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August 2007

Friday, 31 August 2007

蒲松齢 「陸判」(『聊斎志異』より) Judge Lu - Strange Stories from a Chinese Studio by Pu Songling (3)

           目次 Table of Contents

     Video   『聊斎志異』 「陸判」 《聊斋志异》 陆判
          Judge Lu - Strange Stories from a Chinese Studio
    Audio 1  Flag_of_the_united_kingdomsvg 英訳のオーディオブック Audiobook in English
   ■Flag_of_the_united_kingdomsvg 英訳 Translations into English
     (E1) 王娟 1998
     (E2) Mair & Mair, 1989
     (E3) Lu, Chen, Yang & Yang, 1988 (fragment)
     (E4) Giles, 1880
   ■Flag_of_japan 現代日本語訳 Translations into contemporary Japanese
     (J1) 黒田 2011
     (J2) 志村 2004
     (J3) 立間 1997/07
     (J4) 立間 1997/01
     (J5) 上野山 1994
     (J6) 中野 1988
     (J7) 丸山 1977
     (J8) 増田+松枝+常石 1971
     (J9) 田中 1970, 1987, etc.
     (J10) 柴田 1956, 1987, etc.
   ■Flag_of_the_peoples_republic_of_c_2 現代中国語による再話 A retelling in contemporary Chinese
    Audio 2  Flag_of_the_peoples_republic_of_c_2 中国語原文のオーディオブック Audiobook in Chinese
   ■Flag_of_the_peoples_republic_of_c_2 中国語原文(簡体字)The original text in simplified Chinese
   ■Flag_of_the_peoples_republic_of_c_2 中國語原文(繁體字)The original text in traditional Chinese
    Images   表紙画像 Cover photos
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  Video  
『聊斎志異』 「陸判」 音声: 中国語 字幕: 簡体字中国語 09 of 30
《聊斋志异》 陆判 语言: 中文 字幕: 简体中文 09 of 30


 Audio 1 
英語版オーディオブック 翻訳: H・A・ジャイルズ 朗読: スコット・カーペンター
Audiobook in English, translated by H. A. Giles, read by Scott Carpenter
Librivoxlistmk_2
「陸判」の録音を聴くには 15. 14 - Judge Lu をクリック。下に引用する箇所の朗読は 4:58 あたりから。 Audio courtesy of LibriVox. To listen to Judge Lu, click 15. 14 - Judge Lu. Reading of the excerpt below starts around 4:58.


■英訳 Translations into English

(E1) 王娟 1998
  Suddenly, he in his sleep felt a pain in his stomach. He woke up and saw that Lu, who was sitting on the bed beside him, had opened up his belly and was arranging his entrails. Zhu was shocked and said,
  "We have never been enemies. Why would you kill me?"
  Lu laughed and said, "Don't worry, I am now exchanging your heart for a more intelligent one.
  Lu put his entrails back in a leisurely manner, closed his belly, and then bandaged his waist. [Omission] Seeing Lu placed a lump of flesh on the table, Zhu asked what it was. Lu said, "This is your heart, the reason why you could not write good essays was that the apertures of your heart were blocked. A moment ago, I found and exchanged for you a better heart from thousands of hearts in the nether world, and I will put your heart back in its place."

   42 Judge Lu (3)
   聊齋誌異一百段 王娟 商務印書館(香港), 1998
   Line breaks and indentation were added by tomoki y.


(E2) Mair & Mair, 1989
  Suddenly, in his drunken dream, Zhu was aware of a slight pain in his viscera. He woke up and looked: Lu was sitting upright by the bed drawing entrails out of Zhu's rent abdomen and putting the coils in order.
  "There has 'never been malice between us," said Zhu, shocked. "Why are you killing me?"
  "Never fear. I'm only putting in a brilliant heart in place of yours," said Lu laughingly.
  He calmly stuffed the intestines back in, pushed the incision together and finally wound strips of footbinding cloth around Zhu's loins. [Omission] He asked about the lump of flesh which he noticed the judge putting on the table. "This is your own heart. From your slowness at writing I knew your heart's apertures were blocked. Just now in the nether regions I picked out one excellent heart among tens of thousands. Now I have exchanged it for yours, which I'll keep to make up for the missing one."

   10. Judge Lu
   Strange Tales from Make-do Studio
   Translated by Denis C. Mair and Victor H. Mair
   Foreign Languages Press, 1989
   Snippet view at Google Books
   Line breaks and indentation were added by tomoki y.


(E3) Lu, Chen, Yang & Yang, 1988 (fragment)
[Omission] took note of a pain in his abdomen. He then took out Zhu's inside, rearranging it with great care.
  "You have no rancour against me," cried Zhu, flabbergasted, "Why should you seek to kill me?"
  "Don't be  afraid," said the Judge smiling, "I am just giving you a new and more intelligent heart."
  Placing Zhu's viscera back unhurriedly, he then closed up the opening and tied a puttee round his waist. [Omission] When he saw the Judge place a lump of flesh on the table, he asked what it was. "This was your heart," answered the Judge. "You weren't good at composition because its orifices were stuffed up. From tens of thousands of hearts in store in the nether world, I procured a fine one which I have just put into you. This I'll take back to put in its place."

   Judge Lu
   Strange Tales of Liaozhai by Pu Songling
   Translated by Lu Yunzhong, Chen Tifang, Yang Liyi, and Yang Zhihong
   Commercial Press, 1988


(E4) Giles, 1880
  In his drunken sleep he seemed to feel a pain in his stomach, and waking up he saw that the Judge, who was standing by the side of the bed, had opened him, and was carefully arranging his inside.
  "What harm have I done you?" cried Chu, "that you should thus seek to destroy me?"
  "Don't be afraid," replied the Judge, laughing, "I am only providing you with a more intelligent heart."
  He then quietly put back Chu's viscera, and closed up the opening, securing it with a bandage tied tightly round his waist. [Omission] Here he observed the Judge place a piece of flesh upon the table, and asked him what it was. "Your heart," said the latter," which wasn't at all good at composition, the proper orifice being stuffed up. I have now provided you with a better one, which I procured from Hades, and I am keeping yours to put in its place."

  XIV. Judge Lu. 
  Strange stories from a Chinese studio
  translated and annotated by H. A. Giles (Herbert Allen Giles)
  London: T. De La Rue, 1880
  E-book at Google Books
  Line breaks and indentation were added by tomoki y.


■現代日本語訳 Translations into contemporary Japanese

(J1) 黒田 2011
 朱は夢うつつの中、ふとはらわたに微かな痛みを感じた。ハッとして目を覚ましてよく見ると、陸がベッドの前で正座し、朱の腹を裂いて腸と胃を取り出し、一本一本きちんと仕分けている。ギョッとして、
 「何の怨があって、殺されるんだい。」
と叫ぶと、陸は笑いながら言った。
 「心配することはない、わしは君のために、聰明な心臓と取り換えているだけだよ。」
 陸は落ち着きすまして腸を朱の腹に納め入れると、再び合わせて閉じてから、最後に足を包む布で朱の腰を縛った。(……)陸が肉の塊(かたまり)を卓上に置いたのが目に入ったので、尋ねると、「これは君の心臓なんだ。作文の出来が悪いのは、君の毛穴がつまっているからだとわかったんだ。たまたま冥界の何千何万という心臓の中でいいのを一つ選べたから、君のために取り換えたんだ。これを持って行って数の埋め合わせをするぞ。」

   蒲松齢(ほ・しょうれい) 『聊斎志異』
   「陸判(りくはん)」(美容移植の夢をかなえる話)
   楊逸(ヤン・イー)=著 黒田真美子(くろだ・まみこ)=現代語訳
   『楊逸が読む聊斎志異』 明治書院 2011/09/30 所収。
   原文の傍点を下線で置き換えました。


(J2) 志村 2004
 (……)朱は夢の中で臓腑(ぞうふ)に痛みを感じて目を覚ます。すると、陸が寝台の前に座って、朱の腹を破り、腸と胃を取り出し、一本一本そろえていた。驚いた朱が、
「仇(あだ)も恨みもないはずなのに、どうしてわたしを殺すのだ」
 と尋ねると、判官は笑って、
「恐れなくてもよい。わたしは君のために利口な心と取り替えているのだ」
 と言い、悠然と腸を腹の中に入れて皮を合わせ、足を包む布で朱の腹をしばり、仕事を終えてしまう。(……)判官が肉塊を卓の上に置いたのを見て、
「何ですか」
 と訊くと、
「これはきみの心だ。きみの作文が下手なのは、きみの心の毛穴がふさがっていたためだから、いま冥途にある千万の心の中からよいものを一つ選び出して、きみの心と取り替えたのだ。きみの心は取っておいて、不足した冥途の分を補充するのだ」

   蒲松齢(ほ・しょうれい)=著 志村有弘(しむら・くにひろ)=訳
   「首のすげかえ(陸判)」
   『聊斎志異の怪』 角川ソフィア文庫 2004/08 所収


(J3) 立間 1997/07
 (……)夢うつつに腹がちくちく痛むのを覚えて目をさました。見れば陸判官(りくはんがん)が寝台に座り、朱(しゅ)の破れた腹から腸を引き出してきれいにのばしているではないか。朱は驚いて抗議した。
 「わたしはあなたに恨まれるようなことをした覚えはありません。それなのに殺すとはひどいではありませんか」
 「ははは、ご心配にはおよばぬ。貴公(きこう)の心をできのよい心と取り替えているところでござる」
 陸判官は落ち着きはらって腸を腹に納めると、腹の皮を合わせ、最後に布でぐるぐる巻きにした。(……)陸判官が肉の塊(かたまり)を机のうえにおいたので、
 「それはなんですか」
と聞くと、
 「これは貴公の心でござる。貴公が小論文をうまく書けないのは、心の穴が詰まっているからでござったが、さきほど冥土(めいど)で何千何万という心のなかから、一ついいものを見つけたので、取り替えて差し上げたのでござる。こちらの心はこれから持って行って、向こうの腹の穴に埋めてまいる」
[ルビを一部省略しました - tomoki y.]

   蒲松齢(ほ・しょうれい)=作 立間祥介(たつま・よしすけ)=編訳
   「首のすげかえ」 (原題・陸判)
   『聊斎志異』 岩波少年文庫 1997/07 所収


(J4) 立間 1997/01
 (……)夢うつつに腹がちくちく痛むのを覚えて目をさました。見れば陸が寝台に坐り、破った腹から臓物を引き出して揃えているではないか。驚いて、
「あなたに恨まれる筋合いもないのに、殺すとはひどいではありませんか」
 と言うと、陸は、
「ご心配には及ばぬ。貴公のためにできのよい心と取り替えているところでござる」
 と笑い、落ち着きはらって臓物を腹に納めると、腹の皮を合わせ、最後に足に巻く布(纏足の足を巻く包帯状の長い布)を巻きつけた。(……)陸が肉の塊りを机のうえに置いたので、「それは何」ときくと、
「これは貴公の心でござる。貴公が文章をうまく書けないのは、心の穴が詰まっているからでござったが、さきほど冥土で何千何万という心のなかから、一ついいの[ママ]ものを見つけたので、取り替えて差し上げたのでござる。こちらの心はこれから持って行って員数を合わせてまいる」

   蒲松齢(ほ・しょうれい)=作 立間祥介(たつま・よしすけ)=編訳
   「美女の首—陸判(りくはん)」
   『聊斎志異(上)』 全2冊 岩波文庫 1997/01 所収


(J5) 上野山 1994
朱(ズー)は夢心地(ゆめごこち)のうちに、おなかの痛(いた)みを感(かん)じて目をさました。陸裁判官が寝台(しんだい)のまえにすわって、朱(ズー)のおなかをきりひらき、からだのなかから内臓(ないぞう)をすべてとりだし、一つ一つ整理(せいり)していた。朱はおどろいた。
「なんの恨(うら)みがあって、こんなことをするんです!」
 陸裁判官(ルウさいばんかん)はわらっていった。
「心配するな。わしは、きみのことを思って、りこうな心臓(しんぞう)ととりかえているんだ。」
 陸裁判官(ルウさいばんかん)は、腸(ちょう)をそっとおなかにおさめると、おなかの皮(かわ)を革(かわ)ひもでしばった。
(……)陸裁判官(ルウさいばんかん)がテーブルの上においた肉(にく)のかたまりをみて、朱(ズー)がたずねた。
「なんです?」
「きみの心臓(しんぞう)さ。きみの作文(さくぶん)がよくないのは、きみの心臓の穴(あな)がふさがっているからなんだ。あの世(よ)にあるたくさんの心臓(しんぞう)のなかから、いいのを一つえらんで、きみのととりかえておいたから、たりなくなったあの世(よ)のぶんを、きみのでおぎなっておかねばならないんだ。」

   蒲松齢(プー・ソンリン)=作 上野山賀子(うえのやま・よしこ)=編訳
   「首をすげかえる話」
   『中国の不思議な物語』 偕成社文庫 1994/04 所収


(J6) 中野 1988
 朱は突然、酔いの夢のなかで腹がチクチク痛むのを感じた。はっと目が覚める。陸が寝台(ねだい)の前にきちんと坐している。朱の腹を裂き、胃や腸をひっぱり出して、一本ずつそろえているではないか。これにはたまげて、
「これまで、何の仇(かたき)や怨みもなかったはずだ。それなのに、殺すつもりか。なぜだ?」
 陸は笑って、
「心配するなって。君のために、聡明な心を入れ替えてやってるだけなんだから」
 とて、悠々と腸を腹中に収めた。次いで、腹の傷口をくっつけ、纏足(てんそく)用の布を朱の腰にぐるぐる巻きつけた。(……)
 陸がなにやら肉塊を机の上に置いたので、何かとたずねた。
「これは、君の心臓さ。君の作文がへたくそなものだから、ははーん、心臓の毛穴がふさがっているなと察したわけだ。冥土にある何万もの心臓から、うまいぐあいに、ひとつ上等のをえらび取っておいたのだ。そいつを、君のと取り替えた、という次第さ。これはとっておいて、不足分の穴埋めにしよう」

   蒲松齢=作 中野美代子=訳 「生首交換」
   J・L・ボルヘス=編纂・序文 『聊斎志異』 バベルの図書館10
   国書刊行会 1988/12 所収


(J7) 丸山 1977
 ふと、朱爾旦(しゅじたん)はゆめのなかで、腹にかすかな痛みを感じた。はっと目をさまして見ると、陸判官(りくはんがん)がわきにすわって、朱爾旦の腹をさき、腸をとり出しているではないか。これにはおどろいた。
「せっかく友だちになったのに、なんのうらみがあってわたしを殺すのですか?」
 朱爾旦のことばに、陸判官はわらいながら、
「心配するな。きみのために、賢い心と取りかえているだけだよ。」
といって、ゆうゆうと腸を中におさめ、きず口をぴったりと合わせたあと、布をぐるぐる巻きつけた。(……)
 見ると、テーブルの上に肉のかたまりがひとつ置いてある。
「これは?」
「ああ、これがきみの心さ。きみの文章がまずいのは、この心の細いあながふさがっているせいなんだ。それで、あの世から優秀なのを一つえらんで、きみのととりかえたのさ。きみのは持って帰って、うめあわせておかなくてはな。」
[ルビを一部省略しました - tomoki y.]

