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November 2007

Friday, 30 November 2007

Conundrum by Jan Morris ジャン・モリス 『苦悩—ある性転換者の告白』

           目次 Table of Contents

   ■はじめに Introduction
    Images  本の表紙、著者とその息子 Book covers, The author and her son
   ■日本語訳 Translation into Japanese
   ■英語原文 The original text in English
    Video 1  An Evening with Jan Morris in Conversation with Don George
    Video 2  トランスセクシャルの人たちに薦める本 Helpful books for transsexuals
   ■性転換手術の内実 The reality of her sex change surgery
   ■「性転換」に関わる用語について On terminology relating to "sex change"
   ■『苦悩』復刊リクエスト
   ■モリスとカルーセル麻紀: トリヴィア Trivia
   ■tomokilog の関連記事 Related article from tomokilog
   ■外部リンク External links
   ■更新履歴 Change log


■はじめに Introduction

『苦悩—ある性転換者の告白』は、ジャン・モリスが書いた半自伝的な本。セクシュアリティの分野、とくに性同一性障害についての草分け的な著作。英語の原書は高い評価を受け、あちこちの専門書でも引用され、ロングセラーとなっています。

その冒頭部分を訳書と原書から下に引用します。


 Images 
本の表紙、著者とその息子 Book covers, The author and her son

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↑ クリックして拡大 Click to enlarge ↑

■日本語訳 Translation into Japanese
 
 何かの間違いで男の子の身体に生まれてきてしまったが、自分はほんとうは女の子なのだと気がついたのは、三歳の時だった。もしかしたら、四歳だったかもしれない。とにかく、その時のことはよく覚えていて、私の最も古い記憶となっている。
 私は、母が弾いているピアノの下に坐っていた。(……)


■英語原文 The original text in English

I was three or perhaps four years old when I realized that I had been born into the wrong body, and should really be a girl. I remember the moment well, and it is the earliest memory of my life.

I was sitting beneath my mother's piano (....)


 Video 1 
An Evening with Jan Morris in Conversation with Don George

Uploaded to YouTube by GeoEx on 31 May 2013.


 Video 2 
トランスセクシャルの人たちに薦める本 A few helpful books for transsexuals

トランスセクシャルの人々に推薦する本として、この女性はミルドレッド・ブラウンとクロエ・ラウンズリーの共著『トゥルー・セルブズ』とならんでジャン・モリスの『苦悩』を挙げています。ビデオの 4:08 あたりからご覧ください。 Uploaded by LainWest on Jun 21, 2010. As for books for transsexuals, this woman recommends Jan Morris's Conundrum (especially Chapter 12: Changing sex—hormonal effects—a precarious condition— self-protection—rules) along with True Selves by Mildred L. Brown and Chloe Ann Rounsley. Watch the video from around 4:08.


■性転換手術の内実 The reality of her sex change surgery

ジャン・モリスは、著名なジャーナリスト、歴史家、旅行作家。1926年英国に生まれ、ジェームズ・ハンフリー・モリスという名の男性として育った。成人して1949年に結婚し、20年以上夫婦生活を続けた。この間に5人の子供をもうけている(うち1人は幼少時に死亡)。上の写真の右側にうつっている詩人 Twm Morys は5人のうちの1人。

モリスは内心つねに自分のことを女性であると感じ、男性の外見を持つ自分の身体を居心地悪く感じていた。これは、よく誤解されるような同性愛の状態ではなくて、純粋に身体と自覚する性との不一致の問題であった。1960年代になると、モリスはエストロゲン(女性ホルモン)の注射を打ってもらうようになった。英国内で性転換手術を受けようとしたが、医師は手術前に、まずモリスが妻と離婚するよう求めた。ところが、モリスは、これを拒否。結局、国内での手術は断念した。

モリスは、こんどは性転換手術の世界的パイオニアといわれるモロッコ在住のフランス人医師 Dr. Georges Burou のもとを訪ねて手術を受けた。モリスの睾丸とペニスは除去され、Dr. Burou は膣の役目を果たす空洞を人工的にこしらえた。陰唇は、モリスの陰嚢の組織から作りあげられ、空洞部の表面は、モリスのペニスの敏感な部分の皮膚を用いて覆われた。モリスの尿道の海綿状の部分は、クリトリスが位置すべき場所を形成した。

手術後、ジェームズはジャンと名乗るようになった。よき理解者である妻(であった女性)とは同居をつづけ、家族として、きわめて良好な結びつきを維持している。自分の受けた性転換手術については、"a bloody violation" 血まみれの(=とんでもない)暴行だったと、モリスは語っている。

  • 以上はウィキペディア英語版の Jan Morris の項から抜粋した拙訳。補足・修正を加えました。

■「性転換」に関わる用語について On terminology relating to "sex change"

ウィキペディアによると、性転換手術は旧称であり、いまは 性別適合手術 と呼ぶようです。英語では、sex-change operation が通称または俗称。専門用語あるいは正式名としては、sex reassignment surgery (SRS)、gender reassignment surgery (GRS) などが使われるようです。


■『苦悩』復刊リクエスト

上の立風書房刊の邦訳は、長らく絶版になっています。たまに古書店などで見かけると、べらぼうな値段がついていることも。この本の復刊を希望される方は、復刊ドットコム というサイトで復刊のリクエスト投票をなさるのも一法かと思います。

もっとも、票が必要数に達して、実際に復刊が実現するまでには、通常かなり時間がかかるようです。むしろ、新訳の出現を期待するほうが現実的かどうか。私には、ちょっと判断がつきかねます。

なお、原書のほうは上述のとおり、セクシュアリティ、性同一性障害に関わる草分け的な著作として定評があり、ロングセラーとなっています。したがって、新本でも古本でもオンライン書店でも入手するのは容易です。


■モリスとカルーセル麻紀: トリヴィア Trivia

私の記憶違いでなければ、ジェームズ・モリスがジャン・モリスになるための手術を施した、モロッコの医師 Dr. Georges Burou は、カルーセル麻紀さんに執刀したのとおなじ人だったと思います。ふたりが手術を受けた時期も、おなじ1970年代の比較的近い時期だったと、どこかで読んだように記憶します。

以下に関連サイトを挙げます。ただし、各サイトに記載されている内容の真偽・正確さのほどは、いっさい保証いたしません。


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■外部リンク External links


■更新履歴 Change log

  • 2015-03-25 「はじめに」の項を新設しました。
  • 2013-10-12 目次を新設しました。また、An Evening with Jan Morris in Conversation with Don George の YouTube 動画を追加しました。
  • 2012-10-05 トランスセクシャルの人たちに薦める本の YouTube 動画を追加しました。

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■洋書 Books in non-Japanese languages
(1) Conundrum

(2) Jan Morris

■和書 Books in Japanese

  

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Wednesday, 28 November 2007

Gulliver's Travels by Jonathan Swift スウィフト 『ガリヴァー旅行記』『ガリヴァ旅行記』『ガリバー旅行記』

        目次 Table of Contents

 Video 1  映画 ガリバー旅行記 (2010) 予告篇 Gulliver's Travels (2010) Trailer
 Video 2  TV ガリバー旅行記 (1996) 予告篇 TV Gulliver's Travels (1996) Trailer
 Video 3  映画 ガリヴァー旅行記 (1939) 全篇 Gulliver's Travels (1939) complete
■ポスター・DVD・挿絵・表紙画像 A Poster, DVD/Book Covers & an Illustration
■中国語訳(簡体字)Translation into simplified Chinese
■中國語譯(繁體字)Translation into traditional Chinese 
■日本語訳 Translations into Japanese
  (1) 山田 2011
  (2) 原田 2004
  (3) 富山 2002
  (4) 加藤 1988
  (5) 坂井 1988, 2006
  (6) 平井 1980
  (7) 工藤 1979
  (8) 中野 1951
  (9) 原 1951, 1977, etc.
  (10) 小沼 1951, 2005
  (11) 野上 1927
  (12) 中村 1919
  (13) 佐久間 1911
■ロシア語訳 Translation into Russian
■ウクライナ語訳 Translation into Ukrainian
■ポーランド語訳 Translation into Polish
■ドイツ語訳 Translation into German
■スペイン語訳 Translation into Spanish
■フランス語訳 Translation into French
 Video 4  CCProse による朗読 VideoBook presented by CCProse
■英語原文 The original text in English
■邦題の異同 Variations of the title translated into Japanese
■外部リンク External links
■更新履歴 Change log


 Video 1 
ガリバー旅行記 (2010) 予告篇 Gulliver's Travels (2010) Trailer

監督: ロブ・レターマン 主演: ジャック・ブラック Director: Rob Letterman. Starring: Jack Black


 Video 2 
TV ガリバー旅行記 (1996) 予告篇 TV Gulliver's Travels (1996) Trailer

監督: チャールズ・スターリッジ 主演: テッド・ダンソン A TV mini-series directed by Charles Sturridge, starring Ted Danson and Mary Steenburgen.


 Video 3 
ガリヴァー旅行記 (1939) 全篇 Gulliver's Travels (1939), the complete film

フライシャー兄弟による1939年製作のカラー・アニメ長編(日本公開は1948年)。 A cell-animated Technicolor feature film, directed by Dave Fleischer and produced by Max Fleischer.


■ポスター・DVD・挿絵・表紙画像 A Poster, DVD/Book Covers & an Illustration

a. Image source: Wikipedia 
 ★ Download or watch the entire film (79 min.) legally at Archive.org
 ★ この映画の全編(79分)を Archive.org で合法的にダウンロード/鑑賞する

b. Gulliver's Travels (1996)  Image source: Read, dammit

c. Gulliver Exhibited to the Brobdingnag Farmer by Richard Redgrave. ガリヴァー、ブロブディンナグ(大人国)の農夫によって見世物にされる。リチャード・レッドグレーブ画。Image source: Wikipedia

[zh] 《格列佛游記》 浙江文藝出版社 ISBN: 753391841X 中国語(簡体字)
[jp] 『ガリヴァー旅行記(上)』 福音館文庫 (2006) 日本語
[fr] Voyages de Gulliver, Gallimard (1995) フランス語

↓ Click to enlarge ↓

a. Gulliverstravelsposter  b. Gullivershamed  c. 729pxgulliver

zh Bbpicnmmghlm  jp 4834021742  fr 512txzq28cl


■中国語訳(簡体字)Translation into simplified Chinese

如果一个国家里党派纷争激烈,他倒又提出了一条可以让彼此和解的奇妙办法。办法是这样的:从每个党派中各挑出一百名头面人物,把头颅差不多大小的,两党各一人,配对成双;接着请两位技术精良的外科手术师同时将每一对头面人物的枕骨部分锯下,锯时要注意脑子必须左右分匀。把锯下的枕骨部分互相交换一下,分别安装到反对党人的头上。

   第三卷 勒皮他 巴尔尼巴比 拉格奈格 格勒大锥 日本游记
   斯威夫特 《格列佛游记》
   E-text at:
   * www.5156edu.com
   * 方方正正教育网 (ffzz.com.cn)
   * 高碑店生活网 (www.chgbd.com)


■中國語譯(繁體字)Translation into traditional Chinese 

如果一個國家裡黨派紛爭激烈,他倒又提出了一條可以讓彼此和解的奇妙辦法。辦法是這樣的:從每個黨派中各挑出一百名頭面人物,把頭顱差不多大小的,兩黨各一人,配對成雙;接著請兩位技術精良的外科手術師同時將每一對頭面人物的枕骨部分鋸下,鋸時要注意腦子必須左右分勻。把鋸下的枕骨部分互相交換一下,分別安裝到反對黨人的頭上。

   第三卷 勒皮他、巴爾尼巴比、拉格奈格、格勒大錐、日本遊記
   斯威夫特 《格列佛遊記》
   E-text at 雲臺書屋 (www.b111.net)


■日本語訳 Translations into Japanese

(1) 山田 2011
政党間の抗争が激化した場合についても、この医師はすばらしい融和策を編み出している。ざっと説明すると、まずそれぞれの党から主だったもの百人ずつを選び出す。そして、頭の大きさが似ているものどうしを両党からひとりずつ選び、全員をふたり組に分ける。そして、腕のいい外科医をふたり連れてきて、各党の党員の後頭部を、ちょうど脳みそも二等分になるよう同時にのこぎりで切らせ、切りとった後頭部を交換して相手の頭にくっつけてやるのだ。

   第三話 ラピュタ、バルニバービ、ラグナグ、グラブダブドリブ
   そして日本渡航記
   ジョナサン・スウィフト=著 山田蘭(やまだ・らん)=訳
   『ガリバー旅行記』 角川文庫 2011/03/25


(2) 原田 2004
二つの政党が激しく対立している場合、それぞれの党派の政治家は、脳みそを半分ずつ相手方の政治家と入れかえてはどうだろうか、というのも彼の考えである。
[ルビは省略しました - tomoki y.]

   ラピュータ、バルニバービ、ラグナグ、グラブダブドリッブ、
   そして日本(ジャパン)への航海記
   ジョナサン・スウィフト=原作 マーティン・ジェンキンズ=再話
   クリス・リデル=絵 原田範行(はらだ・のりゆき)=訳
   『ヴィジュアル版 ガリヴァー旅行記』 岩波書店 2004/11

   上にご覧のとおり、「再話」の翻訳なので、つまりは抄訳ということに
   なります。原書はつぎのとおり:
   Jonathan Swift's "Gulliver"
   Retold by Martin Jenkins, Illustrations by Chris Riddell
   First published by Walker Books Ltd (UK), 2004/09
   Also available from Candlewick Press (USA),  2005/03


(3) 富山 2002
彼の提案のひとつに、国内の政党間抗争が激しい場合の驚くべき調停法なるものがあった。その方法とは以下の通り。まずそれぞれの政党から指導者を百人ずつ選び出し、その中から大体同じくらいの頭の大きさをした者を二人ずつ組合せ、それから二人の腕のいい手術担当者に同時にその二人の後頭部を鋸で切断させるが、そのさいには脳が等分されるようにする。こうして切断した後頭部を交換して、互いに反対党の人物の頭にくっつける。

   第三篇 ラピュタ、バルニバービ、ラグナグ、グラブダブドリッブ
   及び日本渡航記
   スウィフト=著 富山太佳夫(とみやま・たかお)=訳
   『ユートピア旅行記叢書6 ガリヴァー旅行記
   岩波書店 2002/03


(4) 加藤 1988
さらに、この医者は、政党間のあらそいをうまくまとめる、おどろくべき方法を考えだしていた。その方法はこうである。まず、両方の政党の幹部を百人ずつえらんで、頭の大きさが似た者どうしを、二人ずつ、組み合わせる。そうしておいて、腕ききの技師に、両方の頭をまっ二つに切らせる。切りとった部分を、それぞれとりかえて、反対派の頭にくっつける。
[ルビは省略しました - tomoki y.]

   第三部 飛ぶ島(ラピュータ) 二 ラガードの研究所
   ジョナサン=スウィフト=著 加藤光也(かとう・みつや)=訳
   『ガリバー旅行記』 少年少女世界文学館4 講談社 1988/09


(5) 坂井 1988, 2006
この先生は、さらに、国内で政党間の争いがはげしくなったとき、仲直りさせるためのおどろくべき方法を、考え出していた。それはつぎのようであった。まず、両方の政党から、指導的な立場に立っている者を百人ずつ選び出し、頭の大きさがほぼ同じくらいの者を、二人ずつまとめて、一組(ひとくみ)とする。それから、手術のじょうずな医者を二人呼んで、同じ一組の者の後頭部を、のこぎりで同時に切断させ、脳髄(のうずい)が真っ二つに分かれるようにする。つぎに、切断された後頭部を取りかえて、相手の党員の頭にくっつける、という方法だった。
[ルビを一部省略しました - tomoki y.]

   第三篇 ラピュータ、バルニバービ、ラグナグ、グラブダブドリッブ、
   および日本への航海
   J・スウィフト=作 坂井晴彦(さかい・はるひこ)=訳
   C・E・ブロック=画 Illustrated by C.E. Brock
   a.ガリヴァー旅行記(上)』 福音館文庫 2006/01
   b.ガリヴァー旅行記』 福音館古典童話シリーズ26
     福音館書店 1988/01
   引用は b. に拠りました。


(6) 平井 1980
国内で政党間の抗争が激しくなった場合にそなえ、両者を融和させる、驚くべき対策を考案したのもこの医者であった。その方法はざっとこんな具合であった。まず両政党から指導者格の者を百人ずつ選び出し、ほぼ同じくらいの大きさの頭をもつ者同士を組合わせ、次に、二人の優秀な手術者に各組の人間の後頭部を同時に鋸(のこぎり)で切断させる、それも脳髄がぴったり真っ二つになるようにである。こうやって切断された後頭部を交換して、それぞれ組になっている反対側の党員の頭に繋(つな)ぎ合(あ)わせる。

   第三篇 ラピュータ、バルニバービ、ラグナグ、グラブダブドリッブ
   および日本への渡航記
   スウィフト=作 平井正穂(ひらい・まさお)=訳
   『ガリヴァー旅行記』 岩波文庫 1980/10


(7) 工藤 1979
政争が激しい場合の驚嘆すべき調停策を彼は提供した。その方法というのはこうである。各党の幹部を百人ずつえらび、頭の大きさがもっとも似ているものを二人ずつ組ませ、腕ききの手術員二人に各組の後頭部を、同時に、脳味噌が二等分されるように鋸(のこぎり)で挽(ひ)き切らせる。このように切りとられた後頭部を交換させ、それぞれを反対派の男の頭にくっつけさせるのである。

   第三部 ラピュタ、バルニバービ、ラッグナッグ、グラッブダブドリッブ、
   および日本渡航記 「ガリヴァ旅行記」
   スウィフト=作 工藤昭雄(くどう・あきお)=訳
   『世界文学全集8 スウィフト/デフォー
   学習研究社(学研)全50巻 1979/05/01 所収


(8) 中野 1951
国家内に政党の軋轢(あつれき)がはなはだしくなった時も、彼は驚嘆に値する調停法を提議した。それはこうだ、まず双方の政党から領袖(りょうしゅう)を百人ずつ選んで来て、これを二人ずつ、似寄った頭の大きさの者同士の組にする、さてそこで腕のよい二人の手術者に命じて、同時にこの各組の者の後頭部を鋸(のこぎり)で挽(ひ)き切らせて、ちょうど脳髄が二等分されるようにする。こうして挽き切られた後頭部は、双方取換っこをしてそれぞれ反対派の者の頭にくっつけるのだ。

   第三篇 ラピュタ、バルニバービ、グラブダブドリッブ、
   ラグナグおよび日本渡航記
   スウィフト=作 中野好夫=訳
   『ガリヴァ旅行記』 新潮文庫 1951/07


(9) 原 1951, 1977, etc.
また、この医者は、政党の争いをうまく停(と)める方法を発明していました。それは、まず両方の政党から百人ずつ議員を選(えら)んできて、これを二人ずつ、頭の大きさの似たもの同士の組にしておきます。それから、それぞれ両方の頭を鋸(のこぎり)でひいて、二つに分(わ)けます。こうして切り取った半分の頭を、それぞれ取り換(か)えっこして、反対派の頭にくっつけるのです。

   第三、飛島(ラピュタ) 2. 発明屋敷
   ジョナサン・スイフト=作 原民喜(はら・たみき)=訳(抄訳)
   a. 『ガリバー旅行記』 E-text at 青空文庫
     入力:kompass 校正:浅原庸子 公開:2002, 2003
   b.ガリバー旅行記』 講談社文芸文庫 1995/06
   c.定本原民喜全集2』 青土社 1978/09 所収
   d.原民喜のガリバー旅行記』 ものがたり図書館1 晶文社 1977/12
   e.ガリバー旅行記』 少年少女名作家庭文庫5 主婦之友社 1951/06
   a. の底本は b.b. の親本は c.。引用は d. に拠りました。


(10) 小沼 1951, 2005
また、政党なぞで、両方の考え方がひどく違っていてけんかばかりしている場合、それをうまくおさめる方法も考えられていた。それはどういうのか、というとまず両方のおもだった人を百人ずつつれて来る。それから、両方の頭の大きさが同じものどうし並ばせる。ひどくじょうずに手術できる人が二人来て、一どにその両方の頭のうしろをのこぎりで切って、脳みそをうまく二つにわける。それからその切り落した頭のうしろを、急いでつけかえるのである。

   ガリヴァ旅行記「ラピュータ島、その他への旅行」
   ジョナサン・スイフト=作 小沼丹(おぬま・たん)=翻案/再話
   a.小沼丹全集 補巻』 未知谷 2005/07 所収
   b.ガリヴァ旅行記』 少年少女のための世界文学選4 小峰書店 1951/03
   a. の底本は b.。引用は a. に拠りました。


(11) 野上 1927
また政黨の軋轢の甚しい時の調停策として驚くべき考案を此の醫者は提議した。その方法は斯うである。先づ兩方の黨派の重立つた者を百人つれて來る。それを頭の大きさの似寄つた者を一對づつ組にして列べ分ける。それから腕の冴えた二人の手術家をして同時に一對づつ鋸で 後頭部(#原文は太字でなく傍点)を挽き裂かせて、腦髄がきれいに二等分されるやうにする。斯うして挽き落した 後頭部(#原文は太字でなく傍点)を取り替へて、それぞれ反對派の頭にくつ附けるといふのである。

