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Friday, 10 August 2007

瞿佑(く・ゆう)瞿宗吉(く・そうきつ) 「牡丹燈記」「牡丹灯記」(『剪燈新話(せんとうしんわ)』より)

           目次 Table of Contents

   ■表紙画像 Cover photos
   ■現代日本語訳 Translations into contemporary Japanese
     (J1) 竹田+小塚+仙石 2008
     (J2) 竹田 1990
     (J3) 金 1989
     (J4) 鈴木 1972, 2006
     (J5) 飯塚 1958, 1965
     (J6) 村上 1954, 1959
     (J7) 岡本 1929, 1935, etc.
     (J8) 田中 1926, 1934, etc.
     (J9) 鈴木 1926
     (J10) 鹽谷(塩谷) 1921
   ■中国語原文(簡体字)The original text in simplified Chinese
   ■中國語原文(繁體字)The original text in traditional Chinese
   ■英題の異同 Variations of the title in English
   ■外部リンク External links
   ■更新履歴 Change log


■表紙画像 Cover photos

a. 4309462235 b. 012080050000 c. 80_048
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■現代日本語訳 Translations into contemporary Japanese

(J1) 竹田+小塚+仙石 2008
 (……)喬(きょう)が女を引き留めたので、その晩は喬の家に泊まることとなった。女の物腰はとても妖艶で、言葉遣いもなまめかしく、寝台の帷を下ろして枕を近づけると、二人は欲情を燃やしきるまで愛し合ったのであった。
 朝になると、女は別れを告げて帰って行った。そして、日が暮れるとまたやってくる。このようにして半月が経とうとした頃、喬の様子を怪しんだ隣の家の老人が、壁に穴を開けて喬の家の中の様子を覗いてみると、化粧をした髑髏が喬と並んで灯りのもとに座っているではないか。腰を抜かさんばかりに驚いた老人が、翌朝になって喬を問いつめた。(……)

   瞿佑(く・ゆう) 「牡丹灯籠(牡丹灯記)」
   竹田晃+黒田真美子=編 竹田晃+小塚由博+仙石知子=著
   『剪灯新話 明代 中国古典小説選 8』 明治書院 2008/04/10


(J2) 竹田 1990
 (……)喬(きょう)は女を引きとめて泊まらせた。えにいわれぬなまめかしいものごし、言葉づかいも色っぽく、ベッドのとばりをおろし、枕を近づけて、また愛欲の火を燃やしつくした。夜が明けると別れを告げて帰って行ったが、日が暮れるとまたやって来る。
 このような状態が続いて半月になろうとするころ、隣家の老人がどうも様子がおかしいと怪しみ、壁に穴をあけてのぞいて見た。すると、なんと、化粧をほどこした一つの髑髏(どくろ)が灯火(ともしび)の下で喬と並んで座っているではないか。腰をぬかすほど驚いた老人は、翌朝喬を問いつめた。(……)

   瞿佑(く・ゆう)=著 竹田晃(たけだ・あきら)=訳・解説 「牡丹灯籠」
   竹田晃=編 『中国幻想小説傑作集
   白水Uブックス91 白水社 1990/12


(J3) 金 1989
 (……)男は女を引きとめて泊めたが、身のこなしあでやかに、言葉つきもなまめいて、寝台のとばりを低くたれ、枕を引きよせて歓楽をつくした。夜が明けると女は別れをつげて帰ったが、暮れどきになるとまた訪れる。
 こうしてかれこれ半月になろうとする頃、隣の老人が不審に思い、壁に穴をあけてのぞいてみると、なんと白粉(おしろい)をつけたされこうべが灯の下で男と並んですわっているではないか。老人は大いにおどろき、翌朝男を問いつめたが(……)

   瞿佑=作 金文京(きん・ぶんきょう)=著(現代語訳)
   「剪灯新話(せんとうしんわ) 牡丹灯記」
   『鑑賞 中国の古典23 中国小説選』 角川書店 1989/11


(J4) 鈴木 1972, 2006
 (……)共に語らい、共に打ち興じ、その後、床を同じくし、歓楽を尽くして帰っていった。
 それからは毎夜、同じ時刻に訪れては明け方帰る。それが半月近くも続いた。

