« The Case of Lady Sannox by Arthur Conan Doyle コナン・ドイル 「サノックス卿夫人の事件」 | Main | 上田秋成 「浅茅が宿」(『雨月物語』より) The House Amid the Thickets (from the Tales of Moonlight and Rain) by Ueda Akinari »

Wednesday, 04 April 2007

The Story of Mimi-Nashi-Hoichi by Lafcadio Hearn ラフカディオ・ハーン/小泉八雲「耳なし芳一」

a. B00004w3hf b. Creolecookbook c. 520flaefd

d. Hearn_1 e. 4484981157 f. 4623040445

             ↑ Click to enlarge ↑
 
a.『怪談』(1964) 監督:小林正樹 出演:三國連太郎、岸恵子 ほか
 Image source: Japan-101.com
b. Lafcadio Hearn's Creole Cookbook, supposedly the first Creole
 cookbook ever written. Image source: The Book Merchant
c. Lafcadio Hearn at the age of 40 in Matsue City.
 Image source: Metropolis Tokyo
d. Page 1 of "A Dead Secret" (「葬られた秘密」), a six page story
 that was done as a sample of the larger manga book:
 Lafcadio Hearn's Japanese Ghost Stories, written by Sean Michael Wilson
 and illustrated by Haruka Miyabi (out in spring 2007 from a new US
 publishing house Demented Dragon).
e.『ラフカディオ・ハーンのクレオール料理読本』TBSブリタニカ (1998).
 上掲 b. の邦訳。
f. 平川祐弘=著『ラフカディオ・ハーン—植民地化・キリスト教化・文明開化
 ミネルヴァ書房 (2004)
 
 
■日本語訳の例 A list of some translations into Japanese

    訳者    作品名     書名   出版社/シリーズ  発行年
0. 小林幸治 -- 耳なし芳一の話 -- 『怪談:怪しい物の話と研究』 --
                               プロジェクト杉田玄白 -- 2007
1a.池田雅之 -- 耳無し芳一 -- 『新編 日本の怪談』 -- 角川ソフィア文庫 -- 2005
1b.池田雅之 -- 耳無し芳一 -- 『妖怪・妖精譚』 -- ちくま文庫 -- 2004
2. 荻野祥生 -- 耳なし芳一の話 -- 『小泉八雲 日本の心』 -- 彩図社 -- 2003
3. 脇 明子 -- 耳なし芳一の話 -- 『雪女 夏の日の夢』 -- 岩波少年文庫 -- 2003
4. 船木 裕 -- 耳なし芳一 -- 『完訳 怪談』 -- ちくま文庫 -- 1994
5a.保永貞夫 -- 耳なし芳一 -- 『齋藤孝のイッキによめる!…』 -- 講談社 -- 2005
5b.保永貞夫 -- 耳なし芳一 -- 『八雲怪談傑作集』 -- 講談社青い鳥文庫 -- 1992
6. 平川祐弘 -- 耳なし芳一 -- 『怪談・奇談』 -- 講談社学術文庫 -- 1990
7. 中山伸子 -- 耳なし芳一 -- 『恐ろしい幽霊の話』 -- くもん出版 -- 1989
8. 奥田裕子 -- 耳なし芳一 -- 『小泉八雲作品集3』 -- 河出書房新社 -- 1977
9. 斎藤正二 -- 耳なし芳一のはなし -- 『完訳 怪談』 -- 講談社文庫 -- 1976
10. 上田和夫 -- 耳なし芳一のはなし -- 『小泉八雲集』 -- 新潮文庫(新) -- 1975
11. 白木 茂 -- 耳なし芳一の話 -- 『怪談』 -- 旺文社ジュニア図書館 -- 1971
12a.平井呈一 -- 耳なし芳一のはなし -- 『怪談』 -- 岩波文庫(改版) -- 1965
12b.平井呈一 -- 耳なし芳一の話 -- 『全訳 小泉八雲作品集10』 -- 恒文社 -- 1964
13. 田代美千稔 -- 耳なし芳一のはなし -- 『怪談・奇談』 -- 角川文庫 -- 1956
14. 平井程一 -- 耳無芳一のはなし -- 『怪談』 -- 岩波文庫(旧版) -- 1940
15. 山本供平 -- 耳無し芳一の話 -- 『Kwaidan (2)』 -- 春陽堂 -- 1932
16a.森 銑三+萩原恭平 -- 耳なし芳一の話 -- 『十六桜』 -- 研文社 -- 1990
16b.刈谷新三郎+萩原恭平 --
           耳なし芳一の話 -- 『小泉八雲選集2』 -- 嶺光社 -- 1927
17a.戸川明三 -- 耳無芳一の話(新字・新かな) 青空文庫 -- 2004
17b.戸川明三 -- 耳無芳一の話 -- 『小泉八雲集(上)』 -- 新潮文庫(旧) -- 1950
17c.戸川明三 -- 耳無芳一の話 -- 『小泉八雲全集8家庭版』 -- 第一書房 -- 1937
17d.戸川明三 -- 耳無芳一の話 -- 『小泉八雲全集7學生版』 -- 第一書房 -- 1931
17e.戸川明三 -- 耳無芳一の話 -- 『小泉八雲全集7』 -- 第一書房 -- 1926