   蒲松齢=作 丸山松幸(まるやま・まつゆき)=訳 「変身(陸判)」
   『清代の怪異小説—聊斎志異』 中国の古典文学13
   さ・え・ら書房 1977/03 所収


(J8) 増田+松枝+常石 1971
 突然、朱は夢の中で、臓腑(ぞうふ)がかすかに痛むのを覚え、はっと目を醒ましてみると、陸判官が寝床の前にきちんと腰掛けて、彼の腹を破って腸胃を取り出し、一本一本そろえていた。これにはさすがにびっくりして、
「これまで仇(あだ)も怨(うら)みもなかったはずだ。なぜ僕を殺すんです?」
 というと、判官は笑って、
「怖(こわ)がらなくてもいい。僕は君のために聡明(そうめい)な心と取り替えてやってるのさ」
 といいつつ、悠々(ゆうゆう)と腸を腹の中におしこみ、それがすむとまた皮を合わせ、最後に足を包む布(きれ)で朱の腰を巻きつけた。(……)朱は、判官が肉塊を机の上に置いているのを見て、何ですときくと、
「これは君の心なのさ。君の作文のまずいのは、つまり君の心の毛孔が細い塞(ふさ)がっているんだと思ったから、さっき冥界で何万何千もの心の中から優秀なのを一つ選び取ってきて、君のために取り替えて上げたのさ。」

   蒲松齢=作 増田渉+松枝茂夫+常石茂=訳 「首のすげかえ(陸判)」
   『聊斎志異(上)』 中国古典文学大系40(全60巻)
   平凡社 1970/04 所収


(J9) 田中 1970, 1987, etc.
 (……)朱はその時夢心地に臓腑に微かな痛みを覚えたので、眼を醒ました。陸が榻(ねだい)の前へ坐って、自分の胸を斬り裂いて腸胃を引き出し、それを一筋一筋整理しているところであった。朱は愕いて言った。
「何の怨みもないのに、なぜ僕を殺すのだ」
 陸は笑って言った。
「懼(おそ)れることはない、僕は君のために、聡明な心を入れかえているのだ」
 陸はしずかに腸(はらわた)を中へ納めて創口を合わせ、その後で足を包む布で朱の腹から腰のあたりを繃帯して手術を終ったが(……)。ふと見ると陸の置いた肉塊が案の上にあった。朱は怪しんで、
「それはなんだろう」
 と言って聞いた。陸は、
「それは君の心だよ、君の文章の拙いのは、君の心の毛穴が塞っているためだから、冥途に在る幾千万の心の中から、佳いのを一つ選びだして、君のために易(か)えたからね」

   田中貢太郎=著 「陸判(りくはん)」
   9a. 青空文庫(電子テキスト)2004/09/03 アップロード/公開
      入力:Hiroshi_O 校正:noriko saito
   9b.中国の怪談2』 河出文庫 1987/08 所収
   9c.支那怪談全集』 桃源社 1970/11 所収

   9a. の底本は 9b.9b. の親本は 9c.。引用は 9a. に拠りました。


(J10) 柴田 1956, 1987, etc.
 (……)ふと醉夢の中で臟腑に微痛を覺えたので眼を醒ましてみると、陸が牀(ねだい)の前に危坐(すわ)つて、朱の腔(はら)を破(や)ぶり、腸胃を取り出して一條(ひとすぢ)一條整理して居た。朱は愕(おどろ)いて、
 「何の仇も怨も無いのに、何故僕を殺すんだ」
 と尋ねると、陸は笑つて、
 「懼(おそ)れるな! 僕は君の爲に慧(りかう)な心と取易へて居るのだ」
 といつて、從容(しづか)に腸を入れて皮を合はせ、足を裹(つゝ)む布で朱の腰を束(しば)つて作用(しごと)を畢(をは)つたのである。(……)陸が几(つくゑ)の上に一片の肉塊を置いたのを見て、
 「何です」
 と問(き)くと、
 「これは君の心である。君の作文が不作(まづ)いのは君の心の毛竅(あな)が塞つてゐるためだから、いま冥間(めいど)にある千萬(たくさん)の心の中から、佳者(いゝの)を一枚揀(えら)びだして、君の心と取替へたのだ。そして闕數(たりなく)なつた冥(めいど)の分を補充するために、君の心が留(のこ)してあるのさ」

   蒲松齢=作 柴田天馬=訳 「陸判(りくはん)」
   10a. ザ・聊斎志異—聊斎志異全訳全一冊(大活字版)』 第三書館 2007/01 所収
   10b.ザ・聊斎志異—聊斎志異全訳全一冊(愛蔵版)』 第三書館 2004/07 所収
   10c.ザ・聊斎志異—聊斎志異全訳全一冊』 第三書館 1987/06 所収
   10d.完譯聊齋志異5』(全8巻) 角川文庫 1956/03 所収
 
   引用は 10d. に拠りました。


■現代中国語による再話 A retelling in contemporary Chinese

一天夜里,朱尔旦在梦中感到五脏微痛,睁眼一看,陆判正在整理他的肠胃,大惊失色,陆判笑道:"你的文章写不好,是你的心脏毛窍被塞。我在阴间挑了一枚给你换了。

   《聊斋志异》 陆判
   華夏經緯網 (www.huaxia.com)


 Audio 2 
聊斎志異 - 中国語原文オーディオブック
Liaozhai Zhiyi - Audiobook in Chinese read by davidfan
Librivoxlistmk
「陸判」を聞くには 14 - Lu Pan をクリック。下に引用する箇所の朗読は 3:18 あたりから。 Audio courtesy of LibriVox. To listen to Judge Lu, click 14 - Lu Pan. Reading of the excerpt below starts around 3:18.


■中国語原文(簡体字)The original text in simplified Chinese

[略]忽醉梦中,脏腹微痛。醒而视之,则陆危坐床前,破腔出肠胃,条条整理。愕曰:“夙无仇怨,何以见杀?”陆笑云:“勿惧!我与君易慧心耳。”从容纳肠已,复合之,末以裹足布束朱腰。作用毕,[略]见陆置肉块几上,问之。曰:“此君心也。作文不快,知君之毛窍塞耳。适在冥间,于千万心中,拣得佳者一枚,为君易之,留此以补缺数。”

   《聊斋志异》 蒲松龄 著 〈陆判〉
   E-text at 時代書城 (mypcera.com)


■中國語原文(繁體字)The original text in traditional Chinese

[略]忽醉夢中,覺臟腑微痛;醒而視之,則陸危坐床前,破腔出腸胃,條條整理。愕曰:「夙無仇怨,何以見殺?」陸笑云:「勿懼,我為君易慧心耳。」從容納腸已,復合之,末以裹足布束朱腰。作用畢,[略]見陸置肉塊几上,問之。曰:「此君心也。作文不快,知君之毛竅塞耳。適在冥間,於千萬心中,揀得佳者一枚,為君易之,留此以補闕數。」

   『聊齋誌異』 蒲松齡 著  第二卷 「陸判」
   E-text at 開放文學 (open-lit.com)


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表紙画像ギャラリー Cover photo gallery

a. Cuentosdeliaozhaii0n343 b. Bookstore_l_81 c. 12016199

d. 51t45cdqhtl_ss40 e. 200301000437 f. 094

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■外部リンク External links


■更新履歴 Change log

  • 2013/10/27 上野山賀子=編訳 1994/04 を追加しました。
  • 2013/09/26 英語版と中国語原文のオーディオブックをプレイリスト形式に改めました。 
  • 2013/08/04 目次と外部リンクの項を新設し、1) 王娟訳、2) Mair & Mair 訳、3) Lu, Chen, Yang & Yang 訳、4) H. A. Giles 訳の4種類の英訳を追加しました。また、英語版オーディオブックと中国語原文オーディオブックへのリンクも追加しました。
  • 2011/11/19 黒田真美子=現代語訳 2011/09/30 を追加しました。
  • 2010/09/29 聊斋志异 - 陸判の YouTube 動画を追加しました。
  • 2007/09/17 志村有弘=訳 2004/08、および中野美代子=訳 1988/12 を追加しました。
  • 2007/09/10 立間祥介=編訳 1997/07 を追加しました。

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Wednesday, 29 August 2007

Notes from a Small Island by Bill Bryson ビル・ブライソン 『ビル・ブライソンのイギリス見て歩き』

■本の表紙とオーディオブックのジャケット Book and Audiobook covers

a. Htbookcoverimage b. Bryson_bbc c. 9780380727506_0608400

↑ Click to enlarge ↑

a. ビル・ブライソンのイギリス見て歩き 中央公論社 (1998)
b. Notes from a Small Island (Radio Collection) BBC Audiobooks (2002)
c. Notes from a Small Island Avon Books (1997)


■日本語訳 Translation into Japanese

[略]イギリスで未知の人間とどういうふうに会話をするのか私には想像もつかない。アメリカならもちろんことは簡単である。ちょっと手を出して、「やあ、コンチワ。オレ、ブライソンっていう名前だけど、アンタ昨年はいくらもうかったかね?」というわけであとはとどまるところを知らずだ。

しかしイギリスでは(この場合はウェールズでは、と言っておこう)、少なくとも私にとってはであるが、こうはいかない。車中の会話はいつでも惨澹たる結果になる。後悔しなかったことはない。[略]いろいろ長い経験からおいおいわかってきたのは、車中で話しかけてくるのはこちらが願い下げたいタイプの人間であるということだ。というわけで私は最近ではもっぱら本と会話することにしている。それもできるだけ騒がしいタイプのジャン・モリスとかポール・セローのようなものにする。

   ビル・ブライソン=著 古川修(ふるかわ・しゅう)=訳
   『ビル・ブライソンのイギリス見て歩き』 中央公論社 1998/09 所収


■英語原文 The original text in English

[Omission] I don't know how you you strike up conversations with strangers in Britain. In America, of course, it's easy. You just offer a hand and say, "My name's Bryson. How much money did you make last year?" and the conversation never looks back from there.

But in England--or in this instance Wales--it's so hard, or at least it is for me. I've never had a train conversation that wasn't disastrous or at least regretted. [Omission] Over a long period of time it gradually dawned on me that the sort of person who will talk to you on a train is almost by definition the sort of person you don't want to talk to on a train, so these days I mostly keep my myself and rely for conversational entertainment on books by more loquacious types like Jan Morris and Paul Theroux.

   Notes from a Small Island (1995) by Bill Bryson
   * Excerpt at Durant Imboden's Europe for Visitors
   * Audiobook excerpt can be heard at the Random House website.


■テレビ版 『ビル・ブライソンのイギリス見て歩き』
 Notes from a Small Island: A television adaptation

Uploaded by BMalaya on Nov 13, 2007


■テレビ版について On the TV adaptation

『ビル・ブライソンのイギリス見て歩き』は、1990年代のなかばごろ英米でベストセラーになりました。当時わたしのいたロンドンでは、おもな書店へ行くとどこでも平積みになっていました。上の動画は、この本をベースにして制作されたテレビ番組の一部です。あいにく番組は原作ほどは人気がなかったようです。

[TV] Bill Bryson: Notes from a Small Island (1999)
   * Information on this programme at IMDb.
   * Information on DVD at Amazon.com.


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2011-12-01 Notes from a Small Island (1999) の YouTube 動画を追加しました。


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Tuesday, 28 August 2007

April 7, 1969, by Richard Brautigan リチャード・ブローティガン/高橋源一郎訳「1969年、4月7日」

Brautigan 518v7j2yksl Rommel_drives_on

           ↑ Click to enlarge ↑  

Leftロンメル進軍—リチャード・ブローティガン詩集』思潮社 (1991)
Centre Listening Richard Brautigan, Collector's Choice, audio CD (2005)
Right Rommel Drives on Deep into Egypt, Delacorte Press (1979)
 
 
■日本語訳 Translation into Japanese
 
 
今日はなんだか気分が悪いので

ひとつ詩でも書きたくなった
 
どんな詩でもいいんだ

この詩でもさ
 
 
 
   リチャード・ブローティガン=作 高橋源一郎=訳「1969年、4月7日」
   『ロンメル進軍—リチャード・ブローティガン詩集
   思潮社 1991/11 所収
 
 
 
■英語原文 The original text in English
 
 
I feel so bad today

that I want to write a poem.

I don't care: any poem, this

  poem.
 
 
 
   April 7, 1969
   from Rommel Drives on Deep into Egypt
   by Richard Brautigan
 
   E-text at Brautigan.net: Brautigan Bibliography and Archive
 
 
 
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Sunday, 26 August 2007

ストーンズ Stones

  
石橋クンは、とんねるずの身体の大きいほうの人。

石田三成は関ヶ原で徳川家康と戦って負けた人。

石ノ森章太郎は漫画家。

石野真子というアイドル歌手を覚えている人は歳がバレます。

力石徹は『あしたのジョー』に出てくるボクサー。

アニメーション付きのおしゃれな電子メールをときどき送ってくれた美しい女性。

彼女の名前は、たしか石塚さん。いま何してるんだろう。

五右衛門風呂で有名なのは石川さん。

石川県は大リーグ松井秀喜選手の出身地。

東北の出身で、金田一さんやほかの人に借金をしまくって、

女遊びをして病気で早死にしたのも、石川さん。ときどき歌も詠んだそうです。

ミック・ジャガーは「ころがる石ども」という名前のロック・バンドのボーカルの人。

口が大きくて、唇に特徴があって、昔から今にいたるまで、

やたら女にモテるという評判。もう60を過ぎたジジイだというのに。

あやかりたい。

石橋をたたいたら、こわれて落ちて、川を渡れませんでした。

石の上にも三年いたら、足が腐って死んでしまいましたとさ。 おしまい
 
 
 
Tomoki Yamabayashi 
 
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2007/08/26 tomokilog にアップロード。

2006/05/25 もとの文章を書く。

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Thursday, 23 August 2007

蒲松齢 「書癡/書痴」(『聊斎志異』より) Strange Stories from a Chinese Studio by Pu Songling (2)

           目次 Table of Contents

   ■はじめに Introduction
    Cover Photos  表紙画像
   ■現代日本語訳 Translations into contemporary Japanese
     (1) 竹田+黒田 2009
     (2) 立間 1997
     (3) 増田+松枝+常石 1971
     (4) 柴田 1955, 1987, etc.
     (5) 佐藤 1922, 1998
     Video   《鬼屋麗人》 (1970)——楊麗花電影精選
   ■中国語原文(簡体字)The original text in simplified Chinese
   ■中國語原文(繁體字)The original text in traditional Chinese
   ■外部リンク External links
   ■更新履歴 Change log


■はじめに Introduction

本を読むしか能のない、うぶで不粋で世間知らずの独身男——その名は郎玉柱(ろう・ぎょくちゅう)。そんな郎のまえに、ある日、本のページの間から絶世の美女が姿を現わす。郎は女に恋をして、ふたりは……。

清代中国版「奥さまは魔女」といった趣きもある、ちょっとエッチで、くすっと笑える小話。でも、結末は苦い。


 Cover Photos  表紙画像

↓ クリックして拡大 Click to enlarge ↓

a. 2877304655 b. Iwanami_bunko c. S00572


■現代日本語訳 Translations into contemporary Japanese

(1) 竹田+黒田 2009
 ある夜、郎は彼女に言った。
 「だいたい、人は、男女が同居すれば子供が生まれている。今、君と暮らして大分たつのに、どうして生まれないのだろう。」
 女は笑って言った。
 「あなたは、毎日、本ばかり読んでいるけれど、最初から、それは無駄と言ったでしょ。未だに〝夫婦〟というこの一章さえも、まだ理解していないなんて、〝枕席〟というこの二字は奥が深いのよ。」
 郎は驚いて尋ねた。
 「一体どんな奥の深さだい?」
 女は笑って答えなかったが、しばらくして、そっと彼を迎えて身を寄せた。郎は歓びを極めて言った。
 「夫婦の楽しみが、言葉では言えないほどだとは思いもよらなかったぞ。」
 そこで、人に会えば、それを言い、聞いた者は、誰しも笑いを隠さなかった。[以下略]

  • 蒲松齢(ほ・しょうれい) 『聊斎志異』 「書痴(しょち)」 竹田晃(たけだ・あきら)+黒田真美子(くろだ・まみこ)=編 竹田晃+黒田真美子=著 『聊斎志異2 清代2』 中国古典小説選 10 明治書院 2009/10/10
  • 底本: 会校会注会評本 『聊斎志異』 (張友鶴輯校、上海古籍出版社 1986-08 第一版、1987-10 第四次印刷)。本書は、1963年、中華書局上海編輯所で出版された張友鶴輯校、いわゆる三会本12巻に章培恒「新序」を付したもの。

(2) 立間 1997
 郎(ろう)はある夜、如玉(じょぎょく)に言った。
「世間では男と女が一緒にいれば必ず子供ができるものなのに、君ともう久しく一緒に暮らしているのにどうしてできないのだろう」
「ほほほ、わたしは毎日のお勉強など詮ないことと申しましたが、まったく、この年になって夫妻のこともご存知ないのですね。枕席という二字には別の意味があるのですわよ」
「えっ、別の意味が…」
 郎が驚くと、如玉は笑うばかりだったが、ややあって、そっと手をさしのべてきて導きおさめた。郎は感極まり、
「夫婦の楽しみがこんなに楽しいものとは思わなかった」
 と叫んだものだったが、以来、会う人ごとにこれを話したので、聞いて吹き出さない者はなかった。[以下略]

  • 蒲松齢(ほ・しょうれい)=作 立間祥介(たつま・よしすけ)=編訳 「書中の美女——書痴(しょち)」 『聊斎志異(下)』 全2冊 岩波文庫 1997/02

(3) 増田+松枝+常石 1971
 彼はある夜、女に、
「だいたい夫婦がいっしょにくらせば、子供が生まれるものなのに、いまあなたとずいぶんながい間いっしょにいながら、どうして子供が生まれないのだろう?」
 とたずねた。女は笑って言った。
「あなたは毎日、書物ばかりお読みになっています。それを私は無益のことだといつも言っています。夫妻の間のことも、まだご存じないのですが、それは夜の臥所(ふしど)ということに工夫がいるのです」
「どんな工夫です?」
 女は笑って答えなかったが、しばらくしてから、そっと彼を迎えてそれを教えた。彼はひどく楽しかった。そして言った。
「私は夫婦の楽しみが、口に言えない楽しいものであることを知らなかった」
 そして逢う人ごとに、それを話したので、口をおおって可笑(おか)しがらない者はなかった。[以下略]