 喬生(きょうせい)の隣に、やはり一人暮らしの老人が住んでいた。
 年のせいか、近頃寝つきが悪かった。(……)眠られぬまま、床の中であれこれ考えていると、隣の家から女の話し声が聞えてくる。
 珍しいことがあるものだ。こんな夜ふけに、喬生の家に女の客があるなんて……。
 (……)よし、どんな相手か、そっと拝見して、明日にでも冷やかしてやるか……。
 この老人、年がいもなくのこのこはい出し、壁に穴をあけてそっと隣の様子をうかがってみた。
 うす暗い燈火のもとに、喬生がぽつねんと椅子にかけている。向かいあっているのは一体のどくろ。ぽっかり開いた眼窩(がんか)を喬生に向け、下顎(したあご)の骨をがくがく動かしながら盛んに話しかけている。(……)
 腰をぬかさんばかりに仰天したじいさん、はうようにして床にもぐり込むと、頭から蒲団をかぶり、震え声で神仏を念じ出した。
 翌日、起きっぱなに隣家を訪れたじいさん、睡眠不足でぼんやりしている喬生を寝台から引っぱりおろして、昨夜見たことを話して聞かせた。ところが(……)

   a. 中国の伝承話 鈴木了三(すずき・さとみ)=訳 「怪談 牡丹燈記」
     さねとうあきら、岡本綺堂〔ほか〕=著 赤木かん子=編
     『牡丹灯籠』 ホラーセレクション 1 (全10巻)
     ポプラ社 2006/03
   b. 鈴木了三=編訳 『中国奇談集』 現代教養文庫 社会思想社 1972

   a. の底本は b.。引用は a. に拠りました。ルビを一部省略しました。


(J5) 飯塚 1958, 1965
 (……)喬(きょう)は女をひきとめて泊めると、なんともいえぬ妖艶な身のこなし、いう言葉もなまめいて、寝台のとばりをおろし、枕を近づければ、愛欲のかぎりをつくすのだった。夜が明けると別れをつげて帰っていったが、夜はまた訪れてくる。
こうして半月になろうとするころ、隣家の老人がこれをあやしみ、壁に穴をあけてのぞいてみると、一つの髑髏(どくろ)が燈の下で喬とならんで座っているので、びっくり仰天した。翌朝になって老人がこれを詰問すると(……)

   瞿佑=作 飯塚朗(いいづか・あきら)=訳 「巻の二 牡丹燈籠(牡丹燈記)」
   a.剪燈新話』 東洋文庫 48 平凡社 1965/08
   b.中国古典文学全集 20 剪灯新話・閲微草堂筆記 他』 全33巻
     平凡社 1958/04

   引用は a. に拠りました。


(J6) 村上 1954, 1959
 生はひき留めて泊めることにしたのだったが、すると美人のその身のこなしは妖艶(ようえん)だし、そのことばつきが甘ったれていて、やがていよいよ幃(とばり)をたれ、枕についてみたときには、およそ情けのかぎりを尽くし、夜が明けるといったん辞して立ち去りながら、暮れには又もやたずねてくるというありさま。しかもそうすることが半月もつづいたものである。となりの翁(おきな)が、どうもおかしいと嗅(か)ぎつけて、あいだの壁に穴をあけ、そっとのぞいてみれば、ひとりの美しいされこうべが、あかりの下で、生とならんで坐っているのが見えたので、翁はあっとばかり、おおいに駭(おどろ)き、そのあくる朝、生にむかって質(ただ)してみれば(……)

   瞿佑=作 村上知行(むらかみ・ともゆき)=訳
   a.世界文学全集 第3期 別巻2』 河出書房 1959
   b.全訳剪燈新話』 中央公論社 1954/10
   引用は b. に拠りました。


(J7) 岡本 1929, 1935, etc.
 今夜は泊まってゆけと勧めると、女はそれをも拒まないで、ついにその一夜を喬生の家(うち)に明かすことになった。それらのことはくわしく言うまでもない、「はなはだ歓愛を極む」と書いてある。夜のあけるころ、女はいったん別れて立ち去ったが、日が暮れると再び来た。金蓮という小女がいつも牡丹燈をかかげて案内して来るのであった。
 こういうことが半月ほども続くうちに、喬生のとなりに住む老翁(ろうおう)が少しく疑いを起こして、壁に小さい穴をあけてそっと覗いていると、紅(べに)や白粉(おしろい)を塗った一つの骸骨が喬生と並んで、ともしびの下に睦(むつ)まじそうにささやいていた。それを見て大いに驚いて、老翁は翌朝すぐに喬生を詮議すると(……)

