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Sunday, 09 August 2009

The Ghost Ship by Richard Middleton リチャード・ミドルトン 「幽霊船」

■はじめに Introduction

 村が嵐におそわれた。豚小屋の屋根が吹っ飛んで、船が畑に降ってきた。
 恐怖・幻想小説のアンソロジーに、これまでたびたび収録されてきた作品。だが、こわいというよりは、とぼけたおかしさのある短篇。ラム酒で酔っぱらった頭で読むとちょうどいいらしい(って、ホントか?)。


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■The Ghost Ship の日本語訳を収録した本と雑誌の一覧
 Books and magazines that contain a Japanese translation of The Ghost Ship

  1. 矢野 今日もいい天気 / 岩崎書店 , 1998-09 ( 恐怖と怪奇名作集 ; 3 )
  2. 南条 幽霊船 / 国書刊行会 , 1997-04 ( 魔法の本棚 )
  3. 山本 ミステリマガジン (Hayakawa's Mystery Magazine) 1988-03 No.383
  4. 南条 イギリス幻想小説傑作集 / 白水社 , 1985-10 ( 白水Uブックス )
  5. 野口 アンソロジー・恐怖と幻想 ; 第2巻 / 月刊ペン社 , 1971
  6. 宮島 英吉利近代傑作集 / 近代社 , 1925 ( 世界短篇小説大系 ; [第6] )
  7. 宮島 英米十六文豪集 / 宮島新三郎・訳 新潮社出版 , 1920-12-20

■日本語訳 Translations into Japanese

(1) 矢野 1998
 そもそものはじまりは、一八九七年の春の大嵐(おおあらし)のときだ。あの年は二度も、大嵐があった。その最初のほうのときなんだが、いまでも、きのうのことのようによくおぼえてるよ。
 朝起きてみたら、うちのブタ小屋の草ぶきの屋根が、凧(たこ)みたいに風にとばされて、となりの後家(ごけ)さんとこの庭に落ちていた。そのしばらくあとで、おれは「キツネとブドウ亭(てい)」という酒場(さかば)へ行って、そこの亭主(ていしゅ)にその話をした。すると、亭主は笑って、こういったよ。
「じつは、うちの畑にも、嵐(あらし)がなにやら吹(ふ)き寄(よ)せてったよ。どうも船みたいなものらしいんだけどね」

    リチャード・ミドルトン=著 大久保浩=絵
   矢野浩三郎(やの・こうざぶろう)=訳 「幽霊船」
   ジェローム・ビクスビー〔ほか〕=作
   『今日もいい天気 恐怖と怪奇名作集3
   岩崎書店 1998-09-30
   注意:この訳は全訳ではなく、児童向け再話です。


(2) 山本 1988
 あれは一八九七年の大嵐に始まったことだった。あの年には二度大嵐があったが、あれはその最初の嵐のときだった。どうしてそれを憶えているかというと、朝起きてみたら、うちの豚小屋の藁屋根が風にはがされて、子どもの凧みたいに後家の家の庭に吹っ飛ばされていたんだ。生垣ごしに見ると、後家――トム・ランポートの後家だ――がヒナギクの根を掘る鍬でキンレンカの手入れをしていた。それをしばらく見ていたあと、おれは〈フォックス・アンド・グレイプス〉に行って亭主に後家がおれに言ったことを話した。亭主は笑った。彼にはかみさんがいるから、セックスの話は平気なんだ。亭主は言った。「それで思い出したが、きのうの嵐でおれんとこにへんなものが飛ばされてきたよ。船だと思うんだがね。」

   リチャード・ミドルトン=著 山本俊子(やまもと・としこ)=訳 「幽霊船」
   『ミステリマガジン (Hayakawa's Mystery Magazine)』 No.383 1988-03


(3) 南条 1985, 1997
 事の起こりは九七年の春の大嵐なんだ。あの年は二回大嵐があって、その最初のほうなんだが、今でもきのうのことのように憶えているよ。なんせ朝起きたら、うちの豚小屋の藁(わら)屋根が子供の凧(たこ)みたいにすっ飛んで、後家さんとこの庭に落ちていたんだからな。垣根の外から見たら、後家さん――つまり、トム・ランポートの後家さん――が、下敷きになった きんれんか をなんとかしようとして鍬(くわ)で突っついていた。しばらくその様子を見ていてから、おれは《狐と葡萄》っていう酒場にいって、後家さんの言い草をおやじに聞かせてやった。おやじは笑ったね。所帯持ちで女ってものをよく知ってるからね。笑いながら、「そのことだがよ」と言った。「嵐がなんやら、うちの畑に吹き込みよった。どうも船みてえなものらしいんだけどよ。」

    a. リチャード・ミドルトン=著 南条竹則=訳
     『幽霊船』 魔法の本棚 国書刊行会 1997-04
     この本は The ghost ship and other stories. 第2版の翻訳
    b. リチャード・バラム・ミドルトン=著 南条竹則=訳 「幽霊船」
     由良君美=編 『イギリス幻想小説傑作集
     白水Uブックス 白水社 1985-10
   引用は b. に拠りました。文中の太字箇所は、原文では太字でなく傍点。


