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June 2007

Friday, 29 June 2007

Pride and Prejudice by Jane Austen (2) ジェイン・オースティン 『高慢と偏見』『自負と偏見』 (2)

« 1 Pride and Prejudice 3 4 5 »
« 1 高慢と偏見 3 4 5 »

■映画化・テレビ化作品 Film and TV adaptations

a. Pride and Prejudice (1940), a film adaptation with Greer Garson as Elizabeth and Laurence Olivier as Darcy.  Image source: Brilliant Days
b. Pride and Prejudice (1995), a TV mini-series with Colin Firth as Darcy and Jennifer Ehle as Elizabeth.  Image source: University of California, Davis, Women's Resources & Research Center | Fun & Inspiration
c. Pride and Prejudice (2005), a film adaptation with Keira Knightley as Elizabeth and Matthew Macfadyen as Darcy.  Image source: About.com: Hollywood Movies

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a. Pride b. Pride_2_1 c. Pride3

■中国語訳(簡体字)Translation into simplified Chinese

“我实在没有办法死捱活撑下去了。这怎么行。我的感情也压制不住了。请允许我告诉你,我多么敬慕你,多么爱你。”

   作者:简·奥斯汀 《傲慢与偏见》
   E-text at:
   * 天涯在線書庫 (tianyabook.com)
   * 亦凡書庫 (Yifan.net)
   * 酷網 (kuwang.com)


■中國語譯(繁體字)Translation into traditional Chinese

“我實在沒有辦法死捱活撐下去了。這怎麼行。我的感情也壓制不住了。請允許我告訴你,我多麼敬慕你,多麼愛你。”

   珍・奧斯汀(簡・奧斯汀) 《傲慢與偏見》
   E-text at 龍騰世紀 (millionbook.net)


■日本語訳 Translations into Japanese

(1) 小尾 2011
「いたずらに苦しみました。でもだめでした。この気持ちはもう抑えられない。こう申し上げることを許してください、ぼくがどれほど激しくあなたを想い、愛しているかということを」

   オースティン=著 小尾芙佐(おび・ふさ)=訳
   『高慢と偏見(上)』 光文社古典新訳文庫 2011/11/20


(2) 田中 2007
「今までずっと苦しんできたが、もう限界だ。これ以上気持ちを抑えられない。ぼくはきみが好きだ。愛しているんだ」

   ジェイン・オースティン=著 田中淳子(たなか・じゅんこ)=訳
   『高慢と偏見』 HQ Fast Fiction ハーレクイン 2007/12/15


(3) 中野(康)2003
「ずいぶん苦しみましたが、だめでした。もうだめです。ぼくの気持ちはもう抑えられません。はっきり言わせてください。ぼくはあなたが好きです。愛しています」

   ジェイン・オースティン=著 中野康司=訳
   『高慢と偏見(上)』 ちくま文庫 2003/08


(4) 伊吹 1972, 1976, etc.
「苦闘を続けましたがむだでした。だめです。わたしの感情をおさえられません。どれほど熱烈にあこがれ愛してきたかをいわせてくださらなければなりません」

   オースティン=著 伊吹千勢(いぶき・ちせ)=訳
   4a.高慢と偏見(上)』 グーテンベルク21(有料電子テキスト)
   4b.豪華版 世界文学全集5 オースティン』 講談社 1976/10 所収
   4c.高慢と偏見』 講談社文庫 1972/02
   引用は 4c. に拠りました。


(5) 阿部 1963, 1968, etc.
「ぼくはたたかってみましたが、むだでした。どうすることもできません、ぼくの心をおさえることができません。ぼくがどんなにあなたを慕い、愛しているか、申しあげることをお許しください」

   ジェイン・オースティン=著 阿部知二=訳
   5a.高慢と偏見』 河出文庫(新装版) 2006/02
   5b.高慢と偏見』 河出文庫 1996/11
   5c.カラー版 世界文学全集9 オースティン』 高慢と偏見 説きふせられて
      河出書房 1968/05 所収
   5d.世界文学全集2-6 ジェイン・オースティン
      河出書房新社 1963/12 所収
   引用は 5b. に拠りました。


(6) 中野(好)1960, 1963, etc.
「ずいぶん抑えに抑えたのですが、だめなんです。もうだめです。僕のこの気持、どうしてももう抑えることができない。ねえ、どうか言わせてください、どんなにあなたを熱愛しているか」

   オースティン=著 中野好夫=訳
   6a. 自負と偏見』 新潮文庫 1997/07
   6b.自負と偏見(上)』 新潮文庫 1963/06
   6c.世界文學大系28 オースティン/ブロンテ
      オースティン 自負と偏見 ブロンテ 嵐が丘 筑摩書房 1960/01 所収


(7) 富田 1950, 1994
「わたしは努力しましたが、無益でした。もうだめです。わたしの気持はおさえられません。どうか言わせてください、わたしはどんなに熱烈にあなたを崇拝し、あなたを愛しているかしれないのです」

   ジェーン・オースティン=作 富田彬(とみた・あきら)=訳
   7a.高慢と偏見(上)』(全2冊) 岩波文庫(改版)1994/07
   7b.高慢と偏見(上)』(全2冊) 岩波文庫(旧版)1950/08
   7a. は新字、7b.は旧字。引用は 7a. に拠りました。


(8) 野上 1926
「私は無益に苦しみました。だめです。私の感情は抑へられません。私はどんなに熱烈にあなたを賞讃し、あなたを愛してゐるかを云はせて頂きます。」

[原文は、つぎのように総ルビ]
「私(わたくし)は無益(むえき)に苦(くる)しみました。だめです。私(わたくし)の感情(かんじやう)は抑(おさ)へられません。私(わたくし)はどんなに熱烈(ねつれつ)にあなたを賞讃(しやうさん)し、あなたを愛(あい)してゐるかを云(い)はせて頂(いたゞ)きます。」

   ジェーン・オースチン=著 野上豐一郎=譯 『高慢と偏見(上)
   國民文庫刊行會(非賣品)1926/08(大正15)


■ロシア語訳 Translation into Russian

— Вся моя борьба была тщетной! Ничего не выходит. Я не в силах справиться со своим чувством. Знайте же, что я вами бесконечно очарован и что я вас люблю!

   Книга вторая: Глава XI
   Джейн Остен. Гордость и предубеждение
   Translated by И. Маршака
   E-text at:
   * Джейн Остин, Шарлотта Бронте и другие (janeausten.ru)
   * Lib.Ru


■スペイン語訳 Translation into Spanish

––He luchado en vano. Ya no puedo más. Soy incapaz de contener mis sentimientos. Permítame que le diga que la admiro y la amo apasionadamente.

   Orgullo y Prejuicio by Jane Austen
   E-text at Bibliotecas Virtuales.com


■BBCテレビシリーズ 『高慢と偏見』 第1期第3話 ダーシーの1回目の求婚
 BBC Pride and Prejudice, Season 1 Episode 3 Darcy's first proposal


■英語原文 The original text in English

"In vain have I struggled. It will not do. My feelings will not be repressed. You must allow me to tell you how ardently I admire and love you."

   Chapter 34
   Pride and Prejudice by Jane Austen (1813)
   Paperback: Penguin Classics (2003)

   E-text at:
   * The Republic of Pemberley
   * Tilneys and Trapdoors
   * classiclit.about.com
   * Project Gutenberg
   * 19thNovels.com
   * bartleby.com
   * austen.com
   * bibliomania
   * Wikisource
   * Read Print


■自然な日本語、読める日本語 Natural and readable Japanese

上に挙げた7種類の邦訳のうち、現在(=21世紀はじめ)の語感からいって、引用部分のダーシーの台詞が、もっとも自然な日本語になっているのは、最新の田中淳子訳だとわたしは思う。

この訳はハーレクインから出ていて、もとより完訳ではない。が、だからといって馬鹿にしてはいけない。売るためには読みやすい日本語に訳さないといけない。結果として、ハーレクイン版の日本語は読める日本語になっている。


■更新履歴 Change log

2012/07/17 ロシア語訳を追加しました。
2011/11/21 小尾芙佐=訳 2011/11/20 を追加しました。
2010/04/21 BBCテレビシリーズ 『高慢と偏見』 の YouTube 動画を追加しました。
2009/09/06 田中淳子=訳 2007/12/15 を追加しました。
2008/09/10 書誌情報を修正補足しました。
2007/07/03 画像を入れ替えました。また、画像の入手元に関する表示が
         抜けていたので補いました。


 

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Thursday, 28 June 2007

Le train 081 by Marcel Schwob マルセル・シュウォッブ 「〇八一号列車」

■表紙画像 Cover photos

 

a. Vies_imaginaires b. Le_roi_au_masque_dor_1 c. Lhomme_au_masque_dor_1

 

↑ Click to enlarge ↑

a. Vies imaginaires Flammarion (2004)
b. Le Roi au masque d'or Livre de Poche (1999)
c. Marcel Schwob: L'homme au masque d'or Editions Gallimard (2006)


■日本語訳 Translations into Japanese

(1) 多田 1990, 1998
 その列車は赤っぽい霧に包まれていた。機関の銅はピカピカ光っていた。蒸気は音もなく警笛から噴き出していた。霧の中二つの黒い人影が運転台の上で動いていた。彼らはわたしらと向かい合って、わたしらの身振りに応えて同じしぐさをしていた。わたしらの列車番号は石盤の上に白墨で一八〇号と書いてあった。こちらに相対して、ちょうど同じ場所に大きな白い板がかけてあり、黒字で〇八一号と記してあった。(……)

   マルセル・シュウォッブ=著 多田智満子(ただ・ちまこ)=訳
   「〇八一号列車」
   1a.少年十字軍』海外ライブラリー 王国社 1998/07 所収 
   1b.少年十字軍』王国社 1990/09 所収


(2) 榊原 1984
 その列車は、赤味がかった霧のようなもので、つつまれていた。蒸気は音もなく汽笛の上に吹きだしている。もやの中で、二つの黒い影が、運転台で動いていた。
 かれらは、われわれとむかいあって、われわれとそっくり同じことをしているのだ。
 われわれの列車は、石盤の上に、チョークで〈一八〇〉と番号が書いてある。それが、むこうの列車にも、こちらにむかいあって、そっくり同じ場所に、大きな白い板がかかっていて、それに黒い字で〈〇八一〉と書いてあるのだ。(……)
[ルビは省略しました - tomoki y.]

   ショッブ=作 榊原晃三(さかきばら・こうぞう)=訳・文
   「〇八一号列車」
   アルフォンス・ドーデ〔ほか〕=原作『黄金の脳を持つ男
   世界こわい話ふしぎな話傑作集8 フランス編 金の星社 1984/03 所収


(3) 青柳 1959, 1960, etc.
 その列車は赤味を帯びた霧のようなもので包まれていた。蒸気は音を出さずに汽笛の上に噴き出している。靄の中で二人の黒い人影が、運転台で動いている。彼らはわれわれと向かい合って、われわれがすることと同じことをする。われわれの列車の番号は、180と石盤の上にチョークで印してある。——われわれと向かい合って、ちょうど同じ場所に、大きな白い板がかかっていて、081と黒く数字が書いてある。(……)

   マルセル・シュオッブ=著 青柳瑞穂=訳「列車〇八一」
   3a. G・アポリネール〔ほか〕=著『怪奇小説傑作集4 フランス編』新版
    創元推理文庫 2006/07   
   3b. 小池滋=編『鉄道諸国物語』弥生書房 1985/02 所収
   3c. 平井呈一=編『怪奇小説傑作集4』創元推理文庫 1969/06 所収
   3d.世界恐怖小説全集9 列車〇八一』東京創元社 1959 所収

   上の引用は 3b. に依拠しました。


(4) 矢野目 1924, 1925, etc.
 その列車は赤味を帶びた霧のやうなもので包まれてゐた。機關の銅はピカピカしてゐた。
 蒸汽は音も立てずに警笛の上に噴き出してゐた。黒い一人の人影が靄の中で運轉臺の上を動いてゐた。彼等はわれわれと對ひ合つてわれわれと同じ身振をしてゐた。われわれの列車には石盤の上に白墨で180と番號が書いてあつた。——われわれに相面して丁度同じ位置に大きな白い板がかかつてゐて黒字で081と書いてあつた。(……)

   4a. マルセル・シュウオッブ=著 矢野目源一=訳「〇八一号列車」
    『黄金仮面の王』南柯叢書(なんか そうしょ)コーベブックス 1975 所収
   4b. シユウオツブ=著 矢野目源一=譯「〇八一号列車」
    近代社=編『世界短篇小説大系 佛蘭西篇(下)』(全2冊)
    近代社 1925-1926(大正14-15)
   4c. マルセル・シュウオツブ=作 矢野目源一=譯「〇八一号列車」
    『佛蘭西近代傑作集』世界短篇小説大系10 近代社 1925(大正14)所収
   4d. マルセル・シュウオッブ=作 矢野目源一=譯「081號列車」
    『吸血鬼』海外文學新選11 新潮社 價六拾錢 1924/07(大正13)所収

   上の引用は 4d. に依拠しました。各版の訳文の異同は未確認。


(5) 鈴木 1923
 その列車は赤味を帶びた霧で裹まれてゐた。機關の銅はピカ/\光つてゐた。蒸汽は音も立てずに警笛の上に噴き上(あが)つてゐた。二人の眞黒な男が靄の中で、機關手臺の上に動いてゐた。彼等は私達と面を向ひ合せて、私達の擧動と同じことをしてゐた。私達は石盤板の上に、白墨で、180と記(しる)された、列車番號をもつてゐた。——私達の面前には、同じ場所に、大きな白い板に、黒い數字で、081と書かれてあつた。(……)

   マルセル・シュヲッブ=著 鈴木信太郎=譯「081號列車」
   『近代フランス小説集』春陽堂 定價金貮圓 1923/07(大正12)所収


■スペイン語訳 Translation into Spanish

Estaba envuelto en una niebla rojiza. Los cobres de la máquina brillaban. El vapor surgía por encima de la campana silenciosamente. En la neblina se agitaban dos figuras negras sobre la plataforma. Estaban de cara y respondían a nuestros gestos. Llevábamos el número del tren escrito en una pizarra, con tiza: 180. Justo enfrente, en el mismo sitio, había un gran tablero blanco con cifras en negro: 081.

   El tren 081 by Marcel Schwob
   Translated by Clara Pastor
   E-text at Saltana


■フランス語原文 The original text in French

Il était tout enveloppé d’un brouillard rougeâtre. Les cuivres de la machine brillaient. La vapeur fusait sans bruit sur le timbre. Deux hommes noirs dans la brume s’agitaient sur la plate-forme. Ils nous faisaient face et répondaient à nos gestes. Nous avions sur une ardoise le numéro du train, marqué à la craie : 180. – Vis-à-vis de nous, à la même place, un grand tableau blanc s’étalait, avec ces chiffres en noir : 081.

   Le train 081 by Marcel Schwob
   E-text at:
   * marcel-schwob.org
   * Le Rayon Litteraire
   * Lettres-Histoire, Academie de Caen (DOC)


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Wednesday, 27 June 2007

Антон Чехов - Душечка Angel / The Darling by Anton Chekhov チェーホフ「かわいい」「かわいいひと」「可愛い女」「かわいい女」「いとしい人」「愛すべき女」

 Images 
本の表紙、DVDのジャケット、肖像写真 Book & DVD covers and a portrait

↓ Click to enlarge ↓

a. 31494905 b. Vo42ndstreet c. Chekhov_1

■チェーホフ作品カタログ

   日本ロシア語情報図書館による、チェーホフ作品カタログ
   * 同館所蔵の チェーホフ日本語翻訳作品一覧 (PDF)
   * 同館所蔵の チェーホフ研究・案内一覧 (PDF)


 Video 1 
特集 沼野充義さん「新訳 チェーホフ短篇集」を語る
NHK BS2 「週刊ブックレビュー」 2010年11月13日
Numano_chekhov_tanpenshu
著作権者からの要望により、ビデオの埋め込みはできません。ご覧になりたいかたはNHKアーカイブスまたはYouTubeでご覧ください。


■日本語訳 Translations into Japanese

(J1) 浦 2010
(……)家に帰ると二人はバター入りのパンを添えて、いろんなジャムを入れたお茶をいただき、それからパイを食べた。毎日お昼になると、この家の前庭や門の先の通りにまでかぐわしいボルシチや焼いた羊や鴨の匂い、精進日には魚料理の匂いがただよい、その庭先を通ると必ずご相伴にあずかりたいなという気になるのだった。事務所ではいつもサモワールの湯がわいていて、買い付けにやって来る客にはお茶とドーナツ・パンがふるまわれた。

   アントン・チェーホフ=著 浦雅春(うら・まさはる)=編訳 「かわいいひと」
   『馬のような名字—チェーホフ傑作選
   河出文庫 2010/03/20 版元による この本の紹介


(J2) 松下 2009
(……)うちでは、味つけパンやいろいろなジャムでお茶を飲み、そのあとでパイを食べた。毎日正午になると、中庭や門の外の往来にまで、ボールシチだの、炒(いた)めた羊や鴨(かも)のうまそうな匂いがただよい、精進日(しょうじんび)にはそれが魚の匂いになって、門の前を通る人は思わず生(なま)つばを飲みこまずにはいられなかった。事務所には絶えずサモワールがたぎっていて、お客たちはきっと輪型(わがた)パンでお茶をよばれるのだった。

   チェーホフ=著 松下裕(まつした・ゆたか)=訳 「かわいいひと」
   松下裕=編訳 『チェーホフ短篇集
   筑摩書房 ちくま文庫 2009/08/10 所収


(J3) 沼野 2008, 2010
(……)家では菓子パンやいろいろな果物の砂糖煮(ヴアレーニエ)をお茶うけにしてお茶を飲み、それからピローグ(ロシア風パイ)を食べた。毎日正午になると中庭でも、門の前の通りでも、ボルシチと、ローストした羊かカモの匂いが、そして精進日にはそれが魚の匂いが美味(おい)しそうに漂い、食欲をそそられずに門の前を通り過ぎることなどとてもできなかった。事務所ではいつも湯沸かし(サモワール)がしゅんしゅんと湯を沸き立たせていて、お得意さんたちはお茶と輪型パン(ブブリク)でもてなされた。

   アントン・パーヴロヴィチ・チェーホフ=著
   沼野充義(ぬまの・みつよし)=訳 「かわいい」 集英社 2010/09/30
   a.新訳 チェーホフ短篇集
     版元による この本の紹介
   b.すばる』 集英社 2008年3月号
   引用は a. に拠りました。傍点を下線で置き換えました。


(J4) 児島 2006
(……)家に戻ると味付けパンといろいろなジャムでお茶を飲み、それからロシア式パイ(ピローグ)を味わった。毎日お昼時には中庭にも、門を越えた通りにさえも、ロシアスープ(ボルシチ)や、ラムや鴨(カモ)を焼くおいしそうな匂いが、精進(ポスト)の日には魚の匂いが漂う。門の傍を通ると誰もがまちがいなく食欲をそそられるのだった。事務所ではいつも湯沸器(サモワール)が湯煙をたて、お得意さんたちは大きめの輪形パン(ブーブリカ)でお茶をごちそうになった。

   アントン・P・チェーホフ=作 ナターリャ・デェミードヴァ=絵
   児島宏子(こじま・ひろこ)=訳 『可愛い女
   チェーホフ・コレクション 未知谷 2006/01


(J5) 神西 1969, 2004
(……)さてわが家へ帰るとお茶になって、味つきパンや色んなジャムが出たあとで、仲よく肉まん(ピローグ)に舌つづみをうつ。毎日お午(ひる)になると、中庭はもとより門のそとの往来へまで、甜菜スープ(ボルシチ)だの羊や鴨の焼肉だののおいしそうな匂いが漂い、それが精進日だと魚料理の匂いにかわって、門前に差しかかる人は、食欲をそそられずに行き過ぎるわけにはいかなかった。事務所のほうにはいつもサモヴァルがしゅんしゅんいっていて、お得意は輪形のパンでお茶の饗応にあずかった。
 
   5a. チェーホフ=作 神西清=訳 「可愛い女」
      『可愛い女・犬を連れた奥さん 他一篇』 岩波文庫(改版)2004/09 所収
   5b. チェーホフ=作 神西清=訳 「可愛い女」
      『新潮世界文学23 チェーホフ』 新潮社 1969/07 所収
 
   5a. は、下記 (J16) 神西 1940 の旧字・旧かなを、新字・新かなに
   改めたもの。5a.5b. とでは、字句・表記に若干のちがいが
   見られます。引用は 5a. に拠りました。


(J6) 原(卓)1991
(……)家に帰ると、パンケーキや各種のジャムでお茶を飲み、そのあとピローグを食べた。毎日正午には、中庭や、門の外の通りに、ボルシチだの、羊や鴨(かも)の焼肉の匂(にお)いが、そして精進日には魚料理の匂いがうまそうに漂うので、門のわきを通ると食欲がわかずにはいられなかった。事務所にはいつもサモワールがたぎっており、買手の客はお茶とドーナツを振舞われた。

   チェーホフ=著 原卓也=訳 「可愛い女」
   『集英社ギャラリー[世界の文学]13 ロシア1
   集英社 1991/03 所収


(J7) 松下 1987
(……)うちでは、味つけパンやいろいろなジャムでお茶を飲み、そのあとでピロシキを食べた。毎日お昼になると、中庭や門の外の往来にまで、ボールシチだの、いためた羊(ひつじ)や鴨(かも)のうまそうな匂いがただよい、精進日(しょうじんび)にはそれが魚の匂いになって、門の前を通る人は思わず生(なま)つばを飲みこまずにはいられなかった。事務所にはたえずサモワールがたぎっていて、お客たちはきっと輪形パンでお茶をよばれるのだった。

   チェーホフ=著 松下裕(まつした・ゆたか)=訳 「かわいい女」
   『チェーホフ全集10』 筑摩書房 1997/05 所収


(J8) 三木 1979
(……)家に帰りつくと、二人は味つけパンやさまざまなジャムをやりながらお茶を飲み、そののちピローグを食べた。毎日お昼どきになると、庭や通りに面した門から、おいしそうなスープや、羊や鴨の肉を焼く匂いがした。精進日には魚の匂いだった。食べたいと思わないでその門の横を通りすぎることはできなかった。事務所ではいつもサモワールが煮えたぎり、客たちは、輪形パンとお茶の供応にあずかった。

