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Tuesday, 10 November 2009

Ein Storch / Als ich abends nach Hause kam... by Franz Kafka カフカ 「恩返し」「夕方帰宅してみると」「こうのとり」

■はじめに Introduction

カフカの生前未発表の作品。彼のいわゆる「八つ折り判ノート」全8冊のうち第6冊に書かれていた。ドイツ語題の Ein Storch あるいは Als ich abends nach Hause kam... にせよ、邦題の「恩返し」、「夕方帰宅してみると」、「こうのとり」にせよ、いずれも後世の人たちが便宜的に付けたもの。文庫版でわずか4ページ程度の超短篇。


■スペイン映画 『フランツ・カフカの変身』(日本公開年、邦題は未確認)
 The Metamorphosis of Franz Kafka (1993) directed by Carlos Atanes

変わり果てたグレーゴル・ザムザの姿は、かなり無気味で食事前に見るには適さない。だが、しばらく観ていると慣れる。実験的・前衛的な映画かと思ったが、基本的なプロットは原作にかなり忠実である。 Uploaded to YouTube by Carlos Atanes on 10 Nov 2006.


■表紙画像 Cover photos

↓ クリックして拡大 Click to enlarge ↓

a. Ja_taguchi_kafka_no_ehon_2 b. Ja_kafka_selection_3 c. Ja_ikeuchi_banri_no_chojo_2

d. Es_cuadernos_en_octavo e. _cahiers_inoctavo_2 f. En_the_blue_octavo_notebooks


■「恩返し」「夕方帰宅してみると」「こうのとり」を収録している本の一覧
 List of books incorporating a Japanese translation of
 Als ich abends nach Hause kam...

たぐち 1. カフカの絵本 / フランツ・カフカ[他]. -- 小学館, 2009.3
浅井   2. カフカ・セレクション. 3 / フランツ・カフカ[他]. -- 筑摩書房, 2008.11.
      -- (ちくま文庫)
池内   3. 万里の長城 / フランツ・カフカ[他]. -- 白水社, 2006.9.
      -- (白水Uブックス ; 158)
池内   4. カフカ寓話集 / カフカ[他]. -- 岩波書店, 1998.1. -- (岩波文庫)
飛鷹   5. カフカ全集. 3. / マックス・ブロート. -- 新潮社, 1992.10
池内   6. 渋沢竜彦文学館. 10. -- 筑摩書房, 1990.9
飛鷹   7. カフカ全集. 3. / マックス・ブロート. -- 新潮社, 1981.5


■日本語訳 Translations into Japanese

(1) たぐち 2009
夕方 家に帰ると 部屋の中に 大きな卵があって ビックリした! 巨大と言っていいほどだ。大きさは テーブルくらいはあるだろう。まん丸にふくらんでいて 左右に揺れているように見えた。不思議に思いながら 足で押さえて ゆっくりナイフで 殻に切れ目を 入れてみた。ちょうど 生まれる寸前だったらしい。殻が飛び散って 中から コウノトリのような ヒナが 飛びだしてきた。赤裸の体に 小さな翼がはえていて そいつを バタバタさせている。 [略]

「もしも本当にコウノトリなら 魚が好きなはずだ! だったら 買ってきてあげよう。でも ただというわけにはいかないよ。僕だって 鳥を飼うほどの 余裕はないんだ。僕が節約することになるなら それなりの お礼をしてもらいたいな。お前は絶対にコウノトリだ! 大きくなったら 恩返しに 南の国へ連れていってよ。僕は前から 南の国に 行きたかったのだけど 翼を持っていないので あきらめていたんだ」 [以下略]

   「恩返し」
   フランツ・カフカ=原作 たぐち みちこ=文 田口智子=絵
   『カフカの絵本』 小学館 2009-03-02
   原文に複数ある改行や1行空きを省略しました。


