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Friday, 13 June 2014

The Thirteenth Floor by Frank Gruber フランク・グルーバー 「十三階の女」「十三階」

           目次 Table of Contents

   ■はじめに Introduction
    Gallery 1  表紙画像 Cover photos
   ■日本語訳 Translations into Japanese
     (J1) 金原 2010
     (J2) 矢野 1999
     (J3) 東谷 1988, 1991
     (J4) 北村 1975
     (J5) 福島 1961, 1963, etc.
    Gallery 2  表紙画像と肖像写真 Cover photo and a portrait
   ■英語原文 The original text in English
   ■外部リンク External links
   ■更新履歴 Change log

■はじめに Introduction

「十三階」はアメリカの作家フランク・グルーバーが書いた短編ホラー小説。雑誌ウィアード・テールズ1949年1月号に掲載された。舞台は禁酒法廃止後のシカゴ。その目抜き通りステート・ストリートに店を構えるボナンザ百貨店。

主人公リチャード・ジャヴリンは人類学者で、アマゾンの探検に持っていくのに必要な蒸留器を探している。ほうぼうの店をあたったが見つからない。ジャヴリンは最後の望みを託してこの大手デパートを訪れる。


 Gallery 1 
表紙画像 Cover photos

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a. Ja_9784001146028 b. Ja_9784265032600 c. Weird_4

d. Ja__4 e. Ja_b000jbq39m_ f. 2

g. Ja_b000j98u7c h. 1963


■日本語訳 Translations into Japanese

(J1) 金原 2010
 「で、何が目的ですか、お客さん?」
 「べつに目的なんかない」ジャヴリンはいらいらしていった。「払(はら)い戻(もど)しを求めているんじゃない。この店から金をだまし取るつもりもない。ただ、それを売った売り子に会いたいんだ。それを禁止する法律(ほうりつ)なんかないだろう?」
 「なぜ、会いたいんです?」
 「デートの約束をしたんだ。ところが、やってこなかった。よくあることかもしれないが、ぼくは一度もそんな目にあったことはない。なぜこなかったかききたいんだ」
 「ほう。それで、店が、その手伝いをしなくちゃいけないって? まあ、お客第一だからな。しかし、ジョベリンさんだかだれだか知らないが、このボナンザ百貨店には決まりがあってね——売り子は客をデートに誘(さそ)っちゃならないし、誘われたら断るってことになってる。つまり売り子と客はデートできないってことだ」
 「ベイリーさん、そのとおりですが」アンガーマンが口をはさんだ。「今回の件は、それとは話がいささか、ずれているように思えます。そもそも伝票が十六年も前のものです。ジャヴリンさんがどうやって、これを手に入れたんでしょう?」
 「だから、いったじゃないか」ジャヴリンが奥歯(おくば)をかみしめるようにしていった。「昨日もらったんだ。十三階で買ったんだよ——」
 「当店に十三階はございません」
 「何度もそういわれたよ。だけど……」ジャヴリンは言葉をのみこんだ。ベイリーが額を軽くたたいて、ウィンクしてみせたのだ。
 「頭がおかしいと思っているのか?」ジャヴリンはふとわれに返ってたずねた。


(J2) 矢野 1999
 「あんた、いったいなんのつもりなんだね?」
 「なんのつもりもないさ。ぼくは、払い戻しを要求しているわけじゃない。詐欺をはたらこうというわけでもない。きのう、これをぼくに売った、女店員に会わせてくれ、と頼んでるだけじゃないか!」
 「うちの女店員に、なんの用がある?」
 「デートの約束をしたんだ。そしたらとうとう来なかった。よくあることだというが、ぼくはいままでそんな目にあったことはなかった。会って、待ちぼうけをくわした理由をききたい」
 「なるほど、なるほど。それで店が、あんたの手助けをするべきだ、というんだな。よろしい、お客はいつも王様だ。ジェブリンさん、ボナンザ・デパートには規則があって、従業員が、お客とデートすることは、禁じられてるんだ」
 「そのとおりです」アンガーマンが口をはさんだ。「でも、問題はそのことじゃない。このお客さんが、どうして、十六年前の伝票を手に入れたかがききたいね、わたしは」
 「なんべんいったら、わかるんだ——きのう、十三階で蒸留器を買ったとき——」
 「だから、十三階はないと、なんべんいったら、わかるんです?」
 「たしかに、なんべんもいわれたよ。しかし、じっさいこのぼくが……」
 いいかけて、ジェブリンは言葉を切った。ベイリーが指先で、頭をトントンとたたいて、ウィンクして見せたからだ。
 「ぼくの頭がおかしい、とでも思ってるのか?」