   チェーホフ=著 三木卓=訳 「可愛い女」
   五木寛之〔ほか〕=編 『世界文学全集39 チェーホフ』(全50巻)
   学習研究社 1979/09 所収


(J9) 木村 1975
(……)家へ帰ると、ふたりは味つけパンやいろんなジャムでお茶を飲み、そのあとでピロシキをたべた。毎日おひるになると、中庭といわず門の外の往来といわず、ボルシチだの、ヒツジやカモの焼き肉だののおいしそうな匂いがただよい、精進日にはそれが魚の匂いになって、門の前を通る人びとの食欲をそそらずにはいなかった。事務所ではいつもサモワールがしゅんしゅんたぎっていて、おとくいたちはかならずお茶と輪形のパンのもてなしを受けた。
 
   チェーホフ=著 木村彰一=訳 「かわいい女」
   『世界文学全集61 チェーホフ』 講談社 1975/10 所収


(J10) 小笠原 1970, 2005
(……)家に帰ると、味つきパンやいろんな種類のジャムを食べながらお茶を飲み、それからピローグを食べた。毎日お昼になると、中庭や門の前の通りにまでボルシチや、羊または鴨(かも)の焼肉のうまそうな香りが漂い、精進日にはそれが魚料理の香(かお)りに変り、食欲をそそられずに門の前を通り過ぎることは不可能だった。事務所でもつねにサモワールが滾(たぎ)っていて、買い手はお茶と輪形パンを御馳走(ごちそう)になった。

   チェーホフ=著 小笠原豊樹=訳 「かわいい女」
   10a.かわいい女・犬を連れた奥さん』 新潮文庫 改版 2005/02 所収
   10b.かわいい女・犬を連れた奥さん』 新潮文庫 初版 1970/11 所収


(J11) 佐藤 1969
(……)そして家へ帰って来ると、彼らはバタで味をつけたパンやいろいろな果物の砂糖づけなどを頬張りながら、仲よくお茶をのみ、それからさらに饅頭を食べた。毎日、おひるになると、屋敷内はもちろん、門の外の往来にまで、甘大根のスウプや、羊や家鴨の焙り肉などのおいしい匂いが、プンプンと漂った。また精進日には、禁断の四足類に代って、魚肉の匂いがした。——で、いかなる人でも、食欲をそそられることなしに、その門の外を通りぬけるわけには行かなかった。事務所にはいつもサモワアルがチンチンたぎっていて、得意筋の人々はお茶とビスケットのもてなしを受けた。

   チェーホフ=作 佐藤清郎(さとう・せいろう)=訳 「かわいい女」
   『世界文学全集43 三人姉妹/桜の園 他』(全66巻)
   綜合社=編 集英社=発行 1969/06 所収


(J12) 佐々木 1966, 1967
(……)家へ帰ると味つきパンやいろいろなジャムといっしょにお茶を飲み、それから肉まんじゅうを食べた。毎日お昼になると中庭や門のそとの往来(おうらい)にボルシチだの、羊(ひつじ)や鴨(かも)の焼き肉だののおいしそうな匂いがプンプンただよい、また精進日(しょうじんび)には魚料理のうまそうな匂いがして、門のそばを通る人は、食欲をそそられずに行きすぎることができなかった。事務所ではいつもサモワールがたぎり、お客さんたちはお茶と輪形のパンをごちそうになった。

   チェーホフ=作 佐々木彰(ささき・あきら)=訳 「かわいい女(ひと)」
   12a.桜の園・三人姉妹 (他)かわいい女』 特製版
      旺文社文庫 1967-10-01 所収
   12b.桜の園・三人姉妹 (他)かわいい女』 旺文社文庫 1966 所収
   引用は 12a. に拠りました。


(J13) 原(久)1964
(……)そして家へ帰って来ると、彼らはバタで味をつけたパンやいろいろな果物の砂糖づけなどを頬張りながら、仲よくお茶をのみ、それからさらに饅頭を食べた。毎日、おひるになると、屋敷内はもちろん、門の外の往来にまで、甘大根のスウプや、羊や家鴨の焙り肉などのおいしい匂いが、プンプンと漂った。また精進日には、禁断の四足類に代って、魚肉の匂いがした。——で、いかなる人でも、食欲をそそられることなしに、その門の外を通りぬけるわけには行かなかった。事務所にはいつもサモワアルがチンチンたぎっていて、得意筋の人々はお茶とビスケットのもてなしを受けた。

   チェーホフ=作 原久一郎(はら・ひさいちろう)=訳 「可愛い女」
   中村白葉、原久一郎〔ほか〕=訳
   『ロシア・ソビエト文学全集22 チェーホフ1』(全35巻)
   可愛い女 ヴァーニャ伯父さん 三人姉妹 かもめ
   六号室 犬をつれた奥さん 他
   平凡社 1964/05 所収


(J14) 石山+飯田 1960
(……)そして家に着くと、バター入りのパンやいろいろのジャムでお茶を飲み、それからピローグ(ロシヤまんじゅう)を食べた。毎日、午の時刻になると、ボルシチ(ロシヤスープ)や、羊や鴨の焼肉の、精進日には魚の料理の、おいしそうな匂いが屋敷内から門をこえて往来にまでただよってきて、門の前を通る人は誰でも否応なしに食欲をそそられるのであった。事務所ではいつもお湯が沸いていて、お客はいつもお茶と輪形パンを御馳走になった。

   チェーホフ=作
   石山正三(いしやま・しょうぞう)+飯田規和(いいだ・のりかず)=訳
   「かわいい女」
   『ポータブル・チェーホフ』 ポータブル・ライブラリィ
   パトリア・ブックス22 パトリア書店 1960/05 所収


(J15) 中村 1959
(……)こうしてうちへ帰ると、二人は、バタやミルクや玉子で味をつけたパンや、いろんなジャムでお茶を飲み、そのあとでピローグをたべるのである。まいにち、正午ごろになると、中庭から門のそとの往来まで、野菜汁や、羊や家鴨を焙くにおいがうまそうにただよい、精進日には——それが魚のにおいにかわって、どんな人でも、食欲をそそられないでは、この門前を通りすぎることはできなかった。事務所には、いつもサモワールが沸いていて、客達はお茶と輪形パンでもてなされた。

   チェーホフ=作 中村白葉=訳 「可愛い女」
   『新版世界文学全集20 桜の園・三人姉妹
   新潮社 1959/01 所収


(J16) 昇 1946
(……)わが家へ戻ると、彼等は色々のジヤムを着けて、特製のパンを食べながら、お茶を飮んだ。それから肉饅頭(ピロシユヤ)を食べた。毎日十二時になるとこの家の中庭には甜菜の根のスープや、羊肉、家鴨などの美味(おい)しさうな匂がした。だから齋(ものいみ)の日などには、そこの路知を通ると、誰でも空腹を感じないではゐられなかつた。事務所ではいつもサモワルが沸つてゐた。お客達はお茶と輪形の乾パンとを御馳走になつた。
 
   チェーホフ=著 昇曙夢(のぼり・しょむ)=訳
   『可愛い女』 日本文庫3 外國文學篇
   日本社 定價二十圓 1946/06 所収


(J17) 神西 1940
(……)さてわが家へ歸るとお茶になつて、味つきパンや色んなジャムが出たあとで、仲よく肉まん(ピローグ)に舌つゞみをうつ。毎日お午(ひる)になると、中庭はもとより門のそとの往來へまで、甜菜すーぷ(ボルシチ)だの羊や鴨の燒肉だののおいしさうな匂ひが漂ひ、それが精進日だと魚料理の匂ひにかはつて、門前に差しかゝる人は、食慾をそゝられずに行き過ぎる譯にはいかなかつた。事務所の方にはいつもサモヴァルがしゆん/\云つてゐて、お得意は輪形のパンでお茶の饗應にあづかつた。
 
   チェーホフ=作 神西清=訳 「可愛い女」
   『可愛い女・犬を連れた奥さん 他一篇
   岩波文庫 1940/10(昭和15)所収


(J18) 中村 1939
(……)かうして家へ歸ると、二人は、バタやミルクや玉子で味をつけたパンや、いろんなジャムでお茶を飮み、そのあとでピローグを食べた。毎日正午頃になると、中庭や門の外の往來まで、野菜汁や、羊や、家鴨を焙くにほひがうまさうに漂ひ、精進日には——魚のにほひがした、そしてどんな人でも、食慾を唆られないでは、この門前を通り過ぎることが出來なかつた。事務所には、いつもサモワールが沸いてゐて、客達はお茶とビスケットでもてなされた。

   チェーホフ=作 中村白葉=譯 「可愛いゝ女」
   『チェーホフ小説選集  市井小説篇 三年』(全7卷)
   金星堂 定價九十五錢 外地定價一圓五錢 1939/03(昭和14)所収


(J19) 原(久)1933
(……)そして家(うち)へ歸つて來ると、彼等は乳酪で味をつけたパンやいろんな果物の砂糖づけなどを頬張り乍ら、仲よくお茶をのみ、それから更に饅頭を食べた。毎日、正午になると、屋敷内は勿論、門外の往來にまで、甘大根のスウプや、羊や家鴨の焙り肉などのおいしい匂ひが、プンプンと漂つた。また精進日には、禁斷の四足類に代つて、魚肉の匂ひがした。——で、如何なる人でも、食欲をそゝられる事なしに、その門外を通りぬける譯には行かなかつた。事務所にはいつもサモワールがチンチン沸騰してゐて、得意筋の人々はお茶とビスケットの饗應を受けた。

   チェーホフ=作 原久一郎(はら・ひさいちろう)=譯 「可愛い女(ひと)」
   『接吻・可愛い女 他二篇
   岩波文庫 1933/05/25(昭和8)所収


(J20) 柴 1928
(……)家で彼等は、色々のジヤムの附いた菓子パンを食べながら、お茶を飮んだ。それからパイを食べた。毎日十二時に、彼等の庭には、〓菜(タウヂサ)の根のスープや羊の肉、或ひは、家鴨(あひる)の美味(おい)しさうな匂ひが漂つた。で、魚肉の進日には、誰でも、空腹を感ぜずに門を潜る事は出來なかつた。事務所では、毎時(いつ)も湯沸(ゆわか)しが煮立つてゐた。そして、お客さんは、お茶とビスケツトを御馳走された。

   チエホフ=作 柴孝平(しば・こうへい)=譯註 「いとしい人」
   柴孝平=譯註 『チエホフ短篇集 英文世界名著全集 13
   英文學社 1928/08/15(昭和3)所収 この全集についての詳細
   この本は英日の対訳本。したがって収録されている和訳は英訳からの重訳。
   底本は下掲 (E3) Constance Garnett による英訳。食・毎の旧字は新字で
   置き換えました。〓は草かんむりの下に添の右側。


(J21) 梅田=編 1928
(……)彼等は家では、乳パンといろ/\なのジャムなどをもち出してお茶をのみ、そのあとでは饅頭を食つた。毎日正午(ひる)ごろになると、庭や門口に甜菜(あまな)のスープのひほひや羊肉や家鴨などを燒いた匂ひがして、誰でもうつかりその門口を通りすぎられないほどだつた。事務室では、いつも湯沸器(サモワール)がたぎつてゐて、來るお客はお茶やビスケツトのもてなしを受けた。

   チェーホフ=著 「一八、愛すべき女」
   梅田寛=編 『諧謔文學 外國後篇』 名作物語
   文敎書院 1928/08/01(昭和3)所収
   乳・食・毎・菜・通の旧字は新字で置き換えました。


(J22) 秋庭 1928
(……)家では菓子パンと色々なジヤムとでお茶を飮み、その後ではパイを食(た)べた。毎日十二時になると、この家の中庭には大根のスープや羊肉や家鴨(あひる)やの美味(うま)さうな匂がした。そして齋日などに其處の門口を通り過ぎると、誰も空腹を感じないではゐられなかつた。事務室には、湯沸(サモワル)が始終(しょつちう)沸(わ)き立つてゐた。お客達はお茶や輕いビスケットの御馳走に會つた。

   チエホフ=作 秋庭俊彦(あきば・としひこ)=譯 「可愛い女」 チエホフ選集
   秋庭俊彦、原久一郎=譯 『世界文學全集24 露西亞三人集』(非賣品)
   新潮社 1928/01(昭和3)所収


(J23) 松山 1910, 2000
(……)家に歸ると茶や麪麭(ぱん)や牛酪(ばた)や其の外樣々な菓子やジヤムを甘まさうに喰ふのが御定(きま)りであつた。毎日午後には肉汁(すヽぷ)、焼肉、鴨、魚と云ふやうな物の強い臭ひが庭や通りにプン/\襲うて來るので、オレンカの家の前を通る人は食慾が挑發されんで居れなかつた。鐵瓶は何時も事務室の方に樂しげに呻つて居る。御客があると茶とビスケツトが出る。

   チェーホフ=著 松山強=譯 「愛らしい人」
   23a. 川戸道昭(かわと・みちあき)+榊原貴教(さかきばら・たかのり)=編
      『明治翻訳文学全集 新聞雑誌編43 チェーホフ集2
      大空社 2000/04 所収
   23b.開拓者』 1910/06(明治43)所収
   23a.23b. を複製したもの。初出は 23b.。引用は 23a. に拠りました。


 Audio 1 
「かわいい女」英訳版オーディオブック - セルツァー訳
The Darling - Audiobook translated into English by Thomas Seltzer

下の引用箇所に相当する部分は 18:54 あたりから始まります。 Uploaded to YouTube by BackToTheArchives on 28 Nov 2012. The recording corresponding to the excerpt below starts around 18:54.


 Audio 2 
「かわいい女」英訳版オーディオブック - ガーネット訳
The Darling - Audiobook translated into English by Constance Garnett

下の引用箇所に相当する部分は 11:20 あたりから始まります。 Uploaded to YouTube by GreatestAudioBooks on 17 Feb 2013. The excerpt below starts around 11:20.


■英訳 Translations into English

(E1) Hingley, 1975, 2000, etc.
(....)  At home they drank tea with fine white bread and various jams, and then ate pasties. At noon each day their yard, and the street outside their gate, were deliriously redolent of beetroot soup, roast lamb and duck — and of fish in Lent.' You couldn't pass their gate without feeling hungry. They always kept the samovar boiling in the office, and they treated their customers to tea and buns.

   Angel by Anton Chekhov
   Translated by Ronald Hingley
   * The Russian Master and Other Stories Oxford University Press, 2000-03-23
   * The Russian Master and Other Stories Oxford University Press, 1984
   * The Oxford Chekhov: Stories, 1898-1904 Oxford University Press, 1968
   Preview at Amazon.com


(E2) Seltzer, c1917
(....)  At home they drank tea with milk-bread and various jams, and then ate pie. Every day at noontime there was an appetising odour in the yard and outside the gate of cabbage soup, roast mutton, or duck; and, on fast days, of fish. You couldn't pass the gate without being seized by an acute desire to eat. The samovar was always boiling on the office table, and customers were treated to tea and biscuits.

   The Darling by Anton Chekhov
   form Best Russian short stories,
   compiled and edited by Thomas Seltzer.
   New York, Boni and Liveright, inc. [c1917]
   E-text at Short Story Archive


(E3) Garnett, 1916
(....)  At home they drank tea, with fancy bread and jams of various kinds, and afterwards they ate pie. Every day at twelve o'clock there was a savoury smell of beet-root soup and of mutton or duck in their yard, and on fast-days of fish, and no one could pass the gate without feeling hungry. In the office the samovar was always boiling, and customers were regaled with tea and cracknels.   

   The Darling (1899) by Anton Chekhov
   from The Tales of Chekhov,
   translated from Russian by Constance Garnett
   13 vol. Chatto & Windus: London, 1916-22.
   E-text at:
   * Project Gutenberg
   * Eldritch Press


■スペイン語訳 Translation into Spanish

(....) en casa tomaban té con pan de leche y con toda clase de dulces, luego comían un pastel. Todos los días, a mediodía, en el patio de la casa y aun en la calle flotaba un sabroso olor a borsch, cordero asado o pato; en los días de vigilia olía a pescado y no se podía pasar cerca del portón sin sentir ganas de comer. El samovar en la oficina siempre estabacon agua hirviente y a los clientes se les convidaba con téy rosquillas.

   Amorcito by Antón Pávlovich Chéjov
   E-text at:
   * es.scribd.com
   * Cuentosinfin 


■フランス語訳 Translation into French

(....) Chez eux, ils prenaient le thé, en mangeant du pain au lait et toutes sortes de confitures ; ensuite ils mangeaient du gâteau levé. Chaque jour, à leur porte dans la cour, et même dehors, cela sentait la bonne soupe à la betterave et le mouton rôti ou le canard. Et les jours maigres, cela sentait le poisson, si bien qu’on ne pouvait pas passer devant chez eux sans avoir envie de manger. Au bureau, le samovar bouillait toujours et l’on offrait aux acheteurs du thé avec des craquelins.

   Ma Femme by Anton Pavlovitch Tchekhov
   Translated by Denis Roche
   E-text at Ebooks Libres et Gratuits


 Video 2 
チェーホフ 『かわいい女』 А. Чехов - Душечка

Uploaded to YouTube by DramaTheatreSamara on 2 Feb 2013. Режиссер: заслуженный деятель искусств России Вячеслав Гвоздков, Георгий Васильев (г. Санкт-Петербург)


■ロシア語原文 The original text in Russian

( . . . ) а  дома  пили  чай  со сдобным хлебом и с разными вареньями, потом  кушали  пирог.  Каждый  день  в полдень во дворе и за воротами  на  улице  вкусно  пахло  борщом  и  жареной бараниной или уткой, а в постные дни -  рыбой,  и  мимо  ворот  нельзя  было пройти без того, чтобы не захотелось есть. В конторе всегда кипел самовар, и покупателей угощали чаем с бубликами.

   Антон Чехов - Душечка (1899)
   E-text at ilibrary.ru


пирог の訳 Translation of "пирог"

 [ja] 日本語訳 Japanese
   パイ………………………………浦 2010
   パイ………………………………松下 2009
   パイ………………………………柴 1928
   パイ………………………………秋庭 1928
   ピローグ(ロシア風パイ)  ………沼野 2008, 2010
   ピローグ(ロシヤまんじゅう) ……石山+飯田 1960
   ピローグ …………………………原(卓)1991
   ピローグ …………………………三木 1979
   ピローグ …………………………小笠原 1970, 2005
   ピローグ …………………………中村 1959
   ピローグ …………………………中村 1939
   ピロシキ …………………………松下 1987
   ピロシキ …………………………木村 1975
   ロシア式パイ(ピローグ)…………児島 2006
   肉まんじゅう  ……………………佐々木 1966, 1967
   肉まん(ピローグ) ………………神西 1969, 2004
   肉まん(ピローグ) ………………神西 1940
   肉饅頭(ピロシユヤ) ……………昇 1946
   饅頭………………………………佐藤 1969
   饅頭………………………………原(久)1933, 1964
   饅頭………………………………梅田=編 1928
     [訳出なし] ……………………松山 1910, 2000

 [en] 英訳 English
   pasties  …… Hingley, 1975, 2000, etc.
   pie ………… Seltzer, c1917
   pie ………… Garnett, 1916


бубликами の訳 Translation of "бубликами"

 [ja] 日本語訳 Japanese
   ドーナツ・パン ………………………浦 2010
   ドーナツ  ……………………………原(卓)1991
   ビスケット……………………………佐藤 1969
   ビスケット……………………………原(久)1964
   ビスケット……………………………中村 1939
   ビスケット……………………………原(久)1933
   ビスケット……………………………秋庭 1928
   ビスケツト……………………………柴 1928
   ビスケツト……………………………梅田=編 1928
   ビスケツト……………………………松山 1910, 2000
   大きめの輪形パン(ブーブリカ)……児島 2006
   輪型パン……………………………松下 2009
   輪型パン(ブブリク)…………………沼野 2008, 2010
   輪形のパン…………………………木村 1975
   輪形のパン…………………………神西 1969, 2004
   輪形のパン…………………………佐々木 1966, 1967
   輪形のパン…………………………神西 1940
   輪形の乾パン………………………昇 1946
   輪形パン……………………………松下 1987
   輪形パン……………………………三木 1979
   輪形パン……………………………小笠原 1970, 2005
   輪形パン……………………………石山+飯田 1960
   輪形パン……………………………中村 1959

 [en] 英訳 English
   buns ……………  Hingley, 1975, 2000, etc.
   biscuits ………… Seltzer, c1917
   cracknels ……… Garnett, 1916


■外部リンク External links


■更新履歴 Change log

  • 2013/04/13 セルツァー訳とガーネット訳の2種類の英訳版オーディオブック、およびロシア語版舞台公演ビデオの計3本の YouTube 画面を追加しました。
  • 2012/09/02 柴孝平=譯註 1928/08/15 と梅田寛=編 1928/08/01を追加しました。
  • 2012/08/25 スペイン語訳、フランス語訳、および Ronald Hingley による英訳を追加しました。
  • 2011/11/07 佐々木彰=訳 1967-10-01 を追加しました。
  • 2011/05/13 特集 沼野充義さん「新訳 チェーホフ短篇集」を語る の動画の紹介を追加しました。
  • 2010/09/30 沼野充義=訳 2010/09/30 を追加しました。
  • 2010/03/12 浦雅春=編訳 2010/03/20 を追加しました。また、「бубликами の訳」の項を新設しました。
  • 2010/01/15 原久一郎=譯 1933/05/25 を追加しました。
  • 2009/09/16 「пирог の訳」の項を新設しました。
  • 2009/09/15 松下裕=訳 2009/08/10 を追加しました。
  • 2008/08/26 松山強=譯 2000/04 を追加しました。
  • 2007/08/10 神西清=訳に関する書誌情報に、1969/07 新潮版についての情報を追加しました。
  • 2007/07/13 佐藤清郎=訳 1969/06 と石山正三+飯田規和=訳 1960/05 を追加しました。
  • 2007/07/12 児島宏子=訳 2006/01 と昇曙夢=訳 1946/06 を追加しました。
  • 2007/06/30 松下裕=訳 1997/05 と三木卓=訳 1979/09 を追加しました。

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Sunday, 24 June 2007

To Please His Wife by Thomas Hardy トマス・ハーディ 「妻ゆえに」「妻ゆゑに」「妻のために」「帰らぬひと」「帰らぬ船」

        目次 Table of Contents

 Images  表紙画像と肖像写真 Cover photos and a portrait
■中国語訳 Translation into Chinese
■日本語訳 Translations into Japanese
  (1) 平戸 2003
  (2) 渡 2002
  (3) 井出 2000
  (4) 藤井 1991
  (5) 小林 1984, 1986, etc.
  (6) 秋山 1976
  (7) 下嶋 1973, 1987
  (8) 河野 1957, 1967, etc.
  (9) 田代 1950, 1951, etc.
  (10) 森村 1932
  (11) 宮嶋 1932
  (12) 平田 1915, 1925
■スペイン語訳 Translation into Spanish
■英語原文 The original text in English
■邦題の異同 Variations of the title translated into Japanese
■更新履歴 Change log


 Images 
表紙画像と肖像写真 Cover photos and a portrait

↓ クリックして拡大 Click to enlarge ↓

a. Hardy b. 1853261785_1 c. Thomashardy


■中国語訳 Translation into Chinese

下のとおり、虚白という訳者による To Please His Wife の中国語訳が、「取媚他的妻子」というタイトルで収録されている翻訳書が、戦前に出ていたようです。この旨の記述をネット上で見かけました。ただし、わたしは現物を見て確認しておりません。

   《人生小讽刺》 [英]哈代著,仲彝、虚白译。上海真美善书店 1928年9月初版
   目次に「取媚他的妻子 虚白译」という記載あり。

   以上の情報が、中国现代文学总书目 贾植芳 福建教育出版社, 1993
   という本に載っています。 Preview at Google Books.


