« Podolo by L.P. Hartley L・P・ハートリー / レスリー・P・ハートリー / L・P・ハートリイ 「ポドロ島」「ポドロ」 | Main | Seaton's Aunt by Walter de la Mare ウォルター・デ・ラ・メーア / ウォルター・デ・ラ・メア 「シートンのおばさん」 »

Sunday, 22 August 2010

Fanny Hill: Memoirs of a Woman of Pleasure by John Cleland (2) ジョン・クレランド / ジョン・クリーランド 『ファニー・ヒル 快楽の女の回想』『ファニー・ヒル:一娼婦の手記』『情婦ヒル』『ファーニィ・ヒル』 (2)

« 1 Fanny Hill »
« 1 ファニー・ヒル »

■はじめに Introduction

西洋における元祖ポルノ小説。かと思いきや、

「この長篇小説は以前は単なる春本にすぎなかったのが、今はイギリス十八世紀小説の代表作、いやそれどころか、近代文学の重要な古典ということになっています。リチャードソンの『パミラ』、フィールディングの『トム・ジョーンズ』、ルソーの『新エロイーズ』、あるいはサドの著作などと並ぶ、格の高い本になりました」

   ——丸谷才一 『文学のレッスン』 新潮社 2010年


 Image gallery 1 
『ファニー・ヒル』—— Erich von Götha による挿絵
Fanny Hill: Illustrations by Erich von Götha

↓ クリックして拡大 Click to enlarge ↓
a. Fanny_hill_eric_von_gotha1 b. Fanny_hill_eric_von_gotha2 c. Fanny_hill_eric_von_gotha3
Image source: The Erotic Print Room

Erich von Götha (別名 Erich von Gotha de la Rosière) の読みは、エリック・フォン・ゴータ? それとも、エーリッヒ・フォン・ゲータだろうか?

ウィキペディア ドイツ語版 および 英語版 によると、本名は Robin Ray。1924年ロンドン生まれ。英国人のイラストレーター兼マンガ家だそうだ。ただし、英語版の記述の信憑性には疑問を投げかける向きもある。

ドイツ語版の記述によると、彼のコミックは本国では長らく発売禁止だった。そのため、ドイツやフランスでの発売が先行し、英語圏での彼の知名度は、近年までわりと低かったとある。これもどこまで信用していいかはわからない。

上の挿絵はハードカバーの二巻本 Fanny Hill (Volume 1, 2003; Volume 2, 2004; Erotic Print Society) に収録されている。これら3枚を含む数十枚のカラーまたは白黒のイラストのうち、お好みのものを The Erotic Print Room というサイトで購入できる。アート紙やポストカードなど、印刷の用紙やサイズは、数種類のうちから選べる。

   Fanny Hill. Volume I (2003), Volume II (2004) Scarlet Library
   Author : John Cleland  Illustrator : Erich von Götha
   Publisher :  Erotic Print Society


 Video 
イギリスTVシリーズ 『ファニー・ヒル—禁断の扉』 (2007)
BBC Four TV mini-series Fanny Hill (2007)

ジェームズ・ホーズ監督、レベッカ・ナイト主演
Directed by James Hawes, Starring Rebecca Night


 Image gallery 2 
日本語訳——表紙画像コレクション
Japanese translations: Cover photo collection

a. Ja_9784582767537 b. Ja_2005_fanny_hill_takarajimasha c. Ja_2004_fanny_hill_matudo_ronsosha

d. Ja_1997_fanny_hill_yoshida_kawade_b e. Ja_1994_fanny_hill_nakano_chikuma f. Ja_1993_fanny_hill_yoshida_kawade_2

g. Ja_1983_fanny_hill_fujimi_roman h. Ja_1977_fanny_hill_kadokawa i. Ja_1969_fanny_hill_nakano_denen

j. Ja_1968_fanny_hill_eto_kadokawa_2 k. Ja_1966_fanny_hill_yoshida_kawade l. Ja_b000jbfbta

