロシア語版オーディオブック Audiobook in Russian
■ロシア語訳 Translation into Russian
■ブルガリア語訳 Translation into Bulgarian
 Audio 3  ドイツ語版オーディオブック Audiobook in German
■ドイツ語訳 Translation into German
 Audio 4  イタリア語版のドラマ仕立ての朗読 Dramatic reading in Italian
■イタリア語訳 Translation into Italian
■ポルトガル語訳 Translation into Portuguese
 Audio 5  スペイン語版オーディオブック Audiobook in Spanish
■スペイン語訳 Translations into Spanish
  (Es1) La editorial Planeta, 2013
  (Es2) Cortázar, 1970
  (Es3)
 Audio 6  フランス語版オーディオブック Audiobook in French read by Ka00
 Audio 7  フランス語版オーディオブック Audiobook in French
■フランス語訳 Translation into French
 Audio 8  英語原文のオーディオブック Audiobook of the original English text
 Audio 9  ラジオドラマ Radio drama: The Watson Files Episode 17
■英語原文 The original text in English
■邦題の異同 Variations of the title in Japanese
■tomokilog 関連記事 Related articles from tomokilog:
■更新履歴 Change log


 Image gallery 
表紙画像 Cover photos

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[ko] ISBN : 9788955615661 도둑맞은 편지 (바벨의 도서관) 韓国語
[ja] ISBN : 9784336025661 盗まれた手紙 (バベルの図書館) 日本語
[tr] ISBN : 9758457012008 Çalınan Mektup - Babil Kitaplığı トルコ語
[de] ISBN : 9783940111203 Der entwendete Brief: Die Bibliothek von Babel ドイツ語
[de] ISBN : 9783828967670 Der entwendete Brief: Die Bibliothek von Babel ドイツ語
[it] ISBN : 9788821602160 La lettera rubata: La Biblioteca di Babele イタリア語
[pt] ISBN : 9789722339483 A carta roubada: A Biblioteca de Babel ポルトガル語
[es] ISBN : 9788485876334 La carta robada: La Biblioteca de Babel スペイン語
[fr] ISBN : 9782725603377 La lettre volée: La bibliothèque de Babel フランス語 
    Image source: BDFI


■中国語訳(簡体字)Translation into simplified Chinese

  “不明白吗?好吧;如果把文件透露给第三个人,现在且不说他的姓名,那可要使人们对一个地位极高的人的名誉产生怀疑;这样就使持有文件的人占了优势,弄得那位辉煌人物的名誉和安静生活都要因此受到危险。”
  “可是要依仗这种优势,”我插嘴说,“盗信的人得知道失信人也知道谁是盗信的人。谁会敢……”

   《失窃的信》 作者:爱伦·坡 雨宁 译
   E-text at:
   * 時代書城 (www.mypcera.com)
   * 小説閲讀網 (readnovel.com)


■中國語譯(繁體字)Translation into traditional Chinese

  “不明白嗎?好吧;如果把文件透露給第三個人,現在且不說他的姓名,那可要使人們對一個地位极高的人的名譽產生怀疑;這樣就使持有文件的人占了優勢,弄得那位輝煌人物的名譽和安靜生活都要因此受到危險。”
  “可是要依仗這種優勢,”我插嘴説,“盜信的人得知道失信人也知道誰是盜信的人。誰會敢……”

   《失竊的信》 作者:愛倫・坡 譯者:雨宁
   E-text at 龍騰世紀 (millionbook.net)


 Audio 1 
日本語版オーディオブック・サンプル Audiobook sample in Japanese

下の引用箇所の朗読は 8:13 から始まります。 Uploaded to YouTube by panrolling on 20 Aug 2009. Reading of the excerpt below starts at 8:13.


■日本語訳 Translations into Japanese

(J1) 巽 2009
「おや、そうかね? この文書を、いまは名を秘す第三者の手に渡してしまったことで、さるたいへんに高貴なお方の名誉が汚(けが)されるんだぞ。その結果、この文書泥棒は、名誉も安泰も脅(おびや)かされるようになったこの高貴なるお方に対して優位に立つ、というわけだ」
「しかし、いくら優位に立つとは言っても」とわたしは口をさしはさむ。「そうなるためには、文書の持ち主に泥棒が誰だか悟られているということを泥棒自身が意識していなくちゃならないんじゃないか。いったい誰が好きこのんで――」

   エドガー・アラン・ポー=作 巽孝之(たつみ・たかゆき)=訳 「盗まれた手紙」
   『モルグ街の殺人・黄金虫—ポー短編集2 ミステリ編
   新潮文庫 2009/05/01 所収


(J2) 堀内 2001
「そうかね? よろしい、その書類が名前のいえない、ある第三者に見せられると、きわめて高貴な位にいらっしゃる、あるかたの名誉が危険にさらされるのだ。この事実から、書類の保持者は、その高貴なおかたにたいして優位に立つことができ、そのかたの名誉と平和をおびやかしているんだ」
「しかし、その優位というのは」とぼくがさえぎった。「書類を盗まれた被害者がそれがどう使われようとしているかを知っているということを、泥棒が知っているという前提に立っていますよね。ずいぶん大胆な考えだ――」
[原文にあるルビは省略しました - tomoki y.]

   エドガー・アラン・ポー=作 堀内一郎=訳 大久保浩=絵 「盗まれた手紙」
   『オーギュスト・デュパン モルグ街の怪事件 他
   世界の名探偵1 岩崎書店 2001/04 所収


(J3) 富士川 1989, 1992
「わからない? いいですか、名前は明かさないでおくが、その書類がある第三者に暴露されれば、さる身分の高い方の名誉が傷つけられることになるんだよ。と言うことはつまり、その書類の所有者は、名誉と平安がひどく危ういものとなっている、さる有名な方に対して優位に立っているというわけでね」
「しかし、優位に立っているとしたところで」とわたしが口をはさんだ。「犯人が誰か被害者にわかっていることを、犯人だって知っているんだからな。犯人がいくら図々しくても――」

   エドガー・アラン・ポー=作 富士川義之=訳 「盗まれた手紙」
   3a. 黒猫』 集英社文庫 1992/05 所収
   3b. ホルヘ・ルイス・ボルヘス=編纂・序文 『盗まれた手紙
      バベルの図書館11 国書刊行会 1989/03 所収


(J4) 松村+繁尾 1987, 2010
「まだわからない? つまりですな、もしその書類が第三者にあばかれると、名まえはいえませんが、その身分の高い方の名誉が傷つけられてしまう。こういったわけで、書類をぬすんだ男は、その身分の高い方に対して有利な立場にたっている。そのために、身分の高い方の名誉と平安がおびやかされているというしだいなんです。」
「でも、たとえ有利な立場といっても」と、わたしがさえぎった。
「もし被害者が犯人がだれかわかっている、またそのことを犯人が知っているというのでなければ、話はべつでしょうな。それなのに、あえて犯人がわざわざなにか……。」

   エドガー=アラン=ポー=作 松村達雄+繁尾久=訳 「ぬすまれた手紙」
   4a.21世紀版少年少女世界文学館 13』 講談社 2010 所収
   4b.少年少女世界文学館 13』 講談社 1987/12/21 所収
   引用は 4b. 講談社 1987/12/21 に拠りました。ルビは省略しました。


(J5) 谷崎 1985
「まだですか? 名前はいえないが、その書類が第三者にあばかれると、ある高貴な方の名誉をきずつけることになるのです。こうした事情がその高貴の方に対し、書類をぬすんだ男が優位にたち、高貴な方の名誉と平和があやうくなるのです。」
「だが、ぬすまれた方が、だれがぬすんだかしらなくては、そんな威力はあらわれないでしょう。そうでなくって、だれが……」わたしはことばをはさんだ。

   エドガー=アラン=ポー=作 谷崎精二=訳 「ぬすまれた手紙」
   『エドガー=アラン=ポー怪奇・探偵小説集2』 偕成社文庫 1985/03 所収
   下記 (J18) 谷崎の用字・仮名遣い・ルビなどを改めた児童書。
   ルビは省略しました.


(J6) 小鷹 1984
「わからない? うん、その文書だがね、名前は伏せておくが、ある第三者の目に触れると、さる非常に高貴なお方の名誉が傷つく。つまり、その文書の所有者はこのやんごとなき人物の名誉と安穏をおびやかし、優位に立っているということだ」
「しかし、そうやって優位に立つには」わたしは言葉をはさんだ。「誰が盗んだのかを被害者が知っているということを、当の犯人が知ってなきゃならないことになる。誰がわざわざそんなことを――」

   エドガー・アラン・ポー=作 小鷹信光(こだか・のぶみつ)=訳 「盗まれた手紙」
   『ラヴレターにご用心』 手紙ミステリ傑作集
   大和書房 1984/05/31 所収


(J7) 深町 1984
「わかりませんか。よろしい、つまりですね、この書類の内容が、いまは名を伏せておきますが、ある第三者に暴露されると、さるやんごとない貴人の体面があやうくなるのです。そしてこの事実により、書類の所有者はある力を持ちうる。その名誉、その安泰が非常な危険にさらされている問題の貴人にたいして、ある種の影響力を働かせることができるのです」
「しかし、その影響力というのも」と、私は口をはさんだ。「盗まれたほうで盗んだのがだれか知っているということを、盗んだ当人が心得ている場合に限るでしょう。盗んだことが相手に知られているとわかっていて、だれがそんな大胆な――」

   エドガー・A・ポー=作 深町真理子=訳 「盗まれた手紙」
   エラリー・クイーン+各務三郎=編 『クイーンの定員1』 光文社
   1984/05/30 所収


(J8) 岡上 1984
「わかりませんかねえ。よろしい。つまりですね、この手紙をある第三者に暴露することは、高貴なお方の体面にかかわるのです。地位や名誉をきけんにさらされる方にたいして、書類を持っている者は、権力をふるうことができるのできます。」
「しかし、その権力がふるえるというのも、ぬすまれたほうで、ぬすんだのはだれかと知っていることを犯人が知っているかどうかで、きまることですね。だれがそんなことを――。」

   エドガー・アラン・ポー=作 岡上鈴江(おかのうえ・すずえ)=訳
   「ぬすまれた手紙」 『モルグ街の殺人』 世界こわい話ふしぎな話傑作集5
   金の星社 1984/03 所収
   ルビは省略しました。


(J9) 中野 1978
 「わからない? じゃ、言うがね、もしその書類の内容がだねえ、名前は言えないが、ある第三者にわたったとなると、これもある高貴な方の名誉が、大いに問題になろうというのだ。そしてまたそのことがね、書類の所有者を、今もいった、それによって名誉と平安を侵された高貴な方に対して、非常に有利な立場に立たせるわけだねえ。」
 「だが、その有利な立場という奴はだよ、」と、僕が、口を挾んだ。「被害者が、犯人を知っているという、そのことを、また犯人が知っているという、一にそうした条件にかかっているのじゃないかな。してみると、誰が、そんなことを……。」

   ポオ=作 中野好夫=訳 「盗まれた手紙」
   『黒猫・モルグ街の殺人事件 他五篇』 岩波文庫 1978/12 所収


(J10) 志貴 1978
「わからん? じゃあ――その書類が、名前は言うわけにはいかないが、さる第三者に暴露されると、さるやんごとない方の名誉が問題になるんだ。で、このことがあるから、書類の所有者は、名誉と心の安らぎが危険にさらされているその高貴な人物にたいして力をふるうことができるというわけなんだよ」
「しかし、力をふるうと言っても」とわたしは口をはさんだ。「盗んだ男を盗まれた方がご存じだということを、盗んだ男が知ってるから生じることなんだろ。いったい誰がそんなあつかましい……」

   ポー=作 志貴宏(しき・ひろし)=訳 「盗まれた手紙」
   五木寛之〔ほか〕=編 『世界文学全集1 ポー/ホーソーン
   学習研究社 1978/09 所収


(J11) 砧 1975
「わからんて? こうなんだよ。つまり、その名を口にするわけには行かんが、あるお人に、その書類の内容を知られると、さるやんごとなき女人の名誉が、危くなるのだ。そんな事情からして、書類のもち主は、それをもつておるだけで、その名誉と平和とに、不安を感じておられる高貴のおかたにもまさる権勢をほしいままにすることとなるのだがね。」
「しかし――」わたしは、ことばをさしはさんだ。「そうした種類の権勢は、ぬすんだものが、ほかならぬ自分であるというそのことが、ぬすまれた側にも確かにわかつているのでなければ、なんにもならんでしよう。そんな大それたことを、誰が――」

   E・A・ポー=作 砧一郎=訳 「ぬすまれた手紙」
   トーマス・バーク〔ほか〕=著 黒沼健〔ほか〕=訳
   『黄金の十二―世界短篇ベスト集
   ハヤカワ・ポケット・ミステリ・ブック No.219 1975/10 所収


(J12) 丸谷 1974
「判らないかい? ふむ、もしその書類が、名前は言えないけれど或る第三者に暴露されると、さる高貴な方の名誉が問題になるんだ。そのことがあるから、書類の所有者は、名誉と平安が危険にさらされているさる有名な方に対して、有利な位置に立っているというわけだ」
「でも、有利な位置と言ったって」と、ぼくは口をはさんだ。「誰が盗んだか被害者は知っているということを、犯人のほうでも知っているわけだからな。いくら犯人がずうずうしくても……」

   エドガー・アラン・ポオ=作 丸谷才一=訳 「盗まれた手紙」
   『ポオ小説全集4』(全4冊) 創元推理文庫 1974/09/27 所収


(J13) 八木 1974
「おわかりにならない? いいですか、この書類が名前は伏せておくが、ある第三者に暴露された場合、あるきわめて地位の高いお方の名誉がそこなわれることになる。で、書類を握っている人物が、この高貴な方に対して権勢を振るえる立場に立っているわけで、この高貴なお方の名誉と安泰がいまや危惧(きぐ)にさらされているというわけだ」
「しかしそういう権勢が振るえるためには」とわたしは口をはさんだ。「盗まれたひとが、盗んだ者が誰かを知っていることを、盗んだ本人が知っているということが前提なんだな。誰がわざわざ――」

   ポオ=作 八木敏雄=訳 「盗まれた手紙」
   『世界文学全集32 ポオ/ホーソン』 講談社 1974/09/18 所収


(J14) 小川 1968, 1973
「わからない? じゃ、こう言おう。その書類が、名前は言えぬが或る第三者に暴露されると、或る非常に地位の高いかたの名誉にかかわるのだ。こういう工合にその高貴なかたの名誉と平安がいま危難にさらされているので、文書の持ち主はそのかたにたいして、支配権を持っていることになるのだ」
「しかしその支配権にしてもだな、」とぼくは口をはさんだ、「それは盗(と)られた方が誰が盗(と)ったか知っているということを、盗った方が知っている、ということが土台になってるはずだ。誰がそんなひどいことを――」

   ポオ=著 小川和夫=訳 「盗まれた手紙」
   14a.筑摩世界文學大系37 ポオ/ボオドレール』 筑摩書房 1973/11 所収
   14b. 世界文学全集26 ポオ、ボオドレール集』 筑摩書房 1968 所収


(J15) 大橋 1966
 「そうかい。名前は言えないが、ある第三者にその書類を見せると、ある高貴な人の名誉がきずつけられるのだ。その手紙をもっている人物は、その高貴な人よりも優位に立つことができ、その人の名誉と平和をおびやかすことになるんだ」
 「しかし」と私は口をはさんだ。「盗まれた人がだれに盗まれたのかわかっているということを、盗んだ人物が知っていなければ、盗んだほうが優位に立つことはできないだろう。そんな勇気が――」

   E・A・ポー=作 大橋吉之輔(おおはし・きちのすけ)=訳 「盗まれた手紙」
   『黒猫・黄金虫』 角川文庫 1966/12/15 所収


(J16) 田桐 1964
「わからんかなあ。こうなんだよ。名前を明かすわけにはいかんが、ある第三者に、その文書の内容が漏れるようなことがあると、非常に身分の高いあるお方の名誉があやうくなるのだ。つまり、その文書を手に入れた人物は、名誉と安心をまさに失おうとしておられる件(くだん)の高貴のお方に対して絶対優位の立場を得る、ということになるのだ」
「しかしだよ、その優位の立場なるものは、盗まれた人が、盗んだ奴を知っている、ということを、また当の盗んだ奴が承知して、はじめて意味があるわけだろう。一体、どこの馬鹿が……」

   エドガー・アラン・ポオ=作 田桐大澄(たぎり・ひさずみ)=訳 「盗まれた手紙」
   『ポオ短篇集』 八潮版・アメリカの文学 八潮出版社 1964/08 所収


(J17) 松村 1962
「わかりませんか。いや、よろしい、つまりですね、この書類を、名まえは伏せておきますが、ある第三者に暴露することは、やんごとないさるお方の御体面を危うくすることになるのです。そしてこの事実が、この書類の所有者をして、その御名誉と御安泰がかくも危険にさらされるさる貴顕の方に対して権威を振るい得るようにさせるのです」
「しかしその権威が振るえるというのも」とわたしは口をはさんだ、「盗まれたほうで盗んだのはだれかわかっているということを、盗んだ当人が知っているかどうかできまることですね。いったいそもそもだれがそんな――」

   ポー=作 松村達雄=訳 「盗まれた手紙」
   『世界文学全集11 ポー/ホーソン』 河出書房新社 1962/08 所収


(J18) 谷崎 1962, 1969, etc.
「まだですか? 名前は言えないが第三者にその手紙をあばくと、或る高貴の方の名誉を傷つけることになるのです。こうした事情がその高貴の方に対して手紙を盗った男に権力をふるわせ、高貴の方の名誉と平和とがあやうくされるのです」
「だがその権力は、書類を失った方(かた)が盗んだ者を知っているということを、その盗んだ当人が知っていなければ駄目でしょう。それでなくって誰が……」私が言葉をはさんだ。

   エドガア・アラン・ポオ=作 谷崎精二=訳 「盗難書類」
   18a. ポオ小説全集1 推理小説』(全4巻)新装版 春秋社 1998/09 所収
   18b.エドガア・アラン・ポオ全集1』(全6巻) 春秋社 1969/10 所収 
   18c.エドガア・アラン・ポオ小説全集1 推理小説編』(全4巻・別巻1)
      春秋社 1962/05 所収
   これらの版は、下記 (J22) 谷崎 1929 の用字・仮名遣いを、新字・新仮名に
   改め、若干の字句・句読点・ルビなどを変更したもの。


(J19) 鈴木 1961
「わからない? なるほど。事件の書類を、名前は言えないがある第三者へあばかれると、ある非常に高い地位の方の名誉が怪しくなる。で、この事実がその書類の所有者に、その高官の上に権勢をふるわせ、その方の名誉と安泰が危険にさらされているわけです」
「しかしね」と私は口をはさんだ。「この権勢は、誰が盗んだのかを盗まれた者が知っている、ということを当の犯人が知っている上で成り立つわけでしょう。で一体誰がそんな盗みを?」

   エドガー・アラン・ポー=著 鈴木幸夫(すずき・ゆきお)=訳 「盗まれた手紙」
   鈴木幸夫〔ほか〕=訳 『ポー代表作選集(下)』(全3巻)
   鏡浦書房 1961/01 所収


(J20) 佐々木 1951, 2004
「わからない? よろしい。その書類を、名は言えないがある第三者にあばくと、ある非常に高い地位の方の名誉にかかわるのですな。そしてこの事実は、書類の所持者にその高貴な方に対して権力を揮(ふる)わせ、その方の名誉と平和とが危うくされているのです」
「しかしその権力なるものは」と私は語をはさんだ。「盗まれた人が盗んだ人を知っているということを、その盗んだ当人が知ってのことでしょう。誰がそんなひどいことを――」

   エドガー・ポー=作 佐々木直次郎=訳 「盗まれた手紙」
   20a. E-text at 青空文庫 入力:鈴木厚司 校正:小酒井博士
      2004年5月15日作成
   20b.黒猫・黄金虫』 新潮文庫 1951/08 所収
   20a. の底本は 20b.


