Conundrum by Jan Morris ジャン・モリス 『苦悩—ある性転換者の告白』
目次 Table of Contents
■はじめに Introduction
Images 本の表紙、著者とその息子 Book covers, The author and her son
■日本語訳 Translation into Japanese
■英語原文 The original text in English
Video 1 An Evening with Jan Morris in Conversation with Don George
Video 2 トランスセクシャルの人たちに薦める本 Helpful books for transsexuals
■性転換手術の内実 The reality of her sex change surgery
■「性転換」に関わる用語について On terminology relating to "sex change"
■『苦悩』復刊リクエスト
■モリスとカルーセル麻紀: トリヴィア Trivia
■tomokilog の関連記事 Related article from tomokilog
■外部リンク External links
■更新履歴 Change log
■はじめに Introduction
『苦悩—ある性転換者の告白』は、ジャン・モリスが書いた半自伝的な本。セクシュアリティの分野、とくに性同一性障害についての草分け的な著作。英語の原書は高い評価を受け、あちこちの専門書でも引用され、ロングセラーとなっています。
その冒頭部分を訳書と原書から下に引用します。
Images
本の表紙、著者とその息子 Book covers, The author and her son
- Conundrum, NYRB Classic (2006)
- L'enigme, d'un sexe a l'autre, Gallimard (1989) フランス語版
- Jan Morris and her son, poet Twm Morys. Image source: BBC News
■日本語訳 Translation into Japanese
何かの間違いで男の子の身体に生まれてきてしまったが、自分はほんとうは女の子なのだと気がついたのは、三歳の時だった。もしかしたら、四歳だったかもしれない。とにかく、その時のことはよく覚えていて、私の最も古い記憶となっている。
私は、母が弾いているピアノの下に坐っていた。(……)
- ジャン・モリス=著 竹内泰之(たけうち・やすゆき)=訳 『苦悩—ある性転換者の告白』 立風書房(りっぷうしょぼう)1976/06
■英語原文 The original text in English
I was three or perhaps four years old when I realized that I had been born into the wrong body, and should really be a girl. I remember the moment well, and it is the earliest memory of my life.
I was sitting beneath my mother's piano (....)
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Conundrum by Jan Morris
- Originally published: London : Faber, 1974.
- Paperback: New York Review Books Classics, 2006/05
- E-text at Changeling Aspects
- Excerpt/quotation at:
- Studies in Human Sexuality: A Selected Guide by Suzanne G. Frayser, Thomas J. Whitby
- Male Femaling: A Grounded Theory Approach to Cross-dressing and Sex-changing by Richard Ekins
- Embryogenesis: Species, Gender, and Identity by Richard Grossinger
Video 1
An Evening with Jan Morris in Conversation with Don George
Uploaded to YouTube by GeoEx on 31 May 2013.
Video 2
トランスセクシャルの人たちに薦める本 A few helpful books for transsexuals
トランスセクシャルの人々に推薦する本として、この女性はミルドレッド・ブラウンとクロエ・ラウンズリーの共著『トゥルー・セルブズ』とならんでジャン・モリスの『苦悩』を挙げています。ビデオの 4:08 あたりからご覧ください。 Uploaded by LainWest on Jun 21, 2010. As for books for transsexuals, this woman recommends Jan Morris's Conundrum (especially Chapter 12: Changing sex—hormonal effects—a precarious condition— self-protection—rules) along with True Selves by Mildred L. Brown and Chloe Ann Rounsley. Watch the video from around 4:08.
