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Sunday, 17 August 2008

A Midsummer Night's Dream - Tales from Shakespeare by Charles and Mary Lamb チャールズ・ラム+メアリー・ラム『シェイクスピア物語』真夏の夜の夢, 夏の夜の夢, 夏至祭の夜の夢

■舞台 Stage performances

S1 2007 Directed by Tim Supple. Swan, Stratford. Image source: guardian.co.uk Blogs
S2 2007『夏の夜の夢』演出: ジョン・ケアード. 出演: 村井国夫, 麻実れい. 新国立劇場. Directed by John Caird. Image source: とーるブロ
S3 2002 蜷川カンパニー『夏の夜の夢』演出: 蜷川幸雄. 出演: 嵯川哲朗, 白石加代子. シアターコクーン. 東京 (1994), ロンドン (1996), さいたま (2000) などの再演. The Ninagawa Company directed by Yukio Ninagawa. Image source: The Japan Times
S4 1996 Royal Shakespeare Company on Broadway directed by Adrian Noble. Image source: Footlights Gallery
S5 1978 The Riverside Shakespeare Company, with Eric Hoffmann as Puck and directed by Gloria Skurski. Image source: Wikipedia
S6 1970 Royal Shakespeare Company directed by Peter Brook. Image source: Gerry Jenkinson Homepage
S7 1945 Starring John Gielgud and Peggy Ashcroft. The Theatre Royal, Haymarket, London. Image source: JAMD

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S1 2007_tim_supple_dream_5 S2 2007_john_caird

S3 2002_ninagawa_midsummer_2 S4 1996_rsc_noble_dream S5 1978_riverside_midsummer

S6 1970_peter_brook_4 S7 1945_gielgudashcroft_2
 
 
■映画 Film adaptations

F1 A Midsummer Night's Dream (1999). IMDb Directed by Michael Hoffman. Starring Kevin Kline, Michelle Pfeiffer, Rupert Everett, Calista Flockhart.
F2 A Midsummer Night's Dream (1996). IMDb Directed by Adrian Noble. Starring Lindsay Duncan, Alex Jennings, Desmond Barrit.
F3 A Midsummer Night's Dream (1968). IMDb Directed by Peter Hall. Starring Derek Godfrey, Barbara Jefford, Diana Rigg, Helen Mirren, Ian Holm, Ian Richardson, Judi Dench.
 
F1 1999_michael_hoffman_midsum F2 1996_adrian_noble_midsummer F3 1968_peter_hall_midsummer
 

■わたしのシェイクスピア個人史
 My personal history with Shakespeare's dramas

小学生のころ、親がラム姉弟の『シェイクスピア物語』を買ってくれた。野上弥生子さん訳の岩波少年文庫旧版。函入りハードカバーだ。正直いって、当時の私には難しすぎた。筋書きが理解できたのは『ベニスの商人』ぐらいではなかったか。

長じて渡米し、夏の野外劇場における無料のシェイクスピア・フェスティバルに接するに至って、ようやく沙翁の面白さを知った。四大悲劇をはじめとした主要作品の舞台・ビデオをかなりたくさん観たし、戯曲の原文と邦訳も通読した。ロンドンに移り住むと、さすがに本場なので、絶えずあちこちでシェイクスピアを上演している。嬉々として観劇にいそしんだ。といっても、まったく触れていない作品も、いまだに多数あることはある。

いちばん好きなのは『ハムレット』と『リア王』。ニューヨークのベラスコ劇場で観たレイフ・ファインズ演ずるハムレットや、ロンドンのナショナル劇場で観たイアン・ホルムのリア王は素晴らしかった。喜劇は、いまひとつ面白いと思わない。その数少ない例外が、1996年ロンドンのマーメイド劇場における蜷川幸雄さんの『夏の夜の夢』だった。日本人が日本語で演じたこの舞台は、無類の痛快さだった。