■上掲日本語訳からの抜粋 Excerpts from the translations listed above

0. 小林 2007
(……)男たちは直ちに墓地へ駆けつけ、そこで、提灯の明かりを頼りに・・・雨の中を唯ひとり安徳天皇の慰霊碑の前に座り、琵琶の音を響かせ、壇ノ浦の合戦のくだりを大声で詠唱している・・・芳一を探し当てた。彼の背後や周囲の墓石の上のいたる所に死人の炎が蝋燭の火のように燃えていた。かつてこれほど多くの鬼火の群れが生者(しょうじゃ)を前に現れた事はなかった。

   ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)=著 小林幸治=訳「耳なし芳一の話
   『怪談:怪しい物の話と研究
   プロジェクト杉田玄白 正式参加作品 2007/08


1. 池田 2004, 2005
(……)男たちは、すぐに墓地へと急ぎ、提灯の明かりをたよりに、芳一を見つけだしました。
 芳一は、安徳天皇の墓碑の前で、雨にうたれながらひとり座って、琵琶をかきならし、壇の浦の合戦のくだりを声高(こわだか)く吟じているところでした。芳一のうしろにも、まわりにも、墓の上にも、いたるところに、死者の火が、ろうそくのように揺れているではありませんか。これまで、こんなにたくさんの鬼火が、人の目の前に現れたことはありませんでした。
   小泉八雲=著 池田雅之(いけだ・まさゆき)=訳「耳無し芳一」
   1a. 池田雅之=編訳『新編 日本の怪談』角川ソフィア文庫 2005/07 所収
   1b. 池田雅之=編訳『妖怪・妖精譚』小泉八雲コレクション
    ちくま文庫 2004/08 所収

   上の引用は 1b. に依拠しました。1a.1b. とでは、用字・改行など細部が
   少し異なります。
 
 
2. 荻野 2003
(……)寺男は墓地へ急いだ。
 そこには雨の中、独り、安徳天皇の御陵(ごりょう)の前で琵琶を掻き鳴らし、壇ノ浦の合戦を吟じている芳一の姿があった。芳一を取り囲むように、また、墓地のいたるところにも、数知れぬ鬼火が、蝋燭(ろうそく)のように燃えていた。かつてこれほどの鬼火が現れたことはなかった。
   ラフカディオ・ハーン=著 荻野祥生=訳
   「耳なし芳一の話」
   和田久實(わだ・ひさみつ)=監訳『小泉八雲 日本の心
   彩図社 2003/08 所収
 
