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Friday, 25 January 2008

The Captain of the Polestar by Arthur Conan Doyle コナン・ドイル「ポールスター号の船長」「北極星号の船長」

 Book covers  本の表紙

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■日本語訳 Translations into Japanese

(1) 笹野 2005
「先生、俺が狂っているとは思わないだろう?」と船長は訊いた。わたしがブランデーの瓶をうしろのロッカーに戻しているときだ。「さあ、正直に言ってくれ、俺は狂っていると思うか?」
「何かを気にかけているのだと思います」とわたしは答えた。「それが船長を興奮させ、大きな害をもたらしています」
「おい、そのとおりだ!」と船長は目をブランデーのために輝かせながら叫んだ。「気にかけていることがたくさんある——たくさんな! だが、俺は緯度も経度を割り出せる、六分儀も使えるし、対数表で計算もできる。先生は法廷で俺の狂気を証明できないだろう、おい?」
 男があおむけになり、本人の正気の問題を冷静に論じるのを聞くのは、奇妙だった。

   アーサー・コナン・ドイル=著 笹野史隆(ささの・ふみたか)=訳
   『コナン・ドイル小説全集6 ポールスター号の船長(上)
   エミルオン 2005/08(限定120部印刷)所収
   この全集の刊行状況・入手方法など詳細については、訳者・版元のサイト
   「エミルオン」をご参照ください。


(2) 西崎 2000, 2004, etc.
「先生もおれが気が狂ってるって考えてるんじゃないかね、どうだい?」ブランデーの壜を食器棚の奥に戻していると船長がそう尋ねた。「正直に云ってくれ、おれは気が狂(ふ)れていると思うか?」
「船長の心のなかには何かがあるのではと思います」と僕は答えた。「それが興奮をもたらし、自分をひじょうに損なっています」
「確かにそうだ」船長は云った。ブランデーの効果で眼には熱っぽさがあった。「おれの心のなかにはどっさりある——どっさりある。だが、おれは緯度と経度を割りだすことができる。六分儀も扱えるし、対数表の見方も判る。だからおれが狂ってるってことを先生は法廷で証明できない、どうだい、できるかね?」仰向けに寝て、自分が狂っているかいないかを冷静に論ずる男の言葉を聞いているのは、じつに妙な感じだった。

   コナン・ドイル=著 西崎憲=訳 「北極星号の船長」
   2a. パックンマックン=選 『パックンマックンが選ぶ旅と冒険の話集
      中学生のためのショート・ストーリーズ2(全8巻)
      学習研究社 2007/02 所収
   2b.北極星号の船長 ドイル傑作集2』 創元推理文庫 2004/12 所収
   2c. 北原尚彦+西崎憲=編 『ドイル傑作選2 ホラー・SF篇
      翔泳社 2000/02 所収
   2a. の底本は 2b.。引用は 2b. に拠りました。


(3) 白木 1996
 しばらく、なにか考えていた船長は、
「先生、えんりょなくいってくれ。わしの頭はおかしいかね。」
「いや、あなたには、なにかかくしていることがあるのでしょう。それで、こうふんするのでしょう。」
 とたんに船長は、目をかがやかせ、
「胸には、いろいろな考えがある、うんとな。船長としての仕事は、なんでも、ちゃんとできる。それでも裁判所へ出て、わしはおかしいと、証明できますか。どうだね。」
 船長は、自分ではおかしくないと信じているらしいのだ。
[原文は総ルビですが、ここでは省略しました - tomoki y.]

   ドイル=作 白木茂=訳 「魔の海のポールスター号」
   『鏡にうかぶ影』 講談社 青い鳥文庫・Kシリーズ 1996/07 所収


(4) 延原 1958
「先生さんは、わしの気が狂っとるとは思いなさらんじゃろうな?」用済みのびんをロッカーへおさめていると、船長が声をかけてきた。「男と男の話じゃ、遠慮はない、どうじゃ、わしは気が狂っているかね?」
「船長は胸になにかたたんでいるのだと思いますよ。そのために興奮もするし、ひどく害をうけているのでしょう」
「そこじゃ!」船長はブランディの効果で両眼を輝かせながら、「胸にはうんとある、うんとな! それでも緯度は計るし、経度も計る。六分儀を扱ったり、対数表を使って計算もできる。それでも先生さんは裁判所へ出て、わしの気が狂っとると証明できますかね、どうじゃ?」ソファへ仰(あお)むけになって、ずうずうしくも自分は正気だと主張するのを聞いているのは、へんなものだった。

