Kenko "Essays in Idleness" 吉田兼好『徒然草』

Wednesday, 31 October 2007

吉田兼好『徒然草』第3段 Essays in Idleness 3 by Yoshida Kenko

■紅葉山文庫本『徒然草』
 The Momijiyama Bunko edition of Tsurezuregusa

紅葉山文庫本『徒然草』。江戸初期の嵯峨本。紅葉山文庫とは、もともと徳川家康が慶長7(1602)年、江戸城内に設けた文庫(=書庫、私設図書館)。画像出典:国立公文書館ホームページ
The Momijiyama Bunko edition of "Tsurezuregusa," an example of the magnificently bound and printed books of the early Edo-period (1603-1867) known as Sagabon.  Built in the Edo Castle 1602, the Momijiyama Bunko was originally the library of the shogun Tokugawa Ieyasu.  Image source: The National Archives of Japan website

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■イタリア語訳 Translation into Italian

UN UOMO AFFASCINANTE [3]
(....) Tuttavia  bene non indulgere ai piaceri dei sensi e non essere considerato dalle donne come una facile conquista.

   Pensieri Nella Quiete
   Excerpt at World Public Library


■英訳 Translations into English

(E1) Keene, 1967, 1998
#3  (....) But it is best that a man not be given over completely to fleshy pleasures, and that women not consider him an easy conquest.

   * Essays in Idleness: The Tsurezuregusa of Kenko,
    Translated and with a new preface by Donald Keene
    Columbia University Press, 1998
   * Essays in Idleness translated by Donald Keene
    Columbia University Press, 1967


(E2) Porter, 1914, 1973
On a Man's Relations with Women - Section 3.
(....) But still, be not too gay. To be thought by women rather a difficult man to get on with is the best.
 
   The Miscellany of a Japanese Priest:
   being a translation of Tsure-zure Gusa
   translated by William N. Porter,
   with an introduction by Sanki Ichikawa.
   * Paperback by Tuttle Publishing, 1973/12
   * First edition by Humphrey Milford, London, 1914(大正3)
   Scanned whole book can be viewed here.


■現代日本語訳 Translations into contemporary Japanese

(J1) 松村 2009
3段
(……)まあそうは言っても、のめりこみすぎて相手に軽んじられるようではなくて、女性からは侮りがたい存在と思われているくらいでありたいものだ。

   松村栄子(まつむら・えいこ)=訳
   「松村栄子さんと読み解くつれづれ草2」
   『京都新聞』2009/04/12 親しむ (12) 面 ing Kyo


(J2) 大伴 2007
色好みのあり方 第三段
(……)そうかといって、ひたすら恋にだらしないというのではなく、女に、容易に手に落ちると思われないようなのこそ、望ましいあり方なのに違いない。
 
   大伴茫人(おおとものぼうじん)=編
   『徒然草・方丈記 日本古典は面白い』ちくま文庫 2007/07


(J3) 吾妻 2004
第三段
(……)とはいっても、がむしゃらに恋に溺死するのではなくて、女の子からは「節操のない男の子だわ」と思われないように注意するのが、ミソである。 

   吉田兼好=著 吾妻利秋=訳『徒然草』(Tsurezuregusa.com)


(J4) 角川書店 2002
第三段
(……)それほど恋に夢中だからといっても、やたら性欲の塊みたいに、がつがつすることなく、女性にいつも好感を持たれるように節度をもって行動するのが、理想的である。
[原文は総ルビ。ここでは省略しました - tomoki y.]
 
   角川書店=編『徒然草 ビギナーズ・クラシックス
   角川ソフィア文庫 2002/01


(J5) 橋本 1990, 1993, etc.
第三段
(……)それでもひたすらのバカスケベじゃなくて、女に「ただもんじゃないわね」って思われるっていうのが、これ絶対、理想のあり方なんだよなァ!

   橋本治=文 田中靖夫=絵
   5a.絵本徒然草(上)』(全2巻)河出文庫 2005/06
   5b.絵本徒然草(上)』(全2巻)河出書房新社 1993/06
   5c.絵本徒然草』(全1巻)河出書房新社 1990/08
   引用は 5c. に拠りました。


(J6) 永井 1987, 1996
第三段 男は恋の心を……
(……)とはいうものの、決して愛欲三昧(ざんまい)というのではない。「あの人は女を追いかけてばかり」などと、女たちから見くびられない男でありたいものだ。それが男の恋の美学であろう。
  
   永井路子=訳「徒然草」
   6a.永井路子の方丈記・徒然草』集英社文庫 1996/10 所収
   6b.永井路子の方丈記・徒然草』わたしの古典13
    創美社=編集 集英社=発行 1987/09 所収
   引用は 6b. に拠りました。


(J7) 永積 1971
第三段
(……)そうかといって、恋におぼれきっているふうではなくて、女から、くみしやすくないと思われるのこそ、このましい身の持ち方というべきである。
 
   永積安明(ながずみ・やすあき)=校注・訳「徒然草」
   神田秀夫、永積安明、安良岡康作=校注・訳
   『日本古典文学全集27 方丈記・徒然草・正法眼蔵随聞記・歎異抄
   小学館 1971/08 所収


(J8) 臼井 1962
第三段
(……)といって、いちずに女への情に溺れきるというのでもなく、女から安っぽく見くびられないのが、男としては望ましいことなんだ。
  
   臼井吉見(うすい・よしみ)=訳「徒然草」
   『古典日本文学全集11 枕草子・方丈記・徒然草
   筑摩書房 1962/01 所収


(J9) 今泉 1951, 1957
第三段
(……)といつて、すつかり情愛に溺れきるといふのでもなくて、女から輕々しく思はれないのが、男としては本懐なことなんだ。

   今泉忠義(いまいずみ・ただよし)=訳註
   9a.改訂 徒然草―付 現代語訳』角川文庫 1957/07 所収
   9b. 『徒然草』角川文庫 1951/11 所収
   引用は 9a. に拠りました。