(2) 浅井 2008
 夕方帰宅してみると、部屋の真ん中に大きな、いや巨大な卵がひとつころがっていた。ほとんどテーブルほどの高さで、それに相応した膨(ふく)らみがあり、かすかに揺れている。私は大いに興味をそそられて、両脚のあいだに卵を挟みこみ、ポケットナイフでそれを慎重に二つに割った。すでに孵化(ふか)する頃になっていた。殻がくしゃくしゃに壊れて、一羽の鳥が跳び出してきた。見かけはこうのとり風で、まだ羽毛がはえておらず、短い羽をばたばたさせていた。 [略]

「これがこうのとりの仲間なら」、とそのとき私は思いついた、「きっと魚が好物なのだろう。そういうことなら、魚だって手に入れてやってもいい。もっとも、ただでというわけにはゆかない。私の懐具合では、家で鳥を飼うことなどできやしないのだ。だから、私がそんな犠牲を払うのなら、それと等価の、生計の足しになるようなお返しをしてもらおう。こいつはこうのとりなのだから、ちゃんと成育して私の与える魚で充分に肥えたなら、南方の国々へ連れて行ってもらおう。もうずっと以前から私はあちらの方へ旅行したかった。ただこうのとりの羽がないばかりに、これまでその旅行をしないできたのだ」。 [以下略]

   浅井健二郎(あさい・けんじろう)=訳 「夕方帰宅してみると」
   フランツ・カフカ=著 平野嘉彦(ひらの・よしひこ)=編
   『カフカ・セレクション3 異形/寓意』 筑摩書房 2008-11-10 ちくま文庫


(3) 池内 1990, 1998, etc.
 夕方、家にもどってくると、部屋の真中に大きな卵があった。おそろしく大きな卵である。ほとんど机ほどもあって、それ相応にふくらんでいる。かすかに左右にゆれていた。なんとも不思議でならず、股にはさんでそろりそろりとナイフで裂いた。もう十分に孵化していたのだ。殻がとびちって、中からこうのとりに似たやつが跳び出してきた。赤むけのまる裸だが、ちょっぴり翼がはえていて、しきりにそいつをバタつかせている。 [略]

 「こうのとりの片われだとすると、むろん魚が大好物。では手に入れてやろうじゃないか。しかし、無償というわけにはいかない。こちらに鳥を飼うほどの余裕はない。犠牲を払うからには、しかるべき返礼を申し受けようじゃないか。こうのとりにちがいあるまい。ならば成長のあかつき、恩返しに南の国へ運んでおくれ。永らく行きたいと思っていた。こうのとりの翼がないばかりに我慢していた」 [以下略]

   フランツ・カフカ=著 池内紀(いけうち・おさむ)=訳 「こうのとり」
   a.ノート〈1〉万里の長城―カフカ・コレクション』 白水社
     白水Uブックス 2006-09
   b.カフカ寓話集』 岩波文庫 1998-01
   c.迷宮の箱 澁澤龍彦文学館10』 筑摩書房 1990-09-25
   引用は b. に拠りました。


(4) 飛鷹 1981, 1992
 夕方帰宅すると、部屋の中央に、大きな、というより超特大の、卵が一個ころがっていた。高さはほとんど机ぐらい、胴のふくらみもそれに見合っている。卵はかすかに揺れていた。ぼくは好奇心をかきたてられ、卵を両脚のあいだに挟んで、用心しながら小刀で真二つに割ってみた。すでに孵化しきっていたのである。殻がくしゃくしゃに割れたかとおもうと、なかから、こうのとりに似た、まだ羽毛のない鳥が、みじかい翼をばたばたさせながら跳び出てきた。 [略]