   瞿佑(く・ゆう) / 瞿宗吉(く・そうきつ)=作 岡本綺堂(おかもと・きどう)=訳
   『剪燈新話』 「牡丹燈記 / 牡丹灯記」
   a. 中国怪奇小説集 新装版』 光文社文庫 2006/08/20
   b.世界怪談名作集 18 牡丹燈記」 青空文庫(電子テキスト) 2003/09
   c.世界怪談名作集(下)』 河出文庫 2002/06
   d.新・ちくま文学の森2 奇想天外』 筑摩書房 1994/10
   e. 世界怪談名作集(下)』 河出文庫 1987/09
   f. 中国怪奇小説集』 旺文社文庫 1978/04
   g.岡本綺堂読物選集7 飜訳編(上)』 青蛙房 1970
   h. 支那怪奇小説集』 サイレン社 定價貳圓 1935/11/20(昭和10)
     国立国会図書館デジタル化資料
   i.世界大衆文學全集35 世界怪談名作集』 改造社 1929/08(昭和4)

   a.f. を再刊したもの。f.h. のタイトルの「支那」を「中国」に
   改めて再刊したもの。b. の底本は c.c.e. の新装版。
   d.
の底本は g.。引用は b. に拠りました。


(J8) 田中 1926, 1934, etc.
 女はとうとう一泊して黎明(よあけ)になって帰って往った。喬生(きょうせい)はもう亡くなった女房のことは忘れてしまって夜の来るのを待っていた。夜になると女は少女を伴(つ)れてやって来た。軽い小刻(こきざみ)な韈(くつ)の音がすると、喬生は急いで起って往って扉(と)を開けた。少女の持った真紅の鮮やかな牡丹燈が先ず眼に注(つ)いた。
 女は毎晩のように喬生の許へ来て黎明(よあけ)になって帰って往った。喬生の家と壁一つを境にして老人が住んでいた。老人は、鰥暮(やもめぐら)しの喬生が夜になると何人(だれ)かと話しでもしているような声がするので不審した。
「あいつ寝言を云ってるな」
 しかし、その声は一晩でなしに二晩三晩と続いた。
「寝言にしちゃおかしいぞ、人も来るようにないが、それとも何人(だれ)かが泊りにでも来るだろうか」
 老人はこんなことを云いながらやっとこさと腰をあげ、すこし頽(くず)れて時おり隣の燈(ひ)の漏れて来る壁の破れの見える処へ往って顔をぴったりつけて物好(ものずき)に覗いて見た。喬生が人間の骸骨と抱き合って榻(ねだい)に腰をかけていたが、そのとき嬉しそうな声で何か云った。老人は怖れて眼前(めさき)が暗むような気がした。彼は壁を離れるなり寝床の中へ潜りこんだ。(……)

   田中貢太郎(たなか・こうたろう)=著/述 「牡丹燈籠 牡丹燈記」
   a.牡丹燈記」 青空文庫(電子テキスト) 2003/09
   b.日本怪談大全2 幽霊の館』 国書刊行会 1995/08
   c.中国の怪談1』 河出文庫 1987/05
   d.支那怪談全集』 桃源社 1970/11
   e.剪燈新話』 新潮文庫 1939/08/16(昭和14)
     国立国会図書館デジタル化資料
   f.日本怪談全集 3』 改造社 1934(昭和9)
   g.剪燈新話』 新潮社 1926/08/16(大正15)
      国立国会図書館デジタル化資料

   b. 国書刊行会版は f. 改造社版を再編集したもの。引用は b.
   国書刊行会版に拠りました。ルビを一部省略しました。


(J9) 鈴木 1926
 (……)その夜彼女を引きとめて家に泊らせた。彼は女の態度の美しさ、言葉のなめ[ママ]かしさに、幾度か胸をとどろかせたが、遂に其夜樂しい語らひを結んだのである。
 夜明になつて、女は別れを告げて立去つた。然し夕方になると、彼女はまた彼を訪れ、その後、半月餘りも、毎晩時を違へずやつて來た。
 ところが、隣家の老人が、一人住ひの喬生の家に、毎晩人聲がするのを不審に思つて、或夜壁の空間から、こつそり家の樣子を覗いてみた。
 見ると、喬生は美しく着飾つた一の髑髏と燈下に對座してゐたので、老人はすつかり驚いてしまつた。そして翌朝喬生をつかまへて詰問したが(……)