a. 小林章夫訳 『ファニー・ヒル 快楽の女の回想』 平凡社ライブラリー 2012
b. 及川寛平訳 『新訳 ファニー・ヒル』 宝島社文庫 2005
c. 松戸 淳訳 『情婦ヒル 謎の訳者の古典ポルノ3』 論創社 2004
d. 吉田健一訳 『ファニー・ヒル』 河出文庫 1997
e. 中野好之訳 『ファニー・ヒル 一娼婦の手記』 ちくま文庫 1994
f. 吉田健一訳 『ファニー・ヒル』 河出書房新社 1993
g. 江藤 潔訳 『完訳 ファーニィ・ヒル』 富士見ロマン文庫 1983
h. 須賀 慣訳 『ファーニィ・ヒルの娘』 角川文庫 1977
i. 中地智夫訳 『一娼婦の手記 ファニー・ヒル』 田園書房 1969
j. 江藤 潔訳 『ファーニイ・ヒル』 角川文庫 1968
k. 吉田健一訳 『人間の文学1 ファニー・ヒル』 河出書房新社 1966
l. 松戸 淳訳 『情婦ヒル』 紫書房 1951


■日本語訳 Translations into Japanese

(1) 小林 2012
 それにしても、二人が交わした激しいキスの数は、数え切れないほどでした。お互いに舌を柔らかく差し入れ、そのたびにうれしそうに熱を込めている姿を、いったい何度見たことでしょう。
 そのうち、男の赤い頭をした道具が、つい先ほどは思いを果たして恥ずかしそうに下を向いていたのに、またしても臨戦態勢に回復し、ポリーの太腿の間からぬっと鎌首をもたげます。ポリーもそれを撫でては元気よくさせると、うつむいて、その柔らかな先っぽを上の口でくわえます。そんなことをするのがことさら楽しいのか、それとも滑らかにして入れやすくするためなのか、それはわかりません。

   第一巻
   ジョン・クリーランド=著 小林章夫(こばやし・あきお)=訳
   『ファニー・ヒル 快楽の女の回想』 平凡社ライブラリー 2012/01/10

   底本:
   Peter Wagner ed., Fanny Hill: Or, Memoirs of a Woman of Pleasure
   Penguin Classics, 1986


(2) 丸谷 2010
 でも、与えられ受取られるあの激しくておびただしいくちづけの回数を数えることなんかできますかしら。二人の口が舌を重ね、この上ない力と喜びで互に入れあい楽しむのが見えるとき、くちづけでやりとりするビロードのようになめらかな攻撃の一部始終がよくわかりました。
 そうこうしているうちに、鎮められ弱り果て、ずいぶん遅ればせに窪みから現れ出た彼の赤い頭をした戦士は今や絶頂の状態に立ち返り、ポリーの腿のあいだで勢いを盛り返して、たけりにたけっている。そしてポリーとしては、別にそれを収めて上機嫌にしたいという気はないものの、うつむいてそれを撫でさすり、そのなめらかな先端を本来の口ではない口の双の唇のあいだに受入れる。

   ジョン・クレランド=著 丸谷才一(まるや・さいいち)=抜粋訳
   【詩】詩は酒の肴になる 『ファニー・ヒル』
   丸谷才一=著 湯川豊=聞き手 『文学のレッスン
   新潮社 2010-05-30 所収

   この本は、新潮社の季刊誌 『考える人』 2007年 春号、2008年 春号、 
   夏号秋号、2009年 冬号春号夏号秋号(第20号、第24-30号)
   に連載されたインタヴュー記事をまとめたもの。したがって、上の
   抜粋訳は、正確には「口述訳」なのかもしれない。


(3) 及川 2005
 数え切れないほどの接吻。
 あまりにも激しすぎる接吻。
 舌を絡め合うと、二人のそれぞれが二枚の舌を持ってしまったかのようにも見えてしまった。欲情が奔流し歓喜が爆発する。二人はお互いの舌をそれぞれ口の中に差し込み、欲望が欲するところに従い、思う存分求めあっていた。
 そうこうするうち、男の体の一部が明らかな変化を見せるようになった。一旦は力をなくし、ポリーの穴から逃げ出していた彼の赤い顔をした「チャンピオン」はすっかり勢いを取り戻した。「チャンピオン」は彼女の太腿の間から、そそり立ち、その立派な姿を誇示するようになった。その様子がわたしの目にもはっきりと見えた。
 ポリーは「チャンピオン」のご機嫌を取るかのように、手で撫でたり、あるいは頭を下げて口にくわえたりした。彼女がこの行為によってどんな快感を得ていたのかはわからない。

