The Veldt (The World the Children Made) by Ray Bradbury レイ・ブラッドベリ 「草原」「かべの中のアフリカ」
■はじめに Introduction
- 「草原」はレイ・ブラッドベリが1950年に発表した短編小説。翌1951年に出版された短編集『刺青の男』に収録されました。バーチャルリアリティを描いたSFの草分けと言われる作品です。その一部を下に引用します。
■日本語訳 Translations into Japanese
- 日暮 1995
- 部屋の中は、しんとしていた。暑い真昼のジャングルにある林間の空き地のように、がらんとしている。三方の壁はまっさらで、凹凸は感じられない。だがジョージとリディアが部屋の中ほどに立つと、壁はゴロゴロと音を立てて後退していった。どこまで動いたのか、やがて壁がまったく見えなくなったかと思うと、そこにはアフリカの草原が現れた。どちらを向いても完全に立体的で、天然の色がつき、小石や藁の一片にいたるまで本物そっくりの草原だ。頭上には抜けるような空が広がり、黄色っぽい太陽がぎらぎら輝いている。
- 日暮雅通(ひぐらし・まさみち)=訳 「草原」 ジャストシステム ケアリー・ジェイコブソン=編 シミュレーションズ ジャストシステム 1995
- 原書: Simulations: 15 Tales of Virtual Reality edited by Karie Jacobson. Citadel Press, 1993
- 日暮雅通(ひぐらし・まさみち)=訳 「草原」 ジャストシステム ケアリー・ジェイコブソン=編 シミュレーションズ ジャストシステム 1995
- 部屋の中は、しんとしていた。暑い真昼のジャングルにある林間の空き地のように、がらんとしている。三方の壁はまっさらで、凹凸は感じられない。だがジョージとリディアが部屋の中ほどに立つと、壁はゴロゴロと音を立てて後退していった。どこまで動いたのか、やがて壁がまったく見えなくなったかと思うと、そこにはアフリカの草原が現れた。どちらを向いても完全に立体的で、天然の色がつき、小石や藁の一片にいたるまで本物そっくりの草原だ。頭上には抜けるような空が広がり、黄色っぽい太陽がぎらぎら輝いている。
- 川本 1978
- 子ども部屋は静まり返っていた。暑い昼下がりの、ジャングルのあいだの空き地のようにガランとしている。ジョージとリディア・ハドレイのふたりがその部屋のまん中に立つと、四方の壁が音たててうしろに後退し始め、ついには水晶のように透明に、遠くかなたに遠のいたように見えた。そしてアフリカの草原があらわれた。三次元で作られ、どの面も色がついている。小石やワラはほんもののようだ。頭上の天井は深い空に変わり、そこには暑い黄色い太陽が輝いている。
- 川本三郎(かわもと・さぶろう)=訳 「草原」 万華鏡 サンリオSF文庫 1978/7/25
- 原書: The Vintage Bradbury 1965
- 子ども部屋は静まり返っていた。暑い昼下がりの、ジャングルのあいだの空き地のようにガランとしている。ジョージとリディア・ハドレイのふたりがその部屋のまん中に立つと、四方の壁が音たててうしろに後退し始め、ついには水晶のように透明に、遠くかなたに遠のいたように見えた。そしてアフリカの草原があらわれた。三次元で作られ、どの面も色がついている。小石やワラはほんもののようだ。頭上の天井は深い空に変わり、そこには暑い黄色い太陽が輝いている。
- 福島 1970, 1996, etc.
- そこには、アフリカの草原があった。
焼けつくようなみどり色の草原。遠くにはジャングルがひろがって、その上の青い空に、黄色くぎらぎらかがやく太陽が照っていた。- 福島正実(ふくしま・まさみ)=訳 「かべの中のアフリカ」
- ふしぎな足音 青い鳥文庫Kシリーズ 講談社 1996
- 世界の名作怪奇館07 壁の中のアフリカ SF編 1970
- その他
- 児童向け再話。引用は1. 1996年版に拠りました。ルビは省略しました。
- 福島正実(ふくしま・まさみ)=訳 「かべの中のアフリカ」
- そこには、アフリカの草原があった。
- 小笠原 1960, 1969, etc.
- 二人は、子供部屋の草ぶきの床に立っていた。そこは、暑い真昼のジャングルのなかの空地みたいに、がらんとしている。壁はまっしろな平面である。ジョージとリディア・ハードリーが、おもむろに部屋の中央に立つと、壁はごろごろ音を立てて、無限の彼方まで後退するように見えた。まもなく、アフリカの草原が立体的にあらわれた。どこもかしこも、小石や藁屑に至るまで、みごとな天然色である。あたまの上の天井は、黄色い太陽がかがやく深い空に変化した。
- 小笠原豊樹(おがさわら・とよき)=訳 「草原」
- 刺青の男 ハヤカワ文庫 新装版 2013
- 刺青の男 ハヤカワ文庫 1976
- 未来ショック 講談社文庫 1975
- 空想科学小説・ベスト10 荒地出版社 1961
- 刺青の男 ハヤカワ・ファンタジイ 1960
- S-Fマガジン 1960/8 No.7
- その他
- 引用は1. 2013年ハヤカワ文庫新装版に拠りました。
- 原書: The Illustrated Man 1951
■英語原文 The original text in English
-
Bradbury
-
The nursery was silent.
It was empty as a jungle glade at hot high noon. The walls were blank and two dimensional. Now, as George and Lydia Hadley stood in the center of the room, the walls began to purr and recede into crystalline distance, it
seemed, and presently an African veldt appeared, in three dimensions, on all sides, in color reproduced to the final pebble and bit of straw. The ceiling above them became a deep sky with a hot yellow sun.
- The Veldt by Ray Bradbury
- The Illustrated Man, first published in 1951. Preview on Google Books
- The story was first published in the September 23, 1950 edition of The Saturday Evening Post under the title “The World the Children Made.”
- E-text at:
- The Veldt by Ray Bradbury
-
The nursery was silent.
It was empty as a jungle glade at hot high noon. The walls were blank and two dimensional. Now, as George and Lydia Hadley stood in the center of the room, the walls began to purr and recede into crystalline distance, it
seemed, and presently an African veldt appeared, in three dimensions, on all sides, in color reproduced to the final pebble and bit of straw. The ceiling above them became a deep sky with a hot yellow sun.
◾️関連音声・動画 Audio & Video
- 音楽 deadmau5 feat. Chris James - The Veldt
- オーディオブック(朗読) Audiobook read by Leonard Nimoy
上の引用箇所の朗読は 1:19 から。 Reading of the excerpt above starts at 1:19
- テレビドラマ The Veldt (1989) - The Ray Bradbury Theater - S03E11
- 映画 The Illustrated Man (1969) Trailer
- ラジオドラマ The Veldt (1951) - Dimension X Episode 43, NBC Radio
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