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Monday, 05 January 2009

Yoshida-Torajiro by Robert Louis Stevenson スティーヴンスン / スティヴンソン / ステイヴンスン 「吉田寅次郎」「ヨシダ・トラジロウ」

           目次 Table of Contents

   ■エディンバラの夕べ——はじめに An evening in Edinburgh: Introduction
   ■正木と松陰とスティーヴンスン
    Images  ポスター, 表紙, 肖像, その他 Poster, cover, portraits, etc.
   ■日本語訳 Translations into Japanese
     (J1) tomoki y. 2009
     (J2) よしだ 2000
     (J3) 町田 1974
     (J4) 斎藤 1958
     (J5) 工藤 1954, 1966
     (J6) 梶木 1953
     (J7) 柴 1934
    Video 1  NHK大河ドラマ 『花燃ゆ』 (2015)
    Video 2  NHKテレビ 『その時 歴史が動いた』 (2003)
    Video 3  NHK大河ドラマ 『花神』 (1977)
   ■英語原文 The original text in English
   ■外部リンク External links
   ■更新履歴 Change log


■エディンバラの夕べ——はじめに An evening in Edinburgh: Introduction

1878(明治11)年夏ごろ、スコットランドのエディンバラ大学土木工学科の教授フレミング・ジェンキン (Fleeming Jenkin) の家で、4人の男が夕食を共にした。その4人とは、正木退蔵(まさき・たいぞう)、ロバート・ルイス・スティーヴンスン、ジェームズ・アルフレッド・ユーイング (James Alfred Ewing)、そしてジェンキン自身。

正木は長州出身。幕末期に13歳で松下村塾最後の門下生の一人となり、短い間ながら吉田松陰に師事した。明治維新後イギリスに留学して帰国。その後1876年に官吏として再渡英。留学生を監督したり、東大などにお雇い教師を招聘(しょうへい)する目的で、ロンドンやエディンバラを訪問中だった。

スティーヴンスンは作家志望で、土木工学の勉強を怠けてはいたが、ジェンキン教授の教え子だった。また、教授とアマチュア演劇の愉しみを分かち合う間柄でもあった。ジェンキン家は、エディンバラのヘリオット・ロウ17番地にあるスティーヴンスン家から歩いて3〜4分のところにあった。

ユーイングはスティーヴンスンの大学の後輩。ジェンキンの愛弟子だった。ジェンキンは正木に、この有望な若者ユーイングを紹介するつもりで、二人を同席させたのだった。目論見は当たった。ユーイングは後に東大教授として来日し、日本の物理学、磁気学、地震学などの発展に寄与した。


■正木と松陰とスティーヴンスン

さて、正木はこの夕食の席でジェンキンとスティーヴンスン、ユーイングとの間の良き師弟愛を目の当たりにして、松陰を思い出したらしい。3人のスコットランド紳士のまえで、自らの師であった人のことを熱く語った。安政の大獄による松陰の刑死からすでに20年近くも後のことである。正木の熱弁が約1年後、スティーヴンスンに、吉田松陰(通称:寅次郎)についての短い伝記を書かせるきっかけとなった。運命の出会いの場となった夕食のとき、正木33歳、スティーヴンスン27歳、ユーイング23歳、ジェンキン45歳。

なお、正木との出会いから執筆までの1年のブランクに、スティーヴンスン本人にも、恋人を追ってカリフォルニアに渡るなどの大ドラマがあった。それは寅次郎伝の筆致にも影響をおよぼしている。が、詳細はここには書ききれない。


 Images 
ポスター, 表紙, 肖像, その他 Poster, cover, portraits, etc.

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a. Stevenson_yoshida_shoin b. Yoshida_retsuretsutaru c. 225pxjames_alfred_ewing

d. 17_heriot_row_edinburgh_2 e. Familiar_studies_men_books


■日本語訳 Translations into Japanese

(J1) tomoki y. 2009
 そして自己の使命を思うと、吉田は他の者なら挫(くじ)けてしまうようなことに、かえって奮い立つのであった。吉田が軍備理論を講義したとき、彼の念頭にあったのは、第一に日本の国防であった。日本は外からの攻撃に弱い。このことを吉田は、日本人よりも力の強い毛唐たちの振る舞い、あるいは毛唐たちの巨大な軍艦の来訪を例に挙げて説いた。日本は包囲されていた。こうして、吉田の愛国心は、自滅ともいうべき形をとった。すなわち、彼は愛国心でもって強力な外国人たちを排斥しようとした。それが、かえって外国人の招来を助長する結果となってしまった。そのことが今日では彼の主要な功績の一つとされているのだ。


