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Wednesday, 20 June 2007

La morte amoureuse by Théophile Gautier ゴーチェ / ゴーチエ / ゴーティエ 「死霊の恋」「死女の恋」「クラリモンド」

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■日本語訳 Translations into Japanese

(J1) 千葉 1996
「ロミュアールさま、わたしは、あなたにお目にかかるまえから、あなたを愛していたのです。ですから、わたし、あなたをいっしょうけんめいさがしました。あなたは、わたしの夢だったのです。ようやく見つけたときが、あの運命のときでした。あなたが一生を神にささげる儀式のとき。わたしはあなたを見て、すぐにこの人だ、とわかりました。そこでわたし、いままでもっていたすべての愛と、あなたのためにもつ未来の愛をこめて、あなたを見つめたのです。わたしのその目で見られたら、どんなえらいお坊さんでも、ころりとまいってしまいます。王さまでも高貴な貴族でも、わたしの足もとにひざまづくのです。
 それなのに、あなたはへいきでした。わたしではなく、神さまを選んでしまったのですもの。(……)」
[原文にあるルビは省略しました - tomoki y.]

  • ゴーチェ=作 千葉幹夫=文 「吸血鬼の恋人」 ディケンズ〔ほか〕=作 『魔のトンネル』 青い鳥文庫Kシリーズ 講談社 1996/09

(J2) 小柳 1992, 2004
 「お会いするずっと前から私はあなたを愛していたのよ、いとしいロムアルド。それで、くまなくあなたを探し廻っていたの。あなたは私の夢だった。そしてギリギリのときになって教会であなたを見かけたのよ。私はすぐに《あの人だ!》って言ったわ。私はそれまで抱いてきた、そのときも抱いていた、その後も抱き続けるはずのあなたへの愛を一つに集めたまなざしをジッとあなたに注いだのよ。枢機卿(すうきけい)をも地獄に突き落とし、廷臣全員の前で国王をも私の足下にひざまずかせるほどのまなざしだったわ。なのに、あなたはビクともせずに私より神さまにほうを選んだのよ。(……)」


(J3) 高野 1989
「ねえ、ロミュアール。わたし、あなたに会うずっとまえから、あなたのことを愛していたのよ。あなたはわたしの理想の人だったの。どこかにあなたみたいな人がいるにちがいない、そう思って、わたし、ずいぶんいろいろなところをさがしたわ。そして、とうとうあの教会であなたを見つけたの。
 はじめてあなたを見たとき、わたしは、この人だ、この人こそわたしがさがし求めていた人なんだって思った。だから、ありったけの思いをこめて、あなたを見つめたの。ごぞんじかしら、ほんの少し見つめただけで、わたしは、どんなにりっぱな司教さまでも誘惑(ゆうわく)できるし、どんなにえらい王さまでも足もとにひざまずかせることができるのよ。それなのに、あなたは平気な顔をしていた。そして、わたしより、神さまのほうを選んでしまった……。(……)」

  • ゴーチエ=著 高野優(たかの・ゆう)=訳 「死女の恋」 江河徹(えがわ・とおる)=編 『ファンタスティックな恋の話』 幻想文学館5 くもん出版 1989/08

(J4) 野内 1986
「あたしはあなたにお目にかかるずっと前から、あなたをお慕いしてましたのよ、ロミュアルド。それは方々お捜ししましたわ。あなたはあたしの夢だったのです。そしてあの運命の瞬間に、教会でお姿を目にしたのです。あたし、とっさに『あの方だわ!』と声に出してしまいました。あたしはあなたに視線を投げかけました。今まで抱きつづけ、そして今もこれからも抱きつづける想いのたけを込めて。枢機卿さまだって地獄に突き落し、並居る廷臣の前で王様だってあたしの足もとにひざまずかせる眼差よ。なのに、あなたったら知らんぷり。あたしより神さまをお選びになったのね。(……)」


(J5) 店村+小柳 1977
[訳文は追って挿入するつもりです - tomoki y.]

