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Friday, 23 March 2007

Tobermory by Saki サキ「トバモリー」「トバーモリー」「トーバモリー」

■表紙画像 Cover photos

a. Tobermory, Hardcover, La Joie de Lire (1991)
b. The Chronicles of Clovis, Microsoft Reader eBook (1991)
c. The Chronicles of Clovis, Penguin Twentieth Century Classics (1987)
d. The Chronicles of Clovis, John Lane (1911), (Including: "Tobermory," "Sredni Vashtar," "The Music on the Hill," "The Peace of Mowlse Barton," "Ministers of Grace" and "The Remoulding of Groby Lington".)
Image source: Tartarus Press Supernatural Fiction Database

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a. Atobermory b. B5551388662
c. Csaki d. Dsaki2


■日本語訳 Translations into Japanese

(1) 大津 1999
 アピンが弁舌をふるったときは聴衆はまったく信用しなかったが、ウィルフリッドの話を聞くと、たちまち信用してしまった。驚きの嘆声が合唱となって起こった。そのなかで科学者は無言のまま坐って、自分の驚くべき発見の最初の成果を楽しんでいた。
 と、その騒ぎのなかにトバーモリが入ってきた。そしてビロードのような足で音も立てず、わざと無関心を装って、お茶の席に輪になって坐っているみんなのところに近づいてきた。
 急に一座をぎこちない、落ち着かない沈黙が襲った。とにかく、話術能力があると認められた飼い猫と対等に話をするのはなんとなくはばかられた。
「少しミルクを飲む? トバーモリ」とブレムリー卿夫人が少し緊張した声で言った。(……)

   サキ=著 大津栄一郎=訳「トバーモリ」
   『サキ傑作選』角川春樹事務所 ハルキ文庫 1999/03 所収
 
 
(2) 青木 1995
 それまではアピンがいくら説明しても、誰も絶対に信じなかったが、ウィルフレッド卿の話には、皆が即座に納得した。がやがやと騒々しい驚きの嘆声が一斉に沸き上がり、そのざわめきの中で、われらが科学者は一人黙って、自分の途方もない発見がもたらした最初の成果をじっくり味わっていた。
 その大騒ぎのさなか、トウバマーリが部屋に入ってきた。そして、ベルベットの上を歩くような優雅な足どりで進みながら、ティー・テーブルの周りに座っている客たちを、まるで関心のない様子で眺め回した。
 お客たちが突然、ぎごちなく遠慮するように沈黙した。会話能力があるとわかっている飼い猫に、人間並みに対等に話しかけるのには、ばつが悪いと感じるふうがあるようだった。
 「トウバマーリや、ミルクはいかが?」ブレムリー夫人が緊張気味の声でたずねた。(……)

   サキ=著 青木榮一(あおき・えいいち)=訳「おしゃべりな猫」
   クリーヴランド・エイモリー=編 ロビン・アップワード〔ほか〕=写真
   『お気に入りの猫物語—世界の猫文学10選
   ディーエイチシー (DHC) 1995/12 所収
 
   原書:
   Cat Tales: Classic Stories from Favorite Writers,
   edited by Cleveland Amory, photographed by Robin Upward et al.
   * Paperback: Studio (1993)
   * Hardcover: Viking Press (1989)
 
 
(3) 中西 1988
 アピンの話は誰ひとりてんで信用しなかったが、サー・ウィルフリッドの証言で話はたちまち絶対確実となった。驚きの声が一斉に上がってコーラスになった。ミスター・アピンだけは黙ってかけたまま、途方もない大発見の最初の果実を楽しんでいる。
 その大騒ぎの中へトーバモリーが入ってきた。しずしずとビロードのような足取りで、いかにも無関心そうな様子でティー・テーブルを囲んだ連中へ近よった。
 一座は急にぎごちない気まずさにおそわれて静まり返った。知能抜群とみとめられた飼猫と対等に話をするのが何となく間がわるいらしい。
「トーバモリーや、ミルクを飲む?」とブレムリ夫人がいった。少し緊張した声である。(……)

