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Monday, 19 February 2007

August Heat by W. F. Harvey W・H・ハーヴィ 「八月の暑さのなかで」「八月の炎暑」「八月の熱波」「炎天」

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Cavlier_august_may61_3
Illustration by Richard Michael Gorman Powers
Image source: The Powers Compendium

■日本語訳 Translations into Japanese

(J1) 金原 2010
「さあ、できた! どう思う?」 アトキンソンはいかにも自慢(じまん)そうにたずねた。
 わたしはそのとき初めて、彫(ほ)りこまれた文字を読んだ。

  ジェイムズ・クレアランス・ウィゼンクロフト
  思い出にささぐ
  一八六◯年一月十八日生まれ
  一九◯×年八月二十日、急死
  生のなかにも死はあり

 わたしはしばらくなにもいえずにすわっていた。それから冷たいものが背筋(せすじ)を駆(か)け下(お)りて身ぶるいした。わたしはアトキンソンに、この名前はどこでみたのかたずねてみた。  「いやあ、どこかでみたってわけじゃない。名前を書かないわけにはいかないから、頭に浮(う)かんだ最初のやつを彫(ほ)ったんだ。なんでそんなことをきく?」
 「不思議な一致(いっち)というのか、それはわたしの名前なんだ」

 アトキンソンは低く口笛を吹(ふ)いた。
 「日付けはどうだね?」
 「生まれた日のほうしかわからないが、それは合っている」
 「そいつは奇妙(きみょう)だ!」

  • W・F・ハーヴィー=作 金原瑞人(かねはら・みずひと)=訳 「八月の暑さのなかで」 金原瑞人=編訳 『八月の暑さのなかで—ホラー短編集』 岩波少年文庫 2010/07/14 所収

(J2) 宮本 2006
「さあ、一丁上がり! どうです、この出来ばえは?」自信たっぷりに尋ねたものだ。
 碑銘に初めて目をやると、そこにはこうあった。

   ジェイムズ・クレランス・ウィゼンクロフトここに眠る
   一八六◯年一月十六日に生まれ
   一九××年八月二十日に急逝
   「生のさなかにも死はつねにあり」

 しばらくの間、私は無言で座っていた。それから、悪寒が背筋を駆けぬけた。この名前をどこで見たのか、と私は尋ねた。
「なに、どこで見たってわけじゃないが、とにかく名前が入り用だから、ふっと思いついたのを刻んだだけですよ。また、なんでそんなことを?」
「奇妙な偶然だが、私の名前と同じなんです」
 男は長く低い口笛を吹いた。
「日付のほうは?」
「二つのうち一つしか分からないが、それも当たっています」
「気味の悪い話ですなあ!」


(J3) 田口 2001
「さあ、できた! どう思われるかな?」彼は見るからに誇らしげに訊いてきた。
 私はそのとき初めて碑文を見た。それは次のようなものだった——

   ジェイムズ・クラレンス・ウィゼンクロフトの
   思い出にささぐ
   一八六◯年一月十八日この世に生を享け
   一九◯—年八月二十日突如この世を去る
   〝我ら、命の半ばにも死に臨む〟

 私はしばらく何も言わず、ただ坐っていた。身震いするほどの寒気(さむけ)が背すじを駆け抜けていた。どこでその名まえを見たのか、と私は彼に尋ねた。
「いや、どこかで見かけた名前じゃない」とアトキンスン氏は答えた。「なんらかの名前が必要だったんでね。最初に頭に浮かんだものにしたんだよ。でも、どうしてそんなことを訊きなさる?」
「なんとも奇妙な偶然だけれど、それは私の名前なんですよ」
 彼は長く低い口笛を吹いた。
「じゃあ、日付けは?」
「私に答えられるのはふたつのうちのひとつだけだけれど、それも合ってる」
「不思議なこともあるもんだ」

  • W・F・ハーヴェイ=作 田口俊樹=訳 「八月の熱波」 ローレンス・ブロック=編 田口俊樹〔ほか〕=訳 『巨匠の選択』 ハヤカワ・ミステリ 2001/09 所収

(J4) 平井 1958
「どうです、これ、なんとおぼし召すね?」石屋はどうだと言わんばかりのようすをして言った。
 自分がそのときはじめて読んだ墓碑銘(ぼひめい)は、上(注)のようなものであった。