(J21) ダイジエスト・シリーズ刊行會 1950
Dはその手紙をタネに、その貴婦人を、壓迫し、じぶんの權力を擴張しようとしているというわけだ。

   エドガー・アラン・ポオ=作
   編著者:ダイジエスト・シリーズ刊行會 代表:磯部秀見 「盜まれた手紙」
   『怪奇と詩情―ポーの人と作品』 ダイジエスト・シリーズ3
   ジープ社 定價八○圓 1950/06/15 所収
   「ダイジエスト・シリーズ」というシリーズ名からも察せられるとおり、
   この訳は完訳ではなく抄訳です。


(J22) 山本 1934
「分らんのですか。では、名前は云へないのだが第三者にその書類を曝くと、或る高貴の方の名譽を傷ける事になるのです。かうした事情が書類の所有者に高貴な方を牛耳る勢力を與え、高貴の方の名譽と平和とが從つて危くされるのです。」
「併しこの勢力といふのは」と私は言葉を挿んだ。「書類を失つた者が盜んだ者を知つてゐるといふ事を、その盜んだ者が又知つてゐての事でせう。それでなくて誰が大膽に――」

   Edgar Allan Poe=作 山本供平=譯註 「盜難書類」
   『Prose Tales』 英學生文庫
   春陽堂 定價金六拾五錢 1934/09(昭和9)所収
   奥付に表示された書名は「プローズ・テールズ」


(J23) 谷崎 1929
「まだですか? 名前は言へないが第三者にその手紙を曝(あば)くと、或る高貴の方の名譽を傷(きず)つける事になるのです。かうした事情がその高貴の方に對して手紙を取つた男に權力を揮(ふる)はせ、高貴の方の名譽と平和とが危くされるのです。」
「だがその權力は書類を失つた方が盜んだ者を知つて居るといふ事を、その盜んだ當人が知つてゐなければ駄目でせう。それでなくつて誰が……」私が言葉を挿(はさ)んだ。

   エドガア・アラン・ポオ=作 谷崎精二=譯 「盗難書類」
   『世界文學全集11 ポオ傑作集 緋文字・其他
   新潮社 1929(昭和4)所収


(J24) 江戸川 1929
「解らん? では、その書類を或る第三者に、名前は言ふわけにいかんが、見せると、或る最も高位の方の名譽に抱はることになるので、それのことはこの書類の所持者にその高貴の方に對する優越權を與へると同時にその高貴の方の名譽竝びに平和が極めて危くなつて來るのだ。」
「だが、優越權たるや……」と私は遮つた。「盜んだ者を盜まれた者が知つてゐるのを盜んだ者が知つてゐることに依るのではないかな。誰が敢へて――」

[原文は以下のとおり総ルビです - tomoki y.]

「解(わか)らん? では、その書類(しよるゐ)を或(あ)る第(だい)三者(しや)に、名前(なまへ)は言(い)ふわけにいかんが、見(み)せると、或(あ)る最(もつと)も高位(かうゐ)の方(かた)の名譽に抱(かゝ)はることになるので、それのことはこの書類(しよるゐ)の所持者(しよぢしや)にその高貴(かうゐ)の方(かた)に對(たい)する優越權(いうゑつけん)を與(あた)へると同時(どうじ)にその高貴(かうき)の方(かた)の名譽(めいよ)竝(なら)びに平和(へいわ)が極(きは)めて危(あやふ)くなつて來(く)るのだ。」
「だが、優越權(いうゑつけん)たるや……」と私(わたし)は遮(さえぎ)つた。「盜(ぬす)んだ者(もの)を盜(ぬす)まれた者(もの)が知(し)つてゐるのを盜(ぬす)んだ者(もの)が知(し)つてゐることに依(よ)るのではないかな。誰(たれ)が敢(あ)へて――」

   ポー=著 江戸川亂歩=譯 「竊まれた手紙」
   『世界大衆文學全集30 ポー、ホフマン集
   改造社 1929/04(昭和4)所収


(J25) 森田 1896, 1996
總監「解得する能わずと。好し。其の書類を把りて第三の人(ひと)、この人(ひと)は姑く無名氏となすべし、第三の人(ひと)に遞示(ていし)するときは、ある最も高貴なる地位に在る所の人の名譽に、陰翳(くもり)を與ふることを得べし。是れが爲めに、其の書類の所持者は斯の高貴の人に對して、一種の權力を握有することを得。蓋し斯の高貴の人の名譽と平和とは、其の書類の所持者の手の裡(うち)に係(かゝ)ればなり」。
余「然れども、そは唯だ其の竊者が、被竊者の己れの之を竊取して保持するを覺(さと)りをることを、知りて、然る後ち始めて其の權力成(せい)立するものなり」。

   森田思軒=譯 「秘密書類」
   25a. 川戸道昭+榊原貴教=編 ナダ出版センター=制作
      『明治翻訳文学全集《新聞雑誌編》19 ポー集』(全50巻・別巻2)
      大空社 1996/06 所収
   25b. 「名家談叢第五號附録」1896/01(明治29)
   初出は 25b.


  Audio 2 
ロシア語版オーディオブック(朗読) Похищенное письмо  - Audiobook in Russian

下の引用箇所の朗読は 6:30 から始まります。 Uploaded to YouTube by Зарубежная литература on 5 Jun 2014. Reading of the excerpt below starts at 6:30.


■ロシア語訳 Translation into Russian

-  Да? Ну,  хорошо: передача  этого  документа  третьему лицу,  которое останется  неназванным, поставит под угрозу честь весьма  высокой  особы,  и благодаря этому обстоятельству  тот, в  чьих руках находится документ, может диктовать  условия  той  весьма  знатной  особе,  чья  честь  и благополучие оказались в опасности.
- Но  ведь  эта власть, - перебил я, -  возникает  только в том случае, если похититель знает, что  лицу, им ограбленному, известно, кто похититель. Кто же дерзнет...

   Эдгар Аллан По. Похищенное письмо
   Translated by И.Гуровой
   E-text at Lib.Ru


■ブルガリア語訳 Translation into Bulgarian

— Така ли? Вижте какво. Разкриването на този документ на трето лице, чието име няма да споменавам, ще засегне честта на една много високопоставена особа, а това обстоятелство осигурява на притежателя на документа власт над знатната особа, честта и спокойствието на която по този начин са застрашени.
— Но тази власт — намесих се аз — ще зависи от това, дали крадецът знае, че е известен на пострадалата. Кой би се решил…

   Эдгар Аллан По. Откраднатото писмо
   Translated by Борис Миндов, 1990
   E-text at Моята библиотека (chitanka.info)


  Audio 3 
ドイツ語版オーディオブック(朗読) Der entwendete Brief - Audiobook in German

下の引用箇所の朗読は 5:08 から始まります。 Uploaded to YouTube by EAPoeProductions on 15 Jul 2011. Reading of the excerpt below starts at 5:08.


■ドイツ語訳 Translation into German

  »Nicht? Also: würde der Inhalt des Dokumentes einer dritten Person, die ich hier ungenannt lassen will, eröffnet, so würde das die Ehre einer sehr hochstehenden Persönlichkeit in ein schlechtes Licht setzen, und dieser Umstand gibt dem Inhaber des Papiers ein Übergewicht über die erlauchte Person, deren Ruhe und Ehre dadurch gefährdet sind.«
  »Aber dieses Übergewicht«, warf ich ein, »würde nur dann bestehen, wenn der Dieb wüßte, daß der Bestohlene selbst genaue Kenntnis von der Person des Täters hat. Wer aber könnte wagen...«

   Der entwendete Brief
   in Verbrechergeschichten by Edgar Allan Poe
   Translated by Gisela Etzel
   Verlag Ullstein GmbH, Volume Nr. 2721
   E-text at Projekt Gutenberg-DE - SPIEGEL ONLINE


  Audio 4 
イタリア語版のドラマ仕立ての朗読
La lettera rubata - Dramatic reading in Italian

Uploaded to YouTube by TheCrusius on 10 Apr 2012


■イタリア語訳 Translation into Italian

  «Niente? Dunque questo documento, mostrato a una terza persona di cui non faccio il nome, metterebbe in questione l'onore di una personalità del più alto rango. Questo fatto dà al possessore del documento un potere sull'illustre personaggio di cui sono messi a repentaglio l'onore e la pace.»
  «Questo presunto ascendente», mi intromisi io, «dipende dal fatto che il ladro sa che il derubato conosce chi è il ladro. Chi oserebbe…»

   La lettera rubata
   in Tutti i racconti del mistero, dell'incubo e del terrore
   by Edgar Allan Poe
   Newton Compton Editori, 2010/12/14
   Preview at Google Books


■ポルトガル語訳 Translation into Portuguese

- Não? Bem. A exibição desse documento a uma terceira pessoa, cujo nome não mencionarei, comprometeria a honra de uma personalidade da mais alta posição, e tal fato concede à pessoa que possui o documento ascendência sobre essa personalidade ilustre, cuja honra e tranqüilidade se acham, assim, ameaçadas.
- Mas essa ascendência - intervim - depende de que o ladrão saiba que a pessoa roubada o conhece. Quem se atreveria.

   A Carta Roubada by Edgar Allan Poe
   E-text at:
   * UFRGS
   * Scribd


  Audio 5 
スペイン語版オーディオブック(朗読) La carta robada - Audiobook in Spanish

下の引用箇所に相当する部分の朗読は 5:42 から始まります。 Uploaded to YouTube by chacosago on 22 Dec 2012. Reading of the excerpt below starts at 5:42.


■スペイン語訳 Translations into Spanish

(Es1) La editorial Planeta, 2013
—¿No? Bueno; la revelación de ese documento a una tercera persona, cuyo nombre silenciaré, pondría en entredicho el honor de alguien del más alto rango, y esto daría al poseedor del documento un ascendiente sobre el ilustre personaje cuyo honor y tranquilidad están así en peligro.
— Pero ese ascendiente — interrumpí — depende de que el ladrón sepa que la persona robada le conoce. ¿Quién osaría...?

   La Carta Robada in Cuentos by Edgar Allan Poe
   © 1986, Julio Gómez de la Serna, traducción cedida por la editorial Planeta
   Random House Mondadori, 2013/02/21


(Es2) Cortázar, 1970
—¿No? Veamos: la presentación del documento a una tercera persona que no nombraremos pondría sobre el tapete el honor de un personaje de las más altas esferas, y, ello da al poseedor del documento un dominio sobre el ilustre personaje cuyo honor y tranquilidad se ven de tal modo amenazados.
—Pero ese dominio —interrumpí— dependerá de que el ladrón supiera que dicho personaje lo conoce como tal. ¿Y quién osaría... ?

   La Carta Robada by Edgar Allan Poe
   Cuentos 1 - Edgar Allan Poe translated by Julio Cortázar
   Alianza Editorial, 1970
   E-text at La Maquina de Tiempo


(Es3)
— ¿No? Bueno; la predestinación del papel a una tercera persona, que es imposible nombrar, pondrá en tela de juicio el honor de un personaje de la más elevada posición; y este hecho da al poseedor del documento un ascendiente sobre el ilustre personaje, cuyo honor y tranquilidad son así comprometidos.
—Pero este ascendiente —repuse— dependería de que el ladrón sepa que dicha persona lo conoce. ¿Quién se ha atrevido…?

   La carta robada by Edgar Allan Poe
   E-text at Wikisource


  Audio 6 
フランス語版オーディオブック(朗読)
La Lettre volée - Audiobook in French read by Ka00

下の引用箇所の朗読は 5:04 から始まります。 Uploaded to YouTube by pilmix12 on 20 Feb 2013. Reading of the excerpt below starts at 5:04


  Audio 7 
フランス語版オーディオブック(朗読) La Lettre volée - Audiobook in French

下の引用箇所の朗読は 5:12 から始まります。 Uploaded to YouTube by Audiolude on 26 Oct 2012. Reading of the excerpt below starts at 5:12.


■フランス語訳 Translation into French

— Rien, vraiment ? Allons ! Ce document, révélé à un troisième personnage, dont je tairai le nom, mettrait en question l’honneur d’une personne du plus haut rang ; et voilà ce qui donne au détenteur du document un ascendant sur l’illustre personne dont l’honneur et la sécurité sont ainsi mis en péril.
— Mais cet ascendant, interrompis-je, dépend de ceci : le voleur sait-il que la personne volée connaît son voleur ? Qui oserait… ?

   La Lettre volée by Edgar Allan Poe
   Histoires extraordinaires, 1856
   Translated by Charles Baudelaire
   E-text at Wikisource


  Audio 8 
英語原文のオーディオブック(朗読)
The Purloined Letter - Audiobook in the original English

下の引用箇所の朗読は 5:30 から始まります。 Uploaded to YouTube by audiobooksfree on 22 Dec 2011. Reading of the excerpt below starts at 5:30.


  Audio 9 
「盗まれた手紙」 ラジオドラマ
The Watson Files Episode 17 - The Purloined Letter

下の引用箇所の朗読は 4:11 から始まります。 Uploaded to YouTube by StrobieStudios on 10 Sep 2010. Reading of the excerpt below starts at 4:11


■英語原文 The original text in English

"No? Well; the disclosure of the document to a third person, who shall be nameless, would bring in question the honor of a personage of most exalted station; and this fact gives the holder of the document an ascendancy over the illustrious personage whose honor and peace are so jeopardized."
"But this ascendancy," I interposed, "would depend upon the robber's knowledge of the loser's knowledge of the robber. Who would dare -"

   The Purloined Letter (1844) by Edgar Allan Poe
   E-text at Project Gutenberg


■邦題の異同 Variations of the title in Japanese

   「ぬすまれた手紙」……松村+繁尾 1987, 2010
   「ぬすまれた手紙」……谷崎 1985
   「ぬすまれた手紙」……岡上 1984
   「ぬすまれた手紙」……砧 1975
   「盗まれた手紙」………巽 2009
   「盗まれた手紙」………堀内 2001
   「盗まれた手紙」………富士川 1989, 1992
   「盗まれた手紙」………小鷹 1984
   「盗まれた手紙」………深町 1984
   「盗まれた手紙」………中野 1978
   「盗まれた手紙」………志貴 1978
   「盗まれた手紙」………丸谷 1974
   「盗まれた手紙」………八木 1974
   「盗まれた手紙」………小川 1968, 1973
   「盗まれた手紙」………大橋 1966
   「盗まれた手紙」………田桐 1964
   「盗まれた手紙」………松村 1962
   「盗まれた手紙」………鈴木 1961
   「盗まれた手紙」………佐々木 1951, 2004
   「盗難書類」……………谷崎 1962, 1969, etc.
   「盗難書類」……………谷崎 1929
   「秘密書類」……………森田 1896, 1996
   「盜まれた手紙」………ダイジエスト・シリーズ刊行會 1950
   「盜難書類」……………山本 1934
   「竊まれた手紙」………江戸川 1929


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■更新履歴 Change log

  • 2014/12/09 日本語版オーディオブックとロシア語版オーディオブックの YouTube 画面を追加しました。
  • 2013/09/15 もう1種類のスペイン語訳と、もう1種類のフランス語版オーディオブックの YouTube 画面を追加しました。
  • 2013/08/25 目次を新設し、松村達雄+繁尾久=訳 1987/12/21 を追加しました。
  • 2013/04/28 トルコ語版の表紙画像を追加しました。
  • 2013/04/12 ドイツ語訳を追加しました。また、ドイツ語版、イタリア語版、スペイン語版、フランス語版、および英語原文のオーディオブックの YouTube 画面も追加しました。
  • 2013/02/11 ブルガリア語訳とイタリア語訳を追加しました。
  • 2012/06/11 ロシア語訳とポルトガル語訳を追加しました。
  • 2010/12/12 巽孝之=訳 2009/05/01 を追加しました。
  • 2010/11/06 大橋吉之輔=訳 1966/12/15 と、The Watson Files の YouTube 画面を追加しました。
  • 2010/06/18 2種類のスペイン語訳を追加しました。
  • 2010/04/11 表紙画像を入れ替えました。これまで載せていたフランスのプレイアード叢書の表紙をやめて、代わりにボルヘスが編纂した「バベルの図書館」シリーズから、日本語版・ドイツ語版・フランス語版の表紙画像を新たに掲載しました。
  • 2009/09/15 ダイジエスト・シリーズ刊行會=編著 1950/06/15 を追加しました。また、「邦題の異同」の項を新設しました。
  • 2009/08/25 中國語譯(繁體字)を追加しました。
  • 2008/10/17 田桐大澄=訳 1964/08 を追加しました。
  • 2008/01/27 鈴木幸夫=訳 1961/01 を追加しました。
  • 2007/10/31 堀内一郎=訳 2001/04 を追加しました。
  • 2007/09/17 山本供平=譯 1934/09 を追加しました。
  • 2007/07/16 森田思軒=譯 1996/06、1896/01 を追加しました。
  • 2007/07/01 谷崎精二=訳 1985/03 を追加しました。
  • 2007/06/22 小川和夫=訳 1973/11 を追加しました。
  • 2007/06/17 1962年以降の谷崎精二=訳が、1929年版とくらべて、用字・仮名遣いその他の表記の点で、かなり異なる点にかんがみて、1962年以降の谷崎精二=訳を別項として立てました。
  • 2007/06/06 岡上鈴江=訳 1984/03 を追加しました。
  • 2007/03/13 谷崎精二=訳に関する書誌情報を補足しました。
  • 2007/01/22 志貴宏=訳 1978/09、および砧一郎=訳 1975/10 を追加しました。
  • 2006/12/13 書誌情報を修正/補足しました。
  • 2006/11/24 中国語訳(簡体字)を追加しました。
  • 2006/06/06 八木敏雄=訳 1974/09/18、谷崎精二=譯 1929、および江戸川亂歩=譯 1929/04/03 を追加しました。

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Monday, 29 May 2006

Evelyn Waugh "Decline and Fall" 010

Waugh
Evelyn Waugh. Photo: Mark Gerson
Source of the image: The British Library | The world's knowledge
http://www.bl.uk/collections/britirish/modbriwaugh.html


 ポールは中庭を横切ろうとして、スニッグズ先生に出会った。
 「出るの?」副学生監はあくまで明るかった。
 「はい、先生」と、ポールは答えた。
 少し先で、彼は大学付きの牧師に出会った。
 「おっ、ペニーフェザー君。こんなときで何だけど、スタンリー司祭の『東方教会』ね、確かわたしのがきみのところに行っていたね」
 「はい、テーブルの上に返しておきました」
 「ありがとう。じゃ、まあ、元気で。昨夜(ゆうべ)の不埒な事件のあったあとだからね、何か他の職業を考えるしかあるまいね。しかしまあ、喜んでいいのかもしれんよ。手遅れになる前に、牧師にむかんことが分ったわけだから。牧師があんなことをしてごらんなさい、それこそ世間中に知れてしまう。なのに、多いんだね、そういうのが! で、この先、何をするつもりなの?」
 「まだはっきりしないんですが」
 「商業関係ならいつでもあるでしょ。ひょっとしたら、スコーンで学んだ理念のいくつかを実業界で生かすことができるかもしれん。まあ、簡単ではあるまいがね。勇気をもって、不名誉をそそぐことだね。不屈の精神について、ジョンソン博士も言っていたね……ええと……まったくねえ、ズボン抜きとは!(#「ズボン抜きとは」に傍点)」
 門のところでポールは番人に心付けを渡した。
 「お別れです、ブラックオールさん。しばらくは会う機会もないでしょう」
 「さようですか。とても残念な話ですがねえ。あなたも先生におなりになるんでしょうな。素行不良でここを退学になる学生さんは、大半がそうですから」
 「クソッたれが、どいつもこいつも地獄に堕ちりゃいいんだ」駅に向かう車の中で、彼は心中、おだやかな声で、そうつぶやいたものの、自分が恥しくなってしまった。罵詈雑言を口にすることはめったにない彼であったから。
   富山太佳夫=訳『大転落』岩波文庫 1991年6月


 中庭を横切っている時、ポールはスニッグズに会った。
「もう発つのかい?」と副学生監はにこやかに言った。
「そうです」とポールは言った。
 それから少し先のところで牧師に会った。
「ああ、ペニフェザー、発つ前に言っとくが、たしか君はスタンリイ司祭長の『東方教会』を僕から借りていただろう?」
「ええ。先生のテーブルの上においておきました」
「それはありがとう。じゃ、さよなら、君。昨夜あんなふらちな事件を起したのだから、なにか別の職業を君も考えねばなるまい。まあ君が聖職者として不適格だということを手おくれにならないうちに知ったってことは喜んでもいいだろう。牧師があんなことをしでかせば、世間にすっかり知られてしまうからな。そしてそういう牧師も残念ながらたくさんいる。君はこれからどんなことをするつもりかね?」
「まだよくわかりません」
「もちろん実業界にはいつだって入れるさ。君は実業の世界にスクーンで学んだ理想を幾分でももたらすことができるかもしれないな。でもそれも容易なことじゃないよ、いいかね。勇気をもって償いをしなければ。ジョンソン博士も忍耐について言ってるだろう?……やれやれズボンなしとはね」
 門のところでポールは番人にチップを与えた。
「じゃさよなら、ブラッコール」彼は言った、「当分お前にも会えないだろうよ」
「そうでございますね。あのことをうかがいましたが残念です。あなた様は学校の先生におなりでございましょうな。品行不良で退学になった方はたいていそうなさるようで」
「あの連中みんな地獄におちやがれ」ポールは駅に車を走らせながら小さな声で呟いた。そして言ってしまって恥かしくなった、彼はめったに悪態は吐かない男だったのである。
   柴田稔彦=訳『ポール・ペニフェザーの冒険』福武文庫 1991年4月


  As he crossed the quad Paul met Mr Sniggs.
  'Just off?' said the Junior Dean brightly.
  'Yes, sir,' said Paul.
  And a little farther on he met the Chaplain.
  'Oh, Pennyfeather, before you go, surely you have my copy of Dean Stanley's Eastern Church? [# "Easter Church" in italic]'
  'Yes, I left it on your table.'
  'Thank you. Well, good-bye, my dear boy. I suppose that after that reprehensible affair last night you will have to think of some other profession. Well, you may congratulate yourself that you discovered your unfitness for the priesthood before it was too late. If a parson does a thing of that sort, you know, all the world knows. And so many do, alas! What do you propose doing?'
  'I don't really know yet.'
  'There is always commerce, of course. Perhaps you may be able to bring to the great world of business some of the ideals you have learned at Scone. But it won't be easy, you know. It is a thing to be lived down with courage. What did Dr Johnson say about fortitude? . . . Dear, dear! no trousers! [# "no trousers" in italic]'
  At the gates Paul tipped the porter.
  'Well, good-bye, Blackall,' he said. 'I don't suppose I shall see you again for some time.'
  'No, sir, and very sorry I am to hear about it. I expect you'll be becoming a schoolmaster, sir. That's what most of the gentlemen does, sir, that gets sent down for indecent behavior.'
  'God damn and blast them all to hell,' said Paul meekly to himself as he drove to the station, and then he felt rather ashamed, because he rarely swore.
   Evelyn Waugh "Decline and Fall" 1928


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Thursday, 25 May 2006

My Autobiography by Charles Chaplin チャールズ・チャップリン 『チャップリン自伝』

 Video 1 
How to Make Movies (1918) by Charlie Chaplin. Silent, 16 min.