■日本語訳 Translations into Japanese

(1) 平戸 2003
「[略]ねぇ、エミリー、長い航海のあと帰ってきた男というのは、蝙蝠みたいに盲も同然で、女の人たちの違いなんて分からないんだよ。みんな同じに美人に見えてね。そこで真先に気安く近づける人に手を出すんだよ。その人が自分を愛しているのか、すぐに自分がその人より他の女(ひと)を好きになったりしやしないかなど考えずにね。はじめから俺の気持ちは君に向かっていた。だが君はひどく逃げ腰で、恥ずかしがってたから、てっきり俺が構ったりしては迷惑だと思って、ジョアンナにしたんだ」
 
   トマス・ハーディ=著 平戸喜文(ひらど・よしふみ)=訳 「妻ゆえに」
   『イギリス名作短編集』 近代文芸社 2003/02 所収


(2) 渡 2002
 「[略]ねえ、エミリ、男というものは長い航海から戻ってきたときには、こうもりのように盲目になって、女はだれがだれだか、わからなくなるのだ。みんな同じように、きれいな人に見えてしまうのだ。そこで簡単に親しくなれた最初の人を、選んでしまう。その人が自分を愛しているかとか、時間を重ねたらもっとべつに愛せる人が現れるかもしれないとかは、考えもしない。初めからおれは、きみに一番惹かれていたのだ。だけどきみは尻込みしたり、恥ずかしがったりするので、きみを困らせているのだと思い、ジョアナのほうへいってしまったのだ」

   トマス・ハーディ=著 渡千鶴子=訳 「妻への想い」
   『トマス・ハーディ短編全集3』 大阪教育図書 2002/03 所収


(3) 井出 2000
 「[略]男ってやつは、エミリー、長い航海を了(お)えて海から帰ってくると、盲も同然——女のことになると見境いがつかなくなる。どいつもこいつも似たり寄ったりの別嬪(べっぴん)さんだ。すぐに手の届く女に手をつけて、相手がこっちを愛してるか、こっちもじきに別の女に目移りするかもしれん、なんてことは頭にありゃしない。最初っからいいなといちばん感じてたのは、きみだった。でも、きみはひどく内気ではにかみ屋さんだもの、てっきりおれにつきまとわれたくはないんだと思っちまってね。それでジョアンナの方へ走ったってわけ」
 
   トマス・ハーディ=著 井出弘之(いで・ひろゆき)=訳 「帰らぬひと」
   『ハーディ短篇集』 岩波文庫 2000/02 所収


(4) 藤井 1991
 「[略]なあ、エミリ、長い航海から帰って来ると、男というのは、盲目同然になってしまう—女性についてだれかれの区別もなくなってしまう。皆同じくきれいに見えてしまう。そして、女性がその男性のことを愛しているのか、男性のほうは、すぐまた別に、もっといい人ができるのではないか、などとも考えず、たやすく手に入る最初の女性を取ってしまうんだ。初めっから、ぼくはきみに一番気があったんだけど、きみは余りにも内気で、後ずさりしてるので、ぼくなんかにかかわっていたくないんだろうと思って、それでジョアナのほうへ行ってしまったんだ」

   トマス・ハーディ=著 藤井繁(ふじい・しげし)=訳 「妻ゆえに」
   『人生の皮肉』 千城 1991/12 所収


(5) 小林 1984, 1986, etc.
「[略]ねえ、エミリさん。長い航海を終って海から帰ってくると、男ってものはまるでコウモリみたいに目が見えないもので——女を見るとまるで区別がつかないんだよ。女はみんな同じに見えるんだ、みんな美人に見えてね。それで相手が自分を愛してくれているかとか、やがて自分がもっとよい女にほれ込むことになるかもしれぬなどということは考えもしないんで、たやすく手に入る手近なのに飛びついてしまうんだよ。僕ははじめっから君に一番惹かれていたんだが、君はあんまり内気で尻込みしてるもんだから、僕につきまとわれるのは嫌なのだと思ってね、それでジョアナのほうに行ったんだよ」

   ハーディ=著 小林清一(こばやし・せいいち)=訳 「帰らぬ船」
   5a.ハーディ傑作短編集』 千城 1991/04 所収
   5b.人生の小さな皮肉—ハーディ短篇集』 創元社 1986/05 所収
   5c. ハーディ傑作短篇集』 創元社 1984/03 所収
   上の引用は、5c. に依拠しました。各版の訳文の異同は未確認。


(6) 秋山 1976
「[略]ねえ、エミリ、長い航海のあとで海から帰ってくると、男ってものはこうもりみたいに目が見えなくてね——どの女を見たって、見分けがつかないんだ。みんな美人に見えてね、手近なのからまっ先にとびついてしまって、相手に好かれているかとか、いずれもっと良い女に惚れられるようなことがあるかもしれん、などとは考えもしないんだ。おれは最初からお前に一番惹かれてたんだけど、お前はあんまり内気で、尻込みしてるもんだから、かまわれるのはいやなのかと思ってね、それでジョアンナの方に行ったんだよ」

   トマス・ハーディ=著 秋山徹夫(あきやま・てつお)=訳
   「妻を喜ばせたく」
   『アリシアの日記・他五篇』 八潮版・イギリスの文学15
   八潮出版社 1976/06 所収


(7) 下嶋 1973, 1987
「[略]な、エミリ、男って、長い航海から帰って来ると、蝙蝠同然まるで眼が利かねえんだ——誰が誰だか、女の見分けがつかなくなるんだ。みんな同じように美人に見えるんだ。そして、手に入り易い最初の女をつかまえるってわけだ——相手がこちらを好いてるのかどうかも考えず、こっちもまた、もっと好きなのが出るかも知れんのに、そんなことも考えないでさ、最初からおれはあんたが一番好きだったんだけど、あんたがあんまり内気で、しりごみばかりしてるもんだから、うるさく言っちゃ迷惑なのかな、と考えて、それでジョアナの方へ行っちまったんだ」
 
   7a.T・ハーデー=著 下嶋統一=訳注 『妻ゆえに
     英文世界名作シリーズC-9 評論社 1987/08
   7b.T・ハーディ=著 下嶋統一=訳注 『妻ゆえに』
     評論社 1973/11
   7a. は高校上級以上向けの副読本。原文と全訳を収録。
   7b. は未見。おそらく 7a.7b. を復刊したものか(未確認)。


(8) 河野 1957, 1967, etc.
「[略]なあエミリー、長い航海をおえて海から帰ってくると、男ってものは蝙蝠(こうもり)みたいに目が見えねえもんなんだ——女を見るとまるで見さかいがつかなくなるんだな。どの女もみなおんなじに見えるんだ、どいつもこいつもうっとりするような奴にさ、そんで相手が自分を愛してくれるかどうかとか、もっといい女にほれこむかもしれんてなことは考えもしないで、たやすく手にはいる手近な奴に飛びついちまうんだ。はじめっからおれはおまえが好きだったんだ。だけどおまえがあんまり内気で尻ごみばかりしてるんで、おれにつきまとわれるのがいやなんだろうと思って、そんでジョアンナのほうへいっちまったんだ」
 
   ハーディ=著 河野一郎(こうの・いちろう)=訳 「妻ゆえに」
   8a. 文藝春秋=編 『愛の迷宮』 アンソロジー人間の情景3
      文春文庫 1992/11 所収
   8b.世界文学全集 第2集 第14巻 ハーディ』 河出書房 1968 所収
   8c.世界文学全集 カラー版 第23巻 ハーディ
      テス アリシアの日記 他 河出書房 1967/04 所収
   8d. ハーディ短編集』 新潮文庫 1957/09 所収


(9) 田代 1950, 1951, etc.
 「[略]ねえ、エミリー。男ちゅうものは、ながい航海をして海から帰ってくると、まるで蝙蝠(こうもり)みたいに眼が見えねえんだよ。——誰が誰だか、女の見分けがつかねえんだ。みんなおなじように、美人に見えるんだ。それで、先方が自分に惚れてるかどうかも考えず、こっちにも直ぐまた別に好いのができるかどうかも考えずに、たやすくやってくる最初の女を手に入れるんだ。おれは、初めっからお前にいちばん気があったんだが、お前があんまり内気で、尻ごみばかりするもんで、とてもおれなんかに構いつけてもらいたくねえんだろうと思って、それでジョアナのほうへ行っちまったような次第さ」
 
   ハーディ=著 田代三千稔(たしろ・みちとし)=訳 「妻ゆえに」
   9a.世界文学全集30 ハーディ』 筑摩書房 1967 所収
   9b.アリシアの日記 他三篇』 角川文庫 1959 所収
   9c.ハーディ傑作選1』 英宝社 1951 所収
   
   Thomas Hardy 著 田代三千稔=訳 「妻のために」
   9d. 妻のために』 英宝社 定價貮百圓 1950/07
   上の引用は、9d. に依拠しました。各版の訳文の異同は未確認。


(10) 森村 1932
 「[略]エミリィさん、男といふものはね、永の航海をして歸つてくると、蝙蝠同樣、からつきし目がきかないんですよ——女にかけちや、誰が誰やら、見境がつかず、みんな同じやうに、別嬪に見えるんですよ。だから、ちよつくらと、眞先にやつてくる女(ひと)を、おいそれと、自分のものにしてしまつて、向うがこつちを好きかどうか、また、こつちでも、やがて、もつといいのができやしないか、どうかつてなことは、いつかう考へないんですよ。儂は、初めつから、あんたにいちばん氣があつたんだが、あんたがあまりひつこみ思案で、内氣なもんだから、儂なんぞに構つて貰ひたくないのだらうと思つて、それで、ジョアナさんの方へ行つちまつた、やうなわけなんですよ」
 
   ハーディ=著 森村豊=訳 「妻ゆゑに」
   『ハーディ短篇集 幻想を追ふ女 他五篇
   岩波文庫 1932/09(昭和7)所収


(11) 宮嶋 1932
 「[略]ねえ、エミリー、あんたも知つとるだらうが、長い航海をして海から上陸(あが)つてくると、男は蝙蝠のやうに目が見えないんだ——誰が誰だか女の見分けがつかないんだよ。誰も彼もみんな同じに、綺麗な女に見えるんだ。それで先方が自分に惚れてるかどうかも考へず、此方(こつち)にも直(ぢ)きまた別に好いのが出來るかどうかも考へず、たやすく手に入る最初の女(やつ)を取つちまふものさ。はじめつから俺は一番お前に氣があつたんだが、お前はあんまり内氣ではにかんでゐるもんで、煩(うるさ)くされたくないのだと思ひ込んで、それでジョアンナの方へ行つたわけさ。」
 
   Thomas Hardy 著 宮嶋新三郎=譯註
   『妻ゆゑに其他』 英米近代文學叢書 第1輯第5巻
   春陽堂(非賣品)1932/04(昭和7)
   書名は奥付に拠ります。表紙などの書名は:
   To Please His Wife and Other Stories
   Modern English and American Literature Series


(12) 平田 1915, 1925
 『[略]ね、エミリ、長い航海(かうかい)をして海から上陸(あが)つて來ると、蝙蝠(かうもり)のやうに盲目(めくら)になつちまうもんでな——誰が誰か女(をんな)の見分けはつかないんだ。誰も彼も皆(みんな)同じに、綺麗なものに見えちまうんだ、で、先方(さき)が自分に惚れてるか何(ど)うかも考へず、此方(こつち)にも直きまた別に好(い)いのが出來るか何うかも考へず、先づ差當り、何でも無暗(むやみ)と樂に手に入(はひ)る奴を取つちまうものさ。實は最初(はじめ)つからお前には氣があつたんだが、でも、餘(あんま)りお前が内氣で、引つ込んでゐるもんで、つい煩(うるさ)く思つてるとばかり呑込(のみこ)んで、それで實は、ジヨアンナの方へ行つて仕舞つたやうな次第さ。』 
[原文は総ルビ。ここでは、その一部を省略しました - tomoki y.]

   トマス・ハアデイ=著 平田禿木(ひらた・とくぼく)=譯
   「妻ゆゑに」
   12a.英國近代傑作集
       國民文庫刊行會(非賣品)1925/11(大正14)所収
   12b.英國近代傑作集(下)』(全2巻)泰西名著文庫
       國民文庫刊行會(非賣品)1915/10(大正4)所収


■スペイン語訳 Translation into Spanish

Sabes una cosa, Emily? Cuando un hombre vuelve a tierra tras un largo viaje por mar está completamente ciego: es incapaz de aber qué mujer le interesa. Todas le parecen iguales, hermosas criaturas, y acepta con facilidad a la primera que se presenta, sin pensar si ella lo ama o si él puede amar más a otra al poco tiempo. Desde el principio me sentí más inclinado por ti, pero eras tan tímida y retraída que imaginé que no querías que te molestara, así que me decanté por Joanna.

   Para contentar a su mujer
   in Cuentos completos by Thomas Hardy
   Translated by Catalina Martínez Muñoz
   Alba Editorial, 2013/03
   Preview at Google Books


■英語原文 The original text in English

'[Omission] You know, Emily, when a man comes home from sea after a long voyage he's as blind as a bat—he can't see who's who in women. They are all alike to him, beautiful creatures, and he takes the first that comes easy, without thinking if she loves him, or if he might not soon love another better than her. From the first I inclined to you most, but you were so backward and shy that I thought you didn't want me to bother 'ee, and so I went to Joanna.'

   To Please His Wife
   from Life's Little Ironies (1894) by Thomas Hardy
   E-text at:


■邦題の異同 Variations of the title translated into Japanese

  「帰らぬひと」…………井出 2000
  「帰らぬ船」……………小林 1984, 1986, etc.
  「妻への想い」…………渡 2002
  「妻ゆえに」……………下嶋 1973, 1987
  「妻ゆえに」……………河野 1957, 1967, etc.
  「妻ゆえに」……………田代 1950, 1951, etc.
  「妻ゆえに」……………藤井 1991
  「妻ゆえに」……………平戸 2003
  「妻ゆゑに」……………宮嶋 1932
  「妻ゆゑに」……………森村 1932
  「妻ゆゑに」……………平田 1915, 1925
  「妻を喜ばせたく」……秋山 1976


■更新履歴 Change log

  • 2013/07/30 目次を新設しました。また、中国語訳に関する書誌情報を追加しました。
  • 2013/07/25 スペイン語訳を追加しました。
  • 2009/07/06 邦題の異同の項を新設しました。また、ブログ記事の題に日本語の異題を追加して、つぎのとおり変更しました。

    旧タイトル: To Please His Wife by Thomas Hardy
            トマス・ハーディ 「妻ゆえに」「帰らぬひと」「帰らぬ船」
    新タイトル: To Please His Wife by Thomas Hardy
            トマス・ハーディ 「妻ゆえに」「妻ゆゑに」「妻のために」
            「帰らぬひと」「帰らぬ船」
  • 2007/08/16 宮嶋新三郎=譯註 1932/04 を追加しました。
  • 2007/07/11 下嶋統一= 1987/08 を追加しました。
  • 2007/07/07 藤井繁=訳 1991/12 を追加しました。
  • 2007/06/25 渡千鶴子=訳 2002/03 と小林清一=訳 1984/03 を追加しました。

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Friday, 22 June 2007

Les Embaumeuses by Marcel Schwob マルセル・シュオッブ / マルセル・シュウォッブ 「ミイラ造りの女」「木乃伊をつくる女」「ミイラづくりの女たち」「ミイラづくり」「ミイラ造りの女たち」

■表紙画像と肖像写真 Book covers and a portrait

a. Schwob_japanese b. Contes_gothiques_1 c. 037
↑ クリックして拡大 Click to enlarge ↑

■日本語訳 Translations into Japanese

(J1) 大濱 2015
見れば彼女たちは、まだ生々しい脇腹を裂いて、黄色や褐色や緑色や青い色をした腸を引き出しては、それを壺のなかに漬し、鼻から銀の鉤を差しこんで、根元の細い骨をくだき、箆(へら)で脳髄をかき出し、死骸を色のついた水で洗い、ロードス島産の香料や没薬や肉桂をなすりつけ、髪を束ね、睫毛と眉毛に色を塗り、歯を染め、唇を固め、手足の爪を磨き、それを金線で縁取っていた。


(J2) 日影 1989
私は彼女達がなまなましい胴中の片側を裂いて、黄色の、茶色の、緑の、青の、はらわたを引き出し、それを壺(アムフォール)中へ漬込み、銀の小鉤を鼻からさしこんで、鼻柱の柔らかな骨を破り、箆で脳味噌を掻きだし、色のついた水で死体を洗って、ロード島の香料や、没薬、日桂を塗り、髪を束ね、睫毛眉毛に色ゴムを引き、歯を色どり唇を固め、手足の爪を磨いて、金の線で巻きなどするのを見た。

  • シュオッブ=著 日影丈吉(ひかげ・じょうきち)=訳 「木乃伊をつくる女」 日影丈吉=編 『フランス怪談集』 河出文庫 1989/11

(J3) 高野 1989
女たちは、まだあたたかみの残っていそうな死体のわき腹を切りさくと、青や黄色や緑や茶色の内臓をとりだし、角のようなかっこうをした素焼きの長いつぼに入れていく。それがすむと、鼻の穴から銀製の鉤をさしこみ、おくのほうのやわらかい骨をくだいて、脳みそをへらでかきだす。それから色のついた水で死体をあらい、ロードス島の香水をふりかけ、没薬(もつやく)やシナモンをすりこむ。髪を編み、まゆげやまつげに色つきののりをつけ、歯をそめると、手足の指のつめをみがき、金線でひとつひとつの輪郭をえがく。

  • シュウォッブ=著 高野優=訳 「ミイラづくりの女たち」 江河徹=編 『悪夢のような異常な話』 幻想文学館4(全5巻) くもん出版 1989/08
  • ルビの一部を省略しました

(J4) 川口 1988
その女たちは、真新しい死体のわき腹をさいて、黄色や茶色や緑や青のはらわたをひっぱりだし、それを細長い壺に入れたり、死体の鼻に銀製の鉤をさしこんで、鼻のつけ根のもろい骨をつきやぶり、へらで脳みそをかきだしたり、着色した水で死体をあらったり、ロードスの香水や没薬(もつやく)という樹脂やシナモンをなすりつけたり、髪を三つ編みにしたり、まつげや眉に色つきのゴム糊をぬったり、歯をそめたり、唇をかためたり、手足の爪をみがいて金粉をぬったりしていた。

  • マルセル・シュウォップ=著 川口美樹子=訳 「ミイラづくり」 長島良三=編 『フランス怪奇小説集』 偕成社文庫 1988/08
  • ルビは省略しました

(J5) 井上 1983, 1985
私が見たのは、女たちがまだ新しい脇腹をかっさばき、黄色や茶色、緑や青色の内臓をひっぱり出しては壺に漬け、銀製の鉤(かぎ)を鼻孔からさしこみ、底の柔らかい骨を砕いて箆(へら)で脳味噌を掻きだしたり、薄く色のついた液体で死体を洗って、ロードス島の香水とか没薬(もつやく)、シナモンなどを擦りこんだり、睫毛や眉を色絵具で描きなおしたり、歯に色を塗り、唇を硬くし、足や指の爪を磨きあげて金線で輪郭を描いたりしている光景だった。


■著者名の日本語表記 Transliteration variations of "Schwob" in Japanese

  • シュオッブ…………大濱 2015
  • シュオッブ…………日影 1989
  • シュウォッブ…………高野 1989
  • シュウォッブ…………井上 1983, 1985
  • シュウォップ…………川口 1988

■フランス語原文 The original text in French

Je les voyais fendre sur le côté des ventres frais et tirer les boyaux jaunes bruns, verts et bleus, qu’elles plongeaient dans des amphores, enfoncer par le nez des figures un crochet d’argent, briser les os délicats de la racine et ramener la cervelle avec des spatules, laver les corps avec des eaux teintes, les frotter de parfums de Rhodes, de myrrhe et de cinnamome, tresser les cheveux, gommer les cils et les sourcils de couleur, peindre les dents et durcir les lèvres, polir les ongles des mains et des pieds et les entourer d’une ligne d’or.