 
3. 脇 2003
(……)それでも寺男たちは、墓地へと急いだ。
 提灯(ちょうちん)の明かりで照(て)らしてみると、はたしてそこには芳一(ほういち)がいた。雨に打たれてただ一人、安徳(あんとく)天皇のために作られた墓碑(ぼひ)の前にすわった芳一は、琵琶(びわ)を奏(かな)で、壇之浦(だんのうら)の戦いの物語を朗々(ろうろう)と語っていた。そのうしろや、身体(からだ)のまわり、そこらじゅうの墓(はか)の上では、亡霊(ぼうれい)たちの炎(ほのお)がろうろくのように燃えていた。生きている人間の目に、そんなにたくさんの鬼火(おにび)が一度に見えたためしはなかった。
   ラフカディオ・ハーン=著 脇明子(わき・あきこ)=訳
   「耳なし芳一の話」
   『雪女 夏の日の夢』岩波少年文庫 2003/03 所収
 
 

4. 船木 1994
(……)男たちは墓地に駆けつけるや、提灯の明かりをたよりに、ついに芳一の姿を見い出しました——雨のそぼ降る中をたった一人、安徳天皇のお墓の前に座り込み、壇の浦の合戦の段を高らかに語りつつ、琵琶をかき鳴らしていたのです。その背後にも、周囲にも、墓場一面至るところに、亡者の陰火がゆらめいて、無数の蝋燭が燃えているように見えます。これほどおびただしい数の鬼火が一度に現われることなぞ、いまだかつて見たためしがありません。
   ラフカディオ・ハーン=著 船木裕(ふなき・ひろし)=訳
   「耳なし芳一」
   『完訳 怪談』ちくま文庫 1994/06 所収
 
 
5. 保永 1992, 2005
(……)下男たちは、すぐ墓地のほうへいそいでいった。そして、ちょうちんの明かりで、芳一を見つけだした。
 芳一は、雨のふるなかを、安徳天皇の御陵(ごりょう)の前に、一人きちんとすわって、琵琶をかき鳴らしながら、壇ノ浦の合戦のくだりを、高らかに語っているのだった。
 そして、芳一のまわり、また、墓の上のいたるところには、亡者(もうじゃ)の火が、まるで、ろうそくのように、青白く燃えていた。これほどたくさんの鬼火が、この世の人の目に見えたことは、かつてなかった……。
[原文にあるルビの一部を省略しました - tomoki y.]
   小泉八雲=作 保永貞夫(やすなが・さだお)=訳「耳なし芳一」
   5a.齋藤孝のイッキによめる! 名作選 小学3年生
    講談社 2005/03 所収
   5b.耳なし芳一・雪女—八雲怪談傑作集
    講談社青い鳥文庫 1992/06 所収
 
 
6. 平川 1990
(……)驚いた人々はすぐ墓地へ提灯をかざして急いだ。そして芳一がただひとり雨の中で安徳天皇の御墓の前に坐って琵琶を弾き、壇ノ浦の合戦の段を大きな声で語っている姿を見つけたのである。そして芳一の背後にも、まわりにも、また墓という墓の上にも、たくさんの鬼火がさながら蝋燭(ろうそく)のごとく燃えている。かつてこれほどの鬼火の大群が人間の目にふれたことはなかろうと思われた。
   小泉八雲=著 平川祐弘(ひらかわ・すけひろ)=訳「耳なし芳一」
   『怪談・奇談』講談社学術文庫 1990/06 所収
 
 
7. 中山 1989
 寺男たちはいそいで墓へはいっていった。なんということだろうか。ちょうちんをかかげながら、さぐってみると、芳一がいるではないか——雨にうたれながら、熱をこめて琵琶をかき鳴らし、一心に壇ノ浦の合戦のくだりを語っている。ひとりきりで、すわっているところは、なんと安徳天皇のお墓のまえ。
 芳一のまえにもうしろにも、ぐるりととりかこむ墓のいたるところに、ものすごい数の鬼火がゆれていた。こんなにもたくさん鬼火が燃えたとは、見たことも聞いたこともなかった。
[原文にあるルビは省略しました - tomoki y.]
   小泉八雲=著 中山伸子=訳「耳なし芳一」
   江河徹=編『恐ろしい幽霊の話』幻想文学館1
   くもん出版 1989/08 所収
 