Written and directed by Charles Chaplin. This film was never released for the general public. It was hidden in Chaplin's private vaults for forty years until he included some parts of it in his compilation 'The Chaplin Revue' in 1959.


 Images 
表紙画像 Cover photos
Chaplin


 Video 2 
『チャップリン自伝』著者サイン入りハードカバー原書初版本
"My Autobiography": A hardcover first edition. signed by author

Charlie Chaplin-"My Autobiography"-1964-Simon & Schuster-5 1/2" X 9"-509 pages-hardcover book-with jacket-with photos-First Edition-Signed By Author.Sir Charles Spencer Chaplin, Jr, KBE (1889-1977), better known as Charlie Chaplin, was an English comedy actor.


■日本語訳 Translations into Japanese

(J1) 中里 2017
人生最初の記憶のひとつは、毎晩シドニーとわたしを寝心地のよいベッドに愛情込めて寝かしつけ、家政婦にあとを任せて劇場に出かける母の姿だ。三歳半のわたしの世界では、あらゆることが可能だった。四歳上のシドニーが手品を使ってコインを飲み込み、それを頭の後ろから取り出せるのなら、自分にだってできないはずはない。そう思って、わたしは半(ヘイ)ペニー硬貨を飲み込み、母は医者を呼ぶ羽目に陥った。


(J2) 中野 1966, 1981
幼い記憶に今でも残っているのだが、毎夜母が劇場へ出かけてゆく前に、シドニイとわたしは気持のよいベッドに抱き合って一緒に眠り、あとの世話は家政婦がやってくれたものである。三歳と半年にしかならないわたしの世界では、当時すべてのことが可能だった。四歳年上のシドニイが銅貨を呑みこんで、頭のうしろから取り出す手品をやってみせれば、当然自分にもそれができると信じ、半ペニイ銅貨を本当に呑みこんでしまったことがある。おかげで母は医者を呼びにやらなければならなかった。


■イタリア語訳 Translation into Italian

Ecco uno dei miei primi ricordi: ogni sera, prima che mia madre andasse a teatro, Sydney e io veniva mo messi a letto, tra coperte amorevolmente rimboccate, e affidati alle cure della cameriera. Nel mio mondo di tre anni e mezzo tutto era possibile; se Sydney, che aveva quattro anni più di me, con un abile gioco di prestigio riusciva a ingoiare una moneta e a farsela uscire dalla nuca, potevo farlo anch’io; fu così che inghiottii un mezzo penny e mia madre si vide costretta a chiamare il dottore.

  • C. Chaplin, La mia autobiografia, Mondadori. Excerpt at Capitello.it

■ポルトガル語訳(部分) Translation into Portuguese (fragment)

Uma das minhas primeiras recordações é a de que toda noite, antes de mamãe ir para o teatro, Sydney e eu éramos carinhosamente postos numa cama confortável e entregues aos cuidados da empregada. Naquele mundo dos meus três anos e meio tudo era possível [...]


■スペイン語訳 Translation into Spanish

Entre mis recuerdos más tempranos se cuenta uno en el que todas las noches, antes de que mi madre se fuera al teatro, nos metían a Sydney y a mí en una cómoda cama y quedábamos al cuidado de la criada. En mi mundo de tres años y medio todo era posible; si Sydney, que era cuatro años mayor que yo, podía hacer juegos de manos y tragarse una moneda, haciendo que apareciese luego por la nuca, yo podía hacer lo mismo; por eso un día me tragué una moneda de medio penique, y mi madre tuvo que llamar al médico.

  • Autobiografía, Charles Chaplin. Excerpt at Megustaleer

■フランス語訳 Translation into French

Un de mes premiers souvenirs, c’est que chaque soir, avant le départ de ma mère pour le théâtre, Sydney et moi étions tendrement bordés, dans un lit confortable et laissés à la garde de la femme de chambre. Dans l’univers de l’enfant de trois ans et demi que j’étais, tout était possible ; puisque Sydney, qui était de quatre ans mon aîné, pouvait faire des tours de prestidigitation, avaler une pièce de monnaie et la faire ressortir par sa nuque, j’étais capable d’en faire autant ; j’avalai donc un jour un demi-penny et ma mère dut faire appeler un médecin.


■英語原文 The original text in English

One of my early recollections was that each night before Mother went to the theatre, Sydney and I were lovingly tucked up in a comfortable bed and left in the care of the housemaid. In my world of three and a half years, all things were possible; if Sydney, who was four years older than I, could perform legerdemain and swallow a coin and make it come out through the back of his head, I could do the same; so I swallowed a halfpenny and Mother was obliged to send for a doctor.


 Video 3 
Mini BIO : Charlie Chaplin

Uploaded to YouTube by BiographyChannel on 6 Sep 2012


■更新履歴 Change log

  • 2017-09-29 中里京子=訳 2017-04-01、イタリア語訳、ポルトガル語訳(部分)、スペイン語訳、およびフランス語訳を追加しました。
  • 2013-03-28 Mini BIO : Charlie Chaplin の YouTube 動画を追加しました。
  • 2010-07-14 記事タイトルの英文表記に、ミススペリングがありました。つぎのとおり、訂正します。
    • 誤 My Autobiograhpy by Charles Chaplin
    • 正 My Autobiography by Charles Chaplin
    また、How to make movies (1918) と、『チャップリン自伝』著者サイン入りハードカバー原書初版本の YouTube 動画を追加し、書誌情報を補足しました。


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Friday, 19 May 2006

大伴坂上郎女「黒髪に白髪交じり……」万葉集4-563 Lady Otomo Sakanoue "Kurokami ni...." from Man'yoshu 4-563

■表紙画像 Cover photo
Manyoshu
Love Songs from the Man'yoshu. Image source: Genji54.com


■リービ英雄のスタンフォード大学での講演(1時間15分)
 Ian Hideo Levy at Stanford University, 2010-02-11 (1 hr 15 min).

Ian Hideo Levy discusses language and identity of a writer as well as the difficulties and rewards of gaining the privilege of writing in the Japanese language as a culturally foreign writer.


■英訳 Translation into English

Never until now in this old life,
when white hairs twine among the black,
have I fallen into longing like this.

   Lady Otomo Sakanoue
   Translation by Ian Hideo Levy
   リービ英雄=訳 『Man'yo Luster 万葉集』 ピエ・ブックス 2002


■現代日本語訳 Translations into contemporary Japanese

(1) 新大系 1999, 2013
黒髪に白髪が混じって年老いるまで、
こんなに苦しい恋にはまだ出会わないのになあ。

   佐竹昭広, 山田英雄, 工藤力男, 大谷雅夫, 山崎福之 校注
   1a.万葉集(一)』 岩波文庫 2013 所収
   1b.新日本古典文学大系 萬葉集 1』 岩波書店 1999 所収
   引用は 1a. に拠りました。


(2) 三枝 2001
黒髪に白髪が交じり始めるこの年まで
こんな恋に出会ったことは 一度もなかった

   三枝克之(みえだ・かつゆき)=訳
   『恋ノウタ — Love Songs to You せつなくて
   Contemporary Remix“万葉集”角川文庫 2001


(3) 窪田 1952, 1966
黒髪に白髪がまじって、身の老いてくるまで、
このような苦しい恋には、我はまだ遇わぬことであるよ。

   窪田空穂(くぼた・うつぼ)=著
   3a.窪田空穂全集14 萬葉集評釈2』 角川書店 1966/04 所収
   3b.萬葉集評釈4』 東京堂 1952/02 所収
   引用は 3a. に拠りました。


■訓読
 Japanized reading of the original text that is written in
 Chinese characters

黒髪に白髪交じり老ゆるまで かかる恋にはいまだ逢はなくに


■仮名書き Kana transcription of the original text

くろかみに しろかみまじり おゆるまで
かかるこひには いまだあはなくに


■原文 Original text in Chinese characters

黒髪二 白髪交 至耆 如是有戀庭 未相尓

   大伴坂上郎女(おおとものさかのうえのいらつめ)
   万葉集 巻4-563 


■tomoki y. によるコメント Comments by tomoki y.

この歌を詠んだ当時、この女性歌人はまだ三十代半ばだったそうです。
むかしの人は老成していたのですね。


■更新履歴 Change log

  • 2014/02/02 岩波文庫 2013 を追加しました。
  • 2010/08/29 リービ英雄の講演の YouTube 動画を追加しました。
  • 2008/01/13 窪田空穂=著 1966/04 を追加しました。また、関連サイトへのリンクを張りました。

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In Patagonia by Bruce Chatwin ブルース・チャトウィン 『パタゴニア』

■ブルース・チャトウィン Bruce Chatwin, 1940-1989
Chat3a
Image source: Matt & Andrej Koymasky - Famous GLTB


■表紙画像コレクション Cover photo collection

↓ Click to enlarge ↓

ja Ja_chatwin_patagonia pl Pl_chatwin_w_patagonii de De_chatwin_in_patagonien

it It_chatwin_in_patagonia pt Pt_chatwin_na_patagonia es Es_chatwin_en_la_patagonia

es Es_chatwin_in_patagonia_picador fr Fr_chatwin_en_patagonie en En_chatwin_in_patagonia_2

   [ja] パタゴニア (1998) 日本語
   [pl] W Patagonii (2007) ポーランド語
   [de] In Patagonien (1990) ドイツ語
   [it] In Patagonia (2003) イタリア語
   [pt] Na Patagónia (2009) ポルトガル語
   [es] En la Patagonia (2007) Spain スペイン語
   [es] In Patagonia (1979) USA スペイン語
   [fr] En Patagonie (2002) フランス語
   [en] In Patagonia (1977) 英語


■ブルース・チャトウィンのノートブック Bruce Chatwin's Notebooks

Elisabeth Chanler, wife of Bruce Chatwin, tells the story of the relationship that bound together her husband with his travel notes. For more details, see Moleskine®


■日本語訳 Translation into Japanese

ブエノスアイレスの歴史は電話帳を見ればわかる。ポンペイ・ロマノフ、エミリオ・ロンメル、クレスピナ・D・Z・ド・ローズ、ラディスラオ・ラッツィウィル、そしてエリザベータ・マルタ・カルマン・デ・ロートシルト——Rの項から無作為に選んだ五つの名前が、レースのカーテン越しに、国外追放や幻滅、見果てぬ夢を物語っている。

   ブルース・チャトウィン=著 芹沢真理子=訳
   a. 「パタゴニア」 池澤夏樹=個人編集
     『世界文学全集 2-8 チャトウィン/フエンテス
     第1集全12巻, 第2集全12巻, 合計全24巻
     河出書房新社 2009-06-11 所収
   b.パタゴニア』 めるくまーる 改訂新版 1998/10
   c.パタゴニア』 めるくまーる 1990/07
   引用は b. に拠りました。


■ポーランド語訳 Translation into Polish

historia buenos aires zapisana jest w książce telefonicznej tego miasta. pompey romanov, emilio rommel, crespina d.z. de rose, ladislao radziwiłł oraz elizabeta marta callman de rothschild - te pięć wybranych na chybił trafił nazwisk spod litery "r" opowiada o wygnaniu, rozczarowaniu i strachu za koronkowymi firankami.

   „w patagonii” bruce’a chatwina
   Excerpt at:
   * Amazonka Apokalipsy 2010-09-15
   * jęcia z życia codziennego, - dzielnica


■スペイン語訳 Translationo into Spanish

La historia de Buenos Aires figura escrita en la guía telefónica. Pompeyo Romanov, Emilio Rommel, Crispina D. Z. de Rose, Ladislao Radziwil y Elizabeth Marta Callman de Rothschild, cinco nombres tomados alazar de las columnas correspondientes a la letra "R", lo describen una historia de exilio, desilusión y ansiedad detrás de las cortinas de encaje [Omission]

   En la Patagonia by Bruce Chatwin
   Ediciones peninsula, 2007
   Excerpts at:
   * blogcronico.wordpress.com
   * chennaioutfits.com
   * Google Books


■英語原文 The original text in English

The history of Buenos Aires is written in its telephone directory.  Pompey Romanov, Emilio Rommel, Crespina D.Z. de Rose, Ladislao Radziwil, and Elizabeta Marta Callman de Rothschild -- five names taken at random from among the R's -- told a story of exile, disillusion and anxiety behind lace curtains.

   In Patagonia by Bruce Chatwin
   First published by Jonathan Cape, 1977


■外部リンク External links

 [en] English
   * In Patagonia - Wikipedia
   * Bruce Chatwin - Wikipedia (1940-1989)

 [ja] 日本語
   * ブルース・チャトウィン - Wikipedia (1940-1989)


■更新履歴 Change log

2010/10/17 表紙画像コレクションの項を新設しました。
2010/10/16 「ブルース・チャトウィンのノートブック」の YouTube 動画と
         ポーランド語訳とスペイン語訳を追加し、外部リンクの項を
         新設しました。また、日本語訳の書誌情報を修正しました。
2007/04/12 見出しの追加、リンクの追加、書誌情報の加筆修正など、
         細部の変更を行ないました。また、つぎのとおり、記事の
         タイトルに、日本語表記を追加しました。

         旧題:In Patagonia by Bruce Chatwin
         新題:In Patagonia by Bruce Chatwin
             ブルース・チャトウィン 『パタゴニア』


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Wednesday, 10 May 2006

La planète des singes / Planet of the Apes by Pierre Boule ピエール・ブール 『猿の惑星』

La_planete_des_singes


■日本語訳 Translations into Japanese

(1) 高橋 2000
 ジンとフィリスは、居住惑星からできるだけ遠く離れた宇宙空間で、すばらしいヴァカンスを過ごしていた。
 すでに惑星間の旅はごくあたりまえになっており、恒星間の移動もとくに珍しくはない時代になっていた。宇宙船はシリウスの壮麗な観光名所へと旅行客を運んだり、牛飼座のアルクトゥルスや牡牛座のアルデバランにある有名な株式取引所へと投資家を運んだりしていた。しかし、裕福で暇を持て余しているジンとフィリスは、その独創性とちょっとした詩心によって、宇宙空間のなかでひときわ目立(めだ)つ旅をしていた。たんなる気晴らしのために、帆船で宇宙をめぐっているのである。

   ピエール・ブール=作 高橋啓(たかはし・けい)=訳
   『猿の惑星』 ハヤカワ文庫 2000/02


(2) 大久保 1968, 1995
 ジンとフィリスは生物の住む星々からなるべく遠くはなれた宇宙空間で、すばらしい休暇をすごしていた。
 そのころ、遊星間の旅行などはありふれたことだったし、恒星間を移動することも珍しくはなかった。ロケットが旅行者を狼星(シリウス)の絶景へ連れていったり、金融業者を大角星(アークチュラス)や雄牛座(アルデバラン)にある有名な株式取引所へ運んだりしていた。だが、金と暇をもてあましているジンとフィリスの夫婦はその気まぐれと詩人気質(かたぎ)で、宇宙のなかでも異彩をはなっていた。ふたりは気晴らしに宇宙を走りまわっていた——帆をあげて走りまわったのだ。

   ピエール・ブール=作 大久保輝臣(おおくぼ・てるおみ)=訳
   2a.猿の惑星』 創元SF文庫 1995/10
   2b.猿の惑星』 創元推理文庫 1968/07
   引用は 2b. に拠りました。


(3) 小倉 1968
 ジンとフィリスは生物の住む星からできるだけ遠く離れた宇宙空間で、すばらしい休日をたのしんでいた。そのころ太陽系内では惑星間の航海など日常茶飯のことだったし、恒星間旅行も珍しくはなかった。ロケットが旅行者たちをすばらしいシリウスへ連れていったり、財界人たちをアークテュラスやアルデバラン(雄牛座中の一等星)の有名な株式取引所へ運んだりしていた。が、暇と金に不自由のないジンとフィリスの夫婦は、彼らの宇宙ではその奇行と詩人気質(かたぎ)で名を知られていた。二人は気ばらしに宇宙を気ままに遊んであるいた——帆走したのだ。

   ピエール・ブール=作 小倉多加志(おぐら・たかし)=訳
   『猿の惑星』 ハヤカワ・ノヴェルズ 1968/05


■英訳 Translation into English

Jinn and Phyllis were spending a wonderful holiday, in space, as far away as possible from the inhabited stars.
  In those days interplanetary voyages were an everyday occurrence, and interstellar travel not uncommon. Rockets took tourists to the wondrous sites of Sirius, or financiers to the famous stock exchanges of Arcturus and Aldebaran. But Jinn and Phyllis, a wealthy leisured couple, were distinguished in the cosmos for their originality and a few grains of poetry. They wandered over the universe for their pleasure -- by sail.

   "Planet of the Apes" (originally "Monkey Planet")
   written by Pierre Boule
   translated by Xan Fielding, 1963
   An excerpt from Planet of the Apes at BookSense.com


■フランス語原文 The original text in French

Jinn et Phyllis passaient des vacances merveilleuses, dans l'espace, le plus loin possible des astres habités.
  En ce temps là , les voyages interplanétaires étaient communs; les déplacements intersidéraux, non exceptionnels. Les fusées emportaient des touristes vers les Bourses fameuses d'Arcturus et d'Aldebaran. Mais Jinn et Phyllis, un couple de riches oisifs, se signalaient dans le cosmos par leur originalité et par quelques grains de poésie. ils parcouraient l'univers pour leur plaisir - à la voile...

