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Wednesday, 07 January 2009

Stevenson and the Fleeming Jenkins by James Alfred Ewing ジェームズ・アルフレッド・ユーイング「スティーヴンスンとフレミング・ジェンキン家の人々」

■はじめに Introduction

前回の記事 では、エディンバラにおける四人の男たちの邂逅(かいこう)について紹介した。ロバート・ルイス・スティーヴンスンが、吉田松陰についてのおそらく世界最初の伝記を執筆するきっかけとなった晩餐についてである。今回は、このおなじ出会いの場を、その場にいあわせた、スティーヴンスンの大学の後輩ジェームズ・アルフレッド・ユーイングのがわから覗いてみる。ユーイングの回想は、ロザリン・マッソン編『アイ・キャン・リメンバー・ロバート・ルイス・スティーヴンスン』に収録されている。スティーヴンスンの死後、彼を追悼するためにまとめられた本である。


 Images 
表紙・肖像画その他 Cover photos, portraits, etc.

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a. Yoshida_shoin_zo b. Fleeming_jenkin c. Masaki_taizo

d. Monogataru_hito_tusitala e. James_alfred_ewing f. John_moffat_rl


■日本語訳 Translations into Japanese

(J1) tomoki y. 2009
ルイスと最後に会ったのは、私の記憶するかぎり1878年夏だった。ジェンキンがルイスと私の二人を夕食に招いてくれたときのこと。ジェンキンの目的は、われわれを正木退蔵という人物に引き会わせることだった。正木氏は日本の官僚。東京大学教授の適任者を求めてエディンバラへ来て、この私に目をつけたのだった。正木氏は吉田寅次郎という、日本の維新初期の英雄の逸話をわれわれに語った。愛国と冒険、苦難と挫折の物語だった。ルイスは深く心を揺さぶられた。メモを取り、のちに正木氏に補足を依頼した。こうしてできあがった短篇は、ほかならぬルイスでなくては書けないような作品となった。ルイスは若い吉田が投獄され、じきに処刑されるに至ったとき耳にした漢詩の詩句が、いかに深く吉田の心に刻まれたかを描写している。

 大丈夫寧(むし)ろ玉砕すべく
 何ぞ能(よ)く瓦全(がぜん)せん

これらの詩句は、ひょっとすると、スティーヴンスンを魅了して、彼自身の短い生涯にもふさわしい座右の銘となったのだろうか?

  

(J2) よしだ 2000
「私にとって、ルイスとの思い出は、最後に彼に会った1878年のある夏の思い出である。
 それは、ジェンキンが私とルイスを、東京大学の教授となる人物を探し求めてエディンバラにやってきた日本の官吏、マサキ・タイソウ氏に会わせるために夕食に招待してくれた時で、マサキ氏が私に白羽の矢を立てた時のことである。
 マサキ氏は私たちに、日本の革新時代の初期の英雄、ヨシダ・トラジロウの話をした。
 それは愛国と冒険・苦闘の連続と、希望と挫折の物語であった。
 ルイスは深く感動した。
 彼は、その話を書き留め、後にマサキ氏に補足してもらい、ついにルイスにしか書けなかった物語を書き残した。
 その中で、彼は牢獄の中で若いヨシダがまもなく処刑されるという時に、この古典の詩の言葉を聞いて、いかに勇気づけられたかを語っている。
 大丈夫寧ろ玉となりて砕くべし
 瓦となりて全うすること能ず
 この言葉が、スティーヴンスンを魅惑して、彼のモットーになり、彼自身の短い生涯をもたらしたのではなかろうか」


■英語原文 The original text in English

The last meeting with Louis that I recollect was in the summer of 1878, when Jenkin asked us both to dinner to meet Mr Taiso Masaki, a Japanese official who had come to Edinburgh in search of a professor for the University of Tokyo and had swept me into his net. Mr Masaki told us the story of an early hero of the Japanese renaissance Yoshida Torajiro a story of patriotism and adventure, of sustained struggle and frustrated hopes. Louis was deeply stirred. He made some notes, got Mr Masaki to supplement them later, and finally wrote the story out as no one but he could have done. He tells there how the young Yoshida, when in prison and soon to be led to execution, took heart on hearing the words of the classic poem :

 It is better to be a crystal and be broken,
 Than to remain perfect as a tile upon the housetop.

Did these words, I wonder, appeal to Stevenson as a motto which might have application to his own short life?


■「玉砕」について - tomoki y. のコメント

第二次大戦中に、日本国民自身をあざむき、連合国をおそれさせた「玉砕」という観念。これに、19世紀後半のスコットランドの新進作家が感激していたという事実が興味深い。ただし、唐代に書かれた『北斉書』という歴史書に由来するその詩句の意味を、正木がどれだけ正確にスティーヴンスンに伝えたかはわからない。また、スティーヴンスンがどれだけ深く理解したかもわからない。いや、そもそもわれわれ21世紀初頭に生きる日本人が、「玉砕」という言葉について、かつて大本営発表がもちいた用語法以外にどれだけ知っているかも問題なのだが。


■外部リンク External links


■更新履歴 Change log

  • 2009-06-29 黒川清氏の関連ブログ記事へのリンクが間違っていたので訂正しました。失礼しました。
  • 2009-06-28 外部リンクの項に黒川清氏の関連ブログ記事「タヒチ-4 (吉田松陰のこと)」へのリンクを追加しました。黒川氏はその記事の中で私のこのページをご紹介くださいました。感謝。

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