■更新履歴 Change log

  • 2016/04/28 大濱甫=訳 2015/06/25 を追加しました。
  • 2007/06/26 高野優=訳 1989/08 を追加しました。

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Thursday, 21 June 2007

Jeeves Takes Charge (from Carry on, Jeeves) by P.G. Wodehouse P・G・ウッドハウス 「ジーヴス登場」「ジーヴズの初仕事」「ジーヴズ乗りだす」「専用心配係」 (『それゆけ、ジーヴス』『ジーヴズの事件簿』『ジーヴズ物語』より)

 Images 
本の表紙とCDのジャケット Book & CD covers

a. 1572705175_cd b. En_penguin_3503 c. Carry_on_jeeves

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■日本語訳 Translations into Japanese

(1) 森村 2005
「君はこのスーツが嫌いなようだな、ジーヴス」僕は冷たく言った。
「いいえ、滅相(めっそう)もございません、ご主人様」
「どこが嫌なんだ?」
「大変結構なスーツでございます」
「だからどこが気に入らないんだ? いいから言ってみろ!」
「わたくしにご提案をお許しいただけますならば、シンプルな茶か紺でおとなしめの綾織が……」
「何たるたわ言だ!」
「かしこまりました、ご主人様」
「まったく何て見下げ果てたことを言うんだ!」
「お心のままに、ご主人様」
 もう一段あると思って階段に足をかけたら、なかった時みたいに拍子抜けがした。僕はいかなる反抗をも受けて立とうというような気分だった——こう言っておわかりいただけるだろうか——で、反抗してくる相手がいない、みたいな具合か。
「よろしい、では」僕は言った。
「はい、ご主人様」

  • P・G・ウッドハウス=著 森村たまき=訳 「1. ジーヴス登場」 『それゆけ、ジーヴス』 ウッドハウス・コレクション 国書刊行会 2005/10 所収
  • 原書: Carry on, Jeeves (1925) by P.G. Wodehouse


(2) 岩永+小山 2005
「このスーツが気に入らないようだな、ジーヴズ?」僕は冷たい声で言った。
「滅相(めっそう)もないことです」
「いったいどこが気に入らない?」
「大変ご立派なスーツで」
「そうじゃないだろう。何が悪いんだ? 言ってみろ」
「もし申し上げてよろしければ、無地の茶か青、おとなしい綾織か何かの——」
「たわけたことを!」
「よろしゅうございます」
「全くのたわごとだぞ、おまえ!」
「仰(おお)せのとおりかと」
 これではまるで、階段を登る途中で一段あると思って踏み出したら何もなかったときのようだ。何かに気持ちをぶつけたいのに、ぶつける物がない。
「よし、もういい」
「承知いたしました」

  • P・G・ウッドハウス=著 岩永正勝+小山太一=編訳 「ジーヴズの初仕事」 『ジーヴズの事件簿』 P・G・ウッドハウス選集1 文藝春秋 2005/05 所収
  • 原書: Carry on, Jeeves by P.G. Wodehouse. Herbert Jenkins, 1925


(3) 井上 1966
「ジーヴズ、この服が気にいらないのか?」
 わたしは冷ややかにいった。
「いえ、そんなことはございません」
「ほう、どこが気にいらないんだ?」
「たいへん結構な服で」
「とにかく、どこがいけないんだ? さあ、いってみろ!」
「こう申してはなんですが、何かおとなしい杉綾のあっさりした茶か紺で——」
「そんなばかげたもの!」
「さようで」
「まったくいやなやつだな!」
「おおせのとおりで」
 わたしはなんだか、階段で最後の一段があったと思って足をおろしたら段がなかったような気がした。わかってもらえるかどうか知らないが、挑戦を受けたような気がして、しかも相手がいないみたいだった。
「それならいい」わたしはいった。
「はい」

  • ウッドハウス=著 井上一夫=訳 「ジーヴズ乗りだす」 ジーヴズ物語 『世界文学全集37 20世紀の文学』 ウッドハウス/マルセル・エイメ/ジャック・ペレー/イリフ、ペトロフ/ケストナー 集英社 1966/12 所収


(4) 乾 1956
「お前、この服が気に入らんのか?」
 ぼくはひややかに言ってやった。
「いえ、どういたしまして」
「ええ、どういうわけで気に入らんのかね?」
「たいへん結構なお洋服だと存じます」
「どこがいけないってんだよ! 言ってごらんよ、言って!」
「されば、申し上げまするが、茶(ちゃ)か紺(こん)に目立ちませぬ縞柄(しまがら)のものが……」
「そんなもの、じじむさくて着れるかい!」
「かしこまりました」
「全然だめだよ」
「おそれいります」
 どうも張合(はりあ)いがない。あるべき階段の段々に足がさわらんようなものたりなさである。やむを得ん。
「それでよろしい」
 と、ぼくはともかくも主人としての格好(かっこう)をつけた。
「は」

  • P・G・ウッドハウス=著 乾信一郎(いぬい・しんいちろう)=訳 「専用心配係」 ジョンストン・マッカレー〔ほか〕=著 『地下鉄サム』 世界大ロマン全集6 東京創元社 1956/11 所収


 Video 
Jeeves & Wooster Series 1 Episode 1 Part 2/5

下の引用箇所に相当する会話は 0:22 あたりから始まります。 Uploaded to YouTube by wolfxbloed on 10 Jun 2009. Jeeves and Wooster property of ITV. The dialogue corresponding to the excerpt below starts around 0:22.


 Audio 
英語原文のオーディオブック Audiobook in English read by Kevin McAsh

下の引用箇所の朗読は 9:15 から始まります。 Uploaded to YouTube by The Library Books on 14 Dec 2014. Audio courtesy of LibriVox. Reading of the excerpt below starts at 9:15.


■英語原文 The original text in English

  "Don't you like this suit, Jeeves?" I said coldly.
  "Oh, yes, sir."
  "Well, what don't you like about it?"
  "It is a very nice suit, sir."
  "Well, what's wrong with it? Out with it, dash it!"
  "If I might make the suggestion, sir, a simple brown or blue, with a hint of some quiet twill----"
  "What absolute rot!"
  "Very good, sir."
  "Perfectly blithering, my dear man!"
  "As you say, sir."
  I felt as if I had stepped on the place where the last stair ought to have been, but wasn't. I felt defiant, if you know what I mean, and there didn't seem anything to defy.
  "All right, then," I said.
  "Yes, sir."


■外部リンク External links


■更新履歴 Change log

  • 2014/12/18 英語原文オーディオブックの YouTube 画面を追加しました。
  • 2013/09/20 外部リンクの項を新設しました。
  • 2013/05/02 Jeeves & Wooster Series 1 Episode 1 の YouTube 動画を追加しました。
  • 2007/06/26 乾信一郎=訳 1956/11 を追加しました。

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Wednesday, 20 June 2007

The Zebra Storyteller by Spencer Holst スペンサー・ホルスト 「ほら吹きシマウマ」

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本の表紙と肖像写真 Book covers and a portrait
a. 5153rq8n84l_ss500_1 b. Holst_zebra_1 c. Holst_spencer_1

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■日本語訳 Translation into Japanese

 昔むかし、失敬にもシマウマ語をしゃべって、ライオンのふりをしたシャム猫がおりました。
 そのシマウマ語はアフリカのあるシマウマ一族が話している言葉でした。
 さて、何も知らないシマウマが一頭、ジャングルを歩いておりますと、向こうから小さなネコがやってきました。
「やあ、こんにちは!」そのシャム猫は完璧なシマウマ語で言いました。「良いお天気ですねえ。太陽はさんさんと輝き、小鳥は歌う。ほんとうに、今日はなんて気持ちがいいんでしょう!」
 シャム猫が自分たちの言葉を話したので、シマウマはビックリ仰天して、固まってしまいました。
 小さなシャム猫は身動きできなくなったシマウマを縛り上げて殺し、おいしいところを巣に引きずって帰りました。
 こうしてシャム猫は何カ月もシマウマ狩りをして、毎晩、シマウマの柔かなヒレ肉を食べ、はいだ皮でシャムの古い宮廷の放蕩好きな王子たちを真似たネクタイと広幅ベルトをつくりました。
(……)

[ルビは省略しました。ここまでがお話の前半。ほら吹きシマウマは、このあと登場 - tomoki y.]

  • スペンサー・ホルスト=著 吉田利子=訳 「ほら吹きシマウマ」 北村薫=編 『謎のギャラリー—愛の部屋』 新潮文庫 2002/03 所収

■スペイン語訳 Translation into Spanish

  Hubo una vez un gato de Siam que pretendía ser un león y que chapurreaba el cebraico.
  Este idioma es relinchado por la raza de caballos africanos rayas.
  He aquí lo que sucede: una cebra inocente está caminando por la jungla y por el otro lado se aproxima el gatito; ambos se encuentran.
  “¡Hola!- dice el gato siamés en cebraico pronunciado a la perfección-. Realmente es un lindo día, ¿No? ¡El sol brilla, los pájaros cantan, el mundo es hoy un hermoso lugar para vivir!”
  La cebra se asombra tanto de escuchar a un gato siamés que habla como una cebra , que queda en condiciones de ser maniatada.
  De modo que el gatito rápidamente la ata, la asesina y arrastra los despojos mejores a su guarida.
  El gato cazó cebras con éxito durante muchos meses de esta manera, saboreando filete mignon de cebra cada noche, y con los mejores cueros de hizo corbatas de moño y cinturones anchos, a la moda de los decadentes príncipes de la Antigua Corte de Siam Empezó a vanagloriarse ante sus amigos de ser un león, y como prueba les ofrecía el hecho de que cazaba cebras.
[Omission]


 Video 
英語原文のオーディオブック(朗読) Audiobook in English with pictures

Uploaded to YouTube by Trevorhallvibe's channel on 20 Feb 2012.


■英語原文 The original text in English

  Once upon a time there was a Siamese cat who pretended to be a lion and spoke inappropriate Zebraic.
  That language is whinnied by the race of striped horses in Africa.
  Here now: An innocent zebra is walking in a jungle, and approaching from another direction is the little cat; they meet.
  "Hello there!" says the Siamese cat in perfectly pronounced Zebraic. "It certainly is a pleasant day, isn't it? The sun is shining, the birds are singing, isn't the world a lovely place to live today!"
  The zebra is so astonished at hearing a Siamese cat speaking like a zebra, why, he's just fit to be tied.
  So the little cat quickly ties him up, kills him, and drags the better parts of the carcass back to his den.
  The cat successfully hunted zebras many months in this manner, dining on filet mignon of zebra every night, and from the better hides he made bow neckties and wide belts after the fashion of the decadent princes of the Old Siamese court.
[Omission]

[This is the first half of the story. The Zebra Storyteller appears later. - tomoki y.]


■更新履歴 Change log

  • 2014/06/24 英語原文朗読の YouTube 画面を追加しました。

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La morte amoureuse by Théophile Gautier ゴーチェ / ゴーチエ / ゴーティエ 「死霊の恋」「死女の恋」「クラリモンド」

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a. 31331178 b. Liv20001 c. 482pxthc3a9ophil_gautier
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■日本語訳 Translations into Japanese

(J1) 千葉 1996
「ロミュアールさま、わたしは、あなたにお目にかかるまえから、あなたを愛していたのです。ですから、わたし、あなたをいっしょうけんめいさがしました。あなたは、わたしの夢だったのです。ようやく見つけたときが、あの運命のときでした。あなたが一生を神にささげる儀式のとき。わたしはあなたを見て、すぐにこの人だ、とわかりました。そこでわたし、いままでもっていたすべての愛と、あなたのためにもつ未来の愛をこめて、あなたを見つめたのです。わたしのその目で見られたら、どんなえらいお坊さんでも、ころりとまいってしまいます。王さまでも高貴な貴族でも、わたしの足もとにひざまづくのです。
 それなのに、あなたはへいきでした。わたしではなく、神さまを選んでしまったのですもの。(……)」
[原文にあるルビは省略しました - tomoki y.]

  • ゴーチェ=作 千葉幹夫=文 「吸血鬼の恋人」 ディケンズ〔ほか〕=作 『魔のトンネル』 青い鳥文庫Kシリーズ 講談社 1996/09

(J2) 小柳 1992, 2004
 「お会いするずっと前から私はあなたを愛していたのよ、いとしいロムアルド。それで、くまなくあなたを探し廻っていたの。あなたは私の夢だった。そしてギリギリのときになって教会であなたを見かけたのよ。私はすぐに《あの人だ!》って言ったわ。私はそれまで抱いてきた、そのときも抱いていた、その後も抱き続けるはずのあなたへの愛を一つに集めたまなざしをジッとあなたに注いだのよ。枢機卿(すうきけい)をも地獄に突き落とし、廷臣全員の前で国王をも私の足下にひざまずかせるほどのまなざしだったわ。なのに、あなたはビクともせずに私より神さまにほうを選んだのよ。(……)」


(J3) 高野 1989
「ねえ、ロミュアール。わたし、あなたに会うずっとまえから、あなたのことを愛していたのよ。あなたはわたしの理想の人だったの。どこかにあなたみたいな人がいるにちがいない、そう思って、わたし、ずいぶんいろいろなところをさがしたわ。そして、とうとうあの教会であなたを見つけたの。
 はじめてあなたを見たとき、わたしは、この人だ、この人こそわたしがさがし求めていた人なんだって思った。だから、ありったけの思いをこめて、あなたを見つめたの。ごぞんじかしら、ほんの少し見つめただけで、わたしは、どんなにりっぱな司教さまでも誘惑(ゆうわく)できるし、どんなにえらい王さまでも足もとにひざまずかせることができるのよ。それなのに、あなたは平気な顔をしていた。そして、わたしより、神さまのほうを選んでしまった……。(……)」

  • ゴーチエ=著 高野優(たかの・ゆう)=訳 「死女の恋」 江河徹(えがわ・とおる)=編 『ファンタスティックな恋の話』 幻想文学館5 くもん出版 1989/08

(J4) 野内 1986
「あたしはあなたにお目にかかるずっと前から、あなたをお慕いしてましたのよ、ロミュアルド。それは方々お捜ししましたわ。あなたはあたしの夢だったのです。そしてあの運命の瞬間に、教会でお姿を目にしたのです。あたし、とっさに『あの方だわ!』と声に出してしまいました。あたしはあなたに視線を投げかけました。今まで抱きつづけ、そして今もこれからも抱きつづける想いのたけを込めて。枢機卿さまだって地獄に突き落し、並居る廷臣の前で王様だってあたしの足もとにひざまずかせる眼差よ。なのに、あなたったら知らんぷり。あたしより神さまをお選びになったのね。(……)」


(J5) 店村+小柳 1977
[訳文は追って挿入するつもりです - tomoki y.]

  • ゴーチェ=著 店村新次(たなむら・しんじ)+小柳保義=訳 「死女の恋」 『ゴーチェ幻想作品集』 ブックスメタモルファス 創土社 1977/03

(J6) 田辺 1951, 1963, etc.
「あたしあなたにお目にかかるずっと前から、あなたをお愛ししていましたのよ、恋しいロミュオーさま。そして、ほうぼうお捜ししていましたの。あなたはあたしの夢だったのです。教会でせっぱつまった瀬戸ぎわにお見かけしたとき、あたし〝あの方だ!〟と、すぐに言いましたの。そして、あなたに対して、それまで持っていたし、今も持っているし、将来も持つにちがいない、すべての愛をこめた眼ざしを送ったのです。僧正さまさえ地獄におとし、王さまでも宮廷にいならぶ人々の前で足もとにひざまずかせる眼ざしでしたわ。それなのに、あなたは知らん顔して、あたしよりも神さまをおえらびになったのね。(……)」


(J7) 青柳 1948, 1959, etc.
「ねえ、ロミュアール、あたし、あなたにお目にかかる前からあなたを愛していましたのよ。だから、あたし、ほうぼう捜しまわりましたわ。あなたはあたしの夢でしたん。そして、とうとう、せっぱつまった瀬戸ぎわに、教会でお目にかかったのよ。あたしすぐ、『これがあのかただ!』っていったの。そこであたし、いままでにもっていた愛、あのときもっていた愛、今後もつであろう愛、それらの愛のことごとくをこめた眼差しで見あげたの。その目で見られれば、どんな大僧正でも誘惑されるし、どんな王様だって、宮臣の眼前でわたしの足下にひざまずいてしまうのよ。それだのに、あなたは平気でいたわね。そして、あたしよりも神様のほうを選んじゃったのね。(……)」

  • ゴーティエ / ゴーチェ=著 青柳瑞穂=訳 「死女の恋」「魔女の恋」
  • 引用は b. 創元推理文庫版に依拠しました。

(J8) 岡本 1929, 1970, etc.
「ロミュオーさま。わたしはあなたをお見かけ申した前から愛していました。そうして、あなたを捜していたのです。あなたは私の夢にえがいていたかたです。教会のなかで、しかもあの運命的な瀬戸ぎわにあなたを初めてお見かけ申したのです。わたしはその時すぐに〈あの方だ〉と自分に言いました。わたしは今までに持っていたすべての愛、あなたのために持つ未来のすべての愛、それは司教の運命も変え、帝王もわたしの足もとにひざまずかせるほどの愛をこめてあなたを見つめたのです。それをあなたは、わたしには来て下さらないで、神様をお選びになったのです……。(……)」


(J9) 佐々木 1926
『私はあなたにお會ひするずつと以前から、あなたをお慕ひ申してゐたのです、私のいとしいロミュアルド樣、そして私は、諸所方々あなたのお姿をさがしてゐたのでございます。あなたは、私の夢でございました。そして私は、あの、もう取りかへしのつかない悲しい時機になつて、あなたを教會の中でお見掛けしたのです。私はすぐに申しました。《あの方だ》と。私は、私が持つてゐただけの……あなたに對して持つてゐた、いや持たねばならなかつただけの、ありつたけの愛をこめたまなざしを、あなたに投げたのでした。それは樞機官をも盲目にし、王者をもその廷臣達の面前で、私の足許へひざまづかせることの出來るまなざしでございます。だのに、あなたは平氣でいらつしやいました。さうして私よりも神樣の方をお選びなさいました。(……)』

  • テオフィル・ゴオチェ=作 佐々木孝丸=譯 「死戀」 『佛蘭西歴代名作集』 世界短篇小説大系9 佛蘭西篇(上) 近代社 非賣品 1926/07(大正15)

(J10) 芥川 1914, 1921, etc.
「貴方に会はないずつと前から私は貴方を愛してゐてよ。可愛いゝロミュアル、さうして方々探してあるいてゐたのだわ。貴方は私の愛だつたのよ。あの時あの教会で始めてお目にかゝつたでせう。私、直に『之があの人だ』つて云つたわ、それから、私の持つてゐた愛、私の今持つてゐる、私の是から先きに持つと思ふ、すべての愛を籠めた眸(め)で見て上げたの——其眼(め)で見ればどんな大僧正でも王様でも家来たちが皆見てゐる前で、私の足下に跪いてしまふのよ。けれど貴方は平気でいらしつたわね、私より神様の方がいゝつて。(……)」

  • ゴーティエ / ゴーチエ=著 芥川龍之介=訳 「クラリモンド」
  • 初出は 1914/10(大正3)の h.。
  • 引用は b. に依拠しました。この b. は、g. を底本とし、h.と照合してあります。
  • g. と h. の訳は、久米正雄名義になっており、目次、中扉、奥付のどこにも、芥川の名前は記載されていません。しかし、これら2つの訳は、じつは「全部芥川氏によつて訳されたものである」と、f. の月報第8号 (1929/02) の「編輯者のノオト」にあります。
  • h. の久米正雄による「序」に、こうあります。「友人、山宮允、柳川隆之介、成瀬正一 三君の大なる助力なくば、今日の小成をすらなす事ができなかつたのだ」。柳川隆之介は芥川の号の1つです。
  • おなじく h. の久米正雄「序」に、こうあります。「原語の読めぬ私はやむなくラフカヂオ・ヘルンの英訳を用ゐた」。つまり、上の芥川訳はすべて、ゴーチェによるフランス語原典からの直訳ではなく、ラフカディオ・ハーン(=小泉八雲)による英訳からの重訳なのです。

(J11) 久米 1914, 1921
「貴方に會はないずつと前から私は貴方を愛してゐてよ。可愛いゝロミュアル、さうして方々探してあるいてゐたのだわ。貴方は私の愛だつたのよ。あの時あの教會で始めてお目にかゝつたでせう。私、直に『之があの人だ』つて云つたわ、それから、私の持つてゐた愛、私の今持つてゐる、私の是から先きに持つと思ふ、すべての愛を籠めた眸(め)で見て上げたの——其眼(め)で見ればどんな大僧正でも王樣でも家來たちが皆見てゐる前で、私の足下に跪いてしまふのよ。けれど貴方は平氣でいらしつたわね、私より神樣の方がいゝつて。(……)」

  • ゴーティエ / ゴーチエ=作 久米正雄=譯 「クラリモンド」
    • 〔ゴーティエ=原著〕 久米正雄=譯 『クレオパトラの一夜』 新潮社 定價金九拾五錢 1921/04(大正10)
    • ゴーチエ=作 久米正雄=譯 『クレオパトラの一夜』 新潮文庫 第1期第10編 定價貮拾五錢 1914/10(大正3)
  • a. 新潮社版 1921 は、上掲芥川訳の g. とおなじ。b. 新潮文庫版 1914 は芥川訳 h. とおなじ。(J10) 芥川の項に述べたとおり、これら2つの訳は、どちらもじつは芥川龍之介によるものです。
  • 引用は a. 新潮社版 1921 に依拠しました。(J10) 芥川訳と同文ですが、旧字である点が異なります。

■邦題の異同 Variations of the title in Japanese

  「死霊の恋」……………………田辺 1963, 1975, 1982, 1988
  「死女の恋」……………………高野 1989 店村+小柳 1977
                青柳 1959, 1969, 2006
  「死戀」…………………………佐々木 1926
  「魔女の恋」……………………青柳 1948
  「吸血鬼の恋人」………………千葉 1996
  「吸血女の恋」…………………小柳 2004
  「クラリモンド」………………芥川 1914, 1921, 1929, 1955, etc. 
                岡本 1929, 1987 久米 1914, 1921
  「遊女クラリモンドの恋」……野内 1986


■著者名の日本語表記の異同
 Transliteration variations of the author's name in Japanese

  ゴーチェ………千葉 1996 
  ゴーチェ………芥川 1995
  ゴーチェ………店村+小柳 1977
  ゴーチェ………岡本 1987
  ゴーチェ……… 〃 1970
  ゴーチェ………田辺 1975
  ゴーチェ……… 〃 1963
  ゴーチェ………青柳 1948
  ゴーチエ………小柳 2004
  ゴーチエ……… 〃 1992
  ゴーチエ………高野 1989
  ゴーチエ………野内 1986
  ゴーチエ………田辺 1988
  ゴーチエ………
 〃 1982
  ゴーチエ………
 〃 1975
  ゴーチエ………芥川 1914(大正3)
  ゴーチエ………久米 1914( 〃  )
  ゴーティエ……芥川 1998
  ゴーティエ……田辺 1951
  ゴーティエ……芥川 1921(大正10)
  ゴーティエ……久米 1921( 〃  )
  ゴーチヱ………岡本 1929(昭和4)
  ゴオチェ………佐々木 1926(昭和1)
  (未確認)………芥川 1977
  (未確認)……… 〃 1967
  (未確認)……… 〃 1955


 Video 1 
Romuald/Clarimonde - Hellfire

Uploaded by CrimsonRoseOfDanube on 13 Jan 2012. From the TV series The Hunger: Season 1, Episode 21. Clarimonde (Original broadcast: 20 Mar. 1998), based on the story by Théophile Gautier.


 Audio 1 
 Audio 1 
英語版オーディオブック 朗読: ジョイ・チャン Audiobook in English read by Joy Chan

下の引用箇所の朗読は 57:12 から始まります。 Uploaded to YouTube by Audiobooks on YouTube on 26 Dec 2014. Audio courtesy of LibriVox. Reading of the excerpt below starts at 57:12.


