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Saturday, 27 December 2008

Markheim by Robert Louis Stevenson (4) スティーヴンソン 「マーカイム」「マークハイム」 (4)

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■スティーヴンソン博物館(サモア) Robert Louis Stevenson Museum, Samoa



■はじめに Introduction

殺人犯マーカイムと謎の男との会話。問答を聞くかぎり、マーカイムは人を殺したとはいえ、良心を完全に失ってしまったわけではないらしい。だが、謎の男は、そんなことには興味がないという。この男は悪魔か?


■日本語訳 Translations into Japanese

(1) tomoki y. 2008
 「(……)この殺人という罪は、善の泉じたいをカラカラにするほど、バチ当たりな罪ですか?」
 「殺人はわたくしにとっては、なにも特別ではありません」と相手は答えた。「あらゆる罪は殺人です、あらゆる生が戦争であるように。わたくしから見ると、あなたがた人間は、筏(いかだ)に乗った、飢え死にしかけた船乗りの一団のようなものです。飢える仲間の手から、パンのかけらをもぎ取り、共食いをしながら生きている。わたくしは犯罪を、犯行の瞬間だけでなく、その後についても追跡します。すべての場合において、最後に目撃する結末は死なのです。(……)」

   ロバート・ルイス・スティーヴンソン=著 Tomoki Yamabayashi=訳「マーカイム」
   tomokilog - うただひかるまだがすかる, 2008/12/25


(2) 高松+高松 1989, 1994
「(……)この殺人の罪ってのは、善の泉そのものを干上がらせるほど忌まわしい罪なのか?」
「ぼくにとっては、殺人はべつに特別な罪じゃない」と相手が答えた。「あらゆる罪が殺人だよ、あらゆる人生が戦いであるようにね。ぼくが見るところ、きみら人間というやつは、筏(いかだ)の上の餓死しかけた水夫らみたいなものさ。飢えに苦しむ者たちからパン屑をひったくり、たがいの命を食らいあって生きている。ぼくは罪の行為が生じる瞬間だけでなく、その先まで見とどけているんだ。どれを見ても、最後にゆきつくのは死だ。(……)」

   ロバート・ルイス・スティーヴンソン=作
   高松雄一+高松禎子(たかまつ・ていこ)=訳「マーカイム」
   1. 新・ちくま文学の森. 4 / 鶴見俊輔. -- 筑摩書房, 1994.12
   2. 声たちの島 / ロバート・ルイス・スティーヴンソン[他]. -- 国書刊行会, 1989.10.
     -- (バベルの図書館 ; 17)
   引用は 2. に拠りました。


(3) 池 1988
「(……)人殺しの罪とは善の泉を涸(か)らすほど不埒(ふらち)なものだというのか?」
「俺に言わせれば、人殺しは何も特別な罪ではない」悪魔の化身は言った。「人生が戦いであるのと同じで、すべての罪はつまるところ人殺しだ。俺が見るところ、人間どもは筏(いかだ)に乗って漂流する餓(う)えた水夫の一団と変りない。腹を空(す)かした仲間の手からパン屑(くず)を奪い取る。お互いに、他人の命を食いものにする。俺は罪が犯される瞬間よりも、それから後を見届けることにしているのだ。人間、行き着くところは死でしかない。(……)」

   ロバート・L.スティーヴンスン=著
   池央耿(いけ・ひろあき)=訳「マークハイム」
   クリスマス13の戦慄 / I.アシモフ[他]. -- 新潮社, 1988.11. -- (新潮文庫)
   原書:
   The Twelve Frights of Christmas.
   Edited by Isaac Asimov, Carol-Lyn Waugh and Martin Greenberg
   Avon Books, 1986-12


(4) 河田 1975, 1988
「(……)この殺人の罪は、良いことをしようとする元の力を全くなくしてしまうほど、たちの悪いものなんですか?」
「わたしにとって、人殺しは何も特殊な罪悪ではないですよ」と訪問者は言った。「すべての罪悪は人殺しみたいなもんですよ。ちょうど人生が戦争であるようにね。わたしから見れば、あなたたち人間は、いかだに乗って漂流している飢えた水夫たちのようなもんです。水夫たちは飢えた人たちの手からパン屑をひったくり、共食いをしてるんですよ。罪が犯された後どうなるかたどってみると、行きつく先はみんな死ですよ。(……)」

   スティーヴンソン=著 河田智雄(かわだ・ともお)=訳「マーカイム」
   1. スティーヴンソン怪奇短篇集 / 河田智雄. -- 福武書店, 1988.7. -- (福武文庫)
   2. ねじけジャネット. スティーヴンソン短篇集 / スティーヴンソン[他].
     -- 創土社, 1975. -- (ブックスメタモルファス)
   引用は 1. に拠りました。


(5) 高見 1961
 「(……)人殺しの罪は、善の泉を渇らしてしまうほど、それほど深い罪なのだろうか」
 「人殺しなど、私にはなんら特殊なものではありません」相手はこたえた。「罪と名のつくものはすべて人殺しです。生きることが争うことであるのと同じです。私はあなたがた人間が、筏の上で飢えかかっている船乗りのように、お腹のすいている仲間の手からパンの皮をひったくり、たがいに他人の生命を食いものにしているのを見ています。私は罪のゆくえを、その行為自体が終ったあとも追って見ているのです。全部が全部、最後に行きつくところは死です。(……)」