[原文は次のとおり総ルビ]
また政黨(せいたう)の軋轢(あつれき)の甚(はなはだ)しい時(とき)の調停策(てうていさく)として驚(おどろ)くべき考案(かうあん)を此(こ)の醫者(いしや)は提議(ていぎ)した。その方法(はうはふ)は斯(か)うである。先(ま)づ兩方(りやうはう)の黨派(たうは)の重立(おもだ)つた者(もの)を百人(にん)つれて來(く)る。それを頭(あたま)の大(おほ)きさの似寄(によ)つた者(もの)を一對(つゐ)づつ組(くみ)にして列(なら)べ分(わ)ける。それから腕(うで)の冴(さ)えた二人(ふたり)の手術家(しゆじゆつか)をして同時(どうじ)に一對(つゐ)づつ鋸(のこぎり)で 後頭部(#原文は太字でなく傍点)を挽(ひ)き裂(さ)かせて、腦髄(なうずゐ)がきれいに二等分(とうぶん)されるやうにする。斯(か)うして挽(ひ)き落(おと)した 後頭部(#原文は太字でなく傍点)を取(と)り替(か)へて、それぞれ反對派(はんたいは)の頭(あたま)にくつ附(つ)けるといふのである。

   ラピュタ〔飛島(とびしま)〕、バルニバアビ、ラグナグ、
   グラブダブドリブ〔魔法づかひの島〕及び日本への航海
   ヂョナサン・スウィフト=作 野上豐一郎=譯
   『ガリヴァの旅・沙翁物語』 世界名作大觀 各國篇 第11巻
   國民文庫刊行會=編輯・發行 非賣品 1927/06(昭和2)


(12) 中村 1919
それから尚ほ此の敎授は、各黨派が激烈に軌轢[ママ]した時に、それを調和させる爲めの恐ろしい方法を計畫した。それは各黨派の領袖を百人づゝ連れて來て、その頭の大きさが殆ど同じ位の反對者同志を二列に列べて置いて、二人の手術の上手な醫者に、腦が半分になるやうにその後頭部を切り取らせ互ひに交換して附着せしめるのである。

   第三編 飛揚島
   スウイフト=著 中村詳一(なかむら・しょういち)=譯
   『ガリヴア旅行記』 國民書院 1919/10/08(大正8)
   国立国会図書館デジタル化資料
   尚・連・半の旧字はそれぞれ新字で置き換えました。


(13) 佐久間 1911
若し二個の黨派(とうは)にて政治上の意見を異にするときは、双方より百名づゝを選拔し、二列に之をならべ側方面よりは二列とも各一箇の頭のやうに見えるやうにして置いて、やがて二人に命じて同時に各列の後頭部(こうとうぶ)をそぎ取らしめ、甲列の後頭部(こうとうぶ)を乙列の後頭部に、乙列の後頭部を甲列の後頭部に接骨するのである。

   第六章 大學校の參觀○政治改良法其他の新案
   スウヰフト=著 佐久間信恭(さくま・のぶやす)=譯
   a.ガリヴァー旅行記』 近代デジタルライブラリー
   b.ガリヴァー旅行記』 小川尚榮堂 1911-12(明治44)
   a.b. の全ページをスキャンした画像。引用は a. に拠りました。
   選・浮・記の旧字は、それぞれ新字で置き換えました。


■ロシア語訳 Translation into Russian

Если  раздоры  между  партиями становятся ожесточенными, он рекомендует замечательное  средство  для  их примирения. Оно заключается в следующем: вы берете сотню  лидеров каждой партии и  разбиваете их на пары, так, чтобы головы людей, входящих  в каждую пару, были приблизительно одной величины; затем  пусть два искусных хирурга отпилят одновременно затылки у каждой пары таким  образом,  чтобы мозг  разделился  на  две  равные части. Пусть будет произведен  обмен  срезанными  затылками и каждый из них приставлен к голове политического противника.

   Глава VI Продолжение описания Академии.
   Часть третья. Путешествие в Лапуту, Бальнибарби, Лаггнегг,
   Глаббдобдриб и Японию.
   Джонатан Свифт. Путешествия Гулливера
   Translated by А. А. Франковского
   E-text at Lib.Ru


■ウクライナ語訳 Translation into Ukrainian

Щоб примирити ворожі партії, коли суперечки між ними стають надто запеклі, він радив такий чудовий спосіб: слід узяти по сто лідерів кожної партії й посадити їх парами один проти одного, добираючи по змозі людей з головами однакового розміру. Далі двоє вправних хірургів мають воднораз розпиляти їм потилиці так, щоб поділити їхні мізки навпіл, і негайно обмінити відпиляні частини, приставивши кожну з них до голови партійного супротивника. 

   Розділ VI Дальший опис Академії.
   Частина третя. Подорож до Лапути, Белнібарбі, Глабдабдрібу,
   Лаггнеггу та Японії.
   Джонатан Свіфт. Мандри Лемюеля Гуллівера
   E-text at Український Центр (ukrcenter.com)


■ポーランド語訳 Translation into Polish

Jeżeli partie polityczne w jakim kraju są zanadto zacięte, wtedy dla uspokojenia ich i pogodzenia następującego należy używać sposobu. Trzeba wziąć stu naczelników różnych partii, ustawić ich koło siebie podług podobieństwa ich czaszek i polecić biegłemu operatorowi, ażeby w jednym czasie przerżnął im czaszki, tak aby mózg na dwie równe części został podzielony, po czym zmienia się połowy mózgów, tak ażeby każdy dostał połowę mózgu przeciwnika, i na odwrót.

   Rozdział szósty Dalsze opisanie Akademii.
   Część trzecia. Podróż do Laputy. Do Balnibarbów. Do Luggnaggu.
   Do Glubbdubdribu. I do Japonii
   Podróże Guliwera by Jonathan Swift
   E-text at Wolne Lektury


■ドイツ語訳 Translation into German

Wenn Parteiwut in einem Staate zu heftig würde, so sei ein wunderbares Mittel in Anwendung zu bringen, damit der Frieden wiederhergestellt werde. Die Methode ist folgende: Man nimmt ungefähr hundert Parteiführer und stellt sie paarweise, nach Ähnlichkeit ihrer Schädel, auf. Dann sägt ein geschickter Operateur den Schädel eines jeden zu derselben Zeit und in solcher Weise ab, daß er das Gehirn auf gleiche Weise teilt. Dann werden die abgesägten Teile des Hirnschädels vertauscht, indem der Tory den eines Whigs erhält und umgekehrt.

   Sechstes Kapitel. Fernere Beschreibung der Akademie.
   Reise nach Laputa, Lagado usw.
   Gullivers Reisen zu mehreren Völkern der Welt. Leipzig
   by Jonathan Swift
   E-text at Zeno.org


■スペイン語訳 Translation into Spanish

Presentaba un invento maravilloso para reconciliar a los partidos de un Estado cuando se mostrasen violentos. El método es éste: tomar cien adalides de cada partido; disponerlos por parejas, acoplando a los que tuviesen la cabeza de tamaño más parecido; hacer luego que dos buenos operadores asierren los occipucios de cada pareja al mismo tiempo, de modo que los cerebros queden divididos igualmente, y cambiar los occipucios de esta manera aserrados, aplicando cada uno a la cabeza del contrario.

   Capítulo VI Siguen las referencias sobre la Academia.
   Parte III - Un viaje a Laputa, Balnibarbi, Luggnagg, Glubbdubdrib y el Japón.
   Los viajes de Gulliver by Jonathan Swift
   E-text at
   * Bibliotecas Virtuales
   * Wikisource
   * WebLitera


■フランス語訳 Translation into French

[Text to be inserted later - tomoki y.]

   Chapitre VI Suite de la description de l’académie.
   Les Voyages de Gulliver : Voyage à Laputa, aux Balnibarbes, à Luggnagg,
   à Gloubbdoubdrie et au Japon
   Les Voyages de Gulliver by Jonathan Swift
   E-text at Wikisource


 Video 4 
CCProse による朗読 VideoBook presented by CCProse

下に引用した箇所は 05:25 あたりから始まります。 From: CCProse. Jul 11, 2011. Classic Literature VideoBook with synchronized text, interactive transcript, and closed captions in multiple languages. Audio courtesy of Librivox. Read by Lizzie Driver. The excerpt below starts around 05:25.


■英語原文 The original text in English

When parties in a state are violent, he offered a wonderful contrivance to reconcile them.  The method is this: You take a hundred leaders of each party; you dispose them into couples of such whose heads are nearest of a size; then let two nice operators saw off the occiput of each couple at the same time, in such a manner that the brain may be equally divided.  Let the occiputs, thus cut off, be interchanged, applying each to the head of his opposite party-man.

   Chapter VI.  A further account of the academy.
   Part III: A Voyage to Laputa, Balnibarbi, Luggnagg,
   Glubbdubdrib and Japan.
   Gulliver's Travels (1726, amended 1735) by Jonathan Swift
   E-text at:
   * Project Gutenberg
   * Wikisource


■邦題の異同 Variations of the title translated into Japanese

   『ガリヴァの旅』…………野上 1927
   『ガリヴァ旅行記』………工藤 1979
   『ガリヴァ旅行記』………小沼 1951, 2005
   『ガリヴァ旅行記』………中野 1951
   『ガリヴア旅行記』………中村 1919
   『ガリヴァー旅行記』……原田 2004
   『ガリヴァー旅行記』……富山 2002
   『ガリヴァー旅行記』……坂井 1988, 2006
   『ガリヴァー旅行記』……平井 1980
   『ガリヴァー旅行記』……佐久間 1911
   『ガリバー旅行記』………山田 2011
   『ガリバー旅行記』………加藤 1988
   『ガリバー旅行記』………原 1951, 1995, etc.


■外部リンク External links

   * Gulliver's Travels - Wikipedia
   * Gulliver's Travels Home Page, created by Lee Jaffe, hosted
    by Jaffe Bros
   * Gulliver's Travels: Filmography at IMDb
   * ガリヴァー旅行記 - Wikipedia


■更新履歴 Change log

2013/07/11 目次を新設しました。
2013/05/30 中村詳一=譯 1919/10/08 を追加しました。
2013/02/11 ポーランド語訳とドイツ語訳を追加しました。
2013/01/30 ウクライナ語訳を追加しました。
2012/02/02 佐久間信恭=訳 1911-12 を追加しました。
2011/11/26 CCProse による朗読の YouTube 動画を追加しました。
2011/07/06 山田蘭=訳 2011/03/25、ロシア語訳、およびスペイン語訳を追加
         しました。また、「邦題の異同」の項を新設しました。
2011/05/28 『ガリバー旅行記(2010)』予告篇、『ガリバー旅行記 (1996)』予告篇、
         『ガリヴァー旅行記 (1939)』全篇の計2本の YouTube 動画を追加
         しました。
2009/08/31 工藤昭雄=訳 1979/05/01 を追加しました。
2009/05/16 加藤光也=訳 1988/09 を追加しました。
2008/02/21 原田範行=訳 2004/11 を追加しました。


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Sunday, 25 November 2007

The October Country by Ray Bradbury レイ・ブラッドベリ 『10月はたそがれの国』

■表紙画像コレクション Cover photo collection

 

zh Zh_0010359573 ja Ja_51jzw6n7k6l it It_the_october_country

fr Fr_the_october_country en En_october_country ** En_fantastic_5401
↑ Click to enlarge ↑

中 [zh] 十月國度 皇冠 (2007)
日 [ja] 10月はたそがれの国 創元SF文庫 (1965)
伊 [it] Paese d'ottobre.  Image source: Ray Bradbury de A a Z. Sommaire
仏 [fr] Le pays d'octobre, Denoel (1988)
英 [en] The October Country, New English Library paperback edition (1973)  Image source: Bradburymedia
** Jan-Feb 1954 issue of the Fantastic magazine, in which The Dwarf, one of the stories in The October Country, first appeared.  Image source: Short Story Finder - Bradburymedia


■中國語譯(繁體字):オンライン書店の商品紹介からの抜粋
 Translation into traditional Chinese
 (Excerpt from the description of merchandize at an online bookstore)

『十月國度』是個充滿幻想的神秘國度,這裡的居民滿懷秋天的心事,長夜漫漫無盡,昏暗的薄暮與黎明滯留不去。這個國度多的是各種暗處:地下室、地窖、煤倉、櫥櫃、閣樓……

   雷・布莱伯利 譯者:林静華《十月國度》   
   出版社:皇冠 出版日期:2007/04 ISBN-13: 9789573323198
   出版社:皇冠 出版日期:1996/04 ISBN-10: 9573323192
   * books.com.tw
   * sanmin.com.tw


■日本語訳 Translation into Japanese
 
……いつの年も、末ちかくあらわれ、丘に霧が、川に狭霧がたちこめる。昼は足早に歩み去り、薄明が足踏みし、夜だけが長々と坐りこむ。地下室と穴蔵、石炭置場と戸棚、屋根裏部屋を中心にした国。台所までが陽の光に横をむく。住む者は秋の人々。秋のおもいを思い、夜ごと、しぐれに似たうつろの足音を立て……

   レイ・ブラッドベリ=著 宇野利泰(うの・としやす)=訳
   『10月はたそがれの国
   創元SF文庫 東京創元社 1965/12 所収


■イタリア語訳 Translations into Italian

(1)
... paese dell'anno che volge sempre alla fine. Paese con alture di caligine e fiumi di foschia; dove i meriggi fuggono, i vespri e gli albori indugiano e le notti rimangono. Paese fatto più che altro di cantine, cellieri, carbonaie, soffitte, credenze, sgabuzzini, tutti sul lato opposto al sole. Paese fatto di gente autunnale, con pensieri soltanto autunnali, il cui passo di notte sui marciapiedi ha suono di pioggia...

   Ray Bradbury - Paese d'ottobre
   Excerpt at:
   * seiamontanelli.diludovico.it
   * Paese d'ottobre
   * Fondazione Liberal


(2)
…paese dell’anno che volge sempre alla fine. Paese con alture di caligine e fiumi di foschia; dove i pomeriggi fuggono, i vespri e gli albori indugiano e le notti rimangono. Paese più che altro di cantine, cellieri, carbonaie, soffitte, credenze, sgabuzzini, tutti sul lato opposto del sole. Paese di gente autunnale, con pensieri soltanto autunnali, il cui passo di notte sui marciapiedi ha suono di pioggia…

   Ray Bradbury - Paese d'ottobre
   Excerpt at Sabato Affari


■フランス語訳 Translation into French

... Ce pays où l'on va toujours vers l'arrière-saison. Ce pays où les collines sont de brouillard et où les rivières sont de brume, où les midis disparaissent vite, où l'ombre et les crépuscules s'attardent, où les minuits demeurent. Ce pays composé essentiellement de caves, de cryptes sous les caves, de soutes à charbon, de cabinets, de mansardes, de placards et d'offices tournés à l'opposé du soleil. Ce pays dont les gens sont gens d'automne, ne pensent que des pensées automnales. Dont les habitants, quand ils passent la nuit dans les avenues vides, y font un bruit qui évoque la pluie...

   Le Pays d'octobre par Ray Bradbury
   Traduction de Doringe
   Excerpt at nooSFere.org


■英語原文 The original text in English

...that country where it is always turning late in the year. That country where the hills are fog and the rivers are mist; where noons go quickly, dusks and twilights linger, and midnights stay. That country composed in the main of cellers, sub-cellers, coal bins closets, attics, and pantries faced away from the sun. That country whose people are autumn people, thinking only autumn thoughts. Whose people passing at night on the empty walks sound like rain...

   The October Country (1955) by Ray Bradbury
   Excerpt at:
   * sacredchao23 - Profile
   * The Pseudo Page - Quotations Page One
   * boards.aetv.com
   * goldstar.com


■外部リンク External links

   * Ray Bradbury - Official site
   * Bradburymedia - Extensive coverage of work in film, TV, radio
    plus exhaustive short story cross-reference
   * Ray Bradbury Immersion
   * Ray Bradbury - FantasticFiction
   * Ray Bradbury - Wikipedia (1920-2012)
   * Ray Bradbury de A a Z. Sommaire (in French)
   * レイ・ブラッドベリ - 翻訳作品集成


■更新履歴 Change log

2007/11/26
2種類のイタリア語訳を追加しました。両者はほとんど同文ですが、訳語の異なる箇所が2, 3か所あります。


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Friday, 23 November 2007

Travels with a Donkey in the Cevennes by Robert Louis Stevenson スティーヴンソン『旅は驢馬をつれて』

■地図と表紙画像 A map and book covers
Left Map of route.  Image source: Wikipedia
Centre Travels With a Donkey in the Cevennes, Echo Library (2006)
Right小沼丹全集 補巻』未知谷 (2005)

↓ Click to enlarge ↓

Travelsmap  414npd3zh8l  51ytd8aaksl


■日本語訳 Translations into Japanese
 
(J1) 酒井 1954, 1978, etc.
誰も彼も、この他國人に親切をし、助けになろうと切望していた。(……)それは、セヴェンヌ山脈を通りぬけて、南へ行こうと、私が企てた旅行から大部分生じたのである。私のような旅人は、その地方では前代未聞であったのだ。私は月へ旅行しようとでも企てる人のように、侮蔑の眼で見られたが、また寒氣きびしい極地めがけて出掛ける人のように、尊敬にみちた興味をもって見られもした。皆がよろこんで私の準備を助けようとした。

   R.L.Stevenson =著 酒井善孝=訳註
   『Travels with a Donkey 旅はロバをつれて
   研究社新訳註叢書30 研究社出版 1954/03, 1978, etc.

   この (J1) は、下の (J5) 澤村+酒井 1927 を改訂・増補したもの。
 
 
(J2) 吉田 1951
誰もが私には親切で、私に援助を惜しまなかったのである。(……)彼等が私に示した關心は、私がそこから南へ、セヴェンヌ地方に旅行しようとしていることに多分に負う所があった。私が計畫しているような旅行は、彼等には未聞のことだった。私は、月に向って飛ぼうとしているもののように輕蔑され、しかも同時にまた、北極探險にでかける人間に對して示される底の尊敬の念をもって迎えられた。みんなが準備の手傳いをしようとして(……)

   スティヴンソン=著 吉田健一=訳
   『旅は驢馬をつれて 他一篇
   岩波文庫 1951/11
 
 
(J3) 小沼 1950, 1956, etc.
あらゆる人間がこの異国人に親切心を見せるべく、役立つべく気を揉(も)んでいた。(……)セヴェンヌ地方を通って南方へ抜ける、という私の旅行計画が専らその原因となっていたのである。私のような旅行者はこの地方では未だかつて聞いたこともない代物(しろもの)であった。私はまるで月世界へ旅行を企てている人間ででもあるかのように軽蔑(けいべつ)の眼で見られた。とはいえ、また、酷寒の極地に向かって出発する人間ででもあるかのように、一種尊敬のこもった好奇心で眺められもした。誰でも私の準備の手助けをするに吝(やぶさ)かでなかった。

   3a. R.L.スチヴンスン=著 小沼丹(おぬま・たん)=訳「旅は驢馬をつれて」
    『小沼丹全集 補巻』未知谷 2005/07 所収
   3b. R. L. スティヴンスン=著 小沼丹=訳 江國香織=解説
    『旅は驢馬をつれて』大人の本棚 みすず書房 2004/12
   3c. R.L.スティーヴンソン=著「旅は驢馬をつれて」
    『スティーヴンソン作品集1』復刻 文泉堂出版 1999/03 所収
   3d. スティヴンスン=著『旅は驢馬をつれて』角川文庫 1956/12
   3e. R.L.スチヴンスン=著『旅は驢馬をつれて』家城書房 1950

   3b. の底本は 3d.。引用は 3b. に拠りました。
 
 
(J4) 藤田 1929
誰も彼も皆、この他國人(びと)に深切をつくし、助けになつてやらうと一生懸命になつてゐたのである。(……)セヴェンヌの山續きを通り拔けて、南の方へ出ようといふ私の旅行計畫が、大いにその因をなしてゐたのである。私のやうな斯ういふ旅人は、之れ迄、此の地方で曾て耳にせざるところのものであつたのである。私は、恰かも月の世界へ旅行を企ててゐる男でゞもあるかのやうに、輕蔑の眼を以つて見られてゐたが、また反面には、かの寒風凛冽たる極地へ向つて出發せんとして居る者のやうに、一種尊敬的の興味を以つて見られて居たのである。そしてもう皆が喜んで、私の出發の用意の手傳をしてくれた。

   アール・エル・スチヴンスン=著 藤田千代吉=譯註
   『驢馬と旅して
   文化生活研究会會 定價壹圓五拾錢 1929/10(昭和4)
 
 
(J5) 澤村+酒井 1927
誰も彼も、この他國人に親切をし、助けにならうと切望してゐた。(……)それは、大部分、セヴェンヌを通つて南へ行く私の企てた旅行から生じたのである。私のやうな旅人は、其地方では前代未聞(ぜんだいみもん)であつたのだ。私は月へ旅行しようとでも企てる人のやうに、侮蔑的の眼で見られたが、また寒氣凛烈な極地めがけて出掛ける人のやうに、尊敬的な興味をもつても見られた。皆が悦んで私の準備を助けようとした。

   R. L. Stevenson =著 澤村寅二郎+酒井善孝=譯註
   『英文世界名著全集6 驢馬紀行
   英文世界名著全集刊行所 1927/10(昭和2)

   本書は対訳本。書名は奥付に拠る。扉に印刷された表題は、次のとおり。
   Travels with a Donkey (Abridged), World's Classics in English
 
 
■英語原文 The original text in English

(....) every one was anxious to be kind and helpful to the stranger. (....) it arose a good deal from my projected excursion southward through the Cevennes. A traveller of my sort was a thing hitherto unheard of in that district. I was looked upon with contempt, like a man who should project a journey to the moon, but yet with a respectful interest, like one setting forth for the inclement Pole. All were ready to help in my preparations (....)