   La Planète des Singes par Pierre Boule, 1963
   An excerpt from la Planète des Singes at SciFi-Universe.Com


■tomoki y. による追記(2006/05/11)
 Comments by tomoki y., posted 2006/05/11

下の MMM さんのコメントに対するお答えを、ここに書きます。コメント欄に日本語入力をしようとすると、なぜか文字化けしてしまいますので。

そう、原作はフランス語。作者ピエール・ブールには、もう一作、映画化された有名な作品があります:"Le pont de la riviere Kwai"(アクセント記号は省略)。英訳本タイトルは "The Bridge over the River Kwai." 映画のタイトルは、"The Bridge on the River Kwai."  映画化に際して、なぜか前置詞が "over" から "on" に変わっています。原作と映画を区別するために、わざとそうしたのかな? ともあれ、邦題はごぞんじ『戦場にかける橋』。

猿の登場するSF映画と、第二次大戦を舞台にした戦争大作は、一見むすびつかなそうです。なので、両作品の原作者が同一人物だということは、意外と知られていません。私自身も、わりと最近まで知りませんでした。でも、じつは両作品とも、作者ブールの戦争捕虜体験が基になっています。両作品をむすびつけるキーワードは、日本兵。つまり、『猿の惑星』で人間を支配する猿たちのモデルになったのは、『戦場にかける橋』にも登場する、あの第二次大戦中に連合軍の兵士や将校たちを捕虜にした、日本軍の軍人たちだったというわけです。多くの日本人にとっては、屈辱的な事実かもしれませんね。

「遊星」、星座名、恒星にある(?)株式取引所などについてのご指摘、ごもっとも。翻訳の現場にかかわる人たちならば、いずれも当然気づくべき事柄でしょう。40年前の日本語って、けっこう古びて見えるものですね。また、商品として現在の時点で買って読んでもらうための訳文となると、別個の配慮も必要になってくるかもしれません。とはいえ、MMMさんのしてくださったようなご指摘は、大いに歓迎します。ありがとうございました。


 Image gallery 
ポスターやDVDのジャケット Posters and DVD covers

ja Ja_saru_no_wakusei hu Hu_a_majmok_bolygoja_poster fi Fi_apinoiden_planeetta

el El__jpg ru Ru___planet_of_the_apes uk Uk___planetoftheapes1968

pl Pl_planeta_map cs Cs_planeta_opic no No_apeplaneten

sv Se_apornas_planet_1968_2 da Da_abernes_planet de De_der_planet_der_affen

it It_il_pianeta_delle_scimmie pt Pt_oplanetadosmacacos pt Pt_pt_o_homem_que_veio_do_futuro

es Es_el_planeta_de_los_simios fr Fr_la_planete_des_singes en En_planetoftheapes


■更新履歴 Change log

  • 2013/10/06 ギリシャ語の画像を追加しました。
  • 2013/02/23 ポルトガル語(ポルトガル)の画像を追加しました。
  • 2013/01/22 イメージギャラリーを新設しました。
  • 2010/01/03 フランス語原文に抜けていたアクセント記号を補いました。
  • 2007/04/12 見出しの追加、リンクの追加など、細部の修正を行ないました。また、つぎのとおり、記事のタイトルに著者名を挿入しました。
    • 旧タイトル: La planete des singes / Planet of the Apes / 猿の惑星
    • 新タイトル: La planete des singes / Planet of the Apes by Pierre Boule ピエール・ブール『猿の惑星』
  • 2006/07/07 Amazon.co.jpや無料電子テキスト・サイトへのリンクを張りました。

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Tuesday, 09 May 2006

道展@京都市美術館 5/9〜14

Exhibition_map
 ↑クリックすると、拡大した地図のウインドウが開きます。

きょうから現代アートのグループ展をやってます。
私もインスタレーションの作品を出品しています。

アートグループ道 作品展
「ものとモノのあいだ」

と き:2006年5月9日(火)〜14日(日)
    9:00〜17:00(最終日は16:30まで)

ところ:京都市美術館(本館) 大陳列室
    京都市左京区岡崎公園内 Tel: 075-771-4107

行き方: http://www.city.kyoto.jp/bunshi/kmma/access.html

お近くにおいでの方、どうぞいらしてください。
私は、火曜の午後おそく、水曜の午前、そして
金・土・日の各午後は、おおむね会場にいます。
事前にご連絡くだされば、それ以外の時間も
都合のつくかぎり会場でお待ちしています。
どうぞ、よろしく♪

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Evelyn Waugh "Decline and Fall" 009

Va

 翌朝、心待ちにしていたカレッジの会議が開かれた。「二百三十ポンドです」と小声で報告する学内経理の心には、歓喜があふれていた。「しかも、損害額を含めずにです(#「含めずにです」に傍点)! つまり、すでに徴集してあるものを入れて五晩ということです。創立者のポートワインが五晩も飲めるんです!」
 「ペニーフェザーという学生の件は、まったく切り離したほうがいいようですな」と、学寮長の発言。「中庭を、ズボンもはかずに(#「ズボンもはかずに」に傍点)、走り抜けた、と。それだと(#「それだと」に傍点)猥褻行為じゃないですか。学生にはあるまじき(#「あるまじき」に傍点)所行だねえ」
 「思いっきり重い罰金でも課してはいかがかと」と、副学生監。
 「しかしね、払えるのかね? 彼はあまり裕福じゃないという話だが。まったく、ズボンもはかずに(#「ズボンもはかずに」に傍点)。しかも、真夜中に! 退学処分にするほうがはるかに妥当だと思うがね。ああいう学生はこのカレッジの名誉にはならんよ」

 それから二時間後、ポールが三着しかないスーツを小型の革のトランクに詰め込んでいると、学内経理から出頭命令が届いた。
 「ええとね、ペニーフェザー君、きみの部屋を検査したところ、窓敷居とマントルピースにひとつずつ、総計二ケ所の小さな焼け跡が見つかった。明らかに煙草の吸い殻が原因だね。ひとつにつき五シリング六ペンス、学費に上乗せするよ。以上」
   富山太佳夫=訳『大転落』岩波文庫 1991年6月


 翌朝の教員の会議は楽しいものとなった。
「二百三十ポンドか」と学寮会計係はうっとりと呟いた、「被害額を勘定にいれないでだ。すでに徴集しているものを加えれば、つまり五晩ってことになる。創立者のポルト酒が五晩飲める!」
「ペニフェザーの事件は」と学寮長が言っていた、「全く別問題のようだな。中庭を端から端までズボンなしで走ったって。みっともない。いや、それ以上だ、みだらなことだ。おそろしくみだらなことだと言ってもいいぐらいだ。奨学生にはもってのほかの行為だ」
「手ひどい罰金を科したらどうでしょう?」と副学生監が提案した。
「払えるかどうか疑問だな。あの学生は裕福でないときいている。ズボンなしとはな、まったく。しかも夜のあんな時刻に。いっそ追い払ってしまった方がいいのじゃないか。ああいった青年はこのカレッジには役に立たない」

 二時間たってポールが自分の三着の服を小さな革のトランクにつめこんでいると、会計係が会いたいと伝言をよこした。
「やあ、ペニフェザー」と彼は言った、「君の部屋を調べたら、ちょっとしたやけこげ(#「やけこげ」に傍点)が二つみつかったよ。ひとつは窓のしきいのところに、もひとつは暖炉の上だ。まちがいなく煙草のすいがらでできたものだ。ひとつにつき五シリング六ペンスを君の寮費につけておくよ。それだけだ、もう結構」
   柴田稔彦=訳『ポール・ペニフェザーの冒険』福武文庫 1991年4月

                *
Next morning there was a lovely College meeting.
  'Two hundred and thirty pounds,' murmured the Domestic Bursar ecstatically, 'not [#'not' in italic] counting the damage! That means five evenings, with what we have already collected. Five evenings of Founder's port!'
  'The case of Pennyfeather,' the Master was saying, 'seems to be quite a different matter altogether. He ran the whole length of the quadrangle, you say, without his trousers [# 'without his trousers' in italic] It is unseemly. It is more: it is indecent. In fact, I am almost prepared to say that it is flagrantly indecent. It is not [#'not' in italic] the conduct we expect of a scholar.'
  'Perhaps if we fined him really heavily?' suggested the Junior Dean.
  'I very much doubt whether he could pay. I understand he is not well off. Without trousers [#'Without trousers' in italic], indeed! And at that time of night! I think we should do far better to get rid of him altogether. That sort of young man does the College no good.'
                *
Two hours later, while Paul was packing his three suits in his little leather trunk, the Domestic Bursar sent a message that he wished to see him.
  'Ah, Mr Pennyfeather,' he said, 'I have examined your rooms and noticed two slight burns, one on the window-sill and the other on the chimney-piece, no doubt from cigarette ends. I am charging you five-and-sixpence for each of them on your battels. That is all, thank you.'
   Evelyn Waugh "Decline and Fall" 1928


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Monday, 08 May 2006

The Scarlet Letter by Nathaniel Hawthorne ホーソーン / ホーソン 『緋文字』『緋の文字』『スカーレット・レター』『スカレツトレター』

        目次 Table of Contents

 Video 1  Video SparkNotes: The Scarlet Letter summary
■中国語訳(簡体字)Translation into simplified Chinese
■中國語譯(繁體字)Translation into traditional Chinese
■DVDのジャケット DVD cover
■日本語訳 Translations into Japanese
  (1) 小川 2013
  (2) 八木 1992
  (3) 小津 1991
  (4) 大井 1974
  (5) 太田 1962
  (6) 鈴木 1957
  (7) 福原 1952, 1995
  (8) 佐藤 1929, 1955
  (9) 福原 1929
  (10) 馬場 1927
  (11) 神 1923, 1931
  (12) 富永 1903
 Video 2  The Scarlet Letter (1934) directed by Robert G. Vignola
■ロシア語訳 Translation into Russian
■ドイツ語訳 Translation into German
■イタリア語訳 Translation into Italian
■スペイン語訳 Translation into Spanish
■フランス語訳 Translation into French
 Video 3  The Scarlet Letter (1926) directed by Victor Sjöström
 Audio 1  英語原文のオーディオブック(朗読) Audiobook by The16thCavern
 Audio 2  英語原文のオーディオブック(朗読) Audiobook by AudioBooksOnline
■英語原文 The original text in English
■著者名の日本語表記 Transliteration of the author's name in Japanese
■邦題の異同 Variations of the title translated into Japanese
■更新履歴 Change log


 Video 1 
Video SparkNotes: Nathaniel Hawthorne's The Scarlet Letter summary

VideoSparkNotes


■中国語訳(簡体字)Translation into simplified Chinese

“(……)那上边站着的女人嘛,先生,你应该知道,是一个有学问的人的妻子,男人生在英国,但已经长期在阿姆斯特丹定居,不知为了什么,他好久以前想起要飘洋过海,搬到我们马萨诸塞这地方来。为此,他先把他妻子送来,自己留在那边处理那些免不了的事。天啊,好心的光生,在差不多两年的时间里,也许还没那么久呢,这女人一直是我们波士顿这儿的居民,那位学者白兰先生却始终没有一点音讯;而他这位年轻的老婆,你看,就自个儿走上了邪道——”

   霍桑 《红字》 三 相认
   E-text at:
   * 语文备课大师
   * 天涯在线书库


■中國語譯(繁體字)Translation into traditional Chinese

「(……)那上邊站著的女人嘛,先生,你應該知道,是一個有學問的人的妻子,男人生在英國,但已經長期在阿姆斯特丹定居,不知為了什麼,他好久以前想起要飄洋過海,搬到我們馬薩諸塞這地方來。為此,他先把他妻子送來,自己留在那邊處理那 些免不了的事。天啊,好心的光生,在差不多兩年的時間裡,也許還沒那麼久呢,這女人一直是我們波士頓這兒的居民,那位學者白蘭先生卻始終沒有一點音訊;而他這位年輕的老婆,你看,就自個兒走上了邪道――」

   霍桑 《紅字》 第三章 相認
   E-text at 雲台書屋 (b111.net)


■DVDのジャケット DVD cover
Scarletletterdvdcover
Image from the 1979 film version of The Scarlet Letter (not the 1995 version starring Demi Moore). Image source: Teach With Movies


■日本語訳 Translations into Japanese

(1) 小川 2013
「で、あの女はというと、さる学者先生の女房なのですよ。その先生、もとはイギリスの人なのですが、長らくアムステルダムに住んでいて、しばらく前に渡航を思い立った。このマサチューセッツへ来ることに人生を賭けたのですな。そのつもりで、あれこれと身辺の整理をしながら、奥さんだけを先発させました。それからですよ。女がボストンで暮らすようになって、二年、三年、プリン先生からは音沙汰なし。そうこうするうちに奥さんが若い身空で——」

   ホーソーン=作 小川高義(おがわ・たかよし)=訳
   『緋文字(ひもんじ)』 光文社古典新訳文庫 2013/02/13


(2) 八木 1992
「……あそこの女は、いいですか、とある学者の妻でした。その学者は、生まれはイギリスですが、長いあいだアムステルダムに住んでいまして、しばらくまえのこと、海をわたって、マサチューセッツのわれわれと運命をともになさる決心をされたのです。そこで、妻をさきにおよこしになった。あちらで片付けなければならない仕事があったものですから。ところがですよ、あの女がボストンの住民になって二年たらずですか、その間、プリン先生からなんの音沙汰もない。そこで、いいですか、先生の若い細君は、身をあやまった——」

   ホーソーン=作 八木敏雄=訳
   『完訳 緋文字(ひもんじ)』 岩波文庫 1992/12


(3) 小津 1991
「……あそこの女はさる学者の奥さんだった。その学者というのはイギリス生まれで、長いあいだアムステルダムに住んでいなさったが、もうだいぶ前のことになるが、大西洋を渡ってわれわれマサチュセッツの人間と運命をともにすることを決心された。そのためにまず奥さんを先にやって、自分はなにかの用事を片づけるために残った。ところがだね、二年か、そんなにもならなかったかもしれないが、あの女がこのボストンに住みついてから、旦那(だんな)の学者、つまりプリンさんからなんの便りもない。それで、若い細君は、つまりだね、自分でまちがいをしでかして——」

   ホーソーン=作 小津次郎=訳 「緋文字」
   『集英社ギャラリー[世界の文学]16 アメリカ1』 集英社 1991/01 所収


(4) 大井 1974
「……あの女はですよ、イギリス生まれで、長くアムステルダムに住んでおりました、さる学者の奥さんなんですがね。主人というのがかなり以前のこと、アメリカに渡って、わたしどもマサチューセッツの植民地の者たちと運命をともにしよう、という気になったのですな。このために、まず奥さんを先に出発させて、自分はあと片づけのために残ったとお思いなされ。ところがどうです、あなた、あの女がこのボストンに住むようになってから二年か、三年たらずのあいだというもの、そのプリンさんという学者からは、風の便りもないじゃありませんか。というわけで、あの若い細君が、心得ちがいをする羽目になっちまいましてね——」

   ホーソン=作 大井浩二=訳 「緋文字」
   『世界文学全集32 ポオ/ホーソン』 講談社 1974 所収


(5) 太田 1962
「……あそこに立っている女は、いいかね、ある学者の奥さんだったんだね。その学者というのはイギリス生まれで、だが、アムステルダムに長い間住んでいたんだ。ところが、ずっと以前に、その学者さんは大西洋をわたってわれわれマサチュセッツ州の人間と運命をともにする決心をしたというわけだ。その目的で奥さんを先によこして、自分は二、三よぎない事を始末するためあちらに残っていた。すると、おまえさん、あの女がボストンに住みついてから二年か、二年たらずたっても、その学者のプリンさんからはいっこうに消息がない。そこでこの若い奥さんは、みずから身を誤ってしまう——ということになったわけだなあ」

   ナサニエル・ホーソーン=作 太田三郎=訳 「緋文字」
   『世界文学全集11 ポー/ホーソーン』 河出書房新社 1962/08 所収


(6) 鈴木 1957
「……あの女はですよ、イギリス生れでずっとアムステルダムに住んでいたある学者の奥さんでね、大分前にその学者は海を越えてマサチューセッツの我々と運命を共にする気になったんです。そのため、奥さんを先によこし、自分は後に残って何か必要な用事を始末していたんです。ところがですよ、二年ばかりあの女はこのボストンに住んでますが、この学者のプリンさんから何の音沙汰(おとさた)もないんです。それで若い奥さんはですねえ、自分で間違いをすることになって——」

   ホーソーン=作 鈴木重吉=訳
   『緋文字(ひもんじ)』 新潮文庫 1957/10


(7) 福原 1952, 1995
「……あの女は、ある学者の妻君で、イギリスの生まれで、ずっと以前はアムステルダムに住んでいたのですが、大分前にその夫は海を渡ってわれわれマサチューセッツのものと一緒に運だめしにこの地へこようという気になったのです。そんなわけで、その夫は妻君を先に渡らしておいて、自分は後に残って、何か必要な仕事を片づけていたのです。ところで、あなた、あの女は、このボストンの住民になってから二年かそこら経ちましたが、その学者のプリン氏からはちっとも便りがないのです。で、若い妻君はですね、つい身持ちが悪くなりまして——」

   ナサニエル・ホーソン=作 福原麟太郎=訳
   a.緋文字』 角川文庫 改版 1995/11
   b.緋文字』 角川文庫 初版 1952/01


(8) 佐藤 1929, 1955
「……あの女はですね、イギリス生れのある學者の奥さんだったのですが、その方は、久しくアムステルダムにおられて、少しまえに、海をこえて、マッサチューセッツ州の私どもと、運命を共にしようという志をもっていらっしゃったので、そのために、まず、ご自身よりさきに、奥さんをこちらへ、およこしになって、ご自分は何か必要な仕事を始末なさるために、殘っていらっしゃったのです。ところが、まあ、あなた、奥さんが、このボストンに住んで、かれこれ二年そこそこのあいだに、學者のプリンヌさんからは何のたよりもなかったので、ようございますか、この若い奥さんが勝手に心得ちがいをなすったので——。」

   ホーソン=作 佐藤清=訳
   a.緋文字』 岩波文庫 改版 1955/09
   b.緋文字』 岩波文庫 初版 1929/02


(9) 福原 1929
「……あの女は、或る學者の妻君で、英吉利の生れで、ずつと以前はアムステルダムに住んでゐたのですが、大分前にその夫は海を渡つて我々マサチウセッツのものと一緒に運試(うんだめ)しにこの地へ來ようといふ氣になつたのです。そんなわけで、その夫は妻君を先に渡らして置いて、自分は後に殘つて、何か必要な仕事を片づけてゐたのです。ところで、あなた、あの女は、このボストンの住民になつてから二年かそこら經(た)ちましたが、その學者のプリン氏からはちつとも便(たよ)りがないのです。で、若い妻君はですね、つい身持ちが惡くなりまして——」

   ナサニエル・ホーソーン=著 福原麟太郎=譯 「緋文字」
   『世界文學全集11 ポオ傑作集 緋文字・其他
   新潮社 1929/01(昭和4)所収


(10) 馬場 1927
『……彼所(あすこ)に居る女はね、貴下(あなた)、英吉利(イギリス)生れではあるが長くアムステルダムに住んで居た或る學者の人の妻だつたんですぜ、良人(をつと)の方は餘程(よほど)前に此方(こつち)へ渡つて來て、此のマッサチュウセッツの吾々の間で暮して見ようと思つたんです。で、その男はその積りで、自分より先きに女房の方をよこして、自分は或る據(よんどころ)無い仕事を片附ける爲めに後(あと)へ殘つたんです。所で、何(ど)うでせう、貴下、女は此所(ここ)のボストンに來てから二年、先(ま)づザッと二年經つても、プリン氏といふその學者からは何の音信(たより)も無かつたんですね、で、その若い女房は、ね、唯一人で居たもんだから、飛んだ間違(まちがひ)をやつて——』
[ルビを一部省略しました - tomoki y.]

   ナサニエル・ホオソオン=著 馬場孤蝶(ばば・こちょう)=譯
   『緋の文字(ひのもじ)』 國民文庫刊行會=編輯兼發行
   非賣品 1927/05(昭和2)所収


(11) 神 1923, 1931
『……あの夫人は英國生れの或學者の奥さんでありますが永くアムステルダムにすんで居たのです。そこから、そう餘程の前の事海を渡つてマザチユセツツに來る事になつたのでした。それで彼は先以て妻を送つて自分は後に殘り色々な必要な用向の仕末をつけて居たのです。ところがですネ、彼女がボストンに來てから約二年にもなつてもプリン氏の便りが一向なかつたうちに、この若い婦人は遂に自分の不始末からですネ………』

   a. ナサニエル・ホーソン=原作 神芳郎(かみ・よしろう)=譯
     『スカーレツト・レター』 家村文翫堂
     定價金壹圓參拾錢 1931/07(昭和6)所収
     上の表題は扉に拠る。背と奥付に表示された書名は、スカレツトレター
   b. ナサニエル・ホーソン=著 神芳郎=譯
     『スカーレット・レター』 精華堂書店 1923(大正12)所収
   引用は a. に拠りました。


(12) 富永 1903
[ルビを取り除いたテキスト]
『……彼の女は或る學者の妻なりき。其の學者は元英人にして、長く和蘭のアムステルダムに住みしが、後このマサチウセツツに渡り來らんと思ひ立ち、先づ妻を送り、已れは暫く止まつて殘務を見たり。然るに其の後二年ほど此の妻は勃頓に來り住み居れども、君よ其の學者弗藺氏の音づれとてはて聞えざるなり。而して其の若き妻は君の見る如く惡き方に導かるゝに委されしなり』

[原文はつぎのとおり総ルビ]
『……彼(か)の女(ぢよ)は或(あ)る學者(がくしや)の妻(さい)なりき。其(そ)の學者(がくしや)は元英人(もとえいじん)にして、長(なが)く和蘭のアムステルダムに住(す)みしが、後(のち)このマサチウセツツに渡(わた)り來(きた)らんと思(おも)ひ立(た)ち、先(ま)づ妻(つま)を送(おく)り、已(おの)れは暫(しばら)く止(とゞ)まつて殘務(ざんむ)を見(み)たり。然(しか)るに其(そ)の後(のち)二年(ねん)ほど此(こ)の妻(つま)は勃頓(ボストン)に來(きた)り住(す)み居(を)れども、君(きみ)よ其(そ)の學者(がくしや)弗藺氏(ブリンし)の音(おと)づれとては(たえ)て聞(きこ)えざるなり。而(しか)して其(そ)の若(わか)き妻(つま)は君(きみ)の見(み)る如(ごと)く惡(あし)き方(かた)に導(みちび)かるゝに委(まか)されしなり』

   ホーソン=著 富永蕃江(とみなが・はんこう)=譯
   『緋文字(ひもんじ)』 東文館 1903/11(明治36)
   スキャン画像: 国立国会図書館 近代デジタルライブラリー
   送の旧字は新字で置き換えました。


 Video 2 
The Scarlet Letter (1934) directed by Robert G. Vignola

Published on Mar 12, 2012 by TheVideoCellar. Starring Colleen Moore, Hardie Albright and Henry B. Walthall.


■ロシア語訳 Translation into Russian

- Так  вот, сэр,  эта  женщина была  женой одного ученого,  который  родился в Англии, но  долго жил  в  Амстердаме,  а потом, несколько лет  назад, задумал  переплыть океан и попытать  счастья  у нас, в Массачусетсе.  Он  послал  жену  вперед, а сам  задержался, чтобы закончить какие-то важные дела. И подумайте,  сэр,  прожив два года  в Бостоне, она не получила ни единой весточки от этого ученого джентльмена, мистера Прина. Ну, и тогда молодая женщина, за которой некому было присмотреть...

