Saki (= Hector Hugh Munro)

Friday, 09 January 2009

Gabriel-Ernest by Saki (2) サキ 「狼少年」「おおかみ男」「ガブリエル-アーネスト」「ゲイブリエル-アーネスト」 (2)

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« 1 ガブリエル-アーネスト »

■表紙画像 Cover photos

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S. Sakis_short_stories

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■はじめに Introduction

この短篇小説の題名を「おおかみ男」や「オオカミ少年」と訳してしまっては、種明かしをするようなものです。原題そのままに「ゲイブリエル-アーネスト」としたほうが、良いように思います。まあ、ともかくそういうお話です。一見、無垢で純真に見えた少年の正体は、じきに明らかになります。

ただ、数ある平凡なホラーの域にとどまらず、この作者らしい味が出ているのは、少年愛や同性愛的な雰囲気が漂っている点でしょう。そして、ちょっといじけたような意地悪さも見える。サキは、へそまがりや天の邪鬼の人向きの作家です。
 
 
■日本語訳 Translations into Japanese
 
(J1) tomoki y. 2009
「(……)不意に気がつきました。はだかの男の子がいるのです。近くの池で水遊びでもしていたのかな、と思いました。木や草のはえていない丘の斜面に立って、この子も日が沈むのを見ていました。その姿態が、まるでローマ神話に出てくる半人半獣の牧神ファウヌスそっくりなのです。すぐさま思いました。この子をモデルとして使いたいなあ。次の瞬間には、この子に声をかけなければと思いました。ところが、まさにそのとき、日が沈んで(……)男の子も姿を消してしまったのです!」
 
   サキ=著 Tomoki Yamabayashi=訳 「ゲイブリエル-アーネスト」
   tomokilog - うただひかるまだがすかる 2009/01/09
 
 
(J2) 和田 1999
「(……)すると、そのときだった。素っ裸の少年がいるのに気づいた。どうやら近くの池で泳いでいたらしい。見晴らしのいい丘の中腹で、彼もまた落日をながめていた。彼のポーズには、ローマ神話のファウヌス〔人間の胴体と山羊の下半身をもつ牧神の神〕を彷佛とさせるものがあった。画家の僕としては、即座に、彼をモデルに雇おうと思ったくらいだ。彼に声をかけようとしたやさき、太陽が地平線に沈んで(……)少年が消えた!」
 
   サキ=著 和田唯(わだ・ただし)=訳 「ゲイブリエル-アーネスト」
   O・ワイルド〔ほか〕=著 大橋洋一=監訳
   『ゲイ短編小説集』 平凡社ライブラリー 1999/12
 
 
(J3) 倉阪 1998
[訳文は追って挿入するつもりです - tomoki-y.]
 
   サキ=著 倉阪鬼一郎(くらさか・きいちろう)=訳 南條武則=解説
   「ガブリエル・アーネスト」  
   『小説すばる』 集英社 1998年2号
 
 
(J4) 木村 1985
「(……)とつぜんおれは、はだかの少年に気がついた。近くの池でおよいでいたんだろうな。そいつもむきだしの丘の中腹で、夕焼けをみながらたっていたんだ。そいつのようすが、異教の神話にでてくる牧神にムードがぴったりだったから、おれはたちまち、絵のモデルになってもらおうときめた。もうちょっとで、声をかけるところだった。そのときちょうど太陽が山のむこうにしずんで(……)少年まで消えてしまったんだ!」
 
   サキ〔ほか〕=作 木村由利子=文
   『おおかみ男』 怪奇シリーズ ポプラ社文庫 1985/08
   ルビは省略しました。
 
 
(J5) 山主 1984
「(……)ふっと気がつくと、近くの池からあがってきたらしいはだかの少年が、一本も木のはえていない丘の斜面に立って、やっぱり夕焼けを見ていたのだ。そのすがたはまるで、ローマ神話にある半人半羊(はんじんはんよう)の林野(りんや)の神のようだった。ぼくはすぐにその少年をモデルにして絵をかきたいと思って声をかけようとした。その時、太陽が沈んでしまって(……)少年が消えちまったのさ!」
 
   サキ=作 山主敏子=訳 「オオカミ少年」
   ブラックウッド〔ほか〕=原作
   『世界こわい話ふしぎな話傑作集3 イギリス編
   金の星社 1984/01
   原文は総ルビですが、ここではその一部を省略しました。
 
 
(J6) 中西 1982, 1988, etc.
「(……)ふと気がつくとまる裸の男の子が一人、近所の池から上って来たんだろうと思ったが、それが立木の一本もない丘の斜面に立ったまま、やはり夕焼を見ているんだ。その姿勢がギリシャ・ローマ神話の半人半獣の神ファウヌスそっくりだ。すぐさま、ひとつあれをモデルに頼もうと思いついて、今にも声をかけようとした。ところがその瞬間、夕日がスーッと沈んで(……)その子供が消えてなくなったんだ」
 
   サキ=著 中西秀男=訳
   6a. 「ガブリエル-アーネスト」
     電子書籍 『ザ・ベスト・オブ・サキ1』 2004/09/17
     ただし、提供サイト Timebook Town は2009/02/28 サービスを終了しました。
   6b. 「ガブリエル-アーネスト」
     『ザ・ベスト・オブ・サキ1』 ちくま文庫 1988/05
   6c. 「ゲイブリエル-ア-ネスト」
     『無口になったアン夫人』 バベルの図書館 国書刊行会 1988/02
   6d. 「ガブリエル-アーネスト」
     『ザ・ベスト・オブ・サキ2』 サンリオSF文庫 1982/08
   6a. の底本は 6b.6b.6d. および『ザ・ベスト・オブ・サキ1
   サンリオSF文庫 1978/11 を、サキの発表順に再編集し、新訳4篇を
   加えたもの。引用は 6b. に拠りました。
 
 
(J7) 河田 1981
「(……)ふと気がつくと、近くの池で泳いで来たらしいすっ裸の少年が一人、木のない丘の中腹に立って、やはり夕焼けをながめているじゃないか。そのポーズを見て、ぼくはローマ神話の半人半獣の神を連想し、すぐモデルにやといたくなって、早速声をかけようとした。ところが、そのとたん、太陽が沈んで(……)少年が消えてしまったんだよ」
 
   サキ=著 河田智雄(かわだ・ともお)=訳 「狼少年」
   『サキ傑作集』 岩波文庫 1981/11
 
 
(J8) 田内 1979, 2001
「(……)そのとき、丘の斜面の草の上に立って、裸の少年が夕日を見ているのが、不意に目についたんだ。近くの沼ででも泳いで来たんだろうとぼくは思ったんだよ。その格好が、ギリシャ神話の半人獣にあまりにも似てたので、ぼくはすぐにでもモデルを頼みたいと思ったんだよ。そのままだったら次の刹那(せつな)、きっと声をかけてたにちがいないのだが、丁度その時、夕日が沈んでしまったんだ。(……)少年の姿が、消えてしまったんだよ」
 
   サキ=著 田内初義(たうち・はつよし)=訳 「狼少年」
   8a. 電子書籍 『サキ短編集』 グーテンベルク21 2001/12
     電子書店パピレスでも販売。  TXT版XMDF版無料サンプル
   8b.サキ短編集』 講談社文庫 1979/06
   8a. の底本は 8b.。引用は 8b. に拠りました。
 
 
(J9) 三田村 1967
「(……)ふと見ると、沼のそばの岩の上に、まっぱだかの男の子が立っているんだよ。わしは、声をかけようと思った。すると、きゅうにあたりが暗くなって、男の子のすがたが見えなくなった。(……)」
 
   三田村信行=再話 「オオカミ少年」(サキ=作「狼少年」より)
   山中恒+佐野美津男=編 現代子どもセンター=監修
   『母と子のお話図書館1 とってもおもしろい話 ちょっとこわい話
   三一書房 1967/02
 
 
(J0) 中村 1958, 1969
「(……)突然、一人の素裸の少年がいるのに気がついた、近くの沼で泳いでいたのだろうと思ったがね、樹のない丘の中腹に立って、やっぱり落日を眺めているのだ。そのポーズが、いかにも異教の神話の半人半羊神を彷佛たらしめるので、すぐにモデルに雇いたいと思い、そのままだったら、声をかけただろうと思う。ところが、その瞬間、太陽が地平線から沈んで(……)その少年の姿も一緒に消えたのだよ。」
 
   サキ(ヘクター・ヒュー・マンロウ)=著
   中村能三(なかむら・よしみ)=訳 「狼少年」
   10a.サキ選集』 創土社 1969/10
   10b.サキ短篇集』 新潮文庫 1958/03
   引用は 10b. に拠りました。
 
 
■スペイン語訳 Translation into Spanish
 
-( . . . ) De pronto me di cuenta de la presencia de un muchacho desnudo; pensé que fuera un muchacho que se había estado bañando en algún pozo cercano, y que se había quedado en la falda de la colina también mirando el atardecer. Su actitud sugería de tal modo la de un fauno silvestre de la mitología pagana que inmediatamente se me ocurrió contratarlo como modelo, y lo hubiera llamado un momento después. Pero justo en ese momento el sol dejó de verse, y ( . . . ) el muchacho también desapareció!
 
   Gabriel-Ernesto by Saki
   E-text at Ciudad Seva
 
 
■Gabriel-Ernest, read by Richard Mitchley

Produced by Robert Nichol. Copyright Vox Audio.


■英語原文 The original text in English

"( . . . ) Suddenly I became aware of a naked boy, a bather from some neighbouring pool, I took him to be, who was standing out on the bare hillside also watching the sunset.  His pose was so suggestive of some wild faun of Pagan myth that I instantly wanted to engage him as a model, and in another moment I think I should have hailed him.  But just then the sun dipped out of view, and ( . . . ) the boy vanished too!"

 
 
■外部リンク External links

 
 
■更新履歴 Change log

  • 2010/09/29 Richard Mitchley による朗読の YouTube 動画を追加しました。
  • 2009/01/31 田内初義=訳 1979/06 を追加しました。

 

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Saturday, 03 May 2008

Gabriel-Ernest by Saki (1) サキ 「狼少年」「おおかみ男」「ガブリエル-アーネスト」「ゲイブリエル-アーネスト」 (1)

« Gabriel-Ernest 2 »
« ガブリエル-アーネスト 2 »

        目次 Table of Contents

 Images  表紙画像ギャラリー Cover photo gallery
■日本語訳 Translations into Japanese
  (J1) 和田 1999
  (J2) 倉阪 1998
  (J3) 木村 1985
  (J4) 山主 1984
  (J5) 中西 1982, 1988, etc.
  (J6) 河田 1981
  (J7) 田内 1979, 2001
  (J8) 三田村 1967
  (J9) 中村 1958, 1969
■ブルガリア語訳 Translation into Bulgarian
■ポルトガル語訳 Translation into Portuguese
■スペイン語訳 Translation into Spanish
  Audio 1   朗読: デイヴィッド・リチャードソン Audiobook read by David Richardson
  Audio 2   朗読: マイク・ベネット Audiobook read by Mike Bennett
  Audio 3   朗読: リチャード・ミッチリー Audiobook read by Richard Mitchley
  Audio 4   朗読: ロイ・マクレディ Audiobook read by Roy Macready
■英語原文 The original text in English
■外部リンク External links
■更新履歴 Change log


 Images 
表紙画像ギャラリー Cover photo gallery

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a. Heibonsha_gay_short_stories b. Sakiharuki_bunko c. Best_of_saki_chikuma_bunko

d. Saki_shincho_bunko_new e. Saki_shincho_bunko_old f. Unbearable_saki_oxford


■日本語訳 Translations into Japanese

(J1) 和田 1999
 「君の家はどこなんだい?」
 「ここさ、森のなかだよ」
[略]
 「君はいつもなにを食べているのかな」ヴァン・チールはたずねた。
 「肉」と少年はこたえた。あたかもいま、その味をかみしめているかのように嬉しそうに、その言葉を口にした。
 「肉って、なんの肉なんだい」
 「知りたければおしえてやるよ。ペットのウサギ、野ウサギ、野鳥の肉、鶏の肉、ちょうど食べ頃の子羊の肉、それからうまく手に入ればの話だけど、人間の子どもの肉だな。子どもは、おれが狩りをする夜中には、家のなかにしっかりかくまわれているから、めったに手にはいらない。もう、ふた月も最後に子どもの肉とは縁がない」
 少年が最後にからかうように触れた話題は、ひとまず聞かなかったことにして(……)

   サキ=著 和田唯(わだ・ただし)=訳 「ゲイブリエル-アーネスト」
   O・ワイルド〔ほか〕=著 大橋洋一=監訳
   『ゲイ短編小説集』 平凡社ライブラリー 1999/12 所収


(J2) 倉阪 1998
[訳文は追って挿入するつもりです - tomoki-y.]

