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Saturday, 26 August 2006

Autobiography of Heinrich Schliemann シュリーマン 『古代への情熱』『シュリーマン自伝』

180pxheinrich_schliemann
Image source: Heinrich Schliemann - Wikipedia


           目次 Table of Contents

   ■凡例 Legend
   ■中國語譯(繁體字) Translation into traditional Chinese
   ■日本語訳 Translations into Japanese
     (1) 池内 1995
     (2) 関 1977
     (3) 永川 1967, 1978
     (4) 佐藤 1967
     (5) 村田 1954, 1976
   ■英訳 Translation into English
   ■ドイツ語原文 The original text in German
   ■シュリーマン:その人物と業績についての毀誉褒貶
     The dark side of Schliemann
   ■シュリーマンの言語学習法——tomoki y.の疑問
     tomoki y's questions on Schliemann's method of learning languages
     疑問1
     疑問2
   ■疑問への解答 A possible answer to the question
   ■更新履歴 Change log


■凡例 Legend

以下の訳例においては、日本語訳、英訳ともに、私 tomoki y.の判断で、原文がひと続きであるところを適宜改行し、a, b, c, ....と符号を割りふって箇条書きに改めました。


■中國語譯(繁體字) Translation into traditional Chinese

我抱著高度的熱誠,專心學習英文,由於那時的情境頗為緊迫,於是我發現了一個可以輕易學會任何語言的方法。這個簡單的方法如下:

  • 不斷地大量朗讀,
  • 絕不做翻譯,
  • 每天要讀一個小時,
  • 經常針對感興趣的事物寫作文,
  • 並根據老師的指導修改作文,
  • 同時要把前一天修改好的東西記起來,到隔天再背誦。

■日本語訳 Translations into Japanese

(1) 池内 1995
そんなわけで一所懸命、英語を学んだ。その際、困窮(こんきゅう)が発見を生んだといっていいような外国語習得法に気がついた。ごく簡単な方法であって——

  • 大きな声を出して原文を読む。
  • 訳をしない。
  • 毎日きっと一時間はあてる。
  • そのことばで自分に関心のあることを書いてみて、
  • 先生に直してもらう。
  • 直してもらったのを暗唱する。
  • つぎのときに前日直されたところを声に出していってみる。
  • 出典: H・シュリーマン=著 池内紀(いけうち・おさむ)=訳 『古代への情熱』 地球人ライブラリー 小学館 1995/11
  • Heinrich Schliemann "Selbstbiographie bis zu seinem Tode vervollstandigt" の新訳。

(2) 関 1977
そういうわけで、私は一心不乱に英語の勉強に打ち込んだ。そしてこの際、必要に迫られて、私はどんな言語でもその習得を著しく容易にする方法を編み出したのである。
その方法は簡単なもので、まず次のようなことをするのだ。

  • 大きな声でたくさん音読すること、
  • ちょっとした翻訳をすること、
  • 毎日一回は授業を受けること、
  • 興味のある対象について常に作文を書くこと、
  • そしてそれを先生の指導で訂正すること、
  • 前の日に直した文章を暗記して、次回の授業で暗誦(あんしょう)すること、

である。

  • 出典: シュリーマン=著 関楠生(せき・くすお)=訳 『古代への情熱—シュリーマン自伝』 新潮文庫 1977/08
  • Heinrich Schliemann, Selbstbiographie bis zu seinem Tode vervollstandigt, 1892 の全訳。第九版に依拠。直訳すれば「死までを補完した自叙伝」ということになろうか——と「訳者のあとがき」にあります。「古代への情熱」という標題は原著にはないもので、村田数之亮氏による命名であろうと思われるため、関氏は避けたかったのだが、すでにこの書名は定着してしまっていて変えがたいという新潮文庫編集部の意見に従うことになったのだそうです。

(3) 永川 1967, 1978
私は異常な勤勉さで英語の勉強にうちこんだ。必要にせまられて私はたいへん能率のいい語学学習法を身につけた。その内容を列挙すれば——

  • たくさん音読すること、
  • 翻訳しないこと、
  • 毎日レッスンをうけること、
  • 興味のもてるテーマをえらんでたえず作文すること、
  • それを先生の指導のもとに訂正すること、
  • それを暗記すること、
  • 次のレッスンのとき訂正部分をもういちどやってみること、

など。

  • 出典: ハインリヒ・シュリーマン=著 永川玲二=訳 「トロイアへの道——シュリーマン自伝」 引用はつぎの a. ヴェリタ版 1978/05 に拠りました。
  • Heinrich Schliemann "Ilios: The City and Country of the Trojans" (英語版1880、ドイツ語版1881)の巻頭につけた序文の全訳。その冒頭部分は訳者・永川氏の「解題」によれば、発掘活動以前のシュリーマンの自伝であり、アルフレート・ブリュックナー編『古代への情熱』の第一章もそのままこの部分を使用している(ただし英語版とくらべるとかなり削られた箇所がある)由。

(4) 佐藤 1967
そんなわけで私はわき目もふらずに英語の勉強に熱中した。私はこのとき必要にせまられて、外国語学習法を一つ見つけたが、この方法を用いると、どんな言語でもひじょうにらくに覚えられる。このかんたんな方法とは、なによりもまずこうである。

  • 声をだして多読すること、
  • 短文を訳すこと、
  • 一日に一時間は勉強すること、
  • 興味あることについていつも作文を書くこと、
  • その作文を先生の指導をうけて訂正し暗記すること、
  • まえの日に直されたものを覚えて、つぎの授業に暗誦(あんしょう)すること。

