Morris, Jan

Wednesday, 21 December 2011

The Venetian Empire: A Sea Voyage by Jan Morris ジャン・モリス 『ヴェネツィア帝国への旅』

■はじめに Introduction

ヴェネツィアの植民地帝国としての側面をイギリスの作家ジャン・モリスが綴った歴史紀行書。過去と現在を自由に行ったり来たりする、ちょっと風変わりな筆致だが、読みごたえがある。原書初版は、図版多数入りで1980年に出版された。

英紙ガーディアンは、ことし2011年6月、この本を「偉大なノンフィクション100冊」のうちに選んだ。ちなみに、塩野七生『海の都の物語—ヴェネツィア共和国の一千年』の単行本初版が出たのも、モリスの本とおなじく1980年だった。


■表紙画像 Cover photos

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■言語と書誌情報 Linguistic and bibliographic information

[ja] 日本語
タイトル: ヴェネツィア帝国への旅 (講談社学術文庫)
著者: ジャン・モリス (著者) 椋田直子 (訳者) 
文庫
出版社: 講談社
出版年: 2011-11-11
ISBN-10 : 4062920794
ISBN-13 : 9784062920797


[ja] 日本語
タイトル: ヴェネツィア帝国への旅
著者: ジャン・モリス (著者) 椋田直子 (訳者) 
単行本
出版社: 東京書籍
出版年: 2001-08-01
ISBN-10 : 4487795834
ISBN-13 : 9784487795833


[en] 英語 (再販)
タイトル: The Venetian Empire: A Sea Voyage
著者: Jan Morris 
ペーパーバック
出版社: Penguin (Non-Classics); Reprint
出版年: 1990-01-04
ISBN-10 : 0140119949
ISBN-13 : 978-0140119947
More info from the publisher


[en] 英語 (初版)
タイトル: The Venetian Empire: A Sea Voyage (A Helen and Kurt Wolff Book)
著者: Jan Morris (author), Tim Mercer (Photographer)
Hardcover
出版社: Rainbird Publishing Group Limited; An illustrated edition, 1st edition
出版年: 1980-10-01
ISBN-10 : 0151935041
ISBN-13 : 9780151935048
Information on the now defunct publisher


■日本語訳 Translation into Japanese

ローマ帝国をべつにすれば、ヴェネツィアはヨーロッパ最初にして最長寿の植民地帝国である。にもかかわらず、ヴェネツィアの植民地主義は、場当たり的なつぎはぎ細工だった。そもそもヴェネツィアは、東方の産物を集めて船でヴェネツィアに持ち帰り、それをヨーロッパ各地に売りさばくことで富を獲得した。ヴェネツィア帝国の役目はこの活動を庇護(ひご)し、発展させることだった。したがって、過剰なまでに実利主義的であり、安易に状況に迎合した。ヴェネツィア人は外の世界に向かって、なんの主義主張も押しつけなかった。みずからの形に似せて、属州を作りたいとは思わなかった。宣教師的情熱は持ち合わせていなかった。古代ローマ人と違って、偉大な建築家ではなかった。スペイン人と違って、狂信的でもなかった。

 彼らはなによりも金(かね)を重視した。一五世紀のローマ教皇ピウス二世は、すべてのヴェネツィア人は「交易という卑しい生業(なりわい)」の奴隷だと書いている。

   序章
   ジャン・モリス=著 椋田直子(むくだ・なおこ)=訳
   a.ヴェネツィア帝国への旅』 講談社学術文庫 2011-11-11
   b.ヴェネツィア帝国への旅』 東京書籍 2001-08-01
   引用は b. に拠りました。


■英語原文 The original text in English

The Venetians were never without overseas possessions, from the time my story starts at the end of the twelfth century until the fall of the Venetian Republic at the end of the eighteenth century. Rome apart, theirs was the first and the longest-lived of the European overseas empires. Their imperialism, though, was piecemeal and opportunist. They had first become rich by collecting the products of the east, shipping them home to Venice, and dispatching them through Europe: their empire was contrived to protect and develop this activity, and was accordingly pragmatic to a fault. It adapted all too easily to circumstances. The Venetians were exporting no ideology to the world. They were not hoping to found lesser states in their own image. They had no missionary zeal. They were not great builders, like the Romans. They were not fanatics, like the Spaniards.