(J10) 佐藤 1937, 1999

(……)さうかと言つてまるで恋に溺れ切つてゐるといふのではなく、女にも軽蔑されてゐるといふのでないのが理想的なところである。
  
   佐藤春夫=訳「徒然草」
   10a.底本 佐藤春夫全集31 翻訳・翻案4』(全36巻)
    臨川書店 1999/09 所収
   10b.現代語訳国文学全集19 徒然草・方丈記
    非凡閣 1937/04(昭和12)所収
   引用は 10a. に拠りました。


(J11) 与謝野 1916, 2005

(……)さうかと云つて、浮気で居るのでも無くて、女から不愛相に妬みを掛けられたりして居る境地(きやうち)がいい。
 
   与謝野晶子=訳「新訳徒然草」
   11a. 与謝野寛、与謝野晶子=著
    『鉄幹晶子全集17 新訳徒然草・我等何を求むるか・晶子新集
    勉誠出版 2005/03 所収
   11b.新訳徒然草』阿蘭陀書房 1916/11(大正5)
   与謝野訳では、序段を「一」と数えているので、段数が他の版のものと
   ずれて、三のはずが四になっています。引用は 11a. に拠りました。


(J12) 飯田 1916
第三段
(……)さればと云つて。只(ただ)浮氣(うはき)一方の人間では無く。充分・心に締(しまり)があつて。女に安つぽく・甘く見られない樣(やう)に有(あ)り度(た)いものである。
[原文は総ルビ。ここでは、その一部を省略しました - tomoki y.]
  
   飯田季治(いいだ・すえはる)=著『詳譯徒然草
   金港堂書籍 1916/03(大正5)


■日本語原文 The original text in 14th century Japanese

第三段

(……)さりとて、ひたすらたはれたる方にはあらで、女にたやすからずおもはれんこそ、あらまほしかるべきわざなれ。

   Tsurezuregusa by Yoshida, Kenko
   E-text at Japanese Text Initiative, University of Virginia Library
 
   About the original source:
   Title: Nihon Koten Tokuhon IV
   Title: Tsurezuregusa
   Author: Kenko Yoshida
   Publisher: Tokyo: Nihon Hyoronsha, 1939
 
   底本:
   西尾実=著『日本古典読本7 徒然草
   日本評論社 1939(1942 再版?)


■更新履歴 Change log

2009/07/17 松村栄子=訳 2009/04 と今泉忠義=訳註 1957/07 を追加しました。
2007/12/10 永積安明=訳 1971/08 を追加しました。


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Friday, 12 October 2007

吉田兼好『徒然草』第79段 Essays in Idleness 79 by Yoshida Kenko

           目次 Table of Contents

    Images 
   ■イタリア語訳 Translation into Italian
   ■英訳 Translations into English
     (E1) Keene, 1967, 1998
     (E2) Porter, 1914, 1973
   ■現代日本語訳 Translations into contemporary Japanese
     (J1) 酒井 2011
     (J2) 大伴 2007
     (J3) 吾妻 2004
     (J4) 角川書店 2002
     (J5) 橋本 1990, 1993, etc.
     (J6) 永井 1987, 1996
     (J7) 臼井 1962
     (J8) 今泉 1951, 1957
     (J9) 佐藤 1937, 1999
     (J10) 与謝野 1916, 2005
     (J11) 飯田 1916
   ■日本語原文 The original text in 14th century Japanese
   ■更新履歴 Change log


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a. 51xk93f8f0l b. 41q5byp29pl c. Itinotorii

■イタリア語訳 Translation into Italian

[79]  bene mostrare di non essere aggiornati su ogni argomento. Una persona saggia, pur conoscendo bene le cose, non fa sfoggio della propria cultura. Al contrario, un uomo poco istruito e proveniente da un paese di provincia, risponde ad ogni domanda, dando l'impressione di sapere tutto. (....)

   Pensieri Nella Quiete
   Excerpt at World Public Library


■英訳 Translations into English

(E1) Keene, 1967, 1998
#79  A man should avoid displaying deep familiarity with any subject. Can one imagine a well-bred man talking with the air of a know-it-all, even about a matter with which he is in fact familiar? The boor who pops up on the scene from somewhere in the hinterland answers questions with an air of utter authority in every field. (....)


(E2) Porter, 1914, 1973
Section 79.  In anything whatsovever it is best not to be too forward. Does a wise man proudly tell all that he knows? A man from the country, on the contrary, is ever ready and willing to answer any question as if he knew all about everything. (....)

  • Source: The Miscellany of a Japanese Priest: being a translation of Tsure-zure Gusa, translated by William N. Porter, with an introduction by Sanki Ichikawa.
  • A full scanned book can be viewed here.

■現代日本語訳 Translations into contemporary Japanese

(J1) 酒井 2011
何事も、よく知らない顔をしているのが良いのだ。ちゃんとした人間なら、知っている事だからといって、物知り顔に話すようなことがあろうか。片田舎から出てきたばかりの人に限って、あらゆることに通暁(つうぎょう)しているかのような受け答えをするものだ。(……)

   自慢
   酒井順子(さかい・じゅんこ)=著
   『徒然草REMIX』 新潮社 2011/11/20


(J2) 大伴 2007
何事でも深く立ち入らない様子をしているのがよいのだ。立派な人は、知っている事だからといって、それほど物知り顔をして言うだろうか。片田舎から差し出てきた人こそ、どんな事にでも通じているふうの受け答えはするものである。(……)

   第七九段
   大伴茫人(おおとものぼうじん)=編
   『徒然草・方丈記 日本古典は面白い』 ちくま文庫 2007/07


(J3) 吾妻 2004
どんなことに関しても素人のふりをしているのが良い。知識人であれば、よく知っていることだといってもむやみに得意顔で話し出すだろうか? 郊外から京都に上京した人は、すべてのことにおいて、いろいろなことを知っているようなふりをしたりする。(……)

   第七十九段
   吉田兼好=著 吾妻利秋=訳 『徒然草』 (Tsurezuregusa.com)


(J4) 角川書店 2002
どんな場合でも、よく知らないふりをするにかぎる。立派な人間は、知っていても知ったかぶりをしないものだ。軽薄な人間にかぎって、何でも知らないことはないといった返事をする。(……)
[原文は総ルビ。ここでは省略しました - tomoki y.]