   サキ=著 倉阪鬼一郎(くらさか・きいちろう)=訳 南條武則=解説
   「ガブリエル・アーネスト」  
   『小説すばる』 集英社 1998年2号収載


(J3) 木村 1985
「どこにすんでる?」
「この森の中。」
[略]
「なにを食って生きてるんだ?」
「なま肉。」
 少年はこたえた。そのことばをあじわうように、ゆっくりと、さもうまそうにいったのだった。
「なま肉だと! なんの肉だ。」
「知りたいんならいうけど、ウサギ、野鳥、野ウサギ、ニワトリ、しゅんの子羊、手に入ったら人間の子どもも、食うよ。でも子どもって、おれが狩りにでる夜中には、たいてい家にしっかりとじこめられてるからな。こないだ子どもの肉を食ったのは、もう二か月も前さ。」
 さいごのことばには、からかうようなひびきがあった。バン・チールはそれをむしした。(……)
[ルビは省略しました - tomoki y.]

   サキ〔ほか〕=作 木村由利子=文
   『おおかみ男』 怪奇シリーズ ポプラ社文庫 1985/08


(J4) 山主 1984
「どこに住んでいるんだ?」
「森の中さ」
[略]
「毎日何を食べてるんだ?」
 そう聞いてみた。
「肉だよ」
 まるで舌なめずりしそうに答えた。
「肉だって! なんの肉だ?」
「聞きたいのかい。ウサギ、野鳥、野ウサギ、ニワトリの肉、食べごろの子ヒツジの肉なんかだよ。手にはいれば人間の子どもも食うよ。夜、狩りをするが、あいつらはいつもかぎのかかっている中にいるからとりにくいよ。子どもの肉を食ってから二か月はたつな。」
 最後にいったことは、じょう談だろうと、気にもかけなかったが(……)
[ルビは省略しました - tomoki y.]

   サキ=作 山主敏子=訳 「オオカミ少年」
   ブラックウッド〔ほか〕=原作
   『世界こわい話ふしぎな話傑作集3 イギリス編 呪いの魔法人形
   金の星社 1984/01 所収


(J5) 中西 1982, 1988, etc.
「どこに住んでる?」
「この森の中」
[略]
「何を食べてる?」と聞いてみた。
「肉だよ」と返事した。ニクというとき、いま現に肉を食べてでもいるようにゆっくりとうまそうな口つきをした。
「肉! 何の肉だ?」
「聞きたいのか。ウサギの肉、野鳥の肉、野ウサギの肉、ニワトリの肉、旬(しゅん)になればコヒツジの肉、それに手に入れば人間の子供も食うな。たいがい夜になってから猟に出るんだが、人間の子供はいつも日が暮れるとちゃんと錠が下りていて困るんだ。かれこれもう二カ月にも食べてないな、子供の肉は」
 最後の文句はからかい半分らしい。それは聞き流した。(……)

   サキ=著 中西秀男=訳
   5a. 「ガブリエル-アーネスト」
     電子書籍 『ザ・ベスト・オブ・サキ1』 ちくま文庫 2004/09/17 配本
     リンク先サイト Timebook Town で立ち読み可能。
   5b. 「ガブリエル-アーネスト」
     『ザ・ベスト・オブ・サキ1』 ちくま文庫 1988/05 所収
   5c. 「ゲイブリエル-ア-ネスト」
     『無口になったアン夫人』 バベルの図書館 国書刊行会 1988/02 所収
   5d. 「ガブリエル-アーネスト」
     『ザ・ベスト・オブ・サキ2』 サンリオSF文庫 1982/08 所収
   5a. の底本は 5b.。引用は 5c. に拠りました。


(J6) 河田 1981
 「どこに住んでるんだい」
 「この森の中だよ」
[略]
 「いつも何を食べてるんだい」
 「肉だよ」と少年は今その肉を口にしているかのように、ゆっくりと、かみしめるように言った。
 「肉! 何の肉だ」
 「知りたけりゃ、教えてやる。兎に、野鳥に、野兎に、飼鳥に、食べ頃の子羊などだ。うまくつかまれば、人間の子供を食うこともある。何しろ、おれの書き入れ時の夜には、人間の子供はたいてい家の中にとじこめられているんでね。最後に子供の肉を食ったのは丸二月前だよ」
 人を愚弄するような最後の言葉は無視し(……)

   サキ=著 河田智雄(かわだ・ともお)=訳 「狼少年」
   『サキ傑作集』 岩波文庫 1981/11 所収


(J7) 田内 1979, 2001
「どこに住んでるんだい?」
「この森の中さ」
[略]
「毎日何を食ってるんだい?」
「肉だよ」と少年は、あたかもいまそれを味わってでもいるかのように、ゆっくりと舌なめずりしながら答えた。
「肉だって? どんな肉だい?」
「そんなに知りたいの? うさぎ、ふくろう、野兎、にわとり、食べごろの仔羊、それから、手に入れば人間の子供などだよ。だけどぼくが夜中にうろつきまわるころは、大抵人間の子供は家の中に入ってるからね。前に子供の肉を食ってから、もう二た月にはなるよ」
 最後の言葉のからかうような調子は無視して(……)

   サキ=著 田内初義(たうち・はつよし)=訳 「狼少年」
   7a. 電子書籍 『サキ短編集』 グーテンベルク21 2001/12
     電子書店パピレスでも販売。  TXT版XMDF版無料サンプル
   7b. サキ短編集』 講談社文庫 1979/06 所収
   7a. の底本は 7b.。引用は 7b. に拠りました。


(J8) 三田村 1967
「どこにすんでるんだい?」
「森のなかだよ」
「でも、なにをたべてくらしてるんだい?」
「肉さ。ウサギや、鳥や、子ヒツジ、それに小さな人間の子供などさ」
 ぼくは、男の子がじょうだんをいって、ぼくをからかっているのだと思いました。(……)

   三田村信行=再話 「オオカミ少年」(サキ=作「狼少年」より)
   山中恒+佐野美津男=編 現代子どもセンター=監修
   『母と子のお話図書館1 とってもおもしろい話 ちょっとこわい話
   三一書房 1967/02 所収


(J9) 中村 1958, 1969
「どこに住んでるんだい。」
「この森の中だよ。」
[略]
「なにを食べて暮してるんだい。」
「肉だよ」と少年は云ったが、さながら今その肉をあじわってでもいるように、舌なめずりせんばかりにその言葉を云った。
「肉! なんの肉だい。」
「聞きたけりゃ云うがね、家兎、野鳥、野兎、鶏、旬(しゅん)の仔羊、人間の子供などさ、こいつはうまく手に入ればの話だがね。夜はおれの書き入れ時なんだけど、人間の子供は、たいてい夜になると、家の中にとじこめておくんでね。最後に子供の肉を食ってから、もう二カ月にもなるよ。」
 最後の言葉のからかうような調子は無視して(……)

   サキ(ヘクター・ヒュー・マンロウ)=著
   中村能三(なかむら・よしみ)=訳 「狼少年」
   9a.サキ選集』 創土社 1969/10 所収
   9b.サキ短篇集』 新潮文庫 1958/03 所収
   引用は 9b. に拠りました。


■ブルガリア語訳 Translation into Bulgarian

  — Къде живееш?
  — Тук, в тази гора.
[Omission]
  — А с какво се храниш? — попита той.
  — С месо — отвърна момчето, произнасяйки думата с бавна наслада, сякаш я опитваше на вкус.
  — Месо ли? Какво месо?
  — Щом като искаш да знаеш — диви и питомни зайци, горски птици, домашни пилета, агнета, когато им е сезонът, а също и деца, ако успея да докопам някое. Нощем, когато ловувам, те обикновено са заключени на сигурно място. Трябва да са минали два месеца, откак за последно вкусих детска плът.
  Пренебрегвайки закачливото естество на тази забележка, [Omission]

   Саки. Гейбриъл-Ърнест
   E-text at Моята библиотека (chitanka.info)


■ポルトガル語訳 Translation into Portuguese

  — Onde mora?
  — Aqui...neste bosque.
[Omission]
  — Do que se alimenta? — indagou-lhe.
  — De carne — respondeu o rapaz, e pronunciou a palavra com tal gosto que parecia que a estava assando naquele momento.
  — Carne! Que tipo de carne?
  — Depende do meu interesse no momento: coelhos, pássaros, lebres, galinhas, cordeiros e, oportunamente, crianças... quando me arrisco a apanhar uma. Em geral, são mantidas em casa à noite, que é o período em que caço. Há quase dois meses que não provo carne de criança.
  Ignorando o gracejo contido naquela última observação [Omission]

   Gabriel-Ernest by Henry Hector Munro (Saki)
   Homens, Lobos e Lobisomens as Histórias Mais Fascinantes Marco Zero, 2004
   Preview at Google Books


■スペイン語訳 Translation into Spanish

  -¿Dónde vives?
  -Aquí en estos bosques.
[Omission]
  -¿De qué te alimentas? -preguntó.
  -Carne -dijo el muchacho.
  Y pronunció la palabra con una lenta delicia, como si estuviera saboreándola.
  -¡Carne! ¿Qué carne?
  -Ya que le interesa, conejos, perdices, liebres, aves de corral, corderitos recién nacidos, y niños cuando consigo alguno; en general están encerrados con llave por la noche, cuando yo hago la mayor parte de la cacería. Hace ya dos meses que no pruebo carne de niño.
  Haciendo caso omiso de la irritante naturaleza de la última frase, [Omission]

   Gabriel-Ernesto by Saki
   E-text at Ciudad Seva


  Audio 1  
朗読: デイヴィッド・リチャードソン Audiobook read by David Richardson

下に引用する箇所の朗読は 2:34 から。 Uploaded to YouTube by FULL audio books for everyone on 27 Feb 2013. Audio courtesy of LibriVox. Reading of the excerpt below starts at 2:34.


  Audio 2  
朗読: マイク・ベネット Audiobook read by Mike Bennett

下に引用する箇所の朗読は 3:19 から。 Uploaded to YouTube by Mike Bennett on 19 Nov 2011. Reading of the excerpt below starts at 3:19.


  Audio 3  
朗読: リチャード・ミッチリー Audiobook read by Richard Mitchley

下に引用する箇所の朗読は 2:29 から。 Uploaded to YouTube by AudiobooksMP3 on 1 Sep 2009. Reading of the excerpt below starts at 2:29.


  Audio 4  
朗読: ロイ・マクレディ Audiobook read by Roy Macready

下に引用する箇所の朗読は 2:29 から。 Uploaded to YouTube by SpidersHouseAudio on 6 Jun 2009. Reading of the excerpt below starts at 2:29.


■英語原文 The original text in English

  "Where do you live?"
  "Here, in these woods."
[Omission]
  "What do you feed on?" he asked.
  "Flesh," said the boy, and he pronounced the word with slow relish, as though he were tasting it.
  "Flesh!  What Flesh?"
  "Since it interests you, rabbits, wild-fowl, hares, poultry, lambs in their season, children when I can get any; they're usually too well locked in at night, when I do most of my hunting.  It's quite two months since I tasted child-flesh."
  Ignoring the chaffing nature of the last remark [Omission]


■外部リンク External links


■更新履歴 Change log

  • 2014/09/25 ブルガリア語訳とポルトガル語訳を追加しました。
  • 2013/09/24 デイヴィッド・リチャードソンによる朗読、リチャード・ミッチリーによる朗読、およびマイク・ベネットによる朗読の3本の YouTube 画面を追加しました。
  • 2013/08/08 目次を新設しました。
  • 2010/04/18 英語原文の朗読の YouTube 画面を追加しました。
  • 2009/01/31 田内初義=訳 1979/06 を追加しました。

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Friday, 23 March 2007

Tobermory by Saki サキ 「トバモリー」「トバーモリー」「トーバモリー」

       目次 Table of Contents

 Gallery 1  表紙画像 Cover photos
■日本語訳 Translations into Japanese
  (J1) 和爾 2015
  (J2) 柴田 2015
  (J3) 大津 1999
  (J4) 青木 1995
  (J5) 中西 1988a, 1988b
  (J6) 山主 1984
  (J7) 河田 1981
  (J8) 仁賀 1980, 1984
  (J9) 柳瀬 1980, 1990
  (J10) 中村 1961, 1996
■Tobermory の日本語表記 "Tobermory" transliterated into Japanese
 Gallery 2  表紙画像 Cover photos
■ロシア語訳 Translation into Russian
■ドイツ語訳 Translation into German
■ポルトガル語訳 Translation into Portuguese
 Audio 1  スペイン語版オーディオブック Audiobook in Spanish
■スペイン語訳 Translations into Spanish
  (Sp1)
  (Sp2)
■フランス語訳 Translation into French
 Audio 2  朗読: マイク・ベネット Audiobook read by Mike Bennett
 Audio 3  制作: ロバート・ニコル Audiobook produced by Robert Nichol
 Audio 4  制作: シックスティーンス・カヴァン Audiobook by The 16th Cavern
 Audio 5  朗読: ロイ・マクレディ Audiobook read by Roy Macready
■英語原文 The original text in English
■更新履歴 Change log


