Mishima Yukio 三島由紀夫

Monday, 20 July 2009

Where the Wild Things Are by Maurice Sendak モーリス・センダック 『かいじゅうたちのいるところ』『いるいる おばけが すんでいる』

        目次 Table of Contents

■はじめに Introduction
 Video 1  イタリア語版読み聞かせ Reading of translation into Italian
 Video 2  英語版原書朗読 Reading of the English original
 Images   表紙画像 Cover photos
■表紙を見て気づいたこと Comments on the comparison of book covers
■日本語訳 Translations into Japanese
  (J1) じんぐう 1975
  (J2) ウエザヒル翻訳委員会 1966
■英語原文 The original text in English
■三島由紀夫による「すいせんのことば」 Endorsement by Yukio Mishima
 Video 3  フランス語短編アニメ Short animated film in French
 Video 4  Video 5 のスペイン語吹替版 Same as Video 5 but dubbed in Spanish
 Video 5  短編アニメ Where the Wild Things Are (1973)
 Video 6  かいじゅうたちのいるところ (2009) Where the Wild Things Are (2009)
■2009年版映画公開予定 Release dates for the 2009 film
■外部リンク External links
■更新履歴 Change log


■はじめに Introduction

Where the Wild Things Are は、2012年に亡くなったアメリカの絵本作家モーリス・センダックの代表作。

日本語版は2種類出ている。ひとつは1966年に出版されたウエザヒル翻訳委員会訳で『いるいる おばけが すんでいる』。もうひとつは1975年に出版されて今なお売れ続けている神宮輝夫訳『かいじゅうたちのいるところ』。

1973年に米国・チェコスロバキア合作の短編アニメとなった。下の Video 5 
2009年にはスパイク・ジョーンズ監督により、実写長編映画となった。下の Video 6 


 Video 1 
『かいじゅうたちのいるところ』 イタリア語版読み聞かせ
Nel paese dei mostri selvaggi - Reading of translation into Italian

Uploaded to YouTube by LabComNarr on 2012-01-02.


 Video 2 
『かいじゅうたちのいるところ』 英語版原書朗読
Where The Wild Things Are - Reading of the English original

Uploaded to YouTube by StoryTime4Kids on 2008-06-06.


 Images 
表紙画像 Cover photos

↓ クリックして拡大 Click to enlarge ↓

zh Zh_simp_where_the_wild_things zh Zh_trad_where_the_wild_things_are ko Ko_sendak_where_the_wild_things_are

ja Ja_kaijuu_tachi_no_iru_tokoro ja Ja_iruiru_obake_ga_sunde_iru fa Fa_tarvijsarzamine_vahshiha

he He___wherethewildthingsaresendakmau tr Tr_canavarlar_ulkesinin_kral fi Fi_hassut_hurjat_hirvit

et Et_5450003854_seal_kus_elavad_metsa ru Ru_9785437000717_where_the_wild_thi cs Cs_tam_kde_ziji_divociny_sendak

no No_til_huttetuenes_land sv Se_till_vildingarnas_land da Da_sendak_villy_vilddyr

de De_wo_die_wilden_kerle_wohnen ro Ro_9786068044606_regele_tuturor_s_3 it It_nel_paese_dei_mostri_selvaggi_r1

eu Eu_piztiak_bizi_diren_lekuan gl Gl_onde_viven_os_monstros br Br_onde_vivem_os_monstros