   Глава III. Встреча
   Натаниель Готорн. Алая буква
   Translated by Э. Л. Линецкой
   E-text at Lib.Ru


■ドイツ語訳 Translation into German

»[Omission] So wißt, Herr, daß jenes Weib die Ehefrau eines gelehrten Mannes von englischer Geburt war, der aber lange in Amsterdam gelebt hatte, wo es ihm vor einer guten Zeit in den Sinn kam, herüber zu fahren und sein Los mit dem unsern in Massachusetts zu vereinigen. Zu diesem Zwecke schickte er seine Frau voraus, während er selbst zurückblieb, um einige notwendige Geschäfte zu besorgen. Nun, guter Herr, in den zwei Jahren oder weniger, wo das Weib hier in Boston gelebt hat, sind keine Nachrichten von dem gelehrten Meister Prynne eingelaufen, und seine junge Frau sehet Ihr, die ihrer eigenen schlimmen Führung überlassen geblieben ist –«

   III Die Erkennung
   Der scharlachrote Buchstabe by Nathaniel Hawthorne
   E-text at Projekt Gutenberg-DE


■イタリア語訳 Translation into Italian

Dovete sapere, signore, che quella donna era la moglie di un certo scienziato inglese, il quale abitava da lungo tempo ad Amsterdam, da dove, or è qualche anno, doveva salpare per venire a stabilirsi qui, da noi, nel Massachusetts. Per questo fece partire prima sua moglie, ed egli si fermò per sbrigare qualche affare importante. Per farla breve, signore, da due anni la donna stava qui a Boston, ma nessuna notizia era giunta di quello scienziato, del signor Prynne, e intanto la sua giovane moglie, lasciata in balia di se stessa...

   III, L'incontro
   La lettera scarlatta by Nathaniel Hawthorne
   Preview at Google Books


■スペイン語訳 Translation into Spanish

—Debe Ud. saber, señor, que esa mujer fue la esposa de un cierto sabio, inglés de nacimiento, pero que había habitado mucho tiempo en Amsterdam, de donde hace años pensó venir a fijar su suerte entre nosotros aquí en Massachusetts. Con este objeto envió primero a su esposa, quedándose él en Europa mientras arreglaba ciertos asuntos. Pero en los dos años o mas que la mujer ha residido en esta ciudad de Boston, ninguna noticia se ha recibido del sabio caballero Señor Prynne; y su joven esposa, habiendo quedado a su propia extraviada dirección...

   III El Reconocimiento
   La letra escarlata by Nathaniel Hawthorne
   E-text at La letra escarlata [PDF]


■フランス語訳 Translation into French

« [Omission] Messire, que cette femme là-bas était l’épouse d’un homme fort docte, Anglais de naissance, mais qui longtemps vécut à Amsterdam39 d’où il décida de se venir joindre à nous autres colons de Nouvelle-Angleterre. Pour ce, il fit embarquer son épouse avant lui, ayant été contraint de s’attarder en Europe. Or, depuis tantôt deux ans que Mme Prynne habite Boston, nul n’a ouï nouvelle de son savant époux et cette jeune femme laissée aux mauvais conseils de sa nature…

   Chapitre III : La reconnaissance
   La Lettre écarlate by Nathaniel Hawthorne
   Translated by Marie Canavaggia
   E-text at Ebooks libres et gratuits [PDF]


 Video 3 
The Scarlet Letter (1926) directed by Victor Sjöström

Uploaded by cm2038 on Feb 27, 2010. Starring Lillian Gish, Lars Hanson and Henry B. Walthall.


 Audio 1 
英語原文のオーディオブック(朗読) The Scarlet Letter audiobook (2 of 5)

下に引用する箇所は 4:21 あたりから始まります。 Uploaded to YouTube by The16thCavern on 5 Oct 2012. Audio courtesy of LibriVox. Read by Ana Simão. The excerpt below starts around 4:21.


 Audio 2 
英語原文のオーディオブック(朗読) The Scarlet Letter audiobook

下に引用する箇所は 4:48 あたりから始まります。 Uploaded to YouTube by AudioBooksOnline on 13 Mar 2013. The excerpt below starts around 4:48.


■英語原文 The original text in English

".... Yonder woman, Sir, you must know, was the wife of a certain learned man, English by birth, but who had long ago dwelt in Amsterdam, whence some good time agone he was minded to cross over and cast in his lot with us of the Massachusetts.  To this purpose he sent his wife before him, remaining himself to look after some necessary affairs.  Marry, good Sir, in some two years, or less, that the woman has been a dweller here in Boston, no tidings have come of this learned gentleman, Master Prynne; and his young wife, look you, being left to her own misguidance--"

   Chapter III: The Recognition
   The Scarlet Letter (1850) by Nathaniel Hawthorne
   The Project Gutenberg EBook of The Scarlet Letter


■著者名の日本語表記の異同
 Transliteration variations of the author's name in Japanese

   ホーソーン……小川 2013
   ホーソーン……八木 1992
   ホーソーン……小津 1991
   ホーソーン……太田 1962
   ホーソーン……鈴木 1957
   ホーソーン……福原 1929
   ホーソン………大井 1974
   ホーソン………福原 1952, 1995
   ホーソン………佐藤 1929, 1955
   ホーソン………神   1923, 1931
   ホーソン………富永 1903
   ホオソオン……馬場 1927


■邦題の異同
 Variations of the title translated into Japanese

   『スカーレット・レター』……神  1923
   『スカーレツト・レター』……神  1931 扉
   『スカレツトレター』  ………神  1931 背・奥付
   『緋の文字』………………馬場 1927
   『緋文字』…………………小川 2013
   『緋文字』…………………八木 1992
   『緋文字』…………………小津 1991
   『緋文字』…………………大井 1974
   『緋文字』…………………太田 1962
   『緋文字』…………………鈴木 1957
   『緋文字』…………………福原 1952, 1995
   『緋文字』…………………佐藤 1929, 1955
   『緋文字』…………………福原 1929
   『緋文字』…………………富永 1903


■更新履歴 Change log

  • 2013/06/02 目次を新設しました。
  • 2013/06/01 英語原文のオーディオブックの YouTube 画面を追加しました。
  • 2013/02/22 ドイツ語訳を追加し、小川高義=訳 2013/02/13 の訳文を挿入しました。
  • 2013/02/18 小川高義=訳 2013/02/13 の書誌情報を追加しました。訳文は追って挿入します。
  • 2012/06/29 富永蕃江=譯 1903/11、ロシア語訳、イタリア語訳、およびスペイン語訳を追加しました。また、The Scarlet Letter (1934) と The Scarlet Letter (1926) の2本の YouTube 動画も追加しました。
  • 2011/11/08 Video SparkNotes: Nathaniel Hawthorne's The Scarlet Letter summary の YouTube 動画を追加しました。
  • 2011/01/26 フランス語訳を追加しました。
  • 2009/09/29 中國語譯(繁體字)を追加しました。
  • 2009/02/27 「著者名の日本語表記の異同」と「邦題の異同」の項を新設しました。
  • 2009/02/26 神芳郎=譯 1931/07 を追加しました。
  • 2008/03/19 馬場孤蝶=譯 1927/05 を追加しました。
  • 2006/11/19 小津次郎=訳 1991/01 を追加し、Amazon.co.jp など関連サイトへのリンクを補足しました。
  • 2006/08/28 中国語訳(簡体字)を追加しました。
  • 2006/07/19 福原麟太郎=訳『緋文字』1952 を追加し、書誌情報を修正・補足しました。また、Amazon.co.jp の該当ページへのリンクと電子テキストへのリンクを張りました。
  • 2006/05/13 大井浩二=訳 1974 と福原麟太郎=譯 1929 を追加しました。

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| | Comments (4)

The Travels of Marco Polo マルコ・ポーロ 東方見聞録

        目次 Table of Contents

■はじめに Introduction
 Video  TV 『シルクロード 1C マルコ・ポーロ』 Treasure Seekers: The Silk Road (2001)
  Map   マルコ・ポーロの旅行の推定ルート Estimated routes of Marco Polo's travels
■日本語訳 Translations into Japanese
  (J1) 月村+久保田 2002
  (J2) 谷 1991
  (J3) 愛宕 1971, 1984, etc.
  (J4) 青木(一)1960
  (J5) 青木(富)1954, 1969, etc.
  (J6) 佐伯 1945
  (J7) 生方 1914
■ロシア語訳 Translation into Russian
■英訳 Translation into English
■スペイン語訳 Translation into Spanish
■イタリア語訳 Translation into Italian
■現代フランス語訳 Translation into modern French
 Gallery  マルコ・ポーロ 東方見聞録 『驚異の書』 Le Livre des Merveilles
■古フランス語原文 The original text in Old French
■更新履歴 Change log


■はじめに Introduction

英語の Japan やフランス語の Japon の語源になったとされる「ジパング」。マルコ・ポーロのいわゆる『東方見聞録』に現れるこの地名は、日本という東洋の島国をヨーロッパ世界に初めて紹介したものとして、日本では特に有名だ。

では、マルコ・ポーロは、ジパングについて具体的にどのように述べたのか? その該当部分を、幾通りかの日本語訳で下に引用する。そのあと、英訳・スペイン語訳・イタリア語訳・現代フランス語訳・古フランス語原文を示す。


 Video 
テレビ 『シルクロード 1C マルコ・ポーロ』 音声: 英語 字幕: 繁體中文
TV Treasure Seekers: The Silk Road (2001) Episode 1 Part C, Marco Polo
Sound: English, Subtitles: traditional Chinese

マルコ・ポーロは、本当に中国へ行ったのか? 彼の旅行記は、そのすべてが彼自身の実体験なのか? それとも、伝聞や空想が入り混じっているのか? 肯定・否定双方の論者が、それぞれの立場を述べる。 National Geographic Television. JJames Barrat (director), Gavin MacFadyen (narrator)


  Map  
マルコ・ポーロの旅行の推定ルート
Estimated routes of Marco Polo's travels
Marco_polos_travels
Image source: The Great Explorers | Marco Polo
Saint Joseph's Convent of Mercy Primary School's Home Page


■日本語訳 Translations into Japanese

(J1) 月村+久保田 2002
 サパング(日本国)は東方の島で、大洋の中にある。大陸から1500マイル離れた大きな島で、住民は肌の色が白く礼儀正しい。また、偶像崇拝者である。島では金が見つかるので、彼らは限りなく金を所有している。しかし大陸からあまりに離れているので、この島に向かう商人はほとんどおらず、そのため法外の量の金で溢れている。


(J2) 谷 1991
 サパングは東の方、中国の大陸からおよそ千五百マイルの大洋のなかにある。この島は、とても大きな島である。住民は色白で、ほど良い背の高さである。彼らは自身の国王を持っており、他国の王に従属(じゅうぞく)していない。そこには莫大(ばくだい)な黄金があるが、国王はやすやす黄金を国外に持ち出すことをゆるさない。それゆえ、そこへはほとんど商人が行かないし、同じように他国の船もまれにしか行かない。

  • 1. 日本史に登場(とうじょう)してきたヨーロッパ人 黄金の国(ジパング)(日本)は、人喰(く)い人種の国? 谷真介(たに・しんすけ)=著 『外国人の見た信長・秀吉・家康〜日本にはいってきた南蛮文化〜』 ポプラ社教養文庫 15 ポプラ社 1991/04
  • この本は児童書。底本は不明。上の引用は原典からの直訳ではなさそうです。巻末の「参考文献」ページには、下掲・愛宕松男氏の東洋文庫版が挙げられています。

(J3) 愛宕 1971, 1984, etc.
 チパング〔日本国〕は、東のかた、大陸から千五百マイルの大洋中にある、とても大きな島である。住民は皮膚の色が白く礼節の正しい優雅な偶像教徒であって、独立国をなし、自己の国王をいただいている。この国ではいたる所に黄金が見つかるものだから、国人は誰でも莫大な黄金を所有している。この国へは大陸から誰も行った者がない。商人でさえ訪れないから、豊富なこの黄金はかつて一度も国外に持ち出されなかった。右のような莫大な黄金がその国に現存するのは、全くかかってこの理由による。


(J4) 青木(一)1960
 チパング(訳註 「日本」の中国音ジーペン・グオの訛り)は東の方、大陸から千五百マイルの公海中にある島である。しかも、まことに大きな島である。住民は色白で、慇懃、優雅な偶像教徒である。ここは独立国で、彼ら自身の君主をいただいて、どこの国の君主からも掣肘を受けていない。
 莫大な量の黄金があるが、この島では非常に豊かに産するのである。それに大陸からは、商人さえもこの島へこないので、黄金を国外に持ち出す者もいない。いま話したように、大量の黄金のあるのもそのためである。


(J5) 青木(富)1954, 1969, etc.
 チパングは東海にある大きな島で、大陸から二、四◯◯キロの距離にある。
 住民は色が白く、文化的で、物資にめぐまれている。偶像を崇拝し〔この場合は明らかに仏教である〕、どこにも属せず、独立している。黄金は無尽蔵にあるが、国王は輸出を禁じている。しかも大陸からは非常に遠いので、商人もこの国をあまりおとずれず、そのため黄金が想像できぬほど豊富なのだ。


(J6) 佐伯 1945
 日本國(ジパング)(日本國(ニツポンコク)の訛)は支那大陸の東一千五百哩の大海に在る頗る大なる島國である。その住民は白皙で人智大いに開け天惠を蒙ること多大である。住民は佛教に歸依して居れども全く自主自立にして他國に服從するところがない。この國に無限無量の黄金がある。その理由はこの島國には黄金を産出すれども國王、君主は之を國外に輸出することを許さないのみならず、大陸より遠く距たれたるを以つて外國の商人もこの島國に到るものが無いから、黄金は無限に蓄積せらるるのみであるからである。

  • 佐伯好郎(さえき・よしろう)=著 『マルコ・ポウロの『東方見聞録』』 清明文庫 春秋社 1945
  • 同書から、著者・佐伯氏による抄譯と思われる箇所を引用しました。

(J7) 生方 1914
 ジパングは大陸即ちマンジの海岸から凡そ千五百哩の距離に在る、東の大洋の中の一つの島である。それは非常に形が大きく、其住民は容貌美しく生活状態は開化してゐる。彼等の宗教は偶像崇拝である。彼等は總ての外國の勢力より獨立し、彼等自身の王達にのみ支配されてゐる。彼等は黄金を非常に多量に持つ。其源泉は不盡藏である。けれども、王はそれを輸出することを許さないから、商人の其國を訪れる者なく、他の地方から多くの船が來ることもない。此事情の爲めに、皇室の非常なる富は出來たのであるといふことを、其處へ行つたことのある人々から我々は聞いてゐる。


■ロシア語訳 Translation into Russian

  Остров Чипунгу на востоке, в открытом море;  до него от материка тысяча пятьсот миль.
  Остров очень велик: жители белы, красивы и учтивы; они идолопоклонники, независимы,  никому не подчиняются. Золота, скажу вам, у них великое обилие: чрезвычайно много его тут, и не  вывозят его отсюда: с материка ни купцы, да и  никто не  приходит сюда, оттого-то золота у них, как я вам говорил, очень много.

  • Глава CLIX. Марко Поло. Книга о разнообразии мира. Перевод И. П. Минаева
  • E-text at Lib.Ru

■英訳 Translation into English

  Chipangu is an Island towards the east in the high seas, 1500 miles distant from the Continent; and a very great Island it is.
  The people are white, civilized, and well-favoured. They are Idolaters, and are dependent on nobody. And I can tell you the quantity of gold they have is endless; for they find it in their own Islands, [and the King does not allow it to be exported. Moreover] few merchants visit the country because it is so far from the main land, and thus it comes to pass that their gold is abundant beyond all measure.


■スペイン語訳 Translation into Spanish

Cipango es una isla a Levante que está a 1500 millas de tierra, en alta mar. Es una isla muy grande. Los indígenas son blancos, de buenas maneras y hermosos. Son idólatras y libres, y no están bajo el poder de nadie.

Tienen oro en abundancia, pero nadie lo explota, porque no hay mercader ni extranjero que haya llegado al interior de la isla. El señor de la isla posee un maravilloso palacio recubierto de oro por el interior y el exterior. Tienen perlas en abundancia de un oriente rosa. Es una isla muy rica, cuya riqueza es incalculable.


■イタリア語訳 Translation into Italian

Zipangu è una isola in levante, ch’è ne l’alto mare 1.500 miglia. L’isola è molto grande. Le gente sono bianche, di bella maniera e elli. La gent’è idola, e no ricevono signoria da niuno se no da lor medesimi.

Qui si truova l’oro, però n’ànno assai; neuno uomo no vi va, però neuno mercatante non ne leva: però n’ànno cotanto. Lo palagio del signore de l’isola è molto grande, ed è coperto d’oro come si cuoprono di quae di piombo le chiese. E tutto lo spazzo de le camere è coperto d’oro grosso ben due dita, e tutte le finestre e mura e ogne cosa e anche le sale: no si potrebbe dire la sua valuta.


■現代フランス語訳 Translation into modern French

L’île de Zipangu, qui est située dans la haute mer, est éloignée du rivage de Mangi de quinze cents milles ; elle est fort grande ; ses habitants sont blancs et bien faits ; ils sont idolâtres et ont un roi qui est indépendant de tout autre. Il y a dans cette île de l’or en très grande abondance ; mais le roi ne permet que fort difficilement qu’on en transporte hors de l’île. C’est pourquoi aussi il n’y a guère de marchands qui aillent négocier dans cette île. Le roi a un palais magnifique, dont la couverture est de lames d’or pur, de même que chez nous les grandes maisons le sont de plomb ou de cuivre. Les cours et les chambres sont aussi couvertes de ce précieux métal. On trouve en ce pays-là des perles en abondance, rondes, grosses, et de couleur rouge, qui sont bien plus estimées que les blanches. Il y a aussi d’autres pierres précieuses, lesquelles, jointes à la grande quantité d’or qu’il y a dans cette île, la rendent très riche.


 Gallery 
フランス国立図書館所蔵 マルコ・ポーロ 東方見聞録 『驚異の書』
Le Devisement du Monde ou Le Livre des Merveilles

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Bnf_marco_polo_le_livre_des_merve_2

上の右ページの詳細 Details of the right page above
Bnf_marco_polo_le_livre_des_merve_3
第72葉 モンゴル軍がジパング(日本)制服に失敗する。
Fol. 72 : Les Mongols echouent a conquerir Sapangu [Japon]
Image source: Bibliothèque nationale de France (BnF) - Livres à feuilleter


■古フランス語原文 The original text in Old French

L’Isle de Zipangri est fort spacieuse, & de grande estendue, située en la haulte mer, a distance des havres de la province de Mangi de cinq cens lieues ou environ. Les habitans d’icelle sont blancz & d’assez belle stature, addonnez au service des idoles : ilz recongnoissent un Roy seul & particulier en leur pays, & ne sont a aucun autre tributaires. En ceste isle y à de l’or en grande abondance, toutesfois le Roy ne le permet facilement transporter hors du pays : ce qui est cause que bien peu de marchandz frequentent & traffiquent en ceste province. Le Roy à un palays sumptueux & magnifique duquel la couverture est entierement de lames d’or, tout ainsi que pardeça les grandes maisons seigneurialles sont couvertes de plomb ou de cuyvre. Semblablement les planchers des salles & chambres de ce palays sont lambrissez & couvertz de lames d’or (comme lon dict.) On trouve en ceste isle grande quantité de perles fort excellentes & singulieres, tant en grosseur que rotondité, & sont de couleur rouge, qui sont en plus grand pris, estime & valeur sans comparaison, que ne sont les blanches. Et oultre y à plusieurs pierres precieuses, lesquelles avec l’abondance de l’or rendent l’isle sur tout riche & opulente.