   Travels with a Donkey in the Cevennes (1879)
   by Robert Louis Stevenson

   E-text at:
   * Project Gutenberg
   * Wikisource

   Scanned books at Internet Archive
 
 
■著者名の日本語表記
 Transliteration variations of the author's name in Japanese

   スチヴンスン ………小沼 2005
   スチヴンスン ………小沼 1950
   スチヴンスン  ………藤田 1929
   スティーヴンソン……小沼 1999
   スティヴンスン  ……小沼 2004
   スティヴンスン  ……小沼 1956
   スティヴンソン    ……吉田 1951
   (カナ表記なし) ……酒井 1954 - Stevenson で通しているようです
 
 
■外部リンク External links

   * On the Stevenson Trail with a Donkey in the Cevennes
   * Travels with a Donkey in the Cevennes - Wikipedia
   * Robert Louis Stevenson - Wikipedia
   * ロバート・ルイス・スティーヴンソン - Wikipedia
 
 
■更新履歴 Change log

2007/12/19 酒井善孝=訳註 1954/03, 1978, etc. を追加しました。


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Wednesday, 21 November 2007

The Canterville Ghost by Oscar Wilde オスカー・ワイルド 『カンタヴィルの幽霊』『カンタヴィル・ゴースト』

       目次 Table of Contents

 Video 1  独TV カンタベリー城と秘密の扉 (2005) Ghost of Canterville (2005)
 Video 2  TV The Canterville Ghost (1997) The Canterville Ghost (1997)
 Video 3  TV 幽霊は臆病者 (1996) The Canterville Ghost (1996)
 Video 4  TV カンターヴィル・ゴースト (1986) The Canterville Ghost (1986)
 Video 5  ソ連製アニメ The Canterville Ghost (1970)
 Video 6  映画 幽霊は臆病者 (1944) Film The Canterville Ghost (1944)
■おはなし The Story
 Audio 1  日本語版オーディオブック(朗読) Audiobook in Japanese
■日本語訳 Translations into Japanese
  (J1) 南條 2015
  (J2) 田多良 2014
  (J3) さやの 公開年月未確認
  (J4) tomoki y. 2009
  (J5) 福田 1992
  (J6) 高橋 1989
  (J7) 西村 1988
  (J8) 前川 1982
  (J9) 平井 1977
  (J10) 福田+福田 1977
  (J11) 小野 1976, 1988
  (J12) 後藤 1965
  (J13) 内山 1957, 1980
  (J14) 西村 1950
  (J15) 矢口 1924
  (J16) 秋田 1920, 1995
■ロシア語訳 Translation into Russian
 Audio 2  ドイツ語版オーディオブック(朗読) Audiobook in German
■ドイツ語訳 Translations into German
  (D1)
  (D2) Blei, 1905
■イタリア語訳 Translation into Italian
■ポルトガル語訳 Translation into Portuguese
■スペイン語訳 Translation into Spanish
■フランス語訳 Translation into French
 Audio 3  英語原文のドラマ仕立ての朗読 Dramatized audiobook in English
 Audio 4  英語原文のオーディオブック(朗読) Audiobook in English
■英語原文 The original text in English
 Gallery   ビデオ・DVDのジャケットなど VHS/DVD covers, etc.
■著作権に関わる警告 Warning on copyright
■邦題の表記 Transliteration variations of the title in Japanese
■テレビ/映画化 Filmography
■外部リンク External links
■更新履歴 Change log


 Video 1 
ドイツのテレビ オスカー・ワイルドの カンタベリー城と秘密の扉 (2005) 予告篇
TV Ghost of Canterville (2005) Trailer
Das Gespenst von Canterville (2005) - original title in German

ドイツ語音声、英語字幕 Published on 11 Sep 2012 by PROROMMEDIATRADE. Directed by .


 Video 2 
テレビ The Canterville Ghost (1997) 日本未公開? 邦題未確認
TV The Canterville Ghost (1997)

監督: クリスピン・リース、出演: イアン・リチャードソン、セリア・イムリー、サラ=ジェーン・ポッツ。 Directed by Crispin Reece. Starring Ian Richardson, Celia Imrie, Sarah-Jane Potts.


 Video 3 
テレビ 幽霊は臆病者 カンタヴィル・ゴースト (1996)
TV The Canterville Ghost (1996)

監督: シドニー・マッカートニー、出演: パトリック・スチュワート、ネーヴ・キャンベル。 Directed by Sydney Macartney. Starring Patrick Stewart, Neve Campbell.


 Video 4 
テレビ カンターヴィル・ゴースト/カンタヴィル家の亡霊 (1986)
TV The Canterville Ghost (1986)

監督: ポール・ボガート、出演: ジョン・ギールグッド、テッド・ワス、アリッサ・ミラノ。 Directed by Paul Bogart. Starring John Gielgud, Ted Wass, Andrea Marcovicci and Alyssa Milano.


 Video 5 
ソ連製アニメ The Canterville Ghost (1970)
The Canterville Ghost (1970) - A Russian animation

Союзмультфильм (Soyuzmultfilm), 1970 г.
Directed by Valentina Brumberg (Валентина Брумберг) and Zinaida Brumberg (Зинаида Брумберг).


 Video 6 
映画 幽霊は臆病者 (1944)
Film The Canterville Ghost (1944)

監督: ジュールス・ダッシン、出演: チャールズ・ロートン、ロバート・ヤング、マーガレット・オブライエン。 Directed by Jules Dassin. Starring Charles Laughton, Robert Young and Margaret O'Brien.


■おはなし The Story

下にご紹介するのは、イギリスの幽霊と、アメリカの少女との会話。少女の父親は外交官。駐英公使としてロンドンに赴任した父親は、カンタヴィル卿という貴族から屋敷を買い取って、家族で移り住む——その家には先祖の幽霊が出ると、卿が警告したにもかかわらず。

案の定、一家はじきにカンタヴィル卿のご先祖さまに出会う。ところが、万事に実利的な、このアメリカ人一家は(父も娘も、娘の兄弟たちも)幽霊をちっとも怖がらない。おかげで調子がくるったのは、幽霊のほう……。


 Audio 1 
日本語版オーディオブック(朗読) Audiobook in Japanese

下に引用する箇所の朗読は 26:10 から始まります。 Embedding prohibited. To listen, click the screen above and go to Niconico Video. Reading of the excerpt below starts at 26:10


■日本語訳 Translations into Japanese

(J1) 南條 2015
「あなた、なんにも知らないのね。移民して、考えを改めた方が良いわ。うちのお父さんは喜んで渡航許可証をくれるでしょうし、お酒(スピリッツ*)はどんな種類でも重い税金がかかるけど、税関の人はみんな民主党支持だから、問題ないわ。ニューヨークに着いてしまえば、あなたはきっと引っぱり凧(だこ)よ。あすこには、ひとかどのお祖父(じい)さんを持つためなら十万ドル払うっていう人がたくさんいるし、家つきの幽霊を持てるんだったら、もっと払うでしょう」
「わしゃア、どうもアメリカは好かんなあ」

* 原語 spirits には「強い酒」と「霊」の意味がある。


(J2) 田多良 2014
あなたは何も分かっていないわね。あなたにとって一番よいことは、アメリカに移住して精神を啓発することよ。お父さんは喜んで船賃をただにしてくれるわ。あらゆる種類の酒類に重税 [a heavy duty on spirits] がかかるけど、税関は問題にならないわ。だって、役人はみんな民主党だから。ニューヨークに着いたら、あなたはきっと大成功するわ。アメリカには祖父を買うためなら十万ドル払うって人がたくさんいるし、先祖の幽霊を持つためならなおさらそうよ。

  • 田多良俊樹(たたら・としき)=著 「植民地の逆襲と、あえてその名を告げぬ民族主義: オスカー・ワイルド「カンタヴィルの幽霊」の喜劇性、ゴシック性、政治性」 東雅夫(ひがし・まさお)+下楠昌哉(しもくす・まさや)=編 『幻想と怪奇の英文学』 春風社 2014/04 所収
  • この本は、ワイルドの小説の全訳を収録したものではない。上の引用箇所は、田多良氏によるワイルド作品についての論考のなかに現れる。ワイルドの原文の一部であり、田多良氏が和訳したものである。

(J3) さやの 公開年月未確認
 「何も分かっていないのね。いちばんいいのは引っ越して、あなたの考えを改善することよ。私の父はただ幸せになりすぎて、あなたに自由な道を与えられないわ。どんな人にも重い税があるけど、役員はみんな民主主義だから、税関について大変なことは全くないわ。ニューヨークに行けば、あなたはきっと大成功する。ニューヨークには祖父1人を持つのに10万ドル払う人はたくさんいて、家族の幽霊を持つためにお金を払う人よりずっと多いのよ。」
 「アメリカが好きになるとは思わないな。」

  • オスカー・ワイルド=作 さやの=訳 「キャンタービルの幽霊」 Library for Wilde 公開年月未確認
  • 誤訳がたくさん見受けられますが、面倒なのでいちいち指摘いたしません。

(J4) tomoki y. 2009
「あなた、なんにも知らないのね。いい? こうするのがいちばん。アメリカに移住して精神を向上なさい。父がよろこんで無料の切符をプレゼントしてくれるわ。オサケもオバケも重い税金がかかるけど、税関のことなら心配ご無用。だって係官はみんな民主党支持者だから。ひとたびニューヨークに着いたら大人気まちがいなしよ。アメリカではね、自分のお祖父さんが手に入るなら十万ドルでも平気で出すっていう人が大勢いるんだから。ましてやご先祖さまの亡霊ともなれば、そりゃもう」
「どうもアメリカは性に合わなさそうだ」


(J5) 福田 1992
[訳文は下の (4) 福田+福田 1977 とおなじ。ただし、表記は旧字・旧かな。版は新しいのに表記はむしろ古い。復古主義、伝統主義というのでしょうか - tomoki y.]


(J6) 高橋 1989
「あら、そんなことわからないわよ。ぜひアメリカに移住して、心をいれかえるのがいちばんだわ。それを聞いたら、わたしのお父さん、大喜びであなたにただで船のきっぷをくれると思うわ。もしかしたら、幽霊のような貴重なものには税金がかかるかもしれないけれど、港の税関の人だってきっとわかってくれると思うわ。
 いったんニューヨークに着いてしまえば、まちがいなく人気者になれるはずよ。あちらは、ふるさとの国をでてきた人ばかりだから、おじいさんのいない家がおおいの。だから、大金をはらって、だれかおじいさんになってくれる人をさがしていることもしょっちゅうだわ。ご先祖の幽霊なら、いくらでもはらうと思うわ」
「どうもアメリカはすきになれそうにないな」
[ルビは省略しました - tomoki y.]

  • オスカー・ワイルド=著 高橋啓(たかはし・けい)=訳 「カンタヴィルの幽霊」 江河徹=編 『恐ろしい幽霊の話』 幻想文学館 1 くもん出版 1989/08 所収

(J7) 西村 1988
「なんにもわかっちゃいないわ、だからアメリカへ移住して精神を啓発するのが一番よ。うちの父ならそれはもう喜んで船賃をただにしてくれるわよ、スピリット*はどんな種類でも重税がかかるけど、でも税関は大丈夫よ、役人はみんな民主党だから。ニューヨークに着いたら、きっと引っぱり凧よ。お祖父さんを手に入れるためなら十万ドルでも出そうってひとが一杯いるし、まして名門の幽霊ならもっともっと出すわ。」
「アメリカは好きになれそうにもないな。」

* 「幽霊」と「酒類」とをかけたもの。


(J8) 前川 1982
「なにもわかっちゃいないのね。是非アメリカへ移住して勉強しなおすといいわ。あたしの父が喜んで船賃をただにしてくれると思うわ。どんな種類でもスピリット*と呼ばれるものには重税がかかるけど、税関はきっと大丈夫、役人はみんな民主党員ですからね。いったんニューヨークに着いてしまえば大成功疑いなしよ。あそこには〈おじいさん〉を手にいれるためなら十万ドル出そうという人がいくらでもいるし、ご先祖の幽霊のためならいくらでも払うわ」
「どうもアメリカは好きになれそうにない」

* 英語では酒類も幽霊もどちらもスピリットである。

  • ワイルド=著 前川祐一=訳 「カンタヴィルの幽霊」 ド・クィンシー〔ほか〕=著 小池滋+富山太佳夫=編 『悪魔の骰子—ゴシック短篇集』 ゴシック叢書 19 国書刊行会 1982/08 所収

(J9) 平井 1977
「そんなこと御存じにならなくてもいいのよ。そんなことよりもね、あなたは、なによりもまず、アメリカへ移住して、精神を改良なさるのが、いちばんいいことなんだわ。父はきっと喜んで、無料の旅券を出して下さってよ。幽霊だって、税金はそうとう重くかかるけど、でも税関のことなら、あすこのお役人はみんな民主党だから、むずかしいことはちっともないわ。いちどニューヨークへいらしてごらんなさい。きっとあなたは引っぱりだこになるから。だって、お祖父さまを買うのに、十万ドルも出す人が大ぜいいるんですもの。自分の家の幽霊を買うとなったら、もっと大金を出すにちがいないわ。」
「わしはアメリカはどうも気に入りそうもないて。」


(J10) 福田+福田 1977
「何も知ってはいらっしゃらないじゃないの、移民でもなさって、そういう考え方を改めるのが何よりも大事ね。父は喜んであなたに無条件の旅券を交付してくれるでしょうよ、そりゃあらゆるスピリット(訳註、原文 'spirit' には「強いアルコール飲料」と「幽霊」の二つの意味が掛けられている)には高い関税がかかるでしょうけれど、税関の方は問題ないと思うわ、あそこのお役人は皆民主党ですもの。一旦ニューヨークに着きさえすれば、大成功疑い無しよ。お祖父さんを持つ為なら十万ドル出そうという人達が一杯いるのですもの、先祖の幽霊を持てるとなったらそれ以上出すこと間違いなしだわ」
「どうもアメリカは性に合わんな」

  • O・ワイルド=著 福田恆存(ふくだ・つねあり)+福田逸(ふくだ・はやる)=訳 「カンタヴィルの幽霊」 『アーサー卿の犯罪』 中公文庫 1977/05 所収

(J11) 小野 1976, 1988
「何も分かってはいないわ。あなたはアメリカに移住して、自分の精神を啓発するのがいちばんよ。うちの父に頼めば、よろこんで船賃はただにしてくれるわ。スピリット*にはみんな重税がかかるのだけど、でも税関は大丈夫、役人はみんな民主党だから。ニューヨークに着いたら、あなたはきっと引っ張りだこよ。アメリカには祖父を手に入れるためなら十万ドルでも出すって人がいくらもいるし、まして先祖の幽霊ともなればいくらでも出すわよ」
「アメリカはどうもわしには好きになれんようじゃ」

*「幽霊」の意味と「酒類」の意味とをかけたもの。


(J12) 後藤 1965
 「あなたにアメリカがわかるものですか。一番いいのはアメリカに移住して心を入れ替えなさることよ。お父様はきっと喜んであなたをただでお連れするわ。それに税関はみんな民主党員だからきっと問題ないわ。ニューヨークにいらしたらきっと皆が大さわぎよ。アメリカでは何十万、何百万ドル出してもいいから、れっきとしたお祖父様がほしいという人が大勢いるわ。家付の幽霊だったらさぞかしよ」
 「わしはアメリカなど好きにはなれまい」


(J13) 内山 1957, 1980
 「あなたは何も御存知ないのですわ。あなたが移住して御気持を変えられますと一番いいのですが。父は勿論喜んでフリー・パスを差し上げますわ。どんな種類のスピリットにも重い関税がかかりますので、あなたにも関税はかかるでしょうが、役人達はみんな民主党員ですから税関がむずかしい、ということも無いでしょう。一たびニューヨークへ行けばあなたはきっと大成功者になれてよ。私にはわかっていますが、ニューヨークでは祖父を持てましたら十万ドルも出す方が沢山おりましょう。まして名門の幽霊を手に入れられるのでしたらもっとずっと沢山出しましょう。」
 「わたしにはアメリカが好きになれそうにもありませんねえ。」


(J14) 西村 1950
「あなたは何もご存じないのね、だからあなたにできる一等いいことは移住して改心なさることですわ。お父さまだってそれは喜んで無料切符をくださるでしょうし、火酒(スピリツツ)(スピリッツは幽靈の意も兼ねている)だとどんなのでも高い關税がかかるけど、税關なんか問題ありませんわ、お役人はみんな民主黨員ですもの。ニウ・ヨークにお着きにさえなれば、きっと大成功なさることよ。お祖父さまが貰えるなら十萬ドル出そう、名門の幽靈ならもっともっと出すという人もニウ・ヨークで大勢知ってますから。」
「アメリカには馴染めそうにないな。」


(J15) 矢口 1924
『あなたこそ何も知つてゐませんわ。あなたにとつて一番いゝ事は、移住して心を改めることですわ。お父さまは、あなたに旅行券を差し上げることなら、喜んで致しますわ。尤も幽靈にはどんなものにでも重い税がかゝりますけれど、税關なんて何の面倒もありません。お役人はみんな民主主義者ですから。で、ニューヨークへ着きさへすれば、あなたはきつと大成功です。大抵の人なんざ祖父さんなど分りはしないのだから祖父さんが持てるのなら十萬弗出さうといふ人をどつさり知つてゐますし、名門の幽靈なら、もつともつと出しますわ。』
『私はアメリカが好きになりたいとは思はない。』

  • オスカァ・ワイルド=作 矢口達=譯 「カンタヴィルの幽靈」 『謎の女』 海外文学新選21 新潮社 價六拾錢 1924/12(大正13)所収

(J16) 秋田 1920, 1995
『いゝえ、あなたこそ何にも知つてはゐませんわ。あなたに一番いゝ事は、移住して改心なさるといふことですわ。お父さまにも、あなたに通行權を差上げることなら、それや喜んで致しますわ。尤もお酒にはどんな種類のものでも重い税がかゝりますけれど、税關なんて何の面倒もありませんわ、お役人はみんな民主主義者ですから。で、紐育へ着きさへすれば、あなたも屹度大成功しますわ。祖父さんが貰へるなら十万弗出さうといふ人もどつさり知つてゐますし、それに名門の幽靈ならもつと出しますわ。』
『私はアメリカが好きになりたいとは思はん。』

  • ワイルド=著 秋田雨雀=譯 「カンタウイールの幽靈」
  • a. は b. の復刻。引用は b. 天佑社版 1920 に拠りました。表題は b. の目次に拠りました。おなじ本の章扉、本文などには、「カンタヴイールの幽靈」「カンターヴィルの幽靈」「カンターウイルの幽靈」といった表記も見られ、きわめて不統一です。

■ロシア語訳 Translation into Russian

     - Ничего вы не понимаете. Поехали бы лучше в Америку,  да  подучились немного. Папа с радостью устроит вам бесплатный билет, и хотя на спиртное и, наверно, на спиритическое пошлина очень высокая, вас  на  таможне  пропустят без  всяких.  Все  чиновники  там  -  демократы.  А  в  Нью-Йорке  вас  ждет колоссальный успех. Я знаю многих людей, которые дали бы сто тысяч  долларов за обыкновенного деда, а за семейное привидение - и того больше.

     - Боюсь, мне не понравится ваша Америка.

  • Оскар Уайльд. Кентервильское привидение
  • E-text at Lib.Ru

 Audio 2 
ドイツ語版オーディオブック(朗読) Audiobook in German

朗読: ヴィルヘルム・ゲッツェ。下の2種類の引用に相当する箇所の朗読は 5:28 あたりから。ただし、朗読の台本は下のどちらの訳文とも完全には一致しません。 Uploaded on 16 Nov 2010 by Liegebird. Read by Wilhelm Götze. The recording corresponding to the excerpts below starts around 5:28, although the script is an exact match to neither of the translations.


■ドイツ語訳 Translations into German

(D1)
"Davon wissen Sie überhaupt nichts, und am besten wäre es, Sie wanderten aus und lernten etwas dazu. Mein Vater wird nur allzu glücklich sein, Ihnen die Überfahrt zu bezahlen, und obgleich auf jederlei Geistigem ein hoher Zoll liegt, wird es keine Schwierigkeiten geben, da die Zollbeamten alle Demokraten sind. Und sind Sie erst einmal in New York, ist Ihnen bestimmt ein großer Erfolg gewiss. Ich kenne eine Menge Leute, die hunderttausend Dollar hergeben würden, um einen Großvater zu besitzen, und noch viel mehr für ein Familiengespenst."

"Ich glaube, mir würde Amerika nicht gefallen"

  • Das Gespenst von Canterville by Oscar Wilde
  • E-text at Cordula's Web

(D2) Blei, 1905
„Darüber wissen Sie gar nichts, und das beste wäre, Sie wanderten aus und vervollkommneten drüben Ihre Bildung. Mein Vater wird nur zu glücklich sein, Ihnen freie Überfahrt zu verschaffen, und wenn auch ein hoher Zoll auf geistige Sachen jeder Art liegt, so wird es doch auf dem Zollamt keine Schwierigkeiten geben, denn die Beamten sind alle Demokraten. Wenn Sie erst mal in New York sind, so garantiere ich Ihnen einen grossen Erfolg. Ich kenne eine Menge Leute, die 1000 Dollars dafür geben würden, einen Grossvater zu haben, und noch unendlich viel mehr für ein Familiengespenst.“

„Ich glaube, mir würde Amerika nicht gefallen.“


■イタリア語訳 Translation into Italian

"Lei non sa nulla di ciò che interessa a noi, e la cosa migliore che dovrebbe fare sarebbe quella di emigrare e migliorare il suo cervello. Mio padre non sarà che troppo felice di procurarle un passaggio gratuito, e per quanto vi sia una forte tassa sugli spiriti e gli alcoolici in genere, l'ufficio della dogana non le farà difficoltà, dato che i funzionari sono tutti democratici. Una volta a Nuova York, stia certo che avrà un successo formidabile. Conosco un sacco di gente che darebbe centomila dollari per avere un nonno, figurarsi poi se potesse trovare un fantasma di famiglia".

"Non credo che l'America mi piacerebbe".