 Gallery 1 
表紙画像 Cover photos

↓ クリックして拡大 Click to enlarge ↓
a. Atobermory b. B5551388662
c. Csaki d. Dsaki2

■日本語訳 Translations into Japanese

(J1) 和爾 2015
 アピンにはこれっぽっちも信用がなかったが、サー・ウィルフリッドの話は一同にすんなり受け入れられた。バベルの塔もかくやの驚愕の声が口々にあがる只中で、当の科学者その人は口をつぐみ、自らの大発見がもたらした最初の反応をじっくり楽しんでいた。
 その騒ぎのさなか、ビロードのような足どりでトバモリーが入ってくると、テーブルを囲む顔ぶれをさりげなく検分した。
 とたんにぎこちない沈黙が一座にのしかかった。折り紙つきのすぐれた知能の猫と対等に話すというのは、やはり戸惑うできごとのようだ。
「トバモリー、ミルクでもいかが?」ブレムリー夫人がやや張りつめた声を出した。(……)

  • サキ=作 和爾桃子(わに・ももこ)=訳 「トバモリー」 『クローヴィス物語』 白水Uブックス 白水社 2015/04/20

(J2) 柴田 2015
 アピンが講釈したときは誰一人まったく信じなかったが、サー・ウィルフリッドの発言は即座の確信を勝ち得た。驚愕の叫びがバベルのごとく口々に発せられ、そのただなかで科学者アピンは何も言わずじっとしたまま、己の途方もない発見がもたらした最初の果実を愉しんでいた。
 喧噪の真っ最中にトバモリーが部屋に入ってきて、ビロードのごとき足どりで、いかにも無関心な様子を装い、ティーテーブルを囲む一団の許まで歩みを進めた。
 ぎこちない、こわばった空気が突如生じて座は静まり返った。すでに知能を認められた飼い猫に対等の立場で話しかけることには、なぜか一種気まずさがあるように思われたのである。
「ミルクはいかが、トバモリー?」とレディ・ブレムリーがいささかこわばった声で訊いた。(……)


(J3) 大津 1999
 アピンが弁舌をふるったときは聴衆はまったく信用しなかったが、ウィルフリッドの話を聞くと、たちまち信用してしまった。驚きの嘆声が合唱となって起こった。そのなかで科学者は無言のまま坐って、自分の驚くべき発見の最初の成果を楽しんでいた。
 と、その騒ぎのなかにトバーモリが入ってきた。そしてビロードのような足で音も立てず、わざと無関心を装って、お茶の席に輪になって坐っているみんなのところに近づいてきた。
 急に一座をぎこちない、落ち着かない沈黙が襲った。とにかく、話術能力があると認められた飼い猫と対等に話をするのはなんとなくはばかられた。
「少しミルクを飲む? トバーモリ」とブレムリー卿夫人が少し緊張した声で言った。(……)

  • サキ=著 大津栄一郎=訳 「トバーモリ」 『サキ傑作選』 角川春樹事務所 ハルキ文庫 1999/03

(J4) 青木 1995
 それまではアピンがいくら説明しても、誰も絶対に信じなかったが、ウィルフレッド卿の話には、皆が即座に納得した。がやがやと騒々しい驚きの嘆声が一斉に沸き上がり、そのざわめきの中で、われらが科学者は一人黙って、自分の途方もない発見がもたらした最初の成果をじっくり味わっていた。
 その大騒ぎのさなか、トウバマーリが部屋に入ってきた。そして、ベルベットの上を歩くような優雅な足どりで進みながら、ティー・テーブルの周りに座っている客たちを、まるで関心のない様子で眺め回した。
 お客たちが突然、ぎごちなく遠慮するように沈黙した。会話能力があるとわかっている飼い猫に、人間並みに対等に話しかけるのには、ばつが悪いと感じるふうがあるようだった。
 「トウバマーリや、ミルクはいかが?」ブレムリー夫人が緊張気味の声でたずねた。(……)

  • サキ=著 青木榮一(あおき・えいいち)=訳 「おしゃべりな猫」 クリーヴランド・エイモリー=編 ロビン・アップワード〔ほか〕=写真 『お気に入りの猫物語—世界の猫文学10選』 ディーエイチシー (DHC) 1995/12
  • 原書: Cat Tales: Classic Stories from Favorite Writers, edited by Cleveland Amory, photographed by Robin Upward et al.

(J5) 中西 1988a, 1988b
 アピンの話は誰ひとりてんで信用しなかったが、サー・ウィルフリッドの証言で話はたちまち絶対確実となった。驚きの声が一斉に上がってコーラスになった。ミスター・アピンだけは黙ってかけたまま、途方もない大発見の最初の果実を楽しんでいる。
 その大騒ぎの中へトーバモリーが入ってきた。しずしずとビロードのような足取りで、いかにも無関心そうな様子でティー・テーブルを囲んだ連中へ近よった。
 一座は急にぎごちない気まずさにおそわれて静まり返った。知能抜群とみとめられた飼猫と対等に話をするのが何となく間がわるいらしい。
「トーバモリーや、ミルクを飲む?」とブレムリ夫人がいった。少し緊張した声である。(……)


(J6) 山主 1984
 アピン氏の話を聞いただけでは、どうせほら話だろうと、だれも信用していなかったのだが、この家の主人の報告を聞いては、だれひとり疑うものはなかった。
「そりゃすごい、ぜひおたくのネコと話をしてみたいですな。」
「どんなネコですか? ちょっとこっちへつれてきて、見せてくださいませんか。」 と大さわぎになった。アピン氏はだまってにやにやしながら、一同のおどろくようすを見て楽しんでいる。
 そこへどうやら気がむいたとみえて、トバモリーがのっそりとはいってきた。そして、びろうどのような足で、音も立てずにテーブルをかこんでいるみんなのそばへよってきた。みんなはきゅうにだまってしまった。ネコと人間が話をするなんて、どう考えてもぐあいがわるいのだ。
「トバモリーや、牛乳を飲むかい?」
 ブレムリー夫人が少しうわずったような声で聞いた。(……)
[原文にあるルビは省略しました - tomoki y.

  • サキ=著 山主敏子(やまぬし・としこ)=訳 「おしゃべりネコ」 アルジャノン・ブラックウッド〔ほか〕=著 『呪いの魔法人形』 世界こわい話ふしぎな話傑作集3 第3 イギリス編 金の星社 1984/01

(J7) 河田 1981
 アピンの話をてんから信じようとしなかった一同も、ウィルフリッド卿の話を聞いてたちまち信じる気になった。がやがやと一斉に驚きの声があがった。アピンは黙って、大発見の初めての反応を楽しんでいた。
 その騒ぎの真っ最中に、トバモリーが入って来たのである。足音を立てずに、わざとらしく落ち着き払って、ティー・テーブルのまわりにいる連中の方へ歩み寄った。 一座は急に気まずくなって、しんと静まり返った。口がきけると言われる飼猫と対等に話をするなんて何となくばつが悪かった。
 ブレムリ夫人が幾分緊張した声で、「トバモリー、ミルクでもどう」と言った。(……)

  • サキ=著 河田智雄(かわだ・ともお)=訳 「トバモリー」 『サキ傑作集』 岩波文庫 1981/11

(J8) 仁賀 1980, 1984
 アピンは一同に疑惑の眼で見られたが、ウィルフレッド卿の話はたちまち信用された。驚きの声が一斉に上り、騒がしいコーラスになった。その中でアピンは沈黙したまま、この途方もない発見の最初の反応を楽しんでいた。
 大騒ぎの最中に、当のトバーモリーが部屋に入ってきた。ビロードみたいな静かな足どりで、関心なさそうに、ティー・テーブルを囲んだ一同の方に歩み寄った。
 みんなバツの悪い気まずさに急に黙りこくった。かなりの知能を認められた飼猫と対等に話すのは、どうにもこそばゆいものがあった。
「ミルクを飲むかい、トバーモリー?」ブレムリー夫人は少し緊張した声でいった。(……)

  • サキ=著 仁賀克雄(じんか・かつお)=訳 「トバーモリー」 仁賀克雄=編訳 フレドリック・ブラウン〔ほか〕=著
  • a. は b. を文庫化したもの。

(J9) 柳瀬 1980, 1990
 アピンはまるきり不信心な聴衆に説教をたれていたわけだが、サー・ウィルフリドの言葉はたちまち信仰をもたらした。バベルの都さながらに驚嘆の叫びの大合唱がわき起こり、その渦のなかで当の科学者は無言のまま、自己の途方もない発見の初の成果を楽しんでいた。
 喧噪のさなかにトバモリーがはいってきて、しなやかな足取りで進みながら、ティーテーブルに集まった人々を何気なくちらりと観察した。
 気まずい、ぎこちない沈黙が、すぐさま一同を支配した。知力公認の飼い猫と対等に話をかわすというのは、どこか戸惑いの要素があったらしい。
「ミルクはいかが、トバモリー?」レディ・ブレムレーがいささかうわずった声でいった。(……)

  • サキ=著 柳瀬尚紀=訳 「トバモリー」 柳瀬尚紀=編訳
    a. は b. を文庫化したもの。b. は下の原書から16篇を選んで訳出したもの。
  • 原書: The Book of Cats, edited by George MacBeth and Martin Booth

(J10) 中村 1961, 1996
 すでにアピンの話で、絶対に懐疑的だった一同も、かなり説きおとされているところであった。そこにもってきて、このウィルフリッド卿の話なので、たちまち確信にかわった。驚愕の叫びがバベルの塔のような合唱となっておこった。そのあいだにあって、アピン氏は無言のまま、彼のとほうもない発見の最初の効果をたのしんでいた。
 この騒ぎのまっただなかに、トバーモリーが部屋にはいってきて、音もたてず、わざとのような無関心さを示しながら、ティー・テーブルをかこんだ一同のほうへ歩いてきた。
 ぎごちなさと息をのむような沈黙が、一座をおそった。すでに人語を解するとわかっている飼猫と、親しい言葉で話すのは、なんとなく気がひけるような気がしたからだった。
「ミルクを飲む? トバーモリー」とブレムリー夫人が、すこしばかり緊張した声で言った。(……)

  • サキ=著 中村能三(なかむら・よしみ)=訳 「トバーモリー」

■Tobermory の日本語表記
 Transliteration variations of the name "Tobermory" in Japanese

  • 「トウバマーリ」……青木 1995
  • 「トバモリー」………和爾 2015
  • 「トバモリー」………柴田 2015
  • 「トバモリー」………中西 1988/05
  • 「トバモリー」………山主 1984
  • 「トバモリー」………河田 1981
  • 「トバモリー」………柳瀬 1980, 1990
  • 「トバーモリ」………大津 1999
  • 「トバーモリー」……仁賀 1980, 1984
  • 「トバーモリー」……中村 1961, 1996
  • 「トーバモリー」……中西 1988/02

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表紙画像 Cover photos

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de De_saki_die_verschwiegenheit_der_la it It_saki_9788821602221 es Es_saki__9788485876525


■ロシア語訳 Translation into Russian

    Эппин обращался к абсолютно равнодушным слушателям; заявление сэра  Уилфреда   вызвало   мгновенное   доверие.   Поднялся   хор возбужденных  восклицаний,  среди  которых  ученый  сидел,  молча наслаждаясь первыми плодами своего изумительного открытия.

    Среди шума и гама  в  комнате  появился  Тобермори,  прошелся мягкой поступью невозмутимо осматривая окружающее, и  приблизился к группе сидящей вокруг чайного столика.

    В  компании  воцарилась  смущенная  и   напряженная   тишина. Появился  элемент  замешательства  при  обращении  на  равных   к домашнему коту с общепризнанной способностью кусаться.

    "Не хочешь ли  немного  молока,  Тобермори?",  спросила  леди Блемли несколько напряженным голосом.

   Саки (Г.Х.Манро). Тобермори
   Translated by Гужов Е., 1997
   E-text at Lib.Ru


■ドイツ語訳 Translation into German

Appin hatte absolut ungläubigen Hörern gepredigt; Sir Wilfrids Erklärung fand sofort Glauben. Ein babylonisches Gewirr verblüffter Ausrufe erhob sich, inmitten dessen der Wissenschaftler stumm saß und die ersten Früchte seiner überwältigenden Entdeckung genoss.

Mitten in dem Tumult betrat Tobermory den Raum und bahnte sich samtpfotig und mit betonter Gleichgültigkeit seinen Weg zu der Gruppe, die um den Teetisch saß.

Ein plötzliches Schweigen befangener Verlegenheit befiel die Gesellschaft. Irgend etwas schien daran peinlich zu sein, einen Hauskater von anerkannten Geistesgaben wie seinesgleichen anzureden.

„Möchtest du etwas Milch, Tobermory?“ fragte Lady Blemley mit ziemlich gezwungener Stimme.

   Tobermory by Saki
   Die Clovis - Chroniken. Achtundzwanzig Geschichten
   Haffmans Verlag Zürich 1990
   E-text at zauberdrachen


■ポルトガル語訳 Translation into Portuguese

Appin tinha falado para ouvintes absolutamente incrédulos; a afirmação de Sir Wilfrid trouxe imediata convicção. Ergueu-se um coro como que de Babel de exclamações sobressaltadas, no meio do qual o cientista continuou sentado mudo, a gozar o primeiro fruto da sua prodigiosa descoberta.