  • 蒲松齢=作 増田渉(ますだ・わたる)+松枝茂夫(まつえだ・しげお)+常石茂(つねいし・しげる)=訳 「書物気狂い(書癡)」 『聊斎志異(下)』 中国古典文学大系41(全60巻) 平凡社 1971/04

(4) 柴田 1955, 1987, etc.
 一夜(あるよ)、郎(らう)は女にむかひ、
 「一凡(いつたい)、人は、男と女が同(いつしよ)に居(ゐ)れば子を生むのに、卿(きみ)と久(なが)いこと同(いつしよ)に居ながら、何(ど)うして子どもができないのだらうね」
 といふので、女は笑つた、
 「君(あなた)が毎日書(ほん)を讀むのを、妾(あたし)固(もと)から無益なことだと云つてるでせう。今でも未だ、夫妻の一章すら悟(わか)らないぢやありませんか。枕席の二字には工夫が有るのよ」
 郎は驚いて、
 「何(ど)ういふ工夫があるんだ?」
 と問(き)いた。女は笑つて何とも言(い)はなかつたが、少間(しばらく)してから、潛(こつそ)り迎就之(をしへ)ると、郎は樂しさ極(きは)まつて、
 「我(ぼく)は夫婦の樂しみが、言(ことば)で傅へられないものとは意(おも)はなかつたよ」
 と曰(い)つたが、それから人に逢へば其の話をするのを[以下略]


(5) 佐藤 1922, 1998
 或る夜、郎は彼の女に言った。
『男と女とが一しよに住んでゐると子供が生れるといふ。私はお前と随分永い間住んでゐるのに私たちに子供がないのはどういふ理由(わけ)だらうか?』
 彼の女は笑ひながら言つた。
『だから私は、あなたがそんなに御勉強なさるのは無駄だと云つたではありませんか。あなたは今まできつと一度だつて「男と女」との章をほんたうにわかつて読んだことはないでせう。枕と蓆(むしろ)といふ二つの言葉は或る仕事を意味してゐるのでございます。』
 彼は驚いてそれはどんな仕事かと訊ねた。彼の女は笑つて黙つてしまつた。しかし彼が、それから、それについて彼の女の教示を受けた時、彼は総ての度を越えて喜んだ。
『私は、今までこんな深い、こんな深い、こんな得も言はれぬ喜(よろこび)を知らなかつた。』
 彼は逢ふ人毎(ごと)にその事を語つた。それを聞いた人々は皆んな彼を笑つた。[以下略]

  • 佐藤春夫=著 「書痴」
  • 初出は b。引用は a. 臨川書店 1998/11 に拠りました。原文にない改行を追加しました。

  Video  
《鬼屋麗人》 (1970)——楊麗花電影精選

『聊斎志異』のなかの「書痴」を脚色した作品。出演: 楊麗花張美瑤


■中国語原文(簡体字)The original text in simplified Chinese

郎一夜谓女曰:“凡人男女同居则生子;今与卿居久,何不然也?”
女笑曰:“君日读书,妾固谓无益;今即夫妇一章,尚未了悟,枕席二字有工夫。”
郎惊问:“何工夫?”女笑不言;少间,潜迎就之。郎乐极,曰:“我不意夫妇之乐,有不可言传者。”
于是逢人辄道,无有不掩口者。[略]


■中國語原文(繁體字)The original text in traditional Chinese

郎一夜謂女曰:「凡人男女同居則生子;今與卿居久,何不然也?」
女笑曰:「君日讀書,妾固謂無益。今即夫婦一章,尚未了悟,枕席二字有工夫。」
郎驚問:「何工夫?」女笑不言。少間,潛迎就之。郎樂極,曰:「我不意夫婦之樂,有不可言傳者。」
於是逢人輒道,無有不掩口者。[略]


■外部リンク External links


■更新履歴 Change log

  • 2013/08/04 目次と外部リンクの項を新設しました。
  • 2011/11/19 《鬼屋麗人》 (1970) の YouTube 動画と、竹田晃+黒田真美子=著 2009/10/10 を追加しました。
  • 2007/11/18 佐藤春夫=著 1998/11, 1922/08/01 を追加しました。

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(1) Pu Songling

(2) Strange Stories from a Chinese Studio

(3) Strange Tales from the Liaozhai Studio

■和書 Books in Japanese

  

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Wednesday, 22 August 2007

三島由紀夫から北杜夫への手紙 1966/07/16 A letter from Yukio Mishima to Morio Kita, 16 July 1966

           目次 Table of Contents

    Image Gallery  DVDのジャケットと全集本の函 DVD covers & Dustbox
   ■日本語原文 The original text in Japanese
   ■北杜夫と三島 Morio Kita and Mishima
   ■大江健三郎と三島 Kenzaburo Oe and Mishima
   ■「危険な兆候」"Dangerous symptoms"
    Book Covers   『三島由紀夫の家』 Yukio Mishima's House
   ■三島邸周辺の散策案内 Guide for walking around Mishima's house
   ■その他の外部リンク Other external links
   ■更新履歴 Change log


 Image Gallery  DVDのジャケットと全集本の函 DVD covers and a Dustbox

↓ クリックして拡大 Click to enlarge ↓

a. A_mishima_schrader b. B_mishima_zenshu_38 c. C_afraid_to_die


■日本語原文 The original text in Japanese

 昭和四十一年七月十六日(封書)

          世田谷区松原6—16—5 北杜夫
          大田区南馬込4丁目32番8号 三島由紀夫

 前略

(……)

 ——それはさうと大江健三郎自殺未遂といふ噂をききましたが本当でせうか? 彼にはたしかに何か、精神病質の危険な兆候が感じられます。
 小生も躁病が極度に達し、つひにステージで歌をうたひました。しかしカーテン・コールで出ると、女の子が一せいにキャーッと云つてくれたので感激しました。あのキャーッといふ声を一度体に受けてみたいと思つてゐたので宿望を達しました。あの声は一体どこから出るのでせうか。
 貴兄の躁病の御文章をよんで、大笑ひ、といふのも、医者の病気ほど愉快なものはないからです。御病気悪化の一助にもと、イヂワル・ヂヂイがこの手紙を書きました。匆ゝ
   七月十六日    三島由紀夫
  北杜夫様

  • 三島由紀夫(みしま・ゆきお)=著 『決定版 三島由紀夫全集38 書簡』(全42巻) 新潮社 2004/03 所収
  • 原文の住所表示の漢数字部分を算用数字に改めました。横書きだと「一(漢字のイチ)」と「—(横棒)」の区別がつきませんから。

■北杜夫と三島 Morio Kita and Mishima

この決定版三島全集には、三島由紀夫(1925-1970)から 北杜夫(1927-2011)に宛てた手紙が10通(葉書5通、封書5通)収録されています。北杜夫の代表作『楡家の人びと』(1963) は、三島によって激賞されました。
 
   「この小説の出現によって、日本文学は真に市民的な作品をはじめて
    持ち、小説というものの正統性(オーソドクシー)を証明するのは、
    その市民性に他(ほか)ならないことを学んだといえる」

この三島による賛辞は、新潮文庫版『楡家の人びと(下)』の「解説」(1971/05) で、辻邦生(1925-1999)が引用しているものです。「オーソドクシー」? 「市民性」? よく存じません。どういう意味であれ、1,500枚をこえる、この大作を世に知らしめる、史上最強の広告コピーとなったことは、まちがいないでしょう。
 
なお、北杜夫は「次第に政治的に過激になっていった晩年の三島とは疎遠だった」そうです(三島由紀夫 - Wikipedia|関連人物)。


■大江健三郎と三島 Kenzaburo Oe and Mishima

三島由紀夫と 大江健三郎(1935-  )とのあいだに、どの程度の交流があったかは存じません。ウィキペディアには、こうあります。

   1960年代に、三島由紀夫がノーベル賞を逃した時、「次は大江君だよ」
   と、当時まだ新進であった大江の名を挙げた。

   大江が実際にノーベル賞を受賞するのは三島の発言から30年余り経って
   の事となる。三島は大江を自邸のパーティに招くほど親しくしていた
   時期もあったが、政治思想の右傾化と共に疎遠になった。
   (大江健三郎 - Wikipedia|エピソード

三島から大江宛の書簡が何通存在したかも存じません。いずれにせよ、三島由紀夫の141名宛て806通の書簡を収めた上の全集に、大江健三郎宛てのものは1通も含まれていません。全集「解題」によれば、たとえば次のような場合、「書簡の存在が明らかでありながら、収録を見送らざるを得なかった」としています。いずれも当然と思われるケースです。

  1. 三島本人のプライバシーにかかわる場合 
  2. 所蔵者の許可が得られなかった場合
  3. 所蔵者やその消息が不明の場合

■「危険な兆候」"Dangerous symptoms"

三島が大江を評するのに用いた「精神病質の危険な兆候」という表現は、いまとなっては皮肉な印象を与えます。上の異様に躁的な、おどけた筆致の手紙を北杜夫に送ってから4年後に、三島は陸上自衛隊 市ヶ谷駐屯地 で、あの事件 を起こして45年の生涯を自ら閉じました。

「精神病質」かどうかはともかく、「危険な兆候」を実際に示したのは、はたして大江のほうだったか、三島のほうだったか?


 Book Covers  三島由紀夫の家 Yukio Mishima's House

↓ クリックして拡大 Click to enlarge ↓

a. Mishima_yukio_no_ie_fukyuuban_20009 b. Mishima_yukio_no_ie_1995_97845681_2

  • 三島由紀夫の家 普及版 (2000) 篠山紀信=撮影 篠田達美=文 石黒紀夫=アートディレクション 美術出版社 下の b. を内容はそのままで、サイズをB5判からA5判に改め、縮刷したもの。
  • 三島由紀夫の家 (1995) 篠山紀信=撮影 篠田達美=文 石黒紀夫=アートディレクション 美術出版社

■三島邸周辺の散策案内 Guide for walking around Mishima's house
Magome_bunshimura_sansaku_map
Image source: Magome Bunshimura 資料提供:社団法人大森倶楽部 No copyright infringement intended. Copyright (C) 1997-2013 Magome Bunshimura All Rights Reserved. 最新版マップ(100円)は大田区役所 区政情報コーナーで購入可能。


■その他の外部リンク Other external links


■更新履歴 Change log

  • 2013/05/18 『三島由紀夫の家 普及版』 (2000) と『三島由紀夫の家』 (1995) の表紙画像を追加しました。また、散策マップの情報を補足しました。
  • 2013/05/16 目次と「三島邸周辺の散策案内」の項を新設しました。
  • 2011/10/27 北杜夫氏は2011年10月24日に亡くなられました。訃報など、関連するリンクを追加しました。氏のご冥福をお祈りします。
  • 2011/08/24 外部リンクの項を新設しました。

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■DVD

  

  

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Sunday, 19 August 2007

溺死しないための心得(ホミサイドラボ『人殺し大百科』より)

Wilson_modern_murder E50b_1 4887188854

           ↑ Click to enlarge ↑  

Left コリン・ウィルソン+ドナルド・シーマン『現代殺人百科』青土社 新装版 (2004) 原書は Encyclopedia of Modern Murder: 1962-1982, by Colin Wilson & Donald Seaman (1984)
Centre Les grandes affaires criminelles par Alain Monestier, Bordas (1988) 邦訳は、アラン・モネスティエ『世界犯罪者列伝—悪のスーパースターたち』JICC出版局 (1991)
Right ホミサイドラボ『人殺し大百科』データハウス (2007)
 
 
■日本語本文 The text in Japanese
 
 
溺死しないための心得

これまで衣類は泳ぎの邪魔になるだけだと教えられてきた。泳ぎ達者な者に服を着たまま泳いでもらうと確かに能力が発揮できていない。泳ごうとするから問題があるのだ。

水難救助法には《着衣泳》という護身技術があり、泳ぐというよりも《背浮き》の姿勢で浮くことを強調している。浮力の強い靴(スニーカーなど)や服(コートなど)には繊維層の間に空気が蓄えられているのでむしろ着ていた方がよいというのだ。

水の中に落ちた人が手足をばたつかせると大量の泡が発生する。泡の正体は衣類の繊維層に隠れていた空気だ。着水後、《背浮き》の姿勢をとっていたならば濡れた衣類が浮力を逃がさず浮いていることができる。また肌が水と直接触れないので多少なりとも保温効果も期待できるはずだ。

   3章 溺死と溺殺のプロセス
   《ボートから誤って落ちた》を検証する
   ホミサイドラボ=著『人殺し大百科
   データハウス 2007/01
 
 
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鱧(はも)

Hamootoshi001
Image source: 京料理 懐石 大喜久
 
 
 
 
鱧(はも)のフライなら、ときどき食べる。

でも鱧の落としは、もう長いあいだ食べていない。

夏になると、京都の人は「ハモ、ハモ」と大騒ぎする。

ぼくには分からない。鱧って、そんな大層な食べ物なのか?
 
 
 
 
 
 
魚へんに豊か。

鱧の落とし——ちょっと食べたい。
 
 
 
 
Tomoki Yamabayashi
 
 
■更新履歴 Change log

2007/08/19 tomokilog にアップロード。

2007/07/19 もとの文章を書く。

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Friday, 17 August 2007

Pax Britannica by Jan Morris ジャン・モリス 『パックス・ブリタニカ』

 Images 
表紙画像 Cover photos

a. Britannica_japanese b. Pax_britannica c. Jan_morris

↑ クリックして拡大 Click to enlarge ↑

■日本語訳 Translation into Japanese

無造作に召使いを叩く習慣は、帝国各地にしぶとく生き残った。一九四六年に、エジプトで最初の一週間を過ごしていた私は、とりわけ物静かで優しげな英国人大佐と一緒に、ポートサイドからカイロ行きの列車に乗った。指定の席にいこうと通路を歩いていくと、コンパートメントのなかの客に軽食を差し出しているエジプト人に、道をふさがれた。大佐は即座に、見たところなんのためらいもなく、エジプト人を蹴飛ばして横にどかせた。この種の、いかにも帝国的光景を見たのははじめてだった。人が変わったような大佐の振るまいと、大佐のひと蹴りを受け入れて道を空(あ)けたエジプト人の、何事もなかったような無表情さは、いまも忘れられない。


■英語原文 The original text in English

Striking the servants, in an off-hand way, died hard in the Empire. In 1946, during my first week in Egypt, I boarded the Cairo train in Port Said with an English colonel of particular gentleness of manner and sweetness of disposition. As we walked along the corridor to find our seat we found our way blocked by an Egyptian, offering refreshments to people inside a compartment. Without a pause, apparently without a second thought, the colonel kicked him, quite hard and quite effectively, out of our way. I was new to the imperial scenes, and I have never forgotten this astonishing change in my companion's character, nor the absolute blank indifference with which the Egyptian accepted the kick, and moved.


 Audio 
92Y/The Paris Review Interview Series: Jan Morris

Uploaded to YouTube by 92Y Plus on 24 Mar 2014


■ジャン・モリス Jan Morris

1926年、英国、サマセット州 に生まれる。アングロ・ウェルッシュ。欧米では圧倒的人気を誇る歴史・紀行作家。本書と共にパックス・ブリタニカ3部作を成す Heaven's Command, Farewell the Trumpets のほか、Trieste and the Meaning of Nowhere, ヴェネツィアスペインカナダシドニー香港 をめぐる歴史・紀行作品、自伝的作品 Conundrum などがある。邦訳では『ヴェネツィア帝国への旅』(2001年、東京書籍刊)など。1985年、Last Letters from Havブッカー賞にノミネート される。英国、王立文学会会員

  • 『パックス・ブリタニカ(上・下)』の奥付およびカバー折返しに記載されたプロフィールから、全文を引用しました。ハイパーリンクは tomoki y. が勝手に張ったものです。
  • なお、自伝的作品 Conundrum は、かつて竹内泰之氏による邦訳が、『苦悩—ある性転換者の告白』(1976年、立風書房刊)という題で出ていましたが、長らく絶版になっています。お読みになりたい方は図書館・古本屋をあたるか、もしくは 復刊ドットコム に復刊リクエストの投票をなさってください。

■タイムズ紙「1945年以降の英国作家ベスト50」で15位

去る2008年1月に英タイムズ紙が発表した「1945年以降の英国作家ベスト50」 (The 50 greatest British writers since 1945) のリストで、ジャン・モリスは15位にランク入りしました。この順位は、並大抵ではありません。なぜなら、つぎに挙げる有名作家たちよりも上位だったからです。

ロアルド・ダール(16位)、アンソニー・バージェス(17位)、ジョン・ル・カレ(22位)、J・G・バラード(27位)、カズオ・イシグロ(32位)、アニータ・ブルックナー(33位)、J・K・ローリング(42位)、ジュリアン・バーンズ(44位)、ブルース・チャトウィン(46位)。


■外部リンク External links


■更新履歴 Change log

  • 2014/12/02 92Yの対談の YouTube 画面を追加しました。
  • 2008/10/11 タイムズ紙「1945年以降の英国作家ベスト50」に関する項を追加しました。
  • 2007/08/18 絶版になっている『苦悩—ある性転換者の告白』について、復刊ドットコムへの復刊リクエストに関する情報を追加しました。

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(3) パックス・ブリタニカ

  

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Thursday, 16 August 2007

タマネギみたいな私

 
Matphotoviatka_2
 
 
 
私の名前はサオリ。27歳。
私は画家。売れない画家だ。

私は人物画しか描かない。
しかも人物画のなかでも、自画像しか描かない。売れるわけがない。

自画像のなかで、私は自画像を描くポーズをとっている。
自画像のなかの自画像には、自画像を描く自分の姿がいる。意味わかるわね?
 
