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Monday, 16 June 2008

The Leather Funnel by Arthur Conan Doyle (2) ドイル「革の漏斗(じょうご)」 (2)

Left ドイル傑作集3 恐怖編 新潮文庫 改版 (2007)
Centre The Best Supernatural Tales of Arthur Conan Doyle Dover Publications (1984)
Right Tales of Terror and Mystery Tutis Digital Publishing (2007)

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■日本語訳 Translations into Japanese

(1) 西崎 2004
ひとりの男が水を入れたバケツを両手にぶらさげて部屋に入ってきた。その後からもうひとりが三つ目のバケツを持ってきた。ふたりはそれぞれのバケツを木馬の横に置いた。後から入ってきたほうは木の柄杓——長い柄のついた椀——を片方の手に持っていた。そしてそれを黒衣の男に渡した。同時に従僕のひとりが黒々としたものを持って、男に近づいた。夢のなかだったのに、私は漠然とそれが馴染みのものであるように思った。革の漏斗だった。そして黒衣の男はひどく無造作にそれを押しこんだ(……)

   コナン・ドイル=著 西崎憲(にしざき・けん)=訳「革の漏斗(じょうご)」
   北原尚彦+西崎憲=編『ドイル傑作集2 北極星号の船長
   創元推理文庫 2004/12 所収 詳細は ここ
 
 
(2) 橋本 1980, 1990
両手に水の入ったバケツをひとつずつ持った男が部屋に入ってきた。その後ろから三つ目のバケツをさげて別の男が入ってきた。バケツは木馬のそばに置かれた。二番目の男は手に、真っすぐな柄のついた木の柄杓(ひしゃく)を持っていたが、それを黒い服の男に渡した。同時に従者のひとりが黒っぽいものを手に持って近づいた。夢の中でも、その品物は見覚えのあるような気がした。革の漏斗だったのである。恐ろしい力をこめて男はそれをつっこんだ……

   コナン・ドイル=著 橋本槙矩(はしもと・まきのり)=訳
   「革の漏斗(かわのじょうご)」
   2a.猫は跳ぶ—イギリス怪奇傑作集』福武文庫 1990/07 所収
   2b.夜光死体—イギリス怪奇小説集』旺文社文庫 1980/04 所収
   引用は 2b. に拠りました。
 
 
(3) 延原 1960, 2007
一人の男が両手にバケツをさげてはいってきた。べつの男が第三のバケツを持ちこんだ。バケツはみんな木馬のそばに置かれた。第二の男はあまった片手に木製の ひしゃく——まっすぐな柄に半球形の鉢のついたものを持っていた。これを黒服の男に渡した。ほとんど同時に下僕の一人が何やら黒っぽい品を手に近づいてきた。夢のなかとはいえ、私には漠然とながら、見なれないものではなかった。革の漏斗だったのだ。恐ろしい力で彼はそれをぎゅっと(……)

   コナン・ドイル=著 延原謙=訳「革の漏斗」
   3a.ドイル傑作集3 恐怖編』新潮文庫 改版 2007/08 所収
   3b.ドイル傑作集3 恐怖編』新潮文庫 1960/07 所収
   文中の太字箇所は原文では太字でなく傍点。引用は 3a. に拠りました。
 
 
■ポルトガル語訳 Translation into Portuguese

Um homem entrara na sala carregando um balde de água em cada mão Outro homem o seguia, trazendo um terceiro balde. Foram deixados ao lado do cavalo de madeira. O segundo homem segurava na outra mão uma grande concha de madeira – espécie de tigela com uma asa reta. Entregou-a ao homem de vestes negras. Nesse momento um dos lacaios se aproximou da mulher com um objeto escuro nas mãos, o qual, mesmo em sonho, apoderou-se de mim, originando um vago sentimento de familiaridade. Era um funil de couro. Com um impulso enérgico e horrível, o lacaio enfiou-o na (....)

   O Funil de Couro by Arthur Conan Doyle
   Translated by Silveira de Souza
   E-text at Biblioteca Virtualbooks (pdf)
   Copyright (c) 2000/2003 Virtualbooks
 
 
■フランス語訳 Translation into French

Un homme survint, portant de chaque main un baquet d'eau ; puis un autre homme, portarrt un seul baquet. Ils se rangèrent de compagnie à côté du cheval de bois. Le second des deux hommes, dans la main qui ne portait pas le baquet, avait une sorte de grande cuiller en bois a long manche. Il la fit passer à l'homme en noir. Immédiatement, l'un des aides s'approcha, tenant un objet de couleur brune, que, même dans mon rêve, je crus vaguement reconnaître : c'était un entonnoir de cuir. Avec une affreuse énergie, il en mit le tuyau (...)