  • Il Fantasma di Canterville by Oscar Wilde
  • E-text at readme.it

■ポルトガル語訳 Translation into Portuguese

“O senhor não sabe nada a esse respeito, e o melhor que tem a fazer é emigrar, para cultivar o espírito. Meu pai não deixará de sentir-se muitíssimo feliz em lhe conseguir uma passagem gratuita. O senhor não encontrará dificuldade alguma, na alfândega, onde todos os funcionários são democratas. Uma, vez em Nova Iorque, o senhor alcançará o maior dos êxitos. Conheço uma porção de gente que daria cem mil dólares para ter um antepassado, e ainda mais para ter um fantasma na família.”

“Estou convicto de que não gostaria da América.”


■スペイン語訳 Translation into Spanish

-No sabe usted nada, y lo mejor que puede hacer es emigrar, y así se formará idea de algo. Mi padre tendrá un verdadero gusto en proporcionarle un pasaje gratuito, y aunque haya fuertes impuestos sobre los espíritus, no le pondrán dificultades en la Aduana. Y una vez en Nueva York, puede usted contar con un gran éxito. Conozco infinidad de personas que darían cien mil dólares por tener antepasados y que sacrificarían mayor cantidad aún por tener un fantasma para la familia.

-Creo que no me divertiría mucho en Estados Unidos.

  • El fantasma de Canterville by Oscar Wilde
  • E-text at Ciudad Seva

■フランス語訳 Translation into French

— Vous n’en savez rien, et ce que vous pouvez faire de mieux, c’est d’émigrer, cela vous formera l’esprit. Mon père se fera un plaisir de vous donner un passage gratuit, et bien qu’il y ait des droits d’entrée fort élevés sur les esprits de toute sorte, on ne fera pas de difficultés à la douane. Tous les employés sont des démocrates. Une fois à New-York, vous pouvez compter sur un grand succès. Je connais des quantités de gens qui donneraient cent mille dollars pour avoir un grand-père, et qui donneraient beaucoup plus pour avoir un fantôme de famille.

— Je crois que je ne me plairais pas beaucoup en Amérique.


 Audio 3 
英語原文のドラマ仕立ての朗読 Dramatized audiobook in English

下に引用する箇所は 49:21 から始まります。 Uploaded to YouTube by Fadi Kalo on 4 Apr 2013. The excerpt below starts at 49:21


 Audio 4 
英語原文のオーディオブック(朗読) Audiobook in English

下に引用する箇所は 40:48 から始まります。 Uploaded to YouTube by rt20bg on 12 Oct 2012. Audio courtesy of LibriVox. Read by Mike Harris. The excerpt below starts at 40:48.


■英語原文 The original text in English

'You know nothing about it, and the best thing you can do is to emigrate and improve your mind. My father will be only too happy to give you a free passage, and though there is a heavy duty on spirits of every kind, there will be no difficulty about the Custom House, as the officers are all Democrats. Once in New York, you are sure to be a great success. I know lots of people there who would give a hundred thousand dollars to have a grandfather, and much more than that to have a family Ghost.'

'I don't think I should like America.'


 Gallery 
ビデオ・DVDのジャケットと挿絵 VHS/DVD covers and an illustration

  • The Canterville Ghost (1997) [DVD] [Import] 監督: Crispin Reece. 出演: Ian Richardson, Celia Imrie, Sarah-Jane Potts. Bfs Entertainment, 2000-06-27 ISBN : 9780773316713
  • The Canterville Ghost (1996) [DVD] TV adaptation 監督: Sydney Macartney. 出演: Patrick Stewart, Neve Campbell. Region 1 (U.S. and Canada only) DVD release: 2004-08-31 ASIN: B0002IQJBO
  • The Canterville Ghost (1990) [DVD] [Import] 監督: William F. Claxton. 出演: Richard Kiley, Jenny Beck. Image Entertainment, 1999-04-13 ISBN : 9786305339847
  • The Canterville Ghost (1986) [VHS] [Import] 監督: Paul Bogart. 出演: John Gielgud, Ted Wass, Alyssa Milano. VHS Sony Pictures, 1996-08-20 ISBN : 9786302874723
  • The Canterville Ghost (1944) [VHS] [Import] 監督: Jules Dassin, 出演: Charles Laughton, Robert Young and Margaret O'Brien. VHS MGM (Warner), 1992-12-02 ISBN : 9786301967556 Image source: allmovie
  • 挿絵: "Suddenly there leaped out two figures" Illustration by Wallace Goldsmith. Imprint 1906, John W. Luce and Company, Boston and London. Image source: Project Gutenberg
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a. Canterville_ghost_1997 b. Canterville_ghost_1996_2 c. Canterville_ghost_1990

d. Canterville_ghost_1986 e. Canterville_ghost_1944 f. Image10h


■著作権に関わる警告 Warning on copyright

Spirit の掛け言葉の冗談を、上のように「オサケもオバケも」と翻案したのは、わたくし Tomoki Yamabayashi(通称 tomoki y.)の独創、すなわち専売特許(!)であります。したがって、もしも借用/引用なさりたい場合には、ちゃんと訳者名を明示するように。マジです(笑)。


■邦題の表記 Transliteration variations of the title in Japanese

  「カンターウイルの幽霊」……秋田 1920(頁端)
  「カンタービル館の幽靈」……後藤 1965
  「カンターヴィルの幽霊」……秋田 1920(本文)
  「カンタウイールの幽霊」……秋田 1920(目次)
  「カンタヴィルの幽霊」………
南條 2015 tomoki y. 2009 高橋 1989
                小野 1988
  「カンタヴィルの幽霊」………前川 1982 平井 1977 福田+福田 1977
  「カンタヴィルの幽霊」………矢口 1924
  「カンタヴイールの幽霊」……秋田 1920(章扉)
  「キャンタービルの幽霊」……さやの 公開年月未確認
  「キャンタビル邸の幽霊」……内山 1957, 1980
  「キャンタヴィルの幽霊」……西村 1950, 1988


■テレビ/映画化 Filmography

   List of film and TV adaptations at IMDb


■外部リンク External links


■更新履歴 Change log

  • 2016/01/22 南條竹則=訳 2015/11/20 を追加しました。
  • 2015/11/24 日本語版オーディオブックの YouTube 画面を追加しました。
  • 2014/10/21 田多良俊樹=部分訳 2014/04 を追加しました。
  • 2014/09/01 英語原文のドラマ仕立ての朗読の YouTube 画面を追加しました。
  • 2013/03/30 英語原文のオーディオブックの YouTube 画面を追加しました。
  • 2013/02/25 リンク先で消えていた詳細未確認の動画を削除し、代わりにドイツのテレビ映画 オスカー・ワイルドの カンタベリー城と秘密の扉 (2005) 予告篇の YouTube 動画を掲載しました。また、ドイツ語版オーディオブックの YouTube 画面と Franz Blei によるもう一種類のドイツ語訳も追加しました。
  • 2012/10/12 後藤優=訳 1965/08/20 を追加しました。
  • 2012/08/27 ポルトガル語訳を追加しました。
  • 2012/08/13 ロシア語訳を追加しました。
  • 2010/04/26 さやの=訳 公開年月未確認 を追加しました。
  • 2010/04/12 1997年テレビ版、1996年テレビ版、1970年ソ連製アニメ、それに詳細未確認の新しい映像化作品の予告篇の、合わせて4本の YouTube 動画を追加しました。また、DVD・VHSジャケットの画像も追加しました。さらに、ブログ記事のタイトルに邦題をもう一つ追加して、つぎのように変更しました。

    旧題: The Canterville Ghost by Oscar Wilde
        オスカー・ワイルド 「カンタヴィルの幽霊」
    新題: The Canterville Ghost by Oscar Wilde
        オスカー・ワイルド 『カンタヴィルの幽霊』『カンタヴィル・ゴースト』

  • 2009/08/16 1986年テレビ版と1944年映画版の2つの映像化作品の YouTube 動画を追加しました。
  • 2009/01/10 Tomoki Yamabayashi=訳 2009/01、平井呈一=訳 1977/12、および「著作権に関わる警告」の項を追加しました。
  • 2008/07/05 内山正平=訳 1980/07 を追加しました。
  • 2007/12/16 前川祐一=訳 1982/08 を追加しました。
  • 2007/11/22 訳文は掲載しませんでしたが、福田恆存=譯 1992/07 について言及しておきました。
  • 2007/11/21 西村孝次=譯 1950/12、矢口達=譯 1924/12、および秋田雨雀=譯 1920/03 を追加しました。

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■洋書 Books in non-Japanese languages

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■DVD

  

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Thursday, 15 November 2007

赤瀬川原平『ふしぎなお金』The Wonder of Money by Genpei Akasegawa

4620317381 462031739x Akasegawa

           ↑ Click to enlarge ↑  
 
Left:ふしぎなお金』こどもの哲学 大人の絵本1 毎日新聞社 (2005)
Centre:自分の謎』こどもの哲学 大人の絵本2 毎日新聞社 (2005)
Right: 赤瀬川原平「大日本零円札」The great Japanese zero-yen note, by Genpei Akasegawa (1967) Image source: Artnet
 
 
■日本語原文 The original text in Japanese

 人間の頭の中にはいろいろな疑問がある。誰かに訊いてみたい疑問もあるし、訊いてもしょうがないと思っている疑問もある。
 疑問というのは、解決すると科学になるが、解決しない疑問は哲学となる。
 訊いてもしょうがないと思っている疑問は、ほとんど哲学なのだ。人間は死んだらどうなるか。この世の果てはどうなっているのか。時間というのは無限につづいていくのか。
 そういうことを、みんな子供のころに考えていた。でも考えても答はみつからないので、あきらめて大人になった。大人になって、解決の道のある科学でやることにしたのである。
 だから哲学というのは、本当は子供の学問だと思う。自分は何故ここにいるのか。自分はどこから来たのか。友だちと夢中になって遊んでいるときにはそんなことを考えないが、一人でぼんやりしているとき、おねしょをして起きてしまったときなど、そういう哲学に頭を占領された。

   「あとがき」
   赤瀬川原平=著『ふしぎなお金
   赤瀬川原平のこどもの哲学 大人の絵本1 毎日新聞社 2005/09
 
 
■外部リンク External links

   * 赤瀬川原平 - Wikipedia
   * Genpei Akasegawa - Wikipedia
 
 
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■和書 Books in Japanese
(1) 赤瀬川原平

(2) 尾辻克彦

(3) 赤瀬川原平の「こどもの哲学 大人の絵本」シリーズ

 
 
 

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Monday, 12 November 2007

Marie Antoinette by Stefan Zweig (3) シュテファン・ツヴァイク 『マリー・アントワネット』 (3)

« 1 2 Marie Antoinette »
« 1 2 マリー・アントワネット »

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↑ クリックして拡大 Click to enlarge ↑
  • Marie Antoinette (2006), a film adaptation inspired by the book b. below. Directed by Sofia Coppola, Starring Kirsten Dunst.
  • Marie Antoinette: The Journey by Antonia Fraser, Doubleday (2001)
  • 池田理代子『ベルサイユのばら オールカラーイラスト集』JTB (2003) 「ベルばら」も、ツヴァイクの『マリー・アントワネット』から着想を得たとされる。
  • Marie Antoinette (1938), a film adaptation also based on Zweig's biography. Directed by W.S. Van Dyke, Starring Norma Shearer, Tyrone Power and John Barrymore. Image source: Wikipedia
  • Marie Antoinette on her way to the guillotine, by Jacques-Louis David, 1793.  Image source: Wikipedia 断頭台に向うマリー・アントワネット。ジャック・ルイ・ダヴィッド画。下唇が突き出た「受け口」なのは、ハプスブルク家の遺伝だとされる。39歳の誕生日を目前にして、すでに白髪頭だったという。このデッサンは日本語訳 (1) の訳者・中野京子さんの近著『怖い絵』朝日出版社 (2007) で取り上げられた、20枚の「こわい絵」のうちにも含まれている。
  • The 1792-1793 model of guillotine.  Image source: Bois de Justice フランス革命当時に使われたギロチンの復元模型。本体はオーク製。赤く塗られているのは、血を目立たなくするためだとされる(はたしてどれだけ効果があったのか?)。

■日本語訳 Translations into Japanese

(J1) 中野 2007
 サン=トノレ通りの角、今日ではカフェ・ド・ラ・レジャンスの建つあたりで、ひとりの男が鉛筆と一枚の紙を手に待ちかまえている。ルイ・ダヴィッド、もっとも卑怯(ひきょう)な人間のひとりであり、当時最大の画家のひとりでもある。革命のあいだ彼はもっとも騒がしく吠(ほ)えたてる連中の仲間で、権力者が権力の座についている間はそれに仕え、危なくなると見捨てた。
 (……)権力におもねる永遠の変節漢の典型であり、成功者にはすり寄り、敗北者には情け容赦ない彼は、勝者の戴冠式を絵にし、敗者の断頭台行きを絵にする。今マリー・アントワネットを運ぶ同じ荷車に、後日ダントンも乗ることになるのだが、ダヴィッドの浅ましさを知り抜いている彼は、車上からその姿を見つけ出して、侮蔑(ぶべつ)の言葉を鞭(むち)のように振りおろす、「この下司野郎!」。


(J2) 関 1965, 1967, etc.
 サントノレ街の角、今日のカフェ・ド・ラ・レジャンスがあるところで、一人の男が鉛筆を取り出し、一枚の紙を手にして待っていた。これがルイ・ダヴィド、最も卑怯な魂の一人、当代最大の芸術家の一人である。革命のあいだは大言壮語家のなかでも一番声の大きな男で、勢力家が権力を握っているうちはこれに仕え、危険になれば見捨てた。
 (……)権力の側に乗りかえる永遠の変節者の典型、成功者に媚び、敗者には無慈悲な男ダヴィドは、戴冠式の勝者を描き、断頭台に向う敗者を描く。後日、今マリー・アントワネットをのせて行くのと同じ皮剥人の車から、彼のあさましさを知っているダントンも、彼のすがたを見つけて、こういうときにもなお、「この下僕根性めが!」と、性急に軽蔑の罵言を投げつけるのである。


(J3) 藤本+森川 1962, 1974, etc.
 リュ・サン=トレノ[ママ]の角、今日ではカフェ・ド・ラ・レジャンスになっているところで、ひとりの男が、鉛筆を取りだし、一枚の紙を手にして、待っている。これがルイ・ダヴィッド、もっとも卑怯な心の持主のひとり、当時最大の芸術家のひとりである。革命のあいだはさわがし屋のあいだでもいちばん声の大きな男で、かれは勢力家が権力の座についているあいだはこれに仕え、危険になればこれを見捨てる。
 (……)権力のもとに走る永遠の変節者の典型であり、成功者の前にはしっぽをふり、敗者にたいしては無慈悲なかれは、戴冠式にのぞむ勝利者たちをえがき、断頭台への途上にある敗北者たちをえがくのである。いまマリー・アントワネットを運ぶそのおなじ皮剥人の馬車の上から、後日、かれのあさましさを知り抜いているダントンもまた、かれのすがたをさがしだして、こういう事情のなかでもなお、いそいでかれに侮蔑の罵言をたたきつける、「下司根性め!」


(J4) 山下 1958
[訳文は追って挿入するつもりです - tomoki y.]


(J5) 高橋+秋山 1953, 1980
 サン・トノレ街の角、今日のレジャンス・カフェのある所で、一人の男が片手に写生帖、片手に鉛筆を動かして待機している。ルイ・ダヴィッドだ、当代きっての芸術家の一人、そして当代きっての臆病者の一人である。革命中にやかましい連中の中にあって最もやかましい男であった彼は、権勢家が権力をにぎっているあいだだけこれに仕え、彼らがいったん危険にさらされるとさっさと見棄てる。
 (……)権力に媚びる永遠の変節者の典型、勝利者にはへつらい、敗者には仮借ない彼は、勝利者の戴冠式を描き、敗者の断頭台途上の図を描くのだ。いまマリー・アントワネットを運び行く同じ皮剥人の馬車の上から、のちにダントンもまた彼の姿を認めて、そのあわれむべき根性を知り抜いているダントンは、「下司!」の罵言を彼に浴びせかけて、この卑劣漢を鞭打ったのである。


■スペイン語訳 Translation into Spanish

En la esquina de la calle de Saint-Honore, en el sitio del actual café de la Régence, esperaba un hombre, lápiz en ristre y una hoja de papel en la mano. Es Luis David, una de las almas más cobardes al mismo tiempo que uno de los mayores artistas de la época.  Siendo uno de los que gritaron más alto durante la Revolución, sirve a los poderosos mientras están en el poder y los abandona en el peligro; [Omission]


■フランス語訳 Translation into French

Au coin de la rue Saint-Honoré, là où se trouve aujourd'hui le café de la Régence, un homme attend, brandissant son crayon, une feuille de papier à la main. C'est Louis David, une des âmes les plus viles en même temps que l'un des plus grands artistes de l'époque. Braillard parmi les braillards de la Révolution, il sert les puissants aussi longtemps qu'ils sont au pouvoir et les abandonne à l'heure du danger. [Omission]


■英訳 Translation into English

At the corner of the Rue Saint-Honore, where the Cafe de la Regence now stands, a man stood waiting, an artist's blcok in one hand and a pencil in the other. It was Louis David, one of the greatest cowards but one of the greatest painters of his day. Among the loudest of spouters while the Revolution was in full cry, he served the men of might so long as they were mighty, only to abandon them in the hour of danger. [Omission]

  • Marie Antoinette: The Portrait of an Average Woman (1933) by Stefan Zweig. Translated by Eden Paul and Cedar Paul
  • Paperback: Grove Press, 2002/08
  • Excerpt at Google Book Search

■ドイツ語原文 The original text in German

An der Ecke der Rue Saint-Honorè, an der Stelle des heutigen Cafè de la Régence, wartet, den Bleisteift geszückt, ein Mann, ein Blatt Papier in der Hand. Es ist Louis David, eine der feigsten Seelen, einer der größten Künstler der Zeit. Während der Revolution unter den Schreiern der lauteste, dient er den Mächtigen, solange sie an der Macht sind, und verläßt sie in der Gefahr. [Omission]


 Video 1 
テレビ マリー・アントワネット (2006)
TV Marie Antoinette (2006)

監督: フランシス・ルクレール、イヴ・シモノー 出演: カリーヌ・ヴァナッス
Directed by Francis Leclerc & Yves Simoneau, Starring Karine Vanasse


 Video 2 
映画 マリー・アントワネット (2006) 予告編
Film Marie Antoinette (2006) Trailer

監督: ソフィア・コッポラ 出演: キルステン・ダンスト
Directed by Sofia Coppola, Starring Kirsten Dunst


 Video 3 
映画 マリー・アントワネットの首飾り (2001) 予告編
Film The Affair of the Necklace (2001) Trailer

監督: チャールズ・シャイア 出演: ヒラリー・スワンク、ジョエリー・リチャードソン
Directed by Charles Shyer, Starring Hilary Swank, Joely Richardson


 Video 4 
TV Marie Antoinette (1975)

Directed by Guy-André Lefranc, Starring Geneviève Casile


 Video 5 
映画 マリー・アントアネットの生涯 (1938) 予告編
Film Marie Antoinette (1938) Trailer

監督: W・S・ヴァン・ダイク二世 出演: ノーマ・シアラー、タイロン・パワー
Directed by W.S. Van Dyke, Starring Norma Shearer, Tyrone Power


■外部リンク External links


■更新履歴 Change log

  • 2016/02/02 スペイン語訳とフランス語訳を追加しました。
  • 2011/02/15 ドイツ語原文のテキストを挿入しました。
  • 2010/05/26 つぎの5本の YouTube 動画を追加しました。
    1. テレビ 『マリー・アントワネット』 (2006)
    2. 映画 『マリー・アントワネット』 (2006)
    3. 映画 『マリー・アントワネットの首飾り』 (2001)
    4. TV Marie Antoinette (1975)
    5. 映画 『マリー・アントアネットの生涯』 (1938)

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■DVD

■洋書 Books in non-Japanese languages
(1) Marie Antoinette

(2) Stefan Zweig

■和書 Books in Japanese
(1) マリー・アントワネット

(2) ツヴァイク

(3) ツワイク

  

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А. С. Пушкин. Пиковая дама (3) The Queen of Spades by Alexander Pushkin (3) プーシキン 「スペードのクイーン」「スペードの女王」 (3)

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a. The_queen_of_spades_281982_2 b. 2004116933776254 c. Russian_movie_poster_0005_5


■中国語訳(簡体字)Translation into simplified Chinese

  “(……)向我公开您的秘密吧!您要它有什么用?……也许,它跟滔天大罪与生俱来,也许,它跟永恒的福祉不共戴天,也许,它跟魔鬼结下了不解之缘……请想想,您老了,能活几天?——我要把您一生的罪孽通通抓将过来压在自己的灵魂上!向我公开您那个秘密吧!请想想,我这个人一生的幸福全操在您的掌心;非但我本人,还连同我的孩子、孙子、曾孙,都将对您感恩戴德,对您顶礼膜拜,把您当成人间的圣贤……”
  老太婆没有回答一个字。
  格尔曼站起来。
  “老妖婆!”他说,咬牙切齿,“看来我得强迫你说……”

   普希金 《黑桃皇后》
   E-text at 新时代书城 (mypcera.com)


■日本語訳 Translations into Japanese

(J1) 渡辺 1986
「わたしはなんなりと、あなたの心のままにつかえましょう。どうか教えてください。もしも恐ろしい誓いをたてていていえないのでしたら、その罰をわたしの魂がひきうけましょう。それに、あなたはもうご老体です。なにがおしいのでしょうか? 教えてくだされば、わたしは子、孫の代までも、あなたのために祈りをあげて……。」
 老女はひとことも口をきかなかった。ゲルマンはくやしさに血がのぼったのか、ポケットから銃をとりだした。
「おいぼれめ! いやならこっちにもかんがえがあるぞ! さあ、いうんだ!」
[原文にあるルビは省略しました - tomoki y.]