 
8. 奥田 1977
(……)男達は墓地へ駆け込み、提灯の明りを頼りにやっとのことで芳一を探し出した。芳一は、たった一人雨に打たれながら、安徳天皇のお墓の前で、壇ノ浦の戦いを語りつつ、琵琶をかき鳴らしていたのである。芳一の後にもまわりにも、墓地一面に鬼火がゆらめいて、まるでろうそくの火のように燃えていた。これほど沢山の鬼火が一度に舞うことなど、かつてなかったことだった。
   ラフカディオ・ハーン=著 奥田裕子(おくだ・ひろこ)=訳
   「耳なし芳一」
   『小泉八雲作品集3—物語の文学』河出書房新社 1977/08 所収
 
 
9. 斎藤 1976
(……)だが、男たちは、すぐさま、墓地のほうへ急いで行った。そして、提灯のあかりをたよりに、芳一の姿を見つけだした。——芳一は、降りしきる雨のなかを、安徳天皇の墓碑のまえのところに、ひとり端座して、琵琶をかき鳴らしながら、壇の浦の合戦のくだりを声高らかに歌いかたっているのであった。そして、その芳一の背後にもまわりにも、それからまた墓碑という墓碑の上方いたるところに、亡者の火が、さながら蝋燭をともしたごとくに燃えていた。あとにもさきにも、これほどたくさんの鬼火が、このうつしみの世の人間の目に見えたためしはなかった。……
   ハーン=著 斎藤正二(さいとう・しょうじ)=訳
   「耳なし芳一のはなし」
   『完訳 怪談』講談社文庫 1976/10 所収
 
 
10. 上田 1975
(……)しかし、寺男たちはすぐに墓地へ急いだ。そしてそこで、提燈のあかりをたよりに、芳一のすがたを見つけた——雨のなかを、安徳天皇の陵墓の前にひとり坐(ざ)して、琵琶をかき鳴らしながら、壇ノ浦の合戦のくだりを、声高らかにかたっているのである。そして彼のうしろや、まわりや、墓の上のいたるところに、幽霊火が、御燈火(みあかし)のように燃えていた。かつてこれまで、これほどの鬼火が、人の目にふれたことはなかった……。
   小泉八雲=著 上田和夫=訳「耳なし芳一のはなし」
   『小泉八雲集』新潮文庫(新版)1975/03 所収
 
 
11. 白木 1971
 ふたりの寺男(てらおとこ)は、ふしぎに思って、墓地のほうへいってみました。すると、まっ暗な墓地には、うすきみわるいおに火が、あっちにもこっちにも、もえているではありませんか。
 そして、そのおに火にかこまれるようにして、芳一が雨にうたれながら、安徳天皇のお墓のまえで、びわをかまえ、むちゅうになって、壇の浦のたたかいの場面を、声をはりあげてかたっているのでした。
 芳一のまわりには、まえにもうしろにも、そしてまた、どのお墓の上にもおに火がろうそくの火をともしたように、もえているのです。こんなにたくさんのおに火を見るのは、寺男たちにとっては、生まれてはじめてでした。
[原文にあるルビの一部を省略しました - tomoki y.]
   ハーン=作 白木茂(しらき・しげる)=訳「耳なし芳一の話」
   『怪談(ふしぎな話)』旺文社ジュニア図書館 1971/04 所収
 
 
12. 平井 1964, 1965
(……)寺男たちは、ちょうちんのあかりをたよりに、墓地のなかにいる芳一を、ようやくのことで見つけだした。芳一は、降りしきる雨のなかに、ひとりしょんぼりと、安徳天皇の陵(みささぎ)のまえに端座して、錚々(そうそう)と琵琶をかきならしながら、しきりと声をはりあげて、壇の浦合戦の段を語っていたのである。その芳一のうしろにも、まわりにも、また墓碑という墓碑の上にも、ちょうど無数の燭をともしたように、陰々たる鬼火が燃えたっていた。あとにもさきにも、こんなにおびただしい陰火が人間の目に見えたことは、ついぞためしのないことであった。
   12a. ラフカディオ・ハーン=作 平井呈一=訳「耳なし芳一のはなし」
    『怪談—不思議なことの物語と研究』岩波文庫(改版)1965/09 所収
   12b. 小泉八雲=著 平井呈一=訳「耳なし芳一の話」
    『全訳 小泉八雲作品集10 骨董・怪談・天の川綺譚
    恒文社 1964/06 所収
 