  • ゴーチェ=著 店村新次(たなむら・しんじ)+小柳保義=訳 「死女の恋」 『ゴーチェ幻想作品集』 ブックスメタモルファス 創土社 1977/03

(J6) 田辺 1951, 1963, etc.
「あたしあなたにお目にかかるずっと前から、あなたをお愛ししていましたのよ、恋しいロミュオーさま。そして、ほうぼうお捜ししていましたの。あなたはあたしの夢だったのです。教会でせっぱつまった瀬戸ぎわにお見かけしたとき、あたし〝あの方だ!〟と、すぐに言いましたの。そして、あなたに対して、それまで持っていたし、今も持っているし、将来も持つにちがいない、すべての愛をこめた眼ざしを送ったのです。僧正さまさえ地獄におとし、王さまでも宮廷にいならぶ人々の前で足もとにひざまずかせる眼ざしでしたわ。それなのに、あなたは知らん顔して、あたしよりも神さまをおえらびになったのね。(……)」


(J7) 青柳 1948, 1959, etc.
「ねえ、ロミュアール、あたし、あなたにお目にかかる前からあなたを愛していましたのよ。だから、あたし、ほうぼう捜しまわりましたわ。あなたはあたしの夢でしたん。そして、とうとう、せっぱつまった瀬戸ぎわに、教会でお目にかかったのよ。あたしすぐ、『これがあのかただ!』っていったの。そこであたし、いままでにもっていた愛、あのときもっていた愛、今後もつであろう愛、それらの愛のことごとくをこめた眼差しで見あげたの。その目で見られれば、どんな大僧正でも誘惑されるし、どんな王様だって、宮臣の眼前でわたしの足下にひざまずいてしまうのよ。それだのに、あなたは平気でいたわね。そして、あたしよりも神様のほうを選んじゃったのね。(……)」

  • ゴーティエ / ゴーチェ=著 青柳瑞穂=訳 「死女の恋」「魔女の恋」
  • 引用は b. 創元推理文庫版に依拠しました。

(J8) 岡本 1929, 1970, etc.
「ロミュオーさま。わたしはあなたをお見かけ申した前から愛していました。そうして、あなたを捜していたのです。あなたは私の夢にえがいていたかたです。教会のなかで、しかもあの運命的な瀬戸ぎわにあなたを初めてお見かけ申したのです。わたしはその時すぐに〈あの方だ〉と自分に言いました。わたしは今までに持っていたすべての愛、あなたのために持つ未来のすべての愛、それは司教の運命も変え、帝王もわたしの足もとにひざまずかせるほどの愛をこめてあなたを見つめたのです。それをあなたは、わたしには来て下さらないで、神様をお選びになったのです……。(……)」


(J9) 佐々木 1926
『私はあなたにお會ひするずつと以前から、あなたをお慕ひ申してゐたのです、私のいとしいロミュアルド樣、そして私は、諸所方々あなたのお姿をさがしてゐたのでございます。あなたは、私の夢でございました。そして私は、あの、もう取りかへしのつかない悲しい時機になつて、あなたを教會の中でお見掛けしたのです。私はすぐに申しました。《あの方だ》と。私は、私が持つてゐただけの……あなたに對して持つてゐた、いや持たねばならなかつただけの、ありつたけの愛をこめたまなざしを、あなたに投げたのでした。それは樞機官をも盲目にし、王者をもその廷臣達の面前で、私の足許へひざまづかせることの出來るまなざしでございます。だのに、あなたは平氣でいらつしやいました。さうして私よりも神樣の方をお選びなさいました。(……)』

  • テオフィル・ゴオチェ=作 佐々木孝丸=譯 「死戀」 『佛蘭西歴代名作集』 世界短篇小説大系9 佛蘭西篇(上) 近代社 非賣品 1926/07(大正15)

(J10) 芥川 1914, 1921, etc.
「貴方に会はないずつと前から私は貴方を愛してゐてよ。可愛いゝロミュアル、さうして方々探してあるいてゐたのだわ。貴方は私の愛だつたのよ。あの時あの教会で始めてお目にかゝつたでせう。私、直に『之があの人だ』つて云つたわ、それから、私の持つてゐた愛、私の今持つてゐる、私の是から先きに持つと思ふ、すべての愛を籠めた眸(め)で見て上げたの——其眼(め)で見ればどんな大僧正でも王様でも家来たちが皆見てゐる前で、私の足下に跪いてしまふのよ。けれど貴方は平気でいらしつたわね、私より神様の方がいゝつて。(……)」