(J2) よしだ 2000, 2009
 そしてヨシダは、他の人なら落胆してしまうようなことでも、達成しようとする目的のために勇気を奮い起こすことのできる人物であった。彼が兵学の理論を講じたときに、彼の頭の中に、第一にあったのは日本の防備ということであった。
 日本の国は外からの攻撃に対して弱体であった。それは外国の大きな軍艦の艦隊がやってきて、日本を軍事力で包囲したやり方を見れば、当時、夷人(いじん)たちが日本に対していかに優勢であったかということがよく分かる。
 しかし、ヨシダの愛国主義は、まったくくつがえされたともいえる形をとるのだ。
 彼は、これらの優勢な列強の夷人たちを愛国心でもって追い払おうとした。しかし、その行為が、かえって彼らの文化を導き入れることに役立った。それが現在の日本の新しい時代にとって、彼の功績の一つにさえなっている。


(J3) 町田 1974
 他人なら落胆したようなことでも、そのためにかえって、吉田は仕事に対し情熱をかきたてたのだ。兵学を講じたとき彼の心を占めていたのは、第一に日本の防備であった。日本の対外的な弱さは、跋扈(ばっこ)する夷人(いじん)の態度や巨大な夷敵の軍艦の来訪をみれば明白なことであった。日本は包囲された国であった。かくして、吉田の愛国心は、みずから失敗を招いたといわれるような形をとった。これらのきわめて強力な夷人を打ち払おうと考えたが、かえって夷人を招じ入れることに役立ったことが、今では、彼の功績の一つになっているのである。

  • スティヴンソン=著 町田晃=訳 「吉田寅次郎」 山口県教育会=編 『吉田松陰全集 別巻』 大和書房 1974/11

(J4) 斎藤 1958
他人ならば気がくじけたであろうような事が、松陰をふるい立たせて、仕事に向かわせたのである。兵法論を教授している時に、彼の心を占めていたものは、何よりもまず日本の防備であった。日本の対外的な脆弱さは、傍若無人な異国野蛮の徒の態度や、彼等の大きな軍艦の来航などの例をみても当時はハッキリしていた。日本はいわば、敵にとりかこまれた国であった。かくして松陰の愛国心は自ら敗北したともいうべき形をとった。彼はこれらの列強を寄せつけてはならぬと考えていた。しかるに今では彼はこれらの列強を招き入れるのに一役買ったことが、彼の主な功績の一つに数えられているのである。


(J5) 工藤 1954, 1966
余人ならば、必ず絶望したであろうことがらは、彼をして、かえって、その使命に向って勇躍せしめたのである。彼は軍学の師範であったために、彼の心を支配したものは、まず国防問題であった。日本の国防的無力さは、侵略洋夷(い)の行動と彼らの率いる大艦隊の来航によって実証された。日本は全く外敵の包囲を受けた国家であった。かくの如く吉田の愛国心はそれ自らを失敗せしめたと言える形をとった。彼らは向うところ敵なき洋夷の侵略を防ぐことが愛国主義と信じたのであった。この洋夷のことがらについて国内に紹介したことは、今日では彼の功績の一つとして数えられているのである。

  • R. L. Stevenson=著 工藤直太郎=訳注 「吉田寅次郎」
  • b. は抜粋訳。引用は a. 大学書林版 1966 に拠りました。

(J6) 梶木 1953
そして他人であれば失望したようなことが、吉田の元気をふるいおこさせ彼に仕事をさせたのであった。彼が兵学の説を上申した時には、彼の心中にあったのは、第一に日本の防衛であった。日本が外国に対して非常に脆いことは、夷狄の人々が蹂躙している様子によっても例証されたし、また、外国の大きな黒船の来寇によっても例証された。日本は諸外国によって包囲されていたのであった。このようにして、吉田の愛国心は、その愛国心には副わないとも言えるような形をとったのである。すなわち、彼はこれらの強力な外国人を防ぐことを念願していたが、その外国人を国内に紹介するのにあずかって力があったことが、今では彼の主要な功績の一つになっているからである。


