« 肉饅頭の肉 - 水滸伝 Water Margin | Main | Cannibalism in the Cars by Mark Twain マーク・トウェイン 「列車内の人食い事件」「人喰い列車」「車中人肉を喰ふ話」「雪に埋もれた汽車」 »

Sunday, 26 November 2006

魯迅 『狂人日記』 A Madman's Diary by Lu Xun

■表紙画像 Cover photos
0824813170 01307704
[Left] English translation by William A. Lyell
[Right] Japanese translation by Yoshimi Takeuchi


■ロシア語訳 Translation into Russian

Несколько дней тому назад из деревни Волчьей пришел арендатор сообщить о неурожае, он рассказал моему старшему брату, что жители этой деревни сообща убили одного злодея из своей же деревни; потом вынули у него сердце и печень, зажарили и съели, чтобы стать более храбрыми. Я вмешался было в разговор, но тут арендатор и брат несколько раз взглянули на меня. Только сегодня я понял, что их взгляды были точно такими же, как и у тех людей на улице.

При мысли об этом меня всего, с головы до пят, бросило в дрожь.

Раз они могут есть людей, значит, могут съесть и меня.

   Лу Синь - Записки сумасшедшего
   Translated by Сергей Леонидович Тихвинский
   E-text at FictionBook.ru


■スペイン語訳 Translation into Spanish

Hace algunos días, uno de nuestros arrendatarios de la aldea de los Lobos, al venir a informar sobre la sequía que reina en el campo, contó a mi hermano mayor que los campesinos habían dado muerte a un conocido malhechor del lugar. Luego algunos hombres le arrancaron el corazón y el hígado, los frieron y se los comieron, para criar valor. Los interrumpí con una palabra y mi hermano y el labrador me lanzaron muchas miradas raras. Hoy comprendo que sus miradas eran absolutamente iguales a las de los hombres de la calle.

Sólo de pensar en ello me estremezco de la cabeza a los pies.

Si comen hombres, ¿por qué no habrían de comerme a mí?

   El diario de un loco by Lu Sin
   E-text at Ciudada Seva


■フランス語訳 Translation into French

Il y a quelques jours, l’un de nos fermiers du village du Louveteau vint annoncer que les récoltes étaient désastreuses, et il raconta à mon frère aîné que les villageois avaient battu à mort un mauvais garçon de l’endroit; puis, certains lui avaient enlevé le cœur et le foie, les avaient fait frire à l’huile et les avaient mangés dans le but de stimuler leur courage. Le fermier et mon frère me dévisagèrent lorsque je voulus risquer un mot. Et je réalise aujourd’hui seulement que leurs regards avaient exactement la même expression que celle des gens dans la rue.

Rien que d’y penser, j’en frissonne du sommet de la tête à la plante des pieds.

Ils se nourrissent de chair humaine, pourquoi un jour ne me mangeraient-ils pas?

   Le journal d’un fou by Lu Sin
   E-text at Les contes de Lu Xun - hst1061


■英訳 Translations into English

(E1) Lyell, 1990
A few days back one of our tenant farmers came in from Wolf Cub Village to report a famine. Told my elder brother the villagers had all ganged up on a "bad" man and beaten him to death. Even gouged out his heart and liver. Fried them up and ate them to bolster their own courage! When I tried to horn in on the conversation, Elder Brother and the tenant farmer both gave me sinister looks. I realized for the first time today that the expression in their eyes was just the same as what I saw in those people on the street.

As I think of it now, a shiver's running from the top of my head clear down to the tips of my toes.

If they're capable of eating people, then who's to say they won't eat me?

   Diary of a madman and other stories by Lu Xun
   Translated by William A. Lyell
   University of Hawaii Press, 1990


(E2) Yang & Yang, 1960, 1972

A few days ago a tenant of ours from Wolf Cub Village came to report the failure of the crops, and told my elder brother that a notorious character in their village had been beaten to death; then some people had taken out his heart and liver, fried them in oil and eaten them, as a means of increasing their courage. When I interrupted, the tenant and my brother both stared at me. Only today have I realized that they had exactly the same look in their eyes as those people outside.

Just to think of it sets me shivering from the crown of my head to the soles of my feet.

They eat human beings, so they may eat me.

