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Wednesday, 04 February 2009

A Bit of Luck for Mabel by P.G. Wodehouse P・G・ウッドハウス/ピー・ジー・ウォドハゥス/ウオドハウス「メイベル危機一髪」「メイベルの小さな幸運」「彼女の幸運」

■Jeeves & Wooster - Minnie the Moocher

Jeeves & Wooster, a British TV series (1990-1993) adapted from P.G. Wodehouse's Jeeves stories, It starred Stephen Fry as Jeeves and Hugh Laurie as Bertie Wooster. More information at the following websites:

   * Jeeves and Wooster (1990) - IMDb
   * Jeeves and Wooster - Wikipedia
   * Minnie the Moocher - Wikipedia


■Minnie the Moocher lyrics 「ミニ・ザ・ムーチャ」歌詞

- Cab Calloway Lyrics


■日本語訳 Translations into Japanese

(1) 岩永+小山 2008
「なあ、相棒。人生って妙なもんだな」
 それまでソファにじっと横になっていたユークリッジが、天井を向いたまま言った。こっちは、てっきり眠り込んだと思っていた。柄になく静かだったのは、睡眠中でなく思索中だったわけだ。
「まったく、奇妙奇天烈(きてれつ)だ」
 ユークリッジは上半身を起こして窓から外を見た。僕が借りている田舎コテージの居間からは、遠くの木立まで広がる芝生が見える。世界が目を覚ましつつある気配が、窓を通して忍び込んできた。ひんやりとした微風は、夏の夜明けが間近い証拠だ。
「うへっ!」腕時計を見て僕が叫んだ。「きみの長話で、とうとう徹夜じゃないか」
 ユークリッジは答えなかった。(……)

   P・G・ウッドハウス=著
   岩永正勝(いわなが・まさかつ)+小山太一(こやま・たいち)=訳
   「メイベル危機一髪」
   『ユークリッジの商売道』P・G・ウッドハウス選集4
   文藝春秋 2008/12


(2) 森村 2008
「人生ってのはさ、なあ」ユークリッジが言った。「とっても変だな」
 奴はしばらく黙ったまま、顔を天井に向けてソファに仰向けに寝そべっていた。だから僕は奴は眠っているんだと思っていた。だが今や、奴には稀(まれ)な沈黙をもたらしたのは、眠りではなく思考であったことがわかった。
「とても、とっても変だ」
 奴は身体を起こすと、窓の外を眺(なが)めやった。僕が田舎に借りているこのコテージの居間の窓は、雑木林(ぞうきばやし)に囲まれた芝生の広がりを見下ろしている。そして今、この窓を抜け、目覚めつつある外界から、夏の日の夜明けを告げる涼風が吹き入ってきた。
「なんてこった!」時計を見て僕は言った。「お前、僕を一晩しゃべらせて起こしてたってことがわかってるのか?」
 ユークリッジは答えなかった。(……)

   P・G・ウッドハウス=著 森村たまき=訳「メイベルの小さな幸運」
   『エッグ氏、ビーン氏、クランペット氏』ウッドハウス・スペシャル
   国書刊行会 2008/04


(3) 梶原 1926, 1927, etc.
『人生なんて妙なものだなァ。』とアクリッジが言つた。
 それまでソファに凭れ込んで天井を向いたままおとなしくしてゐたので、てつきり居眠りしてゐるものと思つてゐたのだが、してみるとめづらしくひつそりしてゐたのは敢て居眠りをしてゐたわけではなく、何か瞑想に耽つてゐたものとみえる。
『實に實に妙なものだ。』
 アクリッジは立ち上つて窓の外を見た。私の借りてゐる田舎家の窓からは廣い芝生のその向ふにちよつとした林が見えるのだ。ところでその窓から、夏の夜明けを告げる涼しい風がスーとながれ込んできた。
『冗談ぢやない! 一晩僕を寢せない氣かい?』と、私は懐中時計を見ながら言つてやつた。
 アクリッジは返事をしなかつた。(……)