《これがこうのとり族なら、好物はきっと魚だろう。それなら魚だって調達してやらないものでもない。もちろん、無報酬ではこまる。ぼくの資力に、家禽を飼うほどのゆとりはない。そこで、こちらがそれほど犠牲を払うのだから、それに見合うだけの、ぼくの生命を支えるほどの、命がけの奉仕を求めたい。これはこうのとりだ。そこで、一人前に成長し、ぼくが与える魚で体力をつけたあかつきには、南国へ連れていってもらおう。ぼくは、もう長いこと、南国へ旅行することを渇望してきた。ただこれまでのところ、こうのとりの翼がないという理由だけで、やむなく断念してきたのだ》 [以下略]

   飛鷹節(ひだか・まこと)=訳
   八つ折り判ノート・八冊(短篇小説、断章、スケッチ等) 第六冊
   マックス・ブロート=編 フランツ・カフカ=著 飛鷹節=訳
   a.決定版 カフカ全集3 田舎の婚礼準備、父への手紙』(全12冊セット)
     新潮社 1992-10-10
   b.決定版 カフカ全集3 田舎の婚礼準備、父への手紙
     新潮社 1981-05
   引用は a. に拠りました。


■スペイン語訳 Translations into Spanish

   Cuadernos en octavo : seguido de "Reflexiones sobre
   el pecado, el sufrimiento, la esperanza y el verdadero camino"
   by Franz Kafka
   Alianza Editorial, 1999
   ISBN-13 : 9788420638355


■フランス語訳 Translations into French

En rentrant chez moi ce soir-là, je trouvai un gigantesque oeuf au milieu de la pièce [Omission]

   Cahiers in-octavo, 1916-1918 by Franz Kafka
   Translated from German by Pierre Deshusses
   Bibliothèque Rivages, 2009-09-16
   ISBN-13 : 9782743619954
   A book review at evene.fr


■英訳 Translation into English

When I came home in the evening, in the middle of the room I found a large, an overlarge, egg. It was almost as high as the table and correspondingly bulging. It rocked slightly to and fro. I was very curious, took-the egg between my legs and carefully cut it in two with. my pocketknife. It was already hatched out. Crackling, the shell fell apart and out jumped a stork-like still featherless bird, beating the air with wings that [118] were too short. [Omission]

"If he comes," it occurred to me then, "from the stork family, then I am sure he will like fish. Well, I am prepared even to procure fish for him. Of course, not free of charge. My means do not permit me to keep a pet bird. So if I do make such sacrifices, I want to get an equivalent life-maintaining service from him in my own life. He is a stork, well then, when he is fully ': grown and fattened up on my fish, let him carry me with t him to the countries in the South. [Omission]

   When I came home in the evening
   The Eight Octava Notebooks by Franz Kafka
   E-text at The Eight Octava Notebooks


■ドイツ語原文 The original text in German

Als ich abends nach Hause kam, fand ich in der Mitte des Zimmers ein großes ein übergroßes Ei. Es war fast so hoch wie der Tisch und entsprechend ausgebaucht. Leise schwankte es hin und her. Ich war sehr neugierig, nahm das Ei zwischen die Beine und schnitt es vorsichtig mit dem Taschenmesser entzwei. Es war schon ausgetragen. Zerknitternd fiel die Schale auseinander und hervorsprang ein storchartiger, noch federloser, mit zu kurzen Flügeln die Luft schlagender Vogel. [Omission]

"Kommt er", fiel mir dann ein, "aus der Familie der Störche, dann werden ihm gewiß Fische lieb sein. Nun ich bin bereit sogar Fische ihm zu verschaffen. Allerdings nicht umsonst. Meine Mittel erlauben mir nicht mir einen Hausvogel zu halten. Bringe ich also solche Opfer, will ich einen gleichwertigen lebenerhaltenden Gegendienst. Er ist ein Storch, möge er mich also, bis er ausgewachsen und von meinen Fischen gemästet ist, mit in die südlichen Länder nehmen. [Omission]


■外部リンク External links


■更新履歴 Change log

  • 2009-11-12 動画を YouTube のものから、より画質の良い blip.tv のものに差し替えました。
  • 2009-11-11 飛鷹節=訳 1992-10-10 を追加しました。

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