   ジョン・クレランド=著 及川寛平(おいかわ・かんぺい)=訳
   『新訳 ファニー・ヒル』 宝島社文庫 2005-10-10


(4) 中野 1994
 二人の間に交された、激しい数限りないキスを一々数え上げることは誰にもできないでしょう。私はただ彼らがこの上なく気持よさそうに、互いに舌を口の中に押し入れるあの柔らかい突きを何回となく繰り返している様を見るだけでした。
 そうこうしている間にも、つい先程思いを遂げてきまり悪そうに戦場から引き揚げてきた彼の赤頭の勇士は、今や再びその最高の状態に立ち戻り、ポリーの股座からそのいかつい鎌首をもたげ始めました。ポリーの側でもそれを手で撫でたり、あるいは頭を低く下げてそのビロードのような柔らかい尖端を、本来それを収めるべき口とは別の唇にくわえこんだりして、その威勢よい状態を維持しようと懸命に機嫌をとっていました。

   第一信
   ジョン・クレランド=著 中野好之(なかの・よしゆき)=訳
   『ファニー・ヒル:一娼婦の手記』 ちくま文庫 1994-06-23

   本書は、下掲 中地智夫=訳 1969 を底本として再刊したもの。「中地智夫」は
   中野好之氏の偽名らしい。本書と 中地智夫=訳 1969 の刊行の経緯に
   ついては、中野氏の筆になる本書の「文庫版あとがき」をご参照ください。


(5) 吉田 1993, 1997
 しかし二人が交す烈しい接吻を誰が数えることが出来たでしょうか。そして舌も入れ合うこともあるようで、そうすると二人は銘々に舌が二つあることになり、それを二人はいかにも楽しんでいるようでした。
 その間に、一度はすっかり力をなくして穴から逃げ出してきた彼の赤い頭をした闘士が今は完全にもとに戻ってポリーの腿の間から立ち上り、ポリーもその機嫌をとって撫でてやったり、頭を下げてその端を唇で挟んでやったりして、それが自分でそうしたいのか、それともそうすることでそれが入りやすいようにするためだったのか解りませんでしたが、[略]

   第一信
   ジョン・クレランド=著 吉田健一(よしだ・けんいち)=訳
   a.ファニー・ヒル』 河出文庫 1997-08
   b. ファニー・ヒル』 河出書房新社 1993-09
   引用は a. に拠りました。


(6) 須賀 1977
[該当箇所の訳文を探しているのですが、まだ見つかりません。下記のとおり、なぜかこの本は、脚色の施されたフランス語版を底本にしているとのことですので、ひょっとすると該当箇所は未収録なのかもしれません。- tomoki y.]

   ジョン・クレランド=著 須賀慣(すが・なれる)=訳
   『ファーニィ・ヒルの娘』 角川文庫 1977-03-10

   原書:
   La Fille de Fanny Hill par John Cleland.
   Adapté de l'anglais et annoté par Jean des Cars.
   Paris : Pensée Moderne, 1973.


(7) 中地 1969
   ジョン・クレランド=著 中地智夫=訳
   『一娼婦の手記——ファニー・ヒル』 田園書房 1969-11-29

   この本は上述のとおり 中野好之=訳 1994 として再刊された。
   「中地智夫」は中野好之氏の偽名らしい。この本の刊行の経緯に
   ついては、上掲 中野好之=訳 1994 の「文庫版あとがき」を参照。


(8) 江藤 1968
 雨あられとあびせかけられる接吻の数は、とてもかぞえきれません。時おりなめらかな舌が互いにかわされるのが見えますが、そんな時は双方二つずつ舌があるようで、そういう交歓を無上の喜びとしているふうに見受けられました。
 とかくするうちに、つい先刻鉾(ほこ)をおさめたばかりの戦士が、いつのまにか精気をとりもどして、はつらつと立ち上がりました。勇み立つその戦士が、女王さまのようなポリーの前に額(ぬか)ずきますと、彼女はやさしくそのひたいにキスをして、はやる心をしずめてやります。さあいったい、彼女がこの戦士を戦(いくさ)の庭に立たせたいのかどうか、そのへんはちょっとわかりかねました。

   ジョン・クレランド=著 江藤潔(えとう・きよし)=訳
   『ファーニイ・ヒル』 角川文庫 1968-12-25


 Audio 
ファニー・ヒル全巻オーディオブック 朗読: ピーター・イアーズリー
Fanny Hill - Full audiobook read by Peter Yearsley

下に引用する箇所の朗読は 1:37:33 から始まります。 Uploaded to YouTube by GreatestAudioBooks on 28 Sep 2013. Audio courtesy of LibriVox. Reading of the excerpt below starts at 1:37:33. .