[原文は次のとおり総ルビ]
『人生(じんせい)なんて妙(めう)なものだなァ。』とアクリッジが言(い)つた。
 それまでソファに凭(もた)れ込(こ)んで天井(てんじやう)を向(む)いたままおとなしくしてゐたので、てつきり居眠(ゐねむ)りしてゐるものと思(おも)つてゐたのだが、してみるとめづらしくひつそりしてゐたのは敢(あへ)て居眠(ゐねむ)りをしてゐたわけではなく、何(なに)か瞑想(めいさう)に耽(ふけ)つてゐたものとみえる。
『實(じつ)に實(じつ)に妙(めう)なものだ。』
 アクリッジは立(た)ち上(あが)つて窓(まど)の外(そと)を見(み)た。私(わたし)の借(か)りてゐる田舎家(ゐなかや)の窓(まど)からは廣(ひろ)い芝生(しばふ)のその向(むか)ふにちよつとした林(はやし)が見(み)えるのだ。ところでその窓(まど)から、夏(なつ)の夜明(よあ)けを告(つ)げる涼(すゞ)しい風(かぜ)がスーとながれ込(こ)んできた。
『冗談(じようだん)ぢやない! 一晩(ばん)僕(ぼく)を寢(ねか)せない氣(き)かい?』と、私(わたし)は懐中時計(くわいちうどけい)を見(み)ながら言(い)つてやつた。
 アクリッジは返事(へんじ)をしなかつた。(……)

   ピー・ジー・ウォドハゥス=著 梶原信一郎(かじわら・しんいちろう)=譯
   「彼女の幸運(かのぢよのかううん)」
   3a.「新青年」復刻版 大正15年 第7巻 合本5 第9号・第10号
     第3期第1回配本(大正15年分)本の友社 1998/09
   3b. ウツドハウス=著 梶原信一郎=訳
     『どもり綺譚』 博文館〈新青年叢書〉1929(昭和4)
   3c. 欧米名作家=著 森下雨村=編
     『怪奇探偵 探偵名玉集』探偵傑作叢書 第50編
     博文館 1927(昭和2)
   3d. 「新青年」1926(大正15)第10号(夏期増刊号) この号の詳細目次は ここ

   初出は 3d.。「ピー・ジー・ウォドハゥス」という著者名は 3a. の本文ページの表記
   に拠るもの。おなじ 3a. の目次では、イニシャルなしで「ウオドハウス」とだけ表示
   されています。引用は 3a. に拠りました。


■英語原文 The original text in English

"LIFE, LADDIE," said Ukridge, "is very rum."
  He had been lying for some time silent on the sofa, his face towards the ceiling; and I had supposed that he was asleep. But now it appeared that it was thought, not slumber, that had caused his unwonted quietude.
  "Very, very rum," said Ukridge.
  He heaved himself up and stared out of the window. The sitting-room window of the cottage which I had taken in the country looked upon a stretch of lawn, backed by a little spinney ; and now there stole in through it from the waking world outside that first cool breeze which heralds the dawning of a summer day.
  "Great Scott! " I said, looking at my watch. "Do you realize you've kept me up talking all night?" Ukridge did not answer. [Omission]

   A Bit of Luck for Mabel by P.G. Wodehouse
   This story first appeared in:
   UK: January 1926 Strand
   US: 26 December 1925 Saturday Evening Post

   It was later included in:
   Eggs, Beans and Crumpets by P.G. Wodehouse
   First published in:
   UK: 26 April 1940 by Herbert Jenkins, London
   US: 10 May 1940 by Doubleday, Doran, New York


■外部リンク External links

 [en] English
   * www.PGWodehouseBooks.com
   * A Bit of Luck for Mabel - Wikipedia
   * Eggs, Beans and Crumpets - Wikipedia
   * Eggs, Beans, and Crumpets - The Russian Wodehouse Society

 [ja] 日本語
   * P・G・ウッドハウス「彼女の幸運」- 文芸誌ムセイオン
   * ミステリー・推理小説データベース Aga-Search
   * 乱歩の世界|新青年の世界
   * ウッドハウス邦訳書誌
 
 
■更新履歴 Change log

2010/12/19 英語原文のテキストを挿入しました。


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