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Friday, 11 January 2008

Evelyn Waugh "Decline and Fall" 020

■Evelyn Waugh - BBC - on execution and nationalities


■表紙画像 Cover photos
Left Retour a Brideshead, Robert Laffont (2005) フランス語訳
Centre Wiedersehen mit Brideshead, Ullstein TB-Vlg (2002) ドイツ語訳
Right Brideshead Revisited, Penguin Modern Classics (2003)
           
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■日本語訳 Translations into Japanese

(J1) 
 ポールは気落ちして、その垂直椅子にへたりこんでしまった。
 しばらくするとドアにノックがあって、小さな男の子が入ってきた。
 「わっ!」
 少年はそう言うと、ポールをしきりと検分した。
 「やあ!」と、ポールは声をかけてみた。
 「キャプテン・グライムズを探しにきたんだ」と、少年が言った。
 「へえ!」と、ポール。
 その子は主観をまじえぬ鋭い関心をあらわにして、彼を見つめ続けた。
 「新しい先生だろ?」
 「そう。ペニーフェザーというんだ」
 とたんにそのチビはけたたましく笑った。「笑っちゃう名前じゃん」そう言うと、少年は姿を消した。
 しばらくすると、またドアが開いて、二人の少年が中をのぞき込んだ。二人はその場でしばらくクックッと笑っていたが、それからまた姿を消してしまった。
 それから三十分ほどの間に、六、七人の男の子があれこれの口実をもうけては顔を出し、ポールを首実検していった。
 やがて鐘が鳴り、すさまじいばかりの口笛とドタバタ走りまわる音がし始めた。ドアが開き、三十歳くらいのひどく小柄な人物が談話室に戻ってきた。戻ってくるときに派手な音がしたのは義足のせいだ。この人物は短く赤い口髭をたくわえていて、頭が少し薄くなっていた。
 「やあ、やあ」
 「やあ」と、ポールは答えた。
 「こらっ、こっちに入れ」と、彼は外にいる誰かに命じた。
 さきほどとは別の男の子が入ってきた。
 「どういうつもりだ? やめろと言ってるのに口笛を吹いたろうが」
 「ほかのみんなも吹いてました」
 「それとこれと何の関係があるんだ?」
 「おおありではなかろうかと思います」と、少年は答えた。
 「もおっ……罰、ラテン語の詩の写し百行。覚えとけ、今度やったら、こいつでビシバシいくぞ」先生はそうおどして、散歩用のステッキを振りまわした。
 「あまり痛くはなかろうかと思います」とやり返して、少年は部屋を出ていった。
 「まったくこの学校は規律も何もありゃせん」と言い捨てて、先生も出ていってしまった。
 「学校の先生になるのが楽しいかどうか、考えてしまうなあ」と、ポールは思った。

   イーヴリン・ウォ−=作 富山太佳夫=訳
   『大転落』岩波文庫 1991年6月
 
 
(J2)
 ポールは背のまっすぐな椅子に落ち着かなげに坐った。
 やがてドアがノックされ、小さな男の子が入って来た。
「あ!」とその子は言ってポールをまじまじと見た。
「やあ」とポールは言った。
「グライムズ先生を探していたんです」
「へえ!」とポールは言った。
 子供はつきさすような無表情な目でポールを見つづけた。
「新しい先生でしょう?」彼は言った。
「そうだ。ペニフェザーっていうんだ」
 その子は甲高く笑って、「変な名前ですね」と言って、出て行った。
 やがてまた戸が開き、もう二人少年がのぞいた。二人はしばらく突っ立ってくすくす笑い、それから出て行った。
 その後三十分ぐらいのうちに六、七人の少年がいろんな口実で現われ、ポールをみつめた。
 やがてベルが鳴って、口笛を吹いたり、ばたばた走る音が騒々しく起った。ドアが開いて、三十歳位の背の低い男が集会室に入って来た。入って来る時にひどい音を立てたが、それは片足が義足だったからである。赤い口ひげを短くたくわえ、すこし禿げていた。
「やあ」と彼は言った。
「やあ」とポールは言った。
「君、中へ入れ」彼は外にいるだれかに言った。
 別の少年が入って来た。
「よせと言ったのに口笛を吹いたのはどういうことかね?」と彼は訊いた。
「ほかのみなが吹いていたからです」と少年。
「それとこれと何の関係がある」
「大いにあると思います」
「じゃ、罰にラテン語の詩を百行写すんだ。こんどやったら、いいか、これでぶってやるぞ」と言って彼はステッキをふりまわした。
「そう痛そうでもないですね」と少年は言って出て行った。
「この学校はしつけがなっとらん」その教師は言い、そして彼も出て行った。
「楽しんで教師生活がやれるだろうか」と、ポールは思った。

   イーヴリン・ウォ−=作 柴田稔彦=訳
   『ポール・ペニフェザーの冒険』福武文庫 1991年4月
 
 
■英語原文 The original text in English

  Paul sat down disconsolately on the straight chair.
  Presently there was a knock at the door, and a small boy came in.
  'Oh!' he said, looking at Paul intently.
  'Hullo!' said Paul.
  'I was looking for Captain Grimes,' said the little boy.
  'Oh!' said Paul.
  The child continued to look at Paul with a penetrating, impersonal interest.
  'I suppose you're the new master?' he said.
  'Yes,' said Paul. 'I'm called Pennyfeather.'
  The little boy gave a shrill laugh. 'I think that's terribly funny,' he said, and went away.
  Presently the door opened again, and two more boys looked in. They stood and giggled for a time and then made off.
  In the course of the next half hour six or seven boys appeared on various pretexts and stared at Paul.
  Then a bell rang, and there was a terrific noise of whistling and scampering. The door opened, and a very short man of about thirty came into the Common Room. He had made a great deal of noise in coming because he had an artificial leg. He had a short red moustache, and was slightly bald.
  'Hullo!' he said.
  'Hullo!' said Paul.  
  'I'm Captain Grimes,' said the newcomer, and 'Come in, you,' he added to someone outside.
  Another boy came in.
  'What do you mean,' said Grimes, 'by whistling when I told you to stop?'
  'Everyone else was whistling,' said the boy.
  'What's that got to do with it?' said Grimes.
  'I should think it had a lot to do with it,' said the boy.
  'Well, just you do a hundred lines, and next time, remember, I shall beat you,' said Grimes, 'with this,' said Grimes, waving the walking-stick.
  'That wouldn't hurt much,' said the boy, and went out.
  'There's no discipline in the place,' said Grimes, and then he went out too.
  'I wonder whether I'm going to enjoy being a schoolmaster,' thought Paul.

   Decline and Fall by Evelyn Waugh
   First published by Chapman & Hall 1928
   Published in Penguin Books 1937
   Excerpt based on Penguin's Evelyn Waugh Centenary Edition 2003
 
 
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読ませて頂きました。次の記事も楽しみにしています。 [Read More]

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