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Saturday, 14 April 2007

Le Monstre Verte / The Green Monster by Gérard de Nerval ネルヴァル「緑の怪物」「緑色の怪物」

■表紙画像と肖像写真 Cover photos and a portrait

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Left The Dedalus Book of French Horror: The 19th Century (1998).  The table of contents is here.
Centre La Dimension Fantastique (1997).  The table of contents is here.
Right Gerard de Nerval (1808-1855), portrait by Nadar (1820-1910), around 1854.  Image source: Wikipedia


■日本語訳 Translations into Japanese

(1) 中村 1999
 それから、隊長は、その場の光景の陽気さと面白さに、段々と図々しくなり、見たところ、薄色ボルドー葡萄酒らしく、首が長い、赤い封印が入念にしてある可愛い罎を一本拾いあげ、その罎を胸に恋人のように抱きしめました。
 四方八方から、狂ったような笑い声が起りました。隊長は、とまどって、思わずその罎を落してしまい、それは粉々に割れてしまいました。
 舞踏は中止され、恐怖の叫び声が、酒倉の四方八方で聞えました。隊長は、流れ出た葡萄酒が血潮の沼になってゆくのを見て、頭の髪が逆立つのを感じました。
 裸の女の体が、彼の足もとに横たわっており、その金髪の髪は地面に拡がり、酒にひたされていたのです。

   ネルヴァル=著 中村真一郎=訳 「緑の怪物」
   『ネルヴァル全集4 幻視と綺想
   筑摩書房 1999/04 所収


(2) 内田 1990
 その場の陽気さと雰囲気にだんだん溶け込み、恐怖心も消えて、首がほっそりとしてあでやかな、そして、見た目に肌白の、丁寧に赤い封蝋がされているボルドー葡萄酒(ぶどうしゅ)の瓶を取り上げ、それを優しく胸に抱きました。
 爆笑がどっとおこり、伍長はびっくりして瓶を落としてしまいました。瓶は粉々に砕けました。
 踊りは中断し、地下室の隅々から恐怖の声が上がりました。床に広がった葡萄酒(ぶどうしゅ)が血の海のようになっていくのを見て、伍長は髪が逆立(さかだ)つのを感じました。
 女の裸体が彼の足元に横たわり、彼女のふさふさとした金髪が床(ゆか)をおおい、こぼれた葡萄酒に垂れていました。

   ネルヴァル=作 内田善孝=訳 「緑の化け物」
   P.—G.カステックス=編
   『ふらんす幻想短篇精華集—冴わたる30の華々(上)』(全2冊)
   透土社 1990/08 所収


(3) 小林 1989
 やがて、軍曹は、ほろ酔いきげんとうき立つような踊りのせいで、しだいに大胆になってきました。ひょろっと首が長くて、どうやらうすい色のワインらしい、しっかり赤の封印がしてあるかわいらしいびんに目がとまると、ふと一本ひろいあげ、やさしく胸にだきしめました。
 どっと、狂ったようなわらい声が、あちこちからあがりました。その拍子に、どぎまぎした軍曹は、思わずびんをはなしました。びんはこなごなに、くだけちりました。
 踊りがやみ、地下室のすみずみに恐怖の叫びがこだましました。どくどく流れだした赤ワインが血の海のように広がり、それを見た軍曹はぞっとなって、髪の毛が逆立つような気分になりました。
 足もとに、女の裸の死体がころがっていました。ブロンドの髪が床にちらばり、血の色をしたワインが、その髪をひたしています。
[原文にあるルビは省略しました - tomoki y.]

   ジェラール・ド・ネルヴァル=作 小林修=訳 「緑の怪物」
   江河徹=編 『恐ろしい幽霊の話』 幻想文学館1 くもん出版 1989/08 所収


(4) 長島 1988
 やがて、その場の陽気で魅力あふれる雰囲気にそそのかされて、軍曹は淡い青色の壜(そのように見えた)の、念入りに赤い封印をした、細長い首の一本をひろいあげると、愛情をこめて胸にだきしめた。
 すると気ちがいじみた笑いがあちこちからきこえた。軍曹は当惑し、思わず壜を落としてしまった。酒壜はこなごなにくだけた。
 踊りがとまり、酒倉の四方八方から恐怖の叫び声がわきおこった。流れ出たぶどう酒が床に血の海をつくるのを見て、軍曹は髪の毛がぞっと逆立つのをおぼえた。
 裸の女の死体が、彼の足もとに横たわっていた。ブロンドの髪は床にひろがり、ぶどう酒の血のなかにつかっている。
[原文にあるルビは省略しました - tomoki y.]

