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Wednesday, 27 June 2007

Антон Чехов - Душечка Angel / The Darling by Anton Chekhov チェーホフ「かわいい」「かわいいひと」「可愛い女」「かわいい女」「いとしい人」「愛すべき女」

 Images 
本の表紙、DVDのジャケット、肖像写真 Book & DVD covers and a portrait

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a. 31494905 b. Vo42ndstreet c. Chekhov_1

■チェーホフ作品カタログ


 Video 1 
特集 沼野充義さん「新訳 チェーホフ短篇集」を語る
NHK BS2 「週刊ブックレビュー」 2010年11月13日
Numano_chekhov_tanpenshu
著作権者からの要望により、ビデオの埋め込みはできません。ご覧になりたいかたはNHKアーカイブスまたはYouTubeでご覧ください。


■日本語訳 Translations into Japanese

(J1) 浦 2010
(……)家に帰ると二人はバター入りのパンを添えて、いろんなジャムを入れたお茶をいただき、それからパイを食べた。毎日お昼になると、この家の前庭や門の先の通りにまでかぐわしいボルシチや焼いた羊や鴨の匂い、精進日には魚料理の匂いがただよい、その庭先を通ると必ずご相伴にあずかりたいなという気になるのだった。事務所ではいつもサモワールの湯がわいていて、買い付けにやって来る客にはお茶とドーナツ・パンがふるまわれた。

   アントン・チェーホフ=著 浦雅春(うら・まさはる)=編訳 「かわいいひと」
   『馬のような名字—チェーホフ傑作選
   河出文庫 2010/03/20 版元による この本の紹介


(J2) 松下 2009
(……)うちでは、味つけパンやいろいろなジャムでお茶を飲み、そのあとでパイを食べた。毎日正午になると、中庭や門の外の往来にまで、ボールシチだの、炒(いた)めた羊や鴨(かも)のうまそうな匂いがただよい、精進日(しょうじんび)にはそれが魚の匂いになって、門の前を通る人は思わず生(なま)つばを飲みこまずにはいられなかった。事務所には絶えずサモワールがたぎっていて、お客たちはきっと輪型(わがた)パンでお茶をよばれるのだった。

   チェーホフ=著 松下裕(まつした・ゆたか)=訳 「かわいいひと」
   松下裕=編訳 『チェーホフ短篇集
   筑摩書房 ちくま文庫 2009/08/10 所収


(J3) 沼野 2008, 2010
(……)家では菓子パンやいろいろな果物の砂糖煮(ヴアレーニエ)をお茶うけにしてお茶を飲み、それからピローグ(ロシア風パイ)を食べた。毎日正午になると中庭でも、門の前の通りでも、ボルシチと、ローストした羊かカモの匂いが、そして精進日にはそれが魚の匂いが美味(おい)しそうに漂い、食欲をそそられずに門の前を通り過ぎることなどとてもできなかった。事務所ではいつも湯沸かし(サモワール)がしゅんしゅんと湯を沸き立たせていて、お得意さんたちはお茶と輪型パン(ブブリク)でもてなされた。

   アントン・パーヴロヴィチ・チェーホフ=著
   沼野充義(ぬまの・みつよし)=訳 「かわいい」 集英社 2010/09/30
   a.新訳 チェーホフ短篇集
     版元による この本の紹介
   b.すばる』 集英社 2008年3月号
   引用は a. に拠りました。傍点を下線で置き換えました。


(J4) 児島 2006
(……)家に戻ると味付けパンといろいろなジャムでお茶を飲み、それからロシア式パイ(ピローグ)を味わった。毎日お昼時には中庭にも、門を越えた通りにさえも、ロシアスープ(ボルシチ)や、ラムや鴨(カモ)を焼くおいしそうな匂いが、精進(ポスト)の日には魚の匂いが漂う。門の傍を通ると誰もがまちがいなく食欲をそそられるのだった。事務所ではいつも湯沸器(サモワール)が湯煙をたて、お得意さんたちは大きめの輪形パン(ブーブリカ)でお茶をごちそうになった。

   アントン・P・チェーホフ=作 ナターリャ・デェミードヴァ=絵
   児島宏子(こじま・ひろこ)=訳 『可愛い女
   チェーホフ・コレクション 未知谷 2006/01