ca Ca_9788484646921 es Es_donde_viven_los_monstruos nl Nl_max_en_de_maximonsters

fr Fr_max_et_les_maximonstres en En_where_the_wild_things_are

[zh] 野兽出没的地方 明天出版社 2009 中国語(簡体字)
[zh] 野獸國 漢聲雜誌 1987 中國語(繁體字)
[ko] 괴물들이 사는 나라 시공주니어 2004 韓国語
[ja] かいじゅうたちのいるところ 冨山房 1975 日本語
[ja] いるいる おばけが すんでいる ウエザヒル出版社 1966 日本語
[fa] سفر به سرزمين وحشی ها ペルシア語
[he] ארץ יצורי הפרא Keter, 2010 ヘブライ語
[tr] Canavarlar Ülkesinin Kralı Redhouse, 1985 トルコ語
[fi] Hassut hurjat hirviöt Tammi, 2009 フィンランド語
[et] Seal, kus elavad metsakollid Eesti Raamat, 1989 エストニア語
[ru] Там, где живут чудовища Розовый Жираф, 2014 ロシア語
[cs] Tam kde žijí divočiny Hynek, 1994 チェコ語
[no] Til huttetuenes land Cappelen, 2001 ノルウェー語
[sv] Till vildingarnas land Bonnier Carlsen, 2009 スウェーデン語
[da] Villy Vilddyr Høst, 2001 デンマーク語
[de] Wo die wilden Kerle wohnen Diogenes Verlag AG, 2008 ドイツ語
[ro] Regele tuturor sălbăticiunilor Arthur, 2014 ルーマニア語
[it] Nel paese dei mostri selvaggi Babalibri, 1999 イタリア語
[eu] Piztiak bizi diren lekuan Kalandraka, 2000 バスク語
[gl] Onde viven os monstros Kalandraka, 2000 ガリシア語
[br] Onde Vivem os Monstros Salamandra ブラジル・ポルトガル語
[ca] Allà on viuen els monstres Kalandraka, 2009 カタルーニャ語(カタロニア語)
[es] Donde viven los monstruos Rayo, 1996 スペイン語
[nl] Max en de maximonsters Lemniscaat, 1995 オランダ語
[fr] Max et les maximonstres Ecole des Loisirs, 2002 フランス語
[en] Where the Wild Things Are HarperCollins, 1988 英語


■表紙を見て気づいたこと Comments on the comparison of book covers

ペルシア語版とヘブライ語版だけ絵が左右裏向きになっているのは、なぜか? これら2言語ではアラビア語などにおけると同様、右から左へ読むせいなのだろう、たぶん。

表紙に訳者の表示があるのは、上に見るかぎり、中国語版と日本語版だけだ。まえに他の本でも気づいたことだが、翻訳者の地位は欧米諸国よりも中国や日本におけるほうが、いくぶん高いようだ。社会的な評価の高低であって、収入のことは知らない。

村上春樹作品の中国語訳をした翻訳家は、「あの村上春樹の」翻訳をした人ということで、中国では村上氏本人に負けないぐらい人気があると聞いたことがある。


■日本語訳 Translations into Japanese

(J1) じんぐう 1975
「では みなのもの!」マックスは おおごえを はりあげた。
「かいじゅうおどりを はじめよう!」

   モーリス・センダック=さく じんぐうてるお(神宮輝夫)=やく
   『かいじゅうたちのいるところ
   冨山房 1975-01


(J2) ウエザヒル翻訳委員会 1966
「こんやは みんなで ひとさわぎ おばけさわぎを はじめよう」
マックスおうが いいました おばけの けらいに いいました

   モーリス・センダーク=原作・絵 ウエザヒル翻訳委員会=訳
   監修委員: 木下一雄、黒崎義介、坂元彦太郎、ハル・ライシャワー、三島由紀夫
   翻訳・編集委員: 園一彦、坂出寿栄、阪井妙子、M・ウエザビー、R・フリードリック
   『いるいる おばけが すんでいる』 アメリカ新絵本シリーズ
   ウエザヒル出版社 1966-05-25


■英語原文 The original text in English

"And now," cried Max, "let the wild rumpus start!"

   Where the Wild Things Are
   Story and pictures by Maurice Sendak.
   First published by Harper & Row. 1963.
   Currently available editions include: HarperCollins. 1988-11


■三島由紀夫による「すいせんのことば」 Endorsement by Yukio Mishima

上にご覧のとおり、2つの日本語訳のうち先に出たほう、つまり『いるいる おばけが すんでいる』という邦題のついた版には、監修委員として三島由紀夫が名を連ねています。この本の発売当時(1966年5月)配布されたチラシには、三島による「すいせんのことば」が印刷されていたようです。チラシの現物は見たことがありませんが、つぎのような文面が『三島由紀夫全集』に再録されているのを読むことができます:

    この「いるいるおばけがすんでいる」は、ふしぎと子どもをチャームする本です。
   うちの子どもも、この本が大好きです。ここには、大人に巧く躾(しつ)けられた、
   外交官みたいな人当りのいい子どものかはりに、マックスといふ、ちよつと偏屈
   な子どもが登場し、「子どもの孤独」がまざまざと描かれてゐることが、一つの
   理由だと思ひます。子どもの孤独に、子どもは敏感に反応します。そしてお化け
   の国のお化けたちの愉快なこと! [以下略]

   三島由紀夫 すいせんのことば(「いるいるおばけがすんでいる」)
   a.決定版 三島由紀夫全集34 評論9』 新潮社 2003-09-10
   b.三島由紀夫全集35』 新潮社 1976-04
   引用は a. に拠りました。


 Video 3 
『かいじゅうたちのいるところ』 フランス語アニメ
Max et les Maximonstres, a short animated film in French

Uploaded to YouTube by Chris Paquin on 2012-12-10. Translation by L'École des loisirs. Animation and montage by Chris Paquin.


 Video 4 
『かいじゅうたちのいるところ』 スペイン語アニメ
Donde Viven los Monstruos - Where the Wild Things Are (1973) in Spanish

下の Video 5 のスペイン語吹替版。 Uploaded to YouTube by bimbomba1 on 2011-07-06. Spanish-dubbed version of  Video 5  below.


 Video 5 
短編アニメ[邦題未確認] Where the Wild Things Are (1973)

脚色・監督: ジーン・ダイチ 日本語による詳細情報はここ Uploaded to YouTube by suriwycer on 8 Jul 2012. Adapted and Directed by Gene Deitch.


 Video 6 
映画 かいじゅうたちのいるところ (2009) 予告編
Film Where the Wild Things Are (2009) Trailer

監督:スパイク・ジョーンズ 製作:トム・ハンクス、モーリス・センダック〔ほか〕 原作:モーリス・センダック 脚本:デイヴ・エッガーズ、スパイク・ジョーンズ 出演:マックス・レコーズ、キャスリン・キーナー〔ほか〕


■『かいじゅうたちのいるところ (2009)』公開予定―2009年7月現在
 Release dates for Where the Wild Things Are (2009) - as of July 2009

   Country    Date
   France     14 October 2009
   Netherlands  15 October 2009
   USA      16 October 2009
   Brazil     23 October 2009
   Russia    29 October 2009
   Italy      30 October 2009
   Australia  3 December 2009
   Germany  3 December 2009
   UK      11 December 2009
   Spain    18 December 2009
   Japan    2010

   Excerpted from Where the Wild Things Are (2009) - IMDb


■外部リンク External links

 [en] English

 [ja] 日本語


■更新履歴 Change log

  • 2014-12-18 エストニア語版、ロシア語版、チェコ語版、およびルーマニア語版の表紙画像と書誌情報を追加しました。 
  • 2013-06-16 目次と「はじめに」の項を新設しました。また、フランス語アニメ、スペイン語吹替版アニメ、および1973年版短編アニメの3本の YouTube 動画を追加しました。
  • 2013-01-28 バスク語版の表紙画像とイタリア語版読み聞かせの YouTube 動画を追加しました。また、ヘブライ語版の書誌情報を補足しました。
  • 2012-10-28 ペルシア語版、トルコ語版、ブラジル・ポルトガル語版、およびカタルーニャ語版の表紙画像を追加しました。
  • 2011-10-10 Where The Wild Things Are 朗読の YouTube 動画を追加しました。また、映画版『かいじゅうたちのいるところ』予告編の YouTube 動画がリンク切れになっていたので、有効な動画と差し替えました。
  • 2011-03-05 中国語訳(簡体字)の表紙画像と書誌情報を追加しました。
  • 2009-09-05 韓国語版の表紙画像と書誌情報を追加しました。
  • 2009-09-05 ノルウェー語、デンマーク語、ウエザヒル出版社 1966-05-25 日本語の3つの版の表紙画像、およびウエザヒル翻訳委員会=訳 1966-05-25 の訳文を追加しました。また、三島由紀夫による「すいせんのことば」の項を新設しました。さらに、外部リンクの項に、『かいじゅうたちのいるところ』の諸言語への翻訳版を列挙した米国図書館協会のページへのリンクを追加しました。
  • 2009-07-21 下のコメント欄にご覧のとおり、匿名の読者のかたから、英語でご親切な指摘を頂きました。表紙画像のうち、これまでポルトガル語と表示していたものは、じつはポルトガル語ではなく、ガリシア語(おもにスペイン北西部で話されている言語)なのだそうです。ご指摘に従い、表示を訂正しました。Many thanks for your kind remark!!