   スティーヴンスン=著 高見幸郎(たかみ・ゆきお)=訳「マークハイム」
   イギリス短篇名作集 / 加納秀夫. -- 学生社, 1961


(6) 龍口 1961, 1977
「(……)殺人をおかすということは、善の泉そのものを涸(か)らしてしまうほど、バチあたりのことなのかね?」
「殺人はわたしにとってとくべつの部門ではありません」と相手は答えた。「すべての罪は殺人です。ちょうどすべての生が戦いであるように。あなたがた人間は、いかだの上で飢えている水夫たちのように、飢餓の手からパンくずをうばいあい、たがいに相手の生命を食い合っているようなものだ、と思っております。わたしは罪の行為が終わった瞬間から、そのあとを追って行くのです。そしてすべては死によって結末を告げると見ているのです。(……)」

   ロバート・ルイス・スティーヴンソン=著
   龍口直太郎(たつのくち・なおたろう)=訳「マークハイム」
   1. 犯罪文学傑作選 / エラリー・クイーン[他]. -- 東京創元社, 1977.5.
     -- (創元推理文庫)
   2. 文芸推理小説26人集. 第2 / エラリー・クイーン[他]. -- 東京創元社, 1961
   引用は 1. に拠りました。


(7) 守屋 1958, 1961, etc.
「(……)この殺人の罪は本当に、善の泉をからしてしまうほど邪悪なものなのか」
「殺人は、私にとっては、別に特殊なものではありません」相手は答えた。「すべての罪は殺人です。ちょうどあらゆる人生が戦いであるように。私は、あなた方人間が、筏の上で飢えている水夫たちのように、飢饉(ききん)の手からパンの皮をうばいあい、お互いの生命を食いあって生きているのをみています。私は罪が犯されたあとになっても、そのあとを追って行きます。そしてすべての場合、その結果は死となって終っているのを見出すのです。(……)」

   スティーヴンソン(2. では、スティーヴンスン表記も)=著
   守屋陽一(もりや・よういち)=訳「マークハイム」
   1. 世界100物語. 2 / サマセット・モーム. -- 河出書房新社, 1996.11
   2. 世界文学100選. 第1 / サマセット・モーム. -- 河出書房新社, 1961.4
   3. 水車小屋のウイル / スティーヴンソン[他]. -- 角川書店, 1958. -- (角川文庫)
   2, の原書:
   Tellers of Tales : 100 Short Stories from the United States, England,
   France, Russia and Germany. Selected by W. Somerset Maugham.
   New York : Doubleday, Doran. 1939
   引用は 2. に拠りました。


(8) 伊藤 1955, 1999
 「(……)この殺人という犯罪は、善の源さえも枯らしてしまうほどに邪悪なものなんですか」
 「殺人とて私にとっては特別なカテゴリーには入らん」と相手は答えた、「すべての犯罪は殺人だ、すべての人生が戦いであるように。私はあなた方の種族を、いかだの上の飢えた水夫みたいだと見ておる、飢餓の乗組員からパン切れを奪い取り、お互にお互の生命を食い合って生きているんだ。私は犯罪をその犯行の瞬間の後までつけてゆくんです、とどのつまり最後の結果は死だということがわかる。(……)」

   R.L.スティーヴンソン=著 伊藤整=訳「マーカイム」
   1. スティーヴンソン作品集. 5 / R.L.スティーヴンソン. -- 文泉堂出版, 1999.3
   2. 世界大衆小説全集. 第1期 第10巻 / 大仏次郎. -- 生活百科刊行会, 1955

   印字のかすれ具合などから見て、1. は新たに活字を組んで出版した本では
   なく、ファクシミリ版、つまり、先行する何かほかの本を複写して製本した、
   複製版だと思われます。さて、2. は未見ですが、国立国会図書館 NDL-OPAC で
   2. の収録作品のラインナップや訳者、ページ数などを 1. のそれと照合すると、
   ぴったり一致します。なので、おそらく 1. は 2. を複製したものなのでしょう。
   ただ、不審なことに、1. の巻末や奥付にその旨の表示はありません。引用は
   1. に拠りました。


(9) 和田 1953
[訳文は追って挿入するつもりです - tomoki y.]