   第七十九段
   角川書店=編 『徒然草 ビギナーズ・クラシックス
   角川ソフィア文庫 2002/01


(J5) 橋本 1990, 1993, etc.
どんな事にでも、「詳しくない」という顔をしとるのがいいな。まともな人間は、知ってる事でもそうそう知った風な顔をしては言わんだろ? ダサイ田舎から出て来ちまった人間だけよ、どんなことでも知ってる風な受け答えをしたりはするな[ママ]。(……)

   第七十九段
   橋本治=文 田中靖夫=絵
   5a.絵本徒然草(上)』(全2巻) 河出文庫 2005/06
   5b.絵本徒然草(上)』(全2巻) 河出書房新社 1993/06
   5c.絵本徒然草』(全1巻) 河出書房新社 1990/08
   引用は 5c. に拠りました。


(J6) 永井 1987, 1996
何事につけても、深く立ちいらないような態度をとることこそ望ましい。教養ある人は、知っていることでも、そうむやみに知ったかぶりをしたりはしない。むしろ片田舎からぽっと出てきた人こそ、何につけても心得ているような返事をするものである。(……)

   第七十九段
   永井路子=訳 「徒然草」
   6a. 永井路子の方丈記・徒然草』 集英社文庫 1996/10 所収
   6b.永井路子の方丈記・徒然草』 わたしの古典13
      創美社=編集 集英社=発行 1987/09 所収
   引用は 6b. に拠りました。


(J7) 臼井 1962
何ごとにつけ、深く立ち入って、よく知っているようなふりをしないのがよい。教養のある人なら、知っていることだからって、それほど知ったかぶってしゃべるものか。田舎のぽっと出にかぎって、何でもわかっているみたいな応答をするものなのだ。(……)

   第七九段
   臼井吉見(うすい・よしみ)=訳 「徒然草」
   『古典日本文学全集11 枕草子・方丈記・徒然草
   筑摩書房 1962/01 所収


(J8) 今泉 1951, 1957
何ごとにも不案内な樣子をしてゐる方がいい。敎養の高い人なら、たとひ知つてゐることであつても、果してそれほど知つたかぶりして喋るかどうか。片田舎からやつて來た人などは、ほんたうに、専門的な、どんな道にも達してゐるやうな應答をするものだ。(……)

   第七十九段
   今泉忠義(いまいずみ・ただよし)=訳註
   8a.改訂 徒然草―付 現代語訳』 角川文庫 1957/07 所収
   8b. 『徒然草』 角川文庫 1951/11 所収
   引用は 8a. に拠りました。


(J9) 佐藤 1937, 1999
万事に、あまり立ち入らないのがよい。上品な人は知つてゐる事でも、それほど知つたかぶりをして話すだらうか。片田舎から出て来た人の方が万端心得顔に応対するものである。(……)

   七十九
   佐藤春夫=訳 「徒然草」
   9a.底本 佐藤春夫全集31 翻訳・翻案4』(全36巻)
      臨川書店 1999/09 所収
   9b. 現代語訳国文学全集19 徒然草・方丈記
      非凡閣 1937/04(昭和12)所収
   引用は 9a. に拠りました。


(J10) 与謝野 1916, 2005
どんなことにも深く立ち入らない態度を取つて居るのがいい。人格の立派な人は知つて居ることであつても、さう決して蝶蝶(てふ/\)と口にはしない。田舎出の人は学問や芸術に就いての自信を発表したがるものである。(……)

   七九
   与謝野晶子=訳 「新訳徒然草」
   10a. 与謝野寛、与謝野晶子=著
      『鉄幹晶子全集17 新訳徒然草・我等何を求むるか・晶子新集
      勉誠出版 2005/03 所収
   10b.新訳徒然草』 阿蘭陀書房 1916/11(大正5)
   引用は 10a. に拠りました。


(J11) 飯田 1916
學問藝術其の他何事に關(くわん)しても。凡(すべ)て自分は不心得であると云ふ樣子(やうす)を爲(し)てゐるのが宜い。上品な人は自分が能(よ)く知つてゐる事でも。さのみ知つた風に語りは爲ない。片田舎から出て來た人に限つて。萬能(ばんのう)に長(た)けて居る樣な口ぶりの返答をする物である。(……)
[原文は総ルビ。上の引用では、その一部を省略しました - tomoki y.]

   第七十九段
   飯田季治(いいだ・すえはる)=著 『詳譯徒然草
   金港堂書籍 1916/03(大正5)


■日本語原文 The original text in 14th century Japanese

第七十九段

何事も入りたゝぬさましたるぞよき。よき人は、知りたる事とて、さのみ知りがほにやは言ふ。片田舎よりさし出でたる人こそ、萬の道に心得たるよしのさしいらへはすれ。(……)


■更新履歴 Change log

  • 2013/10/08 酒井順子=著 2011/11/20 を追加しました。
  • 2009/07/17 今泉忠義=訳註 1957/07 を追加しました。
  • 2007/10/26 大伴茫人=訳 2007/07 を追加しました。また、佐藤春夫=訳 1999/09 の訳文を、他の版のものと取り違えていたので、訂正しました。安易にコピー&ペーストをすると、こういう誤りを犯しがちです(苦笑)
  • 2007/10/22 角川書店=編 2002/01 と永井路子=訳 1987/09 を追加しました。