(J5) 神西 1969, 2004
(……)さてわが家へ帰るとお茶になって、味つきパンや色んなジャムが出たあとで、仲よく肉まん(ピローグ)に舌つづみをうつ。毎日お午(ひる)になると、中庭はもとより門のそとの往来へまで、甜菜スープ(ボルシチ)だの羊や鴨の焼肉だののおいしそうな匂いが漂い、それが精進日だと魚料理の匂いにかわって、門前に差しかかる人は、食欲をそそられずに行き過ぎるわけにはいかなかった。事務所のほうにはいつもサモヴァルがしゅんしゅんいっていて、お得意は輪形のパンでお茶の饗応にあずかった。
 
   5a. チェーホフ=作 神西清=訳 「可愛い女」
      『可愛い女・犬を連れた奥さん 他一篇』 岩波文庫(改版)2004/09 所収
   5b. チェーホフ=作 神西清=訳 「可愛い女」
      『新潮世界文学23 チェーホフ』 新潮社 1969/07 所収
 
   5a. は、下記 (J16) 神西 1940 の旧字・旧かなを、新字・新かなに
   改めたもの。5a.5b. とでは、字句・表記に若干のちがいが
   見られます。引用は 5a. に拠りました。


(J6) 原(卓)1991
(……)家に帰ると、パンケーキや各種のジャムでお茶を飲み、そのあとピローグを食べた。毎日正午には、中庭や、門の外の通りに、ボルシチだの、羊や鴨(かも)の焼肉の匂(にお)いが、そして精進日には魚料理の匂いがうまそうに漂うので、門のわきを通ると食欲がわかずにはいられなかった。事務所にはいつもサモワールがたぎっており、買手の客はお茶とドーナツを振舞われた。

   チェーホフ=著 原卓也=訳 「可愛い女」
   『集英社ギャラリー[世界の文学]13 ロシア1
   集英社 1991/03 所収


(J7) 松下 1987
(……)うちでは、味つけパンやいろいろなジャムでお茶を飲み、そのあとでピロシキを食べた。毎日お昼になると、中庭や門の外の往来にまで、ボールシチだの、いためた羊(ひつじ)や鴨(かも)のうまそうな匂いがただよい、精進日(しょうじんび)にはそれが魚の匂いになって、門の前を通る人は思わず生(なま)つばを飲みこまずにはいられなかった。事務所にはたえずサモワールがたぎっていて、お客たちはきっと輪形パンでお茶をよばれるのだった。

   チェーホフ=著 松下裕(まつした・ゆたか)=訳 「かわいい女」
   『チェーホフ全集10』 筑摩書房 1997/05 所収


(J8) 三木 1979
(……)家に帰りつくと、二人は味つけパンやさまざまなジャムをやりながらお茶を飲み、そののちピローグを食べた。毎日お昼どきになると、庭や通りに面した門から、おいしそうなスープや、羊や鴨の肉を焼く匂いがした。精進日には魚の匂いだった。食べたいと思わないでその門の横を通りすぎることはできなかった。事務所ではいつもサモワールが煮えたぎり、客たちは、輪形パンとお茶の供応にあずかった。

   チェーホフ=著 三木卓=訳 「可愛い女」
   五木寛之〔ほか〕=編 『世界文学全集39 チェーホフ』(全50巻)
   学習研究社 1979/09 所収


(J9) 木村 1975
(……)家へ帰ると、ふたりは味つけパンやいろんなジャムでお茶を飲み、そのあとでピロシキをたべた。毎日おひるになると、中庭といわず門の外の往来といわず、ボルシチだの、ヒツジやカモの焼き肉だののおいしそうな匂いがただよい、精進日にはそれが魚の匂いになって、門の前を通る人びとの食欲をそそらずにはいなかった。事務所ではいつもサモワールがしゅんしゅんたぎっていて、おとくいたちはかならずお茶と輪形のパンのもてなしを受けた。
 
   チェーホフ=著 木村彰一=訳 「かわいい女」
   『世界文学全集61 チェーホフ』 講談社 1975/10 所収


(J10) 小笠原 1970, 2005
(……)家に帰ると、味つきパンやいろんな種類のジャムを食べながらお茶を飲み、それからピローグを食べた。毎日お昼になると、中庭や門の前の通りにまでボルシチや、羊または鴨(かも)の焼肉のうまそうな香りが漂い、精進日にはそれが魚料理の香(かお)りに変り、食欲をそそられずに門の前を通り過ぎることは不可能だった。事務所でもつねにサモワールが滾(たぎ)っていて、買い手はお茶と輪形パンを御馳走(ごちそう)になった。