   コナン・ドイル=著 延原謙(のぶはら・けん)=訳 「ポールスター号船長」
   『ドイル傑作集2─海洋奇談編』 新潮文庫 1958/08 所収


(5) 石田 1933, 2006
「先生、貴方はまさか、私が氣が狂(くる)つたのだとは思ひますまいね?」
 と彼は、私が後(うしろ)の戸棚に瓶をしまつてゐる時に尋ねた。
「ね、さあ、男らしく仰有(おつしや)つて下さい、氣が狂つてゐると思ひますか?」
「何か貴方には惱みがあるんでせうね。」
 と私は答へた。
「その爲に、昂奮(かうふん)したり、非常に苦しんだりなさるんでせう。」
「確かにさうですよ、」
 ブランデイのききめに、眼を輝かして彼は叫んだ。
「ウンと惱みがあるんでさあ——ウンとね! 然し私は緯度や經度も計れば、六分儀(ぶぎ)も操り、對數さへも割り出すのです。貴方は、裁判所(さいばんじよ)で、私が氣狂(きちが)ひだと云ふことを立證出來ますかしら、どうです、出來ますかね?」
 仰向(あをむ)きに寢てゐる人が、自分が正氣かどうかと云ふことに就いて、冷靜に あげつらう(#原文は太字でなく傍点)てゐるのを聞くなんて、全く變な氣持だ。
[原文は総ルビですが、ここではその一部を省略しました - tomoki y.]

   コナン・ドイル=著 石田幸太郎=譯
    『北極星(ポール・スター)』號の船長
   5a.コナン・ドイル全集6 ジエラール旅団長の武勇伝
      本の友社 2006/03 所収
   5b. 『世界文學大全集 ドイル全集6』 改造社 1933/08(昭和8)所収
   5a.5b. の復刻版。引用は 5a. に拠りました。


(6) 岡本 1929, 1970, etc.
「君は、思ってはいないのだね、僕が気が狂っているとは……」
 私がブランディの壜(びん)を裏戸棚にしまっていると、彼がこう訊いた。
「さあ、男同士だ。きっぱりと言ってくれ。君はわしが気が狂っていると思うかね」
「船長は何か心に屈託(くったく)があるのではありませんか。それが船長を興奮させたり、また非常に苦労させたりしているのでしょう」と、わたしは答えた。
「その通りだ、君」と、ブランディの効き目で眼を輝かしながら、船長は叫んだ。「全くたくさんの屈託があるのさ。……たくさんある。それでもわしはまだ経緯度を計ることは出来る、六分儀(ろくぶんぎ)も対数表も正確に扱うことが出来る。君は法廷でわしを気違いだと証明することはとうていできまいね」
 彼が椅子に倚(よ)りかかって、さも冷静らしく自分の正気なることを論じているのを聞いていると、わたしは妙な心持ちになって来た。

   ドイル=著 岡本綺堂=訳 「北極星号の船長」
   6a. E-text at 青空文庫
      入力:門田裕志、小林繁雄 校正:大久保ゆう 2004/09/26 作成
   6b.世界怪談名作集』 フロンティア文庫53
      フロンティアニセン 2005/02 所収
   6c.世界怪談名作集(下)』 河出文庫 新装版 2002/06 所収
   6d.世界怪談名作集(下)』 河出文庫 初版 1987/09 所収
   6e.岡本綺堂読物選集8 飜訳編(下)』 青蛙房 1970 所収
   6f.世界大衆文學全集35 世界怪談名作集
      改造社 1929/08(昭和4)所収
   6a. の底本は 6c. および 6d.。引用は 6a. に拠りました。


 Audio 1 
日本語訳のオーディオブック(朗読) Audiobook of Japanese translation

 


 Audio 2 
英語原文のオーディオブック(朗読) Audiobook in the original English

下の引用箇所は 22:33 あたりから始まります。 Uploaded to YouTube by rt20bg on 16 Oct 2012. Audio courtesy of LibriVox. The excerpt below starts around 22:33.


■英語原文 The original text in English

"You don't think I am, do you, Doc?" he asked, as I was putting the bottle back into the after-locker.  "Tell me now, as man to man, do you think that I am mad?"

"I think you have something on your mind," I answered, "which is exciting you and doing you a good deal of harm."

"Right there, lad!" he cried, his eyes sparkling from the effects of the brandy.  "Plenty on my mind--plenty!  But I can work out the latitude and the longitude, and I can handle my sextant and manage my logarithms.  You couldn't prove me mad in a court of law, could you, now?"  It was curious to hear the man lying back and coolly arguing out the question of his own sanity.

   The Captain of the "Pole-Star" by Arthur Conan Doyle
   Google Book Search: The Captain of the Polestar
   E-text at:


■外部リンク External links


■更新履歴 Change log

  • 2013/04/13 英語原文オーディオブックの YouTube 画面を追加しました。
  • 2008/07/05 笹野史隆=訳 2005/08 を追加しました。
  • 2008/01/29 延原謙=訳 1958/08 を追加しました。

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