  • ゴーティエ / ゴーチエ=著 芥川龍之介=訳 「クラリモンド」
  • 初出は 1914/10(大正3)の h.。
  • 引用は b. に依拠しました。この b. は、g. を底本とし、h.と照合してあります。
  • g. と h. の訳は、久米正雄名義になっており、目次、中扉、奥付のどこにも、芥川の名前は記載されていません。しかし、これら2つの訳は、じつは「全部芥川氏によつて訳されたものである」と、f. の月報第8号 (1929/02) の「編輯者のノオト」にあります。
  • h. の久米正雄による「序」に、こうあります。「友人、山宮允、柳川隆之介、成瀬正一 三君の大なる助力なくば、今日の小成をすらなす事ができなかつたのだ」。柳川隆之介は芥川の号の1つです。
  • おなじく h. の久米正雄「序」に、こうあります。「原語の読めぬ私はやむなくラフカヂオ・ヘルンの英訳を用ゐた」。つまり、上の芥川訳はすべて、ゴーチェによるフランス語原典からの直訳ではなく、ラフカディオ・ハーン(=小泉八雲)による英訳からの重訳なのです。

(J11) 久米 1914, 1921
「貴方に會はないずつと前から私は貴方を愛してゐてよ。可愛いゝロミュアル、さうして方々探してあるいてゐたのだわ。貴方は私の愛だつたのよ。あの時あの教會で始めてお目にかゝつたでせう。私、直に『之があの人だ』つて云つたわ、それから、私の持つてゐた愛、私の今持つてゐる、私の是から先きに持つと思ふ、すべての愛を籠めた眸(め)で見て上げたの——其眼(め)で見ればどんな大僧正でも王樣でも家來たちが皆見てゐる前で、私の足下に跪いてしまふのよ。けれど貴方は平氣でいらしつたわね、私より神樣の方がいゝつて。(……)」

  • ゴーティエ / ゴーチエ=作 久米正雄=譯 「クラリモンド」
    • 〔ゴーティエ=原著〕 久米正雄=譯 『クレオパトラの一夜』 新潮社 定價金九拾五錢 1921/04(大正10)
    • ゴーチエ=作 久米正雄=譯 『クレオパトラの一夜』 新潮文庫 第1期第10編 定價貮拾五錢 1914/10(大正3)
  • a. 新潮社版 1921 は、上掲芥川訳の g. とおなじ。b. 新潮文庫版 1914 は芥川訳 h. とおなじ。(J10) 芥川の項に述べたとおり、これら2つの訳は、どちらもじつは芥川龍之介によるものです。
  • 引用は a. 新潮社版 1921 に依拠しました。(J10) 芥川訳と同文ですが、旧字である点が異なります。

■邦題の異同 Variations of the title in Japanese

  「死霊の恋」……………………田辺 1963, 1975, 1982, 1988
  「死女の恋」……………………高野 1989 店村+小柳 1977
                青柳 1959, 1969, 2006
  「死戀」…………………………佐々木 1926
  「魔女の恋」……………………青柳 1948
  「吸血鬼の恋人」………………千葉 1996
  「吸血女の恋」…………………小柳 2004
  「クラリモンド」………………芥川 1914, 1921, 1929, 1955, etc. 
                岡本 1929, 1987 久米 1914, 1921
  「遊女クラリモンドの恋」……野内 1986