  They were above all money-people - every Venetian, wrote Pope Pius II in the fifteenth century, was a slave to 'the sordid occupations of trade'.

   Introduction
   The Venetian Empire: A Sea Voyage by Jan Morris
   Penguin; New edition, 1990-01-04
   Excerpt at Amazon.co.uk
   Snippet preview at Google Books


■外部リンク External links

 [en] English
   * Jan Morris (formerly James Morris) Biography - (1926– )
     The Times, Guardian, Coronation Everest, Coast to Coast, Venice
   * Jan Morris - Goodreads
   * Jan Morris - Wikipedia (1926- )

 [ja] 日本語
   * ジャン・モリス - 関心空間 by tomoki y.


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Sunday, 04 May 2008

Jan Morris on disastrous travels ジャン・モリス「悪いことなんか起こりっこない」

[ja]『お気をつけて、いい旅を。—異国で出会った悲しくも可笑しい51の体験』アスペクト (1995)
[nl] Was ik maar thuisgebleven. Rainbow Pocketboek (2002) ISBN: 9041703500 オランダ語版
[en] I Should Have Stayed Home: The Worst Trips of Great Writers. RDR Books, US (1995)

              ↓ Click to enlarge ↓
 
ja 4893663836 nl Was_ik_maar_thuis_gebleven en I_should_have_stayed_home
 
 
■日本語訳 Translation into Japanese

スーダンの国家指導大臣がいつだったかこういう話をしてくれた。プロとしてのあなたの義務は、できるかぎり真実を踏まえて、スリリングで、衆目を集める、よいニュースを書くことである、と。わたしはこの忠告をとても真剣に受け止めた。不愉快な出来事に出くわす才能についてふさわしい言葉があるかどうかは知らないが、掘出し物を見つけ出す才能、つまり楽しい出来事にめぐりあう才能こそ、物書きを職業に選んだ人間にとって、神からのこのうえなく幸運な贈物だということだけはわかる。

   ジャン・モリス=著 古屋美登里+中俣真知子=訳
   「悪いことなんか起こりっこない」
   メアリー・モリス、ポール・セロー〔ほか〕=著
   古屋美登里+中俣真知子=訳
   『お気をつけて、いい旅を。—異国で出会った悲しくも可笑しい51の体験
   アスペクト 1995/07 所収

   原書:
   I Should Have Stayed Home: The Worst Trips of Great Writers
   Edited by Roger Rapoport & Marguerita Castanera.
   First published by Berkeley, CA : Book Passage Press, 1994.
 
 
■上の日本語訳にほぼ相当する英語原文
 A close English approximation of the translation above

   下の英文は、上の日本語訳の原文ではなくて、あるシンポジウムでの
   ジャン・モリスの発言からの抜粋です。けれど、内容は上記とほとんど
   文字どおり同じです。原書は家のどこかにあるはずなのですが、あいにく
   いま見あたりません。
   The following is not the original source text of the Japanese
   quotation above, but the content is almost verbatim the same.
   I own the original book, "I Should Have Stayed Home," somewhere
   at my home but cannot locate it at the moment. - tomoki y.

Jan Morris: I remember in the Sudan once, I was there on assignment, and the Minister of National Guidance, a rather severe man, told me how I ought to be approaching the subject, which was some rebellion or other, and he said the duty of the foreign correspondent is to present thrilling, attractive and good news -- corresponding, where possible, with the truth. And he was my best mentor for the kind of writing I did. I learned more from him than from anybody else.