   チェーホフ=著 小笠原豊樹=訳 「かわいい女」
   10a.かわいい女・犬を連れた奥さん』 新潮文庫 改版 2005/02 所収
   10b.かわいい女・犬を連れた奥さん』 新潮文庫 初版 1970/11 所収


(J11) 佐藤 1969
(……)そして家へ帰って来ると、彼らはバタで味をつけたパンやいろいろな果物の砂糖づけなどを頬張りながら、仲よくお茶をのみ、それからさらに饅頭を食べた。毎日、おひるになると、屋敷内はもちろん、門の外の往来にまで、甘大根のスウプや、羊や家鴨の焙り肉などのおいしい匂いが、プンプンと漂った。また精進日には、禁断の四足類に代って、魚肉の匂いがした。——で、いかなる人でも、食欲をそそられることなしに、その門の外を通りぬけるわけには行かなかった。事務所にはいつもサモワアルがチンチンたぎっていて、得意筋の人々はお茶とビスケットのもてなしを受けた。

   チェーホフ=作 佐藤清郎(さとう・せいろう)=訳 「かわいい女」
   『世界文学全集43 三人姉妹/桜の園 他』(全66巻)
   綜合社=編 集英社=発行 1969/06 所収


(J12) 佐々木 1966, 1967
(……)家へ帰ると味つきパンやいろいろなジャムといっしょにお茶を飲み、それから肉まんじゅうを食べた。毎日お昼になると中庭や門のそとの往来(おうらい)にボルシチだの、羊(ひつじ)や鴨(かも)の焼き肉だののおいしそうな匂いがプンプンただよい、また精進日(しょうじんび)には魚料理のうまそうな匂いがして、門のそばを通る人は、食欲をそそられずに行きすぎることができなかった。事務所ではいつもサモワールがたぎり、お客さんたちはお茶と輪形のパンをごちそうになった。

   チェーホフ=作 佐々木彰(ささき・あきら)=訳 「かわいい女(ひと)」
   12a.桜の園・三人姉妹 (他)かわいい女』 特製版
      旺文社文庫 1967-10-01 所収
   12b.桜の園・三人姉妹 (他)かわいい女』 旺文社文庫 1966 所収
   引用は 12a. に拠りました。


(J13) 原(久)1964
(……)そして家へ帰って来ると、彼らはバタで味をつけたパンやいろいろな果物の砂糖づけなどを頬張りながら、仲よくお茶をのみ、それからさらに饅頭を食べた。毎日、おひるになると、屋敷内はもちろん、門の外の往来にまで、甘大根のスウプや、羊や家鴨の焙り肉などのおいしい匂いが、プンプンと漂った。また精進日には、禁断の四足類に代って、魚肉の匂いがした。——で、いかなる人でも、食欲をそそられることなしに、その門の外を通りぬけるわけには行かなかった。事務所にはいつもサモワアルがチンチンたぎっていて、得意筋の人々はお茶とビスケットのもてなしを受けた。

   チェーホフ=作 原久一郎(はら・ひさいちろう)=訳 「可愛い女」
   中村白葉、原久一郎〔ほか〕=訳
   『ロシア・ソビエト文学全集22 チェーホフ1』(全35巻)
   可愛い女 ヴァーニャ伯父さん 三人姉妹 かもめ
   六号室 犬をつれた奥さん 他
   平凡社 1964/05 所収


(J14) 石山+飯田 1960
(……)そして家に着くと、バター入りのパンやいろいろのジャムでお茶を飲み、それからピローグ(ロシヤまんじゅう)を食べた。毎日、午の時刻になると、ボルシチ(ロシヤスープ)や、羊や鴨の焼肉の、精進日には魚の料理の、おいしそうな匂いが屋敷内から門をこえて往来にまでただよってきて、門の前を通る人は誰でも否応なしに食欲をそそられるのであった。事務所ではいつもお湯が沸いていて、お客はいつもお茶と輪形パンを御馳走になった。