■著者名の日本語表記の異同
 Transliteration variations of the author's name in Japanese

  ゴーチェ………千葉 1996 
  ゴーチェ………芥川 1995
  ゴーチェ………店村+小柳 1977
  ゴーチェ………岡本 1987
  ゴーチェ……… 〃 1970
  ゴーチェ………田辺 1975
  ゴーチェ……… 〃 1963
  ゴーチェ………青柳 1948
  ゴーチエ………小柳 2004
  ゴーチエ……… 〃 1992
  ゴーチエ………高野 1989
  ゴーチエ………野内 1986
  ゴーチエ………田辺 1988
  ゴーチエ………
 〃 1982
  ゴーチエ………
 〃 1975
  ゴーチエ………芥川 1914(大正3)
  ゴーチエ………久米 1914( 〃  )
  ゴーティエ……芥川 1998
  ゴーティエ……田辺 1951
  ゴーティエ……芥川 1921(大正10)
  ゴーティエ……久米 1921( 〃  )
  ゴーチヱ………岡本 1929(昭和4)
  ゴオチェ………佐々木 1926(昭和1)
  (未確認)………芥川 1977
  (未確認)……… 〃 1967
  (未確認)……… 〃 1955


 Video 1 
Romuald/Clarimonde - Hellfire

Uploaded by CrimsonRoseOfDanube on 13 Jan 2012. From the TV series The Hunger: Season 1, Episode 21. Clarimonde (Original broadcast: 20 Mar. 1998), based on the story by Théophile Gautier.


 Audio 1 
 Audio 1 
英語版オーディオブック 朗読: ジョイ・チャン Audiobook in English read by Joy Chan

下の引用箇所の朗読は 57:12 から始まります。 Uploaded to YouTube by Audiobooks on YouTube on 26 Dec 2014. Audio courtesy of LibriVox. Reading of the excerpt below starts at 57:12.


■英訳 Translation into English

"I loved thee long ere I saw thee, dear Romuald, and sought thee everywhere. Thou wast my dream, and I first saw thee in the church at the fatal moment. I said at once, 'It is he!' I gave thee a look into which I threw all the love I ever had, all the love I now have, all the love I shall ever have for thee—a look that would have damned a cardinal or brought a king to his knees at my feet in view of all his court. Thou remainedst unmoved, preferring thy God to me! (....)"

  • La Morte Amoureuse by Théophile Gautier. Translated by Lafcadio Hearn. テオフィル・ゴーティエ=原作 ラフカディオ・ハーン=英訳 佐竹竜照(さたけ・りゅうしょう)+内田英一(うちだ・えいいち)=訳注 『クラリモンド』 大学書林 1997/01
  • E-text at:

 Video 2 
フランス語原文のビデオブック La morte amoureuse: Videobook

朗読は小説冒頭部分から。 Uploaded by Editionseponymes on Dec 14, 2009. The recording starts at the beginning of the story.


 Audio 2 
フランス語原文のオーディオブック La morte amoureuse: Audiobook

下に引用した箇所は 0:53:43 あたりから始まります。 Published on 5 Nov 2012 by Audiolude. The excerpt below starts around 0:53:43


■フランス語原文 The original text in French

« Je t'aimais bien longtemps avant de t'avoir vu, mon cher Romuald, et je te cherchais partout. Tu étais mon rêve, et je t'ai aperçu dans l'église au fatal moment ; j'ai dit tout de suite « C'est lui! » Je te jetai un regard où je mis tout l'amour que j'avais eu, que j'avais et que je devais avoir pour toi ; un regard à damner un cardinal, à faire agenouiller un roi à mes pieds devant toute sa cour. Tu restas impassible et tu me préféras ton Dieu. (...) »

  • La morte amoureuse by Théophile Gautier
  • E-text at munseys.com

■更新履歴 Change log

  • 2014/01/27 リンク先の英語版オーディオブックが削除されていたので、代わりに別の録音を掲載しました。
  • 2014/01/26 テレビ Clarimonde の YouTube 動画を追加しました。
  • 2013/03/02 英訳版のオーディオブックとフランス語原文のオーディオブックの YouTube 動画を追加しました。
  • 2011/11/27 フランス語原文のビデオブックの YouTube 動画を追加しました。
  • 2011/07/01 英訳の書誌情報を修正しました。
  • 2007/06/30 佐々木孝丸=譯 1926/07 を追加しました。
  • 2007/06/30 野内良三=訳 1986/05 を追加しました。
  • 2007/06/24 小柳保義=訳 1992/05 を追加しました。

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■洋書 Books in non-Japanese languages
(1) La morte amoureuse

(2) Theophile Gautier

■和書 Books in Japanese

  

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