   Itchy Feet and Pencils: A Symposium
   Date: August 18, 1991, Sunday, Late Edition - Final
   The New York Times on the Web
 
 
■収録本じたいの評価 On the book as a whole

Amazon.com の星の数を見ると、この原書 "I Should Have Stayed Home" は、おおむね不評のようです。わたし自身は最初から最後まで読んだわけではないので、良いとも悪いとも言えません。ただ、ジャン・モリスの書くもの(/言うこと)は好きなので、その箇所を抜き出しました。

ちょっとだけ注釈を。この本全体は、悪夢のような旅のエピソードを面白おかしく書いたのを、ずらっと並べて読者を楽しませようという魂胆だったようです。で、そのトリを務める大御所のジャン・モリス一人だけは、反証を試みるのです。——いや、私にとっては悪い旅なんて、ありえない。楽しい出来事を伝えて読者を喜ばせてこそ作家冥利に尽きるのだし、じっさい私はこの何十年ものあいだ、紀行作家として世界中をたのしく巡ってきたのだ、と。

本がけなされたのは、モリス以外の作家たちのレベルが低かったせいかもしれません。かりに、彼女のいうことが間違いで、地獄のごとき道中が楽しい読み物になりうるとしましょうか。でも、それがたとえば、ダグラス・アダムスの『銀河ヒッチハイク・ガイド』のようなヒステリカルな(←ほめ言葉です)境地に到達するのは、並み大抵でないことは確かでしょう。あれはフィクション作品ですが、いまとっさに他にいい例を思い出せなかったので。

というわけで、わたしとしては、他人の経験した最悪の旅について、サディスティックに腹をかかえて笑える紀行ノンフィクション大傑作の出現をおおいに期待します。て、全然まとめになってませんが。
 
 
■外部リンク External links

   * Jan Morris - Wikipedia (1926- )
   * ジャン・モリス - 関心空間 by tomoki y.
 
 
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Friday, 30 November 2007

Conundrum by Jan Morris ジャン・モリス 『苦悩—ある性転換者の告白』

           目次 Table of Contents

   ■はじめに Introduction
    Images  本の表紙、著者とその息子 Book covers, The author and her son
   ■日本語訳 Translation into Japanese
   ■英語原文 The original text in English
    Video 1  An Evening with Jan Morris in Conversation with Don George
    Video 2  トランスセクシャルの人たちに薦める本 Helpful books for transsexuals
   ■性転換手術の内実 The reality of her sex change surgery
   ■「性転換」に関わる用語について On terminology relating to "sex change"
   ■『苦悩』復刊リクエスト
   ■モリスとカルーセル麻紀: トリヴィア Trivia
   ■tomokilog の関連記事 Related article from tomokilog
   ■外部リンク External links
   ■更新履歴 Change log


■はじめに Introduction

『苦悩—ある性転換者の告白』は、ジャン・モリスが書いた半自伝的な本。セクシュアリティの分野、とくに性同一性障害についての草分け的な著作。英語の原書は高い評価を受け、あちこちの専門書でも引用され、ロングセラーとなっています。

その冒頭部分を訳書と原書から下に引用します。


 Images 
本の表紙、著者とその息子 Book covers, The author and her son

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↑ クリックして拡大 Click to enlarge ↑

■日本語訳 Translation into Japanese
 
 何かの間違いで男の子の身体に生まれてきてしまったが、自分はほんとうは女の子なのだと気がついたのは、三歳の時だった。もしかしたら、四歳だったかもしれない。とにかく、その時のことはよく覚えていて、私の最も古い記憶となっている。
 私は、母が弾いているピアノの下に坐っていた。(……)


■英語原文 The original text in English

I was three or perhaps four years old when I realized that I had been born into the wrong body, and should really be a girl. I remember the moment well, and it is the earliest memory of my life.

I was sitting beneath my mother's piano (....)


 Video 1 
An Evening with Jan Morris in Conversation with Don George

Uploaded to YouTube by GeoEx on 31 May 2013.


 Video 2 
トランスセクシャルの人たちに薦める本 A few helpful books for transsexuals

トランスセクシャルの人々に推薦する本として、この女性はミルドレッド・ブラウンとクロエ・ラウンズリーの共著『トゥルー・セルブズ』とならんでジャン・モリスの『苦悩』を挙げています。ビデオの 4:08 あたりからご覧ください。 Uploaded by LainWest on Jun 21, 2010. As for books for transsexuals, this woman recommends Jan Morris's Conundrum (especially Chapter 12: Changing sex—hormonal effects—a precarious condition— self-protection—rules) along with True Selves by Mildred L. Brown and Chloe Ann Rounsley. Watch the video from around 4:08.