 
こういうのって昔からよくあるよね。
子供のころ見た化学調味料の広告のイラストだったかなあ。
それとか「入れ子」っていうの?
あのロシアのお土産で、人形の中に人形、そのまた中に人形が入っている
マトリョーシカってやつ。
 
 
私の絵は売れない。売れないから、もっぱら副業で生活費をひねりだしている。
私の副業はモデル。ヌードモデル。毎週火曜と木曜の午後に
芸大の教室へ行って、ポーズをとる。
あのポーズってのが、なぜか昔から決まりきったようで、わざとらしいのよね。

私はヌードで自画像を描く女性画家のポーズをとりたい。
そしてそれを学生たちに描いてもらいたい。
10人の芸大生が描く10枚の裸婦像の中には、10人の私がいて、
その10人の私は、それぞれ1枚の自画像を描いている。
それらの裸婦像の中の自画像には、さらに自画像を描く私の姿がいる。
その自画像の中には、また自画像が……。
 
 
ヌードのマトリョーシカ。私はおもしろいと思うんだけどなあ。
でも、女性美とか肉体美にはあまり関係がないポーズだなあ。
化学調味料の広告イラストみたいだ。

私はタマネギみたいな自画像が描きたい。
むいてもむいても中から顔を出すのは私。
くどい自画像。しつこいセルフ・ポートレート。
タマネギみたいな私。
 
 
 
Tomoki Yamabayashi
 
 
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2007/08/16 tomokilog にアップロード。

2003/07/03 もとの作品を書く。
 
 

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Tuesday, 14 August 2007

The Man Upstairs by P. G. Wodehouse P・G・ウドハウス 「上の部屋の男」「階上の男」

 Images 
表紙画像 Cover photos

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a. 3227010 b. 1803 c. 1802

■日本語訳 Translation into Japanese

(1) 陰陽師 2005
人生には、決して謝ることなかれ、という黄金律がある。正しい人間なら、他人に謝罪を求めるようなことはしないし、よこしまな人間は、謝罪につけこもうとする。

   P・G・ウッドハウス=著 陰陽師=訳 「階上の男
   ghostbuster's book web.
   初出 2005/03/08 - 2005/03/15
   改訂 2005/03/18


(2) 小野寺 1987
この世では、ぜったいに謝らないほうが賢明である。ちゃんとした人間は人に謝罪など求めないし、悪質な人間はそれにつけこもうとするのだから。
 
   P・G・ウドハウス=著 小野寺健(おのでら・たけし)=訳
   「上の部屋の男」
   小野寺健=編訳 『20世紀イギリス短篇選(上)
   岩波文庫 1987/07 所収


(3) 井上 1961
[訳文は追って挿入するつもりです - tomoki y.]

   P・G・ウッドハウス=著 井上一夫=訳 「階上の男」
   早川書房 「ミステリマガジン」 1961年10月号(64号)収載


 Audio 
英語原文のオーディオブック 朗読: マイク・ハリス
Audiobook in English read by Mike Harris.

下の引用箇所の朗読は 16:00 から始まります。 Uploaded to YouTube by FULL audio books for everyone on 3 Jul 2014. Audio courtesy of LibiVox. Reading of the excerpt below starts at 16:00.


■英語原文 The original text in English

It is a good rule in life never to apologize. The right sort of people do not want apologies, and the wrong sort take a mean advantage of them.

   The Man Upstairs (1914) by P.G. Wodehouse
   The story originally appeared in:
   UK: March 1910 issue of Strand Magazine
   US: March 1910 issue of Cosmopolitan

   E-text at:
   * The Russian Wodehouse Society
   * Project Gutenberg
   * Infomotions, Inc.


■更新履歴 Change log

2013/05/19 オーディオブック(英文)の YouTube 画面を追加しました。
2007/09/15 陰陽師=訳 2005/03 を追加しました。


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Monday, 13 August 2007

蒲松齢 「黄英」(『聊斎志異』より) Strange Stories from a Chinese Studio by Pu Songling (1)

 Video 
[ja] 山東省淄博市にある蒲松齡紀念館
[zh] 山東淄博 蒲松齡紀念館
[en] Pu Songling Museum in Zibo, Shandong Province

Uploaded to YouTube by lioncyber on 31 Mar 2008.
蒲松龄故居 - 山東省人民政府台灣事務辦公室(華夏經緯網)
蒲松龄故居 - 维基百科
蒲松齡紀念館


 Images 
表紙画像 Cover photos

a. 4807404067 b. Iwanami_shonen_bunko c. Babel10
↑ クリックして拡大 Click to enlarge ↑

■英訳 Translation into English

One day T'ao said to Ma, 'Taking advantage of your kindness, I daily enjoy hospitality from you, who are not a rich man yourself. This cannot go on for ever, and I propose to make a livelihood by selling chrysanthemums.' Ma, ever aloof and disdainful of the crowd, heard T'ao with disgust, observing, 'I thought you were a recluse above worldly considerations, and content with poverty. If you do what you propose, you would be converting your hermitage into a bazaar and a shame to your chrysanthemums,' T'ao replied, laughing; 'He is not covetous who lives by his own exertions; nor can he be considered vulgar who sells flowers as his occupation. Though the pursuit of wealth is far from admirable, there is little merit in the pursuit of poverty.'

   Yellow Pride
   from Liao-chai chih-i by Pu Songling
   Chinese Literature 3: Tales of the Supernatural
   Edited by H. C. Chang
   New York : Columbia University Press, 1984/10


■日本語訳 Translations into Japanese

(1) 竹田+黒田 2009、黒田 2011
 ある日のこと、陶は馬に言った。
 「あなたの家は、元々そんなに裕福ではないのに、僕は毎日のように、御馳走に与って迷惑をかけている。けれど、そんなことばかりしてはいられないので、菊を売って暮らしをたてようと思うんだ。」
 馬は、生来、節操堅固な男なので、陶の言葉を聞くと、ひどく軽蔑して言った。
 「僕は、君という人は風流な高潔の君子で、貧乏にも心安らかでおられると思ってきた。今、そんなことをおっしゃったら、隠遁の象徴の菊を俗世間に貶めて、菊を侮辱することになりますぞ。」
 陶は笑って答えた。
 「自分が働いて暮らしていくことは、貪欲ということではないでしょうし、花を売るのを仕事とするのは、俗なことではないでしょ。人は、もちろん、あくせく富を求めるべきではないけど、だからといって、貧乏を求める必要もないでしょ。」

   蒲松齢(ほ・しょうれい) 『聊斎志異』 「黄英(こうえい)」
   a. 楊逸(ヤン・イー)=著 黒田真美子(くろだ・まみこ)=現代語訳
     『楊逸が読む聊斎志異』 明治書院 2011/09/30 所収
   b. 竹田晃(たけだ・あきら)+黒田真美子=編 竹田晃+黒田真美子=著
     『聊斎志異2 清代2』 中国古典小説選10 明治書院 2009/10/10 所収

   引用は b. に拠りました。b. の底本は次の書物:
   会校会注会評本 『聊斎志異』 (張友鶴輯校、上海古籍出版社 
   1986-08 第一版、1987-10 第四次印刷)。本書は、1963年、中華書局
   上海編輯所で出版された張友鶴輯校、いわゆる三会本12巻に、章培恒
   「新序」を付したもの。


(2) 志村 2004
 ある日のこと、陶(とう)が馬(ば)に言った。
「あなたの家はもともと豊かではないのに、わたしたちは毎日食べものを世話になっている。いつまでも迷惑をかけてばかりはいられないので、さしあたっては菊を売って暮らしてゆこうと思います」
 馬には意固地な性格の部分があったので、陶の言い分をひどく卑しいと感じた。
「わたしはあなたのことを風流な心のある、高潔な人柄だと思っていた。いまさらそのようなことを言うのは、高雅な菊を卑俗なものにするようで、菊の花を辱めることになる」
 陶は笑って答えた。
「自分で食べていくのです。貪(むさぼ)るということではありません。花を売ることで生活してゆくというのは、卑俗なことではないでしょう。人間はもとよりかりそめにも富を求めてはいけないけれど、しかし、自分の方から進んで貧を求める必要もないと思います」

   蒲松齢(ほ・しょうれい)=著 志村有弘(しむら・くにひろ)=訳
   「黄英(こうえい)」
   『聊斎志異の怪』 角川ソフィア文庫 2004/08 所収


(3) 立間 1997/07
 ある日、ふと、三郎(さんろう)がいった。
 「お宅も決して豊かではないのに、こう毎日のように押しかけてご馳走になっている訳にはまいりません。そこで考えたのですが、生活費の足しに菊を売ろうとおもうのですが、いかがでしょう」
 「菊を売るなんて、とんでもないことです。わたしは君がどんな貧乏暮らしをしても、のんびりと菊造りを楽しむことのできる風流な人だとおもっていたんですよ。それが菊を売り物にしようというのですか。それではせっかくの高尚な趣味を金儲けのタネにしようというもの、美しい菊をはずかしめるというものですよ」
 「そうでしょうか。生活のために働くのは決して貪欲(どんよく)とはいえませんし、花を売って生業(なりわい)とするのは、とりたてていやしい仕事とはいえないでしょう。もちろん必要以上の金を儲けようとするのは欲張りというものですが、だからといって、わざわざ貧乏生活をすることもないのではありませんか」
[ルビを一部省略しました - tomoki y.]

   蒲松齢(ほ・しょうれい)=作 立間祥介(たつま・よしすけ)=編訳
   「菊の姉弟」 (原題・黄英)
   『聊斎志異』 岩波少年文庫 1997/07 所収


(4) 立間 1997/02
 ある日、陶がふと言い出した。
「お宅も決して豊かではないのに、こう毎日のように押し掛けてご馳走になっている訳にはまいりません。そこで考えたのですが、菊を売ればわたしどもも食っていけると思います」
 馬は狷介な性分だったので、陶の言葉に憤然とした。
「わたしは君が風流な人で、貧乏暮らしに甘んずることのできる人だと思っていたが、何です、それでは東籬(とうり)を市井(しせい)に替えるようなもの、菊を辱めるというものですよ」
「生活のために働くのは貪欲ではないし、花を売って生業(なりわい)とするのは、俗とは言えないでしょう。人はもとより富貴を求めるべきではありませんが、かといって望んで貧乏することもないでしょう」

   蒲松齢(ほ・しょうれい)=作 立間祥介(たつま・よしすけ)=編訳
   「菊の姉弟——黄英(こうえい)」
   『聊斎志異(下)』 全2冊 岩波文庫 1997/02 所収


(5) 保永 1996
(……)ある日、陶三郎(とうさぶろう)は、馬子才(ばしさい)にむかって、いった。
「あなたのところも、くらしがあまりゆたかでないのに、いつも食べることで、あなたにごめいわくをかけています。このまま、ごやっかいになっているのは心苦しいので、さしあたり、きくを売って、くらしをたてたいと思います。」
 馬子才は、もともとがんこで、つむじまがりなところがあった。陶三郎のことばをきくと、にわかに、さげすんだ顔つきになって、
「きみは、花を愛し、自然をたのしむ人で、そのためには、びんぼうにもたえられる人だと、ぼくは思っていました。いま、そのようなことをいいだされるのは、気高いきくの花をはずかしめるものです。」
 陶三郎は、わらっていった。
「自分が、たんせいして作ったもので食べていくのは、いやしいことではないでしょう。花を売るのも、りっぱな職業です。人間は金持ちになることだけをねがってはいけません。けれども、また、むりにびんぼうになる必要もないでしょう。」
[原文は総ルビ]

   蒲松齢(ほ・しょうれい)=作 保永貞夫(やすなが・さだお)=訳
   「きくの精のきょうだい」
   ディケンズ〔ほか〕=作 白木茂〔ほか〕=訳
   『魔のトンネル』 講談社青い鳥文庫Kシリーズ5 1996/09 所収


(6) 金 1989
 ある日、陶は馬子才にこう言った。
 「あなたの家はもとから豊かではないのに、わたしは知りあいというだけで食事の厄介にまでなっています。こんなことがいつまでもつづけられるものではありません。今後のことを考えてみましたが、菊を売れば十分食べてゆけるでしょう」
 馬子才は元来が依怙地(いこじ)な性格なので、陶のこの言葉を聞くと、大いにいやしんで、
 「わたしは、あなたを風流高雅の士で、当然、貧乏にも安んじることのできる方だとばかり思っておりました。しかし、そのようなことをおっしゃるようでは、あの陶淵明が菊をとった東の籬(まがき)を町なかの市場にしてしまうようなもので、菊の花を辱(はずか)しめることになりましょう」
 と言った。すると陶は笑って言った。
 「自分の力で働いて食べてゆくのは貪欲(どんよく)ではありませんし、花を売るのを業(なりわい)とするのは俗ではないでしょう。人はもとよりかりそめに富(とみ)を求めてはなりませんが、かといって、つとめて貧乏になる必要もないのです」

   蒲松齢=作 金文京(きん・ぶんきょう)=著(現代語訳)
   「黄英(こうえい)」 (『聊斎志異(りょうさいしい)』より)
   『鑑賞 中国の古典23 中国小説選』 角川書店 1989/11 所収


(7) 丸山 1977
 ある日のこと、陶は馬子才(ばしさい)にいった。
「あなたのところも、あまりゆたかでないのに、毎日、食事までお世話になってごめいわくをかけています。いつまでもこうしていては心ぐるしいので、さしあたり菊(きく)を売って暮(く)らしをたてようと思います。」
 がんこものの馬子才は、菊(きく)を売ると聞いて、顔をしかめ、
「ぼくは、きみが風流で心の清らかな人だから、びんぼうにも無(む)とんちゃくだと思っていた。それなのに、菊で金もうけをしようなんて! それでは、気品のある菊をいやしめることになるじゃないか。」
 陶(とう)はわらって、
「自分で働いて食べていくことは、欲(よく)ばりとはちがいます。菊(きく)を売って生活しても、いやしいこととはいえません。まがったことをして金持ちになるのは感心しませんが、かといって無理にびんぼうを守ることもないでしょう。」

   蒲松齢=作 丸山松幸(まるやま・まつゆき)=訳 「菊の精(黄英)」
   『清代の怪異小説—聊斎志異』 中国の古典文学13
   さ・え・ら書房 1977/03 所収


(8) 増田+松枝+常石 1971
 ある日、陶は馬(ば)に言った。
「あなたのところも、あまり豊かでないのに、毎日、食べることであなたに迷惑をかけていますが、いつまでもご厄介ばかりかけているのは心ぐるしいから、さしあたり菊を売って暮らしをたてようと思います」
 馬(ば)はもともと片意地な男であったから、その陶の言葉をきくと、大へん卑(いや)しんで、言った。
「君は風流な高雅な人で、貧に安んじることのできる人だと僕は思っていました。いまそのようなことを言い出されるのは、気高い菊を卑俗にすることで、菊を辱(はず)かしめるものでしょう」
 陶は笑って言った。
「自分の丹精で食って行くことは、貪(むさぼ)るのとはちがうし、花を売るという業(なりわい)は俗なことではありません。人はもとよりかりそめに富を求めるべきではないけれども、しかしまた必ずしも貧を求めることもないでしょう」

   蒲松齢=作 増田渉(ますだ・わたる)+松枝茂夫(まつえだ・しげお)
   +常石茂(つねいし・しげる)=訳 「菊の姉弟(きょうだい)(黄英)」
   『聊斎志異(下)』 中国古典文学大系41(全60巻) 平凡社 1971/04 所収


(9) 田中 1970, 1987, etc.
 陶はある日、馬に言った。
「あなたの家も、もともと豊かでないのに、僕がこうして毎日厄介をかけているのですが、いつまでもこうしてはいられないのです、菊を売って生計(くらし)をたてたいとおもうのですが」
 馬は生れつき片意地な男であった。陶の言葉を聞いてひどく鄙(いやし)んで言った。
「僕は、君は風流の高士で、能(よ)く貧に安んずる人と思ってたが、今そんなことを言うのは、風流をもってあきないとするもので、菊を辱めるというものだね」
 すると陶は笑って言った。
「自分の力で喫ってゆくことは、貪(むさぼ)りじゃあないのです、花を販(う)って、生計をたてることは、俗なことじゃないのです、人はかりそめに富を求めてはならないですが、しかし、また務めて貧を求めなければならないこともないでしょう」