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Monday, 05 January 2009

三島由紀夫「太陽と鉄」 Sun and Steel by Yukio Mishima

■表紙画像 Cover photos

Left Sun and Steel Kodansha International. 1980
Centre 篠山紀信 『三島由紀夫の家 普及版』美術出版社 2000
Right決定版 三島由紀夫全集33 評論8』新潮社 2003

↓ Click to enlarge ↓

Yukio_mishima_sun_and_steel  Mishima_yukio_no_ie  Mishima_zenshu_33


■英訳 Translation into English

Of late, I have come to sense within myself an accumulation of all kinds of things that cannot find adequate expression via an objective artistic form such as the novel. A lyric poet of twenty might manage it, but I am twenty no longer, and have never been a poet at any rate. I have grouped around, therefore, for some other form more suited to such personal utterances and have come up with a kind of hybrid between confession and criticism, a subtly equivocal mode that one might call "confidential criticism."

I see it as a twilight genre between the night of confession and the daylight of criticism. The "I" with which I shall occupy myself will not be the "I" that relates back strictly to myself, but something else, some residue, that remains after all the other words I have uttered have flowed back into me, something that neither relates back nor flows back.

[Omission]

   Sun and Steel (1970) by Yukio Mishima
   Translated by John Bester
   Paperback: Japan's Modern Writers. Kodansha International. 1980
 
 
■日本語原文 The original text in Japanese

 このごろ私は、どうしても小説といふ客観的芸術ジャンルでは表現しにくいもののもろもろの堆積を、自分のうちに感じてきはじめたが、私はもはや二十歳の抒情詩人ではなく、第一、私はかつて詩人であつたことがなかつた。そこで私はこのやうな表白に適したジャンルを模索し、告白と評論との中間形態、いはば「秘められた批評」とでもいふべき、微妙なあいまいな領域を発見したのである。

 それは告白の夜と批評の昼との堺の黄昏(たそがれ)の領域であり、語源どほり「誰(た)そ彼」の領域であるだらう。私が「私」といふとき、それは厳密に私に帰属するやうな「私」ではなく、私から発せられた言葉のすべてが私の内面に還流するわけではなく、そこになにがしか、帰属したり還流したりすることのない残滓(ざんし)があつて、それをこそ、私は「私」と呼ぶであらう。

[以下略]

   三島由紀夫=著「太陽と鉄」
   1. 三島由紀夫 / 三島由紀夫. -- 新学社, 2007.7.
     -- (新学社近代浪漫派文庫 ; 42)
   2. 三島由紀夫文学論集. 1 / 三島由紀夫[他]. -- 講談社, 2006.4.
     -- (講談社文芸文庫)
   3. 決定版 三島由紀夫全集. 33 評論8 / 三島由紀夫. -- 新潮社, 2003.8.
   4. 太陽と鉄 / 三島由紀夫. -- 講談社, 2000. -- (講談社文庫)
   5. 太陽と鉄 / 三島由紀夫. -- 中央公論社, 1987.11. -- (中公文庫)
   6. 三島由紀夫全集. 32 / 編纂:佐伯彰一. -- 新潮社, 1975
   7. 三島由紀夫全集. 32 / 編纂:佐伯彰一. -- 新潮社, 1975
   8. 太陽と鉄 / 三島由紀夫. -- 講談社, 1968
   引用は 3. に拠りました。


■外部リンク External links

   * 三島由紀夫 - Wikipedia (1925-1970)
   * 三島由紀夫文学館
   * Yukio Mishima - Wikipedia (1925-1970)


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Wednesday, 22 August 2007

三島由紀夫から北杜夫への手紙 1966/07/16 A letter from Yukio Mishima to Morio Kita, 16 July 1966