シェイクスピアの喜劇は、なぜか私には、何度観てもプロットが頭に入らない。『夏の夜の夢』は、私が最も親しんだ喜劇のうちの一つだが、それとても、人にストーリーを説明せよと言われたら、できない。ところが、下に引用するように、チャールズ・ラムは、戯曲の冒頭の50行ちかくを、わずか数行にみごとに凝縮している。しかも明快そのもの。

最近、岩波文庫から新訳が出たのを機に、『シェイクスピア物語』を再読した。メアリーとチャールズの姉弟による、このダイジェスト本が、刊行後200年を経て、いまだに味読する価値のある本であることを知った。
 
 
■日本語訳 Translations into Japanese

(J1) 安藤 2008
 むかし、アテネに、父親は、だれでも自分が選んだ男との結婚を娘に強制してもよい、という法律がありました。つまり、父親が夫として選んだ男と結婚するのを娘がいやだと言えば、父親は、この法律により娘を殺してもよいという権限をあたえられていたのです。しかし、父親は、じつの娘を殺すのを望まないのが普通でしたから、娘がたまたま少々だだをこねることがあっても、この法律は実施されたためしは、めったにありませんでした。でも、おそらく、この町の若い女性たちは、この法律の恐ろしさをちらつかせて、両親に脅されることは、決してまれではなかったでしょう。
 ところが、一度だけ、イージウスという老人が(……)

   「真夏の夜の夢」
   チャールズ・ラム+メアリー・ラム=作 安藤貞雄(あんどう・さだお)=訳
   『シェイクスピア物語(上)』(全2冊) 岩波文庫 2008/06
 
 
(J2) 矢川 2001
 むかし、アテネには厳しい法律があって、娘が父親の選んだ男と結婚するのをことわったときには、父親が娘を死刑にしてもよいということになっていました。ただし、自分の娘を殺すことをのぞむ父親はまずおりませんから、この法律が実行されることはありませんでした。
 ところが、イージアスという老人の場合は(……)

   「夏の夜の夢」
   ラム=作 矢川澄子(やがわ・すみこ)=訳
   『シェイクスピア物語』 岩波少年文庫 2001/09
   引用文中のルビは省略しました。
 
 
(J3) 乾 1984, 1992
 昔、ギリシアのアテネには、『娘たちは父親の選んだ男と結婚しなければならない』という法律がありました。もし娘が、父親のきめた男とは結婚しないといいはると、父親はその娘を法律によって死刑にできるのです。
 とはいえ、父親というのはめったに自分の娘の死を望んだりしませんから、いうことをきかない娘はときおり出現しましたが、この法律が実行にうつされることはまずぜったいにありませんでした。もちろんアテネの娘たちはしょっちゅう、いうことをきかないと死刑だぞ、とおどかされはしましたが。
 ところがあるとき、イージアスという老人が(……)

   「夏の夜の夢」
   ラム=作 乾侑美子(いぬい・ゆみこ)=訳
   3a.愛のシェイクスピア物語 ロミオとジュリエット
      てんとう虫ブックス 小学館 1992/05
   3b.シェイクスピア物語』 フラワーブックス 小学館 1984/02
   引用は 3a. に拠りました。引用文中のルビは省略しました。
 
 
(J4) 大場 1977, 2000
 むかしアテネの町にひとつの法律があったが、市民たちは、その法律によって、自分の好みで選んだ男との結婚を娘に強制することができた。夫として選んでやった男との結婚を拒否するような場合は、父親は、当然の権利として、娘の死刑を要求することができたのである。しかし、父親というものは、たとえ娘が多少手に負えないような場合でも、すぐさま娘の死を望むなどということがあるはずはなく、その法律じたい、ほとんど絶対といってよいほど実行されたためしはなかった。もちろん町の若い娘たちは、その法律のおそろしさをたねにずいぶん両親からおどかされる場合も多かっただろうけれども
 しかしここに一つ例外が出た。イジーアスという名の老人であるが、彼は(……)