   L'Entonnoir de cuir by Arthur Conan Doyle
   E-text at Wikisource
 
 
 Audio 1 
英語原文の朗読: ドミニク・ムーア Audiobook read by Dominic Moore

下に引用する箇所の朗読は 16:48 から始まります。 Uploaded to YouTube by freeaudiobooks84 on 4 Jan 2013. Audio courtesy of LibriVox. Reading of the excerpt below starts at 16:48.


 Audio 2 
英語原文の朗読: グレアム・ダンロップ Audiobook read by Graeme Dunlop

下に引用する箇所の朗読は 22:18 から始まります。 Uploaded to YouTube by FULL audio books for everyone on 10 Oct 2012. Audio courtesy of LibriVox. Reading of the excerpt below starts at 22:18.


■英語原文 The original text in English

A man had entered the room with a bucket of water in either hand. Another followed with a third bucket. They were laid beside the wooden horse. The second man had a wooden dipper--a bowl with a straight handle--in his other hand. This he gave to the man in black. At the same moment one of the varlets approached with a dark object in his hand, which even in my dream filled me with a vague feeling of familiarity. It was a leathern filler. With horrible energy he thrust it (...)

 
 
■外部リンク External links

 
 
■更新履歴 Change log

  • 2014/01/22 2種類の英語版オーディオブックの YouTube 画面を追加しました。
  • 2008/06/19 ポルトガル語訳を追加しました。
  • 2008/06/18 日本語訳 (1) の訳者の表示を、北原+西崎 2004 から、西崎 2004 に修正しました。この短篇集では、北原、西崎の2人の編者のほかに、駒月雅子、白須清美の両氏を加えた計4人の訳者が分担して翻訳しています。各篇の末尾には、担当した訳者が明記されています。このことに、あとから気がついたので、上のとおり修正することにしました。

 
 
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Comments

 半球型という訳し方は少々的外れのように思います。日本語訳としても、その形容だけ文章から浮いている感じがしますし、もしそう訳すべきである場合があるとしたら、それは原文に hemisphere という単語が使われている場合のみであると思います。
 次に、With horrible energy he thrust it の訳し方。horrible energy には「恐ろしい」という語感はないように思います。「凄まじい力で」と言ったところでしょうか。
 最後のポイントとしては、second, third の訳し方。これを、第二の、第三の、と訳してしまっては、日本語としてこなれた訳にならないのではないか、と思います。
 ベースとして、最もこなれた訳であると思われる、(1) 北原+西崎 2004 を用いて修正するならば、

ひとりの男が水を入れたバケツを両手にぶらさげて部屋に入ってきた。その後からもうひとりが三つ目のバケツを持ってきた。ふたりはそれぞれのバケツを木馬の横に置いた。後から入ってきたほうは、先が椀形になっている木の柄杓を片方の手に持っていた。そしてそれを黒衣の男に渡した。同時に従僕のひとりが黒々としたものを持って、男に近づいた。夢のなかだったのに、私は漠然とそれが馴染みのものであるように思った。革の漏斗だった。そして黒衣の男は凄まじい力でそれを押し込んだ。

Posted by: 伊藤 龍樹 | Tuesday, 17 June 2008 at 06:18 PM

伊藤 龍樹さん

コメントありがとうございます。

> 半球型という訳し方は少々的外れのように思います。

そうですね。日本語で「お椀」とか「椀形」といえば、形はおのずと明らかですね。

> もしそう訳すべきである場合があるとしたら、それは原文に hemisphere という単語が使われている場合のみであると思います。

ええ、たぶんおっしゃるとおり。「半球」といえば「北半球」「南半球」以外には、とっさに用例を思いつきません。

> horrible energy には「恐ろしい」という語感はないように思います。「凄まじい力で」と言ったところでしょうか。

これには異論あり。Horrible の訳語に「恐ろしい」を挙げている英和辞典は、いくつもありますよ。Horrible の根幹の意味は「衝撃や恐怖や嫌悪をひき起こす」。類義語は terrifying, appalling, dreadful, frightful など。転じて「はなはだしい, 極度の」の意味にも用いられます。この場合は terrible や extreme と言い換え可能。

