Антон Чехов - Чайка (4) The Seagull by Anton Pavlovich Chekhov (4) チェーホフ『かもめ』 (4)
■はじめに Introduction
『かもめ 四幕の喜劇』の第四幕のセリフから下に引用する。
■表紙画像 Cover photos
Left 『かもめ』 新読書社 (2006)
Centre 『かもめ—四幕の喜劇』 ロシア名作ライブラリー 群像社 (2002)
Right 『かもめ・ワーニャ伯父さん』 新潮文庫 (1967)
■日本語訳 Translations into Japanese
(J1) 佐藤 2011
トレープレフ:(……)月夜の描写は長くて気取ってばかりだ・・・トリゴーリンなら使う手が決まってるから楽なもんだ・・・月夜だろ、土手の上に空き瓶の破片がきらきらしている。水車が影を落としている。それでできあがりだ。
アントン・チェーホフ=作 佐藤康(さとう・やすし)=訳
「かもめ」(マルコヴィッチ&モルヴァンによるフランス語版から)
その9(最終回)
四幕の喜劇 1895年オリジナル版
とんぼのメガネ 2011/01/10
(J2) 浦 2010
トレープレフ:(……)月明かりの夜の描写は長ったらしいし、もったいぶっている。トリゴーリンなら彼一流のやり方があって、こんなもの造作もないんだ……。やつなら、堤防の上に割れたボトルの口がきらりと光り、水車の影が黒ずんでいたとか書けば、月夜の描写は一丁上がりだ。
チェーホフ=作 浦雅春(うら・まさはる)=訳
『かもめ』 岩波文庫 2010/01/15
(J3) 沼野 2008
トレープレフ:(……)月夜の描写は長たらしくて、凝りすぎだ。トリゴーリンは自分の手法を編み出したから、彼にはお手のものだけれど……。あの男なら、割れたガラス瓶のくびが土手できらめき、水車の車輪が黒い影を投げている——それでもう月夜のいっちょ上がり。
アントン・パーヴロヴィチ・チェーホフ=作 沼野充義=訳
「かもめ—四幕のコメディ」 『すばる』 集英社 2008年7月号収載
この翻訳を使用した舞台「かもめ」(演出:栗山民也、出演:藤原竜也、
鹿賀丈史ほか)は、東京・大阪・広島・名古屋を巡業中。公演「かもめ」
公式サイト(ホリプロ)は こちら。公式ブログは こちら。
(J4) 中本 2006
トレープレフ:(……)月夜の描写は長たらしく、凝りすぎだ。トリゴーリンは、手法がきまっているから、楽なもんだ…… あいつなら、土手の上にこわれた瓶(びん)の首がきらきら光って、水車の影が黒く見える—それでもう月夜はできあがり。
アントン・チェーホフ=作 中本信幸=訳
『かもめ』 新読書社 2006/07
(J5) 堀江 2002
コースチャ:(……)月夜のシーンは長いし、凝り過ぎだ。トリゴーリンは自分の手法を身に付けているから、簡単でいい。彼の場合、土手の上の割れたガラス瓶が光って、水車の影が暗く見える——これで月夜ができあがり。
アントン・パーヴロヴィチ・チェーホフ=作 堀江新二=訳
『かもめ—四幕の喜劇』 ロシア名作ライブラリー4 群像社 2002/11
(J6) 堀内 2000-2005
トレープレフ:(……)月夜の描写も長ったらしいし、クドい。トリゴーリンだったらきっと、例の小技でやっつけちまうでしょう。「土手にきらめく割れた瓶と、水車の黒い影」……これで月夜ができちまう。
アントン・チェーホフ=作 堀内仁=訳
「かもめ」 現代演劇翻訳テキスト集
Copyright (c) LABO! & Horiuchi Jin, 2000-2005
LABO! の公演用に訳出されたもの。以下のような注記があります:
なにより「面白い」上演のためのテキストたらんことを望みました。
そのため、原書に対しては必ずしも忠実ではありません。
また、アカデミックな研究には寄与するものではないことをご了解ください。
(J7) 小田島 1998
トレープレフ:(……)月夜の描写がまた——長すぎるし、凝りすぎてる。トリゴーリンは独特の小技(こわざ)を身につけてきたから——苦労しないですむんだ……貯水池の土手に割れた壜の首がキラキラ光り、そのかたわらに水車の影が黒々と落ちている——これでもう月夜ができてしまう。
アントン・チェーホフ=作 小田島雄志=訳
『かもめ』 ベスト・オブ・チェーホフ 白水Uブックス126 1998/12
マイケル・フレインの英訳(The Seagull, translation by Michael Frayn,
Translation copyright (c) 1988, 1991)からの重訳
(J8) 松下 1988, 1993, etc.