   田中貢太郎(たなか・こうたろう)=著 「黄英」
   9a. 青空文庫(電子テキスト)2003/08/03 作成
      入力:Hiroshi_O 校正:門田裕志、小林繁雄
   9b.中国の怪談2』 河出文庫 1987/08 所収
   9c.支那怪談全集』 桃源社 1970/11 所収
   9a. の底本は 9b.9b. の親本は 9c.。引用は 9a. に拠りました。


(10) 柴田 1955, 1987, etc.
 一日(あるひ)、陶は馬に謂つた、
 「君の家(うち)も固(もと)もと豐かではないのに、僕は毎日以口腹(たべもの)で君の累(せわ)になつてゐるが、常(いつ)もさうしてゐてはならんのだ。で、爲今計(さしあたり)菊を賣つても、亦(まあ)、足謀生(くらせる)と思ふ」
 馬は介(かたくな)な男だから、陶の言葉を甚(ひど)く鄙(いやし)いものと聞いた。
 「僕は君が風流の高士だから、能く貧に安んじて居ると思つて居たのだ。今更是(そん)なことを論(い)ふのは東籬(きくばたけ)を以て市井(いちば)にするものだ。菊花(きく)を辱しめることになる」
 陶は笑つて、
 「自分の力で食べるのだ。貪(むさぼ)るのではない。花を販(う)つて業(よすぎ)にするのは、俗(ぞく)なことでもなからう。人は固(もと)より苟(かりそめ)に富を求めては不可(いか)ん。然(しか)し亦貧を求めるにも及ぶまい」

   蒲松齢=作 柴田天馬(しばた・てんま)=訳
   10a. ザ・聊斎志異—聊斎志異全訳全一冊(大活字版)』 第三書館 2007/01 所収
   10b.ザ・聊斎志異—聊斎志異全訳全一冊(愛蔵版)』 第三書館 2004/07 所収
   10c.ザ・聊斎志異—聊斎志異全訳全一冊』 第三書館 1987/06 所収
   10d.完譯聊齋志異5』(全8巻) 角川文庫 1956/03 所収
   引用は 10d. に拠りました。


■現代中国語による再話 A retelling in modern Chinese

一天,陶三郎對馬子才說:"你家也不富足,我們不如賣掉些菊花,也好貼補貼補。"馬子才素來清高,很不高興地說:"你說出這種話,不是對菊花的侮辱嗎?" 陶三郎笑著說:"自食其力,不算是貪;販花為業,也不算是俗。人固然不能茍且求富,但也不必安於貧因吧。"

   蒲松齡 《聊齋志異》 黃英
   華夏經緯網 (huaxia.com)


■中国語原文(簡体字)The original text in simplified Chinese

陶一日谓马曰:“君家固不丰,仆日以口腹累知交,胡可为常!为今计,卖菊亦足谋生。”马素介,闻陶言,甚鄙之,曰:“仆以君风流雅士,当能安贫;今作是论,则以东篱为市井,有辱黄花矣。”陶笑曰:“自食其力不为贪,贩花为业不为俗。人固不可苟求富,然亦不必务求贫也。”

   《聊斋志异》 黄英 作者:蒲松龄
   E-text at 天涯在線書庫 (tianyabook.com)


■中國語原文(繁體字)The original text in traditional Chinese

陶一日謂馬曰:「君家固不豐,僕日以口腹累知交,胡可為常。為今計,賣菊亦足謀生。」馬素介,聞陶言,甚鄙之,曰:「僕以君風流高士,當能安貧;今作是論,則以東籬為市井,有辱黃花矣。」陶笑曰:「自食其力不為貪,販花為業不為俗。人固不可苟求富,然亦不必務求貧也。」


■更新履歴 Change log

  • 2011/11/19 竹田晃+黒田真美子=著 2009/10/10 を追加しました。
  • 2011/05/31 蒲松齡紀念館の紹介ビデオを追加しました。
  • 2008/07/12 H. C. Chang による英訳 1984/10 を追加しました。
  • 2007/09/17 志村有弘=訳 2004/08 を追加しました。
  • 2007/09/10 立間祥介=編訳 1997/07、および保永貞夫=訳 1996/09 を追加しました。
  • 2007/08/20 田中貢太郎=著 1970/11, etc. を追加しました。また、柴田天馬=訳の書誌情報を修正しました。さらに、リンク切れ、リンク誤りの箇所を修正しました。
  • 2007/08/16 柴田天馬=訳 1956/03 を追加しました。

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(1) Strange Stories from a Chinese Studio

(2) Strange Tales from the Liaozhai Studio

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Sunday, 12 August 2007

A Passional Karma by Lafcadio Hearn ラフカディオ・ハーン / 小泉八雲 「牡丹燈籠」

 Cover photos  表紙画像

a. Youkai_yousei_tan b. Hearn_cosimo c. Hearn_tuttle

↑ クリックして拡大 Click to enlarge ↑

■日本語訳 Translations into Japanese

(1) 池田 1996, 2004
 その夜、二人は新三郎の家に泊まり、夜明け少し前に帰っていきました。
 それからというもの七日間、月夜も雨夜も、きっかり同じ時刻に二人は通ってきました。新三郎はますますお露に夢中になっていきました。(……)

 新三郎の屋敷の軒先には小屋があり、伴蔵という男が住み込んでいましたが(……)。
 ある晩遅く、母屋から女の声が聞こえてきました。伴蔵は、何やら胸騒ぎを覚えました。——旦那は人がよくて情けが深いから、もしや悪い女に騙(だま)されているのではあるまいか。そこで伴蔵は、自分の目で確かめることにしました。(……)そして、やっと見えた——と思った瞬間、伴蔵の身体はその場に凍りつき、髪の毛が逆立ちました。
 女の顔は、死人の顔でした。そして主人の身体をまさぐる女の指も、肉がおちて骨だけになっており、腰から下は何もありませんでした。その姿がぼんやりと尾を引く影のごとく、消えてなくなっているのです。恋に目のくらんだ男には、その姿が若くたおやかに映っていたのでしょう。しかし伴蔵には、どうみても気味の悪い骸(むくろ)にしか見えませんでした。(……)
 
   1a. 小泉八雲=著 池田雅之=訳 「牡丹燈籠」
      池田雅之=編訳 『妖怪・妖精譚』 小泉八雲コレクション
      ちくま文庫 2004/08 所収
   1b. ラフカディオ・ハーン=著 池田雅之=訳 「牡丹灯籠」
      池田雅之=編訳 『おとぎの国の妖怪たち—小泉八雲怪談集2
      現代教養文庫 社会思想社 1996/06 所収

   引用は 1a. に拠りました。


(2) 平井 1966, 1977
[訳文は追って挿入するつもりです - tomoki y.

   小泉八雲=著  平井呈一=訳 「ぼたん灯篭」
   2a.松江の七ふしぎ』 新・日本児童文学選21
      偕成社 1966/04 所収
   2b. 松江の七ふしぎ』 新・日本児童文学選21
      偕成社 1977 所収


(3) 山本 1931
[訳文は追って挿入するつもりです - tomoki y.

   Lafcadio Hearn=著 山本供平(やまもと・きょうへい)=譯註 「牡丹灯籠」
   『牡丹灯籠・夏の日の夢 其他』 英米近代文學叢書 第1輯 第8卷
   春陽堂教育図書出版部 1931/10(昭和6)所収

   上の書名は奥付に拠ります。表紙などの書名は、
   A Passional Karma, The Dream of a Summer Day, etc.


■英語原文 The original text in English

The two women remained that night in the house of the young samurai, and returned to their own home a little before daybreak. And after that night they came every night for seven nights,-- whether the weather were foul or fair,--always at the same hour. And Shinzaburo became more and more attached to the girl (....).

Now there was a man called Tomozo, who lived in a small cottage adjoining Shinzaburo's residence (....). One night, at a very late hour, Tomozo heard the voice of a woman in his master's apartment; and this made him uneasy. He feared that Shinzaburo, being very gentle and affectionate, might be made the dupe of some cunning wanton (....). He therefore resolved to watch; (....) And at last he was able to see;--but therewith an icy trembling seized him; and the hair of his head stood up.

For the face was the face of a woman long dead,--and the fingers caressing were fingers of naked bone,--and of the body below the waist there was not anything: it melted off into thinnest trailing shadow. Where the eyes of the lover deluded saw youth and grace and beauty, there appeared to the eyes of the watcher horror only, and the emptiness of death. (....)

   A Passional Karma
   from In Ghostly Japan, by Lafcadio Hearn
   E-text at:


 Video 
怪談・小泉八雲の誕生|河野龍也 前編

Uploaded to YouTube by jissenjoshigakuen on 12 Jan 2011.
講師:河野龍也(実践女子短期大学 国文学科 講師)
<講義内容>
  小泉八雲と三遊亭円朝
  牡丹灯篭のあらすじ
  三遊亭円朝の技法
  牡丹灯篭の翻訳
  八雲が施した工夫
  小泉八雲の作品
  宿夜の恋
  小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の生涯
レジュメ付き講義ページ
実践女子学園ホームページ


■書誌情報 Bibliography


■参考 Links

先に tomokilog でとりあげた、下の各バージョンと比較なさってみてください。


■更新履歴 Change log

2013/04/26 「怪談・小泉八雲の誕生|河野龍也」の YouTube 動画を追加しました。


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浅井了意 「牡丹の灯籠」「牡丹灯籠」(『伽婢子(おとぎぼうこ)』より) The Peony Lantern (from Hand Puppets) by Asai Ryōi

■表紙画像ギャラリー Cover photo gallery

↓ クリックして拡大 Click to enlarge ↓

a. Early_modern_japanese_literature b. Fuji_masaharu c. Toudou_otogibouko

d. Sunaga_kaidan e. Ja_edo_kaidanshu_chu f. Otogibouko_toyobunko


■物語成立の経緯

作品の成立の順番からいうと、

   中国明代:瞿佑「牡丹燈記」(『剪燈新話』
       ↓
   江戸時代:浅井了意「牡丹燈籠」(『伽婢子』)
       ↓
   幕末・明治:三遊亭圓朝『怪談牡丹燈籠』 

と、なります。瞿佑の種本は、あっけないほど短く、浅井了意と圓朝とが、それぞれ大変にすぐれたアレンジメントをくわえることによって、「牡丹燈籠」を不朽の名作に仕立て上げたことがわかります。


■英訳 Translation into English

After that, the woman came to Ogihara at dusk and departed at dawn; every night she kept her vow to visit. Ogihara's heart was in turmoil, his reason had flown. He was thrilled that the woman cared for him so deeply and never failed to come. He lost interest in seeing anyone else, even during the day. For more than twenty days he remained in this state.

Next door to Ogihara lived a wise old man. He thought it strange that lately, night after night, he could hear the voice of a young woman, laughing and singing, coming from Ogihara's house. He became so suspicious that finally he went and peeked through a crack in his fence. Lo and behold, there in the lamplight sat Ogihara, face to face with a skeleton! When Ogihara spoke, the skeleton would move its arms and legs, nod its skull, and reply in a voice that seemed to come from its mouth. The old man was aghast. As soon as it was daybreak he sent for Ogihara.

   Asai Ryōi. "The Peony Lantern."
   Translated by Maryellen Toman Mori.
   Hand Puppets (Otogi bōko)
   Early Modern Japanese Literature: An Anthology, 1600-1900.
   Edited by Haruo Shirane.
   New York: Columbia University Press, 2002.

   名前の表記 Ogihara は原文のまま。


■現代日本語訳 Translations into contemporary Japanese

(1) 藤堂 2001, 2006
 それから毎日、女は日暮れにきては明け方に帰るようになった。夜毎(よごと)に通ってくると約束し、それを一度も違(たが)えなかった。荻原(おぎわら)は心乱れて分別をなくした。一心同体で相思相愛となったこの女が、「二人の絆(きずな)は千世(ちよ)も変わりません」と言って通ってくることがうれしくてたまらず、昼も他人に会うことをやめた。そのような日々が、二十日余りつづいた。
 ところで、隣の家には、世故(せこ)に長(た)けた老人が住んでいた。
 〈荻原の家では、ずいぶん若い女の声がする。夜毎、歌い、笑い、遊んでいるのは尋常ではない〉
 こう思った老人は、壁の隙間から覗(のぞ)き見た。すると灯火の下には、一体の白骨と荻原とが差し向かいになって座っていた。荻原が何か言うと、その白骨の手足が動き、髑髏(されこうべ)が頷(うなず)き、口と思われるところから声が響き出てしゃべっていた。老人はたいそう驚き、夜が明けるのも待ちかねて荻原を呼び寄せた。(……)

   1a. 浅井了意(あさい・りょうい)=作
     藤堂憶斗(とうどう・おくと)=訳 「牡丹の灯籠」
     さねとうあきら、岡本綺堂〔ほか〕=著 赤木かん子=編
     『牡丹灯籠』 ホラーセレクション1(全10巻)
     ポプラ社 2006/03 所収         
   1b. 浅井了意=作 藤堂憶斗=訳 「牡丹の灯籠」
     『伽婢子・狗張子 江戸怪談集
     鈴木出版 2001/07 所収       

   1a. の底本は 1b.。引用は 1a. に拠りました。ルビを一部省略しました。


(2) 須永 1996
 それより毎日、女は、暮れれば訪れ、明ければ帰り、約束を違(たが)える事はなかった。荻原(おぎわら)は、女との逢瀬に溺れ、昼と雖(いえど)も家に引き籠り、人に会う事も止め、かくして廿日(はつか)あまりに及んだ。さて、隣家には世故(せこ)に長(た)けた翁(おきな)が住んでいたが、荻原の家より夜毎に聞き馴れぬ若い女の声がして歌い遊び笑いささめく様子ゆえ、これを怪しみ、壁の隙間より覗き見れば、燈火の下に新之丞が一体の白骨と差し向いに坐しているではないか。荻原がものを言えば、白骨の手足が動き、髑髏(しゃれこうべ)が頷き、口と覚しき所より声を発して答える体(てい)である。驚いた翁は、夜が明けるのを待ちかねて、荻原を呼び寄せ(……)

   瓢水子松雲(浅井了意) 『伽婢子(おとぎぼうこ)』 「牡丹灯籠」
   須永朝彦(すなが・あさひこ)=編訳
   『日本古典文学幻想コレクション3 怪談
   国書刊行会 1996/04/25 所収


(3) 江本 1980
 その後女は、日が暮れると訪れ、夜が明けると帰り、毎夜、通ってくるに約束を違(たが)えなかった。荻原のほうも、もう心は乱れて分別も付かず、ただこの女が自分に深く想いをかけて、契りは千代も変わらじと通ってくるのが嬉しく、昼でも他の者には会おうとしない。そして、二十日余りが過ぎた。
 荻原の家の隣に、物の道理をよくわきまえた老人が住んでいたのであるが、その老人がある日、変なことに気付いた。ひとり暮らす荻原の家から夜ごとに若い女の声が聞こえ、歌ったり笑ったりするのである。怪しく思って壁の隙間(すきま)から覗(のぞ)いてみると、荻原が一体の骸骨と向かいあっていた。荻原がものを言うと、白骨が手足を動かし、髑髏(しゃれこうべ)がうなずき、その口元あたりから声が響き出ている。老人はびっくりして、夜が明けるのを待ちかねて荻原を呼び寄せ(……)

   浅井了意=著 江本裕(えもと・ひろし)=訳 「牡丹の灯籠」
   『伽婢子—近世怪異小説の傑作』 教育社新書 原本現代訳 59
   教育社 1980/09/20


(4) 富士 1974, 1977, etc.
それからは日が暮れれば来、明け方には帰り、夜毎に通い来ること、全然約束を違(たが)えない。荻原(おぎわら)は心がわくわくして何彼(なにかれ)の事も考えられず、唯この女が睦まじく思い交(か)わして、契りに千世も変らじと通い来る嬉しさに、昼といえども又、他の人に逢う事もない。こうして二十日余りに及んだ。
 隣の家によく物を心得た翁が住んでいたが、荻原の家に不思議なことに若い女の声がして、夜毎に歌をうたい笑い遊ぶことの怪しさよと思い、壁の隙間から覗いて見ると、一揃いの白骨と荻原と燈火のもとに差向いで坐っていた。荻原が物をいうと、かの白骨の手あしが動いて、しゃれこうべがうなずき、口と思われる所より、声が響いて物語りをしている。翁は大いに驚いて、夜の明けるのを待ち兼ね荻原を呼びよせ(……)

   浅井了意(あさい・りょうい)=著 富士正晴(ふじ・まさはる)=訳
   『伽婢子(おとぎぼうこ)』「牡丹灯籠(ぼたんどうろう)」
   4a.現代語訳 江戸怪異草子(えどかいいぞうし)』 河出文庫 2008/08/20 所収
   4b.伽婢子・狗張子—怪談』 河出書房新社 1977/09 所収
   4c.日本の古典24 江戸小説集1』 河出書房新社 1974 所収

