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Sunday, 23 March 2008

魯迅 「戦争をやめさせる話」「非攻」 (『故事新編』より) Opposing Aggression (from Old Tales Retold) by Lu Xun

           目次 Table of Contents

    Cover photos  表紙画像
   ■英訳 Translation into English
   ■日本語訳 Translations into Japanese
     (1) 藤井 2010
     (2) 木山 1985
     (3) 竹内 1979
     (4) 松枝+和田 1976
     (5) 高橋 1967
     (6) 増田(?) 1936
   ■中国語原文(簡体字)The original text in simplified Chinese
   ■中國語原文(繁體字)The original text in traditional Chinese
   ■ほぼ網羅的な邦訳リスト A more or less complete list of Japanese translations
   ■更新履歴 Change log


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■英訳 Translation into English


■日本語訳 Translations into Japanese

(1) 藤井 2010
 「(……)宋に何の罪があるのでしょう? 楚の国には有り余るほどの土地があり、足りないのは民衆です。足りぬものを殺し余るものを争うは、智と言えず、宋に罪なくして、これを攻めるは、仁と言えず、知りながら、否と言わぬは、忠とは言えず、否と言って、説得できねば、強とは言えず、義として少数を殺さずとも、多数を殺すは、道理を知るとは言えません。先生のお考えはいかに?……」
 「それは……」公輸般(こうしゅはん)は考えていたが、「先生のおっしゃるとおりです」
 「それでは、手を引いてはいかがですか?」
 「それはできません」公輸般(こうしゅはん)は辛そうに答えた。「私はすでに王に話してしまったのです」
 「それでは、私を王に会わせて下さればよろしい」
(……)

   魯迅=作 藤井省三(ふじい・しょうぞう)=訳
   「非攻(ひこう)——平和主義者の墨子(ぼくし)と戦争マニアの物語」
   『故事新編(こじしんぺん)』
   『酒楼にて/非攻』 光文社古典新訳文庫 2010.10.20


(2) 木山 1985
 「(……)宋に何の罪科(つみとが)がありますか。楚は土地が有り余って民の足りぬ国です。足りぬものを殺して有り余るものを争うのは、智(ち)とはいえぬでしょう。宋に罪なくしてこれを攻めるのは、仁とはいえぬでしょう。そうと知りながら、諌(いさ)めぬなら、忠とはいえぬでしょう。諌めても無効なら、強とはいえぬでしょう。義として少数を殺さぬがしかし多数は殺すとなれば、類を知るとはいえぬでしょう。これをどうお考えなさる……」
 「それは……」と公輸般は考えながら、「お説のとおりです」
 「だったら、とりやめられませんか?」
 「それがだめなので」公輸般は苦り切って、いった。
 「もう王に進言してしまったんですから」
 「だったら、王にお引き合わせ願いたい」
(……)

   魯迅=著 木山英雄(きやま・ひでお)=訳 「非攻」 『故事新編』
   相浦杲(あいうら・たかし)〔ほか〕=編 立間祥介=訳者代表
   『魯迅全集3 野草・朝花夕拾・故事新編
   学習研究社, 1985.11 所収


(3) 竹内 1979
 《(……)宋にはどんな罪がありますか? 楚国には土地はあり余っており、足りぬものは人民です。足りぬものを殺して、あり余るものを奪うのは智とは申せません。罪のない宋を攻めるのは仁とは申せません。主君の過ちを知りながら諌(いさ)めぬのは、忠とは申せません。諌めてしかも成らぬのは、強とは申せません。義において少数を殺さぬとしながら、多数を殺すのは類推の理を知るとは申せません。ご高見はいかが? ……》
 《それは……》公輸般はしばらく考えた。《まことに、おっしゃるとおりです》
 《では中止できませんか?》
 《それができんのです》公輸般はしょげた。《すでに王に説(と)いてしまったのです》
 《では、わたしを王に会わせてください》
(……)

