蒲松齢 「偸桃」(『聊斎志異』より) Strange Stories from a Chinese Studio by Pu Songling (4)
目次 Table of Contents
Video 1 The Indian Rope Trick - Penn & Teller
Video 2 The Most Elusive Trick in History, BBC Prime!
■ロシア語訳 Translation into Russian
■英訳 Translations into English
(E1) Minford, 2006
(E2) Giles, 1880
■現代日本語訳 Translations into contemporary Japanese
(J1) 黒田 2009, 2011
(J2) 立間 1997
(J3) 戸倉 1990
(J4) 金 1989
(J5) 増田+松枝+常石 1971
(J6) 柴田 1956, 1987, etc.
(J7) 佐藤 1929, 1948, etc.
(J8) 田中 1926, 1997, etc.
■中国語原文(簡体字)The original text in simplified Chinese
■中國語原文(繁體字)The original text in traditional Chinese
Images 空にのびたロープの先から子供の首が落ちてくる
■バラバラ死体のマジック:その真偽は? ルーツは? Is this all hocus-pocus?
(1) Indian rope trick
(2) 17世紀の目撃証言:蒲松齢とE・メルトン
(3) tomoki y. の記憶
(4) 伝来の径路
■更新履歴 Change log
Video 1
The Indian Rope Trick - Penn & Teller
Uploaded to YouTube by awakekiwi on 16 Aug 2008. A segment from Penn & Teller's Magic and Mystery Tour.
Video 2
The Most Elusive Trick in History, BBC Prime!
Uploaded to YouTube by coder's channel on 26 Dec 2009
■ロシア語訳 Translation into Russian
[Omission]
И вот сын ухватился за веревку и, извиваясь по ней, стал лезть вверх. Он перебирал руками, за которыми шли следом ноги, и лез, словно паук по паутине. Лез, лез – и понемногу стал уже входить в тучи, в высокое небо, где его стало больше не видать.
Прошло довольно долгое время – и вдруг упал персик, величиной с хорошую чашку. Фокусник пришел в восторг, схватил персик и поднес господам в зале. В зале стали друг другу его передавать, рассматривать… Прошло опять порядочное время, а господа не могли понять, настоящий это или фальшивый.
Вдруг веревка упала на землю. Фокусник принял испуганный вид.
– Погибло все, – вскричал он. – Там наверху кто-то срезал мою веревку. На чем же будет теперь мой сын?
Через несколько минут что-то упало. Фокусник посмотрел – оказывается, то была голова его сына. Он схватил ее обеими руками и стал плакать.
– Значит, он там крал персик, – причитал отец, – а надзиратель заметил… Сынок, пропал ты!
Прошло еще некоторое время. Упала одна нога. За ней вскоре стали падать вразброд разные члены тела… [Omission].
Крадет персик
Рассказы Ляо Чжая о необычайном
Translated by Василий Михайлович Алексеев
E-text at Либрусек
■英訳 Translations into English
(E1) Minford, 2006
[Translation text to be inserted later]
12. Stealing a Peach
Strange Tales from a Chinese Studio by Pu Songling
Translated by John Minford
Penguin Classics, 2006-05-25
(E2) Giles, 1880
[Omission]
So his son seized the rope and swarmed up, like a spider running up a thread of its web; and in a few moments he was out of sight in the clouds. By-and-by down fell a peach as large as a basin, which the delighted father handed up to his patrons on the dais, who were some time coming to a conclusion whether it was real or imitation.
But just then down came the rope with a run, and the affrighted father shrieked out, “Alas! alas! some one has cut the rope: what will my boy do now?” and in another minute down fell something else, which was found on examination to be his son’s head. “Ah me “said he, weeping bitterly and showing the head; “the gardener has caught him, and my boy is no more.” After that, his arms, and legs, and body, all came down in like manner; [Omission].
