強姦未遂 - 織田作之助「六白金星」
Image source: SSweb 朗読『夫婦善哉』
■日本語原文 The original text in Japanese
「おい!」
ぐいと手を引つ張つてもたれ掛けさせると、いきなり抱き寄せて、口に触れた。
歯がカチカチと鳴り、女中はガタガタと醜悪にふるへてゐた。生臭い口臭をかぎながら、ぺたりとその場に坐らせて、
「君、寒いのンか。」
さう言つたまでは覚えてゐたが、あとは無我夢中になつて、好奇心と動物的な感覚が体をしびらしてしまつたが、女中は足を固くして、
「それだけは堪忍して、なツ、坊つちやん、それだけは堪忍して。あゝ。」
身もだえしながら、キンキンした声で叫び、ふと瞠(みひら)いた眼が白かつた。楢雄ははつと我に帰り、草の上へついた手の力ではね起きると、物も言はず、うしろも向かず、あぶない所だつた、俺はもう少しで罪を犯すところだつたと、心の中で叫びながら、真青になつて逃げ去つた。
織田作之助「六白金星」
電子テキスト at 青空文庫
底本:『現代文学大系44 武田麟太郎・島木健作・織田作之助集』
筑摩書房 初版 1967/03
『日本文学全集39』新潮社 1967/09 と照合して疑問の箇所を改めた由。
入力:山根鋭二
校正:Tomoko I.
1999年10月15日公開
2006年05月20日修正
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