   4a.4b. を改題の上、文庫化したもの。引用は 4a. に拠りました。


■日本語原文 The original text in 17th-century Japanese

 (……)それよりして、日暮(くる)れば来り、明がたにはかへり、夜ごとにかよひ来(く)る事、更にその約束をたがへず。荻原(おぎはら)は心まどひてなにはの事も思ひわけず、たゞ此女のわりなく思ひかはして、契りは千世(ちよ)もかはらじと通ひ来るうれしさに、昼(ひる)といへども又こと人に逢(あふ)ことなし。かくて廿日あまりにをよびたり。
 隣(となり)の家によく物に心得たる翁(おきな)のすみたるが、荻原が家にけしからずわかき女のこゑして、夜ごとに哥うたひわらひあそぶ事のあやしさよと思ひ、壁(かべ)のすき間(ま)よりのぞきてみれば、一具(ぐ)の白骨(はつこつ)と荻原と、灯(ともしび)のもとにさしむかひて座したり。荻原ものいへば、かの白骨手あしうごき、髑髏(しやれかうべ)うなづきて、口とおぼしき所より声ひゞき出て物がたりす。翁大(おほい)におどろきて、夜のあくるを待かねて荻原をよびよせ(……)

   浅井了意=作 江本裕(えもと・ひろし)=校訂
   「巻の三 3. 牡丹灯籠(ぼたんのとうろう)」
   『伽婢子1』 (全2巻)東洋文庫475
   平凡社 1987/09 所収

   この東洋文庫の底本は、
   国立国会図書館所蔵の1666/03(寛文6)西沢太兵衛版、『御伽婢子』。


■『伽婢子』翻刻本の書誌情報
 Bibliography on books incorporating the republished text of Otogi Bouko

『伽婢子』を翻刻した本は、上に引用した東洋文庫版 (1987) のほかに次のものがある。d.g. を復刻したものである。

   a.新日本古典文学大系75 伽婢子
     佐竹昭広〔ほか〕=編 岩波書店 2001/09/20
   b.江戸怪談集(中)』 (全3冊) 「伽婢子」
     高田衛(たかだ・まもる)=編・校注 岩波文庫 1989/04/17
   c.假名草子集成7』 「おとぎばうこ」
     朝倉治彦(あさくら・はるひこ)=編 東京堂出版 1986/09/15
   d.近世文芸叢書3 復刻 小説』 国書刊行会=編輯 第一書房 1976
   e.近代日本文學大系13 怪異小説集』 瓢水子松雲=作「伽婢子」
     國民圖書株式會社=編輯 國民圖書 1927/05(昭和2)
   f.日本名著全集 江戸文芸之部 第10巻 怪談名作集
     日本名著全集刊行会=編輯 日本名著全集刊行会 1927(昭和2)
   g.近世文藝叢書第三 小説(上)』 (饗庭篁村による緒言つき)
     國書刊行會 非賣品 1910/09/30(明治43)


■更新履歴 Change log

2010/07/23 表紙画像を追加し、書誌情報を補足しました。
2010/06/15 江本裕=訳 1980/09/20 の訳文を挿入しました。また、
         「『伽婢子』翻刻本の書誌情報」の項を新設しました。
2010/06/01 須永朝彦=編訳 1996/04/25 と富士正晴=訳 2008/08/20
         の訳文を挿入しました。また、表紙画像と、江本裕=訳
         1980/09/20 の書誌情報を追加しました。
2010/05/29 Maryellen Toman Mori による英訳 2002 を追加しました。


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Friday, 10 August 2007

瞿佑(く・ゆう)瞿宗吉(く・そうきつ) 「牡丹燈記」「牡丹灯記」(『剪燈新話(せんとうしんわ)』より)

           目次 Table of Contents

   ■表紙画像 Cover photos
   ■現代日本語訳 Translations into contemporary Japanese
     (J1) 竹田+小塚+仙石 2008
     (J2) 竹田 1990
     (J3) 金 1989
     (J4) 鈴木 1972, 2006
     (J5) 飯塚 1958, 1965
     (J6) 村上 1954, 1959
     (J7) 岡本 1929, 1935, etc.
     (J8) 田中 1926, 1934, etc.
     (J9) 鈴木 1926
     (J10) 鹽谷(塩谷) 1921
   ■中国語原文(簡体字)The original text in simplified Chinese
   ■中國語原文(繁體字)The original text in traditional Chinese
   ■英題の異同 Variations of the title in English
   ■外部リンク External links
   ■更新履歴 Change log


■表紙画像 Cover photos

a. 4309462235 b. 012080050000 c. 80_048
↑ クリックして拡大 Click to enlarge ↑

■現代日本語訳 Translations into contemporary Japanese

(J1) 竹田+小塚+仙石 2008
 (……)喬(きょう)が女を引き留めたので、その晩は喬の家に泊まることとなった。女の物腰はとても妖艶で、言葉遣いもなまめかしく、寝台の帷を下ろして枕を近づけると、二人は欲情を燃やしきるまで愛し合ったのであった。
 朝になると、女は別れを告げて帰って行った。そして、日が暮れるとまたやってくる。このようにして半月が経とうとした頃、喬の様子を怪しんだ隣の家の老人が、壁に穴を開けて喬の家の中の様子を覗いてみると、化粧をした髑髏が喬と並んで灯りのもとに座っているではないか。腰を抜かさんばかりに驚いた老人が、翌朝になって喬を問いつめた。(……)

   瞿佑(く・ゆう) 「牡丹灯籠(牡丹灯記)」
   竹田晃+黒田真美子=編 竹田晃+小塚由博+仙石知子=著
   『剪灯新話 明代 中国古典小説選 8』 明治書院 2008/04/10


(J2) 竹田 1990
 (……)喬(きょう)は女を引きとめて泊まらせた。えにいわれぬなまめかしいものごし、言葉づかいも色っぽく、ベッドのとばりをおろし、枕を近づけて、また愛欲の火を燃やしつくした。夜が明けると別れを告げて帰って行ったが、日が暮れるとまたやって来る。
 このような状態が続いて半月になろうとするころ、隣家の老人がどうも様子がおかしいと怪しみ、壁に穴をあけてのぞいて見た。すると、なんと、化粧をほどこした一つの髑髏(どくろ)が灯火(ともしび)の下で喬と並んで座っているではないか。腰をぬかすほど驚いた老人は、翌朝喬を問いつめた。(……)

   瞿佑(く・ゆう)=著 竹田晃(たけだ・あきら)=訳・解説 「牡丹灯籠」
   竹田晃=編 『中国幻想小説傑作集
   白水Uブックス91 白水社 1990/12


(J3) 金 1989
 (……)男は女を引きとめて泊めたが、身のこなしあでやかに、言葉つきもなまめいて、寝台のとばりを低くたれ、枕を引きよせて歓楽をつくした。夜が明けると女は別れをつげて帰ったが、暮れどきになるとまた訪れる。
 こうしてかれこれ半月になろうとする頃、隣の老人が不審に思い、壁に穴をあけてのぞいてみると、なんと白粉(おしろい)をつけたされこうべが灯の下で男と並んですわっているではないか。老人は大いにおどろき、翌朝男を問いつめたが(……)

   瞿佑=作 金文京(きん・ぶんきょう)=著(現代語訳)
   「剪灯新話(せんとうしんわ) 牡丹灯記」
   『鑑賞 中国の古典23 中国小説選』 角川書店 1989/11


(J4) 鈴木 1972, 2006
 (……)共に語らい、共に打ち興じ、その後、床を同じくし、歓楽を尽くして帰っていった。
 それからは毎夜、同じ時刻に訪れては明け方帰る。それが半月近くも続いた。

 喬生(きょうせい)の隣に、やはり一人暮らしの老人が住んでいた。
 年のせいか、近頃寝つきが悪かった。(……)眠られぬまま、床の中であれこれ考えていると、隣の家から女の話し声が聞えてくる。
 珍しいことがあるものだ。こんな夜ふけに、喬生の家に女の客があるなんて……。
 (……)よし、どんな相手か、そっと拝見して、明日にでも冷やかしてやるか……。
 この老人、年がいもなくのこのこはい出し、壁に穴をあけてそっと隣の様子をうかがってみた。
 うす暗い燈火のもとに、喬生がぽつねんと椅子にかけている。向かいあっているのは一体のどくろ。ぽっかり開いた眼窩(がんか)を喬生に向け、下顎(したあご)の骨をがくがく動かしながら盛んに話しかけている。(……)
 腰をぬかさんばかりに仰天したじいさん、はうようにして床にもぐり込むと、頭から蒲団をかぶり、震え声で神仏を念じ出した。
 翌日、起きっぱなに隣家を訪れたじいさん、睡眠不足でぼんやりしている喬生を寝台から引っぱりおろして、昨夜見たことを話して聞かせた。ところが(……)

   a. 中国の伝承話 鈴木了三(すずき・さとみ)=訳 「怪談 牡丹燈記」
     さねとうあきら、岡本綺堂〔ほか〕=著 赤木かん子=編
     『牡丹灯籠』 ホラーセレクション 1 (全10巻)
     ポプラ社 2006/03
   b. 鈴木了三=編訳 『中国奇談集』 現代教養文庫 社会思想社 1972

   a. の底本は b.。引用は a. に拠りました。ルビを一部省略しました。


(J5) 飯塚 1958, 1965
 (……)喬(きょう)は女をひきとめて泊めると、なんともいえぬ妖艶な身のこなし、いう言葉もなまめいて、寝台のとばりをおろし、枕を近づければ、愛欲のかぎりをつくすのだった。夜が明けると別れをつげて帰っていったが、夜はまた訪れてくる。
こうして半月になろうとするころ、隣家の老人がこれをあやしみ、壁に穴をあけてのぞいてみると、一つの髑髏(どくろ)が燈の下で喬とならんで座っているので、びっくり仰天した。翌朝になって老人がこれを詰問すると(……)

   瞿佑=作 飯塚朗(いいづか・あきら)=訳 「巻の二 牡丹燈籠(牡丹燈記)」
   a.剪燈新話』 東洋文庫 48 平凡社 1965/08
   b.中国古典文学全集 20 剪灯新話・閲微草堂筆記 他』 全33巻
     平凡社 1958/04

   引用は a. に拠りました。


(J6) 村上 1954, 1959
 生はひき留めて泊めることにしたのだったが、すると美人のその身のこなしは妖艶(ようえん)だし、そのことばつきが甘ったれていて、やがていよいよ幃(とばり)をたれ、枕についてみたときには、およそ情けのかぎりを尽くし、夜が明けるといったん辞して立ち去りながら、暮れには又もやたずねてくるというありさま。しかもそうすることが半月もつづいたものである。となりの翁(おきな)が、どうもおかしいと嗅(か)ぎつけて、あいだの壁に穴をあけ、そっとのぞいてみれば、ひとりの美しいされこうべが、あかりの下で、生とならんで坐っているのが見えたので、翁はあっとばかり、おおいに駭(おどろ)き、そのあくる朝、生にむかって質(ただ)してみれば(……)

   瞿佑=作 村上知行(むらかみ・ともゆき)=訳
   a.世界文学全集 第3期 別巻2』 河出書房 1959
   b.全訳剪燈新話』 中央公論社 1954/10
   引用は b. に拠りました。


(J7) 岡本 1929, 1935, etc.
 今夜は泊まってゆけと勧めると、女はそれをも拒まないで、ついにその一夜を喬生の家(うち)に明かすことになった。それらのことはくわしく言うまでもない、「はなはだ歓愛を極む」と書いてある。夜のあけるころ、女はいったん別れて立ち去ったが、日が暮れると再び来た。金蓮という小女がいつも牡丹燈をかかげて案内して来るのであった。
 こういうことが半月ほども続くうちに、喬生のとなりに住む老翁(ろうおう)が少しく疑いを起こして、壁に小さい穴をあけてそっと覗いていると、紅(べに)や白粉(おしろい)を塗った一つの骸骨が喬生と並んで、ともしびの下に睦(むつ)まじそうにささやいていた。それを見て大いに驚いて、老翁は翌朝すぐに喬生を詮議すると(……)

   瞿佑(く・ゆう) / 瞿宗吉(く・そうきつ)=作 岡本綺堂(おかもと・きどう)=訳
   『剪燈新話』 「牡丹燈記 / 牡丹灯記」
   a. 中国怪奇小説集 新装版』 光文社文庫 2006/08/20
   b.世界怪談名作集 18 牡丹燈記」 青空文庫(電子テキスト) 2003/09
   c.世界怪談名作集(下)』 河出文庫 2002/06
   d.新・ちくま文学の森2 奇想天外』 筑摩書房 1994/10
   e. 世界怪談名作集(下)』 河出文庫 1987/09
   f. 中国怪奇小説集』 旺文社文庫 1978/04
   g.岡本綺堂読物選集7 飜訳編(上)』 青蛙房 1970
   h. 支那怪奇小説集』 サイレン社 定價貳圓 1935/11/20(昭和10)
     国立国会図書館デジタル化資料
   i.世界大衆文學全集35 世界怪談名作集』 改造社 1929/08(昭和4)

   a.f. を再刊したもの。f.h. のタイトルの「支那」を「中国」に
   改めて再刊したもの。b. の底本は c.c.e. の新装版。
   d.
の底本は g.。引用は b. に拠りました。


(J8) 田中 1926, 1934, etc.
 女はとうとう一泊して黎明(よあけ)になって帰って往った。喬生(きょうせい)はもう亡くなった女房のことは忘れてしまって夜の来るのを待っていた。夜になると女は少女を伴(つ)れてやって来た。軽い小刻(こきざみ)な韈(くつ)の音がすると、喬生は急いで起って往って扉(と)を開けた。少女の持った真紅の鮮やかな牡丹燈が先ず眼に注(つ)いた。
 女は毎晩のように喬生の許へ来て黎明(よあけ)になって帰って往った。喬生の家と壁一つを境にして老人が住んでいた。老人は、鰥暮(やもめぐら)しの喬生が夜になると何人(だれ)かと話しでもしているような声がするので不審した。
「あいつ寝言を云ってるな」
 しかし、その声は一晩でなしに二晩三晩と続いた。
「寝言にしちゃおかしいぞ、人も来るようにないが、それとも何人(だれ)かが泊りにでも来るだろうか」
 老人はこんなことを云いながらやっとこさと腰をあげ、すこし頽(くず)れて時おり隣の燈(ひ)の漏れて来る壁の破れの見える処へ往って顔をぴったりつけて物好(ものずき)に覗いて見た。喬生が人間の骸骨と抱き合って榻(ねだい)に腰をかけていたが、そのとき嬉しそうな声で何か云った。老人は怖れて眼前(めさき)が暗むような気がした。彼は壁を離れるなり寝床の中へ潜りこんだ。(……)

   田中貢太郎(たなか・こうたろう)=著/述 「牡丹燈籠 牡丹燈記」
   a.牡丹燈記」 青空文庫(電子テキスト) 2003/09
   b.日本怪談大全2 幽霊の館』 国書刊行会 1995/08
   c.中国の怪談1』 河出文庫 1987/05
   d.支那怪談全集』 桃源社 1970/11
   e.剪燈新話』 新潮文庫 1939/08/16(昭和14)
     国立国会図書館デジタル化資料
   f.日本怪談全集 3』 改造社 1934(昭和9)
   g.剪燈新話』 新潮社 1926/08/16(大正15)
      国立国会図書館デジタル化資料

   b. 国書刊行会版は f. 改造社版を再編集したもの。引用は b.
   国書刊行会版に拠りました。ルビを一部省略しました。


(J9) 鈴木 1926
 (……)その夜彼女を引きとめて家に泊らせた。彼は女の態度の美しさ、言葉のなめ[ママ]かしさに、幾度か胸をとどろかせたが、遂に其夜樂しい語らひを結んだのである。
 夜明になつて、女は別れを告げて立去つた。然し夕方になると、彼女はまた彼を訪れ、その後、半月餘りも、毎晩時を違へずやつて來た。
 ところが、隣家の老人が、一人住ひの喬生の家に、毎晩人聲がするのを不審に思つて、或夜壁の空間から、こつそり家の樣子を覗いてみた。
 見ると、喬生は美しく着飾つた一の髑髏と燈下に對座してゐたので、老人はすつかり驚いてしまつた。そして翌朝喬生をつかまへて詰問したが(……)

   瞿佑=撰 鈴木彦次郎(すずき・ひこじろう)=譯 「牡丹燈の記」
   『支那文學大觀10』 「剪燈新話」
   支那文學大觀刊行會 非賣品 1926/06(大正15)