  • フランク・グルーバー=作 矢野浩三郎(やの・こうざぶろう)=訳 「十三階の女」 『けむりのお化け』 恐怖と怪奇名作集 10 岩崎書店 1999
  • 児童向けの再話。完訳ではありません。ルビは省略しました。

(J3) 東谷 1988, 1991
 「いったいどういうおつもりなんですかね」
 「誤解してもらっちゃこまるな」ジャヴァリンはきっぱりといった。「ぼくは払いもどしを要求しようとしているわけじゃない。この店を相手に詐欺(さぎ)をはたらこうとしてるわけでもない。これをぼくに売った店員に会いたいだけだ。それが法に反するとでもいうのか」
 「どうして会いたいんです」
 「デイトの約束をしたんだ。彼女はあらわれなかった。よくあることだそうだが、ぼくにとってははじめてのことだ。だから彼女に会って、約束をすっぽかした理由を聞きたいんだよ」
 「なるほどね。それで店のほうが手助けをしてくれると思ってるわけですか。お客さまは神さまといいますからな。ねえ、ジャヴァリンさん、それが本名かどうか知りませんが、ボナンザ・ストアーには規則がありましてね——女店員はお客さまとデイトすることは禁止されてるんですよ。もちろん男の店員もおなじことですがね」
 「そのとおりだ」アンガーマンが口をはさんだ。「しかし問題はそんなことじゃない。その伝票は十六年まえのものなんだよ。ジャヴァリンさんがどうやって伝票を手にいれたかを、わたしは知りたいんだ」
 「いっただろう」ジャヴァリンは歯をくいしばっていった。「昨日手にいれたんだ。十三階で……」
 「この店には十三階はありませんがね」
 「何度もそういわれたよ。それでもぼくは……」ジャヴァリンは口をつぐんだ。ベイリーが片手で額をたたいて、片目をつぶったのだった。
 「ぼくが狂ってると思ってるんだな」ジャヴァリンは急に興奮をしずめてたずねた。

  • フランク・グルーバー=作 東谷真知子(ひがしたに・まちこ)=訳 「十三階」
  • 引用は b. 青心社版 1988-06-10 に拠りました。

(J4) 北村 1975
 「[略]おい、あんたいったい、なんのつもりだよ?」
 ベイリーがすごんでみせた。
 「なんのつもりもあるものか! ぼくは、払いもどしをしてくれなんていってない。詐欺をしようというわけでもない。昨日、これをぼくに売った女店員に会わせてくれと頼んでるだけじゃないか!」
 ジェブリンは、やっと用件をいえた。
 「うちの女店員に、なんの用がある?」
 「昨日、デートの約束をしたんだ。そしたら、とうとうこなかった。どうしてこなかったのか、会って理由をききたいんだ。」
 ジェブリンは、やけになってどなった。
 ベイリーが、アンガーマンのほうを見て、片目をちょっとつぶってみせてから、
 「おれが代理で答えてやるよ。」
 と、いった。
 「ボナンザ・ストアには社則があって、社員は、お客さまとのデートは禁じられているんだ。」
 「そのとおりです。」
 アンガーマンが口をはさんだ。
 「でも、問題はそのことではない。このお客さんが、どうして、十六年前の伝票を手に入れたかを、わたしはききたい。」
 「何度いったらわかるんだ!」
 ジェブリンは歯をくいしばった。
 「昨日、十三階で蒸留器を買ったとき——。」
 「だから十三階はないと、何度いったらわかるんです。」
 フロア・マネジャーがいった。
 「ああ、たしかに十三階はないと、何度もいわれたよ。しかし、実際にこのぼくが……。」
 と、いいかけて、ジェブリンは言葉をきった。
 ベイリーが、アンガーマンに、指先で頭をトントンと叩いて、クルクルと、その指先をまわしてみせたからだ。
 「このぼくが、気ちがいだとでも思っているのか?」