■性転換手術の内実 The reality of her sex change surgery

ジャン・モリスは、著名なジャーナリスト、歴史家、旅行作家。1926年英国に生まれ、ジェームズ・ハンフリー・モリスという名の男性として育った。成人して1949年に結婚し、20年以上夫婦生活を続けた。この間に5人の子供をもうけている(うち1人は幼少時に死亡)。上の写真の右側にうつっている詩人 Twm Morys は5人のうちの1人。

モリスは内心つねに自分のことを女性であると感じ、男性の外見を持つ自分の身体を居心地悪く感じていた。これは、よく誤解されるような同性愛の状態ではなくて、純粋に身体と自覚する性との不一致の問題であった。1960年代になると、モリスはエストロゲン(女性ホルモン)の注射を打ってもらうようになった。英国内で性転換手術を受けようとしたが、医師は手術前に、まずモリスが妻と離婚するよう求めた。ところが、モリスは、これを拒否。結局、国内での手術は断念した。

モリスは、こんどは性転換手術の世界的パイオニアといわれるモロッコ在住のフランス人医師 Dr. Georges Burou のもとを訪ねて手術を受けた。モリスの睾丸とペニスは除去され、Dr. Burou は膣の役目を果たす空洞を人工的にこしらえた。陰唇は、モリスの陰嚢の組織から作りあげられ、空洞部の表面は、モリスのペニスの敏感な部分の皮膚を用いて覆われた。モリスの尿道の海綿状の部分は、クリトリスが位置すべき場所を形成した。

手術後、ジェームズはジャンと名乗るようになった。よき理解者である妻(であった女性)とは同居をつづけ、家族として、きわめて良好な結びつきを維持している。自分の受けた性転換手術については、"a bloody violation" 血まみれの(=とんでもない)暴行だったと、モリスは語っている。

  • 以上はウィキペディア英語版の Jan Morris の項から抜粋した拙訳。補足・修正を加えました。

■「性転換」に関わる用語について On terminology relating to "sex change"

ウィキペディアによると、性転換手術は旧称であり、いまは 性別適合手術 と呼ぶようです。英語では、sex-change operation が通称または俗称。専門用語あるいは正式名としては、sex reassignment surgery (SRS)、gender reassignment surgery (GRS) などが使われるようです。


■『苦悩』復刊リクエスト

上の立風書房刊の邦訳は、長らく絶版になっています。たまに古書店などで見かけると、べらぼうな値段がついていることも。この本の復刊を希望される方は、復刊ドットコム というサイトで復刊のリクエスト投票をなさるのも一法かと思います。

もっとも、票が必要数に達して、実際に復刊が実現するまでには、通常かなり時間がかかるようです。むしろ、新訳の出現を期待するほうが現実的かどうか。私には、ちょっと判断がつきかねます。

なお、原書のほうは上述のとおり、セクシュアリティ、性同一性障害に関わる草分け的な著作として定評があり、ロングセラーとなっています。したがって、新本でも古本でもオンライン書店でも入手するのは容易です。


■モリスとカルーセル麻紀: トリヴィア Trivia

私の記憶違いでなければ、ジェームズ・モリスがジャン・モリスになるための手術を施した、モロッコの医師 Dr. Georges Burou は、カルーセル麻紀さんに執刀したのとおなじ人だったと思います。ふたりが手術を受けた時期も、おなじ1970年代の比較的近い時期だったと、どこかで読んだように記憶します。

以下に関連サイトを挙げます。ただし、各サイトに記載されている内容の真偽・正確さのほどは、いっさい保証いたしません。


■tomokilog の関連記事 Related article from tomokilog


■外部リンク External links


■更新履歴 Change log

  • 2015-03-25 「はじめに」の項を新設しました。
  • 2013-10-12 目次を新設しました。また、An Evening with Jan Morris in Conversation with Don George の YouTube 動画を追加しました。
  • 2012-10-05 トランスセクシャルの人たちに薦める本の YouTube 動画を追加しました。

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Friday, 17 August 2007

Pax Britannica by Jan Morris ジャン・モリス 『パックス・ブリタニカ』

 Images 
表紙画像 Cover photos

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↑ クリックして拡大 Click to enlarge ↑