104. Theft of the Peach
Strange Stories from a Chinese Studio by Pu Songling
Translated by Herbert A. Giles
T. De la Rue & Company, 1880
Preiew at Google Books
Reprint editions include:
Strange Stories From a Chinese Studio, Vol. 2 of 2 Forgotten Books, 2010-04-17
E-text at Internet Archive: Wayback Machine
■現代日本語訳 Translations into contemporary Japanese
(J1) 黒田 2009, 2011
(……)
それを聞いて、子供はしぶしぶ縄を持つと、ゆらりゆらり登っていき、まるでクモが糸をはうように手足を動かし、次第に雲の中に入って行くと、まったく見えなくなったのである。
しばらくすると、お椀くらいの大きな桃が一個、空から落ちて来た。手品師は喜んでそれを大広間に持って行き、恭しく差し出した。広間の役人たちは、長い間、互いに手渡してはじろじろ見つめていたが、真偽のほどはわからなかった。不意に縄が地上に落ちてきた。手品師は、ギョッとして叫んだ。
「大変だ、天界で誰か縄を切っちまった。坊主はどうすりゃいいんだ。」
ほどなくして、ドサッと何かが落ちた。見れば、子供の首だった。父は手に捧げ持つと、泣きわめいて言った。
「これはきっと桃を盗んだのが、見張り番に見つかっちまったんだ。ああ、もう万事休すだ。」
さらに片足が落ちてきた、と思うと間もなく手足と胴体が一つ残らずバラバラと落ちてきた。(……)
蒲松齢(ほ・しょうれい) 『聊斎志異』
a. 「偸桃(ちゅうとう)」(天界の桃を盗む少年の話)
楊逸(ヤン・イー)=著 黒田真美子(くろだ・まみこ)=現代語訳
『楊逸が読む聊斎志異』 明治書院 2011/09/30 所収
b. 「偸桃」(桃を偸む) (巻1-13)
竹田晃(たけだ・あきら)+黒田真美子=編 黒田真美子=著
『聊斎志異1 清代1』 中国古典小説選9 明治書院 2009/04/10 所収
引用は b. に拠りました。原文の傍点を下線で置き換えました。b. の
底本は次の書物:
底本:
会校会注会評本 『聊斎志異』 (張友鶴輯校、上海古籍出版社
1986-08 第一版、1987-10 第四次印刷)。本書は、1963年、中華書局
上海編輯所で出版された張友鶴輯校、いわゆる三会本12巻に、章培恒
「新序」を付したもの。
(J2) 立間 1997
(……)
子供はそこで縄をにぎり、くるくる回りながらよじ登りはじめた。まるで蜘蛛が糸をつたうようにすいすいと登っていって、やがて雲のなかに姿を消してしまったが、しばらくして、どんぶりほどもある大きな桃がひとつ落ちてきた。手品師は大喜びで早速広間に届ける。役人たちはかわるがわる手にとってとみこうみしていたが、本物かどうかいっこうに決めかねていた。
ところへ不意に縄が落ちてきた。
「もうだめです。上に誰かがいて縄を切ったのです。これで息子は下りてこれなくなってしまいました」
手品師が仰天して叫ぶとき、何かが落ちてきた。見れば子供の首である。手品師がその首を捧げ持って、
「桃を盗んだのを番人にみつかったのです。息子もこれで終わりです」
と泣きだしたとき、足が一本落ちてき、ついで残りの足や身体がばらばらになって落ちてきた。(……)
蒲松齢(ほ・しょうれい)=作 立間祥介(たつま・よしすけ)=編訳
「桃盗人—偸桃(ちゅうとう)」
『聊斎志異(上)』 全2冊 岩波文庫 1997/01 所収
(J3) 戸倉 1990
(……)
そう言われて子供は縄を取り、くるりくるりとまわりながら昇って行った。手が移れば足が従い、まるで蜘蛛(くも)が糸を伝わっていくようである。しだいに雲の彼方に達し、やがて姿も見えなくなった。しばらくすると、桃が一つ落ちてきた。椀(わん)ほどもある大きな桃である。術師は喜び、恭(うやうや)しく役人に差し出した。広間ではそれを手から手へ渡し、長いことかかってあらためたが、それが本物の桃かどうかはわからなかった。
とその時、縄が地面に落ちてきた。術者はびっくりして言った。
「たいへんだ! 誰かが上で縄を切った。息子はどうなるんだ!」
ややあって、一つの物が落ちてきた。見れば子供の首である。術者はそれを捧げ持ち、泣きながら言った。
「桃を偸(ぬす)んで、番人に見つかったに違いない。こんなざまになって!」
またややあって、一本の足が落ちてきた。またつづけて胴やら腕やらバラバラと落ちてきたが、どれも原形を留めているものはなかった。(……)