■英訳 Translation into English

"I loved thee long ere I saw thee, dear Romuald, and sought thee everywhere. Thou wast my dream, and I first saw thee in the church at the fatal moment. I said at once, 'It is he!' I gave thee a look into which I threw all the love I ever had, all the love I now have, all the love I shall ever have for thee—a look that would have damned a cardinal or brought a king to his knees at my feet in view of all his court. Thou remainedst unmoved, preferring thy God to me! (....)"

  • La Morte Amoureuse by Théophile Gautier. Translated by Lafcadio Hearn. テオフィル・ゴーティエ=原作 ラフカディオ・ハーン=英訳 佐竹竜照(さたけ・りゅうしょう)+内田英一(うちだ・えいいち)=訳注 『クラリモンド』 大学書林 1997/01
  • E-text at:

 Video 2 
フランス語原文のビデオブック La morte amoureuse: Videobook

朗読は小説冒頭部分から。 Uploaded by Editionseponymes on Dec 14, 2009. The recording starts at the beginning of the story.


 Audio 2 
フランス語原文のオーディオブック La morte amoureuse: Audiobook

下に引用した箇所は 0:53:43 あたりから始まります。 Published on 5 Nov 2012 by Audiolude. The excerpt below starts around 0:53:43


■フランス語原文 The original text in French

« Je t'aimais bien longtemps avant de t'avoir vu, mon cher Romuald, et je te cherchais partout. Tu étais mon rêve, et je t'ai aperçu dans l'église au fatal moment ; j'ai dit tout de suite « C'est lui! » Je te jetai un regard où je mis tout l'amour que j'avais eu, que j'avais et que je devais avoir pour toi ; un regard à damner un cardinal, à faire agenouiller un roi à mes pieds devant toute sa cour. Tu restas impassible et tu me préféras ton Dieu. (...) »

  • La morte amoureuse by Théophile Gautier
  • E-text at munseys.com

■更新履歴 Change log

  • 2014/01/27 リンク先の英語版オーディオブックが削除されていたので、代わりに別の録音を掲載しました。
  • 2014/01/26 テレビ Clarimonde の YouTube 動画を追加しました。
  • 2013/03/02 英訳版のオーディオブックとフランス語原文のオーディオブックの YouTube 動画を追加しました。
  • 2011/11/27 フランス語原文のビデオブックの YouTube 動画を追加しました。
  • 2011/07/01 英訳の書誌情報を修正しました。
  • 2007/06/30 佐々木孝丸=譯 1926/07 を追加しました。
  • 2007/06/30 野内良三=訳 1986/05 を追加しました。
  • 2007/06/24 小柳保義=訳 1992/05 を追加しました。

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■洋書 Books in non-Japanese languages
(1) La morte amoureuse

(2) Theophile Gautier

■和書 Books in Japanese

  

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Monday, 18 June 2007

Lady into Fox by David Garnett デイヴィッド・ガーネット「狐になった奥様」「狐になった人妻」「狐になった夫人」

■表紙画像と肖像画 Cover photos and a portrait

4309621910 Lady_into_fox Garnet6
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Left: ガーネット傑作集1』 河出書房新社 (2004)
Centre: Dust-jacket from the first edition of "Lady into Fox." Image source: Wikipedia
Right: David Garnett (1892-1981)  Image source: Modern Humanities by A. Vincent


■日本語訳 Translations into Japanese

(1) 安藤 2007
 ついさっきまで妻がいたところに、燃えるような赤毛の小さな狐がいた。狐は、哀願するようにテブリック氏の顔を見あげて、ひと足、ふた足、にじり寄ってきた。
 テブリック氏は、ただちに、妻が狐の目で自分を見ているのを悟った。
 かれが肝をつぶしたのは、容易に想像できるだろう。たぶん、妻もまた、そのような姿になった自分を発見して、びっくり仰天したことだろう。
 そこで、ものの半時間というもの、二人は、ただもう目を瞠(みは)って顔を見交わしてばかりいた。テブリック氏は、途方にくれ、妻のほうは目顔でかれに尋ねていた。そのまなざしは、あたかも、「あたしはいまどうなったのでしょう? あたしをかわいそうだと思ってちょうだい、あなた。だって、あたしはあなたの妻なんですもの」と言っているようだった。

   ガーネット=著 安藤貞雄=訳 レイチェル・マーシャル=木版画
   『狐になった奥様』 岩波文庫 2007/06
   下線箇所は、原文では下線でなく傍点。

   底本:
   Lady into Fox and A Man in the Zoo
   London: Chatto & Windus, 1967.


(2) 池 2004
今の今まで妻がいたはずのところに、燃えるような赤毛の小さな狐が前のめりに鼻面を突き出していた。狐はすがるようにテブリック氏を見上げて、二足、三足近づいた。その時早く、テブリック氏は獣の目で自分を見ているのは妻だと悟った。テブリック氏の驚くまいことか。妻もまた、変り果てた自身の姿にさぞかし魂消(たまぎ)る思いであったろう。なす術(すべ)もなく声もなく、二人はただ見つめ合って小半時が過ぎた。テブリック氏は狼狽(ろうばい)に竦(すく)み、見返す妻の目は口ほどに物を言っていた。「何と浅ましいこの姿。捨てないで。ねえ、あなた。どうか不憫(ふびん)と思って、私を捨てないで。だって、私はあなたの妻ですもの」

   デイヴィッド・ガーネット=著 池央耿(いけ・ひろあき)=訳
   「狐になった人妻」
   『ガーネット傑作集1 狐になった人妻/動物園に入った男
   河出書房新社 2004/05 所収


(3) 井上(安)1969
たったいままで、彼の妻がいたところに、見事な、つやつやした赤毛の小狐がたっていた。小狐は心から哀願するように彼をみつめ、一、二歩彼の方へあゆみよった。それで、とたんに彼は、妻が獣になって自分をみつめていることがわかった。諸君が、彼が呆気にとられはしなかったかとお考えになるのも無理はない。彼の夫人自身でさえ、狐になってしまった自分の姿に、おそらく気も狂わんばかりであっただろう。それで、彼らはほとんど半時間ものあいだ、なにもしないで、ただお互いに見合っているばかりであった。彼は面くらい、彼女はあたかも「一体、私、なにになったのでしょう? あなた、どうか、私を憐んで下さい。私をかわいそうに思って下さいね。私、あなたの妻ですもの」と、実際に言いでもするように、両の眼で彼をまじまじとみつめていた。

   ディビッド・ガーネット=著 
   井上安孝(いのうえ・やすたか)=訳
   『狐になった夫人 他』 原書房 1969/04
   下線箇所は、原文では下線でなく傍点。


(4) 井上(宗)1955, 1998, etc.
と、たった今まで立っていた妻の代りに、一匹のつやつやした赤毛の小狐がいるではないか! 小狐(こぎつね)はなぜか心から哀願(あいがん)するような眼差(まなざし)で、彼の方を見ながら、一歩、二歩近づいて来た。彼は直ちにその動物の眼の色に、じっと自分を見つめている妻を感じた。彼が如何(いか)に茫然自失(ぼうぜんじしつ)の態であったかは、想像に余りあるであろう。夫人自身もこのような変り方をした己(おの)が姿を見出(みいだ)して気も狂(くる)わんばかりであったことは、言うまでもない。二人は半時間近くもせん術(すべ)なく、じっと眼を見交(みかわ)すばかりであった。彼はただ茫然として佇(たたず)んでいた。彼女はその眼つきで「一体、私どうしたというんでしょう? あなた、どうか私を憐(あわれ)んで下さい。私を不憫(ふびん)に思って下さい。どうしたって、やっぱり私はあなたの妻なんですもの!」とでも言ふように、夫に訴(うった)えているらしく見えた。

   デイヴィッド・ガーネット=著 井上宗次(いのうえ・そうじ)=訳
   「狐になった夫人」
   4a. 北村薫=編 『謎のギャラリー—愛の部屋』 新潮文庫 2002/03 所収         
   4b. 北村薫=編 『謎のギャラリー特別室2』 マガジンハウス 1998/11 所収
   4c.狐になった夫人』 新潮文庫 1955/04
   下線箇所は、原文では下線でなく傍点。


(5) 上田 1948, 1964, etc.
今のいままで彼の妻が居つた場所に一匹の小狐が、非常に鮮やかな赤い色の小狐がゐた。それはすがるやうな眼つきで彼をみつめ、一歩、二歩彼の方へ寄つてきた。そのとたんに彼はその狐の眼の中に妻が自分をみつめてゐるのを感じた。彼が膽をつぶしたことは言ふまでもない。彼の妻も同じことで、そんな姿になつたことを知つて呆然としてゐた。それで彼等は互ひに眼をみはるばかりで、半時間ばかりは空しく過ぎた。彼は途方にくれ、彼女はまるで「なんといふ姿になつたのでせう。どうぞ私を可哀相だと思つて下さい。私はあなたの妻なのですもの。」とでも言ふやうに、まじまじと彼をみつめてゐた。

   ガーネット=著 上田勤(うえだ・つとむ)=訳 「狐になった奥様」
   5a. 筑摩世界文学大系86 名作集1』 筑摩書房 1975 所収
   5b.世界文学全集69 世界名作集2』 筑摩書房 1969/06 所収
   5c.世界文学大系92 近代小説集2』 筑摩書房 1964/07 所収
   D・ガーネツト=著 上田勤=譯
   5d.狐になつた奥樣 他1篇』 英米名著叢書 新月社
     定價八拾圓 1948/06 所収
   5a., 5b., 5c. は、新字・新かな。引用は 5d. に依拠しました。
   下線箇所は、原文では下線でなく傍点。


■注釈書
 A book with the original text in English and annotations in Japanese

   David Garnett 著 堀英四郎(ほり・えいしろう)=注解
   a.狐に化けた婦人
     研究社現代英文學叢書54 研究社出版 1977
   b. 『Lady into Fox and A Man in the Zoo
     研究社現代英文學叢書 研究社 1935/04

   英語の原文と日本語による注釈が収められた本。日本語訳の
   全文は掲載されていません。現物をたしかめていませんが、
   a. b. を再刊したものかと推測します。図書館やオンライン
   書店の目録によれば Lady into Fox には「狐に化けた婦人」
   という邦題が付けられているようです。


■邦題の異同 Variations of the title in Japanese
 
   「狐になった奥様」……安藤 2007
   「狐になった奥様」……上田 1948, 1964, 1969, 1975
   「狐になった夫人」……井上(安) 1969
   「狐になった夫人」……井上(宗) 1955, 1998, 2002
   「狐になった人妻」……池 2004
  (「狐に化けた婦人」……堀 1935, 1977 注釈書。現物は未確認)


■英語原文 The original text in English

Where his wife had been the moment before was a small fox, of a very
bright red.
It looked at him very beseechingly, advanced towards him a
pace or two, and he saw at once that his wife was looking at him from
the animal's eyes. You may well think if he were aghast: and so maybe
was his lady at finding herself in that shape, so they did nothing for
nearly half-an-hour but stare at each other, he bewildered, she asking
him with her eyes as if indeed she spoke to him: "What am I now become?
Have pity on me, husband, have pity on me for I am your wife."

   Lady into Fox by David Garnett (1922)
   E-text at:
   * Project Gutenberg
   * McSweeney's Internet Tendency


■更新履歴 Change log

2010/03/04 本文の見やすさを考慮して、原文の傍点の代わりに
         使用していた太字を下線に置き換えました。
2010/03/03 検索の便を考慮して、ブログ記事のタイトルに邦題の
         異題を追加しました。また、堀英四郎氏による注釈書
         についての書誌情報を修正補足しました。
2007/07/22 安藤貞雄=訳 2007/06 を追加しました。
2007/06/24 「注釈書」の項目を新設しました。


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(1) Lady into Fox

(2) David Garnett

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Thursday, 14 June 2007

柿本人麻呂 「たまかぎる……」 萬葉集巻11-2391 Kakinomoto no Hitomaro "Tamakagiru...." from Man'yoshu 11-2391

 Video 1 
Love Songs from the Man'yoshu (Kodansha's Illustrated Japanese Classics, 2000)
万葉恋歌 Love Songs from the Man'yoshu(講談社インターナショナル 2000)

Uploaded to YouTube by LitBookMix on 23 Feb 2013


 Images 

a. Ueno_makoto_chiisana_koi_no_manyosh b. Manyo_luster_9784894441866 c. Love_songs_from_the_manyoshu_978477

↑ クリックして拡大 Click to enlarge ↑

■現代日本語訳 Translations into cotemporary Japanese

1.
それはまさに一瞬の光——
昨日
それも夕方
逢(あ)ったばかりなのに
今朝にはもう
恋しく思っている
そんなわたしで
イイノカナ……
        上野 2005
 
 
2.
玉がかすかに音を立てるようにちらっと昨日の夕方逢っただけなのに、
今日の朝、こんなにも恋するなどということがあってよいものだろうか。
        阿蘇 2004
 
 
3.
(たまかぎる)昨日の夕逢ったところなのに
今日の朝こんなにも恋をしてよいものか。
        稲岡 1998
 
 
4.
昨日の晩逢ったばかりだというのに、
明けた今朝、はやもうこんなに恋い焦れる
なんていうことがあってよいものであろうか。
        伊藤 1997 
 
 
5.
魂合いをして昨日の夜は逢えたものを、
もう今日の朝はこんなに恋に苦しむべきものなのか。
        中西 1984
 
 
6.
昨夜(ゆうべ)逢ったというのに、
明けた今朝(けさ)、はやもうこんなに恋い焦(こが)れる
なんていうことがあってよいものだろうか。
        青木+井手+伊藤〔ほか〕1980
 
 
7.
ほんのちよつと、昨日の夕べ見たものを、
今日の朝、戀ひ思ふべきものであろうか。
        土屋 1977
 
 
8.
ちらりと昨日の夕方会っただけなのに、
今日の朝こんなに恋しがってよいものであろうか。
        桜井 1974 
 
 
9.
偶然にも、昨日の夕べ逢ったのであるのに、
今日の朝に恋ふべきであろうか、恋うべきではない。
        窪田 1966
 
 
10.
まざまざと、あんなにしみじみきのふの晩は逢つたものを、
もうけふの朝にこんなに戀しがる事があつてよいものか。
        澤瀉 1962
 
 
11.
ちらりとほんの一瞬、昨日の夕見ただけなのに、
今日の朝に恋しく思うべきであろうか。
        高木+五味+大野 1960
 
 
■たまかぎる……
 上野 2005、新大系 2002、稲岡 1998
 伊藤 1997、集成 1980  

たまかぎる きのふのゆうべ みしものを
けふのあしたに こふべきものか

玉かぎる 昨日の夕 見しものを
今日の朝に 恋ふべきものか

   1. 上野誠=著 佐藤秀明=写真
     『小さな恋の万葉集』 小学館 2005/12
   (*) 佐竹昭広+山田英雄+工藤力男(くどう・りきお)
     +大谷雅夫+山崎福之(やまざき・よしゆき)=校注
     『新日本古典文学大系3 萬葉集3』 岩波書店 2002/07
   3. 稲岡耕二(いなおか・こうじ)=著 『萬葉集全注 巻第十一』(全20巻)
     有斐閣 1998/09
   4. 伊藤博(いとう・はく)=著 『萬葉集釋注6』 集英社 1997/05
   6. 青木生子(あおき・たかこ)+井手至(いで・いたる)
     +伊藤博+清水克彦+橋本四郎=校注
     『新潮日本古典集成41 萬葉集3』 新潮社 1980/11
 
 
■たまひゞき……
 阿蘇 2004

たまひゞき きのふのゆふべ みしものを
けふのあしたに こふべきものか

玉ひゞき 昨日の夕 見しものを
今日の朝に 恋ふべきものか

   2. 阿蘇瑞枝(あそ・みずえ)=著 『人麻呂集・赤人集・家持集
     和歌文学大系17 明治書院 2004/02
 
 
■たまあへば……
 中西 1984

たまあへば きのふのゆうへ みしものを
けふのあしたに こふべきものか

玉あへば 昨日の夕 見しものを
今日の朝に 恋ふべきものか

   5. 中西進=著 『萬葉集 全訳注 原文付』 講談社 1984/09


■たまゆらに……
 土屋 1977、桜井 1974、大系 1960  

たまゆらに きのふのゆうべ みしものを
けふのあしたに こふべきものか

玉ゆらに 昨日の夕べ 見しものを
今日の朝に 戀ふべきものか

   7. 土屋文明=著 『万葉集私注6』 筑摩書房 1977/01
   8. 桜井満(さくらい・みつる)=訳注
     『現代語訳対照万葉集(中)』 旺文社文庫 1974/09
   11. 高木市之助(たかぎ・いちのすけ)+五味智英(ごみ・ともひで)
     +大野晋(おおの・すすむ)=校注
     『日本古典文学大系6 萬葉集3』 岩波書店 1960/10
 
 
■たまたまも……
 窪田 1966
 
たまたまも きのふのゆふべ みしものを
けふのあしたに こふべきものか

たまたまも 昨日の夕 見しものを
今日の朝に 恋ふべきものか

   9. 窪田空穂(くぼた・うつぼ)=著
     『窪田空穂全集17 萬葉集評釋5』 角川書店 1966/11
 
 
■まさやかに……
 澤瀉 1962

まさやかに きのふのゆうべ みしものを
けふのあしたに こふべきものか

まさやかに 昨日の夕 見しものを
今日の朝に 戀ふべきものか

   10. 澤瀉久孝(おもだか・ひさたか)=著 『萬葉集注釋 卷第十一
      中央公論社 1962/10


■古代日本語の表記(万葉仮名)による原文
 The original text in ancient Japanese by using Man'yōgana

玉響 昨夕 見物 今朝 可戀物

   萬葉集 巻第十一 2391
   (柿本人麻呂)
   E-text at Japanese Text Initiative (Nishi Honganji bon 西本願寺本)
   貴重資料画像 - 京都大学電子図書館
   * 京都大学附属図書館所蔵 古典籍(古典大系) 『萬葉集』
   * 京都大学附属図書館所蔵 近衛文庫 『万葉集(近衛本)』


 Video 2 
万葉集 Manyoshu

映像の出所は未確認。NHKテレビの番組か何かのように見受けられますが。 Uploaded to YouTube by HerefordYnagae on 11 Jan 2009


■外部リンク External links


■更新履歴 Change log

2013/03/11 つぎの2本の YouTube 画面を追加しました。
         1) Love Songs from the Man'yoshu
         2) 万葉集 Manyoshu
2007/02/25 記事タイトルのローマ字表記に誤りがあったので訂正しました。
2007/12/19 窪田空穂=著 1966/11 を追加しました。また、外部リンクの項を
         新設しました。
2007/06/18 伊藤博=著 1997/05 を追加しました。
2007/06/17 阿蘇瑞枝=著 2004/02 を追加しました。


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(1) Manyoshu

(2) Ian Hideo Levy(リービ英雄)

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(1) 万葉集

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Monday, 11 June 2007

Jeeves in the Springtime by P.G. Wodehouse P・G・ウッドハウス「ジーヴズの春」

a. 4336046751 b. 517jnzazjml c. 240138

d. 300pxjeevesnwooster e. Wooster_1 f. 3103


             ↑ Click to enlarge ↑

a.比類なきジーヴス』国書刊行会 (2005)
b. The Inimitable Jeeves (The Collector's Warehouse), Overlook Pr (2007)
c. The Inimitable Jeeves, BBC Radio Collection, a 3-CD set (2005)
d. Jeeves and Wooster, a TV adaptation by Granada (1990), starring Stephen Fry (as Jeeves) and Hugh Laurie (as Bertie Wooster). Image source: Answers.com
e. The World of Wooster, a TV adaptation by BBC (1965), starring Dennis Price (as Jeeves) and Ian Carmichael (as Bertie Wooster).
f. The Inimitable Jeeves, Penguin USA, Reissue ed. (2000)
 
 
■日本語訳 Translations into Japanese

(1) 岩永+小山 2005
「メイベルという名前、好きかい?」
「いや」
「好きじゃない?」
「うん」
「音楽的な響きがしないかい——そよ風が木々の上をかすめていくような?」
「ちっとも」
 ビンゴはしばらくがっかりした様子だったが、急に元気づいて言った。
「もちろん、きみにはしないさ。もともと魂のない空っぽ頭だもんな、そうだろう?」
「好きに言えよ。で、誰なんだ、その子は? ぜんぶ吐いてしまえ」
 かわいそうに、ビンゴのいつもの病気だ。知り合って以来——いっしょに学校に行ったのは前に話したとおりだ——ビンゴはのべつ誰かに恋焦がれていて、それもいかなる魔法なのか、春が一番多かった。学校時代、女優のブロマイド集めにかけては右に出るものがなかったし、オックスフォードでは「ビンゴの恋患い」といって知らぬ者はなかった。

   P・G・ウッドハウス=著
   岩永正勝+小山太一=編訳「ジーヴズの春」
   その一 ジーヴズ、知恵を絞る
   『ジーヴズの事件簿』P・G・ウッドハウス選集1
   文藝春秋 2005/05 所収
 
   原典:
   The Inimitable Jeeves
   by P.G. Wodehouse
   Herbert Jenkins, London, 1923

   The U.S. edition was published by George H. Doran, New York,
   1923, under the title "Jeeves."
 
 
(2) 森村 2005
「お前、メイベルって名前は好きか?」
「いや」
「嫌いなのか?」
「嫌いだ」
「この名前には一種の音楽が感じられないか? 木々の梢を風がそよぐような」
「いや」
 奴は落胆した様子だったがすぐに気を取り直した。
「お前にゃあわからなくて当然だ。お前はいつだって心の無いデカ頭のイモ虫だったよな」
「何とでも言え。で、どんな女の子なんだ? 全部話せよ」
 また始まった、と僕は了解した。知り合って以来——奴とは子供の頃からいっしょに学校に通った仲だが——春になると奴は永久不変に誰かしらと恋に落ちてきた。学校時代、奴は誰もかなわないほど、当時人気の女優の写真のコレクションを所有していた。オックスフォード大学時代、奴のロマンティックな性癖は物笑いの種だった。

   P・G・ウッドハウス=著 森村たまき=訳
   「1. ジーヴス、小脳を稼動させる」
   『比類なきジーヴス』ウッドハウス・コレクション
   国書刊行会 2005/02 所収
 
   原典:
   The Inimitable Jeeves (1923)
   by P.G. Wodehouse
   Penguin Books
 
 
(3) 乾 1985
「君、メイベルって名前好きかい?」
「いや」
「きらいかい?」
「うん」
「この語にはだ、梢をやさしくなでて行く風のような、音楽のひびきみたいなところがあると思わないのかい?」
「思わんね」
 ちょっと彼は失望の態であったが、やがて元気を取り戻した。
「いや君にはわかるわけがないやね。前々から君って男は、心もなんにも持ってないまぬけ野郎だったからな、そうだろ?」
「いいたいことをいうがいいさ。その女って何者だい? 一部始終を白状しろよ」
 今やぼくにも見当がついたのだ、あわれなビンゴめ、またまた例のをやっているんだ。彼と知りあって以来……学校も一緒だったが……永久運動的に誰かに恋をしている、特に春がひどい。春はどうやら彼に魔術みたいに作用するらしいのだ。学校時代彼は当代女優の写真を一人残らず収集していたし、オックスフォードでの、彼のあだ名はそのロマンチックな性癖に由来したものだった。

   P・G・ウッドハウス=著 乾信一郎(いぬい・しんいちろう)=訳
   「ジーブスと春の訪れ」
   ハヤカワ・ミステリマガジン 1985/04 No.348 収載
 
 
■英語原文 The original text in English

"Do you like the name Mabel?"