No meio do clamor, Tobermory entrou na sala e dirigiu-se, com um pisar de veludo e estudada despreocupação, para o grupo sentado à volta da mesa.

O grupo caiu num repentino silêncio de embaraço e constrangimento. De certa maneira parecia uma vergonha uma pessoa dirigir-se a um gato de reconhecida habilidade dental em termos de igualdade.

— Queres leite, Tobermory? — perguntou-lhe Lady Blemley num tom bastante forçado.

   Tobermory by Saki
   Translated by Luís Varela Pinto
   E-text at Luís A. P. Varela Pinto


 Audio 1 
スペイン語版オーディオブック Audiobook in Spanish

下の引用箇所の朗読は 4:46 から始まります。 Uploaded to YouTube by Un Perrito Dijo on 1 Jan 2015. Reading of the excerpt below starts at 4:46.


■スペイン語訳 Translations into Spanish

(Sp1)
  Appin se había dirigido a un auditorio completamente incrédulo; las palabras de Sir Wilfrid resultaron ser, al instante, plenamente convincentes. Se elevó un coro de exclamaciones de asombro dignas de la torre de Babel; en medio de ellas, el científico permaneció sentado, gozando en silencio del primer fruto de su maravilloso descubrimiento.

  En medio del clamor Tobermory entró en el cuarto y se abrió paso con delicadeza y estudiada indi­ferencia hasta donde estaba el grupo reunido en torno de la mesa del té.

  Un repentino silencio, tenso y extraño, dominó a los presentes. Por algún motivo resultaba incómodo dirigirse en términos de igualdad a un gato doméstico de reconocida habilidad como cazador.

  -Quieres tomar leche, Tobermory? -preguntó Lady Blemley con un tono un poco tenso.

   Tobermory by Saki
   El cuentista y Tobermory Buenos Aires : Ediciones Colihue, 2005-07
   E-text at El Mundo de Wilhemina Queen 2008-05-05


(Sp2)
  Appin se había dirigido a un auditorio completamente incrédulo; las palabras de sir Wilfrid lograron un convencimiento instantáneo. Se elevó un coro de exclamaciones de asombro dignas de la Torre de Babel, entre las cuales el científico permanecía sentado y en silencio gozando del primer fruto de su estupendo descubrimiento.

  En medio del clamor entró en el cuarto Tobermory y se abrió paso con delicadeza y estudiada indiferencia hasta donde estaba el grupo reunido en torno a la mesa del té.

  Un silencio tenso e incómodo dominó a los comensales. Por algún motivo resultaba incómodo dirigirse en términos de igualdad a un gato doméstico de reconocida habilidad mental.

  -¿Quieres tomar leche, Tobermory? -preguntó lady Blemley con la voz un poco tensa.

   Tobermory by Saki
   E-text at Ciudad Seva


■フランス語訳 Translation into French

  Appin avait prêché devant un auditoire parfaitement incrédule. Mais les paroles proférées par sir Wilfrid emportèrent immédiatement l'adhésion. Des exclamations fusèrent çà et là que savourait muettement le savant : prémices de sa stupéfiante découverte.

  La clameur à son comble, ce fut le moment que choisit Tobermory pour apparaître dans la pièce, et se frayer un chemin d'un pas velouté et avec une nonchalance marquée à travers les invités groupés autour de la table à thé.

  Des chuchotements gênés, puis une chape contraignante enveloppèrent l'auditoire. On n'osait pas lui adresser la parole ni traiter d'égal à égal avec une bête tenue jusque-là pour un animal purement domestique.

  - Voudriez-vous un peu de lait, Tobermory? demanda Lady Blemley d'une voix légèrement tremblée.

   Tobermory
   Nouvelles : Edition intégrale by Hector Hugh Munro (Saki)
   Translated by Gérard Joulié
   L'Age d'homme, 2003
   Preview at Google Books


 Audio 2 
英語原文オーディオブック 朗読:マイク・ベネット
Audiobook in English read by Mike Bennett

下に引用する箇所の朗読は 6:25から始まります。 Published on Nov 19, 2011 by angrypyjamas. Reading of the excerpt below starts at 6:25.


 Audio 3 
英語原文オーディオブック 制作:ロバート・ニコル
Audiobook in English produced by Robert Nichol

Uploaded by AudiobooksMP3 on Nov 9, 2009. Produced by Robert Nichol. Copyright Vox Audio.


 Audio 4 
英語原文オーディオブック 制作: シックスティーンス・カヴァン
Audiobook in English produced by The 16th Cavern

下に引用する箇所の朗読は 5:38 から始まります。 Uploaded by The 16th Cavern on 24 Jan 2013. Reading of the excerpt below starts at 5:38.


 Audio 5 
英語原文オーディオブック 朗読:ロイ・マクレディ
Audiobook in English read by Roy Macready

Uploaded by SpidersHouseAudio on Oct 15, 2009.


■英語原文 The original text in English

  Appin had preached to absolutely incredulous hearers; Sir Wilfred's statement carried instant conviction. A Babel-like chorus of startled exclamation arose, amid which the scientist sat mutely enjoying the first fruit of his stupendous discovery.

  In the midst of the clamour Tobermory entered the room and made his way with velvet tread and studied unconcern across the group seated round the tea-table.

  A sudden hush of awkwardness and constraint fell on the company. Somehow there seemed an element of embarrassment in addressing on equal terms a domestic cat of acknowledged dental ability.

  "Will you have some milk, Tobermory?" asked Lady Blemley in a rather strained voice. (......)


■更新履歴 Change log

  • 2016/10/21 和爾桃子=訳 2015/04/20 を追加しました。
  • 2015/02/24 柴田元幸=訳 2015/02/15 とスペイン語版オーディオブックの YouTube 画面を追加しました。
  • 2012/08/16 ポルトガル語訳とフランス語訳を追加しました。また、各種オーディオブックの YouTube 画面も追加しました。さらに表紙画像も追加しました。
  • 2012/07/17 ロシア語訳を追加しました。
  • 2011/02/20 もう一種類のスペイン語訳を追加しました。
  • 2010/04/18 「トバモリー」の朗読の YouTube 画面を追加しました。
  • 2008/08/15 中西秀男=訳の書誌情報を補足しました。
  • 2007/06/05 山主敏子=訳 1984/01 を追加しました。
  • 2007/03/28 柳瀬尚紀=訳 1980/07 についての書誌情報を補足しました。
  • 2007/03/26 柳瀬尚紀=訳 1980/07 を追加しました。また、リンク先の指定が誤っていた箇所を訂正しました。

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Saturday, 17 March 2007

Sredni Vashtar by Saki (Hector Hugh Munro) サキ(ヘクター・ヒュー・マンロウ) 「スレドニ・ヴァシュター」「スレドニ・ヴァシュタール」

        目次 Table of Contents

■はじめに Introduction
 Images   アニメと本 An animated film and a book
■映画化作品 Film adaptations of Sredni Vashtar
 Audio 1  日本語版オーディオブック(朗読) Audiobook in Japanese
■日本語訳 Translations into Japanese
  (J1) 和爾 2015
  (J2) 陰陽師 2005
  (J3) 大津 1999
  (J4) 中西 1988, 2000
  (J5) 由良 1985
  (J6) 河田 1981
  (J7) 田内 1979
  (J8) 宇野 1969, 2006
 Video 1  アニメ Sredni Vashtar
 Video 2  短篇映画 Sredni Vashtar (1981) directed by Andrew Birkin
 Video 3  アニメ Sredni Vashtar (1981) directed by Václav Bedrich
 Video 4  TV Sredni Vashtar (1978-79) read by Tom Baker
 Video 5  映画 Sredni Vashtar (1940) directed by David Bradley
■ロシア語訳 Translation into Russian
■ブルガリア語訳 Translation into Bulgarian
■チェコ語訳 Translation into Czech
■ドイツ語訳 Translation into German
■イタリア語訳 Translations into Italian
  (It1) Geta, 2009
  (It2) Crio, 2008
■ポルトガル語訳 Translations into Portuguese
  (Pt1) Drummond, 2009
  (Pt2)
  (Pt3) Pinto
■カタルーニャ語訳(カタロニア語訳) Translation into Catalan
 Audio 2  スペイン語版オーディオブック(朗読) Audiobook in Spanish
■スペイン語訳 Translation into Spanish
■フランス語訳 Translation into French
 Audio 3  朗読: 朗読者未確認 Audiobook read by an unknown female reader
 Audio 4  朗読(テキスト付き): トム・オベドラム Videobook read by Tom O'Bedlam
 Audio 5  朗読: ピーター・イヤーズリー Audiobook read by Peter Yearsley
 Audio 6  朗読: スザンヌ・ホートン Audiobook read by Suzanne Houghton
■英語原文 The original text in English
■更新履歴 Change log


■はじめに Introduction

隠微で不気味なユーモアが漂うサキの短篇。


 Images  
アニメと本 An animated film and a book

a. 101_4 b. 0486285219

↑ クリッックして拡大 Click to enlarge ↑


■映画化作品 Film adaptations of Sredni Vashtar

サキの「スレドニ・ヴァシュター」は、なんとチェコで3回も映画化されているのだそうです。左上の画像は、ヴァーツラフ・ベドジッヒ監督によるアニメ作品(下の YouTube 動画を参照)から。ベドジッヒ監督の名は、イタリアのアニメーション史家ジャンナルベルト・ベンダッツィによる『カートゥーン:アニメーション100年史』 Cartoons: Cento anni di cinema d'animazione by Giannalberto Bendazz (Marsilio Editori, 1988) で言及されています。日本語訳は Gon's Animation Limbo というサイトのこのページ カートゥーン:アニメーション100年史|第14章 東ヨーロッパ に掲載。


 Audio 1 
日本語版オーディオブック(朗読) Audiobook in Japanese

宇野利泰訳による。下に引用する箇所の朗読は 5:50 から。 Uploaded to YouTube by Black eyes on Dec 8, 2014. Reading of the excerpt below starts at 5:50.


■日本語訳 Translations into Japanese

(J1) 和爾 2015
あるとき天啓がくだってすばらしい名を思いつき、以後はあの獣を自分の神として崇めるようになった。信心びたりの「あの女」は週ごとに最寄りの教会へコンラディンを連れて行くが、教会の礼拝などコンラディンにとっては「リンモン神殿の異教儀式」に過ぎない。木曜ごとにかびくさく暗い静かな物置で、偉大なるイタチ神スレドニ・ヴァシュタールのおわします木箱の前にひざまずいて凝った秘儀を捧げ、季節に応じて赤い花や、冬には真紅の木の実を供えた。(……)

   サキ=作 和爾桃子(わに・ももこ)=訳 「スレドニ・ヴァシュタール」

   『クローヴィス物語』 白水Uブックス 白水社 2015/04/20


(J2) 陰陽師 2005
(……)ある日、まったく自分だけの思いつきで、このイタチにすばらしい名前をつけてやった。そして、そのときからこの獣は神となり、信仰の対象となったのである。「あの女」は信心深く、週に一度近所の教会にせっせと通い、コンラディンも連れて行くのだが、教会の礼拝など彼にとっては信念に反する、まったくなじめないものだった。
 毎週木曜日、薄暗く黴くさい、静かな物置のなかで、コンラディンは、偉大なるケナガイタチ、スレドニ・ヴァシター様がおわします木の檻にぬかずいて、神秘的で凝った儀式を行うのだった。赤い花が咲く季節はその花を、そして冬には深紅の苺を神殿に供える。(……)

   サキ=著 陰陽師=訳 「スレドニ・ヴァシター」
   サキ コレクション vol.1 Ghostbuster's Book Web
   初出 2005/05/07 - 2005/05/11
   改訂 2005/05/29


(J3) 大津 1999
 そしてある日、何がヒントになったのかわからないが、彼はこの大いたち(#「大いたち」に傍点)にすばらしい名前を思いついて、それをつけ、そのときからこの野獣は神となり、宗教となった。「あの女」は宗教好きで週一度近くの教会に通い、彼も連れていった。だが教会の儀式はコンラディンにはリモン家がとり行なう異教の神への儀式にすぎない。彼は毎週木曜日静まりかえった暗いかび臭い道具小屋で、偉大ないたちのスレドニ・ヴァシュターさまの住まい給う檻の前で、神秘な、複雑な儀式を行なって、礼拝した。花の季節には赤い花を、冬には赤い漿果(しょうか)を、神殿の前に供えた。(……)

   サキ=著 大津栄一郎=訳 「スレドニ・ヴァシュター」
   『サキ傑作選』 角川春樹事務所 ハルキ文庫 1999/03 所収


(J4) 中西 1988, 2000
ある日、コンラディンはどこからひねり出したか、この大イタチにすばらしい名前をつけた。そしてその日から大イタチは彼に取って神となり信仰の対象になった。「あの女」は毎週一回、近くの教会へ大好きなお参りに出かけ、コンラディンをいっしょに連れて行く。だがコンラディンは異教の神に向かって礼拝する格好をするだけのことだ。その代り、毎週木曜日になると、静まり返った物置のカビくさいうす闇の中で、偉大な大イタチ、スレドニ・ヴァシュターさまの住む木箱の前にひざまずき、手のこんだ神秘的な礼拝をする。花の咲くころは赤い花を、冬になるとまっ赤なスグリを神前にそなえる。(……)