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Thursday, 06 September 2007

吉田兼好 『徒然草』 序段 Essays in Idleness, Introduction, by Yoshida Kenko

          目次 Table of Contents

    Video 1  「徒然草を現代語訳してみる」を朗読してみた(ボヤキ系)その①
   ■ロシア語訳 Translations into Russian
     (Ru1)
     (Ru2)
   ■フィンランド語訳 Translation into Finnish
   ■スウェーデン語訳 Translation into Swedish
   ■ドイツ語訳 Translation into German
   ■イタリア語訳 Translation into Italian
   ■英訳 Translations into English
     (E1) Keene, 1967, 1998
     (E2) Kurata, 1948, 1959
     (E3) Porter, 1914, 1973
     (E4) Wakameda, 1914, 1918, etc.
     (E5) Sansom, 1911, 1955, etc.
    Image gallery  さまざまな言語の版 Editions in various languages
   ■インドネシア語訳 Translation into Indonesian
   ■中国語訳(簡体字)Translation into simplified Chinese
   ■中國語譯(繁體字)Translation into traditional Chinese
   ■現代日本語訳 Translations into contemporary Japanese
     (J1) 酒井 2011
     (J2) 島内 2010
     (J3) 青山+甲斐+邑上 2009
     (J4) 松村 2009, 2010
     (J5) 加藤(監修) 弦川(文) 2008
     (J6) 大伴 2007
     (J7) 吾妻 2004
     (J8) 角川書店 2002
     (J9) 浜野 2001
     (J10) 嵐山 1992
     (J11) 橋本 1990, 1993, etc.
     (J12) 長谷川=監修 柳川=シナリオ 1990, 1998
     (J13) 杉本 1987, 1996
     (J14) 永井 1987, 1996
     (J15) 山崎 1980
     (J16) 三木 1979
     (J17) 島尾 1976, 2006
     (J18) 冨倉+貴志 1975
     (J19) 永積 1971
     (J20) 安良岡 1967
     (J21) 臼井 1962
     (J22) 今泉 1951, 1957
     (J23) 与謝野 1916, 2005
     (J24) 飯田 1916
   ■日本語原文 The original text in 14th century Japanese
     (1) ローマ字表記 In romanization
     (2) 漢字仮名表記 In kanji and kana
    Video 2  徒然草 - 出演: 野村萬斎
     Tsurezuregusa performed by Mansai Nomura
   ■更新履歴 Change log


 Video 1 
「徒然草を現代語訳してみる」を朗読してみた(ボヤキ系)その①

テキスト ワラノート:徒然草を現代語訳してみる


■ロシア語訳 Translations into Russian

(Ru1)
Когда весь день праздно сидишь против тушечницы и для чего-то записываешь всякую всячину, что приходит на ум, бывает, такое напишешь – с ума можно сойти.

   Кэнко-Хоси - Записки от скуки
   E-text at:
   * Библиотека РусЛит
   * BookReader


(Ru2)
Насытившись однообразья чередой, на закате дня берусь за кисть, и, как душа прикажет, кладу на бумагу то, что на ум придет - и тут же вылетает вон, и так странно выходит - голова кругом идет.

   Ёсида Канэёси - Записки на досуге
   Translated by Александра Мещерякова
   Excerpts at Окно в Японию


■フィンランド語訳 Translation into Finnish

Tuntuu kuin jokin merkillinen hulluus minua vaivaisi: istun päiväkausia joutilaana mustekiveni ääressä ja vailla vasituista aikomusta kirjoittelen muistiin mielessäni ajelehtivia joutavia mietteitä.

   Joutilaan mietteitä. (Tsurezuregusa) by Yoshida Kenko
   Translated by Kai Nieminen
   Source: Joutilaan mietteitä - Wikipedia


■スウェーデン語訳 Translation into Swedish

Vilken egendomlig, vansinnig känsla det ger mig, när jag inser att jag har tillbringat hela dagar framför denna rivsten, med inget bättre för mig, än att på måfå fästa ned vad orimliga tankar som råkar ha flyttat in i mitt sinne.

   Tsurezuregusa by Yoshida Kenko
   Excerpt at Tsurezuregusa - Wikipedia


■ドイツ語訳 Translation into German

Wenn ich allein bin und gerade nichts zu tun habe, sitze ich den ganzen Tag meinem Tuschkasten gegenüber und schreibe alles Unbedeutende, das sich in mir widerspiegelt, nieder, ohne einen bestimmten Zweck damit zu verfolgen. Seltsamerweise sind es recht wunderliche Dinge.

   Tsurezuregusa ; oder, Aufzeichnungen aus Mussestunden
   by Yoshida Kenkō
   Translated by Oscar Benl
   Tokyo : Japanisch-Deutschen Kultur-Institut, 1940
   東京: 財團法人 日獨文化協會 昭和15年7月15日 發行


■イタリア語訳 Translation into Italian

Non avendo altro da fare, provo una strana e frenetica sensazione nel passare tutto il giorno davanti al calamaio, scrivendo a caso i pensieri assurdi che mi vengono in mente.

   Pensieri Nella Quiete
   Excerpt at World Public Library


■英訳 Translations into English

英訳の書誌情報に関しては、国立国会図書館の 「徒然草を英訳すると… −翻訳された日本文学−」というウェブページにある PDFファイル がとても参考になりました。

(E1) Keene, 1967, 1998
What a strange, demented feeling it gives me when I realize I have spent whole days before this inkstone, with nothing better to do, jotting down at random whatever nonsensical thoughts that have entered my head.

   * Essays in Idleness: The Tsurezuregusa of Kenko,
    Translated and with a new preface by Donald Keene
    Columbia University Press, 1998
   * Essays in Idleness translated by Donald Keene
    Columbia University Press, 1967
   Excerpt at Tsurezuregusa - Wikipedia


(E2) Kurata, 1948, 1959
My life is not one of occupation, it is a life of leisure. Every day is like the day that went before. My ink-dish lies before me. My heart is like a mirror−all that world is reflected in it. I write as I see, and it may seem strange and mad enough, for I think of strangely mingled things.