蒲松齢=著 戸倉英美(とくら・ひでみ)=訳・解説
聊斎志異 「偸桃(とうとう)」
竹田晃=編 『中国幻想小説傑作集』
白水Uブックス91 白水社 1990/12 所収
(J4) 金 1989
(……)子供はそれを聞くとようやく縄を取り、ぐるぐるまわるように登っていった。手が移るとあとから足がついてゆき、まるで蜘蛛(くも)が糸の上をはうようで、そのうちに雲の中へと消え、とうとう見えなくなった。
それからどれほどたっただろうか。上からお椀ほどもある桃が一つおちてきた。手品師はよろこんで、それを広間の役人に献上する。広間の上では、みな次から次へと手にとってじっくり見たが、本物かどうか誰も分からない。
その時、突然縄がドサリと地面に落ちた。手品師はびっくりして、
「大変だ。上でだれかが縄を切ったらしい。命の綱が切れてしまっては、息子はどうやっておりられよう」
と言ううちに、まもなく、なにか物がおちてきた。みれば、なんと子供の首ではないか。父親はその首を両手にささげもって、泣きながら言った。
「きっと桃をぬすんだのを番人にみつかったにちがいない。息子はもうおしまいじゃ」
またしばらくすると、今度は足がひとつおちてくる。まもなく、手足、胴体が次から次へとバラバラに、とうとう体中ひとつ残らずおちてきた。
(……)
蒲松齢=作 金文京(きん・ぶんきょう)=著(現代語訳)
「偸桃」 聊斎志異
『鑑賞 中国の古典23 中国小説選』 角川書店 1989/11 所収
(J5) 増田+松枝+常石 1971
(……)
子供はそれを聞くと縄を持った。そしてゆらりゆらりとゆれながら上がっていった。手が移ると足もついて上がる。まるで蜘蛛(くも)が蜘蛛の糸を伝わるようだった。だんだん上がって雲の中へはいってゆき、もう見えなくなってしまった。しばらくたってから、桃の実が一つころがり落ちてきた。椀(わん)くらいの大きな桃だった。手品使いはよろこんで、それを持って広間の役人に差し出した。役人たちは次から次へ手にとって、しばらくながめていたが、真物(ほんもの)かどうかハッキリしたことが分からないでいた。ふと縄がドサリと地上に落ちて来た。手品使いは吃驚(びっくり)していった。
「こりゃ大へんだ。誰かが空中でわしの縄をたち切った。子供の命の縄を切ってしまった」
間もなく何かが落ちて来た。よく見るとそれは子供の首であった。その首を両手に捧げて泣きながらその男はいった。
「きっと桃を盗んだのを番人に見つかったのだ。息子(むすこ)はやられた!」
すると、足が片方落ちて来た。やがてまた手足と胴体とがバラバラになって落ちて来た。(……)
蒲松齢=作 増田渉+松枝茂夫+常石茂=訳
「桃を盗む少年(偸桃)」
『聊斎志異(上)』 中国古典文学大系40(全60巻)
平凡社 1970/04 所収
(J6) 柴田 1956, 1987, etc.
(……)
子(こども)は、乃(そこで)、索(なは)を持つて盤旋(する/\)と上りはじめた。手が移る。足が随(つい)てゆく。まるで蛛(くも)が絲を趁(つた)ふやうに、雲霄(そら)に入つていつて、たうとう見えなくなつてしまつた。
と、久之(しばらく)して桃が一つ墮ちてきた。〓(わん)のやうな大きさである。術人(てづまし)は喜んで、それを持つて公堂(ひろま)にのぼり、やくにんに獻(さしあ)げた。堂上(ひろま)のひとたちは、手から手にそれを傳(まは)して、しばらくのあひだ視(み)てゐたけれど桃の眞僞はわからなかつた。
忽ち繩が地上に落ちて來た。術人(てづまし)は驚いてさけんだ、
「殆矣(あぶない)! 上(そら)に人(だれ)かゐて、吾(わし)の繩を斷(き)つてしまつた! 兒(せがれ)は焉(なに)に託(たよ)るのだ!」
そのうちに墮ちてきた物があるので、かけよつて視ると、子(せがれ)の首だつた。おやぢはそれを捧げて、泣きながら曰ふのである、
「こりやあ必(きつ)と、桃を偸(ぬす)んだのを監者(ばんにん)に覺られたにちがひない。吾兒(せがれ)は休矣(だめ)だ!」
それから又移時(しばらく)すると、一足(かたあし)が落ちてきた。そして無何(まもな)く、肢(あし)や體が紛々(ばら/\)になつて墜ちてきた。復(も)う存(のこ)つてゐるものは無いのである。(……)
(〓は央の下に皿)
蒲松齢=作 柴田天馬=訳 「偸桃(とうたう)」
a. 『ザ・聊斎志異—聊斎志異全訳全一冊(大活字版)』 第三書館 2007/01 所収
b. 『ザ・聊斎志異—聊斎志異全訳全一冊(愛蔵版)』 第三書館 2004/07 所収
c. 『ザ・聊斎志異—聊斎志異全訳全一冊』 第三書館 1987/06 所収
d. 『完譯聊齋志異8』(全8巻) 角川文庫 1957/04 所収
引用は d. に拠りました。
(J7) 佐藤 1929, 1948, etc.