   ジェラール・ド・ネルヴァル=作 長島良三(ながしま・りょうぞう)=訳
   「緑色の怪物」
   長島良三=編 『フランス怪奇小説集
   偕成社文庫 1988/08 所収


(5) 村松 1987
 それからしだいに、魅わく的な光景と、陽気なありさまにのせられて、細長い首の、一本の愛らしいびんを手にとった。それは見たところ、色のあわいボルドー酒のびんで、ていねいに赤い封印がされている。巡査部長は、愛情こめてそのびんを胸におしあてた。
 はじけるような、ばか笑いが、四すみからわきおこり、当わくした巡査部長は、びんをとりおとした。びんはこなごなにくだけちった。
 ダンスは中断し、地下室のすみずみで恐怖のさけびが聞かれた。巡査部長には、ながれたワインが血の海をなしていくように見え、髪がさかだつのをおぼえた。
 ブロンドの髪が地べたにひろがって、液体にひたり、はだかの女の体が、足もとによこたわっていた。
[原文にあるルビは省略しました - tomoki y.]

   ジェラール・ネルヴァル=作 村松定史(むらまつ・さだふみ)=訳
   「緑色の怪物」
   『悪魔の肖像画』 世界こわい話ふしぎな話傑作集18
   金の星社 1987/02 所収


(6) 秋山 1979
 様子が面白そうで、かつは陽気であったため次第に図太くなった彼は、見たところ赤の封印が念入りにされているらしい薄色ボルドー酒の、長頸の形のいかにも愛らしい一本の壜を拾いあげると、愛情たっぷりで自分の胸に抱きしめたのだった。
 四方八方から狂ったような笑い声が湧き上がった。当惑した組頭は壜を取り落し、壜は粉々に砕け散った。
 踊りがはたと止み、恐怖の叫び声が穴倉の四隅に響きわたった。ぶちまけられた葡萄酒が見る見る血の沼のようにひろがってゆくのを見た組頭は、髪の毛が逆立つのを感じていた。
 床に拡がった金髪をその血の沼にひたし、一人の女が裸の屍体となって彼の足もとに横たわっていた。

   ジェラール・ド・ネルヴァル=著 秋山和夫=訳 「緑色の怪物」   
   紀田順一郎+荒俣宏=編 『怪奇幻想の文学5 怪物の時代』(全7巻)
   新人物往来社(新装版)1979/08 所収


(7) 渡辺 1976, 1988
 それから、組頭は、その場の光景が陽気でしたし、魅入(みい)られたようになって、だんだんに図太くなり、見たところ、薄色(うすいろ)ボルドー葡萄酒(ぶどうしゅ)らしく、首が長い、赤い封印が入念にしてある愛くるしい罎一本拾いあげ、その胸に後生大事に抱(だ)きしめました。
 四方八方から、狂ったような笑い声が発せられました。組頭は、当惑(とうわく)して、思わずその罎を落してしまい、それは粉々に、砕(くだ)け散りました。
 舞踏は中止され、恐怖(きょうふ)の叫び声が、酒倉の四方八方で聞えましたが、組頭は、見ると、流れ出た葡萄酒が血潮の沼(ぬま)になってゆくように思われ、頭髪(とうはつ)が逆立つのを感じました。
 裸(はだか)の女の体が、彼の足もとに横たわっており、そのブロンドの頭髪は地面に拡がり、酒にひたされていたのです。

   ネルヴァル=著 渡辺一夫=訳 「緑の物怪(もののけ)」
   * 渡辺一夫〔ほか〕=監修 『ネルヴァル全集3』 筑摩書房 1976/06 所収
   * 安野光雅〔ほか〕=編 『ちくま文学の森7』 筑摩書房 1988/06 に再録
   引用は、1988年版に拠りました。