   * サキ=著 中西秀男=訳「トーバモリー」
    『無口になったアン夫人』バベルの図書館 国書刊行会 1988/02 所収
   * サキ=著 中西秀男=訳「トバモリー」
    『ザ・ベスト・オブ・サキ1』ちくま文庫 1988/05 所収
   引用は国書刊行会 1988/02 に拠りました。
 
 
(4) 山主 1984
 アピン氏の話を聞いただけでは、どうせほら話だろうと、だれも信用していなかったのだが、この家の主人の報告を聞いては、だれひとり疑うものはなかった。
「そりゃすごい、ぜひおたくのネコと話をしてみたいですな。」
「どんなネコですか? ちょっとこっちへつれてきて、見せてくださいませんか。」 と大さわぎになった。アピン氏はだまってにやにやしながら、一同のおどろくようすを見て楽しんでいる。
 そこへどうやら気がむいたとみえて、トバモリーがのっそりとはいってきた。そして、びろうどのような足で、音も立てずにテーブルをかこんでいるみんなのそばへよってきた。みんなはきゅうにだまってしまった。ネコと人間が話をするなんて、どう考えてもぐあいがわるいのだ。
「トバモリーや、牛乳を飲むかい?」
 ブレムリー夫人が少しうわずったような声で聞いた。(……)
[原文にあるルビは省略しました - tomoki y.]

   サキ=著 山主敏子(やまぬし・としこ)=訳「おしゃべりネコ」
   アルジャノン・ブラックウッド〔ほか〕=著
   『呪いの魔法人形』世界こわい話ふしぎな話傑作集3 第3 イギリス編
   金の星社 1984/01 所収
 
 
(5) 河田 1981
 アピンの話をてんから信じようとしなかった一同も、ウィルフリッド卿の話を聞いてたちまち信じる気になった。がやがやと一斉に驚きの声があがった。アピンは黙って、大発見の初めての反応を楽しんでいた。
 その騒ぎの真っ最中に、トバモリーが入って来たのである。足音を立てずに、わざとらしく落ち着き払って、ティー・テーブルのまわりにいる連中の方へ歩み寄った。 一座は急に気まずくなって、しんと静まり返った。口がきけると言われる飼猫と対等に話をするなんて何となくばつが悪かった。
 ブレムリ夫人が幾分緊張した声で、「トバモリー、ミルクでもどう」と言った。(……)

   サキ=著 河田智雄(かわだ・ともお)=訳「トバモリー」
   『サキ傑作集』岩波文庫 1981/11 所収
 
 
(6) 仁賀 1980, 1984
 アピンは一同に疑惑の眼で見られたが、ウィルフレッド卿の話はたちまち信用された。驚きの声が一斉に上り、騒がしいコーラスになった。その中でアピンは沈黙したまま、この途方もない発見の最初の反応を楽しんでいた。
 大騒ぎの最中に、当のトバーモリーが部屋に入ってきた。ビロードみたいな静かな足どりで、関心なさそうに、ティー・テーブルを囲んだ一同の方に歩み寄った。
 みんなバツの悪い気まずさに急に黙りこくった。かなりの知能を認められた飼猫と対等に話すのは、どうにもこそばゆいものがあった。
「ミルクを飲むかい、トバーモリー?」ブレムリー夫人は少し緊張した声でいった。(……)

   サキ=著 仁賀克雄(じんか・かつお)=訳「トバーモリー」
   仁賀克雄=編訳 フレドリック・ブラウン〔ほか〕=著
   『猫に関する恐怖小説』
   徳間書店(単行本 1980/08|文庫 1984/02)所収
 
 
(7) 柳瀬 1980, 1990
 アピンはまるきり不信心な聴衆に説教をたれていたわけだが、サー・ウィルフリドの言葉はたちまち信仰をもたらした。バベルの都さながらに驚嘆の叫びの大合唱がわき起こり、その渦のなかで当の科学者は無言のまま、自己の途方もない発見の初の成果を楽しんでいた。
 喧噪のさなかにトバモリーがはいってきて、しなやかな足取りで進みながら、ティーテーブルに集まった人々を何気なくちらりと観察した。
 気まずい、ぎこちない沈黙が、すぐさま一同を支配した。知力公認の飼い猫と対等に話をかわすというのは、どこか戸惑いの要素があったらしい。
「ミルクはいかが、トバモリー?」レディ・ブレムレーがいささかうわずった声でいった。(……)