           目次 Table of Contents

    Image Gallery  DVDのジャケットと全集本の函 DVD covers & Dustbox
   ■日本語原文 The original text in Japanese
   ■北杜夫と三島 Morio Kita and Mishima
   ■大江健三郎と三島 Kenzaburo Oe and Mishima
   ■「危険な兆候」"Dangerous symptoms"
    Book Covers   『三島由紀夫の家』 Yukio Mishima's House
   ■三島邸周辺の散策案内 Guide for walking around Mishima's house
   ■その他の外部リンク Other external links
   ■更新履歴 Change log


 Image Gallery  DVDのジャケットと全集本の函 DVD covers and a Dustbox

↓ クリックして拡大 Click to enlarge ↓

a. A_mishima_schrader b. B_mishima_zenshu_38 c. C_afraid_to_die


■日本語原文 The original text in Japanese

 昭和四十一年七月十六日(封書)

          世田谷区松原6—16—5 北杜夫
          大田区南馬込4丁目32番8号 三島由紀夫

 前略

(……)

 ——それはさうと大江健三郎自殺未遂といふ噂をききましたが本当でせうか? 彼にはたしかに何か、精神病質の危険な兆候が感じられます。
 小生も躁病が極度に達し、つひにステージで歌をうたひました。しかしカーテン・コールで出ると、女の子が一せいにキャーッと云つてくれたので感激しました。あのキャーッといふ声を一度体に受けてみたいと思つてゐたので宿望を達しました。あの声は一体どこから出るのでせうか。
 貴兄の躁病の御文章をよんで、大笑ひ、といふのも、医者の病気ほど愉快なものはないからです。御病気悪化の一助にもと、イヂワル・ヂヂイがこの手紙を書きました。匆ゝ
   七月十六日    三島由紀夫
  北杜夫様

  • 三島由紀夫(みしま・ゆきお)=著 『決定版 三島由紀夫全集38 書簡』(全42巻) 新潮社 2004/03 所収
  • 原文の住所表示の漢数字部分を算用数字に改めました。横書きだと「一(漢字のイチ)」と「—(横棒)」の区別がつきませんから。

■北杜夫と三島 Morio Kita and Mishima

この決定版三島全集には、三島由紀夫(1925-1970)から 北杜夫(1927-2011)に宛てた手紙が10通(葉書5通、封書5通)収録されています。北杜夫の代表作『楡家の人びと』(1963) は、三島によって激賞されました。
 
   「この小説の出現によって、日本文学は真に市民的な作品をはじめて
    持ち、小説というものの正統性(オーソドクシー)を証明するのは、
    その市民性に他(ほか)ならないことを学んだといえる」

この三島による賛辞は、新潮文庫版『楡家の人びと(下)』の「解説」(1971/05) で、辻邦生(1925-1999)が引用しているものです。「オーソドクシー」? 「市民性」? よく存じません。どういう意味であれ、1,500枚をこえる、この大作を世に知らしめる、史上最強の広告コピーとなったことは、まちがいないでしょう。
 
なお、北杜夫は「次第に政治的に過激になっていった晩年の三島とは疎遠だった」そうです(三島由紀夫 - Wikipedia|関連人物)。


■大江健三郎と三島 Kenzaburo Oe and Mishima

三島由紀夫と 大江健三郎(1935-  )とのあいだに、どの程度の交流があったかは存じません。ウィキペディアには、こうあります。

   1960年代に、三島由紀夫がノーベル賞を逃した時、「次は大江君だよ」
   と、当時まだ新進であった大江の名を挙げた。

   大江が実際にノーベル賞を受賞するのは三島の発言から30年余り経って
   の事となる。三島は大江を自邸のパーティに招くほど親しくしていた
   時期もあったが、政治思想の右傾化と共に疎遠になった。
   (大江健三郎 - Wikipedia|エピソード

三島から大江宛の書簡が何通存在したかも存じません。いずれにせよ、三島由紀夫の141名宛て806通の書簡を収めた上の全集に、大江健三郎宛てのものは1通も含まれていません。全集「解題」によれば、たとえば次のような場合、「書簡の存在が明らかでありながら、収録を見送らざるを得なかった」としています。いずれも当然と思われるケースです。

  1. 三島本人のプライバシーにかかわる場合 
  2. 所蔵者の許可が得られなかった場合
  3. 所蔵者やその消息が不明の場合

■「危険な兆候」"Dangerous symptoms"

三島が大江を評するのに用いた「精神病質の危険な兆候」という表現は、いまとなっては皮肉な印象を与えます。上の異様に躁的な、おどけた筆致の手紙を北杜夫に送ってから4年後に、三島は陸上自衛隊 市ヶ谷駐屯地 で、あの事件 を起こして45年の生涯を自ら閉じました。

「精神病質」かどうかはともかく、「危険な兆候」を実際に示したのは、はたして大江のほうだったか、三島のほうだったか?