   The Harvest of Leisure
   Translated by Ryukichi Kurata
   * Hardcover by John Murray, London, 1959
   * Paperback by John Murray, London, 1948.
   Quotation at the National Diet Library website


(E3) Porter, 1914, 1973
Leisurely I face my inkstone all day long, and without any particular object jot down the odds and ends that pass through my mind, with a curious feeling that I am not sane.

   The Miscellany of a Japanese Priest:
   being a translation of Tsure-zure Gusa
   translated by William N. Porter,
   with an introduction by Sanki Ichikawa.
   * Paperback by Tuttle Publishing, 1973/12
   * First edition by Humphrey Milford, London, 1914(大正3)
   Scanned whole book can be viewed here.


(E4) Wakameda (若目田), 1914, 1918, etc.
As I remain idle and weary, I sit all day long face to face with the ink-slab, and scribble down whatever comes across my mind. It seems strange and demented.

   The Idle Thoughts of a Recluse. Translated by Takeji Wakameda
   若目田武次=譯 『英譯 徒然草』
   * Hokodo & Shinseido 1921/09/15(大正10)
    邦光堂書店+眞誠堂書店=發行 1921/09/15(大正10)
   * 郁文堂刊 "J. Wakameda 訳" 全1冊 1918/08/28(大正7)
    この郁文堂版は東洋文庫所蔵。目録は ここ
   * Published by Taiheikan, Tokyo, 1914(大正3)
    mentioned in the National Diet Library website


(E5) Sansom, 1911, 1955, etc.
To while away the idle hours, seated the livelong day before the inkslab, by jotting down without order or purpose whatever trifling thoughts pass through my mind, verily this is a queer and crazy thing to do!

   The Tsuredzure Gusa of Yoshida no Kaneyoshi
   translated by George Sansom.
   Asiatic Society of Japan Transactions 39, 1911(明治44)

   Anthology of Japanese Literature
   compiled and edited by Donald Keene.
   Grove Press, New York, 1955

   Excerpt at:
   * Humanistic Texts
   * Tsurezuregusa - Wikipedia
   * Yoshida Kenko - Wikiquote


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さまざまな言語の版 Editions in various languages

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ko Ko_9788996095996 ja Ja_9784309407470

Flag_of_russiasvg_2 露 [ru] ISBN : 9785389022850 Записки от скуки 2011
Flag_of_russiasvg_2 露 [ru] ISBN : 9785806202964 Записки на досуге 2008
Flag_of_finlandsvg 芬 [fi] ISBN : 9789513044121 Joutilaan mietteitä 1978
Flag_of_italysvg 伊 [it] ISBN : 978883070950   Pensieri nella quiete 2000
Flag_of_germanysvg 独 [de] ASIN : B0039X2VF2     Tsurezuregusa 1948
Flag_of_spainsvg 西 [es] ISBN : 9788475171746 Tsurezuregusa : ocurrencias de un ocioso 1986
Flag_of_the_united_kingdomsvg_2 英 [en] ISBN : 9781853267888 Essays in Idleness 1999
Flag_of_the_united_kingdomsvg_2 英 [en] ASIN : B006JH980Q   The Harvest of Leisure 1947
Flag_of_the_republic_of_chinasvg_3 中 [zh] ISBN : 9789867475039 徒然草 2004 (台湾)
Flag_of_south_korea_2 韓 [ko] ISBN : 9788996095996 쓰레즈레구사 2010
Flag_of_japan_2 日 [ja] ISBN : 9784309407470 絵本徒然草(上) 2005


■インドネシア語訳 Translation into Indonesian

Sungguh suatu perasaan asing dan gila kurasakan ketika kusadari bahwa aku telah menghabiskan seharian penuh di depan batu- tinta ini, dengan tiada satupun yang bisa kukerjakan selain mengisi waktu, mencatat secara acak pikiran tak masuk akal apapun yang memasuki kepalaku.

   Dari Esai-Esai Iseng Kenkô by Kenkô
   in Pagi Di Amerika by Hikmat Darmawan
   Publisher: Penerbit Serambi
   Preview at Google Books


■中国語訳(簡体字)Translation into simplified Chinese

竟日无聊,对砚枯坐,心镜之中,琐事纷现,漫然书之,有不甚可理喻者,亦可怪也。

   《徒然草》 作者:吉田兼好
   Excerpt at 百度空间


■中國語譯(繁體字)Translation into traditional Chinese

竟日無聊,對硯枯坐,心鏡之中,瑣事紛現,漫然書之,有不甚可理喻者,亦可怪也。

   《徒然草》 作者: 吉田兼好 譯者: 王以鑄
   木馬文化出版社 2004-03-01
   Excerpt at 天地圖書


■現代日本語訳 Translations into contemporary Japanese

(J1) 酒井 2011
退屈な毎日を暮らしている時に、心に浮かんでくるどうでもいいようなことを何となく書きつけてみれば、「あやしうこそものぐるほし」いんだなぁ……、といった意味のこの一文。しかし「つれづれ」とか「よしなし事」とか「そこはかとなく」といった言葉を眺めていると、作者の兼好法師(けんこうほうし)は、一体どの程度本気で、この一文を書いたのであろうかと、思えてくるのです。[略]
 冒頭の一文における、兼行にとっての唯一の真実の言葉。それは、「あやしうこそものぐるほしけれ」でしょう。この部分は、「変に気違いじみたことである」などと現代語訳されている場合もありますが、私の感覚ですと、
「何をしているんだかなぁ、俺」
 といった気分ではないかと思うのです。

   酒井順子(さかい・じゅんこ)=著 『徒然草REMIX』 
   新潮社 2011/11/20

  • この本は「小説新潮」2009年11月号〜2011年6月号に連載された『徒然草REMIX』に、加筆・修正を行ったものです。徒然草の現代語訳そのものを収録した本ではなく、徒然草についてのエッセー本です。しかし、現代の人気エッセイストである酒井さんが徒然草をどのように見ているかは興味深いので、参考のために上の箇所を抜粋しておきました。

