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Wednesday, 03 June 2009

Letter from Franz Kafka to Milena Jesenská (9 August 1920) カフカからミレナへの手紙 (1920年8月9日)

■はじめに Introduction

ああ見えても、なかなかスケベなカフカ。


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本の表紙とDVDのジャケット Book and DVD covers

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a. Alt_kafka_und_der_film b. Zischler_kafka_goes_to_the_movies c. Kafka_anthony_hopkins_the_trial

d. Steven_soderbergh_jeremy_irons_kafk e. Los_amores_de_kafka_1988 f. Welles_perkins_

■日本語訳 Translations into Japanese

(J1) 池内 2013
ぼくはきみを愛しているから(そうともぼくはきみを愛している。きみ、わからず屋さん、いいね海が海底の小石を愛しているようにまさにそのようにぼくの愛情がきみにあふれかえっている——きみといると、ぼくこそが天の貝となれず小石というもの)この全世界を愛し、そこにきみのための肩も含まれている。いや、まずは右肩だった。気に入ったのでそこにキスをした。(きみはやさしく、ブラウスのそこを下げてくれた)。左の肩も同じ、森の中でぼくの上にあったきみの顔、森の中でぼくの下にあったきみの顔。ほとんど剥き出しになったきみの乳房のそばのやすらぎ。

  • [一九二○年八月九日、プラハ]
    フランツ・カフカ=著 池内紀(いけうち・おさむ)=訳 『ミレナへの手紙』 白水社 2013-06-25
  • 底本: Franz Kafka. Briefe an Milena. Erweiterte und neu geordnete Ausgabe. Herausgegeben von Jürgen Born und Michael Müller. S. Fischer Verlag, Frankfurt am Main. 1983. この原書はいわゆる『ミレナへの手紙』新版。手稿版『カフカ全集』編纂チームの主要メンバーとして知られるユルゲン・ボルンとミヒャエル・ミュラーによって「増補され、新しく配列された版」。
  • 文中の傍点を下線で置き換えました。

(J2) 池内 1998
ぼくはきみを愛している(海が海底の小石を愛している、まさにそのように。ぼくの愛はきみに洗われる。きみに対して、ぼくはやはり天が投げ落とした小石だ)。ぼくはこの世を愛しており、きみの左の肩が全世界だ。いや、まずは右の肩だった。ぼくは気に入ったのでキスをした(きみはやさしく、ブラウスのそこをひらいてくれた)、それから左の肩であり、それから森の中のきみの顔とぼくの顔であり、森の中でかさなり合った顔であり、それからきみのほとんどむき出しになった胸の上の安らぎだった。


(J3) 田中 1976, 1993
わたしはあなたを愛しているので(わたしはあなたを愛しています。わからないのですか、鈍いひと。海が海底のとても小さな石ころを愛しているのとおなじように、わたしの愛はあなたのうえにみなぎりあふれているのです――そしてまた、わたしはあなたのそばにいて、小石でいられたらと思います。神様がそれを許してくださるならば)、世界全体を愛しているのです。そしてその世界にはあなたの左の肩、いや最初は右の肩でした、その右肩も属しているのです。それゆえ、気にいれば(あなたがブラウスをずらしてくださるなら)わたしはあなたの右肩にキスをします。それからあなたの左肩も、森のなかでわたしの上になっていたあなたの顔も、森の中でわたしの下になっていたあなたの顔も、それからまた、ほとんどあらわになったあなたの胸で静かに眠ることも、みんなわたしの愛する世界に属しているのです。

  • マルガレーテ・ブーバー=ノイマン=著 田中昌子(たなか・まさこ)=訳
  • 引用は a. 平凡社ライブラリーに拠りました。文中の傍点を下線で置き換えました。

