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Tuesday, 28 April 2009

Ito Hirobumi's "Rising Sun"(Hinomaru) speech 伊藤博文の「日の丸演説」

■はじめに Introduction

下に引用するのは旧暦1871年(明治4年)12月14日、新暦1872年(明治5年)1月23日、岩倉使節団の副使の一人として米欧各国を歴訪中の伊藤博文(当時31歳)が、滞在先のカリフォルニア州サンフランシスコで行なった英語のスピーチのうち、最後の一節。

泉三郎氏の著書などによれば、このいわゆる「日の丸演説」は現地で大好評だったとのこと。新聞各紙に掲載され全世界に伝わったそうだ。

しかし、原資料を見ていないわたくしには分からない。明治初頭の日本のリーダーたちは、ほんとうの意味で世界の尊敬を集めていたのか? それとも、彼らはただその外見が物珍しかったから、客寄せパンダ的人気があったにすぎないのか? あるいは実態は、どちらか一方ではなくて両者の混合だったのか?


■表紙および扉の画像 Book covers and a title page

  1. 瀧井一博=編 『伊藤博文演説集』 講談社学術文庫 (2011)
  2. 伊藤博文文書29 戦時禁制品処分 : 秘書類纂1』 ゆまに書房 (2009)
  3. 泉三郎著 『写真・絵図で甦る堂々たる日本人―この国のかたちを創った岩倉使節団「米欧回覧」の旅』 祥伝社 (2001)
  4. J・R・ブラック=著 『ヤング・ジャパン 3』 全3巻 東洋文庫 (1970)
  5. Japan Rising: The Iwakura Embassy to the USA and Europe. Cambridge University Press (2009). 表紙絵は山口逢春が1934年に描いた「岩倉具視大使欧米派遣」 横浜市寄贈 明治神宮聖徳記念絵画館蔵
  6. Negotiating with Imperialism: The Unequal Treaties and the Culture of Japanese Diplomacy by Michael R. Auslin. Harvard University Press (2006)
  7. The Iwakura Mission in America and Europe: A New Assessment (Meiji Japan Series, 6) by Ian Hill Nish. Japan Library (1999)
  8. The Japanese in America by Charles Lanman. London : Longmans, Green, Reader and Dyer (1872)
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1. 9784062920636 2. Ito_hirobumi_kankei_bunsho_2 3. Doudoutaru_nihonjin

4. Ja_9784582801767_2 5. Japan_rising 6. Negotiating_with_imperialism

7. Ian_nish_the_iwakura_mission 8. The_japanese_in_america


■日本語訳 Translations into Japanese

(1) 泉 2008
「わが国旗にある赤い丸は、もはや帝国を鎖(とざ)す封印の如く見えることなく、今まさに洋上に昇らんとする太陽を象徴するものであります。そしてその太陽はいまや、欧米文明の中天に向けて躍進しつつあるのです」


(2) 訳者未確認 2001, 2003, etc.
わが国旗にある赤いマルは、もはや帝国を封ずる封蝋のように見えることなく、いままさに洋上に昇らんとする太陽を象徴し、わが日本が欧米文明の中原に向けて躍進する印であります。


(3) ねず+小池 1970
「わが国旗の真ん中の赤い丸は、もはや密封された国土の上に貼ってある封緘(ふうかん)紙とは、見えますまい。むしろ今後はそうなるはずのもの、すなわち、世界の文明諸国の間に進み、昇ってゆく朝日の高貴な象徴となるでありましょう」

  • 第三十二章 (一八七二年・明治五年) 使節の演説
    J・R・ブラック=著 ねず・まさし+小池晴子(こいけ・はるこ)=訳 『ヤング・ジャパン 3』 全3巻 平凡社 東洋文庫 1970-12-10
  • 原書: Young Japan: Yokohama and Yedo. Vol. 2. A Narrative of the Settlement and the City from the Signing of the Treaties in 1858, to the Close of the Year 1879. With a Glance at the Progress of Japan During a Period of Twenty-one Years by John Reddie Black. Trubner & Company, 1881

(4) 春畝公追頌会 1940, 1943, etc.
我国旗の中央に点ぜる赤き丸形は、最早(もはや)帝国を封ぜし封蝋の如くに見ゆることなく、将来は事実上その本来の意匠たる、昇る朝日の尊き徽章となり、世界に於ける文明諸国の間に伍して前方に且つ上方に動かんとす。

   伊藤博文「日の丸演説」
   a. 瀧井一博(たきい・かずひろ)=編 『伊藤博文演説集
     講談社学術文庫 2011-07-11
   b. 加藤周一〔ほか〕=編 田中彰(たなか・あきら)=校注
     『日本近代思想大系1 開国』 岩波書店 1991-01-23
   c. 春畝公追頌会(しゅんぽこうついしょうかい)=編 『伊藤博文伝 上巻
     明治百年史叢書 原書房 1970
   d. 春畝公追頌会=編 『伊藤博文伝 上巻』 再版 統正社 1943
   e. 春畝公追頌会=編 『伊藤博文伝 上巻』 統正社 1940

   a. 2011年版の底本は e. 1940年版。
   b. 1991年版の底本は d. 1943年版または e. 1940年版。
   c. 1970年版は d. 1943年版の再版。
   d. 1943年版は e. 1940年版の再版。
   引用は b. 1991年版に拠りました。

   Quoted in:


■英語原文 The original text in English

"The red disc in the centre of our national flag shall no longer appear like a wafer over a sealed empire, but henceforth be in fact what it is designed to be, the noble emblem of the rising sun, moving onward and upward amid the enlightened nations of the world."

