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Thursday, 03 July 2008

Afterward by Edith Wharton (1) イーディス・ウォートン 「あとになって」「後になつて」「あとにならないと」 (1)

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■はじめに Introduction

 アメリカからイギリスにやってきた夫婦。田舎に邸宅を買おうと物色中。古くて不便な家のほうが趣きがあってよい、という物好きな、この2人。えっ、幽霊が出る屋敷があるって? それなら、なおさらいいじゃないか!
 不動産を案内した現地の友人と、夫婦との会話がつづく……。


■日本語訳 Translations into Japanese

(1) 千葉 1996
「幽霊はどうなんだい。きみは、その屋敷には幽霊がいるという、かんじんのことをかくしているんじゃないか。」
 幽霊のいる屋敷に住みたい。それもエドワードののぞみだった。すると、アライダは、からかうような調子で答えたものだ。
「いるわよ、もちろん。でもそれが幽霊だとは、ぜったいにわからないの」
 エドワードはあきれたようにいった。
「わからない? 幽霊だとわからない幽霊だというのか。それはへんじゃないか。」
「わたしもはっきりとは知らないわよ。でも、うわさではそうなの。あれは幽霊屋敷なのよ。でもね、あとにならないと、そうとはわからないのよ。」
「あとになってか。」

  • ワートン=作 千葉幹夫=文(再話) 「あとになって」 ホフマン〔ほか〕=作 那須辰造〔ほか〕=訳 『鏡にうかぶ影』 講談社青い鳥文庫Kシリーズ 1996/07 所収

(2) 乾 1988
「(……)どこかよその家の幽霊見物に十マイルもドライブして行きたくないよ。幽霊のひとつぐらいは自分の屋敷内にいなくちゃね。リング屋敷には幽霊はいるの?」
 言い返した彼に向かって、アリーダはまた笑ったのだが、その時だった、彼女がみせびらかすようなあの言葉を投げつけるようにいったのは。「ああ、いますとも、もちろんよ、でもきっとあなた方には全然それとはわからないわ」
「全然わからないって?」とボーインが言い返した。「それじゃ、いったい幽霊とわからずに幽霊ってことがどうしてわかるのかね?」
「あたしには何ともいえないわ。だけど、そういう話なの」
「つまり、幽霊はいるんだけど、それが幽霊ってこと誰にもわからないってわけ?」
「そうね……ともかく、あとにならないとね」
「あとにならないと?」
「ずっと、ずっと、あとにならないとね」 


(3) 橋本 1959, 1969, etc.
「(……)十マイルもドライブして、ひとの家の幽霊を見にいかなきゃならないのではいやだね。自分の屋敷内にも幽霊の一人ぐらいはほしいよ。リングには幽霊がいるのかい?」
 彼がそういったとき、アライダはまた笑いだしたが。そのときだったのである、彼女がからかうようにさっきの言葉を投げつけたのは。「そりゃ、もちろんいるわよ。でも、それがそうだとは絶対にわからないのよ」
「絶対にわからない?」とボインは彼女の言葉じりをとらえた。「幽霊だとわからない幽霊なんてものがあるのかね?」
「そりゃ知らないけど、そういう話なのよ」
「幽霊はいるが、それが幽霊だと誰にもわからないって話がかい?」
「そう——とにかく、あとにならなければね」
「あとにならなければ?」
「ずっと、ずっと、あとになるまではね」 

  • イーディス・ウォートン=著 橋本福夫(はしもと・ふくお)=訳 「あとになって」 ラヴクラフト〔ほか〕=著 大西尹明(おおにし・ただあき)+橋本福夫=訳 『怪奇小説傑作集3 英米編3』 創元推理文庫(新版)2006/04 所収 詳細は ここ
  • イーディス・ワートン=著 橋本福夫=訳 「あとになって」 ラヴクラフト〔ほか〕=著 大西尹明+橋本福夫=訳 『怪奇小説傑作集3 英米編3』 創元推理文庫(旧版)1969/03 所収 詳細は ここ
  • イーディス・ファートン=著 橋本福夫=訳 「あとになつて」 『世界恐怖小説全集7 こびとの呪』 東京創元社 1959 所収 詳細は ここ