トレープレフ:(……)月夜の描写が長たらしくて、しゃれすぎてるんだ。トリゴーリンなら手が決まってるから楽なもんだ……。あいつなら、土手に割れた瓶(びん)のくびがきらきらしてて、水車の影が黒く見える——それでもう月夜ができるんだ。
アントン・チェーホフ=著 松下裕(まつした・ゆたか)=訳
a. 『チェーホフ戯曲選』 水声社 2004/09 所収
b. 『チェーホフ全集11 三人姉妹・桜の園』 ちくま文庫 1993/10 所収
c. 『チェーホフ全集11 白鳥の歌・かもめ』 筑摩書房 1988/06 所収
引用は c. に拠りました。
(J9) 木村(浩) 1979
トレープレフ:(……)月夜の描写なんて、長ったらしくて、凝りすぎている。でも、トリゴーリンなんかは手法が決ってるから、楽なもんだ。奴さんなら、土手の上に割れたびんの首がキラキラ光っていて、水車の黒い影がみえる——まあ、こんなところで月夜の描写は片がつくわけだが(……)
チェーホフ=作 木村浩=訳 「かもめ」
『世界文学全集39 チェーホフ』 学習研究社(学研) 1979/09/01 所収
傍点は下線で置き換えました。
(J10) 原 1978, 1991
トレープレフ:(……)月夜の描写も長たらしくて、気取りすぎてるな。トリゴーリンなら、自分の手法を作りだしてるから、たやすいもんだ……あの男なら、土手の上に割れた壜(びん)の首が光っていて、水車の影が黒く落ちていれば、それでもう月夜は出来上がりだからな。
チェーホフ=作 原卓也=訳 「かもめ」
a. 『集英社ギャラリー [世界の文学]13 ロシア1』 集英社 1991/03 所収
b. 『集英社版 世界文学全集59』 綜合社=編集 集英社=発行
1978/04 所収
引用は a. に拠りました。
(J11) 木村(彰) 1976
トレープレフ:(……)月夜の描写は長ったらしいし、それに凝りすぎている。トリゴーリンは完成された自分の手法があるから、仕事は楽なもんだ……あの男なら、こわれたびんの口がきらきら土手の上に光っていて、水車の影が黒く落ちていると書けば、もう月夜ができあがっちまう。
チェーホフ=作 木村彰一=訳 「かもめ」
『豪華版 世界文学全集22 チェーホフ』 講談社 1976/10 所収
(J12) 石山+飯田 1960
[訳文は追って挿入するつもりです - tomoki y.]
チェーホフ=作
石山正三(いしやま・しょうぞう)+飯田規和(いいだ・のりかず)=訳
「かもめ」
『ポータブル・チェーホフ』 ポータブル・ライブラリィ
パトリア・ブックス22 パトリア書店 1960/05 所収
(J13) 中村 1959
トレープレフ:(……)月夜の描写は長すぎるばかりか、こりすぎだ。トリゴーリンにはもうちゃんと型ができているから楽なもんだ……あの男の手にかかると、土手の上にこわれた罎の口がきらきら光って、水車の影が黒くなっている——これでもう立派に月夜ができあがるのだ。
チェーホフ=作 中村白葉=訳 「かもめ」
『新版世界文学全集20 桜の園・三人姉妹』
新潮社 1959/01 所収
(J14) 倉橋 1956
トレープレフ:(……)月夜の描写は長ったらしい上に、凝りすぎている。トリゴーリンは自分の手法をちゃんと作ってしまっているからな、楽なもんだ……あの男なら、土手の上に毀れた壜の口がきらきら光って、水車の影が黒く映つている——これでもう月夜が出来あがってしまう。
チェーホフ=作 倉橋健(くらはし・たけし)=訳 「かもめ」
『チェーホフ名作集』 白水社 1956/09/20 所収
(J15) 神西 1954, 1967, etc.