   魯迅=作 竹内好(たけうち・よしみ)=訳 「戦争をやめさせる話」
   『故事新編』 岩波文庫, 1979.9 所収
 
  1. 竹内 新・ちくま文学の森9. -- 筑摩書房, 1995.5
  3. 竹内 魯迅文集2. -- ちくま文庫, 1991.4
  5. 竹内 河出世界文学大系75. -- 河出書房新社, 1980.11
  6. 竹内 魯迅選集3. -- 岩波書店, 1980
★ 9. 竹内 故事新編. -- 岩波文庫, 1979.9
 10. 竹内 魯迅文集2. -- 筑摩書房, 1976.12
 13. 竹内 筑摩世界文学大系78. -- 筑摩書房, 1974
 14. 竹内 世界文学全集47. -- 河出書房新社, 1974
 15. 竹内 現代中国文学1. -- 河出書房新社, 1970
 16. 竹内 世界文学全集35. -- 河出書房新社, 1969
 17. 竹内 筑摩世界文学大系92. -- 筑摩書房, 1969
 19. 竹内 魯迅作品集2. -- 筑摩叢書, 1966
 20. 竹内 魯迅選集3. -- 改訂版. -- 岩波書店, 1964.3
 21. 竹内 世界文学大系62. -- 筑摩書房, 1958
 22. 竹内 魯迅選集3. -- 岩波書店, 1956
 23. 竹内 魯迅作品集(続). -- 筑摩書房, 1955
 24. 竹内 魯迅作品集. -- 筑摩書房, 1953


(4) 松枝+和田 1976
「(……)宋には、どんな罪があるのでしょうか? 楚国に余っているものは土地で、欠けているものは人民です。欠けているものを殺して、余っているものを争うのは、智とはいえますまい。宋には罪がないのに、これを攻めるのは、仁とはいえますまい。主君の過ちを知りつつ、これを諌めぬのは、忠とはいえますまい。諌めて、しかも成功せぬのは、強とはいえますまい。義として、少なきを殺さぬとしながら、多きを殺すのは、類推の理を知るとはいえますまい。先生は、どう思われます? ……」
「それは……」公輸般はしばらく考えてから、「まことに、仰せのとおりです」
「では、やめることはできませんか」
「それは、だめです」公輸般は、嘆息して言った。「すでに王に説いてしまったのです」
「では、私を王に会わせてくださればよろしい」
(……)

   魯迅=著 松枝茂夫+和田武司=訳 「非攻」 (『故事新編』より)
   相浦杲〔ほか〕=編 『豪華版世界文学全集35
   講談社, 1976.10 所収

 10. 松枝+和田 世界文学全集44. -- 学習研究社, 1979.7
★12. 松枝+和田 豪華版世界文学全集35. -- 講談社, 1976.10
 14. 松枝+和田 世界文学全集93. -- 講談社, 1975


(5) 高橋 1967
「(……)宋に何の罪があるのだろうか? 楚国では余っているのは土地であり、足らないのは人民だ。足らないものを殺して余っているものを争う、これは智とはいえない。宋には罪はないのに、それを攻めようとするのは、仁とは言えない。義において一人を殺さず、しかも多数を殺すのは、論理を知るものとはいえぬ。先生どうお思いか?……」
「それは……」公輸般は考えた、「先生のおっしゃることはもっともだ」
「それなら止めることはできまいか?」
「それは駄目です」公輸般はしょんぼりと言った。「わたしはもう王に対してそう説いてしまった」
「それなら、私を王に会わせてくださればよろしい」
(……)

   魯迅=著 高橋和巳=訳 「非攻」 故事新編(抄)
   伊藤整〔ほか〕=監修 『世界の文学47』 中央公論社, 1967.6 所収

  2. 高橋 世界の文学セレクション36. -- 中央公論社, 1995.1
  7. 高橋 高橋和巳全集17. -- 河出書房新社, 1979.5
★18. 高橋 世界の文学47. -- 中央公論社, 1967.6

   なぜか「忠」と「強」の箇所が訳出されていません - tomoki y.


(6) 増田(?) 1936
「(……)宋にどんな罪科があるのです? 楚國に有り餘つてゐるものは土地、足りないものは人民です。足りないものを殺して有り餘つてゐるものを爭ふといふのは、これは智といふことが出來ない。宋に罪もないのに、却つて彼を攻めようとするのは、それは仁といふことが出來ない。知つてゐて、却つて爭はないのは、それは忠といふことが出來ない。爭つて、而もそれを遂げなければ、これは強といふことが出來ない。義として少きを殺さず、然して多きを殺すは、これは類を知ると言ふことが出來ない。先生どう思ひますか?……」
「それは………」と公輸般は考へて「先生の言はれることは全く正しいので。」
「それぢや止してくれませんか?」
「それは併し駄目です」と公輸般は殘念さうに云つた「私はもう國王に話してしまひました。」
「それぢや、わしを連れて行つて國王に會はせて下さればよい。」
(……)

   魯迅=著 増田渉=訳(?) 「非攻」 (『故事新編』より)
   鹿地亘(かじ・わたる)〔ほか〕=譯 『大魯迅全集2
   改造社 定價金貳圓 1936/04 所収