   サキ=著 柳瀬尚紀=訳「トバモリー」柳瀬尚紀=編訳『猫文学大全』
   単行本:大和書房 1980/07 所収
   文庫:河出文庫 1990/02 所収
   この本は、下の原書から16篇を選んで訳出したもの。
 
   原書:
   The Book of Cats, edited by George MacBeth and Martin Booth
   * First edition published by Martin Secker & Warburg (1976)
   * Paperback: Penguin Books (1979)
   * Detailed information of this book, including a table of contents,
    can be found at the Internet Book List (IBList).
 
 
(8) 中村 1961, 1996
 すでにアピンの話で、絶対に懐疑的だった一同も、かなり説きおとされているところであった。そこにもってきて、このウィルフリッド卿の話なので、たちまち確信にかわった。驚愕の叫びがバベルの塔のような合唱となっておこった。そのあいだにあって、アピン氏は無言のまま、彼のとほうもない発見の最初の効果をたのしんでいた。
 この騒ぎのまっただなかに、トバーモリーが部屋にはいってきて、音もたてず、わざとのような無関心さを示しながら、ティー・テーブルをかこんだ一同のほうへ歩いてきた。
 ぎごちなさと息をのむような沈黙が、一座をおそった。すでに人語を解するとわかっている飼猫と、親しい言葉で話すのは、なんとなく気がひけるような気がしたからだった。
「ミルクを飲む? トバーモリー」とブレムリー夫人が、すこしばかり緊張した声で言った。(……)

   サキ=著 中村能三(なかむら・よしみ)=訳「トバーモリー」
   * サマセット・モーム=編『世界文学100選2
    河出書房新社 1961 所収
   * サマセット・モーム=編『世界100物語3 巧みな語り
    河出書房新社 1996/12 所収
 
 
■スペイン語訳 Translation into Spanish
 
Tobermory_spanish_1

   Tobermory by Saki
   E-text at Ciudad Seva
 
 
■英語原文 The original text in English

Appin had preached to absolutely incredulous hearers; Sir Wilfred's statement carried instant conviction. A Babel-like chorus of startled exclamation arose, amid which the scientist sat mutely enjoying the first fruit of his stupendous discovery.

In the midst of the clamour Tobermory entered the room and made his way with velvet tread and studied unconcern across the group seated round the tea-table.

A sudden hush of awkwardness and constraint fell on the company. Somehow there seemed an element of embarrassment in addressing on equal terms a domestic cat of acknowledged dental ability.

"Will you have some milk, Tobermory?" asked Lady Blemley in a rather strained voice. (......)

   Tobermory
   from The Chronicles of Clovis by Saki
   E-text at:
   * Project Gutenberg
   * The Debra Doyle and James D. Macdonald Homepage
   * Electronic Text Center, University of Virginia Library
 
 
■Tobermory の日本語表記
 Transliteration variations of the name "Tobermory" in Japanese

   「トバモリー」 中西 秀男=訳 1988/05
      〃    山主 敏子=訳 1984
      〃    河田 智雄=訳 1981
      〃    柳瀬 尚紀=訳 1980, 1990
   「トバーモリー」仁賀 克雄=訳 1980, 1984
      〃    中村 能三=訳 1961, 1996
   「トバーモリ」 大津栄一郎=訳 1999
   「トウバマーリ」青木 榮一=訳 1995
   「トーバモリー」中西 秀男=訳 1988/02
 
 
■更新履歴 Change log

2008/08/15 中西秀男=訳の書誌情報を補足しました。
2007/06/05 山主敏子=訳 1984/01 を追加しました。
2007/03/28 柳瀬尚紀=訳 1980/07 についての書誌情報を補足しました。
2007/03/26
(1) 柳瀬尚紀=訳 1980/07 を追加しました。
(2) リンク先の指定が誤っていた箇所を訂正しました。
 
 
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