(J2) 島内 2010
さしあたってしなければならないこともないという徒然(つれづれ)な状態が、このところずっと続いている。こんな時に一番よいのは、心に浮かんでは消え、消えては浮かぶ想念を書き留めてみることであって、そうしてみて初めて、みずからの心の奥に蟠(わだかま)っていた思いが、浮上してくる。まるで一つ一つの言葉の尻尾に小さな釣針(つりばり)が付いているようで、次々と言葉が連なって出てくる。それは和歌という三十一文字からなる明確な輪郭を持つ形ではなく、どこまでも連なり、揺らめくもの……。そのことが我ながら不思議で、思わぬ感興におのずと筆も進んでゆく。自由に想念を遊泳させながら、それらに言葉という衣裳を纏(まと)わせててこそ、自分の心の実体と向き合うことが可能となるのではなかろうか。

   兼好=著 島内裕子(しまうち・ゆうこ)=校訂・訳
   『徒然草』 ちくま学芸文庫 筑摩書房 2010/04/10


(J3) 青山+甲斐+邑上 2009
することがなくて退屈なまま、一日じゅうすずりに向かって、心の中にうかんでは消えてゆくとりとめのないことを、はっきりとした目的もなく書き留めてみると、不思議なほどおかしな気持ちがすることである。

   青山由紀(あおやま・ゆき)+甲斐利恵子(かい・りえこ)
   +邑上裕子(むらかみ・ゆうこ)=編
   『土佐日記・枕草子・更級日記・方丈記・徒然草・おくのほそ道
   光村の国語 はじめて出会う古典作品集1 光村教育図書 2009/12/22


(J4) 松村 2009, 2010
いささか手持ちぶさたで間のもたないようなとき、日頃の思いなど書きとめてみようとあれこれ考え始めたら、しだいにとりとめもなく収拾のつかないことになってしまった。

   松村栄子(まつむら・えいこ)=訳
   3a.京都で読む徒然草』 京都新聞出版センター 2010/06
   3b. 「松村栄子さんと読み解くつれづれ草1」
      『京都新聞』 2009/04/05 親しむ (16) 面 ing Kyo
   3a.3b. を含む京都新聞朝刊 2009/04/05〜2009/09/27 に
   毎週日曜に連載された記事に加筆修正を施したもの。
   引用は 3b. に拠りました。


(J5) 加藤(監修) 弦川(文) 2008
本日ただ今から、することもなく暇(ひま)なときは、机に向かって墨(すみ)をすり、心にうかぶことを、そのまま書きとめていこうと思う。われながら変わり者だと思うし、ばかばかしい気もするんだけどね。

   ゆるい決意表明(序段)
   加藤康子(かとう・やすこ)=監修 弦川琢司(つるかわ・たくじ)=文
   『超訳日本の古典6 徒然草・方丈記
   学習研究社 2008-02-17


(J6) 大伴 2007
まともなことなど為すこともないままに、終日、硯(すずり)に向かって、心に浮かんでは消えて行くようなたわいのない物事を、とりとめもなく書きつけているなどとは、自分でもどうかしていると思われるほどに正気の沙汰ではない。

   大伴茫人(おおとものぼうじん)=編
   『徒然草・方丈記 日本古典は面白い』 ちくま文庫 2007/07


(J7) 吾妻 2004
ムラムラと発情した気持ちを抑えられないままに硯とにらめっこしながら、心の中を通り過ぎてゆくどうしようもないことをうだうだと書き残しているうちに、なんとなく変な気持ちになってしまった。

   吉田兼好=著 吾妻利秋=訳 『徒然草』 (Tsurezuregusa.com)


(J8) 角川書店 2002
今日はこれといった用事もない。のんびりと独りくつろいで、一日中机に向かって、心をよぎる気まぐれなことを、なんのあてもなく書きつけてみる。すると、しだいに現実感覚がなくなって、なんだか不思議の世界に引き込まれていくような気分になる。
[原文は総ルビ。ここでは省略しました - tomoki y.]

   角川書店=編 『徒然草 ビギナーズ・クラシックス
   角川ソフィア文庫 2002/01


(J9) 浜野 2001
これといってしなければならない、というほどのことのないひとり暮(ぐ)らしで、なにもせわしいこともなく、のんびりとした心のままに、一日(いちにち)、机(つくえ)の前にすわっていると、あれこれ心にうかんでくることがある。べつに書いてもしかたのないようなことだが、ただなんとなく書いていくと、ものくるおしい気持ちがしてくる。

   机(つくえ)にむかっていると (序段)
   浜野卓也(はまの・たくや)=著 赤坂三好(あかさか・みよし)=絵
   『方丈記・徒然草』 21世紀によむ日本の古典9
   ポプラ社 2001/04


(J10) 嵐山 1992
たいくつしのぎに、一日じゅうすずりにむかって、つぎからつぎにうかんでくることを書くことにしたぜ。とりとめもない話だから、書くわたしのほうだってへんな気分さ。

【兼好・かげの声】というのはまっかなうそで、これは帝王学なのだぞ。後二条天皇の皇子である邦良親王(くによししんのう)が皇位につくために、わたしはテキストを書こうと思いたった。人間の本能・本性・心理・恋愛・旅・音楽などに関して、わたしが知りえたことを書きつくそうと思っている。最初のうちは邦良親王のために王道を説いたつもりだったが、のち、邦良親王が二十七歳でなくなられたため、当初の目的は変わって、わたしの随筆のようにもなってしまった。なにぶん、へそ曲がりのわたしだから、いうことが、そのときの気分で変わってしまうこともあるがな。真実には二つの面があることを学んでほしい。最初の書き方も、へそ曲がりのわたしの性分だからこんなふうにとぼけてみた。それから、わたしの話には、うらがあるからね、「かげの声」をきくように。

   嵐山光三郎、三木卓=著 『徒然草・方丈記
   少年少女古典文学館10 講談社 1992/04 所収


(J11) 橋本 1990, 1993, etc.
退屈で退屈でしょーがないから一日中硯(すずり)に向かって、心に浮かんで来るどーでもいいことをタラタラと書きつけてると、ワケ分かんない内にアブナクなってくんのなッ!