   ジェイムズ・クレアレンス・ウィゼンクロフト
   一八六◯年一月十八日生
   一九◯一年八月二◯日頓死(とんし)
   生のただなかに死はつねにあり

 自分は腰をおろしたまま、しばらく黙っていた。ゾッとする冷たい戦慄(せんりつ)が背すじを走った。自分は石屋に、あんた、この名まえをどこで見たかといってたずねた。
「なーに、どこでも見やしませんよ」と、石屋は答えた。「なにか名まえがほしいと思ってね、いちばん最初に頭に浮かんだ名まえを彫ったんでさ。どうしてまたそんなことをおたずねです?」
「ふしぎな暗合だな。ぼくの名まえがそれなんだ」
 石屋はヒューッと口の先を鳴らした。
「で、日付は?」
「日付ったって片っぽしか——つまり生まれたほうしか答えられないが、ちゃんと合ってる」
「みょうなことがあるもんだね!」

(tomoki y. 注:原文ではページの上のほうに横書きに印刷されている)


■スペイン語訳 Translation into Spanish

"¡Ahí está! ¿Qué piensa usted de eso?" dijo, con un aire de evidente orgullo.

La inscripción que leí por primera vez era esta:

CONSAGRADO A LA MEMORIA DE
JAMES CLARENCE WITHENCROFT
NACIDO ENE. 18, 1860.
PASO A LA ETERNIDAD SÚBITAMENTE
EN AGOSTO 20, 190-

"En medio de la vida estamos en la muerte."

Permanecí sentado en silencio por algún tiempo. Luego un escalofrío bajó por mi espina dorsal. Le pregunté dónde había visto el nombre.

"Oh, no lo he visto en ningún lado," respondió el Sr. Atkinson. "Necesitaba algún nombre, y puse el primero que se me vino a la mente. ¿Por qué quiere saberlo?"

"Es una extraña coincidencia, pero sucede que es el mío."

Emitió un silbido largo y bajo.

"¿Y las fechas?"

"Solo puedo responder por una de ellas, y es correcta".

"¡Es una rareza!" dijo.


 Video 1 
英語原文朗読 The original text in English presented by WellHeyProductions

下の引用箇所の朗読は 7:03 から始まります。 Uploaded to YouTube by Barnabas Deimos on 29 May 2014. Reading of the excerpt below starts at 7:03.


 Video 2 
英語原文朗読 The original text in English

下の引用箇所の朗読は 5:59 から始まります。 Uploaded to YouTube by The Fear Channel on 8 Apr 2014. Reading of the excerpt below starts at 5:59.


 Video 3 
英語原文朗読 The original text in English, read by Caden Clegg

下の引用箇所の朗読は 5:57 から始まります。 Uploaded to YouTube by Caden Clegg on 11 Jul 2013. Reading of the excerpt below starts at 5:57.


■英語原文 The original text in English

"There! what do you think of that?" he said, with an air of evident pride. The inscription which I read for the first time was this--

SACRED TO THE MEMORY
OF
JAMES CLARENCE WITHENCROFT.
BORN JAN. 18TH, 1860.
HE PASSED AWAY VERY SUDDENLY
ON AUGUST 20TH, 190--
"In the midst of life we are in death."

For some time I sat in silence. Then a cold shudder ran down my spine. I asked him where he had seen the name.

"Oh, I didn't see it anywhere," replied Mr. Atkinson. "I wanted some name, and I put down the first that came into my head. Why do you want to know?"

"It's a strange coincidence, but it happens to be mine." He gave a long, low whistle.

"And the dates?"

"I can only answer for one of them, and that's correct."

"It's a rum go!" he said.


■邦題の異同 Variations of the title in Japanese

  • 「八月の暑さのなかで」………金原 2010
  • 「八月の炎暑」…………………宮本 2006
  • 「八月の熱波」…………………田口 2001
  • 「炎天」…………………………平井 1958

■Harveyの日本語表記の異同
 Transliteration variations of the name "Harvey" in Japanese

  • ハーヴィ…………宮本 2006
  • ハーヴィー………金原 2010
  • ハーヴィー………平井 1958
  • ハーヴェイ………田口 2001

■更新履歴 Change log

  • 2014/07/30 3種類の英語原文朗読の YouTube 画面を追加しました。
  • 2010/07/20 金原瑞人=訳 2010/07/14 を追加しました。また、ブログ記事のタイトルに邦題「八月の暑さのなかで」を追加しました。
  • 2007/02/23 田口俊樹=訳 2001/09 を追加しました。

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