  • サキ=著 中西秀男=訳 「スレドニ・ヴァシュター」
  • a は b を再録したもの。引用は b 国書刊行会 1988 に拠りました。

(J5) 由良 1985
 ある日のこと、まったく何から思いついたのかわからない、このケモノにつける素晴らしい名前を思いついた。その瞬間からこのケモノは一つの神さまというか、一つの宗教になってしまった。
 あの《女》は宗教婆(ばば)ぁ。週一回、ちかくの教会がよいにコンラディンまでつれだすのだ。だがコンラディンにはキリスト礼拝なんて、馬鹿らしい《リンモンの宮の異教の祭礼》でしかなかった。毎木曜日、暗いカビ臭い道具小舎の静寂のなかで、コンラディンは、不思議な丹念な祭礼をその木造の飼箱(ハッチ)のまえに捧げるのだった。巨大なケナガイタチであるスレドニー・ヴァシュタール神の住みたもうこの飼箱(ハッチ)の前で。
 花の季節には赤い花ばな、冬には真紅の果実(くだもの)が、その祭壇の前に捧げられた。(……)

   サキ=作 由良君美(ゆら・きみよし)=訳 「スレドニー・ヴァシュタール」
   由良君美=編 『イギリス幻想小説傑作集』 白水Uブックス 1985/10 所収


(J6) 河田 1981
(……)ある日、コンラディンは、どんないわれがあるのか知らないが、この大鼬(おおいたち)にすばらしい名前をつけてやった。その時から、大鼬は神となり、信仰のまととなった。「あの女」は週に一度、近くの教会で信心に熱中していて、コンラディンも一緒に連れて行ったが、教会の礼拝など、コンラディンにはどうしてもなじめなかった。毎週木曜日になると、コンラディンは、薄暗く、かびくさい、静かな道具置場の中で、偉大なる鼬、スレドニ・ヴァシュターの住む木の檻の前にぬかずいて、神秘的な手の込んだ儀式を行った。花の季節には赤い花が、冬には真っ赤な果実が神殿に供えられた。(……)

   サキ=著 河田智雄=訳 「スレドニ・ヴァシュター」
   『サキ傑作集』 岩波文庫 1981/11 所収


(J7) 田内 1979
 そしてある日、誰にもその理由はわからないけれど、彼はこの獣にすばらしい名前をつけてやったが、その時以来そいつは彼にとって神とも悪魔ともなったのである。「あの女」は週に一度、近くの教会で祈りの法悦にひたるのだったが、そのたびにコンラディンも連れて行った。だがその教会の儀式は彼にとって、リンモンの館の、異教の行事にすぎなかった。物置小屋の、うす暗くかび臭い静寂の中で、木曜日ごとに彼は、偉大な白 いたち(#原文は太字でなく傍点)スレドニ・ヴァシュタールが棲む木の檻の前で、神秘で綿密な儀式を行うのだった。花の咲く季節には赤い花が、花のない冬には真紅の木の実がこの祭壇にささげられた。(……)

   サキ=著 田内初義(たうち・はつよし)=訳 「スレドニ・ヴァシュタール」
   『サキ短編集』 講談社文庫 1979/06 所収


(J8) 宇野 1969, 2006
 ある日、いかなるわけか知らぬが、少年はその小動物に驚嘆すべき名称を思いついた。そして、その瞬間から、それは彼の、神となり、宗教となった。「女」は、週に一度、近くの教会に通った。コンラディンもいっしょに連れていかれるのであったが、彼にとっての教会の礼拝は、「リンモン(古代シリアの主神)の宮(みや)にある異邦人」の儀式にすぎなかった。
 毎木曜日、薄暗い道具小屋の片隅、かびのにおいの漂う静寂のうち、偉大ないたち(#「いたち」に傍点)の王者、スレドニ・ヴァシュタールの棲(す)む木檻の前で、少年はその荘厳な秘儀を執(と)り行なった。花の咲くときは赤い花を、冬の時季には、真紅の実を聖壇に捧げた。(……)

  • サキ=著 宇野利泰=訳 「スレドニ・ヴァシュタール」
  • 引用は b 創元推理文庫初版 1969 に拠りました。

 Video 1 
アニメ Sredni Vashtar

Uploaded to YouTube by workbyrd on Nov 25, 2008.


 Video 2 
短篇映画 Sredni Vashtar (1981) directed by Andrew Birkin
Mv5bmtuzndi2otg4nf5bml5banbnxkftztc
Starring Sacha Puttnam (Conradin)


 Video 3 
アニメ Sredni Vashtar (1981) directed by Václav Bedrich

Uploaded to YouTube by ExtremadamenteNerd on 28 Jun 2014.


 Video 4 
TV Sredni Vashtar (1978-79) read by Tom Baker

BBC2のTVシリーズ Late Night Story 全5話のうちの1話。ただし、このエピソードは実際にはBBCのストライキのせいで放送されずじまいだったとのこと (Source: BFI Screenonline)。下に引用する箇所の朗読は 4:05 から。 Uploaded to YouTube by WhoviansUSA on 16 Aug 2011. Reading of the excerpt below starts at 4:05.


 Video 5 
Sredni Vashtar (1940) [completed 1959-83], a film directed by David Bradley

下に引用する原文に相当する部分の映像は 2:30 あたりから。 Uploaded to YouTube by puritycharge on 22 Aug 2008. David Bradley Filmography. Narrated by David Bradley. Starring Mrs. Herbert Hyde (Mrs. de Ropp), Reny Kidd (Conradin). Reading of the section corresponding to the excerpt below starts around 2:30.


■ロシア語訳 Translation into Russian

И в один из дней,  только Небо знает из какого материала, он сплел зверю чудесное имя,  и с этого мгновения зверь  вырос  в Бога и  религию.  Женщина  предавалась  религии  раз  в  неделю в близлежащей церкви  и  брала  Конрадина  с  собой,  но  для  него церковная служба была чужим ритуалом. Каждый четверг в полутемной и затхлой тишине  сарая  для  инструментов  он  с  мистическим  и детально разработанным церемониалом поклонялся деревянной клетке, где проживал Средни Ваштар,  громадный хорек.  Красные цветы в их сезон и  алые  ягоды  в  зимнее  время приносились в жертву в его святилище, [Omission]

   Саки (Гектор Хью Манро). Средни Ваштар
   Copyright (C), перевод с английского, Гужов Е., 1997.
   E-text at Lib.Ru


■ブルガリア語訳 Translation into Bulgarian

Един ден той измисли чудновато име на животното, име, хрумнало му кой знае откъде и как, и от този миг нататък го въздигна в свой бог и в своя религия. Жената също имаше своя религия, която изповядваше веднъж седмично в близката черква, като винаги водеше и Конрадин със себе си, но за него църковната служба беше толкова чужда, колкото би бил и обредът в храма на някой асиро-вавилонски бог. Всеки четвъртък сред тишината на тънещата в полумрак, лъхаща на плесен барака той изпълняваше тайнствен и сложен ритуал пред дъсчения кафез, в който живееше големият пор Средни Ващар. Червени цветя през пролетта и лятото и клонки с алени шипки през зимата украсяваха светилището на този бог, [Omission]

   Саки - Средни Ващар
   Translated by Красимира Тодорова ( Пълни авторски права )
   E-text at Моята библиотека (chitanka.info)


■チェコ語訳 Translation into Czech

A jednoho dne, bůhví z jakého nápadu, si pro dravce vymyslel báječné jméno, a od té doby se mu fretka stala bohem a středem vlastního nábo-ženství. Ženská holdovala jednou týdně v blízkém kostele svému náboženství a brala Conradina s sebou, jenomže pro něho byly ty bohoslužby cizím obřadem v nepochopi-telném svatostánku. Sám každý čtvrtek v zšeřelém a za-tuchlém tichu kůlny uctíval mystickým a složitým cere-moniálem před dřevěnou boudou Sredniho Vaštara, veli-kou fretku. Obětoval před jeho oltářem letní rudé květy a šarlatové zimní bobule,

   Sredni Vaštar by Saki (Hector Hugh Munro)
   E-text at:
   * monro h.h _Lecba_neklidem [PDF]
   * Literární doupě


■ドイツ語訳 Translation into German

Und eines Tages, weiß der Himmel woher, ersann er für das Tier einen wundervollen Namen, und von dem Moment an wurde es zu einem Gott und zu einer Religion. 'Die Frau' gab sich ihrer Religion einmal die Woche in einer nahe gelegenen Kirche hin, zu der sie Gonradin mitnahm, aber für ihn war der Gottesdienst ein fremder Ritus aus einer fremden Welt. Jeden Donnerstag hielt er seine Andacht in der dunklen, modrigen Stille des Geräteschuppens, eine geheime, komplizierte Zeremonie vor dem hölzernen Verschlag, der Heimstatt von Sredni Vashtar, dem Großen Frettchen. Rote Blumen zur Blütezeit, rote Beeren im Winter - all dies wurde an seinem Schrein dargebracht, denn er war eine Gottheit, [Omission]

   Sredni Vashtar by Saki
   Eines Freundes Freund zu sein. Eine Anthologie. Bunte Blätter Band 7
   Books on Demand Gmbh, 2002-08
   Preview at Google Books


■イタリア語訳 Translations into Italian

(It1) Geta, 2009
Un giorno aveva inventato un nome per la bestiola, basandosi su elementi che il Cielo soltanto può conoscere, e da quel momento il furetto era divenuto per lui un dio ed una religione. La Donna si concedeva un po’ di religione una volta a settimana, in una chiesa nei paraggi, e si portava dietro Conradin, ai cui occhi però la messa appariva un rito alieno celebrato in un tempio pagano. Ogni giovedì, nel silenzio flebile e stantio del capanno, egli praticava il suo personale culto con un elaborato e mistico cerimoniale di fronte alla conigliera in legno dove risiedeva Sredni Vashtar, il Gran Furetto. Fiori rossi quando erano di stagione, e bacche scarlatte in inverno, venivano dati in offerta al suo tempio.

   Sredni Vashtar by Saki
   Translated by Ariano Geta
   E-text at Ariano Geta 2009/08/07


(It2) Crio, 2008
Finché un giorno, il Cielo sa come, non inventò un nome meraviglioso per l'animale, che da quel momento crebbe nella sua considerazione diventando un dio e una religione. La Donna praticava la religione una volta la settimana recandosi in una chiesa vicina, e portava Conradin con sè, ma per lui la liturgia in chiesa rappresentava nient'altro che un rito alieno e senza senso. Ogni giovedì, nell'indistinto silenzio stantio del capanno, egli stava adorante, seguendo un mistico ed elaborato cerimoniale, accanto alla gabbia di legno in cui abitava Sredni Vashtar, il grande furetto. Fiori rossi di stagione e bacche scarlatte d'inverno venivano portati al suo cospetto, [Omission]

   Sredni Vashtar by Saki
   Translated by Crio Ufo (ƆƦıo)
   E-text at Sredni Vashtar-Saki (Hector Hugh Munro) - MySpace 2008/07/28


■ポルトガル語訳 Translations into Portuguese

(Pt1) Drummond, 2009
Um dia, e só Deus sabe de onde lhe teria vindo a inspiração, o garoto conseguiu encontrar um nome maravilhoso para o animal: Sredni Vashtar. E logo ele foi elevado ao status de divindade, a quem Conradin prestava um verdadeiro culto. Uma vez por semana, Aquela Mulher ia à igreja, levando o garoto consigo. Para ele, o serviço religioso não era mais do que um ritual estranho e incompreensível, mas deu-lhe a orientação necessária para que criasse outros rituais. Assim, todas as terças-feiras, na penumbra bolorenta e silenciosa do seu templo, ele se ajoelhava na frente da gaiola de madeira e adorava Sredni Vashtar, o Grande Furão. Conradin elaborara um complexo cerimonial, cheio de misticismo. À guisa de oferenda, ele colocava flores vermelhas no altar, [Omission]

   Sredni Vashtar by Saki (Hector Hugh Monroe)
   Translated and adapted by Regina Drummond
   E-text at Project Gutenberg


(Pt2)
E certo dia - só Deus sabe onde ele foi buscar aquilo - Conradin inventou um nome maravilhoso para o animal, que a partir desse momento se alcandorou às proporções de um deus e de uma religião. A Mulher dedicava-se às práticas da religião uma vez por semana numa igreja das imediações, e levava Conradin com ela, mas para o garoto o ofício religioso era um rito estranho que praticava sozinho no barracão. Todas as quintas-feiras, no silêncio espectral e húmido do telheiro de ferramentas, prestava culto com místico e complicado cerimonial diante da jaula de madeira onde vivia Sredni Vashtar, o grande furão. Flores vermelhas no Estio e bagas escarlates no Inverno eram levadas como oferendas ao seu santuário, [Omission]