(J10) 鹽谷(塩谷) 1921
[ルビを省いたテキスト]
 (……)生之を留めて宿せしむ。態度妖妍、詞氣婉媚、幃を低れ枕を昵づけ、甚だ歡愛を極む。天明け辭し別れて去る。暮に及び則ち又至る。是の如くすること將に半月ならんとす。隣翁焉を疑ひ壁に穴して之を窺へば、則ち一粉粧髑髏の生と燈下に竝び坐するを見、大に駭き、明旦之を詰る。(……)

[原文——総ルビ]
 (……)生(せい)之(これ)を留(とど)めて宿(しゆく)せしむ。態度(たいど)妖妍(えうけん)、詞氣(しき)婉媚(ゑんび)、幃(とばり)を低(た)れ枕(まくら)を昵(ちか)づけ、甚(はなは)だ歡愛(くわんあい)を極(きは)む。天(てん)明(あ)け辭(じ)し別(わか)れて去(さ)る。暮(くれ)に及(およ)び則(すなは)ち又(また)至(いた)る。是(かく)の如(ごと)くすること將(まさ)に半月(はんげつ)ならんとす。隣翁(りんをう)焉(これ)を疑(うたが)ひ壁(かべ)に穴(あな)して之(これ)を窺(うかが)へば、則(すなは)ち一粉粧(ふんしやう)髑髏(どくろ)の生(せい)と燈下(とうか)に竝(なら)び坐(ざ)するを見(み)、大(おほい)に駭(おどろ)き、明旦(みやうたん)之(これ)を詰(なじ)る。(……)

   瞿佑=撰 鹽谷温(しおのや・おん)=譯註 「牡丹燈の記」
   『國譯漢文大成 文學部 第13卷』 剪燈新話・餘話・宣和遺事
   國民文庫刊行會 非賣品 1921/12/15(大正10)
   国立国会図書館デジタル化資料


■中国語原文(簡体字)The original text in simplified Chinese

生留之宿,态度妖妍,词气婉媚,低帏昵枕,甚极欢爱。天明,辞别而去,暮则又至。如是者将半月,邻翁疑焉,穴壁窥之,则见一粉骷髏与生并坐于灯下,大骇。


■中國語原文(繁體字)The original text in traditional Chinese

生留之宿。態度精妍,詞氣婉媚,低篩昵枕,甚相歡愛。天明辭別而去,及暮則又至,如是者將半月。鄰翁疑焉,穴壁窺之,則見一粉妝髑髏,與生並坐於燈下,大駭。

  • 瞿佑 《剪燈新話》 牡丹燈記
  • E-text at 開放文學 (open-lit.com)

■英題の異同 Variations of the title in English

以下のとおり、「剪燈新話」の英語の題にはバラツキがあります。

  • New Lamp-Wick Trimming Stories
  • New Stories After Putting out the Lamp
  • New Tales After Trimming the Lamp
  • New Tales Told by Lamplight
  • New Tales Under the Lamplight
  • New Tales for Trimming the Lamp
  • New Tales of the Trimmed Lamp

■外部リンク External links


■更新履歴 Change log

  • 2016/04/08 竹田晃+小塚由博+仙石知子=著 2008/04/10 を追加しました。
  • 2013/11/15 岡本綺堂=訳の書誌情報をさらに修正・補足しました。
  • 2013/11/12 村上知行=訳、岡本綺堂=訳、鹽谷温=譯註 1921/12/15 などの書誌情報を修正・補足しました。また、目次、外部リンクの項、および英題の異同の項を新設しました。
  • 2013/11/10 飯塚朗=訳の書誌情報を補足しました。
  • 2010/01/29 中国語原文(簡体字)の電子テキストが一部リンク切れになっていたのを修正しました。
  • 2007/11/08 岡本綺堂=訳の書誌情報を補足し、訳文の配列を修正しました。
  • 2007/08/16 村上知行=訳 1954/10、鈴木彦次郎=譯 1926/06、および鹽谷温=譯 1922/01 を追加しました。

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■洋書 Books in non-Japanese languages

■和書 Books in Japanese
(1)「剪灯新話」

(2)「牡丹燈記」

  

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Thursday, 09 August 2007

Jeeves and the Unbidden Guest by P.G. Wodehouse P・G・ウッドハウス 「ジーヴスと招かれざる客」「君子豹変談」

 Images 
オーディオブック、初版本、ウッドハウス父娘
Audiobook, first edition, and Wodehouse with his daughter

↓ クリックして拡大 Click to enlarge ↓

a. My_man_jeeves_cd b. My20man20jeeves202 c. Pg061

■日本語訳 Translations into Japanese

(J1) 富山 2006
レディ・マルヴァーンは元気で、明るく、健康な、迫力満点の女性で、背丈はそれほどないものの、体の上手(かみて)から下手(しもて)まで六フィートあり、その不足を補ってあまりあった。彼女が私のところの最大の肘掛け椅子にズドンと坐ると、それが何とまあピッタリで、その社交シーズンには腰から尻にピッタリ着用の肘掛け椅子がはやると読んでいた誰かが彼女の特注に答えたかのような感じがした。しかも、明るい二つのドングリ眼に、やたらと豊かな黄色い髪、喋るとおよそ五十七本の前歯がむき出しになる。ひとの能力を機能停止に追い込んでしまうタイプの女性であった。

  • 第3章 御主人様はアホですから—執事の伝統 富山太佳夫(とみやま・たかお)=著 『笑う大英帝国—文化としてのユーモア』 岩波新書 2006/05
  • 上掲書はウッドハウス作品の訳書ではありません。けれども、このブログ記事で私がとりあげたのと、ちょうど同じ箇所を、著者・富山氏が自著のなかで翻訳し、引用しておられることに気がついたので、ここに挙げることにしました。最後の2センテンスは、残念ながら訳出されていません。

(J2) 森村 2005
レディー・マルヴァーンは、はしゃいで上機嫌で健康的で、人を圧倒する力をもったいまいましい種類の女性だった。背はそれほど高くないが、向かって左手から右手までさし渡しが一八三センチくらいあり、それでもって背の分の埋め合わせはつけている。うちで一番大きな肘掛け椅子に、今シーズンはきつめの肘掛け椅子を腰バキするのが流行、と承知してる誰かがあつらえて拵えてくれたみたいに、ぴっちり収まっている。明るく光る、とび出した目をして、毛髪は黄色くて豊富だ。彼女がしゃべると、口から前歯が五十七本くらいのぞいて見えた。彼女は男性の身体精神機能を麻痺させる類いの女性だ。僕がまるで十歳の子供で、日曜日の礼服に着替えさせられて居間にごきげんようを言わされに連れてこられたところだ、みたいな気分にさせてくれた。全面的全体的絶対的に、朝食前に我が家の居間に見出したいと思うようなシロモノではない。

  • P・G・ウッドハウス=著 森村たまき=訳 「3. ジーヴスと招かれざる客」 『それゆけ、ジーヴス』 ウッドハウス・コレクション 国書刊行会 2005/10

(J3) 井上 1966
メルヴァーン夫人は明るく幸福そうで、健康で力のあふれているようなすごい女性。背はそう高くはないが、それを上手(かみて)から下手までぐるりとまわって計れば六フィートはあろうという太さで補っている。うちのいちばん大きな肘掛け椅子に、このシーズンはからだにぴったりの肘掛け椅子を腰にはめるのが流行だと知っているだれかが彼女に合わせて設計でもしたみたいに、ぴったりとおさまっていた。よく光るとびだした目にふさふさした黄色い髪、口を開いたら五十七本ぐらいありそうな前歯を見せる。男性の機能を麻痺させてしまうようなタイプの女性だった。なんだかわたしは十歳ぐらいの少年になり、よそ行きを着せられて客間にご機嫌ようとご挨拶につれだされているような気分だった。もちろんこれは、朝飯前に自分の居間でお目にかかりたいような相手ではない。

  • ウッドハウス=著 井上一夫=訳 「招かれざる客」 ジーヴズ物語 『世界文学全集37 20世紀の文学』 ウッドハウス/マルセル・エイメ/ジャック・ペレー/イリフ、ペトロフ/ケストナー 集英社 1966/12

(J4) 村上 1960
マルヴァーン夫人は、見るからに元気で、丈夫そうな——背はあまり高くないけれど、その代りに胴廻りの方が六フィート近くもありそうに見える——大柄な女丈夫だった。幸い彼女はわたしの一番大きなアームチェアにぴったりと合った。それはまるで、こんどのシーズンには腰のまわりにぴたっとくっつくアームチェアが流行するのを見越して、誰かがわざわざ彼女のために作っておいてでもくれたようだった。彼女はキラキラ光る出眼とふさふさして黄色い髪の持ち主で、しゃべるとズラッと前歯があらわれた。世の中には相手の能力を麻痺させてしまう女がいるものだが、彼女もまさしくその一人だった。

  • P・G・ウッドハウス=著 村上啓夫=訳 金森馨=画 「ジーヴズと招かれざる客」 従僕ジーヴズ・シリーズ第二話 宝石 8月号 第15巻第10号 宝石社 1960-08-01

(J5) 乾 1956
マルバーン夫人は、健康第一、精力絶倫(せいりょくぜつりん)、身長六フィートといったものすごい女だ。客間でいちばん大きな肘掛(ひじか)け椅子(いす)に腰かけているんだが、腰かけているというより、お尻をはめているとしか見えない。ぎろりと飛び出しそうな目つきをしているうえに、黄色い髪の毛ときている。笑う段になると、四十七本の歯をみんなむき出しにして笑うんだからけだし見物(みもの)だ。
 このばあさんの前に出ると、なんだか自分が十歳ぐらいの子供になっちまったようなひけ目を感じてならない。なにしろ、朝飯前にはあまり会いたくない人物である。

  • P・G・ウッドハウス=著 乾信一郎(いぬい・しんいちろう)=訳 「君子豹変談(ひょうへんだん)」 ジョンストン・マッカレー〔ほか〕=著 『世界大ロマン全集6 地下鉄サム』 東京創元社 1956/11

 Video 
Jeeves & Wooster Season 3, Episode 1 "Bertie Sets Sail" a.k.a. "Safety in New York"

Uploaded to YouTube by The Wode Less Traveled: Bringing back Jeeves and Wooster. on 14 Jun 2009.


 Audio 
英語原文のオーディオブック(朗読) Audiobook - The original text in English

下に引用する箇所の朗読は 05:21 から始まります。 Uploaded to YouTube by CCProse Audiobooks on 21 Sep 2011. Audio courtesy of LibriVox. Read by Mark Nelson. Reading of the excerpt below starts at 05:21.


■英語原文 The original text in English

Lady Malvern was a hearty, happy, healthy, overpowering sort of dashed
female, not so very tall but making up for it by measuring about six feet
from the O.P. to the Prompt Side. She fitted into my biggest arm-chair as if it had been built round her by someone who knew they were wearing arm-chairs tight about the hips that season. She had bright, bulging eyes and a lot of yellow hair, and when she spoke she showed about fifty-seven front teeth. She was one of those women who kind of numb a fellow's faculties. She made me feel as if I were ten years old and had been brought into the drawing-room in my Sunday clothes to say how-d'you-do. Altogether by no means the sort of thing a chappie would wish to find in his sitting-room before breakfast.

  • Jeeves and the Unbidden Guest, from My Man Jeeves (1919) and Carry On, Jeeves (1925), by P.G. Wodehouse
  • The story first appeared in:
    • US: Saturday Evening Post, December 9, 1916
    • UK: Strand, March 1917
  • E-text at:

■ウッドハウス邦訳のリスト
 List of P.G. Wodehouse's works translated into Japanese

真田氏の書誌は2003年7月現在のもの。したがって、つぎの国書刊行会と文藝春秋のシリーズは記載されていません。


■更新履歴 Change log

  • 2016/05/03 村上啓夫=訳 1960-08-01 を追加しました。
  • 2016/02/18 Jeeves & Wooster の動画を追加しました。
  • 2011/09/30 英語原文のオーディオブック(朗読)の YouTube 画面を追加しました。また、「ウッドハウス邦訳のリスト」の項を更新しました。
  • 2007/09/30 富山太佳夫=訳 2006/05 を追加しました。

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Sunday, 05 August 2007

三遊亭円朝〔ほか〕 『怪談牡丹燈籠』『牡丹灯籠』 Botan Doro / The Peony Lantern

 Video 1 
シネマ歌舞伎 『怪談 牡丹燈籠』 (2009)
Shinema kabuki kaidan: Botan doro (2009)

2009年夏、東京・東劇、大阪・なんばパークスシネマほかで公演。演出:戌井市郎 出演: 片岡仁左衛門(伴蔵)、坂東玉三郎(お峰)、片岡愛之助(萩原新三郎)、中村七之助(お露)ほか。詳細は松竹公式サイト。 Uploaded to YouTube by SHOCHIKUch on 17 Dec 2009. Directed by Ichiro Inui.


 Video 2 
怪談・牡丹燈籠 もっともっと、愛されたかった。(2007) 予告篇
Kaidan botan dourou: Motto motto aisaretakatta (2007) Trailer

監督: 吉田剛也 総括プロデューサー: 大沢樹生 出演: 大沢樹生(新三郎)、高木りな(お露)、坂口良子(お米)ほか DVDはAmazon.co.jpで Directed by Takeya Yoshida. Starring Mikio Ohsawa, Rina Takagi, and Ryoko Sakaguchi. Uploaded to YouTube by mameta2007 on 2 Aug 2007.


 Video 3 
稲川淳二のショートホラーシネマ 伝説のホラー (2003) から 「牡丹燈籠」 英語字幕
Peony Lamp from Inagawa Junji no densetsu no horror (Video 2003)

監督: 矢田清巳 ホスト: 稲川淳二 出演: 青井敏之(新三郎)、大河内奈々子(お露)ほか このシリーズの詳細はロンリーBIGI。DVDはAmazon.co.jpで。字幕: 英語 Director: Kiyomi Yada. Storyteller: Junji Inagawa. Starring Toshiyuki Aoi (Shinzaburo) and Nanako Okochi (Otsuyu). More info on this series at SaruDama. Uploaded to YouTube by KuljeetChauhan on 26 Jun 2010. Subtitles in English.


 Video 4 
稲川淳二のショートホラーシネマ 伝説のホラー (2003) から 「牡丹燈籠」 スペイン語
La lámpara de peonia from Inagawa Junji no densetsu no horror (Video 2003)

ビデオ3とおなじ映像。字幕: スペイン語 Uploaded to YouTube by Zhirokun on 7 Feb 2012. The same video as Video 3. Subtitles in Spanish.


■現代日本語の落語 Rakugo adaptations in contemporary Japanese

(1) 五代目志ん生 1995, 2006
「大変だ先生っ」
「どうした」
「どうしたってねえ、ええっ、あっしは驚いた、今夜ねえ、わきで一杯飲んで遅くなち[ママ]ゃって家へ帰(け)えろうと思ったら、萩原(はぎわら)の旦那の所で女の声がすんだい……、ええっそれからあっしはずっと覗(のぞ)いて見たんでい」
「そんなことするんじゃない。おおきなお世話だ。ええっ、萩原さんは金が有るし、男はいいし、女の来るくらい当たり前だ」
「いや、当たり前だけどもさあ、ええ、気になるからこっちは覗いて見たら、そりゃあいい女なんですから、ええ、それでもって、あの何だ萩原様に
『あなたはあたしの夫でございます……』
 なんてこと言ってやがんだよ。俺はもう癪(しゃく)にさわっちゃって、勝手にしやがれほんとうにもう……、いくらいい女だってどろぼうめ……と思って見ると、その女はね腰から下が全然無(ね)え。あっ、と思ってわきを見るとわきで蚊を追ってる女中というのがやっぱり腰から下が無えから、〈こりゃっ〉っと思ったらもう口がきけなくなっちゃった……。先生……、あっ、あれは何でしょうねっ、ありゃあ……」
「うーん、そりゃあほんとうか……」
[ルビを一部省略しました - tomoki y.]

   1a. 五代目・古今亭志ん生 小島貞二=監修 「牡丹灯籠〜お札はがし〜」
      さねとうあきら、岡本綺堂〔ほか〕=著 赤木かん子=編
      『牡丹灯籠』 ホラーセレクション1(全10巻)
      ポプラ社 2006/03 所収
   1b. 五代目・古今亭志ん生=述 小島貞二=聞き手・監修
      岡本和明=企画・構成
      『これが志ん生だ! 別巻1』 江島屋騒動・牡丹灯籠 お札はがし
      三一書房 1995/07 所収
   1a.1b. を再録したもの。引用は 1a. に拠りました。
   五代目志ん生の演じた「牡丹灯籠」の録音を収めたCDには、たとえば、
   『五代目古今亭志ん生名演大全集10』 ポニーキャニオン
   (規格番号:PCCG-702) 2005/10 があります。
   「牡丹燈籠—お露新三郎」「牡丹燈籠—お札はがし」「小噺」を収録。


(2) 円朝 1982
伴蔵 先生萩原さまは大変ですよ。
勇斎 どうかしたか。
伴蔵 どうかしたの何のという騒ぎじゃございやせん、毎晩女が泊りに来ます。
 ところがねえ、その女が唯の女じゃアないのだ。幽霊と一緒に寝れば萩原様は
 死にましょう。
勇斎 それは必ず死ぬ(……)

   三遊亭円朝=作 「怪談牡丹燈籠」
   井上ひさし=編 『怪談牡丹燈籠・天衣紛上野初花
   カラーグラフィック 学研版 明治の古典1(全10巻)
   学研(学習研究社)1982/09 所収
   この学研版は、下の筑摩書房版を参考にしています。
   興津要=編 『明治文学全集10 三遊亭円朝集』 筑摩書房 1965/06


  Audio  
古今亭志ん生・怪談牡丹灯籠

下に引用する箇所は 12:59 から始まります。 Uploaded to YouTube by apr2edw924 on 24 Jun 2013. The excerpt below starts at 12:59.