   スティヴンスン=著 和田聖嗣=訳註「マークハイム」
   一夜の宿・マレトロア邸の入口の戸・マークハイム / スティヴンスン[他].
    -- 開文社, 1953. -- (英米文学訳註叢書 ; 第32)


(10) 大橋 1952
「(……)俺の犯した罪は迚も不信心の限りで、善の根源までも涸らして終うと云うのか?」  「殺人は私には別に取り立てゝ云ふ部類に属してはいません」相手は答えた。「凡ての罪は殺人で、凡ての人生が戦争であるのと正に同じです。私が貴方がた人類を見ると、飢餓に迫つた船乘が筏の上に居るのと同様で、飢えた人の手からひからびたパン屑を引つたくつて、お互の生命を喰い合つて居るのです。私はたゞ悪事をする瞬間だけでなく、罪と云う者の跡をつけて行くのですが、凡ての罪は最後の結果は死だと云う事が判かります。(……)」

   スティヴンスン=著 大橋榮三(おおはし・えいぞう)=訳註 「マークハイム」
   壺の怪鬼・マークハイム / R.L.Stevenson[他]. -- 南雲堂, 1952.
    -- (フイニツクス・ライブラリー英和対訳)
   終・飢・餓・迫の旧字は新字で置き換えました。


(11) 武井 1933, 1952, etc.
 「(……)この人殺しの罪は本当に善の泉を渇らすほどに邪悪なものだろうか」。とマークハイムはいった。
 「私にとっては人殺しといっても別に異った種類のものではございません。すべての生活が戰爭であるようにすべての罪が人殺しです。私はあなた方の種族が、筏の上の飢えたる船乘りのように、飢饉の手からパンの片を引ったくってお互の生命を食い合っているのを見受けます。私は罪惡が行われる時刻を越えてまで罪惡についてゆくのです。そうして行ってみるとすべて最後の結果は死である事を知ってます。(……)」

   スティーヴンソン (R.L.Stevenson)=著 武井亮吉(たけい・りょうきち)=訳註
   「マークハイム」
   1. マークハイム / R.L.Stevenson[他]. -- 研究社出版, 1978
     -- (研究社新訳註叢書)
   2. マークハイム / R.L.Stevenson[他]. -- 研究社出版, 1952.12
     -- (研究社新訳註叢書 ; 第27)
   3. 研究社英文訳註叢書. 第37 マークハイム・水車小屋のウイル / 研究社.
     -- 研究社, 1933(昭和8)


(12) 谷崎 1929
 「(……)この殺人の罪は、善の泉を涸(か)らしてしまふ程汚(けが)れた物かね?」
 「殺人は私に執つて何も特別の範疇(はんちう)ぢやない。」と相手は答へた。「凡ての罪惡は殺人だ。凡ての生活が戰爭であるやうにね。私は君たち人間が筏(いかだ)の上で餓死しかゝつた水夫たちのやうに、餓(う)ゑた者の手からパンのかけらを毟*(も)ぎ取り、互ひに他の生命を餌食(ゑじき)にしてゐるのを見る。私は罪惡の行はれた瞬間の先まで跡をつけて行く。そして何(いづ)れも最後の結果は死だ。(……)」

   スティヴンスン=作 谷崎精二=譯「マークハイム」
   世界文学全集. 第36巻. 近代短篇小説集. -- 新潮社, 1929.7(昭和4)
   * 注:原文は「毟」に手偏の付いた別字。


■英語原文 The original text in English

“( . . . ) and is this crime of murder indeed so impious as to dry up the very springs of good?”

“Murder is to me no special category,” replied the other.

“All sins are murder, even as all life is war. I behold your race, like starving mariners on a raft, plucking crusts out of the hands of famine and feeding on each other’s lives. I follow sins beyond the moment of their acting; I find in all that the last consequence is death ( . . . )”

   Markheim (1885) by Robert Louis Stevenson
   Recent paperback editions include:

   E-text at:


■邦題の異同 Variations of the title translated into Japanese

  「マーカイム」…………………………tomoki y. 2008
  「マーカイム」…………………………高松+高松 1989, 1994, 2011
  「マーカイム」…………………………池 1988
  「マーカイム」…………………………河田 1975, 1988
  「マーカイム」…………………………伊藤 1955, 1999
  「マークハイム」………………………龍口 1961, 1977
  「マークハイム」………………………高見 1961
  「マークハイム」………………………守屋 1958, 1961, 1996
  「マークハイム」………………………和田 1953
  「マークハイム」………………………武井 1933, 1952, 1978
  「マークハイム」………………………谷崎 1929
  「マークハイム」(道具屋殺し)……大橋 1952


■著者名の日本語表記の異同
 Transliteration variations of the author's name in Japanese

  スティーヴンスン……池 1988
  スティーヴンスン……高見 1961
  スティーヴンスン……守屋 1961(目次)
  スティーヴンソン……tomoki y. 2008
  スティーヴンソン……高松+高松 1989, 1994, 2011
  スティーヴンソン……河田 1975, 1988
  スティーヴンソン……龍口 1961, 1977
  スティーヴンソン……守屋 1958, 1961(本文・作者小伝), 1996
  スティーヴンソン……伊藤 1955, 1999
  スティーヴンソン……武井 1933, 1952, 1978
   スティヴンスン……和田 1953
   スティヴンスン……大橋 1952
   スティヴンスン……谷崎 1929


■外部リンク External links

 
 
■更新履歴 Change log

  • 2013/06/14 大橋榮三=訳註 1952 の訳文を挿入し、書誌情報を修正しました。
  • 2009/02/07 伊藤整=訳 1999.3 を追加しました。
  • 2009/01/25 武井亮吉=訳注 1933, 1952, etc. を追加しました。


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