   チャールズ+メアリ・ラム=著 大場建治(おおば・けんじ)=訳
   4a.シェイクスピア物語』 沖積舎 2000/11
   4b.シェイクスピア物語』 旺文社文庫 1977/04
   4a.4b. の再刊。
 
 
(J5) 福田 1968
 アセンズの町には、娘たちを親の思いどおりに結婚させてよいという法律がありました。娘が父の選んだ結婚の相手を拒否したばあい、父はこの法律によってかの女を殺す権限をあたえられていました。しかしじっさいには、たとえ娘たちがすこしばかり手におえないことがわかっても、父親たちがわが子を殺したいと思うことはあまりありませんでしたから、この法律はめったに、いえ、まったく実行にうつされることがなかったのです。おそらくこの町の若い女性は、この法律のおそろしさをきかされて親たちからしょっちゅうおどかされてはいたでしょうが。
 ところがここである老人の訴えがありました。その名をイジーアスといい(……)

   チャールズ・ラム+メアリ・ラム=著 福田陸太郎(ふくだ・りくたろう)=訳
   『シェイクスピア物語』 世界の名著12 ポプラ社 1968/08
   引用文中のルビは省略しました。
 
 
(J6) 永井 1966, 1970
 むかし、アシンズ(アテネ、古代ギリシア文明の中心地)の町では、娘はじぶんかってに結婚することができなかった。おとうさんが選んだ男を、いやだとこばむと、おとうさんは娘を死刑にしてもよいという法律があった。だが、たとえ娘がいやだといっても、そこは親子だ。法律どおり、さあ死刑にしてほしいと訴えるような、おとうさんはいなかった。
 ところがついに、そんながんこ者が現われた。イージュースという父親だ。(……)

   「真夏の夜の夢(まなつのよのゆめ)」
   ラム姉弟=作 永井鱗太郎(ながい・りんたろう)=文
   シェークスピア物語
   6a.カラー版少年少女世界の文学2 イギリス編1』(全30巻)
      小学館 1970/09
   6b.少年少女世界の名作文学4 イギリス編2』 小学館 1966/11
   引用は 6a. に拠りました。ルビは省略しました。
 
 
(J7) 厨川 1963, 1979
 むかし、アテネ市に、こんな法律があった。「父親は、自分がえらんだ男と、娘を結婚させてよい。もし娘がいやだといえば、娘を死刑に処してもよい」というのだ。
 しかし、父親は娘を殺したいと思わないのが、ふつうだから、娘がいうことをきかないようなことがあっても、この法律はめったに、いや、ほとんど絶対にといっていいくらい、実行されたことはなかった。しかし、アテネ市には、「いうことをきかないと、法律どおり死刑にしてしまいますよ」と、両親におどかされる娘は、かなりいたようだ。
 しかし、ここに一つ例外があった。イージーヤスという老人が(……)

   「夏の夜の夢」
   ラム=作 厨川圭子(くりやがわ・けいこ)=訳
   7a.シェイクスピア物語(下)』(全2冊) 偕成社文庫 1979/02
   7b.シェイクスピア物語(下)』(全2冊) 白水社 1963/07
   引用は 7a. に拠りました。ルビは省略しました。
 
 
(J8) 野上 1956,1962
 むかし、アテネの町は厳しい法律で、娘がおとうさんの選んだ人を夫にするのを断われば、おとうさんは、その娘を死刑にしてもよいということになっていました。しかし、実際には、この法律によって娘を死刑にしようという父親はありませんでした。
 ところが、イージュースという老人が(……)

   「夏至祭の夜の夢」
   チャールズ・ラム+メアリ・ラム=著 野上弥生子(のがみ・やえこ)=訳
   8a. シェイクスピア物語』 岩波少年少女文学全集 1962/06
   8b.シェイクスピア物語』 岩波少年文庫 1956/05
   引用は 8b. に拠りました。引用文中のルビは省略しました。
 