   A Madman's Diary
   Selected Stories of Lu Hsun (Lu Xun)
   By Lu Hsun (Lu Xun)
   [The True Story of Ah Q, and Other Stories (written 1918-1926)]
   Translated by Yang Hsien-yi and Gladys Yang
   Published by Foreign Languages Press, Peking, 1960, 1972
   * E-text at the Marxists Internet Archive
   * PDF at the Dickinson State University website


■日本語訳 Translations into Japanese

(J1) 藤井 2009
 数日前、狼子(ランツ)村の小作人が不作を訴えてきて、僕の大兄(おおにい)さんに向かって言うには、村にとんでもない悪人がいて、みんなで殴り殺したところ、数人の者がその男の心臓と肝臓をえぐり出し、油で炒めて食べたという――肝っ玉が太くなるからだ。僕が口を挟むと、小作人も大兄さんもジロジロと僕を見ていた。今日になって二人が、外の連中とまったく同じ目つきをしていたことに気がついた。
 思い出すと、全身に寒気を覚える。
 奴らは人食いをするのだから、僕のことも食べてしまうかもしれない。

   魯迅=作 藤井省三(ふじい・しょうぞう)=訳 「狂人日記」
   『故郷/阿Q正伝』 光文社古典新訳文庫 2009/04 所収


(J2) 駒田 1998
 数日前、狼子村(ろうしそん)の小作人が凶作を訴えに来て、兄に話していた。彼らの村の極悪人がみんなになぐり殺されたが、数人の者がその男の心臓と肝臓をえぐり出し、油でいためて食った。そうすると肝っ玉が大きくなるという。おれが口をはさんだら、小作人も兄貴もじろじろとおれを見た。今日やっとわかったのだが、彼らの眼つきは外のあの連中とまったく同じだ。
 思い出すと、頭のてっぺんから足のつまさきまでゾッとする。
 彼らは人間を食うのだ。とすれば、おれを食わないとはかぎらない。

   魯迅=作 駒田信二=訳 「狂人日記」
   『阿Q正伝・藤野先生』 講談社文芸文庫 1998/05 所収


(J3) 竹内 1955, 1981
 二、三日前、狼子村(ランズツン)から小作人が来て、不作をこぼして、兄貴に話していったっけ。やつらの村に大悪人がいて、みんなに殴り殺されたが、そいつの内臓をえぐり出して、油でいためて食ったやつがあるそうで、そうすると肝っ玉が太くなるという話だ。おれがちょっと脇から口を入れたら、小作人と兄貴とが、じろじろおれの方を見たっけ。今日やっとわかった。やつらの眼つきは、町にいた連中の眼つきとそっくりそのままじゃないか。
 思い出しただけで、おれは頭のてっぺんから脚の先まで、ゾッとなる。
 やつらは人間を食いやがる。してみると、おれを食わないという道理はない。

   魯迅=作 竹内好=訳 「狂人日記」
   『阿Q正伝・狂人日記 他十二篇(吶喊)』
   岩波文庫(初版 1955/11|改訳 1981/02)所収


(J4) 松枝+和田 1976
 二、三日前、狼子(ランツ)村の小作人が不作を訴えにきたとき、兄貴にこんな話をしていた。やつらの村に大悪党がいて村の連中になぐり殺されたそうだ。そのとき、そいつの臓腑(はらわた)をえぐり出して、油でいためて食ったものがいて、なんでもそれを食うと、肝っ玉が大きくなるんだそうだ。わきからおれがちょっと口をはさんだら、小作人も兄貴も、じろじろおれのほうを見たっけ。きょうになって気がついたんだが、その目つきが、あの町の連中の目つきとまるっきりそっくりじゃないか。
 そう思うだけで、おれは頭のてっぺんから足の先までゾッとなる。
 やつらは人間を食うんだ。おれを食わないという保証はないぞ。

   魯迅=作 松枝茂夫+和田武司=訳 「狂人日記」
   『豪華版 世界文学全集35 魯迅』 講談社 1976/10 所収


(J5) 丸山 1975
 数日前、狼子(ランツ)村の小作人が、不作の訴えにきて、兄貴に話していた。彼らの村に大悪人が一人いたが、みんなに殴り殺された、数人のものがその心臓と肝臓をえぐり出して、油でいためて食った、肝(きも)が太くなるのだ、という。おれがひとこと口をはさむと、小作人も兄貴もおれをじろじろ見た。きょうはじめてわかった、彼らの眼つきも、外のあの連中とそっくりなのだ。
 考えて、おれは頭のてっぺんからかかとの先までぞっとした。
 彼らが人を食えるのだとすれば、おれを食わないとは限らない。

   魯迅=作 丸山昇=訳 「狂人日記」
   『阿Q正伝 他九編』 新日本文庫 1975/11 所収


(J6) 松枝 1970
 何日か前に、狼子(ランツ)村の小作人が不作を訴えに来て、おれの兄に向かって話していた。彼らの村の大悪党がみんなになぐり殺され、何人かの者はそいつの臓腑(はらわた)をえぐり出して、油でいためて食ったんだそうだ。それを食うと肝っ玉が大きくなるというのだ。おれがわきから一言口をはさんだら、小作人も兄もおれをじろじろ見た。彼らの目つきが、町の連中のそれとそっくり同じであることを、きょうになって気がついた。
 思い出すと、おれは頭のてっぺんから足のカカトまで、ぞうっとする。
 彼らは人間を食うことができるんだから、おれを食うことができないとはいえない。