(……)
子供はそこで縄につかまつてぐるり/\廻りながら上(あが)つて行きました。一つの手が挙ると一つの足もそれにつれて挙るのです。まるで蜘蛛が巣の上を走るようにする/\と高くなつて行つて、次第に雲の中へ姿をかくし、今はもうすっかり見えなくなつたのでした。
しばらくたつと桃の実が一つ落ちて来ました。お椀ぐらゐの大きさの桃でした。手品師は喜んでそれをお役人にさゝげました。お役人達はその桃を順々に手に取つてしらべて見てゐましたが、ほんとうの物か偽(にせ)の物かわからないようでした。
すると突然縄が地面の上へ落ちて来ました。手品師は悲しげに、
「あぶない。誰か上で縄を切つたやつがゐる。倅(せがれ)はつかまるところがないだらうに」
少したつて何か上から落ちて来ました。よく視ると登つて行つた子供の首なのでした。手品師はそれを両手に捧げて泣いていひました。
「こりやあ、きっと、桃を盗んだので番人に見つけられたんだぞ。あゝ、倅ももうだめだ」
また少したつと足が一本落ちて来ました。それからすぐに胴や手や足がばら/\と降つて来ました。皆ちぎれちぎれで、一つとして繋(つな)がつてゐるものはないのでした。(……)
佐藤春夫=著 「桃を盗んだ子」
a. 『定本 佐藤春夫全集28 翻訳・翻案1』(全36巻)
臨川書店 1998/11 所収
b. 『支那童話集』 復刻版日本児童文庫13 名著普及会 1981/10 所収
c. 『百花村物語』 新日本少年少女選書 湘南書房 1948/03 所収
d. 『佐藤春夫全集2 短篇小説』(全3巻) 日本文学大全集
改造社 1932 所収
e. 『支那童話集』 日本児童文庫 アルス 1929/01(昭和4)所収
佐藤春夫=著 「童話 桃を盗んだ児」
f. 『東京日日新聞』 1929/01/01(昭和4)収載
b. は e. の復刻版。 初出は f.。引用は a. に拠りました。
(J8) 田中 1926, 1997, etc.
(……)
子供はそこで繩を登つて往つた。それはちやうど蛛(くも)が糸を傅つて往くやうであつた。そしてだんだん雲の中へ登つて往つて見えないやうになつた。
暫くして空から一つの桃が墜ちて來た。それは椀よりも大きなものであつた。彼の男は喜んで、それを堂の上の官人にたてまつつた。官人は順順にそれを見たが、それは眞(ほんとう)の桃であるかないかをしらべるやうなさまであつた。と、忽ち繩が空から落ちて來た。彼の男は驚いて叫んだ。
『あぶない、天に人がゐて、繩を斷つたのだ、悴がたいへんだ、』
暫くして空から物が堕ちて來た。それは子供の首であつた。彼の男は首を抱きかかへて泣いて云つた。
『これは、きつと、桃を偸んでゐて、番人に見つかつたのだ。』
又暫くして一つの足が落ちて來たが、それにつづいて手も胴も體もばらばらと堕ちて來た。(……)
蒲松齢=著 田中貢太郎=訳 「偸桃」
a. 「偸桃」 『聊斎志異』 青空文庫(電子テキスト)新字新仮名
入力: 門田裕志 校正: 松永正敏 アップロード: 2007/08/12
b. 公田 連太郎(こうだ・れんたろう)=注
『聊斎志異』 明徳出版社 1997/04/30
c. 『支那文學大觀12』 「聊齋志異」
支那文學大觀刊行會 非賣品 1926/03(大正15)所収
a. の底本は b.。b. は c. の複製。引用は c. に拠りました。
■中国語原文(簡体字)The original text in simplified Chinese
(……)子乃持索,盘旋而上,手移足随,如蛛趁丝,渐入云霄,不可复见。久之,坠一桃如碗大。术人喜,持献公堂。堂上传示良久,亦不知其真伪。
忽而绳落地上,术人惊曰:“殆矣!上有人断吾绳,儿将焉托!”移时一物坠,视之,其子首也。捧而泣曰:“是必偷桃为监者所觉。吾儿休矣!”又移时一足落;无何,肢体纷坠,无复存者。(……)
聊斋志异 蒲松龄 著
巻一 偷桃
E-text at:
* 亦凡書庫 (yifan.net)
* 時代書城 (mypcera.com)
■中國語原文(繁體字)The original text in traditional Chinese
(……)子乃持索,盤旋而上,手移足隨,如蛛趁絲,漸入雲霄,不可復見。久之,墜一桃,如碗大。術人喜,持獻公堂。堂上傳視良久,亦不知其真偽。
忽而繩落地上,術人驚曰:「殆矣!上有人斷吾繩,兒將焉託!」移時,一物墮。視之,其子首也。捧而泣曰:「是必偷桃,為監者所覺。吾兒休矣!」又移時,一足落;無何,肢體紛墮,無復存者。(……)
聊齋志異 蒲松齡
卷一 偷桃
E-text at 漢川草廬 (www.sidneyluo.net)
Images
空にのびたロープの先から子供の首が落ちてくる
-
A drawing by Edward Melton from The Book of Ser Marco Polo. Melton recorded that he witnessed this magic performed by a Chinese magician in Batavia, Java, 1670, which is 11 years after Pu Songling saw a similar act in Jinan, China. Image source: The Baldwin Project: Celtic Fairy Tales by Joseph Jacobs.