(8) 澁澤 1969, 1982, etc.
 やがて次第に、ほろ酔い機嫌とその場の陽気な雰囲気に誘われて、大胆になった彼は、そこにあった薄色のボルドー葡萄酒の、念入りに赤い封印をした、頸の長い魅力的な形の一本を拾いあげると、ほれぼれと胸に抱きしめた。
 すると突然、気違いじみた笑い声がまわり中からどっと湧き起り、憲兵隊長はどぎまぎして、瓶を手から取り落した。瓶は粉々に砕け散った。
 踊りがぴたりと止まり、恐怖の叫びが穴倉の四隅に響きわたった。ぶちまけられた葡萄酒が、血の沼のようにひろがるのを見ると、憲兵隊長は髪の毛がぞっと逆立つのをおぼえた。
 彼の足もとには、裸の女の屍体が横たわっていた。その金髪は床にひろがり、葡萄酒の血に浸されていた。

   ジェラール・ド・ネルヴァル=作 澁澤龍彦=訳 「緑色の怪物」
   * 平井呈一=編 『怪奇小説傑作集4』
     創元推理文庫(初版 1969/06|新版 2006/07)所収
   * 『仏蘭西短篇飜訳集成1』 立風書房 1982/03 に再録
   * 『澁澤龍彦翻訳全集11』 怪奇小説傑作集4 他(全15巻・別巻1)
     河出書房新社 1997/09 にも再録


■Paris Tales: Stories translated by Helen Constantine


■英訳 Translation into English

Then, made more and more bold by this gay and charming spectacle, he picked up a beautiful bottle with a long neck, a pale Bordeaux it seemed, elegantly sealed in red, and pressed it amorously to his breast.

There was frenzied laughter throughout the cellar. The sergeant, much intrigued, le the bottle drop and it smashed into a thousand pieces.

The dancing stopped, cries of fear could be heard from every corner of the cellar, and the sergeant felt his hair stand on end as he watched the spilt wine turn into a pool of blood before his very eyes.

The body of a naked woman, her blonde hair soaked in the wet blood, was lying spread out on the floor at his feet.

   The Green Monster by Gérard de Nerval
   Paris Tales, Stories translated by Helen Constantine
   Oxford University Press, 2004
   Preview at Google Books


■フランス語原文 The original text in French

Puis, de plus en plus encouragé par gaieté et le charme du spectacle, il ramassa une aimable bouteille à long goulot d'un bordeau pâle, comme il paraissait, et soigneusement cachetée de rouge, et la pressa amoureusement sur son coeur.

Des rires frénétiques partirent de tous côtés : le sergent, intrigué, laissa tomber la bouteille, qui se brisa en mille morceaux.

La danse s'arrêta, des cris d'effroi se firent entendre dans tous les coins de la cave, et le sergent sentit ses cheveux se dresser en voyant que le vin répandu paraissait former une mare de sang.

Le corps d'une femme nue, dont les cheveux blonds se répandaient à terre et trempaient dans l'humidité, était étendu sous ses pieds.

   Le Monstre Vert by Gérard de Nerval
   E-text at Erik's Ponderings


■Le sergent とは?

上にご覧のとおり、"Le sergent" の日本語訳は、訳者によってバラバラです。はたして、どれが適訳なのでしょうか?

   軍 曹    小林 修 =訳 1989
   軍 曹    長島 良三=訳 1988
   憲兵隊長  澁澤 龍彦=訳 1969, 1982, 1997, 2006
   伍 長    内田 善孝=訳 1990
   巡査部長  村松 定史=訳 1987
   組 頭    秋山 和夫=訳 1979
   組 頭    渡辺 一夫=訳 1976, 1988
   隊 長    中村真一郎=訳 1999


■更新履歴 Change log

2011/01/19 Paris Tales のEブックと英訳を追加しました。
2007/06/18 内田善孝=訳 1990/08 を追加しました。
2007/06/04 村松定史=訳 1987/02 を追加しました。また、
         「Le sergent とは?」の項目を新設しました。


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