   この本の訳者は鹿地亘、松枝茂夫、井上紅梅、増田渉、佐藤春夫の
   5氏ですが、収録作それぞれの訳者が誰であるかについての記載は
   見あたりません。『故事新編』の「解題」の筆者が、増田渉氏と
   なっていることから、「非攻」の訳者は増田氏だと推定しました。
   もし誤りならば、ご指摘ください。


■中国語原文(簡体字)The original text in simplified Chinese

  “[略]宋有什么罪过呢?楚国有余的是地,缺少的是民。杀缺少的来争有余的,不能说是智;宋没有罪,却要攻他,不能说是仁;知道着,却不争,不能说是忠;争了,而不得,不能说是强;义不杀少,然而杀多,不能说是知类。先生以为怎样?……”
  “那是……”公输般想着,“先生说得很对的。”
  “那么,不可以歇手了么?”
  “这可不成,”公输般怅怅的说。“我已经对王说过了。”
  “那么,带我见王去就是。”
[略]

   《故事新编》 「非攻」 作者:鲁迅
   E-text at 天涯在线书库 (www.tianyabook.com)


■中國語原文(繁體字)The original text in traditional Chinese

  「[略]宋有什麼罪過呢?楚國有餘的是地,缺少的是民。殺缺少的來爭有餘的,不能說是智;宋沒有罪,卻要攻他,不能說是仁;知道著,卻不爭,不能說是忠;爭了,而不得,不能說是強;義不殺少,然而殺多,不能說是知類。先生以為怎樣?……」
  「那是……」公輸般想著,「先生說得很對的。」
  「那麼,不可以歇手了麼?」
  「這可不成,」公輸般悵悵的說。「我已經對王說過了。」
  「那麼,帶我見王去就是。」
[略]

   魯迅 「非攻」 (1934)
   《故事新編》 (1935) 所収
   魯迅小説集. -- 人民文学出版社, 1956
   故事新編. -- 人民文学出版社, 1952
   E-text at:
   * 雲臺書屋 (www.b111.net)
   * Wikisource


■ほぼ網羅的な邦訳リスト
 A more or less complete list of translations into Japanese

★は、上にその訳文の抜粋を掲載したもの。

★ 0. 藤井 酒楼にて/非攻 -- 光文社古典新訳文庫, 2010.10
  1. 竹内 新・ちくま文学の森9. -- 筑摩書房, 1995.5
  2. 高橋 世界の文学セレクション36. -- 中央公論社, 1995.1
  3. 竹内 魯迅文集2. -- ちくま文庫, 1991.4
★ 4. 木山 魯迅全集3. -- 学習研究社, 1985.11
  5. 竹内 河出世界文学大系75. -- 河出書房新社, 1980.11
  6. 竹内 魯迅選集3. -- 岩波書店, 1980
  7. 高橋 高橋和巳全集17. -- 河出書房新社, 1979.5
  8. 松枝+和田 世界文学全集44. -- 学習研究社, 1979.7
★ 9. 竹内 故事新編. -- 岩波文庫, 1979.9
 10. 竹内 魯迅文集2. -- 筑摩書房, 1976.12
★11. 松枝+和田 豪華版世界文学全集35. -- 講談社, 1976.10
 12. 松枝+和田 世界文学全集93. -- 講談社, 1975
 13. 竹内 筑摩世界文学大系78. -- 筑摩書房, 1974
 14. 竹内 世界文学全集47. -- 河出書房新社, 1974
 15. 竹内 現代中国文学1. -- 河出書房新社, 1970
 16. 竹内 世界文学全集35. -- 河出書房新社, 1969
 17. 竹内 筑摩世界文学大系92. -- 筑摩書房, 1969
★18. 高橋 世界の文学47. -- 中央公論社, 1967.6
 19. 竹内 魯迅作品集2. -- 筑摩叢書, 1966
 20. 竹内 魯迅選集3. -- 改訂版. -- 岩波書店, 1964.3
 21. 竹内 世界文学大系62. -- 筑摩書房, 1958
 22. 竹内 魯迅選集3. -- 岩波書店, 1956
 23. 竹内 魯迅作品集(続). -- 筑摩書房, 1955
 24. 竹内 魯迅作品集. -- 筑摩書房, 1953
★25. 増田? 鹿地亘〔ほか〕大魯迅全集2. -- 改造社, 1936.4


■更新履歴 Change log

  • 2013-07-31 目次を新設しました。
  • 2012-04-17 藤井省三=訳 2010.10.20 と木山英雄=訳 1985.11 を追加しました。また、これまで誤って「公輸殿」と記していた箇所を「公輸般」に訂正しました。

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■洋書 Books in non-Japanese languages

■和書 Books in Japanese

  

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