   引用は b. に拠りました。傍点を下線で置き換えました。


(4) 松村 1941, 1993
「(……)誰かよその人の幽靈を見に、十哩も車を走らせなくちやならないんぢや、いやですよ。邸の中に自分の幽靈が出て欲しいですね。で、リングには幽靈はゐるんですか?」
 彼がさうやり返すとアリーダはまた笑つた。さうしてぢらすやうにかう言ひ返したのはその時のことだつた、「そりやあ、もちろんゐますとも、でも、あなた方には分りつこないでせう。」
「分らないんですつて?」とボインがアリーダの言葉をさへぎつた。「だつて、そもそもそれと分らないやうな幽靈なんてありやうがないぢやありませんか?」
「わたしにも分らないわ。でもさういふ話よ。」
「幽靈は出る、だが、誰にもそれが幽靈だつてことは分らない、といふんですね?」
「ええ、さう、——とにかく、後(あと)になつてからでなくちや。」
「後になつてからでなくちや?」
「ずつとずつと後になつてからでなくちや分らないの。」

   イーデイス・ウオートン=著(目次と著者紹介ページの表記)
   イーディス・ウォートン=著(章扉の表記)
   松村達雄=譯 「後になつて」

   a. は b. の複製。引用は a. に拠りました。傍点を下線で置き換えました。


■ポルトガル語訳 Translation into Portuguese

"[Omission] Não quero ter de viajar dez milhas para ver o fantasma de outra pessoa. Quero um meu, em minha propriedade. Há um fantasma em Lyng?"

Sua resposta fizera Alida rir novamente, e foi então que ela replicara, provocante: "Ah!, existe um, é claro, mas vocês nunca saberão".

"Nunca saberemos?", Boyne interrompeu-a. "Mas o que faz de um fantasma um fantasma senão o fato de ser visto por alguém?"

"Não sei. Mas essa é a história."

"Que há um fantasma, mas ninguém sabe que é um fantasma?"

"Bem... somente depois, de qualquer forma."

"Somente depois?"

"Somente muito, muito tempo depois."

   Depois by Edith Wharton
   from Classicos do Sobrenatural. Translated by Enid Abreu Dobránszky
   Editora Iluminuras Ltda, 2004


 Audio 1 
英語原書のオーディオブック 朗読: ニコラス・クリフォード
Audiobook in English read by Nicholas Clifford

下の引用箇所の朗読は 2:57 から始まります。 Uploaded to YouTube by freeaudiobooks84 on 2 Jul 2013. Audio courtesy of LibriVox. Reading of the excerpt below starts at 2:57.


 Audio 2 
英語原書のオーディオブック 朗読: チャーリー・ブレイクモア
Audiobook in English read by Charlie Blakemore

下の引用箇所の朗読は 3:09 から始まります。 Audio courtesy of LibriVox. Reading of the excerpt below starts at 3:09.


■英語原文 The original text in English

"[Omission] I don't want to have to drive ten miles to see somebody else's ghost. I want one of my own on the premises. Is there a ghost at Lyng?"

His rejoinder had made Alida laugh again, and it was then that she had flung back tantalizingly: "Oh, there is one, of course, but you'll never know it."

"Never know it?" Boyne pulled her up. "But what in the world constitutes a ghost except the fact of its being known for one?"

"I can't say. But that's the story."

"That there's a ghost, but that nobody knows it's a ghost?"

"Well -- not till afterward, at any rate."

"Till afterward?"

"Not till long, long afterward."


■テレビ化作品 A TV adaptation

  • Afterward (1985), directed by Simon Langton, starring Kate Harper, Michael Shannon, Penelope Lee. More details here.

■表記/訳題の異同 Variations of translation and transliteration

A) 著者名:Edith Wharton
  イーディス・ウォートン 橋本 2006
  イーディス・ウォートン 松村 1993(章扉)
  イーディス・ウォートン 乾  1988
  イーディス・ウォートン 松村 1941(章扉)
  イーディス・ファートン 橋本 1959
  イーディス=ワートン  千葉 1996
  イーディス・ワートン  橋本 1969
  イーデイス・ウオートン 松村 1993(目次と著者紹介ページ)
  イーデイス・ウオートン 松村 1941(目次と著者紹介ページ)

   東京創元社版の橋本訳は、ファートン → ワートン → ウォートン と推移。

B) 表題:Afterward
 「あとになって」     橋本 2006
 「あとになって」     千葉 1996
 「あとになって」     橋本 1969
 「あとになつて」     橋本 1959
 「後になつて」      松村 1993
 「後になつて」      松村 1941
 「あとにならないと」   乾  1988


■外部リンク External links


■更新履歴 Change log

  • 2013/07/24 ポルトガル語訳を追加しました。また、2種類の英語原文朗読の YouTube 画面も追加しました。

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