 
(J9) 坪内 1954
 アセンスの市には、むすめたちを、親のこのんだ相手とむりにでも結婚(けつこん)させる力を市民にあたえた一つの法律があった。それで、むせめが、その夫(おつと)にと、父親がえらんだ男子と結婚するのをこばんだら、父親はこの法律によって、むすめを死刑(しけい)にしてくれと、うったえる権利(けんり)があった。しかし、父親としては、たとえ、少々手におえないことがあっても、じぶんのむすめの死を願う者はあまりないから、この法律は、よしんば市の若いおじょうさんたちは、たびたび親たちにおどかされることはあったにしても、めったに、いや、ほとんど、じっさいに適用されはしなかった。
 ところが、その名をイージヤスという、ひとりの老人の例があった。(……)

   「真夏の夜の夢」
   ラム=著 坪内士行(つぼうち・しこう)=訳
   平沢文吉(ひらさわ・ぶんきち)=装幀・箱絵
   『ラムのシェイクスピア物語』 冨山房 1954/12 所収
   太字箇所は原文では太字でなく傍点。


(J10) 【参考】 阿部 1954 - 未収録
この本は、ディケンズの「クリスマス・キャロル」やキャロルの「ふしぎの国のアリス」とともにラムの「シェイクスピア物語」を収めています。しかし、現物を確かめたところ、「シェイクスピア物語」のうちの収録作は「ヴェニスの商人」と「ハムレット」の2篇のみで、A Midsummer Night's Dream は含まれていませんでした。- tomoki y.

   「シェイクスピア物語」
   ラム=著 阿部知二(あべ・ともじ)=訳
   『世界少年少女文学全集6 イギリス編4』 創元社 1954/05
 
 
(J11) 松本 1952
 昔アゼンスに、市民は自分の娘を勝手にだれとでも結婚させる権利を持つ法律がありました。娘が父親の選んだ男を夫にするのを拒んだばあいには、父親はその娘を殺すことも認められていたのです。しかし父親は多少は反抗するようなことがあっても、自分の娘の死を望んだりしないのが常ですから、この法律はアゼンスの若いお嬢さんたちを、その恐ろしさで脅迫するためにしばしば持ち出されたとしても実際に適用されたことはありませんでした。
 しかしたった一度だけ、イージアスという老人が(……)

   「真夏の夜の夢」
   チャールス・ラム=作 松本恵子(まつもと・けいこ)=訳
   『シェイクスピア物語』 新潮文庫 1952/07
 
 
(J12) 野上 1932, 1987
 アシンズの町には一つの法律があつて、市民たちはその娘をば誰でも自分たちのやりたいと思ふ人にやることが出来る権能を持つてゐました。娘が、お父さんが夫としてとして択んだ人と結婚するのを拒めば、この法律に依つてお父さんは娘を死刑にすることも出来るのでありました。しかし幾らか剛情を張るやうなものはあつたにしても、父親が自分の娘の死を望むものはさう/\はなかつたから、町の娘たちは親たちから、その怖ろしい話で脅かされてはゐたものの、この法律が適用されたことはめつたに、いいえ、決してありませんでした。
 ところが、此処にイーヂュースと呼ぶ老人が(……)

   「夏至祭の夜の夢」
   チャールズ・ラム+メアリ・ラム=著 野上弥生子(のがみ・やえこ)=訳
   12a. 「沙翁物語」 『野上弥生子全集 第2期 第20巻 翻訳3
      岩波書店 1987/07 所収
   12b.沙翁物語』 岩波文庫 1932/06(昭和7)
   12a. の底本は 12b.。引用は 12a. に拠りました。
 
 
(J13) 【参考】 峰尾 1927 - 未収録
Hamlet, Prince of Denmark; Othello; The Merchant of Venice; The Tempest の4篇のみを収録。A Midsummer Night's Dream は含まれていません。- tomoki y.