   プーシキン=作 渡辺節子=文(抄訳/再話)「スペードの女王」
   プーシキン〔ほか〕=作『悪魔のトランプ占い
   怪奇・推理シリーズ ポプラ社文庫 1986/07 所収


(J2) 木村 1980
「あなたの秘伝をこの私にお明かしください! もう今のあなたには無用のものではございませんか? ひょっとすると、あなたはそのためにおそろしい罪をきせられて、永遠の至福を失い、悪魔と取引きすることになるかもしれません。でも、考えてごらんなさい。あなたはご老体です。このさきもう長いことはないでしょう。私はあなたの罪をよろこんで自分の魂におひきうけいたしましょう。ただその秘伝だけをこの私に明かしてください。ひとりの人間の幸福があなたの手に握られていることを、どうか考えてみてください。いいえ、私だけではありません。私の子供、孫、曾孫(ひまご)たちまでが、あなたの思い出をどんなに尊び、あなたを聖体のように崇(あが)めたてまつることでしょう……」
 老女はひと言も答えなかった。
 ゲルマンは身を起こした。
「この鬼婆(おにばば)め!」彼は歯ぎしりしながら叫んだ。「それなら、いやでも返事をさせてやるぞ……」

   プーシキン=作 木村浩=訳「スペードの女王」
   『世界文学全集23 プーシキン/レールモントフ
   綜合社=編集 集英社=発行 1980/12 所収


(J3) 高橋 1978
「秘密を教えてください。それがあなたになんでしょう。それは仮に、おそるべき罪と、永遠の幸福の破滅と、悪魔との契約とをともなっていようとですよ、考えてもみてください、あなたはご老体で、あなたのお命はもう長くはないのです。あなたの罪ならば、この私の魂がお引き受けいたします。どうかあの秘密を教えてください。考えてみてください。ひとりの男の幸せがあなたの手中にあるのですよ。そして、それは私だけではない、私の子ども、孫、ひ孫までもが、あなたの思い出に感謝し、聖体のようにあがめるでしょう……」
 老婦人はひとことも答えなかった。
 ゲルマンは不意にたちあがった。
「老いぼれ鬼婆め」と彼は歯ぎしりして言った。「それならいやでも言わせてやる」

   プーシキン=作 高橋包子=訳「スペードの女王」
   五木寛之〔ほか〕=編
   『世界文学全集36 プーシキン/レールモントフ/ツルゲーネフ』(全50巻)
   学習研究社 1978/02 所収


(J4) 小沼 1969
 「(……)あなたの秘伝をお明かしください、あなたにはもう用のないものじゃありませんか?……。ひょっとすると、それは恐ろしい罪、永遠の幸福の喪失、悪魔との取り引きを伴っているものかも知れません……。しかし考えてもごらんなさい、あなたはもうご老体です。もうあまり長くは生きられない身じゃありませんか——あなたの罪障はこの私が喜んで自分の魂にお引き受けいたします。ですからどうぞ秘伝だけはお明かしください。まあよくお考えになってください、一人の人間の幸福が、あなたの手中に握られているのです。いいえ、私ばかりではない、私の子供、孫、曽孫までが、あなたの記憶を尊び、聖体のようにそれをうやまいあがめるのですよ……」
 老婦人は一言も答えなかった。
 ゲルマンはすっくと立ち上がった。
 「老いぼれた鬼婆(ばば)め!」と彼は歯ぎしりをして叫んだ。「それなら、いやでも返事をさせて見せるぞ……」
 
   プーシキン=著 小沼文彦(こぬま・ふみひこ)=訳
   『スペードの女王 他二編』旺文社文庫 1969/05


(J5) 藤井 1967, 1970
 ——(……)どうか秘密を明かしてください!——その秘密があなたにどれほど大事でしょう?……ことによるとその秘密にはおそろしい罪業が、永遠の至福の喪失が、悪魔との約束がついてまわってるのかもしれませんよ……考えてもみてください、あなたはもうお年です、もう老いさき長くはないんです。あなたの罪業はわたしがおひきうけします。どうか秘密を明かしてください。いいですか、ひとりの人間のしあわせがあなたの手ににぎられているんです、このわたしだけでなく、わたしの子供や孫や曽孫まであなたの思い出をたたえ、聖物のようにあがめます……
 老婆はひとことも答えようとしなかった。
 ゲルマンは立ちあがった。
 ——老いぼれの鬼ばばあめ!——彼はそう言って歯ぎしりした——それなら、力ずくで言わせてやる……
 
   プーシキン=著 藤井一行(ふじい・かずゆき)=訳「スペードの女王」
   『世界文学全集20 プーシキン/ツルゲーネフ集
   筑摩書房 1967/09, 1970/11 所収


(J6) 山本+山本=訳・文 1965
「(……)どうぞ、わたしのこの命がけの願いをお聞きとどけください。
 三枚のふだの秘密をお教えくださって、あなたに、どうということもないではありませんか。もし万一、そのために恐ろしい罰をお受けになるとしても、これからさき、もう、長くはお生きになりますまい。あなたの罰は、わたしがお引き受けいたしましょう。ですから、秘密をおあかしください。あなたは、わたしがしあわせになれるかどうかのかぎを、にぎっていらっしゃる。お願いですよ。伯爵婦人。」
 こう、長ながと頼んでも、夫人は、やっぱり黙りつづけています。ゲルマンは、すっくと立ちあがりました。
「このおいぼれの、鬼ばばあめ。」
 怒りにもえて、ゲルマンは叫びました。
「これだけ真心こめて頼んでも、教えないのだな。それなら、いやでも教えさせてやる。」
[原文は総ルビですが、ここでは省略しました - tomoki y.]

   プーシキン=原作 山本さやか=訳 山本和夫=文「スペードの女王」
   川端康成〔ほか〕=監修
   『少年少女世界の名作文学33 ソビエト編1』全50巻
   小学館 1965/05 所収


(J7) 西本 1963
「(……)あなたの秘密をぼくに教えてください! あなたにとっては、その秘密がどうだというのでしょう…… それに、もしかしたらその秘密は、恐ろしい罪業と結びついているのかもわかりませんよ。悪魔と取りひきして、永遠の幸福とひきかえに、悪魔からもらった秘密なのかもわかりませんよ……。考えてもごらんなさい。あなたはもうご老人です。そうながく生きてはおれないでしょう。あなたの罪は、ぼくがかわっておひき受けしてもよいのです。ですからその秘密を教えてください。考えてもごらんなさい、ひとりの人間の幸福が、あなた次第できまるのです。ぼくばかりでなく、ぼくの子も、孫も、ひい孫も、あなたのためにお祈りをささげ、あなたを聖者のようにあがめたてまつることでしょう……」
 老婆はひとことも答えなかった。
 ゲルマンは立ちあがった。
「鬼ばばぁめ!」彼は、歯ぎしりして言った。「どうしても言わせてやるぞ……」

   プーシキン=作 西本昭治(にしもと・しょうじ)=訳「スペードの女王」
   『スペードの女王・大尉の娘』現代教養文庫
   社会思想社 1963/01 所収
   (扉・目次・奥付などでは、タイトルの「女王」に「クイーン」とルビが
   振ってあります)


(J8) 丹辺 1961
 「(……)あなたの秘密をうちあけてください!——この秘密があなたにとって何になるというのです?……きっとその秘密には、おそろしい罪や、永遠の幸わせの破滅や、悪魔の取りきめがつきまとっているのでしょう…… 考えてもごらんなさい、あなたは、お年寄りなのです。もう老い先長い身ではありません——私はあなたの罪をよろこんでわが身にひきうけるつもりです。どうか、私に秘密をうちあけてください。一人の人間の幸わせがあなたの胸三寸にあるということをおかんがえになってください。私ばかりでなく、私の子供も、孫も、ひこ孫もあなたの思い出に感謝し、宝物のようにうやまうことでしょう…」
 老婆はひとこともこたえなかった。
 ゲルマンは立ちあがった。
 「この鬼婆め!」と彼は、歯ぎしりをして言った。「それならおまえにこたえさせてやるぞ!…」

   プーシキン=著 丹辺文彦(にべ・ふみひこ)=訳
   金子幸彦(かねこ・ゆきひこ)=編
   『ロシア短篇名作集』学生社 1961/07 所収


(J9) 中村 1950, 1953, etc.
「(……)あなたの秘伝をお明し下さい! 今さらあなたにそれがなんの役に立ちましょう?……わるくするとそれは、恐ろしい罪、永遠の幸福の破滅、悪魔との取引を伴っているかもしれません……まあ、考えてもごらんなさい——あなたはご老体です。もうそう長くはお生きになりますまい——わたくしは、あなたの罪を自分の魂にお引受けいたします。ですから、どうか秘伝をお授け下さい。まあ考えてもみて下さい、一人の人間の幸福があなたのお手に握られているのですよ。いや、わたくしばかりでなく、わたくしの子供や孫、曾孫までが、あなたの記憶を尊び敬い、聖物のように崇め奉ります……」
 老婆は一言も答えなかった。
 ゲルマンは立ちあがった。
「老いぼれ鬼婆め!」と彼は歯がみをして叫んだ。「それなら無理にも返事をさせるぞ……」
 
   プーシキン=著 中村白葉=訳「スペードの女王」
   『決定版ロシア文学全集2 プーシキン 大尉の娘 ほか
   日本ブック・クラブ 1969/08 所収


(J10) 神西 1933, 1948, etc.
 「秘伝を明かして下さい。それが貴女にとって何でしょう。……たといその為(ため)、怖ろしい罪咎(つみとが)をお着になろうと、永遠の至福とお別れになろうと、悪魔とどんな取引をなさろうと、まあ考えても御覧なさい——貴女はもう御老体です、この先の命もお長くはありますまい。貴女の罪咎は私の魂にお引き受けします。ですから秘伝をお明かし下さい。男一匹のどんな大きな幸運が、貴女のお手に握られているか、考えて見ても下さい。いやこの私だけではなく、子々孫々までも貴女の記念をどんなに敬い尊び、聖体のように崇(あが)めるか……」
 老媼(おうな)は一言も答えなかった。
 ゲルマンはすっくと起(た)った。——
 「老いぼれの鬼婆め」と彼は歯切りして叫んだ、「それなら厭(いや)でも吐かせてやる……」

   プーシキン=作 神西清(じんざい・きよし)=訳「スペードの女王」
   『スペードの女王・ベールキン物語』岩波文庫 改版 2005/04


(J11) 中山 1936, 1937, etc.
 「秘傅をお授け下さい。あなたにとつては、何でもないことではございませんか?……事によると、秘傅をもつてゐるために、怖ろしい罪になるか、永遠の幸福を失ふことになるか、或ひは惡魔との約束を果すことになるか、知れたものではないのですよ……よく考えてごらんなさい。あなたは老年の身で、もうこれからさき永くは生きて居られないのですよ——私はあなたの罪を私の魂にお引きうけしても宜しい。ですから、ただ秘傅だけは授けて下さい。男一匹の幸福があなたの手の中にあつて、私ばかりではなく、子どもや孫、そのまた子どもまでも、あなたが憶へてゐて下すつたことを有難がつて、あなたを聖母のやうに敬まふことになるのを考へてもみて下さい……」
 老媼は一言(こと)も返事をしなかつた。
 ゲルマンは立ちあがつた。
 「老いぼれの鬼婆め!」と彼は齒切りをして言つた、「そんなら否應なしに返事をさして見せる……」

   プウシキン=著 中山省三郎=譯「スペェドの女王」
   『プウシキン全集3』改造社 1936/11(昭和11)所収


(J12) 岡本 1929, 1987, etc.
「どうぞ貴女(あなた)の秘密をわたくしにお洩(も)らし下さい。あなたにはもう何のお入用(いりよう)もないではありませんか。たとひどんな恐ろしい罪を受けやうとも、永遠の神の救ひを失はうとも、惡魔とどんな取引をしようとも、わたくしは決して厭(いと)ひません。……考へて下さい。——あなたはお年を召してをられます。そんなに長くはこの世にはおいでになられないお體(からだ)です——わたくしはあなたの罪を自分の魂に引受ける覺悟でをります。どうぞあなたの秘密をわたくしにお傅(つた)へ下さい。一人の男の幸福が、あなたのお手に握られてゐると言ふことを思ひ出して下さい。いゝえ、わたくし一人ではありません。わたくしの子孫までが貴女を祝福し、あなたを聖者として尊敬するでせう……。」
 夫人は一言(ごん)も答へなかつた。ヘルマンは立上つた。
「老耄(おいぼ)れの鬼婆(おにばヽ)め。」と彼は齒ぎしりしながら叫んだ。「よし。嫌應(いやおう)なしに返事をさせてやらう。」

   プーシキン=著 岡本綺堂=訳「スペードの女王」
   『世界大衆文學全集35 世界怪談名作集
   改造社 1929/08(昭和4)所収


(J13) 山村 1921
「(……)貴女の秘訣を私に打明けて下さい。何でもないぢやありませんか。……そりや、何か恐ろしい罪が伴ひませう、永久のお惠みも消えませう、惡魔と何か契約もしてあるでせう。……だが、まあ、考へてもみて下さい——貴女はお年齡を召していらつしやる。生きておいでになるのも長いことぢやございません——貴女の罪は私の魂が引受ける覺悟をしてゐます。只々私に貴女の秘訣を打明けて下さい。人間ひとりの幸福は貴女の掌中にある事を思つてみて下さい。いゝえ、私一人ぢやあません[ママ]、私の子も孫も貴女の遺徳を賛美して、聖徒のやうに貴女を尊敬するでありませう……」
 伯爵夫人は一言も返事をしなかつた。
 ヘルマンは立ちあがつた。
「この老鬼婆(おにばゝ)め!」と彼は齒ぎしりしながら叫んだ。「ぢや、かうして言はせてやるぞ!」

   プーシュキン=著 山村魏(やまむら・たかし)訳「スペードの女王」
   『プーシュキン小説集』叢文閣 定價金貳圓 1921/04(大正10)所収


(J14) 小宮 1906, 1999
『(……)私に教へて下さいませんか。今あなたが一人知つてらつしやつたとて、何になります。そりや或は恐ろしい罪かも知れません。後の世で、極樂行が出來んかも知れません——言つて見りや魔物(まぶつ)の仲間入りをするやうなもんですからね。ようく考へて御覧ぢませ、あなたはもういくつだと思召す。私があなたの罪を一身に引きうけやう、甘んじて罰を代つて受けやうと云ふんぢやありませんか、どうぞ云つて聞かせて下さいまし。あなたのお蔭で、人間一匹どうともなるんです、私計りぢやないんです、私の忰も、私の孫も、その子も、その孫もみなあなたのお庇を蒙むります。……』
夫人はひと言も云はぬ。
へルマンは立ち上がつた。
『この業突張(ごふつくばり)奴(め)!』齒噛(はがみ)する勢凄じく『云はなきやあ云はして見せる迄のことよ。』

   プーシキン=著 小宮破霄=訳「三枚札」
   14a. 川戸道昭+榊原貴教=編 ナダ出版センター=制作
    『明治翻訳文学全集《新聞雑誌編》36 プーシキン/レールモントフ集
    (全50巻・別巻2)大空社 1999/12 所収
   14b.『明星』1906/11(明治39)収載

   初出誌は 14b.14a.14b. を複製したもの。
   引用は 14a. に拠りました。


■英訳 Translations into English

(E1) Twitchell
  "You could make my fortune without its costing you anything," pleaded the young man; "only tell me the three cards which are sure to win, and --"
  Herman paused as the old woman opened her lips as if about to speak.
(....)
  "Will you tell me the names of the magic cards, or not?" asked Herman after a pause.
  There was no reply.
  The young man then drew a pistol from his pocket, exclaiming: "You old witch, I'll force you to tell me!"

   The Queen of Spades
   by Aleksandr Sergeevich Pushkin
   Translated by H. Twitchell
   E-text at Project Gutenberg


(E2) Duddington
  '(....) tell me your secret -- what does it matter to you? Perhaps the price of it was some terrible sin, the loss of eternal bliss, a compact with the devil.... Just think: you are old; you haven't long to live -- and I am ready to take your sin upon my soul. Only tell me your secret. Think, a man's happiness is in your hands; not only I, but my children, grandchildren, and great-grandchildren will bless your memory and hold it sacred.' ...
  The old woman did not answer a word.
  Hermann got up.
  'Old witch!' he said, clenching his teeth; 'I 'll make you speak,then....'

   The Queen of Spades
   by Alexander Sergeyevich Pushkin
   Translalated by Natalie Duddington
   Progress Publishers
   E-text at Russica Miscellanea - A Little Page of Russia


(E3) FullBooks.com, etc.
  "(....) Reveal to me your secret. Of what use is it to you? May be it is connected with some terrible sin, with the loss of eternal salvation, with some bargain with the devil. Reflect, you are old, you have not long to live -- I am ready to take your sins upon my soul. Only reveal to me your secret. Remember that the happiness of a man is in your hands, that not only I, but my children and my grandchildren, will bless your memory and reverence you as a saint."
  The old Countess answered not a word.
  Hermann rose to his feet.
  "You old hag!" he exclaimed, grinding his teeth, "then I will make you answer!"

   The Queen of Spades
   by Alexander Sergeievitch Pushkin
   E-text at:
   * FullBooks.com
   * web-books.com
   * words.com.pl
   * Schulers Books
   * FeedBooks.com (PDF)


■ロシア語原文 The original text in Russian

  — откройте мне вашу тайну! — что вам в ней?.. Может быть, она сопряжена с ужасным грехом, с пагубою вечного блаженства, с дьявольским договором... Подумайте: вы стары; жить вам уж недолго, — я готов взять грех ваш на свою душу. Откройте мне только вашу тайну. Подумайте, что счастие человека находится в ваших руках; что не только я, но дети мои, внуки и правнуки благословят вашу память и будут ее чтить, как святыню...
  Старуха не отвечала ни слова.
  Германн встал.
  — Старая ведьма! — сказал он, стиснув зубы, — так я ж заставлю тебя отвечать...

   А.С. Пушкин - Пиковая дама
   E-text at Russian Virtual Library


■ほぼ網羅的な邦訳リスト
 A more or less complete list of translations into Japanese
 
プーシキン「スペードの女王」(1) をご参照ください。
See The Queen of Spades by Alexander Pushkin (1)


■外部リンク External links

   * Alexander Pushkin - Wikipedia
   * The Queen of Spades (story) - Wikipedia
   * アレクサンドル・プーシキン - Wikipedia
   * スペードの女王 - Wikipedia


■更新履歴 Change log

2007/12/01 藤井一行=訳 1967/09, 1970/11 を追加しました。
2007/11/22 山村魏=訳 1921/04 を追加しました。
2007/11/18 西本昭治=訳 1963/01 を追加しました。
2007/11/14 小宮破霄=訳 1999/12、1906/11 を追加しました。


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■洋書 Books in non-Japanese languages
(1) Queen of Spades

(2) Pushkin

■和書 Books in Japanese
(1) スペードの女王

(2) プーシキン

■DVD

  

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Sunday, 11 November 2007

А. С. Пушкин. Пиковая дама (2) The Queen of Spades by Alexander Pushkin (2) プーシキン 「スペードのクイーン」「スペードの女王」 (2)

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           ↑ Click to enlarge ↑

Left Pikovaya dama (1960)  Image source: The Queen of Spades (1960 film) - Wikipedia
Centreスペードの女王・ベールキン物語』 岩波文庫 改版 (2005)
Right アンリ・トロワイヤ 『プーシキン伝』 水声社 (2002)


■中国語訳(簡体字) Translation into simplified Chinese

  但格尔曼并未善罢甘休。丽莎维塔·伊凡诺夫娜每天收到他的信,传递信件有时采用这种方式,有时又改换另外的法门。这些信已经不是从德国言情小说里翻译照抄的了。格尔曼热情奔放地写,行文用的是他自己独特的语言风格。信中表达了他百折不回的意志,天马行空式的狂乱的幻想。丽莎维塔已经不再把它们退回去了。她沉醉于其中,动手回信——而她的信一封封越来越长,越来越动情了。终于,她从窗口扔下去一封信,其内容如下:

   普希金 《黑桃皇后》
   E-text at 新时代书城 (mypcera.com)


■日本語訳 Translations into Japanese
 
(J1) 渡辺 1986
 しかし士官はあきらめなかった。毎日のように、菓子店やぼうしの店の使いが手紙をとどけてきた。その内容も、最初の礼儀正しくやさしいものから、熱くほとばしるように情熱的になっていった。もうおさえきれない、という心のみだれが文字からも伝わってくる。
 しだいにリーザも手紙によわされて、おくりかえすどころか、やがてへんじをかくようになった。そのへんじも、日ごとにやさしく長くなっていき、そしてついに彼の「ほんのつかのまでもかまいません、ことばをかわしてほしい」というねがいにこたえたのだった。
[原文にあるルビは省略しました - tomoki y.]