  • Troisiesme livre de Marc Paule Venetien, des regions de l’Inde Orientale. De l’isle de Zipangri. Chapitre II. Marco Polo - Le Devisement du monde Edition de E. Groulleau, 1556
  • E-text at Wikisource

■更新履歴 Change log

  • 2013/11/19 目次を新設しました。
  • 2012/12/02 谷真介=著 1991/04 とロシア語訳を追加しました。
  • 2012/10/28 スペイン語訳を追加しました。
  • 2012/10/27 イタリア語訳を追加しました。
  • 2012/06/11 古フランス語原文の文中に不必要なリンク表示が紛れ込んでいたのを削除しました。
  • 2011/08/22 現代フランス語訳と古フランス語原文を追加しました。また、書誌情報を補足・修正しました。さらに、フランス国立図書館所蔵マルコ・ポーロ 東方見聞録『驚異の書』の画像も追加しました。
  • 2011/03/11 「はじめに」の項とシルクロードの YouTube 動画を追加しました。
  • 2006/08/10 青木富太郎=訳 の現代教養文庫版、および電子書籍版についての情報を追加しました。
  • 2006/06/07 月村辰雄+久保田勝一=訳 2002、青木一夫=訳 1960、青木富太郎=訳 1954、佐伯好郎=譯(推定)1945、および生方敏郎=譯 1914 を追加しました。

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Saturday, 06 May 2006

The Celebrated Jumping Frog of Calaveras County by Mark Twain マーク・トウェイン 「その名も高きキャラヴェラス郡の跳び蛙」

        目次 Table of Contents

■はじめに Introduction
 Video 1  マーク・トゥエインの大冒険 (1986) The Adventures of Mark Twain (1986)
■中国語訳(簡体字)Translation into simplified Chinese
■中國語譯(繁體字)Translation into traditional Chinese
■邦訳リスト(未完) Incomplete list of Japanese translations
■日本語訳 Translations into Japanese
  (J1) 柴田 2010, 2013, etc.
  (J2) 勝浦 1993
  (J3) 野崎 1988
  (J4) 大久保 1985
  (J5) 浅倉 1984
  (J6) 須山 1980, 2007
  (J7) 三浦 1979
  (J8) 坂下 1977
  (J9) 井上 1968, 1986
  (J10) 大橋 1961, 1976
  (J11) 古沢 1961
  (J12) 上野 1960
  (J13) 鍋島 1959, 1976
  (J14) 杉木 1932
  (J15) 梅田=編 1928
  (J16) 柳田 1926
  (J17) 佐々木 1912, 1929, etc.
  Image   イラストレーション Illustration
■ロシア語訳 Translation into Russian
■ドイツ語訳 Translation into German
■ポルトガル語訳 Translation into Portuguese
■スペイン語訳 Translations into Spanish
  (Es1) Calvo, 2002
  (Es2)
■フランス語訳 Translations into French
  (F1) 1867 (from the English edition of 1865)
  (F2) de Lautrec, 1865
 Audio 1  朗読 Audiobook in English 1
 Audio 2  朗読 Audiobook in English 2. Read by Kara Shallenberg (LibriVox)
 Video 2  ビデオブック Videobook in English with Shep O'Neal
■英語原文 The original text in English
■出版履歴、題・版の異同 Publication history and alternate titles and editions
■邦題の異同 Variations of the title translated into Japanese
 Video 3  マーク・トウェイン (2001) TV documentary Mark Twain (2001)
■外部リンク External links
■更新履歴 Change log


■はじめに Introduction

短篇「その名も高きキャラヴェラス郡の跳び蛙」はマーク・トゥエインの作家としての最初の大ヒット作。彼はこの作品で全米に知られるようになった。


 Video 1 
ウィル・ヴィントン監督によるクレイ・アニメ
マーク・トゥエインの大冒険/トム・ソーヤーとハックルベリーの不思議な旅 (1986)
The Adventures of Mark Twain (1986) directed by Will Vinton


■中国語訳(簡体字)Translation into simplified Chinese

(……)别的不说,要比谁最古怪,他算得上天下第一。只要能找到一个人愿打赌,他就赔,碰上什么就赌什么。别人要是不愿赌黑,他就赔黑;别人不愿赌白,他就赌白。不管怎么样,别人想怎么赌,他都陪着——不管怎么样,只要能赌得起来,他就舒服了。(……)赛的要是马,收场的时候他不是赢得满满当当,就是输得一干二净;如果斗的是狗,他赌;斗的是猫,他赌;斗的是鸡,他还赌;嘿,就算有两只鸟落在篱笆上,他也要跟你赌哪一只先飞(……)

   《卡县名蛙》 作者:马克·吐温
   E-text at 天涯在线书库 (www.tianyabook.com)


■中國語譯(繁體字)Translation into traditional Chinese

(……)別的不說,要比誰最古怪,他算得上天下第一。只要能找到一個人愿打賭,他就賠,碰上什么就賭什么。別人要是不愿賭黑,他就賠黑;別人不愿賭白,他就賭白。不管怎么樣,別人想怎么賭,他都陪著——不管怎么樣,只要能賭得起來,他就舒服了。(……)賽的要是馬,收場的時候他不是贏得滿滿當當,就是輸得一干二淨;如果斗的是狗,他賭;斗的是貓,他賭;斗的是雞,他還賭;嘿,就算有兩只鳥落在篱笆上,他也要跟你賭哪一只先飛(……)

   《卡縣名蛙》 作者:馬克·吐溫
   E-text at 龍騰世紀 (millionbook.net)


国立国会図書館 NDL-OPAC 等による邦訳リスト(未完)
 Incomplete list of Japanese translations according to the
 National Diet Library NDL-OPAC, etc.

以下のリストは「タイトル:蛙、著者:トウェイン」などで検索した結果です。出版年順の新→旧。邦題の異同、表記のゆれなどのため、完全に網羅的な検索には、なっていません。★の付いたタイトルは、下に訳文の抜粋を紹介したものです。
Excerpt from the title with a star (★) is shown below.

  1.     ジム・スマイリーの跳び蛙 / 柴田元幸. -- 2014. -- (新潮文庫)
★ 2.     アメリカンマスターピース 古典篇 -- スイッチ・パブリッシング, 2013.10.
  3.     モンキービジネス / 柴田元幸. -- ヴィレッジブックス, 2010.7.
      -- (vol.10 アメリカ号)
★ 4.     パックンマックンが選ぶ旅と冒険の話集 / パックンマックン.
      -- 学習研究社, 2007.2. -- (中学生のためのショート・ストーリーズ ; 2)
★ 5.     明治翻訳文学全集. 新聞雑誌編 20 / 川戸道昭,榊原貴教.
      -- 大空社, 1996.10
  6.     クイーンの定員. 1 / エラリー・クイーン[他]. -- 1992.3. -- (光文社文庫)
★ 7.     ちくま文学の森. 10 / 安野光雅. -- 筑摩書房, 1988.7
★ 8.     新選マーク・トウェイン傑作集 / 大久保博. -- 1985.1. -- (旺文社文庫)
★ 9.     クイーンの定員. 1 / エラリー・クイーン[他]. -- 光文社, 1984.5
★10.     バック・ファンショーの葬式 / マーク・トウェイン[他]. -- 1977.6. -- (岩波文庫)
★11.     マーク・トウェーン短篇全集. 第1巻 / 鍋島能弘. -- 出版協同社, 1976.5
★12.     世界文学全集. 第25. -- 筑摩書房, 1968
★13.     マーク・トウエン短編集 / 古沢安二郎. -- 1961. -- (新潮文庫)
★14.     キャラヴェラス郡の名高き跳び蛙・怪物 / マーク・トウェイン,
      スティーヴン・クレイン[他]. -- 南雲堂, 1960. -- (双書・20世紀の珠玉)
★15.     マーク・トウェーン短篇全集. 第1巻. -- 鏡浦書房, 1959
★16.     ユーモア・小説集 / Mark Twain[他]. -- 春陽堂, 1932.10.(昭和7)
      -- (英學生文庫 ; 第16卷)
★17.     諧謔文學 外國後篇 / マーク・トウェイン[他]. -- 文敎書院, 1928.8.(昭和3)
★18.     世界短篇小説大系. 亞米利加篇 / 近代社. -- 近代社, 1926(大正15)


■日本語訳 Translations into Japanese

(J1) 柴田 2010, 2013, etc.
……けど何にせよあんなに変わった男はおらんかったな、何せ賭けの種と見ればとにかく何にでも相手を探すんだ、で、誰も賭けないと見ると、じゃあ俺がそっちに賭けるからあんたこっちに賭けないか、あんたがよければ俺もそれでいいから、なんて言って、とにかく賭けさえできりゃ満足なわけさ。(中略)競馬をやってたら、レースが終わったときにはたんまり儲けてるか文なしになってるか。闘犬やってりゃ犬に賭ける。闘猫(とうびょう)やってりゃ猫に賭ける。闘鶏やってりゃ鶏に賭ける。何しろ柵に鳥が二羽とまってたって、どっちが先に飛び立つか賭けようぜって言ってくるし……

   マーク・トウェイン=著 柴田元幸(しばた・もとゆき)=訳
   「ジム・スマイリーと彼の跳び蛙」
   1a. 柴田元幸=訳 『ジム・スマイリーの跳び蛙 マーク・トウェイン傑作選
      名作新訳コレクション  新潮文庫 2014/09/01
   1b. 柴田元幸=編訳 『アメリカンマスターピース 古典篇』 柴田元幸翻訳叢書
      スイッチ・パブリッシング 2013/10/19
   1c. 柴田元幸=責任編集 『モンキービジネス 2010 Summer vol.10
      ヴィレッジブックス 2010/07/20 所収
   1b.1c. に加筆・訂正を施したもの。1a. はさらに修正を加え、1b. 1c.
   異なり、題を「ジム・スマイリーの跳び蛙」に変更したもの。引用は 1b.
   拠りました。


(J2) 勝浦 1993
……奴は賭けの相手さえいれば、見るもの何でも必ず賭(か)けをせずにはおれん、全くもって妙な性分の男よ。相手が自分と同(おんな)じ丁(#「丁」に傍点)じゃ賭けにならんから、その時は自分は半(#「半」に傍点)に回る。とにかく、相手が満足なら、自分は(#「自分は」に傍点)どっちでもいいってわけだ。(中略)競馬でもありゃ、終り時分には、札ビラを切ってるか、文なしになってるかの、どっちかだ。闘犬があるっていうと、それに賭ける。ネコの喧嘩がありゃ賭ける。闘鶏にも賭ける。さらにだよ、塀に小鳥が止まってると、どっちが先に飛び立つかってんで賭ける。……

   マーク・トウェイン=著 勝浦吉雄=訳
   「キャラヴェラス郡の跳び蛙が評判になる」
   『マーク・トウェイン短編全集(上)』 文化書房博文社 1993/11 所収


(J3) 野崎 1988
……賭(か)けの相手が見つかりさえすれば、手当り次第になんにでも賭けるんだよ。相手がいやだといえば、じゃ逆のほうへ賭けろという。どっちだって、相手の気に入りさえすれば、それで自分も異存はねえ——とにかく、賭けになりさえすれば、それでやっこさんは満足なんだな。(中略)競馬でもあれば、やっこさん、にわかに大尽(だいじん)になったり、おしまいにすってんてんになってみたり。犬の喧嘩(けんか)があるといっては賭け、猫(ねこ)の喧嘩があるといっては賭け、鶏(にわとり)の喧嘩があるといっては賭け、それどころか、おまえさん、鳥が二羽、柵(さく)の上にとまっているとするだろう、そうするてえと、やっこさん、どっちの鳥が先に飛び立つかで賭けをやるんだ。……

   マーク・トウェイン=著 野崎孝=訳
   「その名も高きキャラヴェラス郡の跳び蛙」
   安野光雅[ほか]=編 『ちくま文学の森10 賭けと人生
   筑摩書房 1988/07 所収


(J4) 大久保 1985
……とにかく実に奇妙な男でな、いつも手あたり次第、なんにでも賭けておった。誰かをつかまえて、反対の側に賭けさせることができれば、すぐに賭けておった。そして相手がそっちの側じゃいやだと言えば、そんならオレがそっちへ回ろうってんで、——とにかく相手が自分の気に入る方に賭けさえしてくれりゃあ、それでいいんだ。——どっちだって相手が賭けてくれりゃあ、奴(やっこ)さん満足しておった。(中略)競馬がありゃあ、また賭ける。その終わったときの奴は、ガッポリかスッテンテンかのどちらかだった。犬のケンカがありゃああったでまた賭ける。ネコのケンカでも賭ける。ヒヨコのケンカだって賭けるんだ。それどころか、小鳥が二羽、柵の上にとまっていりゃあ、そのどっちが先に飛ぶかで賭けてくるんだ。……

   大久保博=編訳 「ジム・スマイリーと彼のだいじな跳び蛙」
   『新選マーク・トウェイン傑作集』 旺文社文庫 1985/01 所収


(J5) 浅倉 1984
……これが世にもふしぎな野郎で、見るもの、見るもの、手当たりしだい金を賭けなきゃおさまらんたちなんよ、賭けに応じる相手がいればよし、いねえとなりゃ自分が反対側に張ろうと言い出す。とにかく、相手が好きなほうに賭けてくれりゃそれで結構——賭けができるだけでこっちは満足だとな。(中略)競馬がありゃ、やつは最後の最後まで張って、お大尽になるか、すってんてんになる。闘犬がありゃ、それに賭ける。闘鶏がありゃ、それに賭ける。闘ネコがありゃ、それに賭ける。なあに、鳥が二羽柵にとまっているのを見てもよ、どっちが先に飛ぶか賭けようとおいでなさる。……

   マーク・トウェイン=著 浅倉久志=訳
   「世にも名高いキャラヴェラス郡の跳び蛙」
   エラリー・クイーン=原編 各務三郎=編
   『クイーンの定員1』 光文社 1984/05 所収
 
   原書:
   Queen's Quorum: A History of the Detective Crime Short Story
   As Revealed in the 106 Most Important Books
   Published in This Field Since 1845,
   Edited by Ellery Queen.
   Hardcover: Biblo-Moser (1969)


(J6) 須山 1980, 2007
……やつはこのあたりじゃいちばん風変わりな男で、賭けをする相手がいさえすれば、どんな物が出てこようと、それで賭けをするんだ。もし相手がなければ、一人二役で敵味方になる。とにかくどんなやりかたでも相手がこれでいいと言えば、やつはそれでいいんだな——とにかく、賭けができさえすれば、やつ(#原文は太字でなく傍点)は満足している。(中略)競馬があれば、終わったころには、やつは大金持ちになっているか、さもなけりゃすっからかんになっている。闘犬があれば、やつはそれに賭ける。闘猫があればそれに賭ける。闘鶏があればそれに賭ける。いやはや、柵に鳥が二羽とまっていりゃ、どっちが先に飛び立つかと言って賭ける。……

   マーク・トウェイン=作 須山静夫(すやま・しずお)=訳
   「キャラヴェラス郡の有名な跳び蛙」
   6a. パックンマックン=選 『パックンマックンが選ぶ旅と冒険の話集
      中学生のためのショート・ストーリーズ2(全8巻)
      学習研究社 2007/02 所収
   6b. マーク・トウェイン=著 マックスウェル・ガイスマー=編
      ジャン-クロード・スワレス=絵
      『マーク・トウェイン動物園』 晶文社 1980/05 所収

   原書:
   The Higher Animals: A Mark Twain Bestiary
   edited by Maxwell Geismar, with drawings by Jean-Claude Suares
   Hardcover: Crowell (1976)


(J7) 三浦 1979
……あんな奇妙な男っていないよ。手近に相手さえいれば目の前のものは何でも賭けの種にしてしまうんだから。相手がどちらに賭けようとも、あいつは反対に賭ける奴だった。とにかく相手がやると言えば必ず受けてたつ。賭けさえできれば満足なんだから。(中略)競馬に行けば凄く勝つか文無しになるか。犬がけんかをすればそれに賭ける。猫がけんかをすればそれに賭ける。鶏がけんかをすればそれも賭ける。垣根に鳥が二羽いれば、どちらが先に飛ぶかでそれに賭ける。……

   マーク・トウェイン=著 三浦朱門=訳
   「キャラベラス郡の有名な跳ぶカエル」
   『世界文学全集2 マーク・トウェイン』(全50巻)
   学習研究社 1979/01 所収


(J8) 坂下 1977
……世にも不思議な野郎もいたもんで、物を見りゃ、手当たりしだいに賭(か)けたがるって癖があったもんよ。誰でもいいから、さし(#「さし」に傍点)でくる相手がいればそれでいいんだし、さし(#「さし」に傍点)でくる相手がいないんなら、手前がそっちに回ってでも賭けようというんだからな。相手がそっちで気がすむんなら、どっちだろうが、おれ(#「おれ」に傍点)はそれで気がすむのよ——どっちだろうが、いっちょ賭けができるってんなら、おれは(#「おれ」に傍点)それで満足よ、とそういうんだな。(中略)もしも競馬があるならば、きてみなよ。野郎は『フラッシュ』で大山(おおやま)を当てるか、どんづまりには、すってんてんになってるかのだっちかよ。もしも犬の喧嘩がありゃ賭ける。もしも猫が喧嘩をしてりゃ、また賭ける。軍鶏(しゃも)の喧嘩がありゃ、また賭ける。なあに、鳥が二羽、柵に棲(と)まってたって、どっちが先に飛び立つか、賭けてみねえかとくるんだからよ。……

   マーク・トウェイン=作 坂下昇=訳
   「その名も高きキャラヴェーラス郡の跳び蛙」
   『バック・ファンショーの葬式 他十三篇』 岩波文庫 1977/06 所収


(J9) 井上 1968, 1986
……いつでもなんでも賭けのたねにしちまう、世にも珍らしい男じゃった。反対に賭ける相手さえいればな。相手が反対に賭けねば、おのれが反対のほうに変るというくらいじゃ。どんな賭けじゃろうと、相手さえいれば、賭けるんじゃ。なんでもいいから、賭けにさえなれば満足なんじゃな。(中略)競馬があれば、あとでかならずあの男の、大もうけしとるとこか、すってんてんになったところが見られたじゃろう。犬の喧嘩がありゃ、それに賭けるし、猫の喧嘩があれば、それも賭け、鶏の喧嘩があれば、それも賭けじゃ。そうそう、垣根に小鳥が二羽とまってたら、あの男はどっちが先に飛び立つかというて、賭けにしたろ。……

   井上一夫(いのうえ・かずお)=訳 「その名も高きジャンプがえる」
   9a. 井上一夫=編訳 『アメリカほら話』 ちくま文庫 1986/07 所収
   9b. 井上一夫=編訳 『アメリカほら話』 筑摩書房 1968/08 所収


(J10) 大橋 1961, 1976
……この男は、このあたりでいちばんおかしなやろうでな、だれでも賭けの相手になる人間がいさえすれば、なんでも目についたもんで、しょっちゅう賭けごとをしおったもんじゃ。なに、相手側に賭ける人間がいなきゃ、賭ける側を交換しおったもんじゃよ。相手がよしといいさえすれば自分もええ——どんなあんばいでも、賭けごとができさすりゃ、やつのほうは(#「やつのほうは」に傍点)満足じゃといったありさまでな。(中略)競馬がありゃァ、しこたま儲けるか、それとも最後には一文なしになっちまう、闘犬がありゃァそれに賭ける、猫の喧嘩がありゃァそれに賭ける、闘鶏がありゃアまたそれに賭ける。いや、二羽の小鳥が柵にとまってりゃ、どっちが先に飛びたつかで賭けるし、……

   10a. マーク・トゥエーン=著 大橋健三郎=訳
      「キャラヴェラス郡の有名な跳びがえる」
      大橋健三郎=編 『アメリカ短篇名作集
      学生社 1961/09 所収
   10b. マーク・トウェーン=著 大橋健三郎=訳
      「キャラヴェラス郡の有名な跳びがえる」
      『豪華版 世界文学全集19 マーク・トウェーン』 講談社 1976/10
      に再録。
   10a.10b. とでは、たとえば下のように細部が異なります。
             10a.    10b.
           相手側 → 反対側
       競馬がありゃァ → 競馬がありゃア
         トゥエーン → トウェーン


(J11) 古沢 1961
……その男は実に妙な男で、賭けの相手さえあれば、いつだって目についたものは何にでも賭けないではいられない男で、相手が反対側に賭けるのがいやだと言えば、必ず自分がそのほうにまわるという具合で、とにかく相手さえ気に入ってくれれば、自分はどちらに賭けても構わない——つまり、賭けさえやっていれば満足しているという男だったよ。(中略)もし競馬があれば、終わると金をうんとポケットに入れたあいつか、さもなければ一文なしになっているあいつの姿を人は見かけるだろう。犬の喧嘩があれば、あいつはそれに賭けるし、猫の喧嘩があれば、それにも賭けるし、鶏の喧嘩があれば、それにも賭けるといった具合で、いや、それどころか、垣根の上に小鳥が二羽とまっていれば、どっちが先に飛び立つかということまで誰かと賭けをするんだ。……

   マーク・トウェイン=著 古沢安二郎=訳
   「噂になったキャラベラス郡の跳ぶ蛙」
   『マーク・トウェイン短編集』 新潮文庫 1961/01 所収


(J12) 上野 1960
……飛び切り妙な奴で、誰でも相手側に廻せさえすりゃ、何でも見る物を材料にして賭ける。出来ねえと、立場を変えてやる。相手方に都合が良けりゃ、自分の方も都合が良い——どんなにしても賭さえ出来りゃ、満足しとりました。(中略)競馬でもありゃ、それが終る頃にゃ、たんまり金を儲けておるか、一文なしになっておるか、どちらかなんで。犬の喧嘩があっても、それに賭ける、猫の喧嘩があっても、鶏の突合いがあっても、それぞれに賭ける。それどころか、垣根に小鳥が二羽とまっていても、どっちが先に飛び立つか賭ける。……

   マーク・トウェイン=著 上野直蔵(うえの・なおぞう)=訳
   「キャラヴェラス郡の名高き跳び蛙」
   マーク・トウェイン、スティーヴン・クレイン=著
   『キャラヴェラス郡の名高き跳び蛙・怪物
   双書・20世紀の珠玉19 南雲堂 1960/05 所収