(J4) 辻 1959, 1981, etc.
私はあなたを愛していますから(ですから私はあなたのことを、分らずやさん、海が海底のちっぽけな小石一つを愛しているように愛しているのです。私の愛情があなたの上に溢れ漲るのも、これと寸分ちがわぬ有様です――そしてあなたの傍らでは私がまた小石でありたいものです、もし天の神々がそれを許してくれるならばですが)、全世界をも私は愛しており、その世界にはあなたの左の肩、いや最初は右の肩でした、あなたの右の肩も属しており、私の愛する世界にあなたの右肩が属しているからこそ、気に入れば(そしてあなたがやさしくブラウスをずらして下されば)私はそのあなたの右肩にキスし、こうして私の愛する世界には、あなたの左肩も、森の中で私の上になっていたあなたの顔も、森の中で私の下になっていたあなたの顔も、それからまた、ほとんど裸になったあなたの胸にもたれての憩いも、みんなそこに属しているのです。


■英訳 Translations into English

(E1) Boehm, 1990
Because I love you (you see, I do love you, you dimwit, my love engulfs you the way the sea loves a tiny pebble on its bed--and may I be the pebble with you, heaven permitting) I love the whole world and that includes your left shoulder--no, the right one was first and so I'll kiss it whenever I want to (and whenever you're kind enough to pull down your blouse a little) and that also includes your left shoulder and your face above me in the forest and your face below me in the forest and my resting on your almost naked breast.


(E2) Stern & Stern, 1953
Since I love you (and I do love you, you stupid one, as the sea loves a pebble in its depths, this is just how my love engulfs you—and may I in turn be the pebble with you ... ) I love the whole world and this includes your left shoulder, no, it was first the right one, so I kiss it if I feel like it (and if you are nice enough to pull the blouse away from it) and this also includes your left shoulder and your face above me in the forest and my resting on your almost bare breast.


■ドイツ語原文 The original text in German

Da ich Dich liebe (und ich liebe Dich also, Du Begriffsstutzige, so wie das Meer einen winzigen Kieselstein auf seinem Grunde lieb hat, genau so überschwemmt Dich mein Liebhaben - und bei Dir sei ich wieder der Kieselstein, wenn es die Himmel zulassen) liebe ich die ganze Welt und dazu gehört auch Deine linke Schulter, nein es war zuerst die rechte und darum küsse ich sie, wenn es mir gefällt (und Du so lieb bist die Bluse dort wegzuziehn) und dazu gehört auch die linke Schulter und Dein Gesicht über mir im Wald und Dein Gesicht unter mir im Wald und das Ruhn an Deiner fast entblößten Brust.


 Video 
KAFKA/迷宮の悪夢 (1991) Kafka (1991)

Uploaded to YouTube by Young Shatterhand on 21 Feb 2012


■外部リンク External links


■更新履歴 Change log

  • 2013-09-12 2種類ある英訳からの引用に混乱があったのを修正しました。 
  • 2013-09-11 池内紀=訳 2013-06-25 を追加しました。また、辻瑆=訳の書誌情報を修正・補足しました。
  • 2013-03-24 KAFKA/迷宮の悪夢 (1991) の YouTube 動画を追加しました。
  • 2009-09-24 池内紀=訳 1998-04-01 を追加しました。

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Comments

文の前半は女性が書く手紙のようで、後半の愛欲が表現された部分は、いかにも男性的に感じます(女性は、
あまりこう直接的に愛欲は書かないと思いますので)。

たしかにカフカ、なかなかスケベさんですね。

>and I do love you, you stupid one,

の doは、you stupid one,が続くことで、非常に効果的に使われているように思います。

Posted by: y_flores_o | Wednesday, 03 June 2009 09:18 pm

「海が海底の小石を愛するように」愛しているという表現は、並みの男にはマネができません。おとぎ話かメルヘンみたい。

「わからないのですか、鈍いひと」「分らずやさん」"You stupid one" ――どれもなんだか可愛い。ミレナがカフカより10歳以上も若かったことも関係しているでしょう。

じつは参照したドイツ語版テキストでは、この箇所が省略されていたので、原文が文字どおりどういう表現を使っていたのかは知りません(たとえ知ったとしても、ドイツ語のニュアンスは私には分からないでしょうが)。

Posted by: tomoki y. | Wednesday, 03 June 2009 11:21 pm

Hey Delbert, I don't think so??? Tanya

Posted by: gei insurance | Wednesday, 15 December 2010 05:07 am

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