   プーシキン=作 渡辺節子=文(抄訳/再話) 「スペードの女王」
   プーシキン〔ほか〕=作 『悪魔のトランプ占い
   怪奇・推理シリーズ ポプラ社文庫 1986/07 所収


(J2) 木村 1980
 だが、ゲルマンは少しもひるまなかった。リザヴェータ・イワノーヴナは毎日のように彼から手紙を受けとった。それは手をかえ品をかえて届けられた。それはもはやドイツの小説からの翻訳ではなかった。ゲルマンは燃ゆる思いにかられてそれを書き、その言葉も彼自身のものになっていた。その文面には彼の心の乱れと抑えがたい欲求とがうかがわれた。リザヴェータ・イワノーヴナも、もはやそれを送り返そうとは考えなかった。いや、今ではその手紙に酔わされていた。ついには返事を書くまでになり、この手紙もしだいに長い情のこもったものになっていった。で、ある日、とうとう彼女はつぎのような手紙を窓から投げた。

   プーシキン=作 木村浩=訳 「スペードの女王」
   『世界文学全集23 プーシキン/レールモントフ
   綜合社=編集 集英社=発行 1980/12 所収


(J3) 高橋 1978
 しかし、ゲルマンはあきらめなかった。毎日毎日手をかえ品をかえ、リザヴェータ・イヴァーノヴナに手紙を届けた。それはもうドイツ小説のまる写しではなかった。ゲルマンは情熱のとりことなって、心からあふれる思いを言葉にしてつづった。そこにはおそれを知らぬ彼の願いと、奔放(ほんぽう)な空想の混乱が現われていた。リザヴェータ・イヴァーノヴナは、もうそれを送り返そうとは思わなくなった。彼女はその手紙に酔いしれていた。そして、やがて返事を出すようになった。——返事は回を重ねるごとに長くなってゆき、情のこもったものとなっていった。ついに、彼女はつぎのようにしたためた手紙を、小窓から彼になげ与えた。

   プーシキン=作 高橋包子=訳 「スペードの女王」
   五木寛之〔ほか〕=編
   『世界文学全集36 プーシキン/レールモントフ/ツルゲーネフ』(全50巻)
   学習研究社 1978/02 所収


(J4) 小沼 1969
 しかしゲルマンはすこしもひるまなかった。リザヴィェータ・イワノーヴナはあの手この手で届けられる手紙を毎日のように受け取るのだった。だがそれはもはやドイツ小説からの翻訳ではなかった。ゲルマンは情熱のほとばしるままにそれを書き、ことばも彼自身のものになっていた。そこには、彼の欲求の不屈さと、押えがたい心の乱れが現われていた。リザヴィェータ・イワノーヴナはもはやそれを送り返そうなどとは考えなかった。彼女はそれに酔わされていた。やがて返事を書くようになりその返事も時とともに長い、やさしさにみちたものになっていった。で、結局ある日のこと、彼女は次のような手紙を窓から投げることになった。
 
   プーシキン=著 小沼文彦(こぬま・ふみひこ)=訳
   『スペードの女王 他二編』 旺文社文庫 1969/05


(J5) 藤井 1967, 1970
 それでもゲルマンはあきらめなかった。彼は連日リーザのもとへあの手この手で手紙をとどけた。手紙はもはやドイツ語からの翻訳ではなかった。ゲルマンは情熱に霊感を得て書き、自分自身のことばで語っていた。そこには強引な願望と、とりとめのない気ままな空想とがあらわれていた。リーザはもはや手紙を送りかえそうとは思うわなかった。彼女は手紙に酔っていった。やがて彼女は返事を書きはじめた。それはしだいに優しい心をこめた長い手紙になっていった。ついに彼女は窓からつぎのような手紙を彼に投げた。

   プーシキン=著 藤井一行(ふじい・かずゆき)=訳 「スペードの女王」
   『世界文学全集20 プーシキン/ツルゲーネフ集
   筑摩書房 1967/09, 1970/11 所収


(J6) 山本+山本=訳・文 1965
 しかし、ゲルマンは、あきらめませんでした。毎日、手紙を書きました。
 そのうちに、リーザの心は、だんだんとけてきました。
『こんなに愛してくださっているのだもの。これ以上、冷たくしたら、あのかたに悪いわ。』
 とうとう、リーザは、ペンを持ちました。二度と書くまいと思っていた返事を、リーザは書いてしまったのです。
[原文は総ルビですが、ここでは省略しました - tomoki y.]

   プーシキン=原作 山本さやか=訳 山本和夫=文 「スペードの女王」
   川端康成〔ほか〕=監修
   『少年少女世界の名作文学33 ソビエト編1』 全50巻
   小学館 1965/05 所収


(J7) 西本 1963
 しかしゲルマンはあきらめなかった。彼は毎日リザヴェータ・イワーノヴナに、いろんな手をつかって手紙をとどけた。その文面ももう、ドイツの小説の文句をまる写ししたものではなかった。ゲルマンは情熱のほとばしりをそのまま文字にし、彼自身のことばで語りかけた。その手紙には、彼の揺るぎない欲求とまとまりのない奔放な夢想が、あふれていた。リザヴェータ・イワーノヴナも、もらった手紙をもう返そうとは思わなかった。彼女は手紙にすっかり酔ってしまった。そして返事を書きはじめた。その文面も次第にながくなっていった。とうとう彼女は、つぎのような手紙を小窓から彼に投げた。

   プーシキン=作 西本昭治(にしもと・しょうじ)=訳 「スペードの女王」
   『スペードの女王・大尉の娘』 現代教養文庫
   社会思想社 1963/01 所収
   (扉・目次・奥付などでは、タイトルの「女王」に「クイーン」とルビが
   振ってあります)


(J8) 丹辺 1961
 しかしゲルマンは引きさがらなかった。リザヴェータ・イワーノヴナは、さまざまなやり方で毎日彼から手紙を受けとった。その手紙はもうドイツ語から翻訳したものではなかった。ゲルマンは激情につかれて、それらを書き、彼独特のことばで語った。手紙には、彼の希望の執拗さと、混乱した、ほしいままな想像があらわされていた。リザヴェータ・イワーノヴナは、今では、返送しようという気持はなくなっていた。それらの手紙に有頂天になって、返事を書くようになった——そのうえそのその手紙は、回をかさねるごとに、ますます長文の、やさしいものになっていった。とうとう彼女は、つぎのような手紙を彼にあてて、窓からなげた——

   プーシキン=著 丹辺文彦(にべ・ふみひこ)=訳
   金子幸彦(かねこ・ゆきひこ)=編
   『ロシア短篇名作集』 学生社 1961/07 所収


(J9) 中村 1950, 1953, etc.
 しかしゲルマンは引きさがらなかった。リザヴェータ・イヴァーノヴナは、あの手この手で届けられる手紙を、毎日のように受け取った。それはもはや、ドイツ小説の抜書ではなかった。ゲルマンは情熱に動かされるままにそれを書いたので、言葉も彼自身のものであった。そこには、彼の情熱の不撓(とう)さと、気ままな想像の混乱とが言い現わされていた。リザヴェータ・イヴァーノヴナは、もはやそれを送り返そうとは考えなかった——彼女はそれに酔わされて、返事を書くようになり、その返事も次第に長く優しいものになって行った。遂に、彼女は彼に、窓から次のような手紙を窓から投げた——
 
   プーシキン=著 中村白葉=訳 「スペードの女王」
   『決定版ロシア文学全集2 プーシキン 大尉の娘 ほか
   日本ブック・クラブ 1969/08 所収


(J10) 神西 1933, 1948, etc.
 しかしゲルマンは思い止(とど)まらなかった。一日も欠かさぬ手紙が、手を変え品を変えてリザヴェータに届けられた。それはもうドイツ小説の引き写しではなかった。ゲルマンは激しい情に浮かされて、迸(ほとばし)る思いをそのまま筆にした。文面には、抑えがたい心の乱れと撓(たゆ)まぬ欲望とが跡をとどめた。リザヴェータの方でも、送り返そうと考えるどころか次第に酔わされて、やがては返事を出しはじめた。その返事も時とともに、長く優しくなりまさった。で、或る日、彼女は次のような手紙を窓から投げた。

   プーシキン=作 神西清(じんざい・きよし)=訳 「スペードの女王」
   『スペードの女王・ベールキン物語』 岩波文庫 改版 2005/04


(J11) 中山 1936, 1937, etc.
 しかし、ゲルマンはこれ式のことで止めはなしかつた[ママ]。リザヹータは、手を變へ品を變へてよこす手紙を毎日のやうに受け取つた。それは最早、獨逸の小説の飜譯ではなくなつてゐた。ゲルマンは、やむにやまれぬ愛慾に動かされて書いたのであつて、その言葉も自分自身のものであつた。そこには、抑へ切れない慾望と、氣ままな取りとめもない想像が述べられてゐた。リザヹータも今はそれを送りかへさうなどとは思はなかつた。いつの間にか有頂天になつて返事を書くやうになり、その手紙も時と共に長くなり、やさしい愛情がこもるやうになつた。つひに彼女は次のやうな手紙を窓から投げた。

   プウシキン=著 中山省三郎=譯 「スペェドの女王」
   『プウシキン全集3』 改造社 1936/11(昭和11)所収


(J12) 岡本 1929, 1987, etc.
 併(しか)しヘルマンはそんなことで斷念(だんねん)するやうな男ではなかつた。毎日彼は手を替へ品を替へて、種々(いろ/\)の手紙をリザヴェッタに送つた。それからの手紙はもう獨逸語(ドイツご)の飜譯(ほんやく)ではなかつた。ヘルマンは感情の湧(わ)くがまゝに手紙を書き、彼自身の言葉で話しかけた。そこには彼の剛直な慾望(よくばう)を制(おさ)へがたき空想の亂(みだ)れとが溢(あふ)れてゐた。リザヴェッタはもうそれらの手紙を彼にかへさうとは思はなくなつたばかりか、だん/\にその手紙の文句に醉(よ)はされて、たうとう返事を書きはじめた。さうして、彼女の返事は少しづつ長く且(か)つ愛情が籠(こも)つて行つて、遂には窓から次のやうな手紙を彼になげ與(あた)へるやうにもなつた。
[原文は総ルビ。ここではその一部を省略しました - tomoki y.]

   プーシキン=著 岡本綺堂=訳 「スペードの女王」
   『世界大衆文學全集35 世界怪談名作集
   改造社 1929/08(昭和4)所収


(J13) 山村 1921
 しかしヘルマンはこれ位の事で止めるやうな男ではなかつた。彼女は毎日毎日手を變へ品を變へて届く彼からの手紙を受取つた。それらの手紙はもう獨逸語から譯したのではなかつた。ヘルマンは感情の迸るがまゝに綴り、心からの言葉で話し掛けて、希望の不變である事だの、抑へきれぬ想像の取亂れた状態だのが紙上にありあり表はされてあつた。リザヴェタはもはや手紙を彼に送り返さうとは思はなかつた。彼女は有頂天になつて、返事を書きだした。そして少しづゝその返事も長くなり、情感がこもるやうになつた。到頭彼女は次のやうな手紙を窓から彼に投げた。

   プーシュキン=著 山村魏(やまむら・たかし)訳 「スペードの女王」
   『プーシュキン小説集』 叢文閣 定價金貳圓 1921/04(大正10)所収


(J14) 小宮 1906, 1999
 ヘルマンは猶止(や)めなかつた。日毎日毎女の許に手を換へ品換へて手紙が來る。もうへルマンは夢中になつて、獨逸語で書いてある。本國の言葉を使つて居る。これや正しく棄て難き思ひと、止め難き空想とが亂れ/\て、辨(わか)ち難きしるしである。リザウエタは今となつては返さうとは思はぬ、その言に聞き、その語に答ふるに到たつた。手紙は日に増し長くやさしくなつて行く。
 果てはこんな手紙を提げ下ろすやうになつた。

   プーシキン=著 小宮破霄=訳 「三枚札」
   14a. 川戸道昭+榊原貴教=編 ナダ出版センター=制作
       『明治翻訳文学全集《新聞雑誌編》36 プーシキン/レールモントフ集
       (全50巻・別巻2)大空社 1999/12 所収
   14b. 『明星』 1906/11(明治39)収載

   初出誌は 14b.14a.14b. を複製したもの。
   引用は 14a. に拠りました。


■英訳 Translations into English

(E1) Twitchell
In no wise daunted by this rebuff, he found the opportunity to send her another note in a few days. He received no reply, but, evidently understanding the female heart, he presevered, begging for an interview. He was rewarded at last by the following:

   The Queen of Spades
   by Aleksandr Sergeevich Pushkin
   Translated by H. Twitchell
   E-text at Project Gutenberg


(E2) Duddington
But Hermann would not give in. Every day Lizaveta Ivanovna received a letter from him by one means or another. They were no longer translated from the German. Hermann wrote them inspired by passion, and in the style natural to him: they reflected the intensity of his desires and the disorder of an unbridled imagination. Lizaveta Ivanovna never thought of returning them now: she drank them in eagerly, and took to answering them -- and her letters grew longer and more tender every hour. At last she threw out of the window the following note to him:

   The Queen of Spades
   by Alexander Sergeyevich Pushkin
   Translalated by Natalie Duddington
   Progress Publishers
   E-text at Russica Miscellanea - A Little Page of Russia


(E3) FullBooks.com, etc.
But Hermann was not the man to be thus put off. Every day Lizaveta received from him a letter, sent now in this way, now in that. They were no longer translated from the German. Hermann wrote them under the inspiration of passion, and spoke in his own language, and they bore full testimony to the inflexibility of his desire, and the disordered condition of his uncontrollable imagination. Lizaveta no longer thought of sending them back to him; she became intoxicated with them, and began to reply to them, and little by little her answers became longer and more affectionate. At last she threw out of the window to him the following letter:

   The Queen of Spades
   by Alexander Sergeievitch Pushkin
   E-text at:
   * FeedBooks.com (PDF)
   * web-books.com
   * Schulers Books
   * FullBooks.com
   * words.com.pl


■ロシア語原文 The original text in Russian

Но Германн не унялся. Лизавета Ивановна каждый день получала от него письма, то тем, то другим образом. Они уже не были переведены с немецкого. Германн их писал, вдохновенный страстию, и говорил языком, ему свойственным: в них выражались и непреклонность его желаний, и беспорядок необузданного воображения. Лизавета Ивановна уже не думала их отсылать: она упивалась ими; стала на них отвечать, — и ее записки час от часу становились длиннее и нежнее. Наконец она бросила ему в окошко следующее письмо:

   А.С. Пушкин - Пиковая дама
   E-text at Russian Virtual Library


■娘の名前の日本語表記
 Variations of the girl's name translated into Japanese

リーザ………………………………渡辺 1986 山本+山本 1965 
               藤井 1967, 1970
リザアヴエタ・イワノーヴナ
(山村 1921)
リザウエタ、イワノウナ
……小宮 1906, 1999
リザヴィェータ・イワノーヴナ
小沼 1969         
リザヴェータ・イワーノヴナ
丹辺 1961 西本 1963
リザヴェータ・イワノーヴナ
木村 1980
リザヴェータ・イヴァーノヴナ
高橋 1978 藤井 1967, 1970
               中村 1950, 1953, etc. 
               神西 1933, 1948, etc.
リザヴェタ・イワノーヴナ
……山村 1921
リザヴェッタ
………………岡本 1929
リザヴエタ・イワノーヴナ
……(山村 1921)
リザヴエタ・イヴノーヴナ
……(山村 1921)
リザヹータ・イワーノヴナ
……中山 1936, 1937, etc.

山村氏 (1921) は、表記を統一しようという意識を、ほとんど、もしくはまったく、お持ちでなかったようです。おかげで、おなじ見開きに3つの異なる表記を見かけることさえあります。


■ほぼ網羅的な邦訳リスト
 A more or less complete list of translations into Japanese
 
プーシキン「スペードの女王」(1) をご参照ください。
See The Queen of Spades by Alexander Pushkin (1)


■映画/テレビ化作品 Filmography

『スペードの女王』は、これまでに少なくとも10回以上——映画の発明以来、ほぼ10年に1本の割合で——映画化もしくはテレビ化されています。ただし、小説から直に映像化したのではなくて、チャイコフスキーによるオペラ版を映像化したものも多く含まれます。そのうちの1本が、冒頭に写真を掲げた1960年のソ連映画。

原作が短篇であるせいか、映像作品には大作と呼べるものは少なく、近年はテレビ化のほうが多いようです。詳しくは The Internet Movie Database (IMDb) の Alexander Pushkin のページ をご覧ください。

According to The Internet Movie Database (IMDb), The Queen of Spades has been made into a film or television drama on at least ten occasions, roughly one in each decade since the invention of the motion picture medium:

 7. The Queen of Spades (1999) (TV) (short story "Pikovaya dama")
14. Pique Dame (1992) (TV) (short story "Pikovaya dama")
 ... aka The Queen of Spades
24. Pikovaya dama (1982) (TV) (short story "Pikovaya dama")
 ... aka Пиковая дама (Soviet Union: Russian title)
 ... aka Queen of Spades
42. Dame de pique, La (1965) (short story "Pikovaya dama")
 ... aka The Queen of Spades (International: English title)
47. Pikovaya dama (1960) (short story "Pikovaya dama")
 ... aka Пиковая дама (Soviet Union: Russian title)
 ... aka Queen of Spades
58. "The Chevrolet Tele-Theatre" (1 episode, 1950)
 ... aka Chevrolet Television Theatre (USA)
 ... aka The Broadway Playhouse
 - Queen of Spades (1950) TV Episode (short story "Pikovaya dama")
59. The Queen of Spades (1949) (short story "Pikovaya dama")
67. Dame de pique, La (1937) (short story "Pikovaya dama")
 ... aka Pique Dame
 ... aka Queen of Spades
77. Pikovaya dama (1916) (short story "Pikovaya dama")
 ... aka The Queen of Spades (International: English title)
83. Pikovaya dama (1910) (short story "Pikovaya dama")
 ... aka Queen of Spades (International: English title: literal title)

   The number at the top of each title denotes what is
   shown on: Alexander Pushkin - IMDb.


■外部リンク External links

   * Alexander Pushkin - Wikipedia
   * The Queen of Spades (story) - Wikipedia
   * アレクサンドル・プーシキン - Wikipedia
   * スペードの女王 - Wikipedia


■更新履歴 Change log

2007/12/01 藤井一行=訳 1967/09, 1970/11 を追加しました。
2007/11/22 山村魏=訳 1921/04 を追加しました。
2007/11/18 西本昭治=訳 1963/01 を追加しました。
2007/11/14 小宮破霄=訳 1999/12、1906/11 を追加しました。


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(1) Queen of Spades

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Saturday, 10 November 2007

Marie Antoinette by Stefan Zweig (2) シュテファン・ツヴァイク 『マリー・アントワネット』 (2)

« 1 Marie Antoinette 3 »
« 1 マリー・アントワネット 3 »

■表紙画像と肖像写真 Book covers and a portrait

a. 51tdb084mnl b. 511z5rxqvkl c. Zweig1_2
↑ クリックして拡大 Click to enlarge ↑

■日本語訳 Translations into Japanese

(J1) 中野 2007
結婚適齢期のプリンセスなら、いつの時代もハプスブルク家は欠かしたことがないし、今回もあらゆる年齢の候補者がとりそろえられていた。そこで大臣たちは、ルイ十五世とハプスブルクのプリンセスを結婚させようと考えた。ルイには孫もいたし、品行よろしくないのは承知の上でだ。だがこの「キリストの信仰もっともあつき国王」〔フランス国王に対する当時の尊称〕は、ポンパドゥール夫人のベッドからたちまち別の愛妾(あいしょう)、デュ・バリー夫人のもとへ逃げ込んでしまう。しかたがない。オーストリア皇帝ヨーゼフと、ルイ十五世の三人の娘のひとりを結びつけるのはどうだろう。だが二度も王妃を亡くしていたヨーゼフは、彼女たちのような老嬢には気乗りしなかった。というわけで、必然的に第三の選択肢しか残らない。ルイ十五世の孫で、将来のフランスを継ぐ若き王太子と、マリア・テレジアの娘のひとりを婚約させることだ。一七六六年には、十一歳のマリー・アントワネットが早くも真剣に検討されていたらしい。

   シュテファン・ツヴァイク=著 中野京子=訳 
   『マリー・アントワネット(上)』 全2冊 角川文庫 2007/01


(J2) 関 1965, 1967, etc.
ハプスブルク家は、いつの時代も結婚可能の王女にことかかない。このときにも、あらゆる年かっこうの候補者が目白押しにひかえていた。大臣たちはまず第一に、孫があって、いかがわしいというもおろかな素行の主(ぬし)ではあるが、ルイ十五世に、ハプスブルク家の皇女をだれかめあわせることを考えてみた。しかし、「キリスト教の信仰最も篤き国王」(フランス王の尊称)は、ポンパドゥール夫人のベッドにいたかと思えば、またさっともう一人の愛妾デュバリ夫人の床へ逃げこむありさまだし、二度目の王妃を失ったヨーゼフ皇帝も、ルイ十五世の娘である三人の老嬢のだれかと仲を取り持ってもらう気はいっこうに見せない——そうなれば最も自然なのは第三の結びつき、つまり、ルイ十五世の孫でゆくゆくはフランスの王冠をいただくことになる若年の王太子を、マリア・テレジアの娘と婚約させる、ということになる。一七六六年、当時十一歳のマリー・アントワネットは、すでに本式に推薦されていたものと見なしてよい。

   2a. S・ツヴァイク=著 関楠生=訳
      『マリー・アントワネット(上)』 全2冊 河出文庫 新装版 2006/11
   2b. シュテファン・ツワイク=著 関楠生=訳
      『マリー・アントワネット』 河出文庫 1989/06
   2c.河出世界文学大系61 ツワイク』 河出書房新社 1980/11
   2d. ツワイク=著 関楠生=訳
      『世界名作全集16 マリー・アントワネット』 河出書房 1967
   2e. ツワイク=著 阿部知二〔ほか〕=編 関楠生=訳
      『世界文学全集 第3集15 マリー・アントワネット
      河出書房新社 1965/05
   引用は 2b. に拠りました。