   Sredni Vashtar by Saki
   E-text at Project Gutenberg


(Pt3) Pinto
E um dia, só Deus sabe de que matéria-prima, ele engendrou um maravilhoso nome para o animal, e a partir desse momento ele cresceu e tomou a dimensão de um deus e de uma religião. A Mulher dedicava-se à religião uma vez por semana numa igreja próxima e levava Conradin com ela, mas para ele o serviço religioso era um ritual alienígena na Casa de Rimmon. Todas as quintas-feiras, no sombrio e bafiento silêncio da arrecadação, ele prestava culto com um cerimonial místico e complicado frente à arca de madeira onde morava Sredni Vashtar, a grande doninha. Flores vermelhas da época e morangos escarlates no Inverno eram oferecidos no seu santuário, [Omission]

   Sredni Vashtar by Saki
   Translated by Luís Varela Pinto
   E-text at Luís A. P. Varela Pinto


■カタルーニャ語訳(カタロニア語訳) Translation into Catalan

Un dia va assignar a la bèstia un nom meravellós tret de vés a saber on, i a partir d’aquell moment es va convertir en un déu i una religió. La Dona complia amb la religió un cop per setmana en una església propera, on es feia acompanyar de Conradin; per ell, el servei eclesiàstic era un ritual estrany a la Casa de Rimmon. Cada dijous, en el silenci penombrós i humit del cobert, retia un culte místic i complex davant la conillera de fusta on vivia Sredni Vashtar, el gran furó. Oferia a l’altar flors vermelles en saó i maduixes escarlata a l’hivern, [Omission]

   Sredni Vashtar by Saki
   E-text at Srendi Vashtar .odt


 Audio 2 
スペイン語版オーディオブック(朗読) Audiobook in Spanish

Uploaded to YouTube by ARTKARYUS on 15 Aug 2013


■スペイン語訳 Translation into Spanish

Y un día, quién sabe cómo, imaginó para la bestia un nombre maravilloso, y a partir de entonces el hurón de los pantanos fue para Conradín un dios y una religión. La Mujer se entregaba a la religión una vez por semana, en una iglesia de los alrededores, y obligaba a Conradín a que la acompañara, pero el servicio religioso significaba para el niño una traición a sus propias creencias. Pero todos los jueves, en el musgoso y oscuro silencio de la casilla, Conradín oficiaba un místico y elaborado rito ante el cajón de madera, santuario de Sredni Vashtar, el gran hurón. Ponía en el altar flores rojas cuando era la estación y moras escarlatas cuando era invierno, [Omission]

   Sredni Vashtar by Saki
   E-text at Ciudad Seva


■フランス語訳 Translation into French

Un jour, et Dieu seul sait d'où lui vint cette inspiration, il trouva pour la bête un nom merveilleux. Alors, elle fut élevée au rang de divinité à laquelle il voua un véritable culte. Une fois par semaine, la Femme se rendait à l’église voisine et y emmenait Conradin. Pour lui, cependant, le service religieux n’était qu’un rite étrange et incompréhensible. En revanche, tous les jeudis, dans la pénombre et l'odeur de moisi de la remise silencieuse, il s'agenouillait devant la cage de bois et adorait Sredni Vashtar, le Grand Furet. Il avait élaboré un cérémonial complexe empreint de mysticisme. En guise d'offrande, il disposait sur l'autel des fleurs rouges à la belle saison et des baies écarlates en hiver, [Omission]

   Sredni Vashtar by Saki
   Translated by Guillaume Marlière
   E-text at Gilbert Salem
   Excerpt at La bête dans la littérature fantastique [PDF]


 Audio 3 
英語原文のオーディオブック(朗読): 朗読者(女性)未確認
Audiobook read by an unknown female reader

下に引用する箇所の朗読は 3:28 から。 Uploaded to YouTube by Morgan Scorpion on 24 Nov 2011. Reading of the excerpt below starts at 3:28.


 Audio 4 
英語原文のテキストと朗読(短縮版): トム・オベドラム
Videobook of the original English text (abridged) read by Tom O'Bedlam

下に引用する箇所の朗読は 2:30 から。 Uploaded to YouTube by SpokenVerse on 21 Nov 2009. Reading of the excerpt below starts at 2:30.


 Audio 5 
英語原文朗読: ピーター・イヤーズリー Audiobook read by Peter Yearsley

録音提供はリブリヴォックス。下に引用する箇所の朗読は 4:21 から。 Uploaded to YouTube by freeaudiobooks84 on 29 Oct 2012. Audio courtesy of LibriVox. Reading of the excerpt below starts at 4:21.


 Audio 6 
英語原文のオーディオブック(朗読) Audiobook read by Suzanne Houghton

録音提供: リブリヴォックス 下に引用する箇所の朗読は 3:47 から。 Audio courtesy of LibriVox. Reading of the excerpt below starts at 3:47.


■英語原文 The original text in English

And one day, out of Heaven knows what material, he spun the beast a wonderful name, and from that moment it grew into a god and a religion. The Woman indulged in religion once a week at a church near by, and took Conradin with her, but to him the church service was an alien rite in the House of Rimmon. Every Thursday, in the dim and musty silence of the tool-shed, he worshipped with mystic and elaborate ceremonial before the wooden hutch where dwelt Sredni Vashtar, the great ferret. Red flowers in their season and scarlet berries in the winter-time were offered at his shrine, [Omission]


■更新履歴 Change log

  • 2016/10/21 日本語版オーディオブックと、和爾桃子=訳 2015/04/20 を追加しました。
  • 2015/07/23 ヴァーツラフ・ベドジッヒ監督によるアニメと、トム・ベイカーによるストーリーテリングの2本の YouTube 動画を追加しました。
  • 2014/11/19 カタルーニャ語訳を追加しました。
  • 2014/11/18 ブルガリア語訳とスペイン語版オーディオブックの YouTube 画面を追加しました。
  • 2013/09/21 もう1つの朗読録音を追加しました。
  • 2013/04/28 目次を新設しました。
  • 2013/03/23 YouTube の提供するもう1つの朗読録音を追加しました。
  • 2012/08/13 チェコ語訳を追加しました。
  • 2012/07/12 ロシア語訳、3種類のポルトガル語訳、2種類のイタリア語訳、フランス語訳、および SpokenVerse による朗読の YouTube 画面を追加しました。
  • 2011/09/20 つぎの2本の YouTube 動画を追加しました。
    1. workbyrd がアップロードした Sredni Vashtar のアニメ
    2. Andrew Birkin 監督による映画 Sredni Vashtar (1981)
    また、Librivox による無料オーディオブックへのリンクを張りました。
  • 2011/07/21 「はじめに」の項を新設しました。また、ドイツ語訳を追加しました。
  • 2010/04/18 David Bradley 監督による映画 Sredni Vashtar (1940) の YouTube 動画を追加しました。
  • 2007/09/15 田内初義=訳 1979/06 を追加しました。
  • 2007/07/13 陰陽師=訳(初出 2005/05/07 - 2005/05/11)を追加しました。
  • 2007/04/13 スペイン語訳を追加しました。

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Thursday, 15 February 2007

The Open Window by Saki サキ 「開けっぱなしの窓」「開け放たれた窓」「開いた窓」「開かれた窓」「開けたままの窓」

a. Sakiopen_4 b. 0141180781_3

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        目次 Table of Contents

■中国語訳(簡体字) Translations into simplified Chinese
  (Zh1)
  (Zh2) 冯涛 2006
■中國語譯(繁體字) Translation into traditional Chinese
■日本語訳 Translations into Japanese
  (J1) 和爾 2016
  (J2) 金原 2010
  (J3) 訳者未確認 2008
  (J4) 陰陽師 2005
  (J5) 大津 1999
  (J6) 佐藤 1996
  (J7) 上木 1989
  (J8) 木村 1985
  (J9) 都筑 1983
  (J10) 河田 1981
  (J11) 田内 1979
  (J12) 中西 1978, 1988
  (J13) 永井 1975
  (J14) 中村 1958, 2002, etc.
  (J15) 都筑 1956
■ハンガリー語訳 Translations into Hungarian
  (Hu1)
  (Hu2)
■ロシア語訳 Translation into Russian
■ウクライナ語訳 Translation into Ukrainian
■ブルガリア語訳 Translation into Bulgarian
■チェコ語訳 Translation into Czech
■デンマーク語訳 Translation into Danish
■ドイツ語訳 Translation into German
 Video 1  Italian film La finestra aperta (2009)
■イタリア語訳 Translation into Italian
■ポルトガル語訳 Translation into Portuguese
■カタルーニャ語訳(カタロニア語訳) Translation into Catalan
 Video 2  La ventana abierta - The Sims
■スペイン語訳 Translation into Spanish
■フランス語訳 Translation into French
 Video 3  British film The Open Doors (2004)
 Audio 1  マークによる朗読 Audiobook read by Marc
 Audio 2  ロイ・マクレディによる朗読 Audiobook read by Roy Macready
■英語原文 The original text in Englsih
■邦題の異同 Variations of the title in Japanese
■外部リンク External links
■更新履歴 Change log


■中国語訳(簡体字) Translations into simplified Chinese

(Zh1)
“她的悲剧?”弗兰姆顿问道。在某种程度上,悲剧看上去和这个宁静的乡村有些不协调。

“你可能会觉得奇怪,为什么在十月的午后,我们还把那扇窗户大开着。”那位侄女说。她指着一扇巨大的法式落地窗,窗子外面是一个草坪。

“今年这个时候还相当暖和,”弗兰姆顿说,“可是,那扇窗户和那场悲剧之间有什么关系吗?”

“到今天正好三年了。就是从那扇窗子,她的丈夫和她的两个弟弟出去了,他们去打猎。然后,他们再也没有回来。(……)”

   开着的窗(The Open Window) 作者:萨基(H.H.蒙罗)
   E-text at 黄易天地


(Zh2) 冯涛 2006

   《敞开的窗户》 作者:(英)萨基(Saki) 冯涛译
   萨基短篇小说选——名著名译(插图本)
   ISBN: 702005465
   人民文学出版社 2006/08
   More info at 中国图书网 (BooksChina.com)


■中國語譯(繁體字) Translation into traditional Chinese

“她的悲劇?”弗蘭姆頓問道。這個鄉村甯靜祥和,悲劇似乎和這裏的環境格格不入。

“妳或許正在奇怪,在十月的下午我們爲什麽要敞著窗戶。”侄女指著一扇敞開的面對草坪的法式落地窗說道。

“這個時候天氣還是比較暖和的,”弗蘭姆頓說道,“不過這窗戶難道和發生的悲劇有什麽關系嗎?”

“在三年前,就是今天這個日子,她的丈夫和兩個弟弟穿過那扇窗戶出去打獵。他們再也沒有回來。(……)”

   開著的窗戶
   E-text at 和讯博客


■日本語訳 Translations into Japanese

(J1) 和爾 2016
 「悲劇ですか?」フラムトンは聞き返した。こんなのどかな田舎で、悲劇とはなにやらちぐはぐな。
 「十月の午後になってもあの窓をあんなに開けっぱなしてどうしたんだろう、とお思いではないかしら」と、芝庭へと開け放した大きなフランス窓をさした。
 「この季節に暑いぐらいの陽気ですからね。ですが、あの窓がその悲劇とやらに何か?」
 「ちょうど三年前の今日、叔母の連れ合いと実家の弟ふたりがあの窓から猟へ出ました。そして二度と帰ってきませんでした。(……)」

   サキ=作 和爾桃子(わに・ももこ)=訳 「開けっぱなしの窓」
   『けだものと超けだもの』 白水Uブックス 白水社 2016/01/20


(J2) 金原 2010
 「とても悲しい事件?」 フラントンには、こんなに平和な村でそんな事件が起こるとはとても思えなかった。
 「そこの窓(まど)を開け放しているの、不思議だと思わない? だって、十月だし、もう夕方だし」 女の子は床(ゆか)まである大きな窓(まど)を指さしていった。そのむこうは芝生(しばふ)だ。
 「あの窓(まど)から、ちょうど三年前の今日、おじさんがおばさんのふたりの弟を連れて、いつもの狩(か)りに出かけたの。そしてそのままもどってこなかった。(……)」

   サキ=作 金原瑞人(かねはら・みずひと)=訳 「開け放たれた窓」
   金原瑞人=編訳 『八月の暑さのなかで—ホラー短編集
   岩波少年文庫 2010/07/14


(J3) 訳者未確認 2008
「悲劇?」フラムトンは、この静穏な田舎に悲劇とはまた場違いな、と思いながらそうたずねた。
「10月の夕方にしては、窓を大きく開けてると思いません?」姪は、庭に向かって開いている大きなフランス風の窓を指差した。
「この時期にしては暖かいですからね」フラムトンは答えた。「あの窓が悲劇となにか関係あるんですか?」
「ちょうど三年前の今日のことです。あの窓から、おばの主人と二人の弟たちは狩猟で出かけていったんです。ところが帰ってきませんでした。(……)」