いっぽう日本語の「恐ろしい」にも同様に、原義と派生的用法とがあります。「こわい」ではなくて「はなはだしい」の用例として、広辞苑はつぎの文を挙げています:

  電車がおそろしく込んだ

おなじことは「凄まじい」についても言えます。「すさまじい人気」は「おそろしい人気」と言い換えができなくもないでしょう。「すさまじい人気」のほうが、より自然ではあるかもしれませんが。

ブログ本文の表現に話をもどすと、つまるところ「恐ろしい力」は「凄まじい力」と、ほぼ同義と解釈してよい。「凄まじい力」のほうが、より適訳ではあるかもしれないけれど、「恐ろしい力」を誤りと断じるのはちょっと無理かな、というのが私の意見です。

> second, third の訳し方。これを、第二の、第三の、と訳してしまっては、日本語としてこなれた訳にならないのではないか、と思います。

全面的に同意します。この点、たしかに西崎訳(「北原+西崎」訳から修正。更新履歴をご参照ください)が、いちばん日本語らしいと思います。伊藤 龍樹さんの訳は、たいへん結構だと思います。ただ、つぎの1点だけは、直訳的な西崎訳のままのほうが、むしろ良かったかなとも思います:

> 先が椀形になっている木の柄杓

西崎訳: 木の柄杓——長い柄のついた椀——
原 文: a wooden dipper--a bowl with a straight handle--

要は "with a straight handle" をどう訳すかの問題ですけど。日本語で「柄杓」といえば、長い柄の付いた物であることは説明するまでもないといえば、それまで。なので、特に固執するつもりはありませんが。

Posted by: tomoki y. | Wednesday, 18 June 2008 at 09:30 AM

わたしは horrible の逐語的訳に「恐ろしいイメージが無い」と申し上げたのではありません。あくまで、With horrible energy he thrust it という文章の訳として、果たして「恐ろしい」という訳が適当なのだろうかと思ったのです。「恐ろしいエネルギーを以って」では、和訳とはいえないでしょう。西崎が敢えて「ひどく無造作にそれを押しこんだ」と訳したように、With horrible energy he thrust it には「恐ろしさ」よりも「強引さ」プラス「俊敏さ」を感じるのです。現象だけから見ればこれば「勢いよく」となるかもしれません。しかしこの文脈の中でプラスイメージではありえない言葉の使いまわしなので、これをマイナスイメージで表現するならば、「ひどく無造作にそれを押しこんだ」、或いは「凄まじい力でそれを押し込んだ」になるのではないかと思ったのです。生意気言ってすみません。

Posted by: 伊藤 龍樹 | Thursday, 26 June 2008 at 07:41 PM

伊藤 龍樹 さん

ご返事が遅くなりました。いいえ、生意気だなんて、とんでもない。いつもコメントをいただき感謝しています。

> 「恐ろしいエネルギーを以って」では、和訳とはいえないでしょう。

うーん、微妙(苦笑)。私はそれほど悪いとも思わないのですが。個人的な語感の違いに行き着いてしまうのでしょうか。あ、いや、よく考えると、やはり「ひどく無造作に」や「凄まじい力で」のほうが、いいかも。

horrible の辞書的定義については上に書きました。こんどは英和でなく英英の辞書を確認してみました。

horrible [adjective]
Definition:
1. very unpleasant: very bad, unpleasant, or unsightly.
a horrible smell
2. causing horror: sufficiently frightening, distressing, or shocking. as to provoke horror
a horrible crime
3. nasty: unkind, rude, or ill-behaved. ( informal )

Encarta (R) World English Dictionary [North American Edition]
http://encarta.msn.com/encnet/features/dictionary/DictionaryResults.aspx?refid=1861618767

1. と 3. の意味を、どれだけ訳語に反映させるかの問題でしょう。「俊敏さ」の含意があるかどうかは確認できませんでしたが、「強引さ」はまさしく 3. の定義と一致します。なので、「ひどく無造作に」あるいは「乱暴に」と訳すのは、やはり適切だと思います。

Posted by: tomoki y. | Sunday, 29 June 2008 at 12:17 PM

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