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Saturday, 06 July 2013

The Great Quillow by James Thurber (1) ジェームズ・サーバー / ジェイムズ・サーバー 『おもちゃ屋のクィロー』『おもちゃやキロウの巨人退治』『おえらいクイロウさま』『大おとことおもちゃやさん』 (1)

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■はじめに Introduction

童話によく見られる繰り返しのおもしろさ。意味とリズムの両方を、じょうずに翻訳して伝えるのは、なかなか難しい。その一例を下に引用します。ジェイムズ・サーバー (1894-1961) 作『おもちゃ屋のクィロー』から。

雑誌ニューヨーカーを中心に活躍した作家・漫画家サーバーは、生涯にたくさんの本を出しました。しかし、子ども向けの本は5冊しか書いていません。1944年に初版が出た『おもちゃ屋のクィロー』はそのうちの1冊。『たくさんのお月さま』と並んでこんにちに至るまで読み継がれています。


■日本語訳 Translations into Japanese

(J1) 上條 1996
「おまえは、一晩(ひとばん)じゅう、かかりっきりで、おもちゃをつくっていたんだってな」と、かじ屋(や)はこわい顔(かお)をしていいました。
「おもちゃをつくりながら」と、クィローはたのしそうにいいました。
「大男(おおおとこ)のハンダーが、よろこびそうなはなしを考(かんが)えてたのさ」
 かじ屋(や)は、はなを鳴(な)らしました。
「一晩(ひとばん)じゅう、くろうして、おはなしとやらをたたきだしたっていうんだろう」
「それから、それをよりあわせてさ」と、かぎ屋(や)がいいました。
「それから、それをなめらかにしてさ」と、大工(だいく)がいいました。
「それから、それをころがしてさ」と、パン屋(や)がいいました。
「それから、それにぬいとりしてな」と、仕立屋(したてや)がいいました。
「それから、それをひとつにぬいあわせてな」と、くつ屋(や)がいいました。
「それから、それにはなしの糸(いと)をとおしてさ」と、ろうそく屋(や)がいいました。
「それから、それにあじつけをして」と、肉屋(にくや)がいいました。
「あますぎもせず、にがすぎもしないようにしてね」と、アメ屋(や)がいいました。

  • ジェームズ・サーバー=作 上條由美子(かみじょう・ゆみこ)=訳 飯野和好(いいの・かずよし)=絵 『おもちゃ屋のクィロー』 世界傑作童話シリーズ 福音館書店 1996-11-20

(J2) 岸上+篠=注釈 1991
この本は訳書ではなく注釈書です。つぎのような解説があります。

a hard night you must have spent hammering out your tale 「話を金槌でたたき出し、きっと骨のおれる夜を過したことだろうよ」以下、おのおのが自分の仕事に応じて文句をいってるが、それぞれ面白い。
 錠前屋は「ひねり出して」 'twisting it'
 大工は「たいらに削り出して」 'leveling it'
 パン屋は「ころがし出して」 'rolling it out'
 仕立屋は「縫いあげて」 'stitching it up'
 靴屋は「はりつけ合わせて」 'fitting it together'
 ろうそく屋は「中央の糸のまわりに築きあげて」 'building it around a central thread'
 肉屋は「調理しあげて」 'dressing it up'
 菓子屋は「から過ぎも甘過ぎもせずに作りあげて」 'making it not too bitter and not too sweet'
以上を見ると、これらはきちんと小説や物語の製作過程の手順らしくなっている。サーバーらしい配列の妙である。

  • ジェームズ・サーバー=原著 イギリス児童文学会=編集 岸上眞子(きしがみ・まみこ)+篠三知雄(しの・みちお)=注釈 『おもちゃやキロウの巨人退治』 英米児童文学双書 中部日本教育文化会=発行 1991-03-01

(J3) 松岡 1971
[略]鍛冶屋(かじや)は顔(かお)をしかめて、クイロウを見た。
「点灯役(てんとうやく)の話じゃ、おまえは、夜どおし、おもちゃを作っていたそうだな。」 「おもちゃをつくったり、」と、クイロウは快活(かいかつ)にこたえた。「それから、大男ハンダーにきかせる話を考えたりしていました。」
 鍛冶屋(かじや)は、ふんと鼻(はな)をならしていった。
「話をたたきだすのは、さぞつらかっただろうな。」
「ねじまげるのもな。」と、かぎ屋(や)がいった。
「かんなをかけるのもな。」と、大工(だいく)がいった。
「のばすのもな。」と、パン屋(や)がいった。
「ぬいあわせるのもな。」と、仕立屋(したてや)がいった。
「つなぎあわすのもな。」と、くつ屋(や)がいった。
「芯糸(しんいと)のまわりにつみあげていくのもな。」と、ろうそく屋(や)がいった。
「料理(りょうり)するのもな。」と、肉屋(にくや)がいった。
「苦(にが)すぎもせず、甘(あま)すぎもせぬように作るのもな。」と、菓子屋(かしや)がいった。

  • J・サーバー=作 松岡享子(まつおか・きょうこ)=訳 「おえらいクイロウさま」 石井桃子(いしい・ももこ)=責任編集 『子どもの文学——新しい時代の物語』 西欧文化への招待 10 グロリア インターナショナル 1971-01-01

(J4) 那須 1967
[略]かじやさんは、キローをにらみつけました。
「おまえさんは、のんびりと、にんぎょうをつくってたというじゃないか。火(ひ)ともしやさんが、そういってたよ。」
「ええ、そうですとも。おもちゃをつくってましたよ。それからね、大(おお)おとこのハンダーがおもしろがるような、おはなしを、かんがえていたんです。」
 キローは、たのしそうでした。
「そうかい、ゆうべは、さぞ、いっしょうけんめいだったのだろうな。なにしろ、おはなしを、たたきだすんだもの。」
「それから、そいつをおりまげるんだもの。」
と、かぎやさんがからかいました。
「それから、そいつをたいらにするんだからね。」
と、だいくさんもいいました。
「それから、また、のばすんだもの。」
と、パンやさんもいいました。
「のばしたものを、はりで、ぬってさ。」
と、ふくやさんもいいました。
「それを、きちっと、ぬいあわせるんですからね。」
と、くつやさんもいいました。
「それから、はなしのしんをいれて。」
と、ろうそくやさんもいいました。
「あじをつけて。」
と、にくやさんもいいました。
「あまり、にがくないように、それから、あますぎないように、するんだものね。」
と、おかしやさんもいいました。


 Cover photos  表紙画像

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■英語原文 The original text in English

He scowled at Quillow. “The lamplighter tells us you spent the night making toys.”
  “Making toys,” said Quillow cheerily, “and thinking up a tale to amuse the giant Hunder.”
The blacksmith snorted. “And a hard night you must have spent hammering out your tale.”
  “And twisting it,” said the locksmith.
  “And leveling it,” said the carpenter.
  “And rolling it out,” said the baker.
  “And stitching it up,” said the tailor.
  “And fitting it together,” said the cobbler,
  “And building it around a central thread,” said the candlemaker.
  “And dressing it up,” said the butcher.
  “And making it not too bitter and not too sweet,” said the candymaker.


■外部リンク External links


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