   サキ=著 訳者未確認 「開いた窓」
   E-text at Translation Note 2008-08-21


(J4) 陰陽師 2005
「大変な悲劇ですって?」こんな平和な田舎に大変な悲劇とは、ひどく場違いのような気がした。
「どうして十月の午後だというのに、あそこの窓を開けっぱなしにしているんだろう、って、おそらく不思議に思ってらっしゃるのでしょうね」姪は、芝生に向かって開いている大きなフランス窓を示した。
「この時季にしては暖かいですからね」とフラムトンは答えた。「でも、あの窓がなにかご不幸と関係がおありなんですか」
「ちょうど三年前の今日、あの窓を通って、伯父と、伯母の弟ふたりが狩に出かけたのです。そのまま三人は戻ってきませんでした。(……)」

   サキ=著 陰陽師=訳 「開いた窓」 サキ コレクション vol.1
   Ghostbuster's Book Web.
   初出 2005/04/26 - 2005/04/28 改訂 2005/05/29


(J5) 大津 1999
「悲劇?」とフラムトンは言った。とにかくこんな静かな田舎で悲劇とは場ちがいなようだった。
「この十月の午後にあの窓をどうして開けたままにしているか不思議でしょう?」と、芝生の庭に向かって開けてある大きなフランス窓を指さして、姪は言った。
「この時季にしては、今日はとても暖かですよ」とフラムトンは言った。「でもあの窓がその悲劇となにか関係があるのですか?」
「ちょうど三年前の今日、伯父と伯母の二人の弟があの窓から猟に出かけたのです。でも帰ってきませんでした。(……)」

   サキ(本名ヘクター・ヒュー・マンロウ)=著
   大津栄一郎=訳 「開けたままの窓」
   『サキ傑作選』 ハルキ文庫 角川春樹事務所 1999/03


(J6) 佐藤 1996
「悲劇だって?」フラムトンには、悲劇などこの平穏な田舎では場違いなことのように思えた。
「どうして十月の夕方にあの窓が大きく開けてあるのか、不思議にお思いになりませんか」娘は、芝生に向かって開いている大きなフランス窓を指さした。
「今日は今時分にしてはとても暖かいからだろう。でも、あの窓が悲劇と何か関係があるのかい」
「叔母の夫と叔母の二人の弟が三年前の今日日帰りの猟に出かけたとき、通り抜けたのがあの窓なのよ。三人とも帰って来なかったわ。(……)」

   サキ=作 佐藤嗣二(さとう・つぐじ)=訳 「開け放たれた窓」
   佐藤嗣二=編訳 『英米ゴーストストーリー傑作選
   新風書房 1996/12


(J7) 上木 1989
「悲しいめですって?」
 フラムトンはびっくりして聞きかえした。この、のんびりとしたいなかに、悲劇(ひげき)など似(に)あわないような気がした。
「今は十月ですよね。それなのに夕方になっても窓(まど)をあけっぱなしにしておくなんて、変だとお思いになりません?」
 娘(むすめ)さんは、大きなフランス窓(まど)を指さした。窓(まど)は開いていて、そこから芝生(しばふ)の庭にでられるようになっている。
「さあ、今年は十月といってもまだあたたかいし、あけておいてもおかしくないと思いますが? で、窓(まど)とその悲しいできごとと、なにか関係があるのですか?」
「ええ。三年前の今日、おじは、おばの弟をふたりつれて狩(か)りに出かけました。いつものようにあの窓(まど)からでていったのよ。そして三人とも、それっきり帰ってきませんでした。(……)」

   サキ=作 上木さよ子=訳 「開いている窓」
   江河徹(えがわ・とおる)=編 ひらい たかこ=画
   『なぞめいた不思議な話』 幻想文学館2 くもん出版 1989/08


(J8) 木村 1985
「悲劇って?」
 フラムトンはたずねた。こんな、のどかないなかに悲劇なんてことばは、につかわしくない気がした。
「十月の、夕方も近い時刻に、窓をあけっぱなしにしておくなんて、おかしいとおおもいでしょうね。」
 フラムトンのうしろでは、大きなフランス窓が、しばふにむかってあけはなたれていた。それをゆびさして、少女がいった。
「この季節にしては、あたたかい日じゃありませんか。」
 フラムトンはこたえた。
「で、あの窓が、その悲劇とやらとかんけいでもあるんですか?」
 すると、少女は声をひそめ、ゆっくりとはなしだした。
「ちょうど三年前の、きょうのことでした。あの窓から、おじと、おばの二人の弟とが、猟に出かけて……二度ともどりませんでした。(……)」
[ルビは省略しました]

   サキ=作 木村由利子=文 「ひらかれた窓」
   サキ〔ほか〕=作 『おおかみ男』 ポプラ社文庫 1985/08


(J9) 都筑 1983
「かなしいできごと?」
「十月だというのに、それも、もう夕がた近(ちか)いというのに、どうしてあのまどをあけっぱなしにしておくのか、きっとへんにお思(おも)いでしょう?」
と、少女(しょうじょ)はまどをゆびさした。まどといっても、ゆかまでとどいていて、ドアみたいにひらくようになっているフランスまどだ。それは、少女(しょうじょ)のいうとおり、あけっぱなしになっていて、外(そと)は庭(にわ)のしばふだった。
「いまごろにしては、きょうはあたたかいようですが——。でも、あのまどが、かなしいできごとと、なにか関係(かんけい)があるんですか。」
「三年まえのある日、ああ、ちょうど、きょうですわ。あのまどから庭(にわ)へ出て、三人のおじが猟(りょう)に出かけたんです。くわしくいうと、おばの夫(おっと)と、あとのふたりは、おばの弟(おとうと)なんですの。猟(りょう)に出かけて、それきり帰(かえ)ってきませんでした。(……)」

   サキ=作 都筑道夫=訳 「ひらいたまど」
   小泉八雲〔ほか〕=〔著〕 保永貞夫(やすなが・さだお)〔ほか〕=訳
   『怪談 ほか』 講談社青い鳥文庫 1983/08


(J10) 河田 1981
 「悲しい出来事ですって」とフラムトンは問い返した。こんな平和な田舎に、悲しい出来事など、何となく場違いのように思われた。「十月の午後だと言うのに、なぜあの窓をあけっぱなしにしておくのか不思議にお思いでしょうね」と姪は、芝生に面した、床まで届く大きなフランス窓を指さした。
 「今時分にしちゃ、暖かいですからね。でも、あの窓がその悲しい出来事と何か関係があるんですか」
 「ちょうど三年前のことです。伯母の連れ合いと伯母の二人の弟があの窓から鉄砲を打ちに出かけたんです。三人はそれきり戻って来ませんでした。(……)」

   サキ=著 河田智雄(かわだ・ともお)=訳 「開いた窓」
   『サキ傑作集』 岩波文庫 1981/11


(J11) 田内 1979
「悲劇ですって?」とフラムトンは聞き返した。こんな平和な片田舎に、悲劇など、およそお門(かど)ちがいに思えたからである。
「十月の夕ぐれどきに窓をすっかり開けはなってるのを奇妙にお思いでしょうね」と娘は、芝生の方へと開いている大きなフレンチ・ウインドウを指した。
「今頃にしてはあたたかいですよ。だけど、あの窓がその悲劇と、何か関係でもあるんですか?」
「ちょうど三年前の今日、伯母の主人と二人の弟が、あの窓から猟に出て行ったんです。そして、二度と帰らなかったんです。(……)」

   サキ=著 田内初義(たうち・はつよし)=訳 「開かれた窓」
   『サキ短編集』 講談社文庫 1979/06


(J12) 中西 1978, 1988
「悲しい運命ですって?」とフラムトンは聞き返した。なぜかこののどかな田舎に悲しい運命は場ちがいの気がする。
「あの窓、十月の昼すぎなのにあけたままにしておくなんて変だ、とお思いでしょう?」と姪はいって、芝生(しばふ)に向かってあけ放してある大きなフランス窓を指さした。
「今の時節としては割に暖かですからね。ですがあの窓が伯母さまの悲しい運命というのに何か関係でもあるんですか?」
「ちょうど三年前の今日でした。あの窓から伯母の夫が、伯母の弟をふたりつれて狩猟(しゅりょう)に出て行きました。それきり戻(もど)らないんですの。(……)」


(J13) 永井 1975
「悲劇というと?」と、フラムトンは問いかえした。こののどかな田舎に、悲劇はそぐわないような気がした。
「十月の午後になぜあすこの窓をあけはなしておくのかと、不思議に思われたことでしょうね」娘は芝生に面した大きなフランス窓を指さしていった。
「この時季にしてはたいそう暖かいですからね」と、フラムトンは言った。「しかし、
あの窓とその悲劇とやらは何か関係があるんですか?」
「ちょうど三年前のきょう、おじと、おばの二人の弟があの窓から外に出て猟にでかけたのです。三人はそれっきり帰ってきませんでした。(……)」

  • サキ(H・H・マンロー)=著 永井淳(ながい・じゅん)=訳 「開かれた窓」
    エラリー・クイーン=編 『ミニ・ミステリ傑作選』 創元推理文庫 1975/10
  • 原典: Ellery Queen's minimysteries; 70 short-short stories of crime, mystery, and detection. Edited by Ellery Queen. New York, World Pub. Co., 1969.

(J14) 中村 1958, 2002, etc.
「不幸って?」とフラムトンはたずねた。こんな安らかな田舎では、不幸など、なんとなく場ちがいのような気がしたのだ。
「十月の午後だというのに、窓をこんなに開けはなしにしておくのを、へんだとお思いになるかもしれませんわね」と少女は、芝生のほうへ開いた大きなフランス窓を指しながら言った。
「季節にしちゃ、ちょっと暖かいですからね。でも、あの窓がその不幸となにか関係でもあるのですか」
「あの窓から、ちょうど三年前の今日、伯父と伯母の二人の弟が、猟に出て行きました。そして、そのまま帰ってきませんでした。(……)」

  • サキ=著 中村能三(なかむら・よしみ)=訳 「開いた窓」
    • ランダムハウス講談社=編 『十夜』 ランダムハウス講談社 2006/01
      • 恩田陸「洗練された教養と自虐的ユーモア」という、紹介/解説をまじえた4ページの短いエッセーが、あたまに添えられています。
    • 赤木かん子=編 『一発逆転ミステリー』 ポプラ社 2002/04
      • 若い読者のために c. の用字、仮名遣い、句読点などが改めてあります。
    • サキ短篇集』 新潮文庫 1958/02
  • a. b. は c. を再録したもの。引用は c. 新潮文庫版に拠りました。

(J15) 都筑 1956
「悲しい出来ごとですつて?」フラムトンは問いかえした。この静けさに盈ちた村里は、なんとなく悲劇なぞには、不似合いだつた。
「十月の午後だというのに、あの窓をなぜあんなにいつぱいにあけておくのか、あなたはきつと、ご不審でしょう」大きな仏蘭西(フランス)窓の、芝生にむけて開かれているのを示しながら、姪は言つた。
「今年はわりに暖いようですがね」と、フラムトンは言つた。「しかし、あの窓が悲しい出来ごとに、なにか関係を持つてるんですか?」
「三年前のちようど今日、伯父と伯母のふたりの弟が、一日がかりの獵に、あの窓から出ていつたんですの。それつきり、帰つて来なかつたんです。(……)」

   サキ=著 都筑道夫=訳 「開いた窓」
   早川書房編集部=編 『幻想と怪奇 英米怪談集2
   世界探偵小説全集 早川書房 1956


■ハンガリー語訳 Translations into Hungarian

(Hu1)
— Milyen tragédia? — kérdezte Framton; valószínűtlennek tetszett, hogy ilyen békés, falusi környezetben tragédiák történjenek.

— Gondolom, furcsának találja, hogy októberben is délutánig tárva-nyitva tartjuk az ablakot — mondta az unokahúg, és a padlóig érő franciaablakra mutatott, mely a pázsitra nyílt.

— Az évszakhoz képest nagyon szép időnk van — felel- te Framton — Arra céloz, hogy ennek valami köze van a tragédiához?

— Napra pontosan három évvel ezelőtt, ezen az ablakon át távozott a férje és a két öccse, amikor vadászni indultak. Sosem tértek vissza.

   Hector Hugh Munro (Saki) - A nyitott ablak
   E-text at Hotdog.hu


(Hu2)
– Tragédia? – kérdezte Framton. Valahogy ezen a nyugodt, vidéki helyen a tragédiák oda nem illőnek tűntek.

– Talán elgondolkozott azon, hogy vajon miért tartjuk nyitva az ajtót egy októberi délutánon – kezdte az unokahúg a kertre nyíló hatalmas erkélyajtó felé mutatva.

– Elég meleg van októberhez képest – mondta Framton, – de mi köze van annak az ajtónak a tragédiához?