(J3) 藤本+森川 1962, 1974, etc.
結婚適齢期の皇女ということならば、ハプスブルク家ではいつの時代にも事欠くことはなかった。このときにしても、あらゆる年恰好の候補が品数豊富にひかえている。さしあたって大臣たちの思案にのぼるのは、ルイ十五世に——これは孫まである身の上ではあり、いかがわしいというもおろかな御乱行の主ではあるが——ハプスブルクの一皇女をめあわせることである。しかし、この「キリストの信仰もっともあつき国王」〔当時のフランス国王にたいする尊称〕は、ポンパドゥールの臥床にいたかと思えばたちまち別の愛妾デュバリの寝床に逃げこんでいるといったありさま。二度まで王妃を亡くしたオーストリア皇帝ヨーゼフも、ルイ十五世の娘である三人の姥桜のうちのだれかとの仲をとりもってもらうことには気乗りのしない様子——となると、ごく自然な結びつきとして残るのは第三のケース、ルイ十五世の孫で、ゆくゆくはフランスの王冠を戴く、青年王太子を、マーリア・テレージアの娘のひとりと婚約させることである。一七六六年、当時十一歳のマリー・アントワネットのことは、すでに本気で提議されていたと見ることができる。

   ツヴァイク=著 藤本淳雄+森川俊夫=訳
   3a.マリー・アントワネット1』(全2)
      ツヴァイク伝記文学コレクション3(全6巻) みすず書房 1998/09
   3b.ツヴァイク全集14』 みすず書房 1974/03
   3c.ツヴァイク全集12』 みすず書房 1962
   引用は 3a. に拠りました。


(J4) 山下 1958
ハプスブルク家では、いつの時代にも、結婚適齢期の王女にこと欠きはしない。今度も、ありとあらゆる年恰好の、おあつらえむきの候補者が、選び放題にしこたま控えている。まず第一に大臣連の思案したのは、ルイ十五世のことである。この王はもう祖父(おじい)さん格で、その上相当以上にいかがわしい品行の主ではあるが、この王にだれかハプスブルク家の王女をめあわせることは如何なものか、と。しかし、このキリスト教徒中のキリスト教徒なる王様は、ポンパドゥール侯夫人のベッドからたちまちの早業でもう一人の寵妾デュ・バリーの床に逃げこむ始末。二度目の男やもめの身であるオーストリーの皇帝ヨーゼフも、ルイ十五世の三人のオールドミスの娘たちのどれかとくっつこうなどという気はさらにみせない——とどのつまりは、一番自然な結びつきとして、第三の場合がのこる。すなわち、ルイ十五世の孫で未来のフランスの戴冠者たる年少の王太子とマリア・テレシアの娘との婚約である。一七六六年、当時十一歳のマリー・アントワネットはすでにこの時厳粛なる提案の下に立ったとみなすことができる。

   ツヴァイク=著 山下肇(やました・はじめ)=訳
   『マリー・アントワネット(上)』 全2冊 角川文庫 1958/11/30


(J5) 高橋+秋山 1953, 1980
結婚適齢期の王女ならば、ハプスブルク家においていつの時代にもこと欠いたことはない。こんどもまたあらゆる年かっこうの花嫁はよりどりみどりである。第一に大臣たちが考えたことは、お祖父(じい)さんというような年輩でもあり、かなりいかがわしい素行の持主ではあるが、ルイ十五世にだれかハプスブルク家の王女を輿入(こしい)れさせることであったが、この「キリスト教徒中のキリスト教徒たる王」は、いち早くポンパドゥール侯夫人の寝床から、もう一人の愛妾デュバリーの寝床に雲隠れしてしまう。二度目の男やもめの身であるオーストリアの皇帝ヨーゼフにも、ルイ十五世の三人の老嬢に近い娘の誰かと結婚するという気はさらにない——となれば、一番自然な結びつきとして残るは第三の手、ルイ十五世の孫で、ゆくゆくはフランス王冠の戴冠者たるべき年少の皇太子にマリア・テレサの娘をめとらせることである。一七六六年、当時十一歳のマリー・アントワネットは、すでに厳粛な申込みを受けたと見なすことができる。

   5a. シュテファン・ツワイク=作 高橋禎二+秋山英男=訳
      『マリー・アントワネット(上)』 全2冊 岩波文庫 改訳 1980/06
   5b. シュテフアン・ツワイク=作 高橋禎二+秋山英男=訳
      『マリー・アントアネット(上)』 全3冊 岩波文庫 1953
   引用は 5a. に拠りました。


■スペイン語訳 Translation into Spanish

La Casa de Habsburgo no careció jamás de princesas casaderas; también esta vez tenía dispuesta una rica colección de todas las edades. Primeramente, los ministros pensaron en casar con una princesa de Habsburgo a Luis XV, a pesar de su situación de abuelo y sus costumbres más que dudosas; pero el rey cristianísimo huía prestamente del lecho de la Pompadour al de otra favorita, la Du Barry. Tampoco el emperador José, viudo por segunda vez, mostraba ninguna inclinación a dejarse aparear con una de las tres resequidas hijas de Luis XV. Por tanto, sólo quedaba como posible enlace el tercero y más natural: desposar al delfín adolescente, nieto de Luis XV y futuro heredero de la Corona de Francia, con una hija de María Teresa. En 1766, la princesa María Antonieta, entonces de once años, podía ya ser objeto de un proyecto serio; [Omission].


■フランス語訳 Translation into French

La maison de Habsbourg n'a jamais manqué de princesses à marier ; et en ce moment, précisément, elles sont nombreuses et de tous les âges. Les ministres envisagent d'abord d'unir Louis XV, bien qu'il soit grand-père, et en dépit de ses mœurs plus que douteuses, à une princesse habsbourgeoise ; mais le roi très chrétien se réfugie vivement du lit de la Pompadour dans celui de la du Barry. D'autre part, l'empereur Joseph, deux fois veuf, ne manifeste guère le désir de se laisser marier à l'une des trois filles de Louis XV qui ne sont plus toutes jeunes. Il reste donc une troisième combinaison, la plus naturelle, l'union du dauphin adolescent, petit-fils de Louis XV et futur héritier de la couronne de France, à une fille de Marie-Thérèse. En 1766, Marie-Antoinette, âgée alors de onze ans, peut déjà faire l'objet d'un projet sérieux [Omission].


■英訳 Translation into English

There had never been a scarcity of marriageable princesses in the House of Habsburg, and at this juncture, no less, there were many possible brides of various ages. The French statesman began by trying to persuade Louis XV (grandfather though he was, and a man of more than questionable morals) to wed an Austrian princess, but His Most Christian Majesty made a quick remove from the bed of the Pompadour to that of a new favourite, the Dubarry. Nor did Emperor Joseph, recently widowed for the second time, show any disposition to couple with one of the three somewhat elderly daughters of Louis XV. The third possibility, and the most natural one, was to betroth the young Dauphin, the grandson of Louis XV, to a daughter of Maria Theresa. In 1766 matters came to a head with a serous proposal as concerned Marie Antoinette, then eleven years old.


■ドイツ語原文 The original text in German

An heiratsfähigen Prinzessinnen hat es im Hause Habsburg zu keiner Zeit gefehlt; auch diesmal steht eine reichhaltige Auswahl aller Alterslagen bereit. Zuerst erwägen die Minister, Ludwig XV. trotz seines großväterlichen Standes und seiner mehr als zweifelhaften Sitten mit einer habsburgischen Prinzessin zu vermählen, aber der Allerchristlichste König flüchtet rasch aus dem Bett der Pompadour in das einer andern Favoritin, der Dubarry. Auch Kaiser Joseph, zum zweitenmal verwitwet, zeigt keine rechte Neigung, sich mit einer der drei altbackenen Töchter Ludwigs XV. verkuppeln zu lassen – so bleibt als natürlichste Verknüpfung die dritte, den heranwachsenden Dauphin, den Enkel Ludwigs XV. und zukünftigen Träger der französischen Krone, mit einer Tochter Maria Theresias zu verloben. 1766 kann die damals elfjährige Marie Antoinette bereits als ernstlich vorgeschlagen gelten; [Omission]

  • Marie Antoinette: Bildnis eines mittleren Charakters by Stefan Zweig

■外部リンク External links


■更新履歴 Change log

  • 2016/02/02 ドイツ語原文を挿入しました。
  • 2012/08/11 スペイン語訳を追加しました。
  • 2010/05/25 山下肇=訳 1958/11/30 の訳文を挿入しました。


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(2) Stefan Zweig

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(1) マリー・アントワネット

(2) ツヴァイク

(3) ツワイク

  

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Friday, 09 November 2007

Leave It to Jeeves (The Artistic Career of Corky) by P.G. Wodehouse P・G・ウッドハウス 「コーキーの芸術家稼業」「コーキーの画業」「コーキイの芸術的生涯」

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本の表紙と著者とその妻 Book covers, the author and his wife

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■日本語訳 Translations into Japanese

(J1) 森村 2005
 ウォープル氏のキャラクター研究に関して最後にひとこと付言しておくならば、彼はきわめて機嫌の変わりやすい気分屋な人物であり、コーキーが哀れなバカで、奴が自分で判断して行うことはそれが如何(いか)なる方向性をとるとしても奴の先天的白痴性の新たな証明に過ぎないと考える全体的傾向がある。ジーヴスも僕のことをまったく同じように考えているとは僕の想像するところだ。

   P・G・ウッドハウス=著 森村たまき=訳
   「2. コーキーの芸術家稼業」
   『それゆけ、ジーヴス』 ウッドハウス・コレクション
   国書刊行会 2005/10 所収


(J2) 井上 1966
 ワープル氏の性格研究を完全にするためにつけ加えると、彼は恐ろしく気まぐれで、しかもコーキーのことを、哀れな薄のろ、何をやらせてもほっておいたら生まれつきの阿呆さを証明するだけの男と考えているのだった。おそらくジーヴズも、わたしについてはそっくり同じような気持ちを抱いているのだろう。

   ウッドハウス=著 井上一夫=訳 「コーキーの画業」 ジーヴズ物語
   『世界文学全集37 20世紀の文学
   ウッドハウス/マルセル・エイメ/ジャック・ペレー/
   イリフ、ペトロフ/ケストナー
   集英社 1966/12 所収


(J3) 大木 1960
 ミスタ・ワープルが、ひとの性格を、裏の裏まで見抜くには、あまりにもむら気な男だったからである。そんなわけで彼は、コーキーの奴はかわいそうに頭が足りない、なにをやっても生れつきの馬鹿さかげんを証明するだけだ、と考えがちだった。おそらく、ジーヴズも私についてやはりおなじ気持を抱いていたのではないかと思う。

   P・G・ウッドハウス=著 大木澄夫=訳 真鍋博=画
   従僕ジーヴズ・シリーズ第一話 「コーキイの芸術的生涯」
   『宝石』 1960年7月号(昭和35)収載


 Audio 
英語原文のオーディオブック 朗読: マーク・ネルソン
Audiobook in English read by Read by Mark Nelson

下に引用する箇所は 8:45 から始まります。 Chapter 1: Leave it to Jeeves. Classic Literature VideoBook with synchronized text, interactive transcript, and closed captions in multiple languages. Audio courtesy of Librivox. The excerpt below starts at 8:45.


■英語原文 The original text in English

To complete the character-study of Mr. Worple, he was a man of extremely uncertain temper, and his general tendency was to think that Corky was a poor chump and that whatever step he took in any direction on his own account, was just another proof of his innate idiocy. I should imagine Jeeves feels very much the same about me.


■外部リンク External links


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2011-11-26 英語原文の朗読の YouTube 動画を追加しました。


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Marie Antoinette by Stefan Zweig (1) シュテファン・ツヴァイク 『マリー・アントワネット』 (1)

« Marie Antoinette 2 3 »
« マリー・アントワネット 2 3 »

■表紙画像 Cover photos

a. 51ennx30zl b. 4105ybtzk7l c. 41tqanh40zl
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■日本語訳 Translations into Japanese

(J1) 中野 2007
マリー・アントワネットは王党派の崇める気高い聖女でもないし、革命派が罵(ののし)る娼婦(しょうふ)でもない。平凡な性格の、ごくありふれた人間であり、特に賢いわけでも、ひどく愚かなわけでもなく、火でもなければ氷でもない。[略]一見すると、とうてい悲劇の対象とはなりえないような女性であった。だが歴史という、この偉大な造物主は、心ゆさぶるドラマを舞台にのせるとき、必ずしも英雄的人物を主役に選びはしない。悲劇的緊張というものは、並外れた人物からのみ生じるとは限らず、人間とその運命の均衡がやぶれたときにも生じる。


(J2) 関 1965, 1967, etc.
マリー・アントワネットは王党派のたたえる偉大な聖女でもなければ、革命派のけなす娼婦、「淫売婦(グリュ)」でもなく、平凡な性格、もともとごくありきたりの女性であった。とくに賢くもとくに愚かでもなく、火でも氷でもなく[略]一見したところ悲劇の対象になどなりそうにも思えない。しかし歴史という偉大なデミウルゴス(世界形成者)は、心ゆさぶるドラマの効果を高めるのに、主役として英雄的な性格を必要とするようなことは全然ない。悲劇的な緊張というものは、登場人物が人並はずれているところから生ずるばかりではなく、常に人間とその運命との不釣合から生れるのである。


(J3) 藤本+森川 1962, 1974, etc.
マリー・アントワネットは王党派のたたえるような偉大な聖女でもなければ、革命が罵るような淫売でもなく、平凡な性格の持主であり、本来はあたりまえの女であって、とりたててかしこくもなければ、とりたてておろかでもなく、火でもなければ氷でもなく[略]見かけからいえば悲劇の対象にはなりそうもない女であった。しかし歴史という、この偉大な創造者は、胸をゆさぶるドラマを舞台にのせるにあたって、その主役にかならずしも英雄的な性格を必要とはしない。悲劇的な緊張というものは、ある人物がなみはずれているというところから生ずるとはかぎらないので、いついかなるばあいも、人間がおのれの運命と不釣合になることから生ずるのである。


(J4) 山下 1958
マリー・アントワネットは、王党派の祭りあげた偉大な聖女でもなければ、革命が呼んだごとき莫連女「賤業婦(グリュウ)」でもなくて、根がありきたりのごく平凡な性格の女であったにすぎない。特にりこうでもなければ、特に馬鹿というでもなく、火でもなければ氷でもなく[略]うち見たところ悲劇の対象になどなりそうもない、昨日や今日や明日の月並みな女であった。しかし、歴史という、この偉大なる創造者は、人の心をつきうごかす劇的世界をたかめるために、特にその主人公として英雄的な性格を必要としない。悲劇的な緊張。それはずばぬけた人物から生れるとはかぎらない。常に一人の人間がその運命とアンバランスになることから生れるのである。


(J5) 高橋+秋山 1953, 1980
マリー・アントワネットは、王党派の祭りあげた偉大な聖女でもなければ、革命のとなえた娼婦、「賤業婦」でもなかった。彼女は可もなく不可もない性格の持主であり、ただの一女性であって、特別賢いわけでもなく特別馬鹿だということもなく、火でもなければ氷でもなく[略]一見ほとんど悲劇の対象にもならぬていの凡婦であった。しかし歴史というこの偉大な造物主は、感動的な芝居を打つのに、べつに主役として英雄的性格を必要としない。悲劇的緊張は、ずばぬけた人物から生ずるばかりでなく、またいつでも人間がその運命と不釣合であることによって生ずる。


■スペイン語訳 Translation into Spanish

María Antonieta no era ni la gran santa del monarquismo, ni la perdida, la grue, de la Revolución. sino un carácter de tipo medio: una mujer en realidad vulgar; ni demasiado inteligente ni demasiado necia; ni fuego ni hielo; [Omission]  a primera vista, apenas personaje de tragedia. Pero la Historia, ese gran demiurgo, en modo alguno necesita un carácter heroico como protagonista para edificar un drama emocionante. La tensión trágica no se produce sólo por la desmesurada magnitud de una figura, sino que se da también, en todo tiempo, por la desarmonía entre una criatura humana y su destino.


■フランス語訳 Translation into French

Marie-Antoinette n’était ni la grande sainte du royalisme ni la grande « grue » de la Révolution, mais un être moyen, une femme en somme ordinaire, pas trop intelligente, pas trop niaise, un être ni de feu ni de glace, [Omission]  assez peu semblable à une héroïne de tragédie. Mais l’Histoire, ce démiurge, n’a nullement besoin d’un personnage central héroïque pour échafauder un drame émouvant. Le tragique ne résulte pas seulement des traits démesurés d’un être, mais encore, à tout moment, de la disproportion qui existe entre un homme et son destin.


■英訳 Translation into English

Marie Antoinette was neither the great saint of royalism nor yet the great whore of the Revolution, but a mediocre, an average woman; not exceptionally able nor yet exceptionally foolish; neither fire nor ice; [Omission] unsuited to become the heroine of a tragedy. But history, the demiurge, can construct a profoundly moving drama even though there is nothing heroic about its leading personalities. Tragical tension is not solely conditioned by the mighty lineaments of central figures, but also by a disproportion between man and his destiny.


■ドイツ語原文 The original text in German

Marie Antoinette war weder die große Heilige des Royalismus noch die Dirne, die 'grue' der Revolution, sondern ein mittlerer Charakter, eine eigentlich gewöhnliche Frau, nicht sonderlich klug, nicht sonderlich töricht, nicht Feuer und nicht Eis, [Omission] und scheinbar kaum Gegenstand einer Tragödie. Aber die Geschichte, dieser große Demiurg, bedarf gar nicht eines heroischen Charakters als Hauptperson, um ein erschütterndes Drama emporzusteigern. Tragische Spannung, sie ergibt sich nicht nur aus dem Übermaßeiner Gestalt, sondern jederzeit aus dem Mißverhältnis eines Menschen.


■外部リンク External links


■更新履歴 Change log

  • 2016/02/02 フランス語訳を追加しました。
  • 2012/08/11 スペイン語訳を追加しました。
  • 2011/02/16 ドイツ語原文のテキストを挿入しました。
  • 2010/05/25 山下肇=訳 1958/11/30 の訳文を挿入しました。

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Saturday, 03 November 2007

А. С. Пушкин. Пиковая дама (1) The Queen of Spades by Alexander Pushkin (1) プーシキン 「スペードのクイーン」「スペードの女王」 (1)

 Images 
表紙画像と肖像画 Book covers and a portrait

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■中国語訳(簡体字) Translation into simplified Chinese

从此没有间断过一天,到了一定的时刻,那个年轻军官便准时来到窗下。他和她之间似乎达成了一种无形的默契。她坐在自己位子上做女红,感到他要来了,抬起头便看到了他。看他的时候一天天越来越长。年轻人对她这一点似乎很感激。每一回当他们的目光相遇,她青春锐利的眼睛一瞥就看出他那苍白的面颊一下子羞得通红。过了一个礼拜,她向他微微一笑……


 Audio 
日本語版ラジオドラマ Radio drama in Japanese

Uploaded to YouTube by きくドラ on 22 Aug 2014


■日本語訳 Translations into Japanese

(J1) 望月 2015
 このとき以来一日も欠かさず、同じ青年が決まった時間に彼女たちが住む家の窓の下に姿を現すようになった。言わず語らずのうちに、二人の間にはある種の関係ができあがっていた。自分の場所に座って仕事をしているうちに、彼の接近を感じ取って面(おもて)を上げた彼女の、相手を見つめる時間が日増しに長くなっていく。青年もどうやら彼女のそうした振る舞いをうれしく思っているらしく、二人のまなざしが出合うたびに青年の青ざめた頬 にさっと赤味が射すのを、彼女は若い娘らしい目ざとさで見て取っていた。一週間後、彼女は彼にほほえみかけた……。


(J2) 渡辺 1986
 その日からというもの、若い士官のすがたはきまった時間にかならずあらわれた。リーザはうつむいていても、彼の近づいてくるのが気配でわかるようになった。
 士官がいつもの場所にたつと、リーザは顔をあげて彼をみる。二人がみつめあう時間は一日ごとに長くなっていき、彼女のひとみが彼にむけられるたびに、士官の青白い顔がぱっと赤らむのをリーザははっきりとみた。そして七日め、リーザはついに彼にほほえみかけた……。

  • プーシキン=作 渡辺節子=文(抄訳/再話) 「スペードの女王」 プーシキン〔ほか〕=作 『悪魔のトランプ占い』 怪奇・推理シリーズ ポプラ社文庫 1986/07
  • 原文にあるルビは省略しました。

(J3) 木村 1980
 その日から、この青年の姿が決まった時刻に、屋敷の窓の下にあらわれぬ日は一日もなかった。ふたりのあいだには暗黙のうちにひとつの関係が成立した。彼女はいつもの場所で仕事をしながらも、彼の近づいてくる気配をひとりでに悟って——ふと顔をあげて、彼のほうを眺めるのだったが、その眺める時間も日ましに長くなっていった。青年のほうもそうした態度にたいして彼女に感謝しているように思われた。ふたりの視線が合わさるたびに、青年の蒼白(あおじろ)い頬がさっと赤らむのを、彼女は若い女性特有の敏感さで見てとった。一週間後には、彼女も彼に微笑を返した……


(J4) 高橋 1978
 その日から、若い将校がきまった時刻にこの窓の下に現われぬ日はなくなった。彼と彼女のあいだには無言の関係ができあがった。彼女はいつもの場所で刺繍をしながら、彼が近づいてくるのが、勘でわかるようになった。そして、顔をあげて彼を見つめ、面映(おもはゆ)く彼にまなざしをなげかける時間も日ましに長くなった。青年はこのことを感謝しているふうに見えた。ふたりのまなざしが合うたびに、きまって彼の青白い頬(ほお)にさっと赤みのさすのを、若い女の敏感な瞳は見のがさなかった。一週間目には、彼女は彼にほほえみかけた……。


(J5) 小沼 1969
 そのとき以来、その青年の姿が、きまった時刻に、この家の窓の下に現われない日は一日もなかった。彼と彼女とのあいだにあからさまには約束されたことのない交渉が成立した。いつもの場所にすわって仕事をしながらも、彼女は彼の近づいて来る気配を感じ——そっと顔を上げて、彼のほうを眺めるのだが、その眺める時間も日ごとに長くなって行くばかりだった。青年もそれに対して彼女に感謝しているように思われた。二人の視線が合わさるたびに、彼の青白い頬(ほほ)がさっと紅(くれない)におおわれるのを、若い女性の目ざとさで彼女はちゃんと見てとったのである。一週間後には、彼女は彼にほほえみかけるようになった……。