   チャールズ・ラム+メリー・ラム=著 峰尾都治(みねお・としはる)=訳註
   『英文世界名著全集10 シエークスピヤ物語』
   英文世界名著全集刊行所 1927(昭和2)
   国立国会図書館所蔵マイクロフィッシュ YD5-H-908-E37ウ
   英文併記


(J14) 河原 1927
 アゼンス市に結婚に關する嚴しい法律があつた。若し父親が定めた夫と結婚することを拒絶する娘があつたら、この法律に從つて、父親は娘を死刑に處することが出來た。然し父親達は娘を死刑に處することを好まなかつたので、この法律は存在するのみで實施されることは稀であつた。市の若い娘達はこの法律のために父親から嚇されることは屡々であつた。

   「眞夏の夜の夢」
   ラム=著 河原萬吉(かわはら・まんきち)ほか=譯
   『シェークスピア物語』 万有文庫23
   万有文庫刊行会 非賣品  1927/04(昭和2)


(J15) 平田 1927
 昔アゼンの都市(まち)には一つの法律(はふりつ)があつて、市民は何人(だれ)なりと自分の好む者へ娘をやることが出來る、萬一娘の方で父が良人(をつと)として選んだ人物に結婚するのを拒む場合は、父はその者を死に處するも差支ないといふことになつてゐた、が、よし多少の我儘(わがまゝ)を云ひ募るとしても、父として流石(さすが)に我が娘(こ)の死を願望(ねが)ふものもないので、その法律の實行されたといふ例(ためし)は滅多に、否(いや)、全くないといつてよい、あの都市(まち)の若い婦人で、今にもこの怖ろしい處刑(しよけい)にあはすと、嚇(おどか)されたことは珍しくないことであらうけれど。
 ところが、こゝに一人(ひとり)イージアスといふ老人があつて(……)

   「眞夏の夜の夢(なつのよのゆめ)」
   チヤアルズ・ラム+メエリイ・ラム=著 平田禿木(ひらた・とくぼく)=譯
   『世界名作大觀 各國篇 第11卷 ガリヴァの旅・沙翁物語
   國民文庫刊行會=編輯・發行 非賣品 1927/06(昭和2)所収
   原文は総ルビ。上の引用では、その一部を略しました。


(J16) 中村 1926
 アシンズ市に一つの法律があつて、その法律により、市民は己の氣に適つた者との結婚を娘に强ひ得る權力をもつて居た。それで、父親が娘の夫にと選んだ男と結婚する事を、娘が拒んだ際には、娘が死刑に處せらるゝやうにする權利を、父親は、法律によつて與へられて居たのである。けれども、父親と云ふものは、わが娘の死をさう望んで居るものではないから、時として娘達が少し気儘だと思はれるやうな事があつても、また市の若い夫人達が、その兩親に、怖ろしい法律の事をもち出されて、脅かされる事は、多分稀ではなかつたらうけれど、此の法律はめつたにた事はなかつた。  ところが、イーヂイアスと云ふ老人が、(……)

   チャールズ・ラム=著 中村詳一(なかむら・しょういち)=譯
   メアリ作 「眞夏の夜の夢
   『シェクスピヤ物語』 春秋社 定価金貳圓參拾錢 1926/09/20(大正15)
   国立国会図書館デジタル化資料
   書名の表記は表紙に拠ります。奥付の表記は『シェーキスピヤー物語』。
   適・選・達・婦の旧字は新字で置き換えました。


(J17) 木村/笹川 1916
 アゼンスの市に市民の娘は自分等の好きな男へは、嫁入りする事が出來ないと云ふ法律があつて、父が娘のために定めた婿を娘が嫌やだと云ふ事があれば、其の娘は法律に依つて死刑になると云ふ規則だつた、然し自分の娘を死刑に願ひたいと云ふ父親も無いから、我儘者の娘はあつたにしろ此う云ふ法律があるんだぞと兩親から折々、嚇される位な事はあつても、此の法律の事實上の執行は稀だつた。否や殆どない位だつた。
 然し茲に一例があつて、一人の老人名はエジウスと云つて(……)