– Azon az ajtón keresztül hagyta el a házat napra pontosan három évvel ezelőtt a nénikém férje és a két öccse, amikor vadászni indultak. Sosem tértek vissza.

   Saki – A nyitott ajtó
   E-text at infinitedreams


■ロシア語訳 Translation into Russian

      "Трагедия?", спросил Фремтон; в этом покойном сельском месте трагедии казались как-то не к месту.

      "Вы, наверное, удивлены, почему в октябрьский день мы держим это окно нараспашку", сказала племянница, показывая на громадное французское окно, открытое на лужайку.

      "Для этого времени года еще совсем тепло", сказал Фремтон, "разве открытое окно имеет какое-нибудь отношение к трагедии?"

      "Через это окно три года назад в этот самый день ее муж и два ее младших брата ушли утром на охоту. И никогда не вернулись.

   Саки (Г.Х.Манро). Открытое окно
   Copyright (C), Translated by Гужов Е., 1997.
   E-text at Lib.Ru


■ウクライナ語訳 Translation into Ukrainian

- Трагедія? - запитав Фремтон. У цій тихій сільській місцині трагедії здавалися чимось безглуздим.

—Ви, напевно, здивовані, чому жовтневої днини ми тримаємо це вікно нарозтіж, - промовила небога, показуючи на величезне французьке вікно, що було відчинене на галявину.

- Для цієї пори року ще зовсім тепло, - сказав Фремтон, - але ж, хіба відчинене вікно має якесь відношення до трагедії?

- Через це вікно три роки тому цього самого дня, її чоловік і два її молодших брати пішли вранці на полювання. І більше ніколи не повернулися.

   Г.Г. Манро (Сакі) Відчинене вікно
   E-text at завантажити файл з текстами [PDF]


■ブルガリア語訳 Translation into Bulgarian

— Трагедия ли? — изненада се Фрамтън, сякаш в това спокойно провинциално кътче не можеше да се случи нищо трагично.

— Сигурно ви е чудно защо държим този прозорец отворен, макар че е октомври — каза племенницата, като посочи един голям френски прозорец с изглед към моравата.

— Доста е топло за сезона — забеляза Фрамтън, — но нима прозорецът има нещо общо с трагедията?

— Преди три години точно на днешния ден съпругът й и двамата й по-малки братя излезли през него и отишли на лов. И повече не се върнали. 

   Саки — Отвореният прозорец
   E-text at Моята библиотека


■チェコ語訳 Translation into Czech

"Tragédie?" podivil se Frampton. Tragédie mu v tomhle poklidném venkovském zákoutí připadaly nějak nemístné.

"Divíte se možná, proč necháváme v říjnu tyhle dveře dokořán," řekla neteř a ukázala na široké skleněné dveře vedoucí na trávník.

"Letos je ještě dost teplo," poznamenal Frampton, "ale mají ty zasklené dveře něco společného s tou tragédií?"

"Dneska před třemi roky odešel její manžel a dva její mladší bratři právě těmihle dveřmi jako obvykle na lov. Nikdy se nevrátili.

   Otevřené dveře by Saki (Hector Hugh Munro)
   E-text at:
   * monro h.h _Lecba_neklidem [PDF]
   * Literární doupě


■デンマーク語訳 Translation into Danish

»Hendes Tragedie?" spurgte Framton. Der var noget ved dette rolige og landlige Sted, som han ikke rigtig kunde faa til at pase med Tragedier.

„Det under Dem maaske at vi lader Vinduet staa paa vid Gab en Oktoberaften," sagde Niecen og pegede paa et stort fransk Vindue, som stod aabent ud til Haven.

„Det er jo temmelig varmt i Betragtning af Aartiden," sagde Framton, „men har Vinduet noget med Tragedien at gøre?"

„Nøjagtig i Dag for tre Aar siden gik Tantes Mand og hendes to Brødre ud gennem den Dør for at tage paa Jagt. De er aldrig vendt tilbage.

   Det åbne vindue by Saki (H. H. Munro)
   Bog-Anmelderen by Orla Lundbo


■ドイツ語訳 Translation into German

»Die Tragödie?” fragte Framton. Er hatte das Gefühl, dass Tragödien eigentlich gar nicht zu diesem ländlichen Ort passten.

„Vielleicht haben Sie sich schon gewundert, dass die Terrassentür selbst an einem Oktobertag noch so weit offensteht”, sagte die Nichte und deutete auf die breite Tür, die in den Garten hinausführte.

„Ich finde, dass es für diese Jahreszeit noch recht warm ist«, sagte Framton. „Oder hat die Tür etwas mit der Tragödie zu tun?«

„Durch diese Tür verliess – heute genau vor drei Jahren – der Mann meiner Tante mit ihren beiden jüngeren Brüdern das Haus, um wie üblich auf die Jagd zu gehen. Sie kehrten nie mehr zurück.

   Die offene Tür by Saki (H. H. Munro)
   E-text at The-Short-Story


 Video 1 
Italian film La finestra aperta (2009)

Directed by Gregory J. Rossi, Starring Daniele Grassetti


■イタリア語訳 Translation into Italian

  «La tragedia?» chiese Framton; chissà perché, ma in quel tranquillo angolo di campagna le tragedie sembravano del tutto fuori posto.

  «Forse si domanderà perché teniamo quella finestra aperta in un pomeriggio d'ottobre» disse la nipote, indicando una grande porta finestra che dava su un prato.

  «E' piuttosto caldo per essere autunno», disse Framton, «ma la finestra ha qualcosa a che vedere con la tragedia?».

  «Da quella finestra, proprio tre anni fa questo stesso giorno, suo marito e i suoi due fratelli minori uscirono per andare a caccia. Non fecero più ritorno.

   La finestra aperta by Saki (Hector H. Munro)
   Translated by Ilaria Valdiserra
   Sul treno per dovevuoiandaretu Narcissus.me, 2013
   Preview at Google Books


■ポルトガル語訳 Translation into Portuguese

     - Uma tragédia? - perguntou Framton. De alguma forma, neste tranqüilo rincão as tragédias pareciam algo fora de lugar.

     - O senhor deve ter se perguntado por que motivo deixamos aquela porta escancarada em uma tarde de outubro - disse a sobrinha, apontando para uma larga esquadria que dava para um jardim.

     - Faz bastante calor nesta época do ano - disse Framton. - Mas o que a janela tem a ver com a tragédia?

     - Por essa porta, um dia, há exatos três anos, o marido dela e seus dois irmãos menores saíram, para uma caçada. Nunca mais voltaram.

   A porta aberta by Saki (Hector H. Munro)
   E-text at Bestiario


■カタルーニャ語訳(カタロニア語訳) Translation into Catalan

-¿Tragèdia? -va preguntar Framton. D’alguna manera, aquell plàcid indret rural no semblava apropiat per a les tragèdies.

-Potser us pregunteu per què tenim aquella porta oberta de bat a bat en una vesprada d’octubre -va dir la neboda indicant un finestral amb dues portelles que donava al jardí.

-No fa gaire fred per a l’època que és -va dir Framton-. Però, ¿té res a veure aquesta porta amb la tragèdia?

-Per aquesta porta, avui fa exactam ent tres anys, el marit i els dos germans menuts de ma tia van eixir a caçar, tal com feien cada dia. No van tornar mai més.

   Saki. El finestral obert dins Tobermory. Edicions Bromera. Col·lecció
   “A la lluna de València”, 33. Alzira, 1994.
   E-text at Fragments i propostes de treball - Xtec [PDF]


 Video 2 
La ventana abierta - The Sims

Uploaded to YouTube by Rickardon on 2 Mar 2011


■スペイン語訳 Translation into Spanish

-¿Su tragedia? -preguntó Framton; en esta apacible campiña las tragedias parecían algo fuera de lugar.

-Usted se preguntará por qué dejamos esa ventana abierta de par en par en una tarde de octubre -dijo la sobrina señalando una gran ventana que daba al jardín.

-Hace bastante calor para esta época del año -dijo Framton- pero ¿qué relación tiene esa ventana con la tragedia?

-Por esa ventana, hace exactamente tres años, su marido y sus dos hermanos menores salieron a cazar por el día. Nunca regresaron.

   La ventana abierta by Saki
   E-text at Ciudad Seva


■フランス語訳 Translation into French

--  Tragédie ? Quelle tragédie ? fit Framton interloqué. Il avait peine à associer la notion de tragédie avec cet environnement agreste et reposant.

- Vous vous demandez peut-être pourquoi nous laissons cette fenêtre grande ouverte par une après-midi d'octobre, dit la niècehttp://app.cocolog-nifty.com/t/app/weblog/post?__mode=edit_entry&id=16829014&blog_id=61275 en désignant une porte-fenêtre qui donnait sur une pelouse.

Il fait très doux pour la saison, dit Framton ; cette fenêtre aurait- elle quelque chose à voir avec la tragédie ?

- C'est par cette porte-fenêtre que voilà trois ans, jour pour jour, son mari et ses deux jeunes frères sont partis chasser et ne sont jamais revenus.

   La fenêtre ouverte
   Nouvelles : Edition intégrale by Hector Hugh Munro (Saki)
   Translated by Gérard Joulié
   Published by L'Age d'Homme, 2003-06-10


 Video 3 
British film The Open Doors (2004)

監督: ジェームズ・ローガン 出演: マイケル・シーン 日本未公開? Directed by James Rogan, Starring Michael Sheen


 Audio 1 
マークによる朗読 Audiobook read by Marc

下に引用する箇所の朗読は 1:47 から。 Uploaded to YouTube by libribooks on 8 Feb 2010. Audio courtesy of LibriVox. Reading of the excerpt below starts at 1:47.


 Audio 2 
ロイ・マクレディによる朗読 Audiobook read by Roy Macready

下に引用する箇所の朗読は 1:54 から。 Uploaded to YouTube by SpidersHouseAudio on 30 May 2009. Reading of the excerpt below starts at 1:54.


■英語原文 The original text in Englsih

"Her tragedy?" asked Framton; somehow in this restful country spot tragedies seemed out of place.

"You may wonder why we keep that window wide open on an October afternoon," said the niece, indicating a large French window that opened on to a lawn.

"It is quite warm for the time of the year," said Framton; "but has that window got anything to do with the tragedy?"

"Out through that window, three years ago to a day, her husband and her two young brothers went off for their day's shooting. They never came back.


■邦題の異同 Variations of the title in Japanese

  • 「あけたままの窓」 ……中西 1978, 1988
  • 「ひらいたまど」  ………都筑 1983
  • 「ひらかれた窓」 ………木村 1985
  • 「開いた窓」……………陰陽師 2005
  • 「開いた窓」……………河田 1981
  • 「開いた窓」……………中村 1958, 2002, etc.
  • 「開いた窓」……………都筑 1956
  • 「開いている窓」 ………上木 1989
  • 「開かれた窓」…………田内 1979
  • 「開かれた窓」…………永井 1975
  • 「開けたままの窓」 ……大津 1999
  • 「開けっぱなしの窓」  …和爾 2016
  • 「開け放たれた窓」 ……金原 2010
  • 「開け放たれた窓」 ……佐藤 1996

■外部リンク External links


■更新履歴 Change log

  • 2016/04/30 和爾桃子=訳 2016/01/20 を追加しました。
  • 2016/02/24 イタリア映画 La finestra aperta (2009) の YouTube 動画を追加しました。
  • 2014/09/25 ウクライナ語訳、ブルガリア語訳、デンマーク語訳、イタリア語訳、およびカタルーニャ語訳を追加しました。
  • 2013/11/12 2種類のハンガリー語訳を追加しました。
  • 2013/09/09 La ventana abierta - The Sims の YouTube 動画を追加しました。
  • 2013/09/02 目次を新設しました。
  • 2012/08/13 ロシア語訳、チェコ語訳、ドイツ語訳、およびポルトガル語訳を追加しました。
  • 2012/07/17 Librivox による朗読の YouTube 動画を追加しました。
  • 2011/09/19 外部リンクの項を新設しました。また、ロイ・マクレディによる朗読の YouTube 画面、およびスペイン語訳を追加しました。
  • 2010/07/19 金原瑞人=訳 2010/07/14 を追加しました。また、ブログ記事のタイトルに邦題「開け放たれた窓」を追加しました。
  • 2010/04/18 映画 The Open Doors (2004) の YouTube 動画を追加しました。
  • 2010/04/16 訳者未確認 2008-08-21 を追加しました。
  • 2010/02/22 中国語訳(簡体字)、中國語譯(繁體字)、そしてフランス語訳を追加しました。
  • 2007/11/06 都筑道夫=訳 1983/08 を追加しました。
  • 2007/09/14 田内初義=訳 1979/06 を追加しました。
  • 2007/07/13 陰陽師=訳(初出 2005/04/26 - 2005/04/28)を追加しました。
  • 2007/02/22 都筑道夫=訳 1956 を追加しました。
  • 2007/02/19 上木さよ子=訳 1989/08 を追加しました。
  • 2007/02/17 大津栄一郎=訳 1999/03 と永井淳=訳 1975/10 を追加しました。また、書誌情報を修正・補足しました。

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