   Page 16. The Japanese in America by Charles Lanman
   London : Longmans, Green, Reader and Dyer. 1872.


■インターネット特別展 公文書に見る岩倉使節団
Iwakura_mission_map_3
自由にナビゲートできる岩倉使節団のデジタル行程年表や人物紹介・参考文献など


■外部リンク External links


■更新履歴 Change log

  • 2012-10-12 ねず・まさし+小池晴子=訳 1970-12-10 を追加しました。
  • 2011-12-17 書誌情報を修正・補足しました。
  • 2009-04-29 『写真・絵図で甦る堂々たる日本人―この国のかたちを創った岩倉使節団「米欧回覧」の旅』 (2001) および Japan Rising: The Iwakura Embassy to the USA and Europe (2009) の表紙画像,ならびに The Japanese in America (1872) の扉画像を追加しました。

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■和書 Books in Japanese
(1) 伊藤博文

(2) 岩倉使節団

■洋書 Books in non-Japanese languages
(1) Iwakura Mission/Iwakura Embassy

(2) Hirobumi Ito

  

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Comments

1.「ひのまる」という音を使いたい。
2.明治らしい高踏的文章にしたい。
3.なぜ、欧米諸国に受け入れられたかを考えるに、
1)欧米列強と互角であるとせず、新たに仲間入りさせていただく姿勢を示した。
2)欧米列強を「文明諸国」と礼讃し、開国の宣言をした。
ことを踏まえた訳にしたい。

国旗の中央に描かれたる緋の丸こそ、最早海上の閉ざされし帝国を示すにあらざれば、その原意たる世界の文明諸国の只中に上らんとする旭日を示す徽章なれ。

Posted by: 伊藤 龍樹 | Tuesday, 28 April 2009 11:45 pm

さすが伊藤 龍樹さんの手になると、格調高い文体になりますね。文語調の素養のない私のような者には、なかなか書けません。

Posted by: tomoki y. | Wednesday, 29 April 2009 07:34 am

わたしの文語は勉強した素養ではなくネイティヴに近い感覚です。幼少の頃、教会で歌った讃美歌や聖歌が往々にして文語だったのです。小林秀雄は「歴史とは思い出すものである」と言っています。一文の訳の中で、ひと時ながら明治初期を「思い出し」てみました。蛇足ながらわたしは伊藤博文の血筋ではありませんのでご了承くださいませ。

Posted by: 伊藤 龍樹 | Wednesday, 29 April 2009 09:48 pm

伊藤 龍樹さん

なるほど、ご幼少のころ以来、身についた感覚ですか。それでは自然に出てくるのも不思議ではありませんね。

現代の小説などでも、聖書の文言が引用されている箇所で、新共同訳などでなく、あえて昔の文語調の訳が使用されていることが、よくありますね。文体って、個々の語句の訳が正しいか否かということに負けず劣らず大事だと思います。

伊藤 龍樹さんは、てっきり伊藤博文の玄孫(やしゃご)ぐらいにあたる方かと思っていました。

Posted by: tomoki y. | Thursday, 30 April 2009 02:57 pm

片山内閣時代の参議院議長伊藤修の孫でございます。

Posted by: 伊藤 龍樹 | Monday, 24 August 2009 10:10 pm

え、そうなんですか? と言われても、その伊藤修さんというかた、よく存じあげませんが。

Posted by: tomoki y. | Monday, 24 August 2009 10:32 pm

こんなところに載ってた・・・。
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/003/0488/00311110488003a.html

Posted by: 伊藤 龍樹 | Tuesday, 25 August 2009 09:46 am

おお、伊藤 龍樹さんのお祖父さまは、昭和史に残るような立派なかただったのですね。

Posted by: tomoki y. | Wednesday, 26 August 2009 12:54 am

あるかたから、この記事に付いていた複数のコメントについて削除の依頼を受けました。依頼に関わる事実は、真偽を検証することが困難です。また、そもそも、わたくしの感知する事由ではありません。ですが、わたくしは自分なりに総合的に見て、依頼者の主張は妥当だろうと判断しました。その結果、つぎの5件のコメントを非公開の設定にしました:

1) 09/10/26 A氏によるコメント
2) 09/10/08 tomoki y. によるコメント
3) 09/10/07 B氏によるコメント
4) 09/10/06 tomoki y. によるコメント
5) 09/10/05 匿名氏によるコメント

3.のB氏と5.の匿名氏は、IPアドレスがおなじなので同一人物と推定しました。なお、「非公開設定」では、コメントはブログ管理者のもとに引き続き保存されます。ですから厳密にいうと「削除」とは異なります。しかし、わたくし以外の人から見たら「削除」と効果は事実上おなじでしょう。記録を残すのは、ブログ管理者の用心深さによるもので、「念のため」という、それだけのことです。

Posted by: tomoki y. | Monday, 26 October 2009 10:33 am

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Posted by: アグ ネイビー | Sunday, 24 November 2013 09:43 am

訂正:参議院議長→参議院法務委員長

Posted by: 伊藤龍樹 | Sunday, 11 January 2015 03:42 pm

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