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Saturday, 27 December 2008

The Riddle by Walter de la Mare (2) ウォルター・デ・ラ・メア 「不思議な話」「謎」「なぞ」「なぞなぞ」(2)

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■表紙画像と肖像写真 Cover photos and a portrait

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a. De_la_mare_collected_stories_for_ch b. The_riddle_and_other_stories c. 123690045820c803


■はじめに Introduction

おばあさんの家に越して来た7人の幼い兄弟姉妹たちは、ひとり、またひとりと姿を消していく。物語の謎めいた結末。


■日本語訳 Translations into Japanese

(1) 金原 2012
しかし遠くはみえなかった。目が悪いし、日の光も弱い。秋の枯葉(かれは)のようなかすかな香(かおり)にも気がつかなかった。しかし頭の中では思い出がもつれてからまっていて……笑い声や涙(なみだ)、昔の子どもたち、友人との出会いと別れ。おばあさんはいきなり、わけのわからないことをつぶやいたかと思うと、階段(かいだん)を下りて窓際(まどぎわ)の椅子(いす)のところにもどっていった。

   ウォルター・デ・ラ・メア=作 金原瑞人(かねはら・みずひと)=訳
   「不思議な話」 金原瑞人=編訳 『南から来た男 ホラー短編集 2
   岩波少年文庫 2012/07/18 所収


(2) 柴田 2009
でも視力が弱っていたし、日の光も弱まっていたから、遠くは見えなかった。それに、秋の落葉のような、かぐわしいかすかな香りも彼女には感じとれなかった。けれど、心のうちでは、いろんな記憶が、こんがらがった糸のようにもつれあっていた。笑いと涙、もうずっと昔に時代遅れになった姿の子供たち、友人の到来、最後の別れ。そして、自分を相手に、切れ切れの、言葉もはっきりしない噂話を交わしながら、お祖母さんは階段を降りて、張り出し窓の前に戻っていった。

   ウォルター・デ・ラ・メア=作 柴田元幸=訳 「謎」
   『昨日のように遠い日―少女少年小説選』 文藝春秋 2009/03/25 所収


(3) tomoki y. 2008
ところが、おばあさんには遠くが見えませんでした。目が悪かったし、日の光も弱かったからです。秋の木の葉のような、かすかな香りがただよっているのにも、気がつきませんでした。けれども、その心のなかには、いろいろな思い出がからまりあっていました。笑ったこと、泣いたこと、遠いむかしに子どもだった者たちが年老いてしまったこと、友だちとの出会い、そして永久(とわ)の別れ。ぶつぶつと独りごとを言いながら、おばあさんは窓際の椅子にもどって行きました。

   ウォルター・デ・ラ・メア=作 Tomoki Yamabayashi=訳 「なぞ」
   tomokilog - うただひかるまだがすかる, 2008/12/27


(4) 柿崎 2008
けれどおばあさまは眼がよく見えなかったし、日の光も弱かったので、遠くのほうを見ることはできませんでした。秋の木の葉のような、かすかな良い匂いさえ感じとることができなかったのです。それでもおばあさまの心のなかでは沢山の思い出、笑い声や涙、そしてずっと昔のこととなった子供たち、友達との出会いや、最後の別れなどがもつれあい、からみあっていたのです。そうして老婦人は、思い出したように何言かつぶやくと、窓際の椅子のところへ再び降りていきました。

   ウォルター・デ・ラ・メア=作 柿崎亮=訳 「謎」
   『デ・ラ・メア幻想短篇集』 国書刊行会 2008/05 所収


(5) マクワガ 1997
でも、眼(め)はかすんでいたし、もう日の光も弱くて、あまり遠くは見えませんでした。ほのかに、秋の葉のにおいがただよっているのにも気がつきませんでした。けれど頭の中には、もつれた糸のような、さまざまな記憶(きおく)がひしめきあっていました——わらい声や涙(なみだ)、いまはもう、むかしふうになってしまったあのころの子どもたち、それから、新しくきたおおぜいの友だち、そして何度もかわした別れの数々——。それからおばあさまはぶつぶつと、意味のとれないことばをつぶやきながら、ご自分の窓辺(まどべ)の椅子(いす)へともどっていきました。

   ウォルター・デ・ラ・メア=作 マクワガ葉子=訳
   津田真帆(つだ・まほ)=絵 「なぞなぞ」
   『デ・ラ・メア物語集2』 大日本図書 1997/04 所収


(6) 紀田 1979, 2002, etc.
 でもお婆さんの眼はとてもわるく、遠くのほうはなにも見えないのでした。窓のあかりも、もう暗すぎました。だから、秋の木の葉にも似た、かすかな香りにも気づかなかったのです。
 とはいえ、彼女の胸の中には、さまざまな思い出がたくさんしまわれてあるのでした。喜びも悲しみも、そしていまは老いた身の幼かりしころの思い出、やがてお友だちができたが、いつか、それとも永(なが)のおわかれをしてしまったこと……。
 このような思い出を、とぎれがちな回らぬ舌で、ぶつぶつひとりごとに出しながら、お婆さんはもう一度、あの窓ぎわのいすへともどっていくのでありました。

   W・デ・ラ・メア=作 紀田順一郎=訳 「なぞ」

   引用は b. 光文社 2002/11 に拠りました。


(7) 井村 1977
だがもはや遠くは見えず、視力はぼんやりとして、陽(ひ)の光さえかすかに見えるだけであった。それに秋の木の葉のようなかすかな匂いは、最早や嗅ぎ分けることすら出来ないのであった。だが心の中には、いろいろな思い出が、糸のように絡み合っていた——かずかずの笑いと涙、それにもう、今となっては昔のことになってしまった子供たちのこと、また友達との出会いや、永久(とわ)の別れのことなど、さまざまな思い出が——。そして、ぶつぶつと聞き分けにくい声でなにかをつぶやきながら、階下に降りてゆき、また再び、もとの出窓の席へと戻って行くのだった。