■日本語訳 Translation into Japanese

無造作に召使いを叩く習慣は、帝国各地にしぶとく生き残った。一九四六年に、エジプトで最初の一週間を過ごしていた私は、とりわけ物静かで優しげな英国人大佐と一緒に、ポートサイドからカイロ行きの列車に乗った。指定の席にいこうと通路を歩いていくと、コンパートメントのなかの客に軽食を差し出しているエジプト人に、道をふさがれた。大佐は即座に、見たところなんのためらいもなく、エジプト人を蹴飛ばして横にどかせた。この種の、いかにも帝国的光景を見たのははじめてだった。人が変わったような大佐の振るまいと、大佐のひと蹴りを受け入れて道を空(あ)けたエジプト人の、何事もなかったような無表情さは、いまも忘れられない。


■英語原文 The original text in English

Striking the servants, in an off-hand way, died hard in the Empire. In 1946, during my first week in Egypt, I boarded the Cairo train in Port Said with an English colonel of particular gentleness of manner and sweetness of disposition. As we walked along the corridor to find our seat we found our way blocked by an Egyptian, offering refreshments to people inside a compartment. Without a pause, apparently without a second thought, the colonel kicked him, quite hard and quite effectively, out of our way. I was new to the imperial scenes, and I have never forgotten this astonishing change in my companion's character, nor the absolute blank indifference with which the Egyptian accepted the kick, and moved.


 Audio 
92Y/The Paris Review Interview Series: Jan Morris

Uploaded to YouTube by 92Y Plus on 24 Mar 2014


■ジャン・モリス Jan Morris

1926年、英国、サマセット州 に生まれる。アングロ・ウェルッシュ。欧米では圧倒的人気を誇る歴史・紀行作家。本書と共にパックス・ブリタニカ3部作を成す Heaven's Command, Farewell the Trumpets のほか、Trieste and the Meaning of Nowhere, ヴェネツィアスペインカナダシドニー香港 をめぐる歴史・紀行作品、自伝的作品 Conundrum などがある。邦訳では『ヴェネツィア帝国への旅』(2001年、東京書籍刊)など。1985年、Last Letters from Havブッカー賞にノミネート される。英国、王立文学会会員

  • 『パックス・ブリタニカ(上・下)』の奥付およびカバー折返しに記載されたプロフィールから、全文を引用しました。ハイパーリンクは tomoki y. が勝手に張ったものです。
  • なお、自伝的作品 Conundrum は、かつて竹内泰之氏による邦訳が、『苦悩—ある性転換者の告白』(1976年、立風書房刊)という題で出ていましたが、長らく絶版になっています。お読みになりたい方は図書館・古本屋をあたるか、もしくは 復刊ドットコム に復刊リクエストの投票をなさってください。

■タイムズ紙「1945年以降の英国作家ベスト50」で15位

去る2008年1月に英タイムズ紙が発表した「1945年以降の英国作家ベスト50」 (The 50 greatest British writers since 1945) のリストで、ジャン・モリスは15位にランク入りしました。この順位は、並大抵ではありません。なぜなら、つぎに挙げる有名作家たちよりも上位だったからです。

ロアルド・ダール(16位)、アンソニー・バージェス(17位)、ジョン・ル・カレ(22位)、J・G・バラード(27位)、カズオ・イシグロ(32位)、アニータ・ブルックナー(33位)、J・K・ローリング(42位)、ジュリアン・バーンズ(44位)、ブルース・チャトウィン(46位)。


■外部リンク External links


■更新履歴 Change log

  • 2014/12/02 92Yの対談の YouTube 画面を追加しました。
  • 2008/10/11 タイムズ紙「1945年以降の英国作家ベスト50」に関する項を追加しました。
  • 2007/08/18 絶版になっている『苦悩—ある性転換者の告白』について、復刊ドットコムへの復刊リクエストに関する情報を追加しました。

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(1) Jan Morris

(2) Pax Britannica

■和書 Books in Japanese
(1) ジャン・モリス

(2) 大英帝国

(3) パックス・ブリタニカ

  

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