 Book Covers  三島由紀夫の家 Yukio Mishima's House

↓ クリックして拡大 Click to enlarge ↓

a. Mishima_yukio_no_ie_fukyuuban_20009 b. Mishima_yukio_no_ie_1995_97845681_2

  • 三島由紀夫の家 普及版 (2000) 篠山紀信=撮影 篠田達美=文 石黒紀夫=アートディレクション 美術出版社 下の b. を内容はそのままで、サイズをB5判からA5判に改め、縮刷したもの。
  • 三島由紀夫の家 (1995) 篠山紀信=撮影 篠田達美=文 石黒紀夫=アートディレクション 美術出版社

■三島邸周辺の散策案内 Guide for walking around Mishima's house
Magome_bunshimura_sansaku_map
Image source: Magome Bunshimura 資料提供:社団法人大森倶楽部 No copyright infringement intended. Copyright (C) 1997-2013 Magome Bunshimura All Rights Reserved. 最新版マップ(100円)は大田区役所 区政情報コーナーで購入可能。


■その他の外部リンク Other external links


■更新履歴 Change log

  • 2013/05/18 『三島由紀夫の家 普及版』 (2000) と『三島由紀夫の家』 (1995) の表紙画像を追加しました。また、散策マップの情報を補足しました。
  • 2013/05/16 目次と「三島邸周辺の散策案内」の項を新設しました。
  • 2011/10/27 北杜夫氏は2011年10月24日に亡くなられました。訃報など、関連するリンクを追加しました。氏のご冥福をお祈りします。
  • 2011/08/24 外部リンクの項を新設しました。

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Friday, 05 May 2006

Sea and Sunset (from Acts of Worship) by Yukio Mishima 三島由紀夫 「海と夕焼」(『花ざかりの森・憂国』から)

C11461

 Video 
Yukio Mishima- A short documentary

Uploaded to YouTube by Sprewt on 18 Mar 2012. A documentary by Randall Pinkham.


■英訳 Translation into English

   It was late summer in the ninth year of the Bunei era. It should be added here, since it will be important later, that the ninth year of Bunei is 1272 by Western reckoning.
   An elderly man and a boy were climbing the hill known as Shojo-ga-take that lies behind the Kenchoji temple in Kamakura. Even during the summer, the man, a handyman at the temple, liked to get the cleaning done in the middle of the day, then, whenever there promised to be a beautiful sunset, to climb to the top of this hill.
   The boy was deaf and dumb, and the village children who came to play at the temple always left him out of their games, so the old man, feeling sorry for him, had brought him up there with him.
   The old man's name was Anri. He was not very tall, but his eyes were a clear blue. With his large nose and his deep eye sockets, his appearance was different from ordinary people; so the village brats were accustomed to calling him, behind his back, not Anri but "the long-nosed goblin."

   Sea and Sunset
   Acts of Worship: Seven Stories by Yukio Mishima
   Translated by John Bester
   Kodansha International, 2002


■日本語原文 The original text in Japanese

 文永九年の晩夏のことである。のちに必要になるので附加えると、文永九年は西暦千二百七十二年である。
 鎌倉建長寺裏の勝上(しょうじょう)ヶ岳(たけ)へ、年老いた寺男と一人の少年が登ってゆく。寺男は夏のあいだも日ざかりに掃除をすまして、夕焼の美しそうな日には、日没前に勝上ヶ岳へ登るのを好んだ。
 少年のほうは、いつも寺へ遊びに来る村童たちから、唖(おし)で聾(つんぼ)のために仲間外れにされているのを、寺男が憐(あわ)れんで、勝上ヶ岳の頂きまでつれてゆくのである。
 寺男の名は安里(アンリ)という。背丈はそう高くないが、澄み切った碧眼(へきがん)をしている。鼻は高く、眼窩(がんか)は深く、一見して常人の人相とはちがっている。そこで村の悪童どもは、蔭(かげ)では安里と呼ばずに、「天狗(てんぐ)」と呼びならわしている。