- 偸桃 Image source: 浅井喜久雄 『怪と異と奇』|作品紹介
- 戴敦邦=絵 《戴敦邦聊斎人物譜 第2版》, 天津楊柳青画社 (2005) Image source: シャンハイミー氏によるブログ「上海の本屋歩き」
■バラバラ死体のマジック:その真偽は? ルーツは?
Is this all hocus-pocus?
(1) Indian rope trick
-
空からバラバラ死体が落ちてきたあと、また元どおりに一つになる。
——この奇抜な手品は、インドや中国では、かなり昔からあったらしいです。さかのぼれば、北魏や唐末などの目撃者の記録も残っています。マルコ・ポーロ (1254-1324) はインド・中国に滞在中に「インドのロープ・トリック」を見たとされています。 - イスラム法学者で大旅行家のイブン=バットゥータ (1304- 没年未詳 1368 or 1377 ?) も、1346年、中国・杭州を旅行中に、この「インドの縄の奇術」に似たものを見たと主張しています。
- 伝承によれば、類似の手品/奇術/マジック/トリックは、16〜19世紀のムガール帝国時代に、西はペシャワールから東はダッカまで、インド亜大陸における、ムガール勢力の中心地(たとえば、パトナ、アグラ、デリーなど)で演じられたとのことです。
(2) 17世紀の目撃証言:蒲松齢とE・メルトン
- さて、上の引用には含めませんでしたが、「偸桃」の冒頭部分を読むと、蒲松齢じしんは、まだ若かった1659年、山東省の済南で、春分のお祭りの出し物として、この手品が演じられるのを実際に見たということです。
- 画像〈左〉のイラストを描いたイギリス人の旅行家エドワード・メルトンは、もう1人の目撃者です。1670年、蒲松齢より遅れること11年、ジャワ島のバタビアで、中国人の手品師による同じような奇術を見たそうです。相当インパクトが強かったらしく、おかげで、このような絵が残されました。
(3) tomoki y. の記憶
- 私 tomoki y. は、残念ながら、このような珍奇なものを目撃する機会にめぐまれません。けれども、このマジックの話じたいは、ずっとまえに読んだことがあります。出典を思い出せませんが、たしか明治生まれの日本人の学者が、戦前の中国かどこかで同じ手品を見た、もしくは見たという人の話を聞いた、というものでした。
(4) 伝来の径路
- このトリックの伝来のルートは、仏教伝播のルートと重なるようです。つまり、インドや西域から中国に伝わったと推測されています。
- 典拠:
- 上掲 (3) 金文京=著 『鑑賞 中国の古典23 中国小説選』 (1989) の解説
- Indian rope trick - Wikipedia
■更新履歴 Change log
- 2013/09/09 目次を新設しました。
- 2012/07/13 つぎの2本の YouTube 動画を追加しました。
- Video 1: The Indian Rope Trick - Penn & Teller
- Video 2: 20 of 50 Greatest Magic Tricks - Indian Rope Trick
- 2012/06/26 ロシア語訳、John Minford による英訳の書誌情報、ならびに Herbert A. Giles による英訳を追加しました。
- 2011/11/19 竹田晃+黒田真美子=著 2009/04/10 を追加しました。
- 2010/10/03 田中貢太郎=訳の書誌情報を補足・修正しました。
- 2007/11/18 佐藤春夫=著 1929/01/01, 1929/01, etc. を追加しました。
- 2007/09/03 「バラバラ死体のマジック:その真偽は? ルーツは?」の項を、大幅に加筆しました。Wikipedia の記述に拠り、マルコ・ポーロの証言や、おもにインドにおける、この手品の伝播の状況などを補足しました。
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