[原文は次のとおり、総ルビ]
 アゼンスの市(まち)に市民(しみん)の娘(むすめ)は自分等(じぶんら)の好(す)きな男(をとこ)へは、嫁入(よめい)りする事(こと)が出來(でき)ないと云(い)ふ法律(はふりつ)があつて、父(ちゝ)が娘(むすめ)のために定(さだ)めた婿(むこ)を娘(むすめ)が嫌(い)やだと云(い)ふ事(こと)があれば、其(そ)の娘(むすめ)は法律(はふりつ)に依(よ)つて死刑(しけい)になると云(い)ふ規則(きそく)だつた、然(しか)し自分(じぶん)の娘(むすめ)を死刑(しけい)に願(ねが)ひたいと云(い)ふ父親(ちゝおや)も無(な)いから、我儘者(わがまゝもの)の娘(むすめ)はあつたにしろ此(か)う云(い)ふ法律(はふりつ)があるんだぞと兩親(りやうしん)から折々(をり/\)、嚇(おど)される位(くらゐ)な事(こと)はあつても、此(こ)の法律(はふりつ)の事實上(じじつじやう)の執行(しつかう)は稀(まれ)だつた。否(い)や殆(ほと)んどない位(くらゐ)だつた。
 然(しか)し茲(こゝ)に一例(れい)があつて、一人(ひとり)の老人(らうじん)名(な)はエジウスと云(い)つて(……)

   「眞夏の夜の夢」
   シエークスピーア=原作 チャールス・ラム+メリー・ラム=著
   木村 秀夫=譯 笹川臨風(ささかわ・りんぷう)=編
   『通俗シエークスピーア物語』 通俗叢書
   編輯兼發行:通俗敎育普及會出版局 非賣品 1916/02(大正5)
   国立国会図書館所蔵マイクロフィッシュ YD5-H-355-33い
   大阪府立図書館蔵書検索: ページ下のほうのコード検索で「タイトルコード」を
   選び、コード番号に「10000000291119」を入力すると、書誌詳細が表示されます。


(J18) 小松 1907, 2006, etc.
 亞丁市(アテンし)に一つの法律が施かれて、親たるものは其娘を自分の好む青年に、否應(いやおう)云はせず嫁(よめ)に行くやうに強迫(きやうはく)する權利(けんり)を與へらるゝ事と成つた。即ち父が選(ゑら)んだ男と結婚(けつこん)する事を若し娘が拒(こば)むやうの事あれば、其生命を取り得るの權力(けんりよく)を有したのである。然し父として自分の娘の死を願ふ者はないから、縱令(たとヘ)娘が少しは片意地(かたゐぢ)を張つて云ふ事を聞かぬ事があつても此法律は極稀(めつた)に行はれない、否全く励行(れいかう)せられなかつたのである。尤も此市の若い令嬢(れいじやう)方は此事で兩親に威嚇(おどさ)されるのは決して珍(めづら)しき事でなかつたのである。
 が茲に一つの六かしい事件が起(おこ)つた。それはエージヤスと云ふ老人(らうじん)が(……)

   「夏の夜の夢」
   チャ-ルス・ラム=著 小松月陵(こまつ・げつりょう)=譯
   18a.沙翁物語十種』 国立国会図書館近代デジタルライブラリー
   18b. 川戸道昭+榊原貴教=編
      『シェイクスピア翻訳文学書全集21 沙翁物語十種 明治期
      大空社 2006/06
   18c.沙翁物語十種』 博文館 1907/12(明治40)
   18a.18c. のスキャン画像。18b.18c. を複製したもの。
   引用は 18a. に拠りました。一部判読しづらいところがありました。
   もし、誤読している箇所がありましたら、ご指摘ください。
 
 
(J19) 【参考】 品田 1886 - 未収録
この本には「ハムレツト太子復讐の事」など6作品が掲載されているだけで、A Midsummer Night's Dream の邦訳は収録されていません。- tomoki y.