(4) 野口 1971
すべては一八九七年、すなわち二度の大暴風のあった年の春の、大暴風から発した。それは一回目のほうの台風で、朝になるとわが家の豚小屋の草ぶき屋根が子供の凧(たこ)のようにきれいさっぱりと吹き上げられて後家の庭へと落ちているのを見つけたので、とてもよく覚えているのだ。生垣ごしに見ると後家――つまりトム・ラムポートの後家――はヒナギク掘りの鍬でノウゼンハレンを突いてとっているところだった。わたしは後家を少しのあいだ見まもっていてから「狐と葡萄」亭へ行き、後家がわたしにいったことを亭主に告げた。女房持ちで、女性のことを気軽に話す亭主は声をあげて笑い、「そういえば」といった。
「あの大嵐はわしの畠に何かを吹きつけよった。船のようなものだと思うんだがね」

   リチャード・ミドルトン=作 野口迪子=訳 「幽霊船」
   『アンソロジー・恐怖と幻想2』 月刊ペン社 1971-03-01


(5) 宮島 1920, 1925
元來が、九十七年の春にあつた大暴風から始まつたことだ、あの年には二度大暴風があつたが、此處にいふのはその最初の方で、自分は好くそれを記憶してゐる、といふのは、自分の豚小舎の草葺屋根が、子供の紙鳶のやうに見事に隣の寡婦(ごけ)さんの庭に吹き飛ばされてゐたのを、朝になつて見付けたからである。自分が生垣越しに眺めてゐると、その寡婦(ごけ)さん――トム・ラムポートの寡婦です――が、菊掘り鏝(ごて)でナスタアシアム(草の名)を突(つ)ついてゐた。自分は暫く女を見詰めてから『フォックス・エンド・グレエプス』(酒屋)に出掛けて行つて、女が自分に言つたことを亭主に話した。亭主は大聲で笑つた、亭主は女房持ちなので女といふものに對しては暢氣であつた。『時にさ、』彼はかう言つた、『この暴風(あらし)が俺(わし)の畑に何か吹き落したんだ。それがどう見ても船らしいんだ。』

   リチャード・ミッドルトン=作 宮島新三郎=譯 「幽靈船」
   a.英吉利近代傑作集』 世界短篇小説大系6
     近代社 1925-07-25(大正14)
   b.英米十六文豪集 世界短篇傑作叢書2
     新潮社出版 1920-12-20(大正9)
   引用は a. に拠りました。


■ドイツ語訳 Translations into German

The Ghost Ship のドイツ語訳は、つぎの a.c. の3つの短篇集に収録されているようです。3冊とも私は未見なので、詳細は存じません。たぶん b.c. の内容はおなじではないかと憶測します。b. または c. の収録作品のリストは ここ で見られます。

   a. Die besten klassischen und modernen Gruselgeschichten
     von Poe bis Hemingway
     Edited by Mary Hottinger
     Diogenes Verlag AG, 1991
     More details are here.
   b. Nacht über dem Moor und andere Gespenstergeschichten
     Edited by Hanna Bautze
     Ravensburger Buchverlag, 1986-05
   c. Nacht über dem Moor und andere Gespenstergeschichten
     - Ein Buch für junge Leser
     Edited by Hanna Bautze
     Maier Verlag, 1975


■フランス語訳 Translations into French

Le Visage Vert - Littérature fantastique というサイトによると、The Ghost Ship のフランス語訳は、つぎの a.c. の3種類が出版されているようです。

   Le Vaisseau fantôme / The Ghost Ship
   a. in Le Poisson sur le toit et autres contes sensibles,
     Bruxelles : Desclée de Brouwer, 1947,
     mis en français par Maurice Beerblock,
     sous le titre « Le Vaisseau fantasque ».
   b. in Les Miroirs de la Peur,
     éd. Roland Stragliati et Françoise Martenon,
     Paris : Casterman, “Histoires fantastiques”, 1969, p. 235-251,
     traduit de l'anglais par Françoise Martenon et Roland Stragliati.
   c. in Histoires d'océans maléfiques,
     éd. Jacques Finné,
     Paris : Librairie des Champs-Élysées, 1978, p. 97-112,
     traduit de l'anglais par Jacques Finné.


 Audio 
英語原文のオーディオブック(朗読) Audiobook in English

下の引用箇所の朗読は 3:47 から始まります。 Uploaded to YouTube by freeaudiobooks84 on 15 Oct 2013. Audio courtesy of LibriVox. Reading of the excerpt below starts at 3:47.


■英語原文 The original text in English

It all came of the great storm in the spring of '97, the year that we had two great storms. This was the first one, and I remember it very well, because I found in the morning that it had lifted the thatch of my pigsty into the widow's garden as clean as a boy's kite. When I looked over the hedge, widow--Tom Lamport's widow that was--was prodding for her nasturtiums with a daisy-grubber. After I had watched her for a little I went down to the "Fox and Grapes" to tell landlord what she had said to me. Landlord he laughed, being a married man and at ease with the sex. "Come to that," he said, "the tempest has blowed something into my field. A kind of a ship I think it would be."


■外部リンク External links


■更新履歴 Change log

  • 2014-11-01 山本俊子=訳 1988-03 と英語原文オーディオブックの YouTube 画面を追加しました。

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