(J13) 鍋島 1959, 1976
……奴は賭けの相手がいさえすりゃ、見るもの何にでも、きっと賭けをせずにはいられん性分の男じゃ。もし相手が出なけりゃ、立場を取っかえるんだ。相手にさえ気に入りゃ、自分は(#「自分は」に傍点)どちらの方でもいいってわけさ。——何でも賭けさえやれりゃ、やっこさん(#「やっこさん」に傍点)満足してたよ。(中略)競馬がありゃ、金持になるか、一文なしになるかどっちかだ。犬のけんかがありゃ、金を賭けるだろうし、猫のけんかがあればそれにも賭ける。ひよこのけんかがあっても、金を賭ける。鳥が二羽塀にとまっていれば、どっちが先に飛んでくかと賭けをやる。……

   13a. マーク・トウェーン=著 鍋島能弘(なべしま・のりひろ)=訳
      「キャラヴェラス郡の跳び蛙が評判になる話」
      『マーク・トウェーン短篇全集1』 出版協同社 1976/05 所収
   13b. マーク・トウェーン=著 鍋島能弘=訳
      「キャラヴェラス郡の蛙が跳びはねて評判になる」
      『マーク・トウェーン短篇全集 第1巻』 鏡浦書房 1959/05 所収


(J14) 杉木 1932
……一風變つた奴さんで、もし何でも其處いらに物があると、どんな物にでも賭ける。又、もしさういふ相手のない場合は自分が相手と變りもしたでせう。兎に角どつちでもこつちでもよかつたんですよ——いづれにせよ、賭事に浮身をやつしてゐれば、奴さん、それで天下泰平といふ譯でしたね。(中略)競馬でもあらうものなら、奴さん、終り時分には、きつと紙幣びらを切つてゐるか、一文なしになつてゐるかしてゐますよ。又、鬪犬があつたつて、奴さんはいつも賭ける。猫の喧嘩にだつて賭ける。鷄の蹴合ひにも賭けるといつた風です。まだまだ、垣根の上に鳥が二羽とまつてゐてさへ、どつちが先に飛び出すかつて賭けをする。……

   Mark Twain 著 杉木喬(すぎき・たかし)=譯註 「跳ねる蛙」
   『ユーモア・小説集』 英學生文庫 第16卷
   春陽堂 1932/10(昭和7)所収
   (奥付の譯註者表示は、末弘淺次郎)


(J15) 梅田=編 1928
だが、それにしても奴はとんでもない變りものでしたな。誰でも相手さへできりやあ、見るもの聞くもの何にだつて賭(かけ)をするんでさ。相手も自分も同じ丁(てう)で、それよかほかに仕方がないやうな賭にでも、奴はそれぢや俺は半(はん)だと出ると云つた工合で、どちら側から賭けようが苦情はない、とに角、賭けさへすれば大恐悅でしたよ。(中略)競馬があつたとなると、奴は紙幣(さつ)びらを切つてゐるか、それとも一文なしになつてゐる。鬪犬があれば、それに賭ける。猫の喧嘩にでも、鷄の蹴合(けあ)ひにでもかける。はては、垣根に鳥が二羽とまつてゐりや、おい君、ありやどちらが先に飛ぶだらう賭けをしようとやる。……

   マーク・トウェイン=著 二、ユーモラスな話五篇 「蛙の賭(かけ)ごと」
   梅田寛=編 『諧謔文學 外國後篇』 名作物語
   文敎書院 1928/08/01(昭和3)所収
   半・情の旧字は新字で置き換えました。


(J16) 柳田 1926
……此の男程何時も何時も賭け物の好きな男といつちやなかつたものさ、誰か相手方に立つて賭けてくれる人間さへあれば、何とはなしに眼の前に見える何んな品物にでも賭けるのだ、若し相手に自分と反對に賭けさせることが出來ないやうな場合が出來ると、自分が買つて出てその反對に賭けるといふ程だつた。兎にかく、相手がいゝといふものなら、自分でもいゝ、——何でもいゝ、たゞさうして賭けをしさへすれば、彼の方ぢやそれで滿足なんだ。(中略)競馬がある、と、すぐ彼の赤い顏して跳び出す姿が見える、或は端の方に身體を半分乘出してゐる姿が見える、犬の喧嘩がある、と、彼はすぐそれに賭けようといふ、猫の喧嘩がある、と、彼はすぐにそれに賭けようといふ、鷄の蹴合ひがある、と、彼はそれに賭けようといふ。それどころぢやない、垣根に小鳥が二羽とまつてゐる。と、何方が先にとぶか、それに賭けようといふ……

   マーク・トウエイン=作 柳田泉=譯 「名物跳び蛙」
   16a. 国立国会図書館マイクロフィッシュ YD5-H-520-45
   16b.世界短篇小説大系 亞米利加篇
      近代社(非賣品)1926/05(大正15)所収 この本の内容詳細は ここ
   引用は 16b. に拠りました。かなり傷んだ状態であるにもかかわらず、
   寛大にも、この本を貸し出してくださった、K県立図書館の皆さん、
   ならびに、いつもながら、取り寄せの労をとってくださった府立図書
   館の皆さんにお礼申し上げます。


(J17) 佐々木 1912, 1929, etc.

[a. 原文からルビを取り除いたもの]
……大將餘つ程變つてゐましたぜ。向ふへ廻つて相手になる者があれば何にでも賭をする。否、相手が進まない顏をすれば、此方が其方になつても宜いからやらうといふ調子でね。全く奴さんは何方へ廻つても苦情はない——兎に角賭さえ出來れば氣が済むのでした。(中略)一競馬あつた後は奴さんは紙幣びらを切つてゐるか、さもなければ一文なしになつてゐる。犬の噛合があれば賭ける。猫の喧嘩にも鷄の蹴合にも賭ける。其どころか鳥が二羽垣根に止つてゐれば、君、何方が先に飛ぶだらうか賭をしようと言ふ。……

[b. 原文 - 総ルビ]
……大將(たいしやう)餘(よ)つ程(ぽど)變(かは)つてゐましたぜ。向(むか)ふへ廻(まは)つて相手(あひて)になる者(もの)があれば何(なん)にでも賭(かけ)をする。否(いや)、相手(あひて)が進(すゝ)まない顏(かほ)をすれば、此方(こつち)が其方(そつち)になつても宜(い)いからやらうといふ調子(てうし)でね。全(まつた)く奴(やつこ)さんは何方(どつち)へ廻(まは)つても苦情(くじやう)はない——兎(と)に角(かく)賭(かけ)さえ出來(でき)れば氣(き)が済(す)むのでした。(中略)一競馬(けいば)あつた後(あと)は奴(やつこ)さんは紙幣(さつ)びらを切(き)つてゐるか、さもなければ一文(もん)なしになつてゐる。犬(いぬ)の噛合(かみあひ)があれば賭(か)ける。猫(ねこ)の喧嘩(けんくわ)にも鷄(とり)の蹴合(けあひ)にも賭(か)ける。其(それ)どころか鳥(とり)が二羽(は)垣根(かきね)に止(とま)つてゐれば、君(きみ)、何方(どつち)が先(さき)に飛(と)ぶだらうか賭(かけ)をしようと言(い)ふ。……

   17a. マーク、トウエーン=作 佐々木邦(ささき・くに)=訳
      「賭け蛙(かけかはづ)」
      川戸道昭+榊原貴教=編 ナダ出版センター=制作
      『明治翻訳文学全集 新聞雑誌編20 マーク・トウェイン集
      (全50巻・別巻2)大空社 1996/10 所収
   17b. マーク・トウヱーン=作 佐々木邦=訳 「跳ね蛙」
      『世界大衆文學全集10 マーク・トウヱーン名作集
      改造社 1929/03(昭和4)所収
   17c. マーク、トウエーン=作 佐々木邦=訳 「賭け蛙」
      『文芸倶楽部』1912/06(明治45)収載
   17a.17c. を複製したもの。初出誌は 17c.


  Image  
イラストレーション Illustration
Jumping_frog
Image source: "The Celebrated Jumping Frog of Calaveras by Mark Twain"
Frog Postcards From Different Places II


■ロシア語訳 Translation into Russian

[Omission] чудак он был порядочный: вечно держал пари по поводу всего, что ни попадется на глаза, лишь бы нашелся охотник поспорить с ним, а если не находился, он сам держал против. На что угодно, лишь бы другой согласился держать пари, а за ним дело не станет; все что угодно, лишь бы держать пари, он на все согласен. [Omission] Идут конские скачки - он, в конце концов, либо загребет хорошие денежки, либо проиграется в пух и прах; собаки дерутся - он держит пари; кошки дерутся - он держит пари; петухи дерутся - он держит пари; да чего там, сядут две птицы на забор - он и тут держит пари: которая улетит раньше; [Omission].

   Марк Твен - Знаменитая скачущая лягушка из Калавераса
   E-text at Cеверная Америка


■ドイツ語訳 Translation into German

[Omission] Aber wie dem auch sei, das war der merkwürdigste Kerl in der Gegend, da er ständig auf irgend etwas, das ihm gerade über den Weg lief, eine Wette abschloß, wenn er jemand finden konnte, der dagegen hielt ; und wenn er keinen fand, wechselte er die Seite. Was immer dem anderen recht war, war ihm recht - wenn er nur zu einer Wette kam, ganz gleich wie, war er zufrieden. [Omission] Wenn ein Pferderennen stattfand, schwamm er am Ende in Geld, oder er war pleite ; gab´s einen Hundekampf, Wettete er ; gab´s einen Katzenkampf, wettete er ; gab´s einen Hahnenkampf, wettete er ; na, wenn da zwei Vögel auf einem Zaun saßen, wettete er, welcher zuerst auffliegen würde ; [Omission]

   Der Springfrosch von Calaveras by Mark Twain
   E-text at kreklau.de


■ポルトガル語訳 Translation into Portuguese

[Omission] o fato é que ele era o homem mais notável que se pode imaginar. A propósito de qualquer coisa, estava sempre disposto a fazer uma aposta. Era a sua mania. Se não podia levar o adversário para o lado contrário, mudava de opinião. O que ele queria era apostar. [Omission] Se se tratava de uma corrida de cavalos o nosso homem enriquecia ou ficava a nenhum. Se era de luta de cães, apostava; se uma briga de galos, apostava; se estavam dois pássaros pousados numa árvore, queria logo apostar qual dos dois voaria primeiro; [Omission]

   A célebre rã saltadora do Condado de Calaveras by Mark Twain
   E-text at Projeto Releituras


■スペイン語訳 Translations into Spanish

(Es1) Calvo, 2002
[Omission] En cualquier caso, aquel tipo tenía una fijación curiosísima por apostar sobre cualquier cosa que viniera o no al caso, siempre que pudiera encontrar a alguien que apostara por lo contrario. Y si no lo encontraba, entonces se cambiaba de bando. Cualquier cosa que le pareciera bien a su oponente le parecía bien a él; con tal de poder hacer una apuesta, ya estaba satisfecho. [Omission] Si había una carrera de caballos, uno siempre lo encontraba a él arrebatado o bien desmoronado al final de la misma. Si había una pelea de perros, él apostaba. Si había una pelea de gatos, él apostaba. Si había una pelea de pollos, él apostaba. Caramba, si había dos pájaros posados en una cerca, él apostaba contigo acerca de cuál de los dos sería el primero en levantar el vuelo. [Omission]

   Mark Twain, La famosa rana saltarina de Calaveras County,
   in Richard Ford (ed).), Antologia del cuento norteamericano,
   Barcelona, Galaxia Gutenberg, 2002, translated by J. Calvo
   Reprinted in Tiempo de lectura. Textos para leer en clase
   by Antonio del Rey Briones. Ediciones AKAL‬, 2010-04
   Preview at Google Books


(Es2)
[Omission] siempre diré que jamás se ha visto hombre más particular: hacía apuestas sobre cualquier cosa, por cualquier cosa que a uno se le ponía por delante, con tal que hubiese alguien que apostase en contra; y si no había quien apostaba en contra, entonces era él quien apostaba contra el que apostaba a favor. Lo que él quería era que otro apostase, y él se acomodaba siempre a la apuesta… Con tal de apostar, estaba satisfecho. [Omission] Si se celebraba una carrera de caballos, al final de la misma lo veía usted cargado de dinero o despojado de hasta el último centavo; si surgía una pelea de perros, allá corría él a apostar; si dos gatos reñían, ya estaba él apostando; si se enzarzaban dos gallos, él apostaba por uno; bueno, hasta si dos pájaros se posaban en una rama, apostaba él a cuál de ellos volaría primero, [Omission]

   La célebre rana saltarina del distrito de Calaveras by Mark Twain
   E-text at Libros y Letras


■フランス語訳 Translations into French

(F1) 1867 (from the English edition of 1865)
[Omission] c’était l’homme le plus curieux, il pariait toujours sur tout ce qui se présentait, s’il pouvait avoir quelqu’un pour parier contre lui ; et sinon, il changeait de parti avec l’adversaire. [Omission] Les jours de courses, vous le trouviez, à la fin, rouge de plaisir ou dépouillé jusqu’au dernier sou. S’il y avait un combat de chiens, il pariait ; un combat de chats, il pariait ; un combat de coqs, il pariait. S’il voyait deux oiseaux perchés sur une haie, il pariait lequel s’envolerait le premier, [Omission].

   La Célèbre Grenouille sauteuse du comté de Calaveras
   by Mark Twain.
   Translation (1867) into French from the 1865 edition.
   E-text at Les Œuvres de Mark Twain (Utopia)


(F2) de Lautrec, 1865
[Omission] toujours est-il que jamais on ne vit homme plus curieux. Il pariait à propos de tout ce qui se présentait, pourvu qu’il trouvât un parieur. Tout ce qui allait à l’autre lui allait. Il lui fallait trouver son homme. Alors il était satisfait. Si l’on n’acceptait pas de parier dans un sens, il changeait de parti avec l’adversaire. [Omission] Les jours de courses, vous le trouviez, à la fin, rouge de plaisir ou dépouillé jusqu’au dernier sou. S’il y avait un combat de chiens, il pariait ; un combat de chats, il pariait ; un combat de coqs, il pariait. S’il voyait deux oiseaux perchés sur une haie, il pariait lequel s’envolerait le premier, [Omission].

   La Célèbre Grenouille sauteuse du comté de Calaveras
   by Mark Twain.
   Translation (1865) by Gabriel de Lautrec.
   E-text at Les Œuvres de Mark Twain (Utopia)


 Audio 1 
朗読 The Celebrated Jumping Frog of Calaveras County

下に引用する箇所は、2:21 あたりから始まる。Uploaded to YouTube by Myrmidon56 on Jul 11, 2011. The excerpt below starts around 2:21.


 Audio 2 
朗読 Celebrated Jumping Frog of Calaveras County - 1 of 2
Read by Kara Shallenberg. Audio courtesy of LibriVox

下に引用する箇所は、3:16あたりから始まる。 Uploaded to YouTube by ghettovr on Jun 14, 2009. The excerpt below starts around 3:16.


 Video 2 
ビデオブック Celebrated Jumping Frog of Calaveras County - 1 of 2
Videobook with Shep O'Neal

下に引用する箇所は、2:48あたりから始まる。 Uploaded by ListenAndReadAlong on 15 Jan 2013. The excerpt below starts around 2:48.


■英語原文 The original text in English

[Omission] he was the curiousest man about always betting on anything that turned up you ever see, if he could get anybody to bet on the other side; and if he couldn't he'd change sides. Any way that suited the other man would suit him any way just so's he got a bet, he was satisfied. [Omission] If there was a horse-race, you'd find him flush or you'd find him busted at the end of it; if there was a dog-fight, he'd bet on it; if there was a cat-fight, he'd bet on it; if there was a chicken-fight, he'd bet on it; why, if there was two birds setting on a fence, he would bet you which one would fly first; [Omission]

   Jim Smiley and His Jumping Frog (1865) by Mark Twain. Also known as:
   The Celebrated Jumping Frog of Calaveras County
   The Notorious Jumping Frog of Calaveras County  
   E-texts are available at many websites including the followings:


■出版履歴および題・版の異同 Publication history and alternate titles and editions

この作品には、原著者自身による複数の版があり、タイトルも

  1. Jim Smiley and His Jumping Frog
  2. The Celebrated Jumping Frog of Calaveras County
  3. The Notorious Jumping Frog of Calaveras County

の3種類が流通しています。テキストの異同など詳細については、上掲の各訳書の解説や Wikipedia などをご参照ください。

This story was first published in the November 18, 1865 edition of The Saturday Press as "Jim Smiley and His Jumping Frog. For more details, see Publication history - Wikipedia and other sources.


■邦題の異同 Variations of the title translated into Japanese

  「その名も高きキャラヴェーラス郡の跳び蛙」………坂下 1977
  「その名も高きキャラヴェラス郡の跳び蛙」…………野崎 1988
  「その名も高きジャンプがえる」………………………井上 1968, 1986
  「キャラベラス郡の有名な跳ぶカエル」………………三浦 1979
  「キャラヴェラス郡の蛙が跳びはねて評判になる」…鍋島 1959
  「キャラヴェラス郡の跳び蛙が評判になる」…………勝浦 1993
  「キャラヴェラス郡の跳び蛙が評判になる話」………鍋島 1976
  「キャラヴェラス郡の名高き跳び蛙」…………………上野 1960
  「キャラヴェラス郡の有名な跳びがえる」……………大橋 1961, 1976
  「キャラヴェラス郡の有名な跳び蛙」…………………須山 1980, 2007
  「ジム・スマイリーと彼のだいじな跳び蛙」…………大久保 1985
  「ジム・スマイリーと彼の跳び蛙」……………………柴田 2010, 2013
  「ジム・スマイリーの跳び蛙」…………………………柴田 2014
  「噂になったキャラベラス郡の跳ぶ蛙」………………古沢 1961
  「蛙の賭ごと」……………………………………………梅田 1928
  「世にも名高いキャラヴェラス郡の跳び蛙」…………浅倉 1984
  「跳ねる蛙」………………………………………………杉木 1932
  「跳ね蛙」…………………………………………………佐々木 1929
  「賭け蛙」…………………………………………………佐々木 1912, 1996
  「名物跳び蛙」……………………………………………柳田 1926


 Video 3 
テレビ・ドキュメンタリー 『マーク・トウェイン』 (2001)
TV documentary Mark Twain (2001)

監督: ケン・バーンズ ナレーター: キース・デヴィッド Uploaded to YouTube by Ken Burns on 30 Jul 2012. Director: Ken Burns. Narrator (voice): Keith David. More info at PBS.


■外部リンク External links


■更新履歴 Change log

  • 2014/08/29 柴田元幸=訳の書誌情報を補足しました。
  • 2013/11/28 柴田元幸=訳の書誌情報を補足・修正しました。
  • 2013/07/08 外部リンクの項を新設しました。また、シェプ・オニールによるビデオブックの YouTube 動画も追加しました。
  • 2013/07/07 目次を新設しました。
  • 2012/12/02 「はじめに」の項とテレビ・ドキュメンタリー 『マーク・トゥエイン』 (2001) の YouTube 動画を追加しました。
  • 2012/09/02 梅田寛=編 1928/08/01 を追加しました。また、朗読の YouTube 画面をもうひとつ追加しました。
  • 2012/06/25 ドイツ語訳と、もう1種類のスペイン語訳を追加しました。
  • 2011/05/09 ロシア語訳と2種類のフランス語訳を追加しました。
  • 2011/01/22 ポルトガル語訳とスペイン語訳を追加しました。
  • 2010/11/07 中国語訳(簡体字)と柴田元幸=訳 2010/07/20 を追加しました。
  • 2010/04/15 『マーク・トゥエインの大冒険/トム・ソーヤーとハックルベリーの不思議な旅』 (1986) の YouTube 動画を追加しました。
  • 2010/04/04 朗読の YouTube 動画を追加しました。
  • 2009/03/08 「邦題の異同」の項を追加しました。
  • 2008/07/29 柳田泉=譯 1926/05 を追加しました。
  • 2008/01/14 須山静夫=訳 2007/02 を閲読し、これが須山静夫=訳 1980/05 と同文であることを確認しました。
  • 2007/09/04 上野直蔵=訳 1960/05、および杉木喬=譯註 1932/10 を追加しました。
  • 2007/08/21 三浦朱門=訳 1979/01 を追加しました。
  • 2007/08/06 大久保博=編訳 1985/01 を追加しました。また、国立国会図書館 NDL-OPAC による邦訳リストの項を新設しました。
  • 2007/07/10 井上一夫=訳 1986/07, 1968/08 を追加しました。また、鍋島能弘=訳の2つの版、すなわち出版協同社1976年版と鏡浦書房1959年版とを比べて、両者が同文であることを確認しました。
  • 2007/07/06 須山静夫=訳 1980/05 を追加しました。また、書誌情報を補足しました。
  • 2007/07/02 佐々木邦=訳 1912/06, 1996/10 を追加しました。
  • 2006/11/27 大橋健三郎=訳 1976/10 を追加しました。また、書誌情報を修正・補足しました。
  • 2006/08/20 鍋島能弘=訳 1976 を追加しました。また、Amazon.co.jp の該当ページへのリンク、および電子テキストの該当ページへのリンクを張りました。

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(1) 「マーク・トウェイン短編」

(2) 「マーク・トウェーン短篇」

  

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Friday, 05 May 2006

Sea and Sunset (from Acts of Worship) by Yukio Mishima 三島由紀夫 「海と夕焼」(『花ざかりの森・憂国』から)

C11461

 Video 
Yukio Mishima- A short documentary

Uploaded to YouTube by Sprewt on 18 Mar 2012. A documentary by Randall Pinkham.