   セキスピヤ=原作 チャールス、ラム=著
   品田太吉(しなだ・たきち)=譯
   19a. セキスピヤ物語』 国立国会図書館近代デジタルライブラリー
   19b.セキスピヤ物語』 品田太吉=出版 1886/12(明治19)
   19a.19b. のスキャン画像。


■老人(父親)の名前の日本語表記
 Variations of transliteration of the father's name in Japanese

  イージーヤス……厨川 1963, 1979
  イージアス………矢川 2001 乾 1984, 1992 松本 1952
          平田 1927 河原 1927
  イージウス………安藤 2008
  イージヤス………坪内 1954
  イージュース……永井 1966, 1970 野上 1956,1962
  イーヂイアス……中村 1926
  イーヂュース……野上 1932, 1987
  イジーアス………大場 1977, 2000 福田 1968
  エージヤス………小松 1907, 2006, etc.
  エジウス…………木村/笹川 1916


■英語原文 The original text in English

There was a law in the city of Athens which gave to its citizens the power of compelling their daughters to marry whomsoever they pleased; for upon a daughter's refusing to marry the man her father had chosen to be her husband, the father was empowered by this law to cause her to be put to death; but as fathers do not often desire the death of their own daughters, even though they do happen to prove a little refractory, this law was seldom or never put in execution, though perhaps the young ladies of that city were not unfrequently threatened by their parents with the terrors of it.

There was one instance, however, of an old man, whose name was
Egeus ( . . . )

   A Midsummer Night's Dream
   Tales from Shakespeare (1807) by Charles and Mary Lamb

   Recent paperback editions include:
   * Tales from Shakespeare. Penguin Classics, 2007/12
   * Tales from Shakespeare. Signet Classics, 2007/06
   * Tales from Shakespeare. Puffin Classics, 1995/03

   Scanned book at University of Florida Digital Collections

   E-text at:
   * Mr. William Shakespeare and the Internet
   * Shakespeare-Literature.com
   * Project Gutenberg
   * Eldritch Press
   * Bartleby.com
 
 
■外部リンク External links

   * Tales from Shakespeare - Wikipedia (1807)
   * Charles Lamb - Wikipedia (1775-1834)
   * A Midsummer Night's Dream - Wikipedia


■更新履歴 Change log

2013/06/02 中村詳一=譯 1926/09/20 を追加しました。
2008/12/15 品田太吉=譯 1886/12 に関する参考書誌情報を追加しました。
2008/12/11 木村 秀夫=譯 笹川臨風(ささかわ・りんぷう)=編 1916/02 を
         追加しました
2008/10/16 河原萬吉ほか=譯 1927/04 を追加しました。
2008/09/11 大場建治=訳 2000/11 を追加しました。
2008/08/30 小松月陵=譯 1907/12 を追加しました。
2008/08/23 福田陸太郎=訳 1968/08 を追加しました。
2008/08/20 永井鱗太郎=文 1970/09、および平田禿木=譯 1927/06 を追加
         しました。また、峰尾都治=譯 1927/12 に関する書誌情報を修正
         しました。
2008/08/18 乾侑美子=訳 1992/05 を追加しました。また、野上弥生子=訳
         1987/07 を追加しました。この版は、これまで野上弥生子=訳
         1956/05 と同じ項に含めていました。しかし、一般読者向けの
         前者(=岩波文庫旧版に拠る)と、児童向けの後者(=岩波少年
         文庫旧版)とでは、訳文がかなり異なります。したがって、別立てに
         して引用文を挙げることにしました。


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Comments

I identified the part in the story about this being "clean rat" a bit unsettling with my stomach.

Posted by: flex belt reviews | Tuesday, 23 April 2013 at 12:28 PM

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