(5) 村田 1954, 1976
そこで私は異常な熱心をもって英語の学習に専心したが、このときの緊急切迫した境遇から、私はあらゆる言語の習得を容易にする一方法を発見した。このかんたんな方法とはまずつぎのことにある。

  • 非常に多く音読すること、
  • 決して翻訳しないこと、
  • 毎日一時間をあてること、
  • つねに興味ある対象について作文を書くこと、
  • これを教師の指導によって訂正すること、
  • 前日直されたものを暗記して、つぎの時間に暗誦することである。
  • 出典: シュリーマン=著 村田数之亮(むらた・かずのすけ)=訳
    引用はつぎの a. 改訳版 1976/02 に拠りました。
  • Heinrich Schliemann, Selbstbiographie bis zu seinem Tode vervollstandigt(初版1891, 再版1936)の邦訳。訳者・村田氏の「あとがき」によれば、「古代への情熱」は原著の書名ではなく、説明的な仮題である由。

■英訳 Translation into English

I applied myself with extraordinary diligence to the study of English. Necessity taught me a method which greatly facilitates the study of a language. This method consists in

  • reading a great deal aloud,
  • without making a translation,
  • taking a lesson a day,
  • constantly writing essays upon subjects of interest,
  • correcting these under the supervision of a teacher,
  • learning them by heart, and repeating in the next lesson what was corrected on the next day.

■ドイツ語原文 The original text in German

So warf ich mich denn mit besonderem fleiße auf das Studium des Englischen, und hierbei ließ mich die Not eine Methode ausfindig machen, welche die Erlernung jeder Sprache bedeutend erleichtert. Diese einfache Methode besteht zunächst darin,

  • dass man sehr viel laut liest,
  • kleine Übersetzungen macht,
  • täglich eine Stunde nimmt,
  • immer Ausarbeitungen über uns interessierende Gegenstände niederschreibt,
  • diese unter der Aufsicht des Lehrers verbessert,
  • auswendig lernt und in der nächsten Stunde aufsagt, was man am Tage vorher korrigiert hat.

■シュリーマン:その人物と業績についての毀誉褒貶
 The dark side of Schliemann

シュリーマンは、しばしば自分の経歴を偽ったり、自己の業績を誇張する人間であったと指摘されています。つぎの2つのリンク先をご参照ください:


■シュリーマンの言語学習法——tomoki y.の疑問
 tomoki y's questions on Schliemann's method of learning languages

 疑問1

  • 上述 (b) の日本語訳がバラバラなのが気にかかります。翻訳は「決してしない」ほうがよいのか? 「ちょっと」だけ、したほうがよいのか? それとも、「短文」を訳したほうがよいのか?
  • もし英訳が正しいとすると、それに呼応する (1) 池内紀=訳、(2) 永川玲二=訳と (5) 村田数之亮=訳が正しいことになり、あとの (3) 関楠生=訳と (4) 佐藤牧夫=訳は、誤訳だということになります。しかし、私はドイツ語原文を見ていないし(後述の追記を参照)、見ても判断はつかないので、確かなことは分かりません。どなたかお教えいただけたら幸いです。

 疑問2

  • たとえシュリーマンが、かなりうさんくさい人物だったとしても、彼が人並み以上に語学の才能を持っていたことは、まちがいないようです。上述の彼の言語学習法が、どれだけ有効かについて、専門家の方々の意見を聞いてみたいものです。

■疑問への解答 A possible answer to the question

上記疑問 (1) については、その後つぎのページを見つけました。訳にバラツキがあるのは、ドイツ語原書の誤植に端を発するのではないか、という推測です。興味深い指摘であり、たいへん参考になりました。

2010/12/05 追記 ドイツ語原文をようやく目にしました。やはり英訳が正しく、(b) は no translation と理解するのが適切だという結論に達しました。


■更新履歴 Change log

  • 2013/09/03 ドイツ語原文にあったミススペリングを訂正し、抜けていたウムラウトを補充しました。また、目次を新設し、繁體字中國語譯を追加しました。
  • 2010/12/03 ドイツ語原文のテキストを挿入しました。
  • 2008/02/28 「疑問への解答」の項を新設しました。
  • 2006/11/16 池内紀=訳 1995/11 を追加しました。
  • 2006/11/03 永川玲二=訳 1978/05 を追加しました。また、書誌情報を補足しました。

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Comments

 これは「翻訳をしない」という解釈で問題ないのではないと思います。この文章を読む限り、シュリーマンは外国語教授法のdirect methodみたいなことを実践しているようです。翻訳(=母語の介在)を禁じるのは当然ではないでしょうか。
 翻訳というのは表現された内容を母語に引き寄せる行為ですから外国語の習得法とは反対のベクトルを働かせるものですよね。
 ただ、「決して翻訳をしない」というとふつうの日本人は「あれ?」と思ってしまうでしょうから、「一文一文訳さない」とか「訳して考えない」とか違和感を生まない表現をしたほうがよいのかと思います。

Posted by: MMM | Saturday, 26 August 2006 11:02 pm

MMM-san,

Sassoku comment o kudasatte arigatou gozaimasu. Naruhodo, 'direct method' mitai na koto o jissen shite ita to suru to, tashika ni ossharu toori de tsujitsuma ga aimasu ne.

Tadashi, linguistics no ichi-bumon de aru, iwayuru Second Language Acquisition (SLA) no experts no aida de, junsui na katachi no 'direct method' no datousei ga, konnichi hatashite mitomerarete iru ka douka wa wakarimasen ga...

Posted by: tomoki y. | Sunday, 27 August 2006 03:07 pm

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