■性転換手術の内実 The reality of her sex change surgery
ジャン・モリスは、著名なジャーナリスト、歴史家、旅行作家。1926年英国に生まれ、ジェームズ・ハンフリー・モリスという名の男性として育った。成人して1949年に結婚し、20年以上夫婦生活を続けた。この間に5人の子供をもうけている(うち1人は幼少時に死亡)。上の写真の右側にうつっている詩人 Twm Morys は5人のうちの1人。
モリスは内心つねに自分のことを女性であると感じ、男性の外見を持つ自分の身体を居心地悪く感じていた。これは、よく誤解されるような同性愛の状態ではなくて、純粋に身体と自覚する性との不一致の問題であった。1960年代になると、モリスはエストロゲン(女性ホルモン)の注射を打ってもらうようになった。英国内で性転換手術を受けようとしたが、医師は手術前に、まずモリスが妻と離婚するよう求めた。ところが、モリスは、これを拒否。結局、国内での手術は断念した。
モリスは、こんどは性転換手術の世界的パイオニアといわれるモロッコ在住のフランス人医師 Dr. Georges Burou のもとを訪ねて手術を受けた。モリスの睾丸とペニスは除去され、Dr. Burou は膣の役目を果たす空洞を人工的にこしらえた。陰唇は、モリスの陰嚢の組織から作りあげられ、空洞部の表面は、モリスのペニスの敏感な部分の皮膚を用いて覆われた。モリスの尿道の海綿状の部分は、クリトリスが位置すべき場所を形成した。
手術後、ジェームズはジャンと名乗るようになった。よき理解者である妻(であった女性)とは同居をつづけ、家族として、きわめて良好な結びつきを維持している。自分の受けた性転換手術については、"a bloody violation" 血まみれの(=とんでもない)暴行だったと、モリスは語っている。
- 以上はウィキペディア英語版の Jan Morris の項から抜粋した拙訳。補足・修正を加えました。
■「性転換」に関わる用語について On terminology relating to "sex change"
ウィキペディアによると、性転換手術は旧称であり、いまは 性別適合手術 と呼ぶようです。英語では、sex-change operation が通称または俗称。専門用語あるいは正式名としては、sex reassignment surgery (SRS)、gender reassignment surgery (GRS) などが使われるようです。
■『苦悩』復刊リクエスト
上の立風書房刊の邦訳は、長らく絶版になっています。たまに古書店などで見かけると、べらぼうな値段がついていることも。この本の復刊を希望される方は、復刊ドットコム というサイトで復刊のリクエスト投票をなさるのも一法かと思います。
もっとも、票が必要数に達して、実際に復刊が実現するまでには、通常かなり時間がかかるようです。むしろ、新訳の出現を期待するほうが現実的かどうか。私には、ちょっと判断がつきかねます。
なお、原書のほうは上述のとおり、セクシュアリティ、性同一性障害に関わる草分け的な著作として定評があり、ロングセラーとなっています。したがって、新本でも古本でもオンライン書店でも入手するのは容易です。
■モリスとカルーセル麻紀: トリヴィア Trivia
私の記憶違いでなければ、ジェームズ・モリスがジャン・モリスになるための手術を施した、モロッコの医師 Dr. Georges Burou は、カルーセル麻紀さんに執刀したのとおなじ人だったと思います。ふたりが手術を受けた時期も、おなじ1970年代の比較的近い時期だったと、どこかで読んだように記憶します。
以下に関連サイトを挙げます。ただし、各サイトに記載されている内容の真偽・正確さのほどは、いっさい保証いたしません。
- 独語徘徊記録
- ジャン・モリスの場合 - 性は変えられるか(全文)(「ざしきふぐのTS資料館」サイト内)
- オンラインマガジン「セクシュアル サイエンス」(「 杏野丈の性同一性障害」サイト内)
■tomokilog の関連記事 Related article from tomokilog
-
Friday, 17 August 2007
Pax Britannica by Jan Morris
ジャン・モリス『パックス・ブリタニカ』
■外部リンク External links
-
[en] English
- BBC Wales - Arts - Jan Morris 2008-11-27
- The moving love story between writer Jan Morris and her ex-wife, who she re-married after her sex change - Mail Online, 2008-06-04
- Morris, Jan - Literature, Arts and Medicine Database
- Conundrum - Random House
- Lonely Planet | Traveller at large
- Jan Morris - Wikipedia (1926- )
-
[ja] 日本語
- ジャン・モリス - 関心空間 by tomoki y.
■更新履歴 Change log
- 2015-03-25 「はじめに」の項を新設しました。
- 2013-10-12 目次を新設しました。また、An Evening with Jan Morris in Conversation with Don George の YouTube 動画を追加しました。
- 2012-10-05 トランスセクシャルの人たちに薦める本の YouTube 動画を追加しました。
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■洋書 Books in non-Japanese languages
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(2) Jan Morris
■和書 Books in Japanese
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