 
13. 田代 1956
(……)しかし、下男たちは、すぐ墓地のほうへ急いで行った。そして、提灯の明りで、芳一を見つけだした。——雨のなかを、安徳天皇の御陵(ごりょう)のまえに、ひとり端座(たんざ)して、琵琶をかき鳴らしながら、壇の浦の合戦の歌を、高らかにうたっているのであった。そして、彼のうしろにもまわりにも、それからまた墓の上のいたるところに、亡者の火が、まるで蝋燭のように燃えていた。かつて、これほどたくさんの鬼火が、この世の人の目に見えたためしはなかった。……
   ラフカディオ・ハーン=著 田代美千稔(たしろ・みちとし)=訳
   「耳なし芳一のはなし」『怪談・奇談』角川文庫 1956/11 所収
 
 
14. 平井 1940
(……)けれども寺男たちはすぐと墓地の方へ急いで行つた。そして提灯のあかりで、やつと墓地の中にゐる芳一を見つけ出した。芳一は降りしきる雨の中に、一人しよんぼりと、安徳天皇の御陵のまへに端坐して、錚々と琵琶をかき鳴らしながら、しきりと聲を張りあげて、壇の浦合戰の段を誦してゐたのである。その芳一のうしろにもまはりにも、それからまた墓石といふ墓石のうへにも、ちやうど無數の燭をともしたやうに鬼火が燃え立つてゐた。おそらく人間の目に、これほどの夥しい鬼火の見えたことは例(ためし)があるまいと思はれた。‥‥
   ラフカディオ・ヘルン=作 平井呈一=訳「耳無芳一のはなし」
   『怪談—不思議な事の研究と物語』岩波文庫(旧版)1940/10 所収
 
 
15. 山本 1932
(……)併し人々は直ぐに墓場へと急いだ。そして其處に、彼等は提燈の明りで芳一を見出した——彼は雨の降りしきる中を安徳天皇の御陵の前でたゞ獨り端座して、琵琶を掻き鳴らし、壇の浦の戰の詞章を聲高く吟じてゐるのであつた。そして芳一の後ろや、四圍や、墓の上空到るところに、ひとだまが臘燭の灯の樣に燃えてゐた。これまでについぞ、こんなにも澤山な鬼火が人の眼に觸れたことはなかつたのだ。……
   ラフカディオ・ハーン=著 山本供平(やまもと・きょうへい)=譯註
   「耳無し芳一の話」『Kwaidan (2)』春陽堂 1932/06 所収
   (ただし扉には「Kawidan」と表記)
 
 
16. 刈谷+萩原 1927, 森+萩原 1990
(……)しかし人々はすぐに墓場へ急いだ。そしてそこに、彼等の提灯の明りによつて見出した——安徳天皇の陵墓の前に、雨の中にひとりで坐り、琵琶を掻き鳴らし、壇の浦の戦の詞章を高く誦(ず)してゐる芳一を。そして彼の後、彼のまはりには、墓の上の到るところには、死者の火が蝋燭の灯のやうに燃えてゐた。これまでついぞ、これほど多くの鬼火の数が人の目に触れたことはなかつた。……   
   16a. 小泉八雲=著
    森銑三(もり・せんぞう)+萩原恭平(はぎわら・きょうへい)=共訳
    「耳なし芳一の話」『十六桜—小泉八雲怪談集』研文社 1990/09 所収
   16b. 小泉八雲=著
    刈谷新三郎(=かりや・しんざぶろう)+萩原恭平=訳「耳なし芳一の話」
    『小泉八雲選集 第2篇』嶺光社+開隆堂=相版 1927/01(昭和2)所収