■英語原文 The original text in English

But who could count the fierce, unnumber's kisses given and taken? in which I could of ten discover their exchanging the velvet thrust, when both their mouths were double tongued, and seemed to favour the mutual insertion with the greatest gust and delight.

In the mean time, his red-headed champion, that has so lately fled the pit, quell'd and abash'd, was now recover'd to the top of his condition, perk'd and crested up between Polly's thighs, who was not wanting, on her part, to coax and deep it in good humour, stroking it, with her head down, and received even its velvet tip between the lips of not its proper mouth:

   Part 2, First Letter
   Fanny Hill, or Memoirs of a Woman of Pleasure (1749)
   by John Cleland
   E-text at:
   * The EServer's Fiction Collection
   * Project Gutenberg
   * Wikisource


■「his red-headed champion...」の邦訳の異同
 Variations of "his red-headed champion..." translated into Japanese

[ja] 和訳 Translations
男の赤い頭をした道具が、[略]またしても臨戦態勢に回復し、 ……………小林 2012
彼の赤い頭をした戦士は今や絶頂の状態に立ち返り、 ……………………丸谷 2010
彼の赤い頭をした闘士が今は完全にもとに戻って   …………………吉田 1993, 1997
彼の赤い顔をした「チャンピオン」はすっかり勢いを取り戻した。   …………及川 2005
彼の赤頭の勇士は、今や再びその最高の状態に立ち戻り、 ………………中野 1994
戦士が、いつのまにか精気をとりもどして、はつらつと立ち上がりました。…江藤 1968

[en] 原文 The original text:
his red-headed champion [omission] was now recover'd to the top of his condition


■外部リンク External links

 [en] English
   * Fanny Hill - Wikipedia
   * John Cleland - Wikipedia (baptised 1709-1789)

 [ja] 日本語
   * ファニー・ヒル - Wikipedia
   * ジョン・クレランド - Wikipedia (1709-1789)
   * 閑話究題 XX文学の館 > 発禁本 > ニセ本


■更新履歴 Change log

2013/10/02 オーディオブックの YouTube 画面を追加しました。
2012/01/22 松戸淳=訳 1951 の表紙画像を追加しました。
2012/01/19 小林章夫=訳 2012/01/10を追加しました。


« 1  Fanny Hill »
« 1 ファニー・ヒル »

にほんブログ村 本ブログへにほんブログ村 英語ブログへにほんブログ村 外国語ブログへブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村 本ブログ 洋書へにほんブログ村 英語ブログ 通訳・翻訳へにほんブログ村 外国語ブログ マルチリンガルへ翻訳ブログ人気ランキング参加中

↓ 以下の本・CD・DVDのタイトルはブラウザ画面を更新すると入れ替ります。
↓ Refresh the window to display alternate titles of books, CDs and DVDs.

■DVD

■洋書 Books in non-Japanese languages
(1) Fanny Hill

(2) Erich von Gotha

■和書 Books in Japanese
(1) ジョン・「クレランド」表記のもの

(2) ジョン・「クリーランド」表記のもの

  

|

« Podolo by L.P. Hartley L・P・ハートリー / レスリー・P・ハートリー / L・P・ハートリイ 「ポドロ島」「ポドロ」 | Main | Seaton's Aunt by Walter de la Mare ウォルター・デ・ラ・メーア / ウォルター・デ・ラ・メア 「シートンのおばさん」 »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference Fanny Hill: Memoirs of a Woman of Pleasure by John Cleland (2) ジョン・クレランド / ジョン・クリーランド 『ファニー・ヒル 快楽の女の回想』『ファニー・ヒル:一娼婦の手記』『情婦ヒル』『ファーニィ・ヒル』 (2):

« Podolo by L.P. Hartley L・P・ハートリー / レスリー・P・ハートリー / L・P・ハートリイ 「ポドロ島」「ポドロ」 | Main | Seaton's Aunt by Walter de la Mare ウォルター・デ・ラ・メーア / ウォルター・デ・ラ・メア 「シートンのおばさん」 »