"No."

"No?"

"No."

"You don't think there's a kind of music in the word, like the wind rustling gently through the tree-tops?"

"No."

He seemed disappointed for a moment; then cheered up.

"Of course, you wouldn't. You always were a fatheaded worm without any soul, weren't you?"

"Just as you say. Who is she? Tell me all."

For I realised now that poor old Bingo was going through it once again. Ever since I have known him--and we were at school together--he has been perpetually falling in love with someone, generally in the spring, which seems to act on him like magic. At school he had the finest collection of actresses' photographs of anyone of his time; and at Oxford his romantic nature was a byword.

   Jeeves in the Springtime (1921)
   1. Jeeves Exerts the Old Cerebellum
   by P.G. Wodehouse
   Excerpt at Amazon.co.jp

   E-text at:
   * Project Gutenberg
   * Another site by the Project Gutenberg
   * Web Book Publications
   * The Literature Network
   * ClassicReader.com
 
 
■List of books by P. G. Wodehouse

   * A complete list of books by P. G. Wodehouse can be viewed
    at Wikipedia.
  
■List of e-texts

   * E-Texts of PG Wodehouse
  
■ウッドハウス邦訳のリスト

   * 真田啓介=編「ウッドハウス邦訳書誌
   * ミステリー・推理小説データベース Aga-Search
    P・G・ウッドハウス および 執事ジーヴス のページ

ただし、真田氏の書誌は2003年7月現在のものです。したがって、つぎの各シリーズのタイトルは含まれておりません。

   * 国書刊行会『ウッドハウス・コレクション』(2005/02〜続刊中)
   * 国書刊行会『ウッドハウス・スペシャル』(2007/09 第1回配本予定)
   * 文藝春秋『P・G・ウッドハウス選集』(2005/05〜続刊中)
  
■参考 
   * 文藝春秋|本の話より|PICK UP
    岩永正勝×小山太一
    「天国のような喜劇の世界—笑いの天才P・G・ウッドハウス」
    文藝春秋『P・G・ウッドハウス選集』の編訳者2人による対談。
  
■Links
   * The P G Wodehouse Society (UK)
   * The Wodehouse Society (USA)
   * The P.G. Wodehouse Society (Netherlands)
   * The Drones Club of Belgium
   * The Russian Wodehouse Society(英語ページあり。画像多数)
   * Amici di Wodehouse
   * P. G. Wodehouse Appreciation Page by Tom Kreitzberg
   * P.G.Wodehouse page by Shamim Mohamed
   * 執事たちの足音 by countsheep99
 
 
■更新履歴 Change log

2007/07/01
乾信一郎=訳 1985/04 を追加しました。
 
 
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Thursday, 07 June 2007

…trotzdem Ja zum Leben sagen: Ein Psychologe erlebt das Konzentrationslager / Man's Search for Meaning by Viktor E. Frankl ヴィクトール・E・フランクル 『夜と霧』

        目次 Table of Contents

 Video 1  BBC Auschwitz: The Nazis and the 'Final Solution' (2005)
 Gallery   表紙画像と肖像写真 Cover photos and a portrait
■中国語訳(簡体字) Translation into simplified Chinese
■日本語訳 Translations into Japanese
  (J1) 池田 2002
  (J2) 霜山 1956, 1961, 1985
■ポルトガル語訳 Translation into Portuguese
 Video 2  Viktor Frankl - Biografía (in Spanish)
 Audio 1  スペイン語版オーディオブック Audiobook in Spanish
■スペイン語訳 Translation into Spanish
■フランス語訳 Translation into French
 Audio 2  英語版オーディオブック Audiobook in English
■英訳 Translation into English
■ドイツ語原文 The original text in German
■NHK Eテレ 100分 de 名著 名著14 フランクル『夜と霧』
■翻訳家:池田香代子インタビュー
■書誌 Bibliography
■更新履歴 Change log


 Video 1 
BBC documentary series Auschwitz: The Nazis and the 'Final Solution' (2005)
Episode 1: Suprising Beginnings. Part 1.

Original UK broadcast: 11 Jan 2005. More info at Wikipedia. DVD available from Amazon.co.uk.


 Gallery 
表紙画像と肖像写真 Cover photos and a portrait

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↑ クリックして拡大 Click to enlarge ↑

■中国語訳(簡体字) Translation into simplified Chinese

首先让我们举一个转移的例子。有时,集中营当局会宣布将某一数量的囚徒转移到另一集中营;但是,较为可靠的推测是,转移的终点是毒气室。挑选的对象是不能干活的体弱多病者,他们将被送到配备着毒气室和焚烧炉的中心集中营去:挑选的过程将意味着一场每个囚徒之间,或一群人与另一群人之间为自由而展开的斗争。事关紧要的是,自己或朋友的名字能够从牺牲者的名单上勾去,尽管每个人都明白,每个人的获救将意味着另一个人的牺牲。 每次转移都将会带走某一数量的囚徒。实际上,这井不算什么,因为每个人只是一个号码。


■日本語訳 Translations into Japanese

(J1) 池田 2002
たとえば、近く被収容者が移送される、一定数の被収容者が別の収容所に移されるらしい、と聞いたとする。わたしたちは、それはまやかしだ、と考える。なぜなら当然、その移送とは「ガス室送り」だと、選ばれるのは病人や衰弱した人びとで、労働に適さない被収容者が、ガス室と火葬場をそなえた中央の大きな収容所で抹殺されるために淘汰されるのだ、と憶測するからだ。とたんに、すべての人がすべての人を敵に回した抗争が、グループ同士の抗争が始まる。一人ひとりが、自分と自分の親しい者たちが移送されないよう、移送リストから「はずしてくれるよう嘆願する」ことに、ぎりぎりの土壇場まで死にものぐるいになる。だれかが抹殺をまぬがれれば、だれかが身代りになることははっきりしていた。この際、問題なのは数だけ、移送リストをみたす被収容者の数だけなのだ。一人ひとりはまさにただの数字であって、事実、リストには被収容者番号しか記入されなかった。

  • ヴィクトール・E・フランクル=著 池田香代子=訳 『夜と霧 新版』 みすず書房 2002/11/05
  • この訳の底本は原著の1977年改訂版です。みすず書房による、この本の詳しい紹介は ここ

(J2) 霜山 1956, 1961, 1985
たとえば、収容所の囚人の一定の数を、他の収容所に送る囚人輸送があるということを、われわれが聞いたとする。すると当然のことながら「ガスの中に入れられる」ということを推測するのである。すなわちその輸送とは病人や弱り果てた人々から、いわゆる「淘汰」が、つまり労働が不能になった囚人の選抜、が行われて、ガスかまど及び火葬場のある中央のアウシュヴィッツ大収容所で殲滅されると考えるのである。この瞬間から、あらゆる人々の、あらゆる人々に対する戦いが燃え上るのである。各人は自らと、自分に一番近しい者とを守ろうとし、輸送に入るまいとするのである。例えば最後の瞬間になお輸送者リストから「訴願してはずされる」ことを求めるのである。しかし、殺されることから、誰かが救われるとしても、その代りに誰か別の人が入らなければならないのは明らかなのである。何故ならば輸送の場合には人数だけが、すなわち輸送を充たすべき囚人の数が問題なのである。各囚人は文字どおり番号だけを示しているのであり、輸送のリストには事実、番号のみが書かれてあるのである。


■ポルトガル語訳 Translation into Portuguese

Suponhamos, por exemplo, que seja iminente um transporte para levar certo número de internados para outro campo de concentração, segundo a versão oficial, mas há boas razões para supor que o destino seja a câmara de gás, porque o transporte de pessoas doentes e fracas representa uma seleção dos prisioneiros incapacitados de trabalhar, que deverão ser dizimados num campo maior, equipado com câmaras de gás e crematório. E neste momento que estoura a guerra de todos contra todos, ou melhor, de uns grupos e panelinhas contra outros. Cada qual procura pro- teger-se a si mesmo ou os que lhe são chegados, pó-los a salvo do transporte, "requisitá-los" no último momento da lista do transporte. Um fato está claro para todos: para aquele que for salvo dessa maneira, outro terá que entrar na lista. Afinal de contas, o que importa é o número; o transporte terá que ser completado com determinado número de prisioneiros. Cada qual então representa pura e simplesmente uma cifra, pois na lista constam apenas os números dos prisioneiros.


 Video 2 
ヴィクトール・フランクルの生涯(スペイン語) Viktor Frankl - Biografía (in Spanish)

Uploaded to YouTube by Karol Lúquez on 25 Jul 2011.


 Audio 1 
スペイン語版オーディオブック Audiobook in Spanish

下に引用する箇所は 2:44 から始まります。 Uploaded to YouTube by Cynthia B. Leaf on 25 Mar 2015. Reading of the excerpt below starts at 2:44.


■スペイン語訳 Translation into Spanish

Pongamos como ejemplo las veces en que oficialmente se anunciaba que se iba a trasladar a unos cuantos prisioneros a un campo de concentración, pero no era muy difícil adivinar que el destino final de todos ellos sería sin duda la cámara de gas. Se seleccionaba a los más enfermos o agotados, incapaces de trabajar, y se les enviaba a alguno de los campos centrales equipados con cámaras de gas y crematorios. El proceso de selección era la señal para una abierta lucha entre los compañeros o entre un grupo contra otro. Lo único que importaba es que el nombre de uno o el del amigo fuera tachado de la lista de las víctimas aunque todos sabían que por cada hombre que se salvaba se condenaba a otro. En cada traslado tenía que haber un número determinado de pasajeros, quien fuera no importaba tanto, puesto que cada uno de ellos no era más que un número y así era como constaban en las listas.


■フランス語訳 Translation into French

Lorsqu’on annonçait officiellement, par exemple, qu’un transport de prisonniers d’un camp à un autre allait avoir lieu, personne n’ignorait que la destination finale était la chambre à gaz. On envoyait en effet les prisonniers faibles ou malades devenus incapables de travailler dans les camps où se trouvaient les chambres à gaz et les fours crématoires. Le processus de sélection déclenchait alors une mêlée générale opposant tous les prisonniers, ou un groupe à un autre. Une seule chose comptait : faire rayer son nom ou celui d’un ami de la liste fatale, même si chacun savait que pour chaque condamné gracié il fallait trouver une autre victime. Chaque convoi comprenait un nombre précis de personnes. Faire partie de l’un ou de l’autre revenait au même puisque chaque prisonnier n’était qu’un simple numéro.


 Audio 2 
英語版オーディオブック(朗読、音声のみ) 01/27
Man's Search for Meaning - Audiobook in English 01/27

下に引用する箇所は 3:26 から始まります。 Uploaded to YouTube by radiodramaonthenet on 18 Feb 2010. Reading of the excerpt below starts at 3:26.


■英訳 Translation into English

Let us take the case of a transport which was officially announced to transfer a certain number of prisoners to another camp; but it was a fairly safe guess that its final destination would be the gas chambers. A selection of sick or feeble prisoners incapable of work would be sent to one of the big central camps which were fitted with gas chambers and crematoriums. The selection process was the signal for a free fight among all the prisoners, or of group against group. All that mattered was that one's own name and that of one's friend were crossed off the list of victims, though everyone knew that for each man saved another victim had to be found. A definite number of prisoners had to go with each transport. It did not really matter which, since each of them was nothing but a number.


■ドイツ語原文 The original text in German

Nehmen wir etwa an, es steht ein Transport bevor, der eine bestimmte Zahl von Lagerinsassen in ein anderes Lager bringen soll – angeblich; denn man vermutet, und nicht mit Unrecht, daß »es in Gas geht«, daß der betreffende Transport, sagen wir: von kranken oder schwachen Leuten, eine sogenannte Selektion vorstellt, d.h. daß eine Auswahl von arbeitsunfähigen Häftlingen getroffen wird, die zur Vernichtung in einem mit Gaskammern und Krematorium ausgestatteten, großen, zentralen Lager bestimmt sind. In diesem Augenblick entbrennt nun der Kampf aller gegen alle, bzw. gewisser Gruppen oder Cliquen untereinander. Jeder sucht sich oder die ihm irgendwie Nahestehenden zu schützen, vor dem Transport zu sichern, bzw. aus der Transportliste im letzten Augenblick noch »herauszureklamieren«. Daß für jeden einzelnen, der hierbei davor gerettet wird, vertilg zu werden, ein anderer einspringen muß, ist allen klar. Geht es doch im allgemeinen um eine Zahl, um die Zahl von Häftlingen, die den Transport ausfüllen müssen. Jeder stellt dann buchstäblich nur eine Nummer dar;


■NHK Eテレ(教育) 100分 de 名著 名著14 フランクル『夜と霧』
100_de
Image source: NHKオンライン


■翻訳家:池田香代子インタビュー

池田氏による改訳のきっかけ、旧版の訳者・霜山氏が改訳の動きにたいして示された態度、霜山氏の旧訳と池田氏の新訳とのちがい、原著の1947年初版と1977年改訂版とのちがい、原著初版刊行後のイスラエル、パレスチナ情勢との関連など、盛り沢山で、しかもたいへん感動的な内容が語られています。興味があるかたは、下のリンク先のブログ記事をぜひお読みください。

  • 2002年10月17日、インタビュー・構成=藤井正史
    ブログ 「Cafe Pacis」 2004-11-27

■書誌 Bibliography

A list of books by Viktor E. Frankl, including all translations, can be viewed at the following page on the website of the Viktor Frankl Institute (Vienna):


■更新履歴 Change log

  • 2015/10/22 スペイン語版オーディオブックの YouTube 画面を追加しました。
  • 2015/10/19 目次を新設しました。また、簡体字中国語訳、ポルトガル語訳、スペイン語訳、およびフランス語訳を追加しました。
  • 2013/03/28 Viktor Frankl - Biografía と英訳版オーディオブックの2本の YouTube 画面を追加しました。また、韓国語版、アラビア語版、ヘブライ語版、ギリシャ語版、フィンランド語版、イタリア語版、ポルトガル語版、カタルーニャ語版、およびチェコ語版の表紙画像も追加しました。
  • 2010/09/17 Auschwitz: The Nazis and the 'Final Solution' の YouTube 動画を追加しました。また、ドイツ語原文のテキストを挿入しました。
  • 2007/06/08 霜山徳爾=訳の書誌情報を修正して、初版以来、3つの異なる版が出ていることを示しました。また、「翻訳家:池田香代子インタビュー」の項を新設しました。さらに、みすず書房によるこの本の詳しい紹介のページへリンクを張りました。

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■洋書 Books in non-Japanese languages


■和書 Books in Japanese

■中国語(簡体字) Simplified Chinese
追寻生命的意义 作者:(奥)弗兰克尔 著,何忠强,杨凤池 译 新华出版社 2003

■DVD

アラン・レネ監督によるドキュメンタリー映画『夜と霧』(1955) は、フランクルの著書とおなじく、強制収容所とホロコーストをモティーフにしたものです。邦題はフランス語の原題 "Nuit et brouillard" の直訳。しかし、映画と本とのあいだに——本が映画の原作であるといったような——直接の関係はありません。

  

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Tuesday, 05 June 2007

La Disparition d'Honoré Subrac by Guillaume Apollinaire (2) アポリネール「オノレ・シュブラックの失踪」(2)

« 1 La Disparition d'Honoré Subrac »
« 1 オノレ・シュブラックの失踪 »

 Video 
アポリネールの動画(フィルム映像) Apollinaire in film
Apollinaire_en_film
Apollinaire filmed in 1914 with his friend Andre Rouveyre.
頭のうえには、包帯ではなく帽子が載っています。
Image source:
* Guillaume Apollinaire site officiel
* linkillo.blogspot.com


■邦題の異同 Variations of the title in Japanese

  「オノルシュブラックの失踪」  菅野 1961
  「オノレ・シュブラックの失踪」 己戸 2008
                  高橋 1979, 1996, 2003
                  山田 1991 飯島 1979
                  鈴木 1974 窪田 1971, 1975, 1987
                  滝田 1966 菅野 1990
                  渡辺 1956
                  川口 1953, 1964, 1988
  「オノレ・シュブラックの消失」 稲田 1978 竹内 1975
  「オノレ・シュブラックの消滅」 青柳 1969, 2006 赤木 1969
                  川口 1955
  「オノレ・シュブラック滅形」  堀口 1925, 1929, 1989
  「オノレ・シユブラツクの喪失」 川口 1934
  「消えたオノレ・シュブラック」 高野 1989


■ハンガリー語訳 Translation into Hungarian

[Omission] Egyik éjszaka éppen a szeretőmnél voltam. Férje állítólag napokra elutazott. Isteni meztelenségben heverésztünk tehát, mikor hirtelen felpattant az ajtó, és megjelent a férj, revolverrel a kezében. Leírhatatlan rémület kerített hatalmába, s amilyen gyáva alak voltam, s az vagyok még ma is, egyetlen vágyam maradt abban a pillanatban: szerettem volna eltűnni. A falhoz tapadtam, és azt kívántam, bárcsak beleolvadhatnék. És ez a váratlan tünemény be is következett. Testem felöltötte a tapéta színét, tagjaim pedig akaratomnak engedelmeskedve, érthetetlen módon ellapultak, s úgy éreztem, beleolvadok a falba, és senki sem vehet észre többé. Ami igaz is volt. A férj halálra keresett. [Omission]

   Honoré Subrac eltűnése by Guillaume Apollinaire
   Translated by Lackfi János
   E-text at iNaplo.hu


■オランダ語訳 Translation into Dutch

Zekeren nacht verkoelde ik bij mijn maîtresse. Haar echtgenoot was zogenaamd op reis voor verschillende dagen. Wij waren naakt als goden, toen plotseling de deur openging en de echtgenoot verscheen, 'n revolver in de hand. Mijn schrik was niet te beschrijven, en laf als ik was en nog ben, had. ik slechts één verlangen: nl. te verdwijnen. Leunend tegen den muur, hoopte ik er in op te lossen. En het niet te voorziene gebeuren werd dra verwezenlijkt. Ik nam de kleur van het behangsel aan, en terwijl mijn ledematen, op onbegrijpelijke wijze uitgerekt door mijn wil, hoe langer hoe platter werden, leek het mij toe. dat ik één geheel vormde met den muur en dat niemand mij voortaan zou zien.
  't Was waar. De echtgenoot zocht me om me te dooden.

   De verdwijning van Honore Subrac by Guillaume Apollinaire
   Scanned image of the text at Het Vaderland [PDF]


■英訳 Translation into English

[Omission] One night I was at my mistress's. Her husband — so he had told her — had left for a few days.
  "It was a lie. We were in bed together, naked as a pair of gods, when suddenly the door burst open and the husband appeared in the doorway. In his hand he held a revolver. My terror was extreme. Coward that I was...that I still am...I had only one wish at that moment: to disappear. My back was literally against the wall, and I prayed to blend into it. To my great astonishment, you can be sure — this anguished prayer was immediately and unexpectedly answered. I swear this is true. I became the color of the wallpaper; my limbs seemed to flatten themselves out with a voluntary and fantastic elasticity. My body had become one with the wall! I was invisible!
  "The husband looked everywhere for me, intent on killing me.. [Omission]

   The Disappearance of Honoré Subrac by Guillaume Apollinaire
   Translated by Robert Champ
   E-text at Gaslight


■スペイン語訳 Translation into Spanish

[Omission] Una noche, estaba en casa de mi amante. Se suponía que su marido había salido por varios días. Estábamos desnudos como divinidades, cuando la puerta se abrió de repente y el esposo apareció con un revólver en la mano. Mi terror fue inefable, y no tuve más que un deseo, cobarde como era y como soy aún: desaparecer. Pegándome a la pared, deseé confundirme con ella. Y el acontecimiento imprevisto se realizó enseguida. Me volví del color del papel tapiz, aplastándose mis miembros en un estiramiento voluntario e inconcebible, me pareció que me hacía uno con la pared y que a partir de ese momento nadie me veía. Y era cierto. El marido me buscaba para darme muerte. [Omission]

   La desaparición de Honoré Subrac by Guillaume Apollinaire
   Translated by Mariana Hernández Cruz
   E-text at Punto en Línea


 Audio 
フランス語原文のオーディオブック Audiobook in French

下の引用箇所の朗読は 5:23 から始まります。 Uploaded to YouTube by Poesis fr on 18 Dec 2014. Reading of the excerpt below starts at 5:23.