   チェーホフ=作
   石山正三(いしやま・しょうぞう)+飯田規和(いいだ・のりかず)=訳
   「かわいい女」
   『ポータブル・チェーホフ』 ポータブル・ライブラリィ
   パトリア・ブックス22 パトリア書店 1960/05 所収


(J15) 中村 1959
(……)こうしてうちへ帰ると、二人は、バタやミルクや玉子で味をつけたパンや、いろんなジャムでお茶を飲み、そのあとでピローグをたべるのである。まいにち、正午ごろになると、中庭から門のそとの往来まで、野菜汁や、羊や家鴨を焙くにおいがうまそうにただよい、精進日には——それが魚のにおいにかわって、どんな人でも、食欲をそそられないでは、この門前を通りすぎることはできなかった。事務所には、いつもサモワールが沸いていて、客達はお茶と輪形パンでもてなされた。

   チェーホフ=作 中村白葉=訳 「可愛い女」
   『新版世界文学全集20 桜の園・三人姉妹
   新潮社 1959/01 所収


(J16) 昇 1946
(……)わが家へ戻ると、彼等は色々のジヤムを着けて、特製のパンを食べながら、お茶を飮んだ。それから肉饅頭(ピロシユヤ)を食べた。毎日十二時になるとこの家の中庭には甜菜の根のスープや、羊肉、家鴨などの美味(おい)しさうな匂がした。だから齋(ものいみ)の日などには、そこの路知を通ると、誰でも空腹を感じないではゐられなかつた。事務所ではいつもサモワルが沸つてゐた。お客達はお茶と輪形の乾パンとを御馳走になつた。
 
   チェーホフ=著 昇曙夢(のぼり・しょむ)=訳
   『可愛い女』 日本文庫3 外國文學篇
   日本社 定價二十圓 1946/06 所収


(J17) 神西 1940
(……)さてわが家へ歸るとお茶になつて、味つきパンや色んなジャムが出たあとで、仲よく肉まん(ピローグ)に舌つゞみをうつ。毎日お午(ひる)になると、中庭はもとより門のそとの往來へまで、甜菜すーぷ(ボルシチ)だの羊や鴨の燒肉だののおいしさうな匂ひが漂ひ、それが精進日だと魚料理の匂ひにかはつて、門前に差しかゝる人は、食慾をそゝられずに行き過ぎる譯にはいかなかつた。事務所の方にはいつもサモヴァルがしゆん/\云つてゐて、お得意は輪形のパンでお茶の饗應にあづかつた。
 
   チェーホフ=作 神西清=訳 「可愛い女」
   『可愛い女・犬を連れた奥さん 他一篇
   岩波文庫 1940/10(昭和15)所収


(J18) 中村 1939
(……)かうして家へ歸ると、二人は、バタやミルクや玉子で味をつけたパンや、いろんなジャムでお茶を飮み、そのあとでピローグを食べた。毎日正午頃になると、中庭や門の外の往來まで、野菜汁や、羊や、家鴨を焙くにほひがうまさうに漂ひ、精進日には——魚のにほひがした、そしてどんな人でも、食慾を唆られないでは、この門前を通り過ぎることが出來なかつた。事務所には、いつもサモワールが沸いてゐて、客達はお茶とビスケットでもてなされた。

   チェーホフ=作 中村白葉=譯 「可愛いゝ女」
   『チェーホフ小説選集  市井小説篇 三年』(全7卷)
   金星堂 定價九十五錢 外地定價一圓五錢 1939/03(昭和14)所収


(J19) 原(久)1933
(……)そして家(うち)へ歸つて來ると、彼等は乳酪で味をつけたパンやいろんな果物の砂糖づけなどを頬張り乍ら、仲よくお茶をのみ、それから更に饅頭を食べた。毎日、正午になると、屋敷内は勿論、門外の往來にまで、甘大根のスウプや、羊や家鴨の焙り肉などのおいしい匂ひが、プンプンと漂つた。また精進日には、禁斷の四足類に代つて、魚肉の匂ひがした。——で、如何なる人でも、食欲をそゝられる事なしに、その門外を通りぬける譯には行かなかつた。事務所にはいつもサモワールがチンチン沸騰してゐて、得意筋の人々はお茶とビスケットの饗應を受けた。