   魯迅=作 松枝茂夫=訳 「狂人日記」
   『阿Q正伝・狂人日記 他六編』 旺文社文庫 1970/03 所収


(J7) 高橋 1967
 数日前、狼子(ランツ)村の小作人が不作を訴えにきて、兄に話していた。彼らの村の極悪人が、皆に殴り殺され、数人が彼の心臓と肝臓をえぐり出して、油でいためて食った、と。胆力が増すのだそうだ。わたしが言葉をはさむと、小作人と兄がじろじろとわたしを見た。今日になってわかったことだが、彼らの眼付は、街のやつらと全く同じだった。
 想い出すと、頭のてっぺんから足の先までぞっとする。
 彼らは人間を食えるのだ。とすればわたしを食わないとは言いきれぬ。
  
   魯迅=作 高橋和己=訳 「狂人日記」
   『世界の文学47 魯迅』 中央公論社 1967/06 所収


(J8) 増田 1961
 五、六日前、狼子(ランツ)村の小作人が饑饉(ききん)で収穫のないことを訴えてきて、私の兄貴(あにき)に、彼等の村の一人の大悪人が、大勢に打ち殺された話をした。何人かの者はその男の内臓をほじくり出し、肝(きも)ッ玉を太くするのだといって、油でいためて食ったという。私が一こと口をはさむと、小作人と兄貴は私をジロジロと見た。今日はじめて私は彼等の眼の色が、外部のあの一群の者たちと全く同じであることを知った。
 それを思い出すと、私は頭のてっぺんから足のさきまでサッと冷たくなる。
 彼等は人を食うことができる、だとすれば私を食わないものでもない。

   魯迅=作 増田渉=訳 「狂人日記」
   『阿Q正伝』 角川文庫 1961/04 所収


(J9) 井上 1932, 2004
 四五日前に狼村(おおかみむら)の小作人が不況を告げに来た。彼はわたしの大(おお)アニキと話をしていた。村に一人の大悪人(だいあくにん)があって寄ってたかって打殺(うちころ)してしまったが、中には彼の心臓をえぐり出し、油煎(あぶらい)りにして食べた者がある。そうすると肝が太くなるという話だ。わたしは一言(ひとこと)差出口(さしでぐち)をすると、小作人と大アニキはじろりとわたしを見た。その目付がきのう逢った人達の目付に寸分違いのないことを今知った。
 想い出してもぞっとする。彼等は人間を食い馴(な)れているのだからわたしを食わないとも限らない。

   魯迅=作 井上紅梅=訳 「狂人日記」
   E-text at 青空文庫
   底本: 『魯迅全集』 改造社 1932/11/18
   旧字、旧仮名を新字、新仮名に改めてあります。
   底本は総ルビですが、一部を省いてあります。
   入力:京都大学電子テクスト研究会入力班(上村要)
   校正:京都大学電子テクスト研究会(高柳典子)
   2004/11/19 作成


■中国語原文(簡体字)The original text in simplified Chinese

  前几天,狼子村的佃户来告荒,对我大哥说,他们村里的一个大恶人,给大家打死了;几个人便挖出他的心肝来,用油煎炒了吃,可以壮壮胆子。我插了一句嘴,佃户和大哥便都看我几眼。今天才晓得他们的眼光,全同外面的那伙人一模一样。
  想起来,我从顶上直冷到脚跟。
  他们会吃人,就未必不会吃我。

   鲁迅 《狂人日记》
   E-text at Lu Xun Home Page


■更新履歴 Change log

2013/05/24 フランス語訳を追加しました。
2012/03/19 William A. Lyell によるもう一つの英訳を追加しました。
2012/03/02 ロシア語訳を追加しました。
2012/01/28 スペイン語訳を追加しました。
2009/04/14 藤井省三=訳 2009/04 を追加しました。
2006/11/30 井上紅梅=訳 1932/11/18 を追加しました。


にほんブログ村 本ブログへにほんブログ村英語ブログへにほんブログ村外国語ブログへブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村 本ブログ 洋書へにほんブログ村 英語ブログ 通訳・翻訳へにほんブログ村 外国語ブログ マルチリンガルへ翻訳ブログ人気ランキング参加中

↓ 以下の本・CD・DVDのタイトルはブラウザ画面を更新すると入れ替ります。
↓ Refresh the window to display alternate titles of books, CDs and DVDs.

■洋書 Books in non-Japanese languages
(1) "Lu Hsun"

(2) "Lu Xun"

■和書 Books in Japanese

  

|

« 肉饅頭の肉 - 水滸伝 Water Margin | Main | Cannibalism in the Cars by Mark Twain マーク・トウェイン 「列車内の人食い事件」「人喰い列車」「車中人肉を喰ふ話」「雪に埋もれた汽車」 »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/58807/12825228

Listed below are links to weblogs that reference 魯迅 『狂人日記』 A Madman's Diary by Lu Xun:

« 肉饅頭の肉 - 水滸伝 Water Margin | Main | Cannibalism in the Cars by Mark Twain マーク・トウェイン 「列車内の人食い事件」「人喰い列車」「車中人肉を喰ふ話」「雪に埋もれた汽車」 »