■フランス語原文 The original text in French

[Omission] Une nuit, j'étais chez ma maîtresse. Son mari, soi-disant, était parti pour plusieurs jours. Nous étions nus comme des divinités, lorsque la porte s'ouvrit soudain, et le mari apparut un revolver à la main. Ma terreur fut indicible, et je n'eus qu'une envie, lâche que j'étais et que je suis encore: celle de disparaître. M'adossant au mur, je souhaitai me confondre avec lui. Et l'événement imprévu se réalisa aussitôt. Je devins de la couleur du papier de tenture, et mes membres s'aplatissant dans un étirement volontaire et inconcevable, il me parut que je faisais corps avec le mur et que personne désormais ne me voyait. C'était vrai. Le mari me cherchait pour me faire mourir. [Omission]

   La Disparition d'Honoré Subrac (1910) by Guillaume Apollinaire
   E-text at:
   * YvesEsse.ifrance.com
   * Gaslight


■更新履歴 Change log

  • 2013/03/16
    1. ハンガリー語訳とオランダ語訳を追加しました。
  • 2012/04/22
    1. 飯島耕一=訳 1979/08/01 を追加しました。
  • 2011/11/09
    1. 己戸春作=訳 2008/02/18、英訳、およびスペイン語訳を追加しました。
    2. 抜けていた一部のアクセント記号(アクサン)を補いました。
  • 2007/06/11
    1. 赤木富美子=訳 1969/01 を追加しました。
  • 2007/06/07
    1. 鈴木豊=訳 1974/09 を追加しました。
  • 2007/06/05
    1. 記事が長くなりすぎて、1つの記事におさまりきらなくなったため、1と2の2つに分けました。そのため、新たな記事として掲載する結果となり、もともと2007/04/27にあった記事が、今日2007/06/05に移動することになりました。
  • 2007/05/09
    1. 竹内廸也=訳 1975/12 を追加しました。
    2. 高橋たか子=訳 1979 の現物にあたって、のちの高橋たか子=訳 1996/11 と照合し、両者が同文であることを確認しました。
    3. 川口篤=訳 1990/09 の現物にあたって、これが、先行する川口篤=訳 1972/09 の新装版であり、旧版をそのまま採録した同文であることを確認しました。
  • 2007/05/06
    1. やはり「失跡」でなく「失踪」
      国立国会図書館のオンライン目録 NDL-OPAC によると、中田耕治=編『恐怖の1ダース』出帆社 1975/09 には、アポリネールの作品が「オノレ・シュブラックの失跡」(「失踪」ではなく「失跡」!)という邦題で収録されているはずでした。ところが、現物を確認したところ、邦題は「オノレ・シュブラックの失跡」ではなく、ほかの多くの訳の題名と同様、「オノレ・シュブラックの失踪」であることがわかりました。つまり、頼りにしていた NDL-OPAC の記載が、まちがっていたわけです。この発見にもとづいて、上に記載されていた書誌情報の一部、および邦題の異同についての記載を訂正しました。
    2. 第一書房版の刊行年
      堀口大學=譯『詩人のナプキン』第一書房の刊行年の年号を「昭和9」と記載しておりましたが、正しくは「昭和4」なので、訂正しました。
    3. その他の堀口訳
      上の第一書房版以外の堀口大學訳について、その書誌情報の一部を修正しました。

 

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« 1 オノレ・シュブラックの失踪 »

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La Disparition d'Honoré Subrac by Guillaume Apollinaire (1) アポリネール「オノレ・シュブラックの失踪」(1)

« La Disparition d'Honoré Subrac 2 »
« オノレ・シュブラックの失踪 2 »

This article was originally published on 27 April 2007 but moved here for technical reasons.
この記事は、もともと 2007年4月27日に掲載 されていましたが、技術的な理由によりここに移動しました。


■ピカソによる絵、カリグラム、肖像写真
 A drawing by Picasso, a calligramme, and a portrait

a. Apollinaire_bank_clerk b. Appo c. Apollinairebandage
↑ Click to enlarge ↑

a. Guillaume Apollinaire, a bank clerk, by Pablo Picasso (1905).   Image source: artscape.fr At the age of 20 Apollinaire settled in Paris, where he worked for a time for a bank. 二十歳でパリに居を定めたアポリネールは、いちじ銀行づとめをしていました。

b. Calligramme de Guillaume Apollinaire (1915). Image source: Peinture FLE アポリネールによるカリグラム(「カリグラム」とは彼の造語で、上にご覧のような図形詩のこと)。

c. Guillaume Apollinaire (1880-1918). He fought in World War I and, in 1916, received a serious shrapnel wound to the temple. 第一次大戦に出征した彼は1916年、砲弾の破片で頭に重傷を負いました。


■アポリネール=作「オノレ・シュブラックの失踪」邦訳一覧
 A list of Japanese translations of "La Disparition d'Honoré Subrac"

 ●は下に抜粋を引用したもの。×は未見のもの。
 たぶんほかにも、たくさんの邦訳が出ているだろうと思います。
 お気づきの点があれば、ご指摘ください。

●  1. 己戸春作=訳 破滅派|無料オンライン文芸誌010号 2008
●  2. 山田 稔=訳 フランス短篇傑作選 岩波文庫 1991
●  3. 菅野昭正=訳 集英社ギャラリー[世界の文学]8 1990
●  4. 高野 優=訳 なぞめいた不思議な話 幻想文学館2 くもん出版 1989
●  5. 長島良三=訳 フランス怪奇小説集 偕成社文庫 1988
●  6a. 高橋たか子=訳 澁澤龍彦=編 世界幻想名作集 河出文庫 1996
●  6b. 高橋たか子=訳 澁澤龍彦=編 世界幻想名作集 世界文化社 1979
●  7. 飯島耕一=訳 世界中短編名作集 世界文学全集46 学習研究社 1979
●  8. 稲田三吉=訳 世界短編名作選 フランス編2 新日本出版社 1978
●  9. 竹内廸也=訳 世界文学全集78 講談社 1975
●10.   鈴木 豊=訳 異端教祖株式会社 講談社文庫 1974
×11a.  窪田般彌=訳 異端教祖株式会社 白水Uブックス 1989
●11b.  窪田般彌=訳 アポリネール傑作短篇集 窪田般彌 福武文庫 1987
×11c.  窪田般彌=訳 レイモンド・チャンドラー[他] 恐怖の1ダース 講談社 1980
●11d. 窪田般彌=訳 レイモンド・チャンドラー[他] 恐怖の1ダース 出帆社 1975
×11e. 窪田般彌=訳 異端教祖株式会社    晶文社 1972
●11f. 窪田般彌=訳 世界SF全集31 早川書房 1971
●12. 青柳瑞穂=訳 怪奇小説傑作集4 フランス編 1969, 2006 創元推理文庫
●13. 赤木富美子=訳 アポリネール短篇傑作集 大学書林語学文庫 1969
●14. 滝田文彦=訳 世界の文学52 フランス名作集 中央公論社 1966
●15. 菅野昭正=訳 フランス短篇名作集 小林正 学生社 1961
●16. 渡辺一民=訳 世界風流文学全集6 河出書房 1956
×17a. 川口 篤=訳 澁澤龍彦=編 変身のロマン 学研M文庫 2003
●17b. 川口 篤=訳 澁澤龍彦=編 変身のロマン 新装版 立風書房 1990
●17c. 川口 篤=訳 安野光雅=編 ちくま文学の森4 筑摩書房 1988
●17d. 川口 篤=訳 澁澤龍彦=編 変身のロマン 立風書房 1972
●17e. 川口 篤=訳 アポリネール全集 普及版 紀伊國屋書店 1964
●17f. 川口 篤=訳 世界文学大系97 近代小説集2 筑摩書房 1964
●17g. 川口 篤=訳 世界文学大系92 近代小説集2 筑摩書房 1964
×17h. 川口 篤=訳 フランス短篇集 現代篇 鈴木信太郎編 河出文庫 1955
×17i. 川口 篤=訳 フランス短篇集 現代篇 鈴木信太郎編 河出市民文庫 1953
●18. 川口 篤=訳 オノレ・シユブラツクの喪失[他] 白水社 1934(昭和9)
×19a. 堀口大學=訳 アムステルダムの水夫 書肆山田 1989
●19b. 堀口大學=訳 世界文學全集36 近代短編小説集 新潮社 1929(昭和4)
×20a. 堀口大學=訳 堀口大學全集 補巻2 日本図書センター 2001
●20b. 堀口大學=訳 堀口大學全集 補巻2 小沢書店 1984
×20c. 堀口大學=訳 詩人のナプキン ちくま文庫 1992
●20d. 堀口大學=訳 詩人のナプキン 第一書房 1929
●20e. 堀口大學=訳 聖母の曲藝師 至上社 1925(大正14)


■日本語訳 Translations into Japanese

(1) 己戸 2008
……ある夜、僕は彼女の家にいた。夫は何日か留守にしているということだった。僕らが神々のように一糸まとわぬ姿でいると、ドアが突然開いて、夫がピストルを手に現われた。その恐怖といったら言葉にできないね。僕は昔からずっと卑怯な人間なので、ただ逃げたいという思いしかなかった。壁に張り付き、壁の中に紛れ込めたらいいと思った。すると思いがけないことが起きた。僕は壁紙の色になり、手足は思い通りに信じられないほど平らに伸びていき、壁と同化して誰も僕のことが見えなくなったみたいだった。実際、見えなくなっていた。本当なんだ。夫は僕を殺そうと探し回っていた。(……)

   ギヨーム・アポリネール=著 己戸春作=訳
   「オノレ・シュブラックの失踪」
   破滅派編集部=編 破滅派|無料オンライン文芸誌 010号 2008/02/18


(2) 山田 1991
……ある晩おそくぼくはその女の部屋にいた。亭主は数日留守をしているということだった。ぼくたちは神々のようにすっ裸。と、そのとき、突然ドアが開き、亭主がピストルを手に現われたのだ。そのときの恐怖といったらとても言葉では言い表わせない。ぼくは臆病だったから(いまもそうだけど)、願いはただひとつ、消えてしまうことだ。壁を背にしながら、ぼくはそこに溶けこめたらいいのにと思った。すると意外や意外、たちまちその願いが実現したのだ。ぼくは壁紙の色になり、手足が思いのままにふしぎなくらい伸びて平たくなった。壁とひとつになってしまい、もう誰の眼にも見えないような気がした。本当なんだ。亭主はぼくを殺そうと探しまわっている。(……)

   ギヨーム・アポリネール=著 山田稔=訳
   「オノレ・シュブラックの失踪」
   山田稔=編訳『フランス短篇傑作選』岩波文庫 1991/01 所収


(3) 菅野 1990
(……)ある夜、ぼくは愛人のところにおりました。彼女の夫は、数日間留守にするとか称して出かけていました。ぼくたちが異教の神々のように裸でいると、するとだしぬけにドアが開いて、彼女の夫がピストルを手にして現われたのです。ぼくの恐怖はとても言葉につくせぬほどでしたし、ぼくの欲望はただひとつだけでした、なにしろぼくは臆病でしたし、いまでもやはりそうですからね。とにかく姿を隠したいという欲望だけ。壁にもたれかかりながら、壁に溶けこめればと願いました。すると、ただちに、予想もしなかったことが実現したのです。ぼくの身体(からだ)は壁紙の色になり、そしてぼくの手足は、思い通りに途方もなく伸びたまま平べったくなってしまったので、ぼくは壁と一体になり、もう誰の眼にもぼくの姿は見えないのだという気がしました。じじつその通りでした。夫はぼくを殺そうとして探しまわりました。(……)

   アポリネール=著 菅野昭正(かんの・あきまさ)=訳
   「オノレ・シュブラックの失踪」
   『集英社ギャラリー[世界の文学]8 フランス3
   集英社 1990/12 所収


(4) 高野 1989
 ある夜、ぼくはその女の家にいた。夫は二、三日家をあけて、帰ってこないということだった。ぼくたちは安心して、ふたりともギリシャの神がみのように裸になっていたのだが、そこへいきなり夫が帰ってきたんだ。手にはピストルをもっている。
 いや、その恐ろしさといったらなかったね。ぼくはそのころからおくびょうだったから、頭のなかでは、ここから消えてしまいたいと、そのことしか考えていなかった。壁にぴったりとはりついて、このまま壁になりたいと、ぼくはひたすらねがった。
 するとどうだろう、信じられないようなことがおこったんだ。肌が壁紙と同じ色になり、手や足がひらたくなる。体が自分でもびっくりするくらい、思いのままになるんだ。
 そのうちにぼくは自分がとうとう壁になったらしいことがわかった。まわりからもぼくのすがたが見えないらしい。ほんとうだよ。ぼくを殺そうとしていた夫は、必死にぼくのすがたをさがしている。(……)
[原文にあるルビは省略しました - tomoki y.]

   アポリネール=著 高野優(たかの・ゆう)=訳
   「消えたオノレ・シュブラック」
   江河徹=編『なぞめいた不思議な話』幻想文学館2
   くもん出版 1989/08 所収


(5) 長島 1988
(……)ある夜、おれはこの愛人の家にいた。彼女の夫は、数日間旅に出たとのことだった。おれたちはふたりとも一糸もまとわずベッドにいた。するといきなり、寝室のドアがあいて、ピストルを手にした亭主があらわれたのだ。おれは恐怖でふるえおののいたね。臆病なおれは、もっともいまだってそうだが、ただただ、消えうせたいと念ずるばかりだった。壁を背にして、おれはこの壁のなかにとけこんでしまいたいとねがった。そのとたん、意外なことがおこったのだよ。おれは壁紙と同じ色になり、おれの手足は不可解にもかってにのびていって平べったくなった。おれは壁と一体となり、もうだれの目にも見えなくなってしまったらしいのだ。そうさ、だれの目にも見えなくなっちまったのさ。その証拠に、亭主はおれを殺すつもりで、血眼になっておれをさがしているじゃないか。(……)
[原文にあるルビは省略しました - tomoki y.]

   アポリネール=作 長島良三=訳       
   長島良三=編『フランス怪奇小説集』偕成社文庫 1988/08 所収


(6) 高橋 1979, 1996
……ある夜、ぼくはその女のところにいた。彼女の夫は、自分で言うところによれば、五、六日どこかへ行っていた。ぼくと女が神々のように裸でいたとき、ふいにドアがあいて、ピストルを手にした夫があらわれた。ぼくの恐怖は言語に絶するものだった。いまでもそうだが臆病だったぼくが願ったことはといえば、消えてなくなりたいということだけだった。壁に背中をつけて、壁と同化することを望んだ。と、たちまち、思いがけないことが起った。ぼくの体は壁紙と同じ色になった。手足が思うままに驚くほどのびて、ひらたくなったので、ぼくが壁と一体になり、もうだれにもぼくが見えないのだという気がした。実際そうなのだった。彼女の夫はぼくを殺そうとしてさがしていた。(……)

   ギョーム・アポリネール=著 高橋たか子=訳
   「オノレ・シュブラックの失踪」
   6a. 澁澤龍彦=編『世界幻想名作集』河出文庫 1996/11 所収
   6b. 澁澤龍彦=編『世界幻想名作集』グラフィック版 世界の文学 別巻1
     世界文化社 1979 所収


(7) 飯島 1979
……ある晩、おれは女の家へ行っていた。女の夫なる男は、数日間出掛けて、不在だとのことだった。二人は神々のように素裸だった。そのとき、とつぜんドアが開いて、ピストルを手にした夫が現れた。おれの恐怖は言語に絶するものだった。おれはただただ、いまも昔も卑怯だったんだが、消えてしまいたい思いでいっぱいだった。壁に背を倚(よ)せて、壁と一体になることを願った。と、たちまち、思いもよらないことが生じた。おれは壁紙の色になり、手足は自分の意志でとんでもなく扁平になり、壁と一つになって誰にも見えなくなったような気がした。それは事実だった。夫はおれを殺そうとして探しまわった。(……)

   アポリネール=著 飯島耕一(いいじま・こういち)=訳
   「オノレ・シュブラックの失踪」
   『世界中短編名作集』 世界文学全集46(全50巻)
   学習研究社(学研) 1979/08/01 所収


(8) 稲田 1978
(……)或る晩、ぼくはこの恋人の家にいました。彼女の夫は、数日間の予定で出かけているとのことでした。ぼくたちは古代の神々のように素裸になっていました。するとその時、とつぜんドアがひらいて、夫がピストルを手にしてあらわれたんです。ぼくの恐怖は、もう言葉では言いあらわせないほどでした。臆病者だったぼくは、今でもそうですけれど、ただもう姿を消したいという願いだけしかありませんでした。壁を背にしていたぼくは、なんとかしてその壁のなかに溶けこんでしまいたいと熱望しました。と突然、予期していなかった出来事がおこったのです。ぼくは壁紙と同じ色になり、手足は自然に、想像もつかないほど薄っぺらくなり、ぼく自身が壁と一体になり、もう誰もぼくの姿が目にはいらないようになったらしいのです。それは本当でした。彼女の夫はぼくを殺そうとして、あちこち探しまわりました。(……)

   アポリネール=著 稲田三吉(いなだ・さんきち)=訳
   「オノレ・シュブラックの消失」
   稲田三吉〔ほか〕=編『世界短編名作選 フランス編2
   新日本出版社 1978/03 所収


(9) 竹内 1975
(……)ある夜、ぼくはその女の家にいた。彼女の夫が、数日間、出かけているので、留守になるという話だった。ぼくと彼女は、古代の神々みたいに何も着ないでいた。そのとき、突然、ドアが開いて、彼女の夫が入って来た。手にはピストルを握っているんだ。そのときの怖(おそ)ろしさは、とても口で言えるようなものじゃなかった。そして、ぼくは、ただひたすらひとつのことだけを心から願った。あのとき、ぼくは卑怯だった。今でもそうなんだ。ぼくは消えて失くなってしまいたい、とそれだけを願った。壁に背中をおしつけて、壁に溶けこんでしまいたいと祈った。すると、たちまち、思いもよらぬことが起こった。ぼくの体は壁紙の色になり、ぼくの手足は、望み通りに、考えられぬほど伸び拡がって、平たくなり、体が壁と一体になって、もう誰にも見わけがつかなくなってしまったようだった。ほんとうにそうなったのだった。女の夫は、ぼくを殺そうと思って探した。(……)

   アポリネール=作 竹内廸也(たけうち・みちや)=訳
   「オノレ・シュブラックの消失」
   『世界文学全集78』アポリネール 短編
   アポリネール/ツァラ/ブルトン/アラゴン/エリュアール
   講談社 1975/12 所収


(10) 鈴木 1974
……ある晩、ぼくは恋人のところにしけ込んでいたんだ。向うさまの言うことには、亭主は数日の予定で出かけているってわけさ。ぼくらは神々の像さながらのすっ裸でいたんだ、そのときだしぬけにドアが開いて、ピストルを手にした亭主が現われたんだよ。そのときのぼくの恐ろしさと言ったらもう、口でも言えず、筆でも書けずというところだ。当時はぼくも卑怯だったな、いや今でもまだそうだが、とにかくぼくの望みといえばただひとつ、もう消えてなくなりたい、という一心だったよ。壁に寄りかかったまま、壁に融け込んでしまいたい、と願ったものさ。するとすぐに、思いもかけないことが現実に起ったんだな。ぼくはね、壁紙と同じ色になり、ぼくの手足はこちらの意のまま考えられないほど伸びて平べったくなってね、自分の体が壁と一心同体になり、その後はもうだれも自分の姿が見えなくなったような気がしたんだ。これはほんとうだったんだよ。亭主はぼくを殺そうとして探し回った。(……)

   アポリネール=作 鈴木豊(すずき・ゆたか)=訳
   「オノレ・シュブラックの失踪」
   『異端教祖株式会社』講談社文庫 1974/09 所収


(11) 窪田 1971, 1975, etc.
……ある晩、ぼくはこの恋人のところにいた。かれの自称亭主はもう数日も家をあけていた。ぼくたちは神々のように裸だった。そのときだ。ドアが突然開いて、亭主がピストルを手にもって、現われたのさ。その恐怖といったら説明できるもんじゃない。ぼくは昔もそうだったが今も臆病だから、ただただ、姿を消してしまいたいというたった一つの願いしかなかったわけだ。壁に背をもたせかけると、壁に溶けこんでしまいたいと願った。するとどうだろう、たちまち思いもよらぬことが実現したのさ。ぼくは壁紙の色になり、手足が思いどおりに驚くほど延びひろがって、ぺちゃんこになったんだ。ぼくは壁と合体し、もう誰もぼくをみることができないような気がした。そいつは本当だった。亭主はぼくを殺してやろうと探しまわっていたんだから。(……)

   ギョーム・アポリネール=著 窪田般彌(くぼた・はんや)=訳
   「オノレ・シュブラックの失踪」
  ×11a.異端教祖株式会社』小説のシュルレアリスム
       白水Uブックス 1989/10 所収
  ×11b.アポリネール傑作短篇集』福武文庫 1987/01 所収
  ×11c. レイモンド・チャンドラー〔ほか〕=著 中田耕治=編
      『恐怖の1ダース』講談社 1980/08 所収
   11d. レイモンド・チャンドラー〔ほか〕=著 中田耕治=編
      『恐怖の1ダース』出帆社=発行 路書房=発売 1975/09 所収
  ×11e.異端教祖株式会社』晶文社 1972 所収
   11f. 福島正実+野田昌宏+伊藤典夫=編
      『世界SF全集31 世界のSF(短篇集)古典篇』早川書房 1971/07 所収   

   ・×を付した 11a. 11b. 11c. 11e. は未見。
   ・上の引用は、11d.11f. に拠ります。両者は同文。


(12) 青柳 1969, 2006
……ある晩、おれは女の家にいたのだ。亭主は、二、三日の予定で旅に出たとのことだった。安心して、二人とも神様みたいにすはだかになっていたものさ。すると俄然、室のドアが開いて、亭主がピストルを片手にしてあらわれてきたのだ。じつにおどろいたね、とても言葉なんかではいえないほど恐ろしかった。卑怯なことだったが、もっともいまだってそうなんだが、おれは、そのとき、ただもう消え失せたいと、ただ一心に念ずるばかりだったのだ。壁にからだをすりよせて、おれはこの壁とごっちゃになってしまいたいと、そればかりねがったものだ。すると思いがけないことがおこったのだ。というのは、おれは壁紙と同じ色になり、そしておれの五体は、不思議にも思うままにのびて、平べったくなって行って、どうやら、おれは壁と一体になり、もう、おれの存在は誰の目にも認められなくなってしまったらしいのだ。それにちがいないのだ。亭主はおれを殺すつもりで、一生懸命におれをさがしているじゃないか。(……)

   ギヨーム・アポリネール=著 青柳瑞穂=訳
   「オノレ・シュブラックの消滅」
   G・アポリネール〔ほか〕=著『怪奇小説傑作集4 フランス編』
   創元推理文庫(初版 1969/06|新版 2006/07)所収


(13) 赤木 1969
……ある夜、僕は愛人のところにいた。彼女の夫は、本人のいうところでは何日間かの予定で出かけてしまっていた。僕たちは神話の神神みたいに裸だった。と、突然扉があいてその夫がピストルを手にあらわれたのだ。僕の怖れは筆舌につくし難いものだったよ。僕は臆病だったし、今でもそうだが、ただ一つのねがいしかなかった、消えてしまいたいというねがいしかね。壁に背をつけながら、僕はそれとまじりあってしまうことをひたすらねがった。ところがたちまち、思いがけない出来事が起こったのだ。僕は壁紙の色になってしまい、手足は意志によって、考えられない程ひきのばされて平らになり、僕は壁と一体となって、もう以後誰にも見えないように思われた。事際そうだった。夫は僕を殺そうとして探していた。(……)

   アポリネール=作 赤木富美子(あかぎ・ふみこ)=訳
   「オノレ・シュブラックの消滅」
   『アポリネール短篇傑作集』大学書林語学文庫 1969/01 所収
 
   書名は奥付によるもの。表紙などの書名は, "Choix de Contes
   d'Apollinaire." - tomoki y.