   瞿佑=撰 鈴木彦次郎(すずき・ひこじろう)=譯 「牡丹燈の記」
   『支那文學大觀10』 「剪燈新話」
   支那文學大觀刊行會 非賣品 1926/06(大正15)


(J10) 鹽谷(塩谷) 1921
[ルビを省いたテキスト]
 (……)生之を留めて宿せしむ。態度妖妍、詞氣婉媚、幃を低れ枕を昵づけ、甚だ歡愛を極む。天明け辭し別れて去る。暮に及び則ち又至る。是の如くすること將に半月ならんとす。隣翁焉を疑ひ壁に穴して之を窺へば、則ち一粉粧髑髏の生と燈下に竝び坐するを見、大に駭き、明旦之を詰る。(……)

[原文——総ルビ]
 (……)生(せい)之(これ)を留(とど)めて宿(しゆく)せしむ。態度(たいど)妖妍(えうけん)、詞氣(しき)婉媚(ゑんび)、幃(とばり)を低(た)れ枕(まくら)を昵(ちか)づけ、甚(はなは)だ歡愛(くわんあい)を極(きは)む。天(てん)明(あ)け辭(じ)し別(わか)れて去(さ)る。暮(くれ)に及(およ)び則(すなは)ち又(また)至(いた)る。是(かく)の如(ごと)くすること將(まさ)に半月(はんげつ)ならんとす。隣翁(りんをう)焉(これ)を疑(うたが)ひ壁(かべ)に穴(あな)して之(これ)を窺(うかが)へば、則(すなは)ち一粉粧(ふんしやう)髑髏(どくろ)の生(せい)と燈下(とうか)に竝(なら)び坐(ざ)するを見(み)、大(おほい)に駭(おどろ)き、明旦(みやうたん)之(これ)を詰(なじ)る。(……)

   瞿佑=撰 鹽谷温(しおのや・おん)=譯註 「牡丹燈の記」
   『國譯漢文大成 文學部 第13卷』 剪燈新話・餘話・宣和遺事
   國民文庫刊行會 非賣品 1921/12/15(大正10)
   国立国会図書館デジタル化資料


■中国語原文(簡体字)The original text in simplified Chinese

生留之宿,态度妖妍,词气婉媚,低帏昵枕,甚极欢爱。天明,辞别而去,暮则又至。如是者将半月,邻翁疑焉,穴壁窥之,则见一粉骷髏与生并坐于灯下,大骇。


■中國語原文(繁體字)The original text in traditional Chinese

生留之宿。態度精妍,詞氣婉媚,低篩昵枕,甚相歡愛。天明辭別而去,及暮則又至,如是者將半月。鄰翁疑焉,穴壁窺之,則見一粉妝髑髏,與生並坐於燈下,大駭。

  • 瞿佑 《剪燈新話》 牡丹燈記
  • E-text at 開放文學 (open-lit.com)

■英題の異同 Variations of the title in English

以下のとおり、「剪燈新話」の英語の題にはバラツキがあります。

  • New Lamp-Wick Trimming Stories
  • New Stories After Putting out the Lamp
  • New Tales After Trimming the Lamp
  • New Tales Told by Lamplight
  • New Tales Under the Lamplight
  • New Tales for Trimming the Lamp
  • New Tales of the Trimmed Lamp

■外部リンク External links


■更新履歴 Change log

  • 2016/04/08 竹田晃+小塚由博+仙石知子=著 2008/04/10 を追加しました。
  • 2013/11/15 岡本綺堂=訳の書誌情報をさらに修正・補足しました。
  • 2013/11/12 村上知行=訳、岡本綺堂=訳、鹽谷温=譯註 1921/12/15 などの書誌情報を修正・補足しました。また、目次、外部リンクの項、および英題の異同の項を新設しました。
  • 2013/11/10 飯塚朗=訳の書誌情報を補足しました。
  • 2010/01/29 中国語原文(簡体字)の電子テキストが一部リンク切れになっていたのを修正しました。
  • 2007/11/08 岡本綺堂=訳の書誌情報を補足し、訳文の配列を修正しました。
  • 2007/08/16 村上知行=訳 1954/10、鈴木彦次郎=譯 1926/06、および鹽谷温=譯 1922/01 を追加しました。

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■洋書 Books in non-Japanese languages

■和書 Books in Japanese
(1)「剪灯新話」

(2)「牡丹燈記」

  

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