(3) 五代目志ん生 1977, 2002
「(声を張って)先生ィ、先生ェ(と戸を三回叩いて)……先生ィ」
「はいはいはい、どうしたんだ?」
「え? 昨夜(ゆうべ)あっしァ遅くなって家(うち)ィ帰(けえ)ろうと思ったらねェ、萩原さまのとこで女の、声がするんです」
「ふーん、それがなにがたいへんだ? え? 萩原氏(はぎわらうじ)は、まだ独身者(しとりもん)だ。あのように男はいいし、え? 財産はあるし、女ぐらい訪ねてくんのァ当たり前(まい)だ……」
「そら当たり前(まい)ですけどもさァ、え? それがたいへんなんですよ、ええ。あたしゃァ中ァひょいッと生け垣ン処(と)ッから覗いて見たらねェ、蚊帳ン中ィ入ってんのァねェ、萩原の旦那さァ、ね? そこィ十(じゅう)七か八だねェ文金の高島田を結(い)って、振り袖を着て(力を入れ)いいィー女ッたらねえんだ、うん。そいからあたしゃァねェ、こう見ていくとね、腰から下がねえんだよォそれがァ……へえ。『おやァ?!』ッと思って脇を見るとね、その、婆(ば)ァやァがねェ縁側ンとこィ立って、庭のほうを見てえるン。その婆(ば)ァやァもねェ、腰から下がねえんだよ、へえ。ありゃァ……あれァ(幽霊の手つきをして)れきですよありゃァ……へえ。あァりゃ幽霊ですよォ、まるっきり骨と皮ンなっちゃってんですからねェ。いい女だけどもあっしゃァねェ、ぞおォッとしちゃったァ」
「そら本当(ほんと)かァ?」

   3a. 古今亭志ん生=口演 川戸貞吉=速記解説 「牡丹燈籠(下)」
      『志ん生古典落語6 牡丹燈籠』 弘文出版 2002/06
   3b. 古今亭志ん生=談 『五代目古今亭志ん生全集4』 弘文出版 1977
   3a.3b. を再録して、一部表記を改めたもの。初出は 3b.
   引用は 3a. に拠りました。原文の傍点を下線で、小さい「ン」を大きい「ン」で、
   それぞれ置き換えました。


(4) 円朝 1955, 2002
 伴「先生萩原さまは大変ですよ。」
 勇「どうかしたか。」
 伴「どうかしたの何のという騒ぎじゃございやせん(……)その大切な萩原様が大変な訳だ、毎晩女が泊りに来ます。」
 勇「若くって独身者(ひとりもの)でいるから、随分女も泊りに来るだろう、しかしその女は人の悪いようなものではないか。」
 伴「なに、そんな訳ではありません、私(わつち)が今日用があって他へ行って、夜中に帰ってくると、萩原様の家(うち)で女の声がするからちょっと覗きました。」
 勇「わるい事をするな。」
 伴「するとね、蚊帳(かや)がこう吊ってあって、その中に萩原様と綺麗な女がいて、その女が見捨ててくださるなというと、生涯見捨てはしない、たとえ親に勘当されても引取って女房にするから決して心配するなと萩原様がいうと、女が私は親に殺されてもお前さんの側(そば)は放れませんと、互いに話をしていると。」
 勇「いつまでもそんなところを見ているなよ。」
 伴「ところがねえ、その女がただの女じゃアないのだ。」
 勇「悪党か。」
 伴「なに、そんな訳じゃアない、骨と皮ばかりの痩(や)せた女で、髪は島田に結って鬢(びん)の毛が顔に下り、真青な顔で、裾(すそ)がなくって腰から上ばかりで骨と皮ばかりの手で萩原様の首ったまへかじりつくと、萩原様は嬉しそうな顔をしているとその側に丸髷(まるまげ)の女がいて、こいつも痩て骨と皮ばかりで、ズッと立上ってこちらへくると、やっぱり裾が見えないで、腰から上ばかり、まるで絵に描いた幽霊の通り、それを私(わつち)が見たから怖くて歯の根も合わず、家(うち)へ逃げ帰って今まで黙っていたが、どういう訳で萩原様があんな幽霊に見込まれたんだか、さっぱり訳が分りやせん。」
 勇「伴蔵本当か。」

   4a. 三遊亭円朝=作 『怪談牡丹燈籠』 岩波文庫 改版 2002/05
   4b. 三遊亭円朝=作 『牡丹燈籠—怪談』 岩波文庫 1955/06
   引用は 4a. に拠りました。
   これらの岩波文庫版が、何を底本にしたかは存じません。
   参考:富田倫生 「『圓朝全集』は誰のものか
   1999/06/30 作成 2005/10/16 修正


(5) 圓朝 1927, 1963, etc.
伴「先生萩原さまは大変ですよ」
勇「何(ど)うかしたか」
伴「何うかしたかの何(なん)のという騒ぎじゃございやせん、私(わっち)も先生も斯(こ)うやって萩原様の地面内(うち)に孫店(まごだな)を借りて、お互いに住(すま)っており、其の内でも私は尚(な)お萩原様の家来同様に畑をうなったり庭を掃いたり、使い早間(はやま)もして、嚊(かゝあ)は洒(すゝ)ぎ洗濯をしておるから、店賃(たなちん)もとらずに偶(たま)には小遣(こづかい)を貰ったり、衣物(きもの)の古いのを貰ったりする恩のある其の大切な萩原様が大変な訳だ、毎晩女が泊りに来ます」
勇「若くって独身者(ひとりもの)でいるから、随分女も泊りに来るだろう、併(しか)し其の女は人の悪いようなものではないか」
伴「なに、そんな訳ではありません、私(わっち)が今日用が有って他(ほか)へ行って、夜中(やちゅう)に帰(けえ)ってくると、萩原様の家(うち)で女の声がするから一寸(ちょっと)覗(のぞ)きました」
勇「わるい事をするな」
伴「するとね、蚊帳(かや)がこう吊(つ)ってあって、其の中に萩原様と綺麗な女がいて、其の女が見捨てゝくださるなというと、生涯見捨てはしない、仮令(たとい)親に勘当されても引取(ひきと)って女房にするから決して心配するなと萩原様がいうと、女が私(わたくし)は親に殺されてもお前(まえ)さんの側は放れませんと、互いに話しをしていると」
勇「いつまでもそんな所を見ているなよ」
伴「ところがねえ、其の女が唯(たゞ)の女じゃアないのだ」
勇「悪党か」
伴「なに、そんな訳じゃアない、骨と皮ばかりの痩(や)せた女で、髪は島田に結って鬢(びん)の毛が顔に下(さが)り、真青(まっさお)な顔で、裾(すそ)がなくって腰から上ばかりで、骨と皮ばかりの手で萩原様の首ったまへかじりつくと、萩原様は嬉しそうな顔をしていると其の側に丸髷(まるまげ)の女がいて、此奴(こいつ)も痩(やせ)て骨と皮ばかりで、ズッと立上(たちあが)って此方(こちら)へくると、矢張(やっぱり)裾が見えないで、腰から上ばかり、恰(まる)で絵に描(か)いた幽霊の通り、それを私(わっち)が見たから怖くて歯の根も合わず、家(うち)へ逃げ帰(けえ)って今まで黙っていたんだが、何(ど)ういう訳で萩原様があんな幽霊に見込まれたんだか、さっぱり訳が分りやせん」
勇「伴藏本当か」

   5a. 三遊亭円朝=作 鈴木行三(すずき・こうぞう)=校訂編纂
      「怪談牡丹灯籠」 青空文庫 アップロード 2010-02-08
   5b. 三遊亭圓朝=著 鈴木行三=校訂編纂 『圓朝全集 巻の2
      近代文芸資料複刻叢書 世界文庫 1963 所収     
   5c. 三遊亭圓朝=著 鈴木行三=校訂編纂 『圓朝全集 巻の2』 全10冊
      春陽堂 1927(昭和2)
   5a. の底本は 5b.5b. は、5c. の複刻・限定版。


 Video 4 
桂歌丸 『牡丹燈籠~栗橋宿』 1/4

Uploaded to YouTube by stones1009 on 22 Oct 2010


■本と映画 Books and a cinema

a. 51z0fh39gyl_ss500_ b. 50600143900971 c. Shinsho_botan_doro

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■外部リンク External links

  • 圓朝・圓生 百年
    西暦2000年の三遊亭圓朝没後100年、三遊亭圓生生誕100年を記念して設けられたサイト。年譜、演目、書籍一覧、CDリスト、画像など満載。助六、甘金、CAB の三氏が運営。

■落語以外のバージョン
 On the original story in Chinese and miscellaneous adaptations

  • 映画/歌舞伎版作品、
  • ラフカディオ・ハーン(=小泉八雲)による再話、
  • 浅井了意による“仮名草子”版『伽婢子(おとぎぼうこ)』、

  そして、元をたどれば、これらすべての種本となったとされる、

  • 中国明代の瞿佑(くゆう)=作の伝奇小説集『剪燈新話(せんとうしんわ)』に収められた「牡丹燈記(ぼたんとうき)」

  などについては、別の機会にとりあげるつもりです。


■更新履歴 Change log

  • 2013-11-10 古今亭志ん生の録音の YouTube 画面を追加しました。
  • 2012-10-05 つぎの3本の YouTube 動画を追加しました。
    1. 怪談・牡丹燈籠 もっともっと、愛されたかった。(2007)
    2. 稲川淳二のショートホラーシネマ 伝説のホラー (2003) 英語字幕つき
    3. 稲川淳二のショートホラーシネマ 伝説のホラー (2003) スペイン語字幕つき
  • 2012-08-25 三遊亭円朝=作のテキストを挿入しました。また、つぎの YouTube 動画を追加しました。
    1. 歌丸 『牡丹燈籠~栗橋宿』

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■和書 Books in Japanese
(1)『牡丹灯籠』

(2)『牡丹燈籠』

■CD
(1) 牡丹燈籠/牡丹灯籠

(2) 志ん生+牡丹灯籠

■DVD

■洋書 Books in non-Japanese languages

  

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Friday, 03 August 2007

クロちゃんとトールのカフェ・ラテ

 
 
クロマニヨン人は抹茶フラペチーノをひと口飲んでからあくびした。

午後4時半。京都三条大橋西詰めのスターバックス・コーヒー。

オレはクロマニヨン人におとといフラれた。そのときのことを

思い出しながら書いている。

クロマニヨン人♀22歳。愛称:クロちゃん。オレより二十歳ちかくも若い。

「終わりにしたいんです」——クロちゃんが言った。

なぜ? オレのどこがいけないんだ?

アプローチしてきたのは、クロちゃんのほうだったのに。

「予想していたYさんとはちがってたんです」(Yというのはオレの名字)

予想していたYさん?——なんだ、それ?

クロちゃんにあらかじめ予想できるようなオレのイメージなんぞあってたまるか。

オレは、オレ以外のなにものでもない、オレなんだ。

抹茶フラぺチーノを飲み終わったクロちゃんは言った。

「じゃ、わたし、これで帰るから」

オレは力なく手をふった。

オレのトールのカフェ・ラテは、まだカップ半分以上も残っている。

こぼれないように右手に持ち、左手で自転車のハンドルを握りながら

オレは家路についた。

「ケッ、たかがクロマニヨン人のくせに!」
 
 
Tomoki Yamabayashi
  
 
■更新履歴 Change log

2007/08/04 tomokilog にアップロードする。

2005/09/29 元の作品を書く。
 
 

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谷川俊太郎 「なんでもおまんこ」 Nan-demo Omanko by Shuntaro Tanikawa

■語釈:「おまんこ」の定義 (1) Definition of 'omanko': Lexical information (1)

お-まんこ 〔名〕(「お」は接頭語)

(1) 女性の陰部の異称。陰門。
 * 雑俳・柳多留-一二四 (1833)「おまん子のむく毛は馬がこするやう」
 * 和英語林集成(初版)(1867)「Omanko オマンコ 陰門」

(2) 俗に、性交のこと。

[語源説]
マンコはメノコ(女子)の転〔神代史の新研究=白鳥庫吉国語拾遺語原考=久門正雄〕。


■語釈:「おまんこ」の定義 (2) Definition of 'omanko': Lexical information (2)

まんことは、女性器の外陰部を意味する俗語。英語のcunt、pussy などのスラングに相当する語。現在では女性器の外陰部の名称として、関東を中心として日本の広い範囲で使われ、同等の言葉として近畿地方では「おめこ」が使われる。その「おめこ」も、1975年から双葉社の『週刊漫画アクション』に連載された、どおくまんの「嗚呼!!花の応援団」のヒットがきっかけで日本の広い範囲で知られる事となった。(登場人物である、親衛隊長・青田赤道が、事あるごとに"オメコ"と叫ぶシーンの連発で知られた)[以下略]


■「Omanko」の項を収録した『和英語林集成』 初版 (1867) のページ
Omanko_waei_gorin_shusei
『和英語林集成』は、アメリカ人宣教師・医師 James Curtis Hepburnジェームス・カーティス・ヘボン)によって編纂された日本初の和英辞典。Image source: 明治学院大学図書館 - 『和英語林集成』デジタルアーカイブス


■表紙画像その他 Cover photos, etc.

↓ クリックして拡大 Click to enlarge ↓

a. _9784003119211_2 b. Tanikawa_micky_bunko_9784101266220
c. Tanikawa_micky_tankobon978410401803 d. Nikkoku_

■日本語原文 The original text in Japanese

なんでもおまんこなんだよ
あっちに見えてるうぶ毛の生えた丘だってそうだよ
やれたらやりてえんだよ
おれ空に背がとどくほどでっかくなれねえかな
すっぱだかの巨人だよ
でもそうなったら空とやっちゃうかもしれねえな
空だって色っぽいよお
晴れてたって曇(くも)ってたってぞくぞくするぜ
空なんか抱いたらおれすぐいっちゃうよ
どうにかしてくれよ

(このあと27行つづく。全文は こちら で読める。ただし改行をスラッシュ/で置き換えてある)


■谷川俊太郎:「詩はアドリブだ!」~詩はこうして生まれる~

聞き手: 蒲田健 Uploaded to YouTube by mogurin mogu on 28 Feb 2014


■外部リンク External links


■更新履歴 Change log

  • 2015/02/22 「いのち」の朗読の YouTube 動画がリンク先で削除されていたので、代わりに別の YouTube 画面を載せました。
  • 2013/02/12 書誌情報に岩波文庫版を追加しました。
  • 2010/09/22 語釈:「おまんこ」の定義 (2) を追加しました。
  • 2010/09/02 「Omanko」の項を収録した『和英語林集成』のページの画像を追加しました。
  • 2010/08/10 外部リンクの項を新設しました。また、谷川俊太郎による「いのち」朗読の YouTube 動画を追加しました。

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Wednesday, 01 August 2007

谷川俊太郎「ばか」Baka by Shuntaro Tanikawa

Tanikawa 70112_kodomo_ehonkan Kotoba_asobi_uta

           ↑ Click to enlarge ↑  

Left Shuntaro Tanikawa: Selected Poems Translated into English by William I. Elliott and Kazuo Kawamura. Paperback: Persea Books (2001)
Centreおならうた』絵本館 (2006)
Rightことばあそびうた』福音館書店 (1973)

谷川俊太郎 Shuntaro Tanikawa (1931- )
 
■日本語原文 The original text in Japanese
 
 
 
 
           はかかった
           ばかはかかった
           たかかった
 
 
           はかかんだ
           ばかはかかんだ
           かたかった
 
 
           はがかけた
           ばかはがかけた
           がったがた
 
 
           はかなんで
           ばかはかなくなった
           なんまいだ
 
 
 
 
   谷川俊太郎=詩 瀬川康男=絵「ばか」
   『ことばあそびうた』福音館書店 1973/10 所収

   Word Games: Nonsense Pictures and Rhymes
   Text by Shuntaro Tanikawa. Illustrations by Yasuo Segawa
   Fukuinkan Shoten Publishers, Tokyo, 1973
 
 
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