トレープレフ:(……)月夜の描写が長たらしく、凝りすぎている。トリゴーリンは、ちゃんと手法がきまっているから、楽なもんだ。……あいつなら、土手の上に割れた瓶(びん)のくびがきらきらして、水車の影が黒く落ちている——それでもう月夜ができあがってしまう。
チェーホフ=作 神西清=訳「かもめ」
a. 青空文庫 電子テキスト作成作業中
b. 『新潮世界文学23 チェーホフ』 新潮社 1969/07 所収
c. 『チェーホフ全集12 戯曲2』 中央公論社 1968/10 所収
d. 『かもめ・ワーニャ伯父さん』 新潮文庫 1967/09 所収
e. 『世界文学全集 第1期 第12』 河出書房 1954 所収
神西訳は、以上のほか多数の版に収められています。その詳細なリストは、
たとえば 『可愛い女・犬を連れた奥さん 他一篇』 岩波文庫(改版)
2004/09 の巻末にある「神西清訳のチェーホフ作品」で見ることができます。
a. の底本は d.。引用は d. に拠りました。
(J16) 湯浅 1952, 1976
トレープレフ:(……)月の晩の描写は長くて凝りすぎている。トリゴーリンは自分の手法を作ってしまっているからな、あの男は楽なんだ……あの男の場合は、堤(どて)の上に毀れた壜の口が光っていて、水車の車輪の影が黒ずんでいる——ほら、これで月夜はちゃんとできている。
チェーホフ=作 湯浅芳子=訳
a. 『かもめ』 岩波文庫(改版)1976/05
b. 『かもめ』 岩波文庫(初版)1952/05
引用は a. に拠りました。
(J17) 中村 1935
トレープレフ:(……)月夜の描冩は長過ぎるばかりか、綺麗すぎる。トリゴーリンにはもうちやんと立派に型が出來てゐるから樂なもんだ……あの男の手にかゝると、土手の上に、毀れた罎の口がきら/\光つて、水車の影が黒くなつてゐる——これでもう立派に月夜が出來上るのだ。
チェーホフ=作 中村白葉=譯
『チェーホフ全集13 かもめ』 金星堂 1935/07(昭和10)
(J18) 米川 1923, 1964, etc.
トレープレフ:(……)月夜の描冩は長つたらしくて、苦しさうだ。トリゴーリンは手法がちやんと決つて了つてるから樂なもんだ……あの男に書かせれば、土手の上に破れた壜の口がきら/\光つて、水車の影が黒く映つてゐる——これでもう月夜が出來上つて了ふのだ。
チェーホフ=作 米川正夫=訳 「かもめ」
a. 中村白葉〔ほか〕=訳
『決定版ロシア文学全集15 チェーホフ1』(全35巻)
日本ブック・クラブ 1970/09 所収
b. 中村白葉、原久一郎〔ほか〕=訳
『ロシア・ソビエト文学全集22 チェーホフ1』(全35巻)
可愛い女 ヴァーニャ伯父さん 三人姉妹 かもめ
六号室 犬をつれた奥さん 他
平凡社 1964/05 所収
c. 『近代劇大系 第14卷 露西亞篇2』
近代劇大系刊行會 非賣品 1923/08(大正12)所収
引用は c. に拠りました。
■スペイン語訳 Translation into Spanish
TREPLEV.- ( . . . ) La descripción del anochecer bañado por la luz de la luna, es larga y rebuscada... Trigorin ha dado ya con un estilo, y le resulta más fácil. . . ¡Con decir que el cuellecito roto de la botella brilla en la presa, y que negrea la sombra de la rueda del molino, tiene ya hecha la descripción de la noche de luna ( . . . )
La gaviota by Anton Pavlovich Chejov
Translated by E. Podgursky
E-text at
* World Public Library
* Biblioteca Digital de Estudios Sociales (DOC)
* Biblioteca Virtual Miguel de Cervantes
■ソ連映画 『チェーホフのかもめ』 監督: ユーリー・カラーシク Part 10
Chayka / The Seagull (1970) directed by Yuli Karasik - Part 10
チェホフのかもめ (1971) - allcinema 下に引用する台詞が現れるのは1:10あたりから。 The lines quoted below appear around 1:10.