(J6) 藤井 1967, 1970
 それ以来、その若者がきまった時間に屋敷の窓の下にあらわれない日は一日もなかった。若者と彼女とのあいだに暗黙の関係が成立した。いつもの場所で仕事をしていると彼女は若者が近づいてくるのを感じて顔をあげ、相手を見つめた。相手を見つめる時間は日ましに長くなっていった。若者はそのことを彼女に感謝しているように見えた。というのは、ふたりの視線があうたびに相手のあおざめた頬があかくなるのを彼女はおとめの目ざとさで見てとったからだ。一週間後、彼女は若者に向かってほほえみかけた……


(J7) 山本+山本=訳・文 1965
 その日からあと、士官の現われない日はありませんでした。
 リーザは、ししゅうをしていても、あの士官がこちらへ近づいてくるけはいを、しぜんとさとれるようになりました。
『もういらっしゃるじぶんだわ』
 ふと、窓の外へ目をやります。そこには、きっと、士官の姿がありました。
 目と目が合っても、リーザは、はじめのころのように、すぐはずさなくなりました。 見つめ合っている時間が、だんだん長くなりました。気のせいか、目が合ったとき、士官のあおじろい顔に、さっと赤みがさすようでした。
 一週間たちました。
 リーザは、士官に向かって、ほほえみかけるようになっていました。

  • プーシキン=原作 山本さやか=訳 山本和夫=文「スペードの女王」 川端康成〔ほか〕=監修 『少年少女世界の名作文学33 ソビエト編1』全50巻 小学館 1965/05
  • 原文は総ルビですが、ここでは省略しました。

(J8) 西本 1963
 それからというもの、若い士官は毎日一定の時刻に、その家の窓の下にあらわれるようになった。士官とリザヴェータのあいだには、暗黙の間柄が成立した。リザヴェータはいつものところにすわって仕事をしながら、ふと、彼の近づいてくるのを感じる。彼女は顔をあげて、彼を見る。その、彼を見る時間が、日ごとにながくなっていった。青年の方も、彼女がそのように見てくれるのを、感謝しているようだった。視線があうと、青年のあおじろいほほがぱっとあからむのを、彼女は若い娘のめざとさで見てとった。一週間目には、彼女はにこっと彼に笑いかけた……。

  • プーシキン=作 西本昭治(にしもと・しょうじ)=訳 「スペードの女王」 『スペードの女王・大尉の娘』 現代教養文庫 社会思想社 1963/01
  • 扉・目次・奥付などでは、タイトルの「女王」に「クイーン」とルビが振ってあります。

(J9) 丹辺 1961
 その時以来、この若い士官が、きまった時刻に、その家の窓の下にあらわれない日は一日もなかった。彼と彼女のあいだには暗黙の関係ができあがった。いつもの位置で仕事をしていると、彼女は例の男が近づいてくるのを感じた——顔をあげては、一日一日ますます長い時間をかけて彼を見つめるようになった。青年はこのことで彼女に感謝しているようにみえた。というのは、お互いの視線がぶっつかったときにはいつでも、彼の青白いほおにパッと赤味がさす様子を、娘の敏感な眼でとらえたからである。一週間たつと彼にむかってほほえみかけた。

  • プーシキン=著 丹辺文彦(にべ・ふみひこ)=訳 金子幸彦(かねこ・ゆきひこ)=編 『ロシア短篇名作集』 学生社 1961/07

(J10) 中村 1950, 1953, etc.
 その時以来、この青年の姿がきまった時刻にこの家の窓下へ現われぬ日はなかった。彼と彼女との間には、それとは言わぬ交渉が成り立った。いつもの場所に坐って仕事をしながら、彼女は彼の接近を感じ——面を上げては彼の方を見るのだったが、その時間が日ましに長くなるのだった。青年はそれに対して、彼女に感謝の心を抱くかに思われた——彼女は、若い女の眼敏さで、二人の瞳が会うたびに、蒼白い彼の頬にさっと紅(くれな)いのさすのを見逃さなかった。一週間後には、彼女は彼に微笑みかけるようにさえなった……


(J11) 神西 1933, 1948, etc.
 その日からこの方、若い士官の姿が定まった時刻に、窓の下にあらわれぬ日は無かった。二人の間には、言わず語らずの間柄が成り立った。彼女は何時(いつ)もの場所に針仕事をしながら、彼の近づいて来る気配をおのずから悟るようになった。すると彼女は面をあげて、じっと彼を見つめる。見つめる時間も、日ましに長くなりまさった。青年はこの無邪気なもてなしに感謝の心を抱くかに見えた。二人の眸(ひとみ)が合わさるごとに、男の蒼白(あおじろ)い頬をさっと紅の射(さ)すのを、彼女は若い女に特有の眼ざとさで見て取った。七日を経て、彼女は彼に微笑(ほほえ)みかけた。


(J12) 中山 1936, 1937, etc.
 この時からといふもの、青年の姿が、この家の窓下に、いつも一定の時刻にあらはれぬ日とてはなかつた。二人の間には、そこはかとない交渉が出來て來た。いつもの所で仕事をしてゐても、近づいて來る氣配が感ぜられて、頭をあげて、日ましに一そうよく、しみじみと男を見つめるやうになつた。どうやら青年の方では、見られることを有難がつてゐるらしかつた。二人の眸が遭ふ度ごとに、男の青白い頬がさつと赧らむのを、彼女は若い者につきものの鋭い眼ざしをもつて見てとつた。一週間ほどすると、彼女は男に微笑みかけるやうになつた。

  • プウシキン=著 中山省三郎=譯 「スペェドの女王」 『プウシキン全集3』 改造社 1936/11(昭和11)

(J13) 岡本 1929, 1948, etc.
 この時以來、彼の青年士官が一定の時間に、窓の下にあらはれないと言ふ日は一日もなかつた。彼と彼女のあひだには無言のうちに或る親(したし)みを感じて來た。いつもの場所で刺繍(ししう)をしながら、彼女は彼の近づいて來るのをおのづからに感じるやうになつた。さうして顏(かほ)を上げながら、彼女は一日ごとに彼を長く見つめるやうになつた。青年士官は彼女に歡迎(くわんげい)されるやうになつたのである。彼女は青春の鋭い眼で、自分達の眼と眼が合ふ度に、男の青白い頬が俄(にはか)に紅(あか)らむのを見て取つた。それから一週間目ぐらゐになると、彼女は男に微笑(びせう)を送るやうにもなつた。


(J14) 梅田 1925
 その時以來、その若い男がいつもの時刻に彼女等の家の窓下に姿を現はさないで過ぎる日はなかつた。彼と彼女との間にはそれと云はず語らずの相識(ちかづき)が成り立つた。彼女は自分の仕事の場所に腰かけてゐて、彼がやつて來るのを感じた——そしては頭をあげて、一日ましに長く/\彼を眺めた。その若い男は、そのために彼女に對して感謝してゐるかのやうであつた、といふのは、彼女は靑春のい眼で、二人の視線がかちあふその度にいつも彼の蒼白い頬が、忽ちサツと紅を帶びるのを見たからである。一週間ののちには、彼女は彼に頬笑みかけた……

  • プーシュキン=作 梅田寛(うめだ・かん)=譯「スペードの女王」 『世界短篇小大系 露西亞篇(上)』 非賣品 近代社 1925/12/20(大正14)
  • 目次の表記は「スペイドの女王」。章扉と本文の表記は「スペードの女王」。過・視・週・梅の旧字は新字で置き換えました。原文は総ルビですが、ここではその一部を省略しました。

(J15) 山村 1921
 この時以來その若い士官がいつもの時刻に彼女の窓下に現はれない日とては一日もなく、二人の間には一種の無言の馴染が成り立つた。仕事をしてゐながら彼女は、若い士官の近附いて來るのが解るのが常であつた。で彼女は頭を上げて毎日々々長い長い間士官を眺めるのであつた。若い男はそれを非常に感謝してゐるやうに見えた。彼女は若い者の鋭い眼で、二人の視線が出會ふ度毎に男の蒼白い頬がどのやうにすぐ眞赤に染まるかを見て取つた。一週間ばかり經つてから彼女は男に微笑んでみせるやうになつた……。

  • プーシュキン=著 山村魏(やまむら・たかし)訳 「スペードの女王」 『プーシュキン小説集』 叢文閣 定價金貳圓 1921/04(大正10)

(J16) 小宮 1906, 1999
 その後は同じ刻限と覺ぼしき頃、窓の下に、この男の來ぬ日はない。言葉こそ交(かは)さね、二人の關係は日に増し近くなつて來る。例の處に坐つて仕事をして居ると、男の來るのが自然と知れる。——頭を揚げて日毎日毎に見おろす。男の鋭い眼を見おろす。眼と眼とが相合ふとき、男の蒼白い頬にむら/\と湧く濃き紅(くれなゐ)を見おろす。一週過ぎて、二人は相見て互に微笑むやうになつた。


■スペイン語訳 Translation into Spanish

Desde entonces no había día en que el joven, a la misma hora, no apareciera bajo las ventanas de la casa. Entre ambos se estableció una relación inadvertida. Sentada junto a su labor, ella notaba su llegada, levantaba la cabeza y lo miraba cada vez más largo rato. El joven parecía estarle agradecido por ello: la muchacha, con la aguda mirada de la juventud, veía cómo un repentino rubor cubría las pálidas mejillas del oficial cada vez que sus miradas se encontraban. Al cabo de una semana ella le sonrió...

  • La Dama de Espadas by Alexandr Puchkin
  • E-text at Ciudad Seva

■フランス語訳 Translation into French

Depuis lors, il ne se passa pas de jour que le jeune ingénieur ne vînt rôder sous sa fenêtre. Bientôt, entre elle et lui s’établit une connaissance muette. Assise à son métier, elle avait le sentiment de sa présence ; elle relevait la tête, et chaque jour le regardait plus longtemps. Le jeune homme semblait plein de reconnaissance pour cette innocente faveur : elle voyait avec ce regard profond et rapide de la jeunesse qu’une vive rougeur couvrait les joues pâles de l’officier, chaque fois que leurs yeux se rencontraient. Au bout d’une semaine, elle se prit à lui sourire.

  • La Dame de pique by Alexandre Pouchkine. Translated by Prosper Mérimée
  • E-text at Wikisource

■英訳 Translations into English

(E1) Twitchell
This appearance of the officer had become a daily occurrence. The man was totally unknown to her, and as she was not accustomed to coquetting with the soldiers she saw on the street, she hardly knew how to explain his presence. His persistence finally roused an interest entirely strange to her. One day, she even ventured to smile upon her admirer, for such he seemed to be.

  • The Queen of Spades by Aleksandr Sergeevich Pushkin. Translated by H. Twitchell
  • E-text at Project Gutenberg

(E2) Duddington
Since then not a day had passed without the young man appearing at a certain hour before the windows of their house. A contact had arisen between them of itself, as it were. Sitting in her usual place at work she felt his approach --and, lifting her head, looked at him longer and longer every day. The young man seemed to be grateful to her for it: with the keen eyes of youth she saw a flush overspread his pale cheeks every time their eyes met. Before the end of the week she had smiled at him.


(E3) FullBooks.com, etc.
From that time forward not a day passed without the young officer making his appearance under the window at the customary hour, and between him and her there was established a sort of mute acquaintance. Sitting in her place at work, she used to feel his approach, and raising her head, she would look at him longer and longer each day. The young man seemed to be very grateful to her; she saw with the sharp eye of youth, how a sudden flush covered his pale cheeks each time that their glances met. After about a week she commenced to smile at him...


■ドイツ語訳 Translations into German

Von nun an erschien der junge Mann jeden Tag zur gleichen Stunde vor ihrem Fenster. Zwischen ihm und ihr entwickelte sich ein stummes Verhältnis. Wenn sie an ihrer Arbeit saß und sein Nahen fühlte, hob sie den Kopf und blickte ihn an; von Tag zu Tag wurde dieser Blick länger. Der junge Mann war ihr dafür, wie es schien, sehr dankbar: sie sah mit dem scharfen Blick der Jugend, wie seine blassen Wangen jedesmal rot wurden, wenn sich ihre Blicke trafen. Nach weiteren acht Tagen lächelte sie ihm bereits zu...


 Video 
Pikovaya dama (1982) a TV adaptation directed by Igor Maslennikov
И́горь Фёдорович Ма́сленников - Пиковая Дама (1982)


■ロシア語原文 The original text in Russian

С того времени не проходило дня, чтоб молодой человек, в известный час, не являлся под окнами их дома. Между им и ею учредились неусловленные сношения. Сидя на своем месте за работой, она чувствовала его приближение, — подымала голову, смотрела на него с каждым днем долее и долее. Молодой человек, казалось, был за то ей благодарен: она видела острым взором молодости, как быстрый румянец покрывал его бледные щеки всякий раз, когда взоры их встречались. Через неделю она ему улыбнулась...


■Spelling variations of the author's name in European languages

A. S. Puschkin,
Aleksander S. Pushkin,
Aleksandr Pushkin,
Aleksandr Sergeevich Pushkin,
Aleksandr Sergeyevich Pushkin,
Aleksandr Sergeyevich,
Alexander Puschkin,
Alexander Pushkin,
Alexander Puszkin,
Alexander S. Pushkin,
Alexander Sergeievitch Poushkin,
Alexander Sergeyevich Pushkin,
Alexandr Pushkin,
Alexandr Sergeievitch Pushkin,
Alexandr Sergeyevitch Pushkin,
Alexandre Pushkin,
Pouchekine,
Pouchequine,
Pouchkine,
Puschkin,
Pushkin,
Puszkin.

   Cf. Biography Research Guide


■著者名の日本語表記いろいろ

A・C・プーシキン
A・S・プーシキン
A・プーシキン
アレクサンダー・プーシキン
アレクサンドル・セルゲービッチ・プーシキン
アレクサンドル・セルゲーヴィチ・プーシキン
アレクサンドル・セルゲーヴイチ・プーシキン
アレクサンドル・セルゲェヴィチ・プーシキン
アレクサンドル・セルゲエヴイチ・プーシキン
アレクサンドル・プーシキン
プーシキン
プーシュキン
プゥシキン
プウシキン
プシキン
 
   参考:東京都立図書館 www OPAC 典拠詳細表示


■ほぼ網羅的な邦訳リスト
 A more or less complete list of translations into Japanese

下のリストは、国立国会図書館 NDL-OPAC でタイトル「スペード」、著者・編者「プーシキン」を入力して得られた検索結果に、漏れのあった数タイトルを気がついた範囲で補足したもの。配列は、訳者ごとにまとめて、初版刊行年の新→旧の順。多くのタイトルの前についている数字は、検索結果をコピー&ペーストしたために生じたもので、数字が大きいほど古いことになります。★のついたタイトルは、上にその訳文の抜粋を掲載したものです。

渡辺節子=文(抄訳/再話)
★--.     悪魔のトランプ占い. -- ポプラ社, 1986.07. -- (ポプラ社文庫)

木村浩訳
★ 7.     世界文学全集. 23. -- 集英社, 1980.12

河野多恵子(神西清訳に拠る抄訳)
  3.     世界幻想名作集 / 渋沢竜彦. -- 河出書房新社, 1996.11. -- (河出文庫)
 --.     世界幻想名作集 グラフィック版 世界の文学 別巻1 / 渋沢竜彦. -- 世界文化社, 1979

高橋包子訳
  --.     スペードの女王・大尉の娘. -- グーテンベルク21 (電子ブック)
★--.     世界文学全集. 36 / 五木寛之. -- 学習研究社, 1978.2

小沼文彦訳
★12.     スペードの女王 / プーシキン[他]. -- 旺文社, 1969. -- (旺文社文庫)

藤井一行訳
★15.     世界文学全集. 第20. -- 筑摩書房, 1967

山本さやか訳 山本和夫文
★17.     少年少女世界の名作文学. 33(ソビエト編 1) / 川端康成. -- 小学館, 1965

草鹿外吉(くさか・そときち)訳
  16.     世界青春文学名作選. 第17 / 学習研究社書籍編集部. -- 学習研究社, 1964. -- (ガッケン・ブックス)

西本昭治訳
★19.     スペードの女王・大尉の娘 / プーシキン[他]. -- 社会思想社, 1963. -- (現代教養文庫)

大庭さち子訳
  21.     大尉の娘・スペードの女王 / プーシキン[他]. -- 偕成社, 1962. -- (少女世界文学全集 ; 20)

丹辺文彦訳
★24.     ロシア短篇名作集 / 金子幸彦. -- 学生社, 1961

抄訳/解説書? 著訳者未確認
  30.     スペードの女王 / ダイジェスト・シリーズ刊行会. -- ジープ社, 1950. -- (ダイジェスト・シリーズ ; 第14)

中村白葉訳
   4.     魔術師物語. -- 北宋社, 1989.9
   8.     世界文学全集. 36 / 五木寛之. -- 学習研究社, 1978.2
★--.     ロシア文学全集 決定版. 2. -- 日本ブック・クラブ 1969
  18.     ロシア・ソビエト文学全集. 第2. -- 平凡社, 1964
  20.     世界文学全集. 第49. -- 新潮社, 1963
  26.     ロシア文学全集. 第1巻. -- 修道社, 1957
  27.     プーシキン小説全集. 第2 / 中村白葉. -- 新潮社, 1954. -- (新潮文庫)
  28.     スペードの女王 / プーシキン[他]. -- 角川書店, 1953. -- (角川文庫 ; 第376)
  31.     スペードの女王 / プーシキン[他]. -- 思索社, 1950. -- (思索選書 ; 第156)

中山省三郎訳
  29.     スペードの女王・青銅の騎士 / プーシキン[他]. -- 創元社, 1953. -- (創元文庫 ; B 第79)
  --.     世界文学全集. 〔第1期〕 第22 / 河出書房. -- 河出書房, 1950
  --.     スペヱドの女王 / プゥシキン[他]. -- 春陽堂, 1949. -- (春陽堂文庫 ; 第1014)
  --.     スペエドの女王 / プウシキン[他]. -- 柏書店, 1946
  --.     スペェドの女王 / プゥシキン[他]. -- 書物展望社, 1937
★--.     プウシキン全集. 第3巻. -- 改造社, 1936

神西清訳
★ 1.     スペードの女王 / プーシキン[他]. -- 改版. -- 岩波書店, 2005.4. -- (岩波文庫)
   5.     ちくま文学の森. 10 賭けと人生 / 安野光雅. -- 筑摩書房, 1988.7
   9.     プーシキン全集. 4. -- 河出書房新社, 1972
  10.     筑摩世界文学大系. 30. -- 筑摩書房, 1972
  13.     世界文学全集. 第2集 第8巻. -- 河出書房, 1968
  14.     スペードの女王・ベールキン物語 / プーシキン[他]. -- 岩波書店, 1967. -- (岩波文庫)
  22.     世界文学大系. 第26. -- 筑摩書房, 1962
  23.     世界文学全集. 第9 / 阿部知二. -- 河出書房新社, 1962
  25.     世界文学全集. 第3期 第5. -- 河出書房新社, 1958
  32.     スペードの女王 / プーシキン[他]. -- 12版. -- 岩波書店, 1950. -- (岩波文庫)
  33.     スペードの女王 / プーシキン[他]. -- 角川書店, 1949. -- (角川文庫 ; 第12)
  35.     プーシキン短篇集 / 神西清. -- 角川書店, 1948. -- (飛鳥新書)
  36.     スペードの女王 / プーシキン[他]. -- 岩波書店, 1947. -- (岩波文庫 ; 925)
  37.     スペードの女王 / プーシキン[他]. -- 岩波書店, 1933. -- (岩波文庫 ; 925)

岡本綺堂訳
   2.     世界怪談名作集. 上 / 岡本綺堂. -- 新装版. -- 河出書房新社, 2002.6. -- (河出文庫)
   6.     世界怪談名作集. 上 / 岡本綺堂. -- 河出書房新社, 1987.8. -- (河出文庫)
  11.     岡本綺堂読物選集. 第8. -- 青蛙房, 1970
  34.     世界怪談名作集 / 岡本綺堂. -- 新星工房, 1948
★--.     世界大衆文学全集. 第35巻. -- 岡本綺堂. -- 改造社, 1929

梅田寛訳
★38.     世界短篇小説大系. 露西亜篇 上 / 近代社. -- 近代社, 1925

山村魏(やまむら・たかし)訳
★39.     プーシュキン小説集 / 山村魏. -- 叢文閣, 1921

小宮破霄訳
★40.     明治翻訳文学全集《新聞雑誌編》. 36 / 川戸道昭, 榊原貴教. -- 大空社, 1999
  41.     『明星』1906/11(明治39)収載


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■更新履歴 Change log

  • 2015/03/02 日本語版ラジオドラマの YouTube 画面と望月哲男=訳 2015/02/20 を追加しました。
  • 2011/01/05 梅田寛=譯 1925/12/20、スペイン語訳、フランス語訳、およびドイツ語訳を追加しました。
  • 2010/04/12 Igor Maslennikov 監督によるテレビ化作品の YouTube 動画を追加しました。
  • 2007/12/01 藤井一行=訳 1967/09, 1970/11 を追加しました。
  • 2007/11/22 山村魏=訳 1921/04 を追加しました。
  • 2007/11/18 西本昭治=訳 1963/01 を追加しました。
  • 2007/11/14 小宮破霄=訳 1999/12、1906/11 を追加しました。
  • 2007/11/08 高橋包子=訳 1978/02 を追加しました。
  • 2007/11/04 セクションの配列と見出しを一部修正しました。

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