   ウォルター・デ・ラ・メア=作 井村君江=訳 「謎」
   『幽霊奇譚』 牧神社 1977/12 所収
   この本は、主要オンライン書店の目録や国立国会図書館 NDL-OPAC には
   掲載されていないようです。書誌情報の詳細を知るには、つぎの各サイトが
   たいへん参考になります:


(8) 河野 1977
ですが、遠くまでは見えませんでした——もう目がかすんでいましたし、日の光も弱かったからです。秋の木(こ)の葉のような、あのかすかな匂いにも気づきませんでした。しかしおばあさんの心のなかでは、笑いや涙、今はもう古い思い出になってしまった小さな子どもたちや、友だちとの出会(であ)い、そして長い別れなど、思い出の糸がもつれ、からみ合っていました。そして自分(じぶん)を相手に、はっきり聞きとれないことをきれぎれにつぶやきながら、おばあさんはまた階段をおりて、出窓のところへもどりました。

   デ・ラ・メア=作 河野一郎(こうの・いちろう)=訳 「なぞ」
   『魔法のジャケット』 旺文社ジュニア図書館 1977/07 所収


(9) 脇 1976
[訳文は追って挿入するつもりです - tomoki y.]

   ウォルター・デ・ラ・メア=著 脇明子=訳 橋本治=絵 「謎」
   『アリスの教母さま』 ウォルター・デ・ラ・メア作品集 1
   牧神社 1976/08 所収


(10) 鈴木 1975, 1980
だが、たいして遠くまで見えはしないのだ。おばあちゃまの目はすっかりかすんでいたし、昼間の陽の光りすら弱すぎるのだった。そればかりか、秋の落ち葉のようなかすかな香りなどかぎわけられなくなっていた。だが、彼女の心のなかには、思い出という一かせのもつれた糸がのこっていた。——笑いさざめいたときや涙にくれたとき、そしていまでは時代おくれの服を着こんだこどもたちの姿、友人たちの訪ないと長い別れ。とぎれがちに、もぐもぐとひとりごとをつぶやきながら、おばあちゃまはふたたび出窓の椅子へともどっていったのだった。

   ウォルター・デ・ラ・メア=作 鈴木説子=訳 「謎」

  • 中田耕治=編 『恐怖の1ダース』 講談社文庫 1980/08 所収
  • レイモンド・チャンドラー[ほか]=著 中田耕治=編 『恐怖の1ダース』 発行:出帆社 発売:路書房 1975/09 所収

   引用は b. 路書房 1975/09 に拠りました。


(11) 野上 1956
しかしおばあさんは、遠くのほうは見えなかった。目がすっかりかすんでしまい、今では昼間(ひるま)の光りでも弱(よわ)すぎるほどだったから。それに、あの秋草の葉(は)のようなほのかなかおりもかぐことはできなかった。だが、その心には、かずかずの思い出がもつれあっていた。笑(わら)い声や涙(なみだ)や、今はもう流行(りゅうこう)おくれの衣装(いしょう)をつけた子どもたちや、友だちとのめぐりあいや長いわかれの、さまざまな思い出……
 やがておばあさんは、いきなりもぐもぐとひとりごとを言いながら、またいつものはりだし窓のところへ、そろそろとおりて行った。

   デ・ラ・メア=作 野上彰(のがみ・あきら)=訳 「なぞ」
   『世界少年少女文学全集34 イギリス編6』 創元社 1956/08 所収


(12) 柳田 1925
だがお祖母さまは遠くまでは見透すことが出來なかつた、何故ならお祖母さまの眼はぼんやりして、日の光が弱かつたからであつた。それにあの秋の木葉のやうなかすかな香ひを嗅ぎつけることも出來なかつた。だがお祖母さまの心には追憶の入り亂れた こがらかり があつた――笑ひと涙、今は爺さま婆さまになつた小さな子供たち、それから友達の到來、長い告別があつた。發作にかゝつたやうに、何かぼそぼそと獨りでお饒舌しながら、この年寄りの貴女は、また階下の張出し窓のところに下りて行くのであつた。

   ウオールタア・デ・ラ・メエア=作 柳田泉=譯 「謎」
   『英吉利近代傑作集 世界短篇小説大系 英吉利篇(下)
   近代社 1925/07(大正14)所収 この本の内容詳細は ここ
   太字箇所「こがらかり」は原文では太字ではなく傍点。


■英語原文 The original text in English

But she could not see far, because her sight was dim and the light of day feeble. Nor could she detect the faint fragrance as of autumnal leaves. But in her mind was a tangled skein of memories—laughter and tears, and children long ago become old-fashioned, and the advent of friends, and last farewells. And gossiping fitfully, inarticulately, with herself, the old lady went down again to her window-seat.

   The Riddle by Walter de la Mare
   E-text at:


■更新履歴 Change log

  • 2013/06/18 金原瑞人=訳 2012/07/18 を追加しました。
  • 2009/08/07 柴田元幸=訳 2009/03 を追加しました。
  • 2009/03/22 柳田泉=訳 1925/07 を追加しました。
  • 2009/01/30 脇明子=訳 1976/08 の書誌情報を追加しました。訳文は追って挿入するつもりです。
  • 2009/01/11 井村君江=訳 1977/12 を追加しました。

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