   橋本治=文 田中靖夫=絵
   11a. 絵本徒然草(上)』 (全2巻) 河出文庫 2005/06
   11b.絵本徒然草(上)』 (全2巻) 河出書房新社 1993/06
   11c.絵本徒然草』 (全1巻) 河出書房新社 1990/08
   引用は 11b. に拠りました。


(J12) 長谷川=監修 柳川=シナリオ 1990, 1998
なにかしたいけれどすることもなく、話す相手もなくて、たいくつなままに、一日じゅう硯にむかいながら、つぎつぎと心にうかんでは消えていく、とりとめもないことを、順序もなく書きつづってみると、自分でもふしぎなほど、いろいろな思いがわいてきて、なにかものに憑かれたような気さえすることだ。

   吉田兼好=著 長谷川孝士(はせがわ・たかし)=監修
   柳川創造(やながわ・そうぞう)=シナリオ 古城武司(こしろ・たけし)=漫画
   12a.徒然草 コミックストーリー わたしたちの古典8
      学校図書 新装版 1998/01
   12b.徒然草 コミックストーリー わたしたちの古典9
      学校図書 1990/04/15
   引用は 12b. に拠りました。


(J13) 杉本 1987, 1996
独り居の、ざわめく心のまま、あかるいあいだ、ずっと硯にむかって、心のなかに順序もなく影を落としてすぎてゆく、さしたるいわれもない事どもを、そのまま取捨することなく書きしるしていると、果たしていま正気でこれを書いているのかしらと、我ながらいぶかしくなるほど心気が熱してくるとは、何としたことか。

   杉本秀太郎(すぎもと・ひでたろう)=著
   13a. 古典を読む 徒然草』 同時代ライブラリー250
      岩波書店 1996/01
   13b.古典を読む 徒然草』 岩波書店 1987/11
   引用は 13a. に拠りました。


(J14) 永井 1987, 1996
いま私は遁世(とんせい)の身、なすこともない時間を重ねてゆく孤独さ、寂寞(せきばく)の思いにまかせて、一日じゅう、硯(すずり)を傍らに、心に去来するとりとめもないことを、あれこれ気ままに書いてみた。筆の赴くままの風狂のすさびというべきだろうか。

   永井路子=訳 「徒然草」
   14a. 永井路子の方丈記・徒然草』 集英社文庫 1996/10 所収
   14b.永井路子の方丈記・徒然草』 わたしの古典13
      創美社=編集 集英社=発行 1987/09 所収
   引用は 14b. に拠りました。


(J15) 山崎 1980
やり場もない所在(しょざい)なさに耐えて、日暮(ひぐ)らし硯(すずり)に向かって、心に映(うつ)っては消えるとりとめないことを、脈絡(みゃくらく)もなく書きつけていると、いつか私の心は無気味にももの狂おしい気分に満たされる。

   吉田兼好=原著 鴨長明=原著
   山崎正和(やまざき・まさかず)=著
   『現代語訳日本の古典12 徒然草・方丈記
   学習研究社 1980/05 所収


(J16) 三木 1979
所在なさにまかせて、終日、硯(すずり)に向って、心に浮んでは消えてゆくとりとめのないことを、気ままに書きつけていると、ふしぎに物狂おしくなる。

   三木紀人(みき・すみと)=著 『徒然草1 全訳注
   講談社学術文庫 1979/09


(J17) 島尾 1976, 2006
つれづれのままに一日中机に向かい、心に移り行く思いをあれこれと書きつけると、妙(みょう)にあやしいきもちになる。

   島尾敏雄(しまお・としお)=訳 「徒然草」
   17a. 島尾敏雄+堀田善衛=著
      『徒然草・方丈記 (ビジュアル版 日本の古典に親しむ9)
      世界文化社 2006/07/01
   17b.グラフィック版 日本の古典8 徒然草・方丈記
      世界文化社 1976
   引用は 17a. に拠りました。


(J18) 冨倉+貴志 1975
これといってほかに用もないままに、朝から晩まで硯に向かいっぱなしで、次から次へ心に浮かんでくる、書いてもしかたのないようなことを、ただなんとなく書き付けてゆくと、われながら妙に気違いじみたものができてゆくようである。

   冨倉徳次郎(とみくら・とくじろう)
   +貴志正造(きし・しょうぞう)=口訳 「徒然草」
   冨倉徳次郎+貴志正造=編 『鑑賞 日本古典文学18 方丈記・徒然草
   角川書店 1975/04 所収


(J19) 永積 1971
なすこともなく、ものさびしさにまかせて、終日、硯(すずり)にむかって、心に浮かんでは消えてゆく、つまらないことを、とりとめもなく書きつけていると、我ながら何ともあやしく、もの狂おしい気持がすることではある。

   永積安明(ながずみ・やすあき)=校注・訳 「徒然草」
   神田秀夫、永積安明、安良岡康作=校注・訳
   『日本古典文学全集27 方丈記・徒然草・正法眼蔵随聞記・歎異抄
   小学館 1971/08 所収


(J20) 安良岡 1967
しようにもすることのないのにまかせて、終日、机の上の硯に向かいながら、心中につぎつぎに移ってゆく、とりとめもない事を、何というあてもなく書きつけてみると、妙にわれながらばかばかしい気持がすることである。

   安良岡康作(やすらおか・こうさく)=校注・訳
   『徒然草全注釈(上)』 (全2冊) 日本古典評釈・全注釈叢書
   角川書店 1967/02


(J21) 臼井 1962
所在なさに、終日硯(すずり)にむかっていると、とりとめもないことが、次次と心に映っては消えていく。それを、なんということもなく書き綴っているうちに、まるで憑(つ)かれたかのように、感興にひきこまれるのは、われながらへんな気がする。