  • フランク・グルーバー=原作 北村良三(きたむら・りょうぞう)=訳 「十三階の女」 アガサ・クリスティー他=作 『幽霊』 怪奇の世界 5 朝日ソノラマ 1975
  • 児童向けの再話。完訳ではありません。ルビは省略しました。

(J5) 福島 1961, 1963, etc.
 「あんた、いったいなんのつもりなんだね?」
 「なんのつもりもくそもあるか? ぼくは、払い戻しを要求しているわけじゃない。詐欺を働こうというわけでもない。昨日これをぼくに売った女店員に会わせてくれと頼んでるだけじゃないか!」
 「うちの女店員に、なんの用がある?」
 「デートの約束をしたんだ。そしたらとうとう来なかった。よくあることだというが、ぼくはいままでそんな目にあったことはなかった。会って、待ちぼうけ食くわした理由がききたいんだ」
 「なるほど、なるほど。それで店があんたのお手助いをするべきだというんだな。よろしい、お客はいつも王様だ。ジェヴリンさん、ボナンザ・ストアには社則があって、社員は、お客さまとのデートはご法度なんだ」
 「そのとおりです」アンガーマンが口を挟んだ。「でも、問題はそのことじゃない。このお客さんが、どうして、十六年前の伝票を手に入れたかがききたいね、わたしは」
 「何度いったらわかるんだ——」ジェヴリンは食いしばった歯の間から、「昨日十三階で蒸留器を買ったとき——」
 「だから十三階はないと、何度いったらわかるんです」
 「ああ、確かに何度もいわれたよ。しかし実際このぼくが……」といいかけてジェヴリンは言葉を切った。ベイリイが指先で頭をトントンと叩いてウインクして見せたからだ。「このぼくが、気ちがいだとでも思ってるのか?」

  • フランク・グルーバー=作 福島正実(ふくしま・まさみ)=訳 「十三階の女」

 Gallery 2 
表紙画像と肖像写真 Cover photo and a portrait

a. B0006br33a_the_pulp_jungle b. Weird_tales_jan_1949_vol_41_no_2 c. Frankgruber


■英語原文 The original text in English

  "Just what's the game, Mister?"
  "There isn't any game," Javelin said, tautly. "I'm not trying to get a refund. I'm not trying to swindle the store. I want to see the sales clerk who sold me this outfit. Is there any law against that?"
  "Why do you want to see her?"
  "I made a date with her. She didn't show up. They tell me it happens right along, but it's never happened to me before. I want to ask her why she stood me up."
  "Oh, do you, now? And you figure the store should help you, eh? The customer's always right.' Well, Mr. Jav'lin, or whatever your name is, The Bonanza Store has a rule—salesgirls can't make dates with customers and visy-versy. I mean, salesmen can't make dates with customers."
  "You're quite right, Mr. Bailey," Mr. Ungerman interposed. "But this matter is, ah, shall we say, beside the point. That sales slip is sixteen years old. I would like to know how Mr. Javelin got it."
  "I told you," Javelin said, through bared teeth. "I got it yesterday. "On the thirteenth floor, where I—"
  "There is no thirteenth floor in this store."
  "So I've been told. Nevertheless . . ." Javelin stopped. The store detective was tapping his forehead and winking.
  "You thinlk I'm crazy?" Javelin asked, suddenly sober.

  • The Thirteenth Floor by Frank Gruber. This story first appeared in Weird Tales, January 1949, pp. 34-42.
  • E-text at UNZ.org [PDF]

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