■英訳 Translations into English
(E1) Deemer, 2004
TREPLEV: ( . . . ) My description of a moonlit night is too long and precious. Trigorin has it all worked out, writing is easy for him: a broken piece of bottle, glittering on the dam; a mill wheel casts a dark shadow - and there's his moonlit night. ( . . . )
The Seagull Hyperdrama
A play with simultaneous action
based on Chekhov's The Seagull
Charles Deemer
Sextant Books, 2004
Paperback: Three Moons Media, 2004
E-text at
* Ibiblio Deemer Literary Archive
* The Seagull Hyperdrama (PDF)
(E2) Calderon, 1912
TREPLIEFF. ( . . . ) This description of a moonlight night is long and stilted. Trigorin has worked out a process of his own, and descriptions are easy for him. He writes that the neck of a broken bottle lying on the bank glittered in the moonlight, and that the shadows lay black under the mill-wheel. There you have a moonlight night before your eyes ( . . . )
The Sea-Gull, A Play in Four Acts
by Anton Checkov
Translated by George Calderon
First published in:
Two Plays by Tchekhof: The Seagull, The Cherry orchard
Grant Richards: London, 1912.
Scanned images of this edition at Internet Archive
E-text at
* Project Gutenberg
* vtheatre.net
* Landscapes in Russian Literature and Art (PDF)
by Prof. Gerald Pirog, Rutgers University
■ロシア語原文 The original text in Russian
Треплев: Описание лунного вечера длинно и изысканно. Тригорин выработал себе приемы, ему легко... У него на плотине блестит горлышко разбитой бутылки и чернеет тень от мельничного колеса — вот и лунная ночь готова ( . . . )
Антон Павлович Чехов - Чайка
E-text at
* ilibrary.ru
* Landscapes in Russian Literature and Art
by Prof. Gerald Pirog, Rutgers University
■Bibliography on translations into English
* Anton Chekhov Biography
(Andreas Teuber Home Page)
■外部リンク External links
* The Seagull - Wikipedia
* Anton Chekhov - Wikipedia (1860-1904)
* Anton Chekhov - drama21c.net
* The Seagull - Mahalo
* かもめ (チェーホフ) - Wikipedia
* アントン・チェーホフ - Wikipedia
■更新履歴 Change log
2012/04/09 木村浩=訳 1979/09/01 の訳文を挿入しました。
2012/03/03 佐藤康=訳 2011/01/10 を追加しました。
2011/05/13 「はじめに」の項と、ソ連映画 『チェーホフのかもめ』の YouTube
動画を追加しました。
2010/04/07 浦雅春=訳 2010/01/15 を追加しました。
2010/01/06 倉橋健=訳 1956/09/20 を追加しました。
2009/08/28 木村浩=訳 1979/09 の書誌情報を追加しました。訳文は
追って挿入するつもりです。
2008/08/20 木村彰一=訳 1976/10、中村白葉=訳 1959/01、
中村白葉=譯 1935/07、および米川正夫=訳 1923/08 を
追加しました。また、神西清=訳の書誌情報を補足しました。
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