   チェーホフ=作 原久一郎(はら・ひさいちろう)=譯 「可愛い女(ひと)」
   『接吻・可愛い女 他二篇
   岩波文庫 1933/05/25(昭和8)所収


(J20) 柴 1928
(……)家で彼等は、色々のジヤムの附いた菓子パンを食べながら、お茶を飮んだ。それからパイを食べた。毎日十二時に、彼等の庭には、〓菜(タウヂサ)の根のスープや羊の肉、或ひは、家鴨(あひる)の美味(おい)しさうな匂ひが漂つた。で、魚肉の進日には、誰でも、空腹を感ぜずに門を潜る事は出來なかつた。事務所では、毎時(いつ)も湯沸(ゆわか)しが煮立つてゐた。そして、お客さんは、お茶とビスケツトを御馳走された。

   チエホフ=作 柴孝平(しば・こうへい)=譯註 「いとしい人」
   柴孝平=譯註 『チエホフ短篇集 英文世界名著全集 13
   英文學社 1928/08/15(昭和3)所収 この全集についての詳細
   この本は英日の対訳本。したがって収録されている和訳は英訳からの重訳。
   底本は下掲 (E3) Constance Garnett による英訳。食・毎の旧字は新字で
   置き換えました。〓は草かんむりの下に添の右側。


(J21) 梅田=編 1928
(……)彼等は家では、乳パンといろ/\なのジャムなどをもち出してお茶をのみ、そのあとでは饅頭を食つた。毎日正午(ひる)ごろになると、庭や門口に甜菜(あまな)のスープのひほひや羊肉や家鴨などを燒いた匂ひがして、誰でもうつかりその門口を通りすぎられないほどだつた。事務室では、いつも湯沸器(サモワール)がたぎつてゐて、來るお客はお茶やビスケツトのもてなしを受けた。

   チェーホフ=著 「一八、愛すべき女」
   梅田寛=編 『諧謔文學 外國後篇』 名作物語
   文敎書院 1928/08/01(昭和3)所収
   乳・食・毎・菜・通の旧字は新字で置き換えました。


(J22) 秋庭 1928
(……)家では菓子パンと色々なジヤムとでお茶を飮み、その後ではパイを食(た)べた。毎日十二時になると、この家の中庭には大根のスープや羊肉や家鴨(あひる)やの美味(うま)さうな匂がした。そして齋日などに其處の門口を通り過ぎると、誰も空腹を感じないではゐられなかつた。事務室には、湯沸(サモワル)が始終(しょつちう)沸(わ)き立つてゐた。お客達はお茶や輕いビスケットの御馳走に會つた。

   チエホフ=作 秋庭俊彦(あきば・としひこ)=譯 「可愛い女」 チエホフ選集
   秋庭俊彦、原久一郎=譯 『世界文學全集24 露西亞三人集』(非賣品)
   新潮社 1928/01(昭和3)所収


(J23) 松山 1910, 2000
(……)家に歸ると茶や麪麭(ぱん)や牛酪(ばた)や其の外樣々な菓子やジヤムを甘まさうに喰ふのが御定(きま)りであつた。毎日午後には肉汁(すヽぷ)、焼肉、鴨、魚と云ふやうな物の強い臭ひが庭や通りにプン/\襲うて來るので、オレンカの家の前を通る人は食慾が挑發されんで居れなかつた。鐵瓶は何時も事務室の方に樂しげに呻つて居る。御客があると茶とビスケツトが出る。

   チェーホフ=著 松山強=譯 「愛らしい人」
   23a. 川戸道昭(かわと・みちあき)+榊原貴教(さかきばら・たかのり)=編
      『明治翻訳文学全集 新聞雑誌編43 チェーホフ集2
      大空社 2000/04 所収
   23b.開拓者』 1910/06(明治43)所収
   23a.23b. を複製したもの。初出は 23b.。引用は 23a. に拠りました。


 Audio 1 
「かわいい女」英訳版オーディオブック - セルツァー訳
The Darling - Audiobook translated into English by Thomas Seltzer

下の引用箇所に相当する部分は 18:53 から始まります。 Reading of the excerpt below starts at 18:53.


 Audio 2 
「かわいい女」英訳版オーディオブック - ガーネット訳
The Darling - Audiobook translated into English by Constance Garnett

下の引用箇所に相当する部分は 11:20 あたりから始まります。 Uploaded to YouTube by GreatestAudioBooks on 17 Feb 2013. The excerpt below starts around 11:20.