   三島由紀夫 「海と夕焼」
   『花ざかりの森・憂国』 新潮文庫 1968 所収


■更新履歴 Change log

2013-04-12 Yukio Mishima- A short documentary のビデオを追加しました。


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Friday, 07 April 2006

夏目漱石:ぜんざいは京都で、京都はぜんざいである

Soseki


■ぜんざいの大提灯 A big red lantern of a zenzai parlor

始めて京都に来たのは十五六年の昔である。その時は正岡子規と一所であつた。麩屋町(ふやちよう)の柊屋(ひいらぎや)とか云ふ家へ着いて、子規と共に京都の夜を見物に出たとき、始めて余の目に映つたのは、此赤いぜんざいの大提灯である。この大提灯を見て、余は何故か是が京都だなと感じたぎり、明治四十年の今日に至る迄決して動かない。ぜんざいは京都で、京都はぜんざいであるとは余が当時に受けた第一印象で又最後の印象である。子規は死んだ。余はいまだに、ぜんざいを食つた事がない。実はぜんざいの何物たるかをさへ弁(わきま)へぬ。汁粉であるか煮小豆(ゆであづき)であるか眼前に髣髴する材料もないのに、あの赤い下品な肉太な字を見ると、京都を稲妻の迅(すみや)かなる閃きのうちに思ひ出す。同時に——あゝ子規は死んで仕舞つた。糸瓜のごとく干枯(ひから)びて死んで仕舞つた。——提灯は未だに暗い軒下にぶら/\して居る。余は寒い首を縮めて京都を南から北へ抜ける。

   夏目漱石「京に着ける夕」より抜粋
   『漱石全集12 小品』
   岩波書店(第1刷 1994/12|第2刷 2003/03)所収
   E-text at 青空文庫(用字、仮名遣いなどは、上記全集版と異なる)


■tomoki y. のコメント Comments by tomoki y.

先日の記事「99年前、漱石は京都で」 の続編。前回とおなじく、漱石の1907(明治40)年の京都旅行の思い出から。

「麩屋町の柊屋」は、いまもある。ふつうは柊家と書く。俵屋、炭屋とならぶ、京都の有名高級旅館御三家の一つ。文人とゆかりが深い。志賀直哉の家族は、ここをベースにして京見物をした。林芙美子も泊まった。川端康成は、ここを定宿にして、宣伝コピーのようなもの(川端康成氏寄稿文 | 柊家)さえ残した。三島由紀夫は死の数日前ここで家族と過ごした。三島のお気に入りは1階の33号室だった。

文人以外では、たとえば、チャップリンやアラン・ドロンもお客だった。イアン・ソープも泊まった——らしい。私は未見だが、田口八重『おこしやす—京都の老舗旅館「柊家」で仲居六十年』という本が出ている。

ぜんざいの大ちょうちんのことは、一切知らない。「ぜんざいは京都で、京都はぜんざいである」とは、いったい何を根拠にして述べているのだろうか? その断定ぶりが異様だ。『言葉は京でつづられた。』という本では、つぎのように説明している。

   子規という、巨大で真っ赤な心の灯が消えた。消えた哀惜と空虚のシンボ
   ルとして漱石は、ぜんざいの提灯の存在を子規と来た京都そのものと強引
   に結びつけたのだろうか。「何故?」という疑問を挟む余地のないほどに、
   乱暴で理を超えている。


■参考文献 Reference

   * 京都モザイク編集室 『言葉は京でつづられた。』 青幻舎 2003
   * 蔵田敏明 『文学散歩 作家が歩いた京の道』 淡交社 2003
   * 水川隆夫 『漱石の京都』 平凡社 2001


■更新履歴 Change log

2012/10/02 まえにリンク切れになっていた川端康成氏寄稿文へのリンクが
         柊家さんサイトに復活しているようなので、リンクを再び張りました。
2007/12/01 いくつかのデッド・リンクをアクティブにしました。
2006/04/08 柊家さんについての解説を、訂正・補足しました。また、参考文献を
         追加しました。


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