(14) 滝田 1966
……ある晩、僕はその女の家へ行っていた。彼女の夫は、数日間出かけると称していなかった。僕ら二人は、神々のように裸だった。と、そのとき、突然扉があいて、彼女の夫がピストルを片手にはいってきた。そのときの恐怖といったら、とても口では言えないほどだった。僕は、今でもそうなように臆病者だったから、願ったことはただ一つ、消えてなくなることだった。壁に背中を押しつけて、溶けてはいれないものかと願った。と、たちまち、思いもかけないことが実際になって起こった。僕は体が壁紙の色に変わり、手足が思うままに驚くほど伸びて平たくなり、自分が壁と一体になってしまい、もうだれにも見つからないような気がした。事実そうだった。彼女の夫は、殺そうとして僕をさがしていた。(……)

   アポリネール=著 滝田文彦(たきた・ふみひこ)=訳
   「オノレ・シュブラックの失踪」
   『世界の文学52 フランス名作集』中央公論社 1966/08 所収


(15) 菅野 1961
(……)ある夜、ぼくは愛人のところにおりました。彼女の夫は、数日間留守にするといって出かけていました。ぼくたちは、異教の神々のように裸でした。と、そのときだしぬけにドアが開いて、彼女の夫がピストルを手にして現われたのです。ぼくの恐怖はとても言葉につくせぬほどでした。ぼくの欲望はただひとつ、なにしろぼくは臆病でしたし、いまでもやはりそうですが、とにかくもう姿を隠したいということだけでした。壁にもたれかかりながら、壁に溶けこめればいいのだが、と思いました。すると、ただちに、予想もしなかったことが実現しました。ぼくの身体は壁紙の色になったのです、そしてぼくの手足は、思い通りに途方もなく伸びたままひらべったくなってしまったので、ぼくは壁と一体になり、もう誰の眼にもぼくの姿は見えないのだという気がしました。じじつその通りでした。夫はぼくを殺そうとして探しまわりました。(……)

   アポリネール=著 菅野昭正=訳「オノルシュブラックの失踪」
   小林正=編『フランス短篇名作集』學生社 1961/05 所収


(16) 渡辺 1956
(……)ある夜、ぼくは女の家にいた。亭主はしばらく留守をするということだった。ぼくらは神々のように裸だった。と、不意に扉が開いて拳銃を手に亭主が現われた。ぼくのそのときの怖しさときたら、何とも言いようのないものだった。ぼくはいまでもそうだけど本当に臆病なのだね。ただもう、その場から消えてなくなりたいという、切羽つまった思いがすべてだった。壁に身を凭れさせたまま、どんなにそこに溶けこみたいと願ったことだろう。ところがどうだ、不意に、全く予期しないことが起った。ぼくの体が壁紙の色に染ってしまったではないか。そればかりではない、考えもつかぬことだったが、手足が望みどおりに伸びきると、平べったくなってしまったのだ。壁の一部分になったようだった。もう誰もぼくには気附かないという気がした。まさにそのとおりだった。亭主はぼくを殺そうと探しまわっている。(……)

   アポリネール=著 渡辺一民(わたなべ・かずたみ)=訳
   「オノレ・シュブラックの失踪」アポリネール短篇集
   『世界風流文学全集6 フランス篇4』河出書房 1956/09 所収


(17) 川口 1964, 1972, etc.
(……)或る晩、僕は女のところへ行っていた。女の亭主は、数日留守とのことだった。僕たちは、ギリシアの神々のように裸だった。その時、急にドアが開いて、女の亭主が、ピストルを手にして現われたのだ。怖(こわ)かったのなんの、とても口では言われはしない。今でもそうだが、僕は卑怯だったんだね。ただもう消えて無くなりたい思いで一ぱいだった。壁に身を寄せて、壁に溶けこめればいいと願った。すると、忽ち、思いもよらぬ事が実現したのだ。僕の体は、壁紙の色になり、僕の手足は思うさまとてつもなく延びて平べったくなり、僕は壁と一つになって、もう誰にも見えなくなったような気がした。まさにそのとおりだった。亭主は、僕を殺そうとして探しまわっていた。(……)

   アポリネール=作 川口篤(かわぐち・あつし)=訳 
   「オノレ・シュブラックの失踪」
  ×17a. 澁澤龍彦=編『変身のロマン』学研M文庫 学習研究社 2003/05 所収
   17b. 澁澤龍彦=編『変身のロマン』(新装版)立風書房 1990/09 所収
   17c. 安野光雅〔ほか〕=編『ちくま文学の森4 変身ものがたり
      筑摩書房 1988/02 所収
   17d. 澁澤龍彦=編『変身のロマン』立風書房 1972/09 所収
   17e. 鈴木信太郎+渡邊一民(わたなべ・かずたみ)=編
      『アポリネール全集』普及版 紀伊國屋書店 1964/11 所収
   17f.世界文学大系92 近代小説集2』(全62巻)筑摩書房 1964/07  所収
   17g. 『世界文学大系97 近代小説集2』(全102巻)
       筑摩書房(初版第1刷 1964/07|初版第7刷 1969/06)所収
  ×17h. 鈴木信太郎+渡邊一民=編『アポリネール全集
       紀伊國屋書店 1959 所収?(未確認)
  ×17i. 鈴木信太郎=編『フランス短篇集 現代篇』河出文庫 1955 所収
  ×17j. 鈴木信太郎=編『フランス短篇集 現代篇』河出市民文庫 1953 所収

   ・上の引用は、17e.『アポリネール全集』紀伊國屋書店に拠ります。
   ・×を付した 17a. 17h. 17i. 17j. は未見。いずれも 17e. と同文か?
    (未確認)
   ・17a.17b. の再刊か?(未確認)
   ・17b. 17d. は、17e. と同文。17b.17d. の再刊。
    ただし、17b. 17d. では、引用部分 17e. の「壁に溶けこめればいい」
    が「壁に溶けこめばいい」となっており「れ」が抜けています。
    意図的な修正か、それとも遺漏かは未確認。
   ・17c. 17f. 17g. は、用字・ルビなど細部を除き、17e. と同文。
   ・17e.17h. と同文か?(未確認)
   ・17f.17g. は、まったく同じ内容なのに、17f. は第92巻、17g.
    第97巻という異なる巻数が振られています。これまでずっと不思議に思って
    いたのですが、最近ある本を読んだら謎が解けました。
   ・すなわち、この「大系」シリーズは、当初全62巻の予定で刊行が始まった
    のですが、のちに増巻して全102冊と変更された結果、巻数が振りなおされ
    たためらしいのです。このことを示唆してくれた、上述の有益な「ある本」
    とは、矢口進也=著『世界文学全集』トパーズプレス 1997/10 です。


(18) 川口 1934
 ある晩僕はその情婦のところへ行つてゐた。彼女の夫は、彼女の話では數日他所(よそ)に行つてゐる筈だつた。我々は神樣のやうに裸體(はだか)になつてゐた。その時、急にドアが開いて、夫が手にピストルを持つて現れたのだ。怖(こわ)かつたの何のつて、とても口では言はれはしない。それで、僕も卑怯だつたんだね、今だつてさうだが、只もう消えて無くなり度いと思つたのだ。僕は壁に倚りかかつて、壁に溶け込めればいいと願つた。すると忽ち、思ひもよらぬ事が實現した。僕は壁紙の色になつたのだよ。そして、僕の手足は思ふ樣とてつもなく延びて平べつたくなり、僕は壁と一つになつて、もう誰に[ママ]見えなくなつたやうな氣がしたのだ。その通りだつた。夫は僕を殺さうとして探してゐた。(……)

   アポリネール=著 川口篤=譯註「オノレ・シユブラツクの喪失」
   『オノレ・シユブラツクの喪失・アムステルダムの水兵
   佛蘭西語入門叢書 第3篇
   白水社 1934/01(昭和9)定價金一圓 所収

   書名は奥付によるもの。表紙などの書名は, "Contes de G. Apollinaire."
    - tomoki y.


(19) 堀口 1929
……或る晩のこと、おれは女の家へ行つてゐたものだ。何でも女の夫は二三日旅行して留守だといふことだつた。後になつて考へて見ると、それはてつきり、彼の計略だつたんだが。その時は、そんな事とは思ひもよらなかつた事とて、女とおれとは、二人とも、まるで神樣たちのやうに素裸體(すつぱだか)になつてゐたものさ。すると忽ち、室の扉(ドア)が開いて、そこから女の夫が、短銃(ピストル)を片手にして現はれ出たものだ。その時のおれの恐怖と言つたら、それは實に名状すべからざるものだつた。卑怯(ひけふ)な話だが、おれはその時、たゞもう消え失(う)せてしまひ度いと希ふことばかりに專一だつた。それで、壁に身體(からだ)をすりよせて、おれは一心に、この壁と同じ色になつて、消えてしまはうと計り努(つと)めたものだ。すると、計らずも、思ひがけなかつたことが起きたのであつた。と言ふのは、おれの身體(からだ)は、壁紙と同じ色になり、そしておれの五體は、思ふまゝに平べつたく伸びひろがつて、見る/\うちに、おれは壁と一體になつてしまつたものだ。氣が付くと、その時はもう、おれの存在は、誰の目にも認められなくなつてしまつてゐた。女の夫は、おれを殺すつもりで、一所懸命におれを探してゐた。(……)

   ギイヨオム・アポリネエル=作 堀口大學=譯
   「オノレ・シュブラック滅形」
   『世界文學全集36 近代短篇小説集』佛蘭西篇
   新潮社 1929/07(昭和4)非賣品 所収
   この本の収録作品一覧:野村宏平=編 Index to Anthologies


(20) 堀口 1925, 1929
……或る晩のこと、おれは女の所へ行つてゐた。何でも女の亭主は數日の間留守だと云ふのでね。後になつて考へて見るとそれが彼の計略だつたのさ。僕等はうまうまとのせられたのだ。その時は、そんな事とはつゆ知らぬので、女も僕も二人乍ら、神樣たちのやうに素裸になつて喜戯してゐたものさ。するとその時忽に室の戸が開いて、そこから女の亭主が短銃を手にして立ち現はれたものだ。その時の僕の恐怖は、實に名状す可からざるものだつた、卑怯な話だが僕は只もう身も魂も消え失せてしまへばよいと希ふばつかりだつた。ぴつたりと壁にこの身をすり倚せて僕は一心に壁と同色になつて消えてしまはうと許りつとめたものだ。その時はからずも思ひがけない奇蹟があらはれたのだ。見る見る僕の身體は壁紙と同じ色になり、同時にまた僕の手足は思ふままに平べつたく伸びひろがつて、僕の身體は壁の中へ溶けこんでしまつて、氣がつくともう誰の目にも僕の存在は見當たらぬのだ。亭主はと見ると、僕を打ち殺すつもりで、一生懸命に僕を探してゐた。(……)

   ギイヨオム・アポリネエル=作 堀口大學=譯
   「オノレ・シュブラック滅形」
   20a.堀口大學全集 補巻2(飜訳作品2)』復刻版
      日本図書センター 2001/12
  ×20b. 堀口大學=訳『詩人のナプキン』ちくま文庫 1992/06
  ×20c. ギョーム・アポリネール=著 堀口大學=訳
      「オノレ・シュブラック滅形」 
      『アムステルダムの水夫 堀口大学訳短篇物語2
      書肆山田 1989/03 所収
   20d. 安藤元雄〔ほか〕=編『堀口大学全集 補巻2』小沢書店 1984/06
  ×20e. 『オノレ・シュブラック滅形』草原社 1979/10 限定150部刊行
   20f. 詩人のナプキン
      第一書房 1929/09(昭和4)定價一圓八十錢 初版1500部刊行
   20g.聖母の曲藝師』現代佛蘭西短篇集
      至上社 1925/08(大正14)定價貳圓 所収
  ×20h. 「オノレ・シュブラックの失踪」1921/05(大正10)
      「三田文學」第12卷第5號 所収

   ・上の引用は 20f. 第一書房版に拠ります。
   ・20a. 20b. 20d. 20g. も、20f. とほぼ同文(字句・用字など
    細部に異同あり)。
   ・×を付した 20b. 20c. 20e. 20h. は未見。
   ・20a.20d. を復刻したもの。
   ・20b.20f. の再刊か?(未確認)
   ・20d. の底本は 20f.
   ・20d. の書名『詩人のナプキン』は奥付の表記によるもの。
     扉には、右から左に横書きで『んきぷなの人詩』とあります。
   ・20a. の「解題」によると、20e. は旧稿を全面改訳し、
     新字新仮名遣いによって刊行されている由。
   ・20a. の「解題」によると、20f. に先立つ雑誌発表形として、
    20h. が確認されている由。


 

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Monday, 04 June 2007

Libra by Don DeLillo ドン・デリーロ 『リブラ』

 Images 
表紙画像と肖像写真 Cover photos and a portrait

Left: Libra, a French translation from Poche (2001)
Centre: Libra, Penguin Modern Classics (2006)
Right: Don DeLillo (1936 - ). Image source: The Age.com.au

↓ Click to enlarge ↓

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■日本語訳 Translation into Japanese

暑気が壁や窓づたいに室内に入ってきたし、タールを塗った屋根からもしみこんだ。男たちは日曜には白い紙箱に入ったパン菓子を持ち歩いた。菓子屋で、あるイタリア人が五発撃たれて殺され、脳味噌が漫画本を並べた棚のそばの壁に飛び散った。その灰色がかった飛沫を見に、そこらじゅうから子どもたちがぞろぞろ店に集まってきた。リーの母親はマンハッタンで靴下を売っていた。

   ドン・デリーロ=著 真野明裕(まの・あきひろ)=訳「ブロンクスで」
   『リブラ 時の秤』より
   J1. ジェローム・チャーリン=編 小林宏明〔ほか〕=訳
    『ニュー・ミステリ—ジャンルを越えた世界の作家42人
    早川書房 1995/10 所収
   J2.リブラ 時の秤(上)』(全2冊)文藝春秋 1991/06

   J1. 所収の上掲作は J2. から転載したもの。J1. の原典は、
   つぎのタイトル。
   The New Mystery: The International Association of Crime Writers'
   Essential Crime Writing of the Late 20th Century
   Edited by Jerome Charyn
   EP Dutton, New York (1993/02)
   You can view the contents here.
 
 
■フランス語訳 Translation into French

Delillo_french

   Dans le Bronx
   from Libra by Don DeLillo
   Translation by Michel Courtois-Fourcy

   * Paperback: collection Babel, Actes Sud (2001/01)
   * An excerpt can be viewed at Actes Sud


■英語原文 The original text in English

Heat entered the flat through the walls and windows, seeped down from the tar roof. Men on Sundays carried pastry in white boxes. An Italian was murdered in a candy store, shot five times, his brains dashing the wall near the comic-book rack. Kids trooped to the store from all around to see the traces of grayish spatter. His mother sold stockings in Manhattan.

   Chapter 1: In the Bronx
   from Libra by Don DeLillo

   Paperback available from:
   * Penguin Modern Classics (2006/03)
   * Penguin USA; Reissue ed. (1991/04)
   * Penguin Books (1989/11)

   Excerpt at:
   * Barnes & Noble
   * Amazon.co.jp


 Video 
Reckoning with Torture: Don Delillo Reads from a CIA Memo

Uploaded by PENamericancenter on 23 Oct 2009


■更新履歴 Change log

2013-03-21 Don Delillo Reads from a CIA Memo の YouTube 動画を追加しました。


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Saturday, 02 June 2007

Sightseeing by Rattawut Lapcharoensap ラッタウット・ラープチャルーンサップ『観光』

■表紙画像と肖像写真 Cover photos and a portrait

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ja Ja_2010_lapcharoensap_sightseeing_h ja Sightseeing ro Ro_tineri_romancieri_americani_gran
sv Se_2006_sightseeing de De_2005_sightseeing nl Nl_2005_sightseeing
ca En_canada_9780670063895 uk En_2006_uk_1843543729 us En_2005_us_pb_sightseeing_grove_pre
uk En_2005_uk_hc_sightseeing us En_2004_us_pb_sightseeing_grove_pre RL Rattawutlapcharoensap


■書誌情報その他 Bibliographic information, etc.

[ja] 日本語
Title: 観光 (ハヤカワepi文庫)
Author: ラッタウット ラープチャルーンサップ(著) 古屋美登里(翻訳)
文庫
Publisher: 早川書房
Year: 2010-08-30
ISBN-10 : 4151200622
ISBN-13 : 9784151200625


[ja] 日本語
Title: 観光 (ハヤカワepiブック・プラネット)
Author: ラッタウット・ラープチャルーンサップ(著) 古屋美登里(翻訳)
単行本
Publisher: 早川書房
Year: 2007-02-21
ISBN-10 : 415208796X
ISBN-13 : 9784152087966


[ro] ルーマニア語
CEI MAI BUNI TINERI ROMANCIERI AMERICANI
de: Antologia Granta
ISBN: 9789731022185
Aparitie: 2009


[sv] スウェーデン語
Title: Sightseeing : noveller (Inbunden)
Author: Rattawut Lapcharoensap  Översättare: Ia Lind
Publisher: Norstedts
Bandtyp: Inbunden
Språk: Svenska
Utgiven: 2006-03


[de] ドイツ語
Title: Sightseeing Erzählungen [Perfect Paperback]
Author: Rattawut Lapcharoensap (Author) Ingo Herzke (Translator)
Perfect Paperback: 232 pages
Publisher: Kiepenheuer und Witsch Verlag, Köln (2006)
Language: German
ISBN-10: 3462036874
ISBN-13: 9783462036879
More info at:
* buecher.de
* bol.com


[nl] オランダ語
Title: Sightseeing
Author: Rattawut Lapcharoensap  Translator: Dennis Keesmaat
Nederlands - Hardcover
Publisher: Vassallucci 2005-05
ISBN-10: 9050005926
ISBN-13: 9789050005920
More info at nnbh.com


[en] Canada
Title: Sightseeing : Stories [Hardcover]
Author: Rattawut Lapcharoensap
Hardcover: 208 pages
Publisher: Penguin Books Canada, Limited
ISBN-10: 0670063894
ISBN-13: 9780670063895
More info at paperbackswap.com


[en] UK paperback 2006
Title: Sightseeing
Author: Rattawut Lapcharoensap
Paperback: 224 pages
Publisher: Atlantic Books; New edition (13 April 2006)
ISBN-10: 1843543729
ISBN-13: 9781843543725


[en] US paperback 2005
Title: Sightseeing
Author: Rattawut Lapcharoensap
Paperback: 272 pages
Publisher: Grove Press (December 12, 2005)
ISBN-10: 0802142346
ISBN-13: 9780802142344


[en] UK hardcover 2005
Title: Sightseeing [Hardcover]
Author: Rattawut Lapcharoensap
Hardcover: 224 pages
Publisher: Atlantic Books; First UK edition (14 April 2005)
ISBN-10: 1843543710
ISBN-13: 9781843543718


[en] US hardcover 2004
Title: Sightseeing
Author: Rattawut Lapcharoensap
Paperback: 250 pages
Publisher: Grove Press; First US edition (November 22, 2004)
ISBN-10: 0802117880
ISBN-13: 9780802117885


RL Rattawut Lapcharoensap (1979 - )
Image source: Hong Kong International Literary Festival 2006


■日本語訳 Translation into Japanese

「セックスと象だよ。あの人たちが求めているのはね」とママは言う。ママは、観光シーズンたけなわの八月、島中を走り回っているガイジンに飽き、モーテルの部屋で使用済みコンドームを目にするのにうんざりし、五つの言語で文句を言う泊まり客にげんなりすると決まってこう言う。そしてぼくを見てこう言うのだ。「おまえがいくらこの国の歴史や寺院や仏塔、伝統舞踏、水上マーケット、絹織物組合、シーフード・カレー、デザートのタピオカを見せたり食べさせたりしてもね、あの人たちが本当にやりたいのは、野蛮人の群れのようにばかでかい灰色の動物に乗ること、女の子の上で喘(あえ)ぐこと、そしてその合間に海辺で死んだように寝そべって皮膚ガンになることなんだよ」

   ラッタウット・ラープチャルーンサップ=著「ガイジン」
   古屋美登里(ふるや・みどり)=訳
   a.観光』 ハヤカワepi文庫 早川書房 2010/08/30 所収
   b.観光』 単行本 早川書房 2007/02 所収
   引用は b. 単行本に拠りました。


■英語原文 The original text in English

May says,"Pussy and elephants. That's all these people want." She always says this in August, at the season's peak, when she's tired of farangs running all over the Island, tired of finding used condoms in the motel's rooms, tired of guests complaining to her in five languages. She turns to me and says, "You give them history, temples, pagodas, traditional dance, floating markets, seafood curry, tapioca desserts, silk-weaving cooperatives, but all they really want is to ride some hulking gray beast like a bunch of wildmen and to pant over girls and to lie there half-dead getting skin cancer on the beach during the time in between."
 
   Farangs
   from Sightseeing by Rattawut Lapcharoensap
   * Paperback: Grove Press (2006)
   * Hardcover: Grove Press (2004)
   * E-text at Granta.com


■「セックスと象」 "Pussy and elephants"

   [ja] 「セックスと象だよ」 日本語
   [sv] "Fitta och elefanter" スウェーデン語
   [de] "Muschis und Elefanten" ドイツ語
   [nl] "Poesjes en olifanten" オランダ語
   [en] "Pussy and elephants" 英語


■著者ラープチャルーンサップ On the author

ラッタウット・ラープチャルーンサップは、シカゴ生まれ、バンコク育ちのタイ系アメリカ人作家。上に引用した「ガイジン Farangs」は彼のデビュー作。初出誌は「グランタ 84号 / Granta 84」。なお、Farang(s) というタイ語の単語の意味については、Wikipedia - Farang の項などをご参照ください。
 
また、ラープチャルーンサップは、先ごろ発売された「Granta」2007年春号で、35歳未満のアメリカ人作家ベスト21のうちの1人に選ばれています。のこり20人の名前もあわせて、ここ Granta 97: Best of Young American Novelists 2 で、その紹介をご覧になれます。


■更新履歴 Change log

2011/01/17 「セックスと象」の項を追加しました。
2010/10/29 表紙画像を追加し、書誌情報を補足しました。
2010/10/07 表紙画像を追加し、日本語訳の書誌情報を補足しました。
2007/06/03 Granta 97: Best of Young American Novelists 2 に関する
         記述を追加しました。


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