■英訳 Translation into English

   It was late summer in the ninth year of the Bunei era. It should be added here, since it will be important later, that the ninth year of Bunei is 1272 by Western reckoning.
   An elderly man and a boy were climbing the hill known as Shojo-ga-take that lies behind the Kenchoji temple in Kamakura. Even during the summer, the man, a handyman at the temple, liked to get the cleaning done in the middle of the day, then, whenever there promised to be a beautiful sunset, to climb to the top of this hill.
   The boy was deaf and dumb, and the village children who came to play at the temple always left him out of their games, so the old man, feeling sorry for him, had brought him up there with him.
   The old man's name was Anri. He was not very tall, but his eyes were a clear blue. With his large nose and his deep eye sockets, his appearance was different from ordinary people; so the village brats were accustomed to calling him, behind his back, not Anri but "the long-nosed goblin."

   Sea and Sunset
   Acts of Worship: Seven Stories by Yukio Mishima
   Translated by John Bester
   Kodansha International, 2002


■日本語原文 The original text in Japanese

 文永九年の晩夏のことである。のちに必要になるので附加えると、文永九年は西暦千二百七十二年である。
 鎌倉建長寺裏の勝上(しょうじょう)ヶ岳(たけ)へ、年老いた寺男と一人の少年が登ってゆく。寺男は夏のあいだも日ざかりに掃除をすまして、夕焼の美しそうな日には、日没前に勝上ヶ岳へ登るのを好んだ。
 少年のほうは、いつも寺へ遊びに来る村童たちから、唖(おし)で聾(つんぼ)のために仲間外れにされているのを、寺男が憐(あわ)れんで、勝上ヶ岳の頂きまでつれてゆくのである。
 寺男の名は安里(アンリ)という。背丈はそう高くないが、澄み切った碧眼(へきがん)をしている。鼻は高く、眼窩(がんか)は深く、一見して常人の人相とはちがっている。そこで村の悪童どもは、蔭(かげ)では安里と呼ばずに、「天狗(てんぐ)」と呼びならわしている。

   三島由紀夫 「海と夕焼」
   『花ざかりの森・憂国』 新潮文庫 1968 所収


■更新履歴 Change log

2013-04-12 Yukio Mishima- A short documentary のビデオを追加しました。


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Thursday, 04 May 2006

Around the World in 80 Days by Michael Palin マイケル・ペリン 『80日間世界一周』

■はじめに Introduction

マイケル・ペイリンはモンティ・パイソンの一員としての活動をほぼ終えたあと、BBCテレビの一連の旅行番組に出演して、知的でウィットに富んだ旅行家・旅行作家としての定評を確立した。その記念すべき第一シリーズが『80日間世界一周』。放送は1989年だった。

題名から連想されるとおり、番組はジュール・ヴェルヌの同名の小説から着想を得ている。ペイリンは、小説の主人公フィリアス・フォッグがたどったルートにできるだけ近い経路を通り、あえて飛行機を使わないという条件を自らに課して80日間での世界一周に挑む。

制作者たちは、よくある肩の凝らない娯楽教養番組を作ったつもりだったかもしれない。しかし、ペイリンが旅行した時期を考えると、このシリーズは後世まで残る貴重な歴史的映像資料となるかもしれない。1989年といえば、昭和が平成に代わり、天安門事件が起き、ベルリンの壁が崩壊し、冷戦が終わった年である。


 Video 
Michael Palin plans his trip around the world - BBC

Uploaded to YouTube by BBCWorldwide on 4 Aug 2008


 Gallery 1 
DVDのジャケット DVD covers

↓ クリックして拡大 Click to enlarge ↓

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■日本語訳 Translation into Japanese

旅に出たいという抑えがたい衝動は、心理学的にも認められている症状であり、放浪癖という名前もつけられている。僕にもその症状があるのはうれしいことだと思う。すべての放浪癖患者が夢見るのは世界一周であるが、それも現在ではフランスの科学冒険小説家ジュール・ヴェルヌが「八◯日間世界一周」を書いた一九世紀後半ほどには、カッコいいものではなくなっている。一つには、航空機を使えば三六時間で地球を回ることが可能になったためだ(ヴェルヌが生きていたら、科学技術の発達を大いに賞賛したであろうが)。しかし空の旅は、あたかも地球をラップで包んで収縮加工してしまったかのように、世界を小さく味けなく、何も見えなくしてしまったのである。

   マイケル・ペリン=著 山村宜子(やまむら・よしこ)=訳
   『80日間世界一周』 心交社 1991/02


■英語原文 The original text in English

The compulsive urge to travel is a recognised psychical condition. It has its own word, dromomania, and I'm glad to say I suffer from it. The ambition of every dromomaniac is a circumnavigation of the planet, but it's a less fashionable journey now than in Jules Verne's day. Part of the reason is that you can do it by air in 36 hours (a technological feat that Verne would have greatly appreciated). But air travel shrink-wraps the world leaving it small, odourless, tidy and usually out of sight.

   Around the World in 80 Days (1989) by Michael Palin
   Palin's Travels (online edition)


 Gallery 2 
本の表紙 Book covers

↓ クリックして拡大 Click to enlarge ↓

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sk Sk_9788086518053 cs Cs_cestakolemsvetaza80dnimichaelpal nl Nl_9789026322594

it It_il_giro_del_mondo_in_80_giorni_m pt Pt_9789725304983 fr Fr_9782842303501

en En_20th_9780297854289 en En_9780912333397 en En_9781859270608


■著者名の日本語表記
 Transliteration variations of the author's name in Japanese

上の邦訳では、著者名 Michael Palin の日本語表記はマイケル・ペリンとなっています。ほかの文献では、マイケル・ペイリン、マイケル・パリンなどとなっていることもあります。ペイリンが、原音にいちばん近くて、妥当なのではないかと私は思います。


■更新履歴 Change log

  • 2015/02/22 イタリア語版とハンガリー語版の本、およびハンガリー語版DVDの画像を追加しました。
  • 2013/04/11 「はじめに」の項を新設し、2つの Image gallery を追加しました。また、BBC Worldwide のビデオも追加しました。
  • 2007/12/07 「著者名の日本語表記」という項を新設しました。また、ブログ記事の表題に、日本語訳を並記しました。

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(1) 80日間世界一周

(2) マイケル・ペリン / マイケル・ペイリン / マイケル・パリン

  

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Wednesday, 03 May 2006

Evelyn Waugh "Decline and Fall" 008

Waugh_evelyn


 夜の闇の中からストラスドラモンドのラムズデンが、ドゥルイド教の揺り石のようにふらふらしながら、彼の前を横切ろうとした。ポールは身をかわそうとした。
 幸か不幸か、ポールの母校のネクタイは、ボリンジャー・クラブの薄い青と白のそれと瓜二つであった。縞(しま)模様の幅が四分の一インチ違うといっても、ストラスドラモンドのラムズデンがそれに気がつこうはずがない。
 「ヒドい奴をつかまえたぞ、クラブのネクタイを締めてるくせに」と、この殿様が叫んだ。キリスト教以前の時代から、彼の一族が広大な地図なき荒れ地に族長として君臨してきたのは、こうしてみると、まったく意味のないことでもなかったらしい。
 スニッグズ先生は、いささか不安げな顔になって、ポスルスウェイト先生を見つめた。
 「誰かを捕まえたようですよ。おおごとをしでかさんでくれるといいんですがね」と彼が言うと、
 「ビリビリ、服を破いとるようですが」
 「まさかレンディング卿が餌食(えじき)では? これは助けにいかんと」
 「待った待った、スニッグズ君」と、ポスルスウェイト先生ははやる同僚の二の腕をおさえた。「待ちなさいよ。それはまずいですよ。上級研究員談話室の威信ということも考えてみないと。現状では彼らに規律をと言ってみても、馬に念仏。無法狼藉(#「無法狼藉」に傍点)は何としてでも避けなきゃいかんでしょうが」
 群徒は解散したらしい。スニッグズ先生はホッと安堵のため息をついた。
 「ともかく何事もなかった。レンディング君じゃなかった。ペニーフェザーという学生です——どういうこともない男ですよ」
 「やれやれ、それなら大いに手間がはぶける。喜ばしいね、スニッグズ君、実に喜ばしい。それにしてもその学生ね、ずいぶん派手に服をちぎられたもんだ!」
   富山太佳夫=訳『大転落』岩波文庫 1991年6月


 闇の中からラムズデン・オブ・ストラスドラモンドがドルイド教のあがめるゆるぎ岩(#「ゆるぎ岩」に傍点)のようにふらふらしながら行く手にあらわれた。ポールはわきをすりぬけようとした。
 たまたまポールのパブリック・スクールのネクタイは、ボリンジャー・クラブの水色と白の縞になったのととてもよく似ていた。縞の幅が五ミリぐらいちがっていようとラムズデンは気がつきそうにもなかった。
「ボリンジャーのタイをつけたいやな奴がいるぞ」とこのスコットランドの地主は言った。彼の先祖がキリスト教渡来前から何マイルもの不毛な荒野の無法地帯で頭目の地位を保ってきたのは無意味ではなかった。
 スニッグズはポスルスェイトを心配げに見た。
「どうやら連中誰かをつかまえたらしい。ひどいことをしなければいいが」
「そいつの服をはぎとっているようだよ」
「まさかレンディング卿じゃないだろうね? 口を出すべきかな」
「いやスニッグズ」とポスルスウェイトはせっかちな同僚の腕に手をかけて言った、「だめだよ。やめた方がいいよ。ぼくらは教員の体面を考えねばいかん。今の状態では連中は規律に従おうとしないかもしれない。こちらのいうことをきかないという事態はどうしてもさけねばね」
 人群は解散し、スニッグズはほっと安堵の溜息をついた。
「でも大丈夫だ。あれはレンディングじゃない、ペニフェザーだ。いい家柄の学生じゃない」
「じゃあ面倒がだいぶはぶける。よかった。スニッグズ、ほんとによかった。でもあの青年は服をはぎとられちまったようだな」
   柴田稔彦=訳『ポール・ペニフェザーの冒険』福武文庫 1991年4月


   Out of the night Lumsden of Strathdrummond swayed across his path like a druidical rocking-stone. Paul tried to pass.
   Now it so happened that the tie of Paul's old school bore a marked resemblance to the pale blue and white of the Bollinger Club. The difference of a quarter of an inch in the width of the stripes was not one that Lumsden of Strathdrummond was likely to appreciate.
   'Here's an awful man wearing the Boller tie,' said the Laird. It is not for nothing that since pre-Christian times his family had exercised chieftainship over unchartered miles of barren moorland.
   Mr Sniggs was looking rather apprehensively at Mr Postlethwaite.
   'They appear to have caught somebody,' he said. 'I hope they don't do him any serious harm.'
   'Dear me, can it be Lord Reading? I think I ought to intervene.'
   'No, Sniggs,' said Mr Postlethwaite, laying a hand on his impetuous colleague's arm. 'No, no, no. It would be unwise. We have the prestige of the senior commonroom to consider. In their present state they might not prove amenable to discipline. We must at all costs avoid an outrage ['outrage' in italic].'
   At length the crowd parted, and Mr Sniggs gave a sigh of relief.
   'But it's quite all right. It isn't Reading. It's Pennyfeather -- someone of no importance.'
   'Well, that saves a great deal of trouble. I am glad, Sniggs; I am, really. What a lot of clothes the young man appears to have lost!'
   Evelyn Waugh "Decline and Fall" 1928



 
 

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Tuesday, 02 May 2006

Evelyn Waugh "Decline and Fall" 007

Declineandfall

 彼は、今宵自分を待ちうけている不測の事態のことなどつゆ知らず、国際連盟ユニオンの会合から幸福感につつまれて自転車で戻ってくるところであった。ポーランドでの国民投票について、とても興味深い発表を聞くことができたのだ。寝る前に、パイプを一服やりながら、『フォーサイト家年代記』の続きを一章読もうか、彼はそんなことを考えていた。彼は門をノックし、中に入れてもらい、自転車をしまい、いつものようにおずおずと中庭を横切って部屋に向かおうとした。何と大勢の人たちが……! 酒に酔うことについて、別段ポールは反対ではなかった——トマス・モア協会で、この問題についてかなり大胆な発表をしたこともあるくらいである——ただ、酔漢の前に出ると、飲み込まれそうなくらいに赤面してしまうのではあるが。
   富山太佳夫=訳『大転落』岩波文庫 1991年6月

 この晩が彼にとんでもない結果をもたらすことになろうとはつゆ知らず、ポールは国際連盟研究会の集会からのんびりと自転車でもどってきた。ポーランドの国民投票について興味深い研究発表があったのだ。パイプを一服ふかし、『フォーサイト家年代記』をもう一章読んでからベッドに入ろうと思った。門を叩き、中に入れてもらい、自転車を片づけて、いつものようにおずおずと中庭を横切って自分の部屋の方へ進んで行った。あたりにはおおぜいの人がいたようだった。ポールは飲酒に特に反対というのではなかった——この問題についてトマス・モア研究会で相当大胆な発表をしたほどである——が、酔っぱらいは苦手だった。
   柴田稔彦=訳『ポール・ペニフェザーの冒険』福武文庫 1991年4月

   Little suspecting the incalculable consequences that the evening was to have for him, he bicycled happily back from a meeting of the League of Nations Union. There had been a most interesting paper about plebiscites in Poland. He thought of smoking a pipe and reading another chapter of the Forsyte Saga ["Forsyte Saga" in italic] before going to bed. He knocked at the gate, was admitted, put away his bicycle, and diffidently, as always, made his way across the quad towards his rooms. What a lot of people there seemed to be about! Paul had no particular objection to drunkenness -- he had read a rather daring paper to the Thomas More Society on the subject -- but he was consumedly shy of drunkards.
   Evelyn Waugh "Decline and Fall" 1928

--
2006/05/04 追記
英語原文の引用箇所が、日本語訳とずれておりましたので、訂正しました。
MMMさん、ご指摘ありがとうございました。


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Monday, 01 May 2006

A lost generation - Gertrude Stein ガートルード・スタイン 「ロスト・ジェネレーション」

 Image 
ピカソによるスタインの肖像画 Stein by Picasso
Stein_by_picasso
Portrait of Gertrude Stein by Pablo Picasso, 1906
Source: Timeline of Art History
The Metropolitan Museum of Art, New York


■日本語訳 Translations into Japanese

「あなた方はあてどない世代ね」
          ガートルード・スタインの言葉 (1. 土屋訳 2012)

「あなたたちはみんな、自堕落な世代(ロスト・ジェネレーション)なのよね」
        ——ガートルード・スタインの言葉 (2. 高見訳 2003)

「みんな失われた世代ね、あなたたちは」
        ——ガートルード・スタインの言葉 (3. 佐伯訳 1989)

「あなたたちはみんな、失われた世代ね」
        ——ガートルード・スタイン (4. 宮本訳 1974)

「あなたたちはみんな失われた世代の人たちです」
        ——ガートルード・スタインが話した言葉 (5. 大橋訳 1971)

「あなたがたはみんな失われた世代ね」
        ——ガートルード・スタインの座談より (6. 谷口訳 1958)

「あなたがたはみな迷える世代ですよ」
        ——ガートルード・スタイン—— (7. 及川訳 1957)

「あなたがたはみなうしなわれた世代の人たちです」
        (ガートルード・スタインの言葉) (8. 大久保訳 1955)


■英語原文 The original text in English

"You are all a lost generation." -- Gertrude Stein

   An epigraph to The Sun Also Rises (1926),
   a novel by Ernest Hemingway


■日本語訳の出典 Sources of the Japanese translations

1. 土屋政雄=訳 『日はまた昇る〔新訳版〕』 ハヤカワepi文庫 2012/03/25
2. 高見浩=訳 『日はまた昇る』 新潮文庫 2003/06
3. 佐伯彰一=訳 「日はまた昇る」
  『集英社ギャラリー [世界の文学]17 アメリカ2』 1989/10 所収
4. 宮本陽吉=訳 「日はまた昇る」
  『世界文学全集90 ヘミングウェイ』 講談社 1974/09 所収
5. 大橋吉之輔=訳 「日はまた昇る」
  『筑摩世界文學大系74 ヘミングウェイ』 1971/05 所収
6. 谷口陸男=訳 『日はまた昇る』 岩波文庫 1958/01
7. 及川進=訳 『陽はまた昇る』 角川文庫 1957/09
8. 大久保康雄=訳 『日はまた昇る』 新潮文庫 1955/02


 Video 
ガートルード・スタインの生涯: かんたんな紹介 Mini BIO : Gertrude Stein

Uploaded to YouTube by BiographyChannel on 21 Sep 2012


 Audio 
ウッディ・アレンが「失われた世代」をネタにした漫談。1960年代の録音。
Lost Generation — Woody Allen, Standup Comic: 1964-1968

Uploaded to YouTube by nxal2 on 15 May 2009


■外部リンク External links


■更新履歴 Change log

  • 2013-04-18 Mini BIO : Gertrude Stein の YouTube 動画を追加しました。
  • 2010-03-27 ウッディ・アレンのロスト・ジェネレーションをネタにした漫談の YouTube 動画、および外部リンクの項を新設しました。


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樋口一葉『たけくらべ』Takekurabe by Higuchi Ichiyo

この記事の増補改訂版をご覧ください:樋口一葉『たけくらべ』2008/05/07
See an updated version of this article:
Takekurabe / Child's Play / Growing Up by Higuchi Ichiyo, 2008/05/07
 
 
Takekurabe3_1
 ↑樋口一葉の自筆原稿
情報源:『たけくらべ』発見の記
福岡哲司さんのサイト「文学者の部屋」樋口一葉の部屋
http://fkoktts.hp.infoseek.co.jp/takekurabe.html
どの部分が自筆で、どの部分がそうでないかなど詳細は上記サイトをご参照ください。


 私の住むこの辺(あた)りから吉原入口の大門(おおもん)までは、表通りを東へぐるりと長く回ることになる。その道筋(みちすじ)は、名残惜(なごりお)しんで客が振り返るという見返(みかえ)り柳(やなぎ)の枝(えだ)のように長い。
 けれど、そんなに離れていても、お歯黒溝(はぐろどぶ)と呼ばれる下水(げすい)に火影姿(ほかげすがた)を映(うつ)す最上の三階のどんちゃん騒(さわ)ぎが、まるで手に取るようにわかる。遊び客を乗せた人力車(じんりきしゃ)が、通りを昼も夜も行き来するので、とてつもない繁盛(はんじょう)ぶりはここからでも想像できた。
 この町も、名前こそ大音寺前(だいおんじまえ)といって坊(ぼう)さん臭(くさ)いが、吉原の繁栄にあやかって底抜(そこぬ)けに明るい、と住む人々は口を揃(そろ)える。
   角川書店=通釈文「たけくらべ」
   角川書店=編『一葉の「たけくらべ」』
   ビギナーズ・クラシックス 近代文学編 角川ソフィア文庫 2005 所収

 回ってみれば大門(おおもん)の見返り柳までの道程(みちのり)はとても長いけれど、お歯ぐろ溝(どぶ)に燈火のうつる廓(くるわ)三階の騒ぎも手に取るように聞こえ、明け暮れなしの人力車(くるま)の往来ははかり知れない繁盛を思わせて、大音寺前と名前は仏臭いけれど、それはそれは陽気な町と住んでいる人は言ったもの、……
   松浦理英子=訳「たけくらべ」
   『たけくらべ 現代語訳・樋口一葉』河出文庫 2004 所収

 廻れば大門の見返り柳いと長けれど、お齒ぐろ溝に燈火(ともしび)うつる三階の騒ぎも手に取る如く、明けくれなしの車の行來(ゆきゝ)にはかり知られぬ全盛をうらなひて、大音寺前(だいおんじまへ)と名は佛くさけれど、さりとは陽氣の町と住みたる人の申しき、……
   樋口一葉『たけくらべ』
   1895-96(明治28-29)「文學界」初出
   青空文庫『たけくらべ』
   http://www.aozora.gr.jp/cards/000064/files/389_15297.html
   京都大学電子図書館『樋口一葉小説集』
   http://ddb.libnet.kulib.kyoto-u.ac.jp/cgi-bin/retrieve/
   sr_bookview.cgi/BB00000022/Contents/hi_cont.html
 
 
この記事の増補改訂版をご覧ください:樋口一葉『たけくらべ』2008/05/07
See an updated version of this article:
Takekurabe / Child's Play / Growing Up by Higuchi Ichiyo, 2008/05/07
 
 


 
 

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