(J7) 柴 1934
他の人をなら落膽させただらうと思ふやうな事が、吉田を仕事に身を入れさせた。彼が兵學を講じた時、彼に餘念なからしめたものは、先づ第一に、日本の國防であつた。此の國が外部的に無氣力であつたといふ事は、我物顏の夷狄の態度と、巨大な夷狄の軍艦の來訪とで、其の當時、例證された。日本は、包圍された國であつた。斯くの如くにして、吉田の愛國心は成り立つた。が、其の成り立ちは其のものを挫折せしめたと言はれるかも知れない。ち、彼は、此等の全く有力な外國人を追ひ拂ふ事を以て事とした。が、其の外國人を紹介する助となつたといふ事は、今や彼の重な功蹟の一つともなつて居る。

  • ステイヴンスン=著 柴孝平(しば・こうへい)=譯註 「吉田寅次郎」 『随筆集』 外語研究社 1934/05(昭和9) 英文併記
  • 上の著者名は扉の表記に拠る。奥付ではスティーヴンスンと表示。

 Video 1 
NHK大河ドラマ 『花燃ゆ』 (2015)

出演: 井上真央(杉文)、伊勢谷友介(吉田寅次郎)、大沢たかお(小田村伊之助)、高良健吾(高杉晋作)ほか。 Uploaded to YouTube by NHKonline on 4 Jan 2015.


 Video 2 
NHKテレビ 『その時 歴史が動いた』 (2003)
幕末立志伝 今こそ変革の時 〜吉田松陰・久坂玄瑞・高杉晋作の挑戦〜

【死の一年前、吉田松陰が弟子に向けておくった詩】
立志尚特異 俗流與議難 不思身後業 且偸目前安 百年一瞬耳 君子勿素餐

志を立てるためには人と異なることを恐れてはならない
世俗の意見に惑わされてもいけない
死んだ後の業苦(ごうく)を思いわずらうな
また目前の安楽は一時しのぎと知れ
百年の時は一瞬にすぎない
君たちはどうかいたずらに時を過ごすことのないように

  • Original broadcast: 12 March 2003. Uploaded to YouTube by karate2011bu on 3 Mar 2013.

 Video 3 
NHK大河ドラマ 『花神』 (1977)

出演: 篠田三郎(吉田寅次郎)、中村雅俊(高杉晋作)、志垣太郎(久坂玄瑞)ほか。 Uploaded to YouTube by tysevenstars on 9 Aug 2010.


■英語原文 The original text in English

( . . . ) and what would have discouraged another braced Yoshida for his task. As he professed the theory of arms, it was firstly the defences of Japan that occupied his mind. The external feebleness of that country was then illustrated by the manners of overriding barbarians, and the visit of big barbarian war ships: she was a country beleaguered. Thus the patriotism of Yoshida took a form which may be said to have defeated itself: he had it upon him to keep out these all-powerful foreigners, whom it is now one of his chief merits to have helped to introduce ( . . . )


■外部リンク External links


■更新履歴 Change log

  • 2015/04/20 梶木隆一=訳註 1953-11-30 を追加しました。また、工藤直太郎=訳注の書誌情報を補足しました。
  • 2015/01/29 NHK大河ドラマ 『花燃ゆ』 の年について誤記していたのを訂正しました。正しくは2015年です。
  • 2015/01/05 NHK大河ドラマ 『花燃ゆ』 (2014) の YouTube 動画を追加しました。また、よしだみどり=著の書誌情報を補足しました。
  • 2014/11/10 NHK大河ドラマ 『花神』 (1977) の YouTube 動画を追加しました。
  • 2013/07/09 目次を新設しました。
  • 2013/06/28 斎藤美洲=訳註 1958/11/25 の訳文を挿入しました。
  • 2013/06/26 斎藤美洲=訳註 1958/11/25 の書誌情報を追加しました。訳文は追って挿入します。
  • 2010/11/12 NHKテレビ『その時 歴史が動いた』の YouTube 動画を追加しました。
  • 2009/02/24 柴孝平=譯註 1934/05 を追加しました。
  • 2009/01/30 工藤直太郎=訳注 1966/09 を追加しました。

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Comments

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