   「刈谷新三郎」は森銑三のペンネーム、つまり森氏と刈谷氏は同一人物です。
 
 
17. 戸川 1926, 1931, etc.
(……)しかし、男達はすぐに墓地へと急いで行つた、そして提燈の明かりで、一同は其處に芳一を見つけた——雨の中に、安徳天皇の記念の墓の前に獨り坐つて、琵琶をならし、壇ノ浦の合戰の曲を高く誦して。その背後(うしろ)と周圍(まはり)と、それから到る處澤山の墓の上に死者の靈火が蝋燭のやうに燃えて居た。未だ嘗て人の目にこれほどの鬼火が見えた事はなかつた……
   小泉八雲=著 戸川明三(とがわ・めいぞう)=譯「耳無芳一の話」
   『怪談—不思議な事の研究と物語』
   17a. E-text at 青空文庫(ただし、新字・新かな)2004/03
   17b. 古谷綱武(ふるや・つなたけ)=編『小泉八雲集(上)
    新潮文庫(旧版)1950/07 所収
   17c.小泉八雲全集第八卷家庭版』第一書房 1937/01(昭和12)所収
   17d. 田部隆次=編『學生版 小泉八雲全集第七卷』第一書房
    1931/01(昭和6)第二囘豫約刊行
   17e. 田部隆次=編『小泉八雲全集第七卷』第一書房 1926/07(大正15)所収

   戸川明三は、評論家・英文学者・随筆家「戸川秋骨」の本名です。
 
 
■英語原文 The original text in English

(....) But the men at once hastened to the cemetery; and there, by the help of their lanterns, they discovered Hoichi--sitting alone in the rain before the memorial tomb of Antoku Tenno, making his biwa resound, and loudly chanting the chant of the battle of Dan-no-ura. And behind him, and about him, and everywhere above the tombs, the fires of the dead were burning, like candles. Never before had so great a host of Oni-bi appeared in the sight of mortal man....

   The Story of Mimi-Nashi-Hoichi
   from Kwaidan, Stories and Studies of Strange Things
   by Lafcadio Hearn
   March 25, 1904

   E-text at:
   * Eldritch Press by Eric Eldred
   * Gaslight
   * K. Inadomi's Private Library
 
 
■ハーンによる英文原書『怪談』に関する詳細な書誌
 Detailed bibliography on Kwaidan, Hearn's collection of ghost stories
 in English

   Kwaidan: Stories and Studies of Strange Things
   in Lafcadio Hearn Bibliography by Steve Trussel
 
 
■ハーン「耳なし芳一」の原拠とされる文献
 A document deemed to be the original source of Hearn's 'The Story
 of Mimi-Nashi-Hoichi'

*『臥遊奇談』 巻之二 琵琶秘曲泣幽靈(びハのひきょくゆうれいをなかしむ)
(……)はるかに琵琶(びハ)の声の聞へけれバこれをしたひて一所(しょ)にいたるに、安徳帝御陵(あんとくていミさゝぎ)の御前(まへ)に、芳一琵琶(びハ)を弾(たん)じて座(ざ)す(……)

   富山大学附属図書館の「ヘルン文庫」に架蔵されているラフカディオ・ハーン
   旧蔵の諸本のうち、「耳なし芳一」の原拠とされる『臥遊奇談』巻之二から、
   上の日本語訳各版の引用部分に対応する箇所を引用しました。
   典拠:平川祐弘=編『怪談・奇談』講談社学術文庫 1990/06   

   ハーンは、自由に読み書きができるほど、日本語に堪能ではなかったので、
   節子夫人が古本や貸本屋の昔話を、読んだり語ったりするのを何度も
   繰り返すうちに、表現が練り上げられ、高い文学的効果をしめすハーンの
   再話作品ができあがっていったようです。
 
* その現代日本語訳(根岸泰子さんによる)
(……)はるかかなたに琵琶の音と語る声とが聞こえたため、それを目当てにいってみたところ、安徳天皇の御墓所の前に芳一がひとり琵琶を弾じながら座っていた。(……)

