Tom Quartz by Mark Twain マーク・トウェイン「トム・クォーツという猫」
↑ Click to enlarge ↑
Left: Tom Quartz.
Centre: An advantage taken.
Right: After an excursion.
All the three images taken from Roughing It, Electronic Text Center, University of Virginia Library
■日本語訳 Translations into Japanese
西部開拓時代、カリフォルニアの金鉱。ディック・ベイカーという男が、むかし飼っていた猫、トム・クォーツについての思い出を語る——
(1) 木内 1998
(……)導火線に火をつけてから穴から這い出て五十ヤードくらい離れたんだ——ところがよ、トム・クウォーツが袋にうずくまって寝てるのをうっかり忘れてそのままにしてきちまった。そんとき穴から煙がボンって吹きでたんだ。すげえ爆発で、なんでもかんでもすっとんだ。だいたい四百万トン分の岩と泥と煙とごみが空中高く一マイル半ぶっとんだ。おったまげたのはよ、そのごみのまん真んなかによ、あのトム・クウォーツがくるくるまわりながら上がってくんだ。鼻息荒くしてくしゃみしたりもがいたり、なんだか夢中になってなにかにしがみつこうとしてたな。(……)
マーク・トウェイン=著 木内徹(きうち・とおる)=訳
「第61章 トム・クウォーツという猫」
『西部放浪記(下)』マーク・トウェイン コレクション11-B
彩流社 1998/11 所収
(2) 青木 1995
(……)おれたちは、導火線に火をつけて穴からはい出し、五十ヤードほども離れたところに陣取った。麻袋の上でぐっすり眠っていたトム・クォーツのことはすっかり忘れちまったんだ。一分ほどたつと、穴からぱっと煙が吹き上がるのが見えて、それから、ものすごい音がして何もかもが吹っ飛び、四百万トンほどの岩やら土や煙やら木の破片やらが、一マイル半ほども空に吹き上げられた。しまった、そのど真ん中で、トム・クォーツがくるくる回って飛んでいたんだ。鼻からフウフウ息をして、くしゃみをしながら、そばにあるものをつかもうと気が狂ったように手足をのばしながらな。(……)
マーク・トウェイン=著 青木榮一(あおき・えいいち)=訳
「ディック・ベイカーの猫」
クリーヴランド・エイモリー=編 ロビン・アップワード〔ほか〕=写真
『お気に入りの猫物語—世界の猫文学10選』
ディーエイチシー (DHC) 1995/12 所収
原書:
Cat Tales: Classic Stories from Favorite Writers,
edited by Cleveland Amory, photographed by Robin Upward et al.
* Paperback: Studio (1993)
* Hardcover: Viking Press (1989)
(3) 勝浦 1993
(……)導火線に火をつけて這い出し、五十ヤードばかり離れた所まできて——そこでやっと気がついた。つまり、南京袋にくるまってぐっすり寝こんでるトム・クォーツを置いてきぼりにしちまったのよ。およそ一分ばかりして、パッと一条の煙が穴から上った次の瞬間、おっそろしい大音響と一緒に何もかも吹っ飛んじゃった。見れば四百万トンもあろうかという大岩と、それに土塊やら、もうもうたる煙に岩の細片が一マイル半ほども空中に吹き上がった。ああ、なんてことよ、そのどまん中に、俺が大事にしているトム・クォーツがクルリクルリ宙返りをしながら飛んでるんだ。ニャンニャン、ギャーギャー鳴いたり叫んだり、無我夢中で何かにつかまろうってんで手足を伸ばしてた。(……)
マーク・トウェイン=著 勝浦吉雄(かつうら・よしお)=訳
「19 トム・クォーツ」
『マーク・トウェイン短編全集(上)』(全3巻)
文化書房博文社 1993/11 所収
(4) 須山 1980
(……)おれたちは導火線に火をつけて、穴から出て、五十メートルばかりはなれた。トム・クォーツがナンキン袋の上でぐっすり眠っていたことはすっかり忘れて、そのままにしてきてしまった。一分ほどすると、煙が穴から噴きあがるのが見えて、それから轟音とともにいっさいが吹っ飛んだ。四百万トンばかりの岩と、土と、破片が二、三千メートルも空中に吹きあがった。そして、なんと、そのどまんなかにトム・クォーツのやつが引っくりかえしになって、鼻を鳴らし、くしゃみをし、まったく悪魔に取りつかれたように手あたり次第に何かをつかまえようとしていた。(……)
マーク・トウェイン=著 マックスウェル・ガイスマー=編
須山静夫(すやま・しずお)=訳 ジャン-クロード・スワレス=絵
「トム・クォーツ」
『マーク・トウェイン動物園』晶文社 1980/05 所収
原書:
The Higher Animals: A Mark Twain Bestiary
edited by Maxwell Geismar, with drawings by Jean-Claude Suares
Hardcover: Crowell (1976)
(5) 鍋島 1959
(……)俺たちは道火(みちび)に火をつけて、這い出して五十ヤードぐらい離れたところが、トム・クォーツは麻袋の上にぐっすり寝込んだままに置いてきてしまったんだ。五分ばかりで、煙がもくもく穴から立ち上るのが見えると何もかも恐ろしくドカンとやられ、四百万トンばかりの岩と土や煙や破片が一マイル半ぐらい空中に吹き上げられたが、本当にそのど真んなかに、年とったトム・クォーツがいて、死にそうにになって、鼻を鳴らしたり、くしゃみをしたりして、一生懸命に何かに爪を立ててとどこうとしていた。(……)
マーク・トウェーン=著 鍋島能弘(なべしま・よしひろ)=訳
「トム・クォーツ」
『マーク・トウェーン短篇全集1』
鏡浦(かがみうら)書房 1959/05 所収
■蛇足
じつは、このあとのトムくんの顔つきと態度がよいのです - tomoki y.
■英語原文 The original text in English
(...) An' then we lit the fuse 'n' clumb out 'n' got off 'bout fifty yards -- 'n' forgot 'n' left Tom Quartz sound asleep on the gunny sack. In 'bout a minute we seen a puff of smoke bust up out of the hole, 'n' then everything let go with an awful crash, 'n' about four million ton of rocks 'n' dirt 'n' smoke 'n; splinters shot up 'bout a mile an' a half into the air, an' by George, right in the dead centre of it was old Tom Quartz a goin' end over end, an' a snortin' an' a sneez'n', an' a clawin' an' a reachin' for things like all possessed. (...)
Tom Quartz
from Roughing It, Chapter 61
by Mark Twain
E-text at:
* Electronic Text Center, University of Virginia Library
* World Wide School
* Project Gutenberg
* Whitewolf
■更新履歴 Change log
2007/07/10
勝浦吉雄=訳 1993/11、および鍋島能弘=訳 1959/05 を追加しました。
2007/07/09
「蛇足」を書き加えました(苦笑)
↓ 以下の本・CD・DVDのタイトルはブラウザの画面を更新すると入れ替わります。
↓ Renew the window to display alternate titles of books, CDs and DVDs.
■洋書 Books in non-Japanese languages
■和書 Books in Japanese
(1) 猫文学
(2) マーク・トウェイン『西部放浪記』
(3)『マーク・トウェイン動物園』
The comments to this entry are closed.
Comments