   臼井吉見(うすい・よしみ)=訳 「徒然草」
   『古典日本文学全集11 枕草子・方丈記・徒然草
   筑摩書房 1962/01 所収


(J22) 今泉 1951, 1957
ぢつとして何かしないではゐられない氣持に惹かれて、終日硯に向ひながら、心に浮んで來るとりとめもないことを、何といふこともなく書きつけてみると、自分ながら妙に感じられるほど――興がわいて來て――何だか もの に憑(つ)かれたやうな氣さへして筆を進める。

   今泉忠義(いまいずみ・ただよし)=訳註
   22a.改訂 徒然草―付 現代語訳』 角川文庫 1957/07 所収
   22b. 『徒然草』 角川文庫 1951/11 所収
   引用は 22a. に拠りました。文中の太字個所は原文では太字でなく傍点。


(J23) 与謝野 1916, 2005
無聊(ぶれう)なままに終日硯(すゞり)に向(む)いて心に上(のぼ)る偶感を何と云ふ順序も無く書いたのであるが、非常に雑駁(ざつぱく)なものになつてしまつた。

   与謝野晶子=訳「新訳徒然草」
   23a. 与謝野寛、与謝野晶子=著
      『鉄幹晶子全集17 新訳徒然草・我等何を求むるか・晶子新集
      勉誠出版 2005/03 所収
   23b.新訳徒然草』 阿蘭陀書房 1916/11(大正5)
   引用は 23a. に拠りました。


(J24) 飯田 1916
餘り閑静で無聊(ぶれう)であるから。其の徒然(つれ/゛\)の退屈しのぎに。終日硯(すずり)に對して。夫(それ)から夫ヘと心に轉遷(うつ)り浮んで行く理由(わけ)も當所(あてど)も無い事を。取り止めも無く書き付けて見たが。さて段々と書き集めて見ると云うと。我ながら甚麼(どう)も奇(あや)しな物で。何だか氣狂(きちがひ)じみて居る。
[原文は総ルビ。上の引用では、その一部を省略しました - tomoki y.]

   飯田季治(いいだ・すえはる)=著 『詳譯徒然草
   金港堂書籍 1916/03(大正5)


■日本語原文 The original text in 14th century Japanese

(1) ローマ字表記 In romanization

Tsurezurenaru mama ni, hikurashi, suzuri ni mukaite, kokoro ni utsuriyuku yoshinashigoto o, sokowakatonaku kakitsukureba, ayashu koso monoguruoshikere.

   Tsurezuregusa - Wikipedia


(2) 漢字仮名表記 In kanji and kana

つれづれなるまゝに、日暮らし、硯にむかひて、心にうつりゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ。

   徒然草(吉田兼好著・吾妻利秋訳) (Tsurezuregusa.com)


 Video 2 
徒然草 - 出演: 野村萬斎 Tsurezuregusa performed by Mansai Nomura


■更新履歴 Change log

  • 2013/10/08 インドネシア語訳と酒井順子=著 2011/11/20 を追加しました。
  • 2013/09/07 もう1種類のロシア語訳を追加しました。
  • 2013/04/24 ドイツ語訳を追加しました。また、Ryukichi Kurata による英訳の表紙画像と書誌情報も追加しました。さらに、繁體字中國語譯の訳文と書誌情報を修正・補足しました。
  • 2012/01/29 目次を新設しました。また、ウクライナ語訳および韓国語訳の表紙画像と書誌情報を追加しました。
  • 2011/11/19 ロシア語訳と表紙画像を追加しました。
  • 2011/05/13 「徒然草を現代語訳してみる」を朗読してみた(ボヤキ系)その①の YouTube 動画を追加しました。
  • 2010/12/30 長谷川孝士=監修 柳川創造=シナリオ 1990/04/15 を追加しました。
  • 2010/12/24 島内裕子=訳 2009/04/10 を追加しました。
  • 2010/12/17 山崎正和=著 1980/05 の訳文を挿入しました。
  • 2010/12/11 山崎正和=著 1980/05 の書誌情報を追加しました。訳文は追って挿入するつもりです。
  • 2010/12/04 浜野卓也=著 2001/04 を追加しました。
  • 2010/09/16 加藤康子=監修 弦川琢司=文 2008-02-17、および島尾敏雄=訳 2006/07/01 を追加しました。
  • 2010/08/13 青山由紀+甲斐利恵子+邑上裕子=編 2009/12/22 の現代日本語訳、フィンランド語訳、スウェーデン語訳ならびに野村萬斎出演の YouTube 動画を追加しました。
  • 2009/07/17 松村栄子=訳 2009/04 と今泉忠義=訳註 1957/07 を追加しました。
  • 2007/10/26 大伴茫人=訳 2007/07 を追加しました。
  • 2007/10/22 角川書店=編 2002/01 と永井路子=訳 1987/09 を追加しました。
  • 2007/10/14 記事のタイトルに「序段」、"Introduction" の語を追加しました。
  • 2007/10/12 飯田季治=訳 1916/03 を追加しました。
  • 2007/10/10 臼井吉見=訳 1962/01 と与謝野晶子=訳 2005/03 を追加しました。
  • 2007/10/08 英訳 Ryukichi Kurata 1948 と英訳 Takeji Wakameda 1914 を追加しました。また、その他の英訳版に関する書誌情報を補足しました。
  • 2007/10/06 冨倉徳次郎+貴志正造=訳 1975/04 を追加しました。
  • 2007/10/03 Donald Keene 訳の書誌情報を修正・補足しました。
  • 2007/09/07 杉本秀太郎=著 1996/01、1987/11、三木紀人=著 1979/09、永積安明=校注・訳 1971/08、および安良岡康作=校注・訳 1967/02 を追加しました。

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