   『臥遊奇談』巻の二 琵琶の秘曲が幽霊を感泣させたはなし から引用
   しました。
 
 
■有益なサイト Useful websites

   * Lafcadio Hearn by Steve Trussel
   * 小泉八雲関連リンク集(福島大地さんのウェブサイト内)
   * ラフカディオ・ハーン・リンク集(根岸泰子さんのウェブサイト内)
   * 八雲文庫オンライン目録(島根大学附属図書館所蔵)
   * Study Material for Lafcadio Hearn by Edward Marx,
    Department of Humanities, Faculty of Law and Letters,
    Ehime University
 
 
■更新履歴 Change log

2007/06/02
(1) 森銑三+萩原恭平=訳 1990/09、および刈谷新三郎+萩原恭平=訳 1927/01 を追加しました。
(2) 日本語訳の例 A list of some translations into Japanese の項を新設しました。

2007/05/26
『新・日本児童文学選2』偕成社 1965/07 をリストから外しました。

これまで、この版を『怪談—不思議なことの物語と研究』岩波文庫(改版)1965/09、『全訳 小泉八雲作品集10 骨董・怪談・天の川綺譚』1964/06 の2つの版と、ひとくくりして挙げておりました。

しかし、じつは偕成社版は児童向きであり、他の2つの版とのあいだには、字句の細部に異同が見られます。別立てで偕成社版の引用を示すことも可能ではあります。が、ちょっと煩瑣に過ぎるかと思われました。そこで、不正確さや誤解をふせぐために、いっそのこと削除することにしました。

2007/05/23
(1) 池田雅之=訳の書誌情報を補足しました。
(2)「有益なサイト」に Edward Marx 氏によるものを追加しました。

2007/05/22
これまで、後の版とひとくくりして挙げておりました平井呈一=訳 1940/10(岩波文庫・旧版)が、おなじ訳者による後の版とは、かなり異なることに気がつきましたので、別立てにして挙げることにしました。そのちがいとは、たとえば——

              1940年版          後年の版
   著者名の表記:  ヘルン          ハーン
   書名の副題:   不思議な事の研究と物語  不思議なことの物語と研究
   物語の題名表記: 耳無芳一のはなし     耳なし芳一の話(/はなし)

などです。そのほか、本文の字句、用字・仮名遣い・句読点・ルビなどにも、ちがいが見られます。

2007/05/15
山本供平=譯註 1932/06 の書名について。図書館の目録などには通常 "Kwaidan" と記載されているようです。このページでも、これまで "Kwaidan" と表記していました。ところが、つい先ほど、この本の扉には "Kawidan" と印刷されていることに気がつきました。不審に思われるかたもあるかもしれません。とりあえず、異綴りが存在する事実のみを指摘しておきます。

2007/05/14
戸川明三=譯の書誌情報を修正・補足しました。

2007/05/12
脇明子=訳 2003/03 を追加しました。

2007/04/30
(1) 船木裕=訳 1994/06 を追加しました。
(2) 画像d. e. f. を追加しました。

2007/04/12
池田雅之=訳 2004/08、上田和夫=訳 1975/03、および山本供平=譯 1932/06 を追加しました。
 
 
■和書 Books in Japanese
(1) ラフカディオ・ハーン + 怪談

(2) 小泉八雲 + 怪談

(3) 耳なし芳一

■洋書 Books in non-Japanese languages

■DVD

 
 

|

« The Case of Lady Sannox by Arthur Conan Doyle コナン・ドイル 「サノックス卿夫人の事件」 | Main | 上田秋成 「浅茅が宿」(『雨月物語』より) The House Amid the Thickets (from the Tales of Moonlight and Rain) by Ueda Akinari »

Comments

とても面白かったです。ありがとうございました。

Posted by: 山本達也 | Wednesday, 18 April 2007 09:29 am

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference The Story of Mimi-Nashi-Hoichi by Lafcadio Hearn ラフカディオ・ハーン/小泉八雲「耳なし芳一」:

« The Case of Lady Sannox by Arthur Conan Doyle コナン・ドイル 「サノックス卿夫人の事件」 | Main | 上田秋成 「浅茅が宿」(『雨月物語』より) The House Amid the Thickets (from the Tales of Moonlight and Rain) by Ueda Akinari »