■英訳 Translations into English

(E1) Hingley, 1975, 2000, etc.
(....)  At home they drank tea with fine white bread and various jams, and then ate pasties. At noon each day their yard, and the street outside their gate, were deliriously redolent of beetroot soup, roast lamb and duck — and of fish in Lent.' You couldn't pass their gate without feeling hungry. They always kept the samovar boiling in the office, and they treated their customers to tea and buns.

   Angel by Anton Chekhov
   Translated by Ronald Hingley
   * The Russian Master and Other Stories Oxford University Press, 2000-03-23
   * The Russian Master and Other Stories Oxford University Press, 1984
   * The Oxford Chekhov: Stories, 1898-1904 Oxford University Press, 1968
   Preview at Amazon.com


(E2) Seltzer, c1917
(....)  At home they drank tea with milk-bread and various jams, and then ate pie. Every day at noontime there was an appetising odour in the yard and outside the gate of cabbage soup, roast mutton, or duck; and, on fast days, of fish. You couldn't pass the gate without being seized by an acute desire to eat. The samovar was always boiling on the office table, and customers were treated to tea and biscuits.

   The Darling by Anton Chekhov
   form Best Russian short stories,
   compiled and edited by Thomas Seltzer.
   New York, Boni and Liveright, inc. [c1917]
   E-text at Short Story Archive


(E3) Garnett, 1916
(....)  At home they drank tea, with fancy bread and jams of various kinds, and afterwards they ate pie. Every day at twelve o'clock there was a savoury smell of beet-root soup and of mutton or duck in their yard, and on fast-days of fish, and no one could pass the gate without feeling hungry. In the office the samovar was always boiling, and customers were regaled with tea and cracknels.   

   The Darling (1899) by Anton Chekhov
   from The Tales of Chekhov,
   translated from Russian by Constance Garnett
   13 vol. Chatto & Windus: London, 1916-22.
   E-text at:
   * Project Gutenberg
   * Eldritch Press


■スペイン語訳 Translation into Spanish

(....) en casa tomaban té con pan de leche y con toda clase de dulces, luego comían un pastel. Todos los días, a mediodía, en el patio de la casa y aun en la calle flotaba un sabroso olor a borsch, cordero asado o pato; en los días de vigilia olía a pescado y no se podía pasar cerca del portón sin sentir ganas de comer. El samovar en la oficina siempre estabacon agua hirviente y a los clientes se les convidaba con téy rosquillas.

   Amorcito by Antón Pávlovich Chéjov
   E-text at:
   * es.scribd.com
   * Cuentosinfin 


■フランス語訳 Translation into French

(....) Chez eux, ils prenaient le thé, en mangeant du pain au lait et toutes sortes de confitures ; ensuite ils mangeaient du gâteau levé. Chaque jour, à leur porte dans la cour, et même dehors, cela sentait la bonne soupe à la betterave et le mouton rôti ou le canard. Et les jours maigres, cela sentait le poisson, si bien qu’on ne pouvait pas passer devant chez eux sans avoir envie de manger. Au bureau, le samovar bouillait toujours et l’on offrait aux acheteurs du thé avec des craquelins.

   Ma Femme by Anton Pavlovitch Tchekhov
   Translated by Denis Roche
   E-text at Ebooks Libres et Gratuits


 Video 2 
チェーホフ 『かわいい女』 А. Чехов - Душечка

Uploaded to YouTube by DramaTheatreSamara on 2 Feb 2013. Режиссер: заслуженный деятель искусств России Вячеслав Гвоздков, Георгий Васильев (г. Санкт-Петербург)


■ロシア語原文 The original text in Russian

( . . . ) а  дома  пили  чай  со сдобным хлебом и с разными вареньями, потом  кушали  пирог.  Каждый  день  в полдень во дворе и за воротами  на  улице  вкусно  пахло  борщом  и  жареной бараниной или уткой, а в постные дни -  рыбой,  и  мимо  ворот  нельзя  было пройти без того, чтобы не захотелось есть. В конторе всегда кипел самовар, и покупателей угощали чаем с бубликами.

   Антон Чехов - Душечка (1899)
   E-text at ilibrary.ru


пирог の訳 Translation of "пирог"

 [ja] 日本語訳 Japanese
   パイ………………………………浦 2010
   パイ………………………………松下 2009
   パイ………………………………柴 1928
   パイ………………………………秋庭 1928
   ピローグ(ロシア風パイ)  ………沼野 2008, 2010
   ピローグ(ロシヤまんじゅう) ……石山+飯田 1960
   ピローグ …………………………原(卓)1991
   ピローグ …………………………三木 1979
   ピローグ …………………………小笠原 1970, 2005
   ピローグ …………………………中村 1959
   ピローグ …………………………中村 1939
   ピロシキ …………………………松下 1987
   ピロシキ …………………………木村 1975
   ロシア式パイ(ピローグ)…………児島 2006
   肉まんじゅう  ……………………佐々木 1966, 1967
   肉まん(ピローグ) ………………神西 1969, 2004
   肉まん(ピローグ) ………………神西 1940
   肉饅頭(ピロシユヤ) ……………昇 1946
   饅頭………………………………佐藤 1969
   饅頭………………………………原(久)1933, 1964
   饅頭………………………………梅田=編 1928
     [訳出なし] ……………………松山 1910, 2000

 [en] 英訳 English
   pasties  …… Hingley, 1975, 2000, etc.
   pie ………… Seltzer, c1917
   pie ………… Garnett, 1916


бубликами の訳 Translation of "бубликами"

 [ja] 日本語訳 Japanese
   ドーナツ・パン ………………………浦 2010
   ドーナツ  ……………………………原(卓)1991
   ビスケット……………………………佐藤 1969
   ビスケット……………………………原(久)1964
   ビスケット……………………………中村 1939
   ビスケット……………………………原(久)1933
   ビスケット……………………………秋庭 1928
   ビスケツト……………………………柴 1928
   ビスケツト……………………………梅田=編 1928
   ビスケツト……………………………松山 1910, 2000
   大きめの輪形パン(ブーブリカ)……児島 2006
   輪型パン……………………………松下 2009
   輪型パン(ブブリク)…………………沼野 2008, 2010
   輪形のパン…………………………木村 1975
   輪形のパン…………………………神西 1969, 2004
   輪形のパン…………………………佐々木 1966, 1967
   輪形のパン…………………………神西 1940
   輪形の乾パン………………………昇 1946
   輪形パン……………………………松下 1987
   輪形パン……………………………三木 1979
   輪形パン……………………………小笠原 1970, 2005
   輪形パン……………………………石山+飯田 1960
   輪形パン……………………………中村 1959

 [en] 英訳 English
   buns ……………  Hingley, 1975, 2000, etc.
   biscuits ………… Seltzer, c1917
   cracknels ……… Garnett, 1916


■外部リンク External links


■更新履歴 Change log

  • 2013/04/13 セルツァー訳とガーネット訳の2種類の英訳版オーディオブック、およびロシア語版舞台公演ビデオの計3本の YouTube 画面を追加しました。
  • 2012/09/02 柴孝平=譯註 1928/08/15 と梅田寛=編 1928/08/01を追加しました。
  • 2012/08/25 スペイン語訳、フランス語訳、および Ronald Hingley による英訳を追加しました。
  • 2011/11/07 佐々木彰=訳 1967-10-01 を追加しました。
  • 2011/05/13 特集 沼野充義さん「新訳 チェーホフ短篇集」を語る の動画の紹介を追加しました。
  • 2010/09/30 沼野充義=訳 2010/09/30 を追加しました。
  • 2010/03/12 浦雅春=編訳 2010/03/20 を追加しました。また、「бубликами の訳」の項を新設しました。
  • 2010/01/15 原久一郎=譯 1933/05/25 を追加しました。
  • 2009/09/16 「пирог の訳」の項を新設しました。
  • 2009/09/15 松下裕=訳 2009/08/10 を追加しました。
  • 2008/08/26 松山強=譯 2000/04 を追加しました。
  • 2007/08/10 神西清=訳に関する書誌情報に、1969/07 新潮版についての情報を追加しました。
  • 2007/07/13 佐藤清郎=訳 1969/06 と石山正三+飯田規和=訳 1960/05 を追加しました。
  • 2007/07/12 児島宏子=訳 2006/01 と昇曙夢=訳 1946/06 を追加しました。
  • 2007/06/30 松下裕=訳 1997/05 と三木卓=訳 1979/09 を追加しました。

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Comments

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Posted by: http://www.diningroomsetsgiant.com/ | Saturday, 02 November 2013 07:44 am

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