L'enfant de la haute mer / A Child of the High Seas by Jules Supervielle シュペルヴィエル 「海に住む少女」
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En mai, fais ce qu'il te plaît (2002)
A short animated film directed by Laetitia Gabrielli, Pierre Marteel, Mathieu Renoux and Max Tourret. Music by René Aubry. More details at Internet Archive
Video 2
L'enfant de la haute mer (1985)
Uploaded to YouTube by aaaproductionParis on 2 Apr 2013
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表紙画像ほか Cover photos, etc.
- シュペルヴィエル 『海に住む少女』 光文社古典新訳文庫 (2006)
- L'enfant de la haute mer Gallimard (1972)
- L'enfant de la haute mer, an animated adaptation of Jules Supervielle's short story. Image source: France Diplomatie
■日本語訳 Translations into Japanese
(J1) 永田 2006
少女はこの世に、自分以外にも女の子がいるなんて知りませんでした。いえ、そもそも自分が少女であることすら、知っていたのでしょうか。
とんでもない美少女、というわけではありませんでした。前歯にちょっと隙間がありましたし、鼻もちょっと上向きでしたから。でも、肌は真っ白で、そのうえに少しだけ、てんてんがありました。まあ、そばかすといってもいいでしょう。ぱっちりというわけではありませんが、輝く灰色の瞳が印象的なこの少女、灰色の瞳に動かされているようなこの少女の存在に気づいたとき、あなたは時間の底から大きな驚きが湧き上がり、身体をつらぬき、魂にまで届くのを感じることでしょう。
ジュール・シュペルヴィエル=作 永田千奈(ながた・ちな)=訳
『海に住む少女』 光文社古典新訳文庫 2006/10
(J2) 綱島 2004
少女は自分が世界じゅうでただ一人の少女だと思っていた。しかし、はたして自分が少女だということからして、本当にわかっていたかどうか……
歯並びにいくぶん隙間があり、鼻が少し上を向きすぎていて、美少女とは言いがたかったが、肌は白く透きとおり、そこには穏やかさのしみ、というか、そばかすがかすかに散っていた。そして、控えめだがよく輝く灰色の瞳の指図で動く、彼女の小さな姿を見ていると、時の深みから大きな驚きが湧き起こり、体をつらぬいて魂にまでも届くのだった。
ジュール・シュペルヴィエル=作
綱島寿秀(つなしま・としひで)=訳
『海の上の少女—シュペルヴィエル短篇選』
大人の本棚 みすず書房 2004/05 所収
(J3) 三野 1990
この子は、世界じゅうで女の子は自分ひとりだけだと思っていた。でもいったい、自分が女の子だということを知っていたのだろうか?
少女はそんなにかわいくはなかった。歯並びがすこし悪かったし、鼻は少々そりかえっていた。だけど、肌はとても白かった、いくつかやわらかい染みが、つまりその、そばかすがあったけれども。そして、灰色の、つつましいけれどとても明るく光る目が印象的なこの少女は、時間の奥底からやってくる大きな驚きで、見る者の体を、魂までつらぬくのだった。
J・シュペルヴィエル=著 三野博司=訳
『沖の少女—シュペルヴィエル幻想短編集』
現代教養文庫 社会思想社 1990/05
(J4) 石川 1989
娘(むすめ)は、自分がこの世でたったひとりの女の子だと思っていた。いや、自分が女の子だということをいったい知っていたのだろうか?
歯ならびが悪く、鼻もちょっと上を向いていたので、娘(むすめ)はとびきり美しかったわけではないが、肌(はだ)はまっ白で、かわいらしいそばかすがぽつぽつとついていた。それに、その小さなすがたを見た者は、ひかえめだがきらきらかがやく灰色(はいいろ)のひとみにひきつけられ、大きなおどろきが時間のおく深いところからわきでて、心の底にまでしみわたってくるのを感じるだろう。
シュペルヴィエル=作 石川清子=訳 「沖の娘」
『なぞめいた不思議な話』 幻想文学館2 くもん出版 1989/08 所収
(J5) 堀口 1977, 1989, etc.
小娘は自分を、世界じゅうでたった一人の女の子だと信じていた。いやそれどころか、彼女が自分を女だと知っていたかさえ疑わしい。
歯の間に隙間があるのと、鼻が少々上向きすぎるので、彼女はそうたいして美しいというほどではなかったが、ただ肌は真白で、その上それを可愛らしいものに見せる雀斑(そばかす)までがあった。おとなしやかな、ぱっちりした灰色の眼が司っている彼女の小さな姿を見ると、人は、魂の奥まで滲み透る大きな驚き、時劫の底から来るような、大きな驚きを感じるのであった。
ジュール・シュペルヴィエル=作 堀口大學=訳 「沖の小娘」
a. 『シュペルヴィエル抄』 小沢書店 1992/03 所収
b. 『幼童殺戮 堀口大學訳短篇物語1』 書肆山田 1989/03 所収
c. 『沖の小娘』 青銅社 1977/12 所収
(J6) 窪田 1970, 1985
娘は、自分は世界でただ一人の女の子だと思いこんでいた。いや、自分が娘なことを果たして知っていただろうか?
歯の間には少々隙間があったし、鼻もやや天井を向きすぎていたので、彼女は非常な美人ではなかった。しかし、肌はじつに白く、そこには愛らしい二、三の斑点(しみ)、つまり雀斑(そばかす)がついていた。慎(つつ)ましやかだが、きらきらと光り輝く灰色の眼に支配された彼女の小さな身体(からだ)は、見る者の肉体の奥深く、魂に達する大きな驚きを——この驚きは時間の底から生まれてくるものだ——感じさせた。
ジュール・シュペルヴィエル=作 窪田般彌=訳「沖の娘」
a. 窪田般彌=編 『フランス幻想小説傑作集』 白水Uブックス
白水社 1985/09 所収
b. マルセル・シュネデール=編 『現代フランス幻想小説』
白水社 1970/09 所収
(J7) 安藤 1966
娘は自分がこの世界にたった一人の少女だと思っていた。それでも、自分が少女だということだけはわかっていたのだろうか?
それほど美しい娘だとはいえなかった。歯並びにはいくらか隙間(すきま)があいていたし、鼻も少しばかり上を向きすぎていたからだ。しかしその肌は実に白くて、そこへ点点とかわいいしみが、いや、つまりそばかすが(#「そばかす」に傍点)ついていた。小さな体つきのなかで、おとなしそうな、だがきらきら光る灰色の目がひときわ目立つその姿は、見る人の体から魂までを、時の流れの奥底からくる大きな驚きでゆさぶるほどのものがあった。
シュペルヴィエル=作 安藤元雄=訳 「海原の娘」
『世界の文学52 フランス名作集』 中央公論社 1966/08 所収
■邦題の異同 Variations of the title in Japanese
「沖の小娘」…………堀口大學=訳 1980, 1989, 1992
「沖の少女」…………三野博司=訳 1990
「沖の娘」……………石川清子=訳 1989
「沖の娘」……………窪田般彌=訳 1970, 1985
「海に住む少女」……永田千奈=訳 2006
「海の上の少女」……綱島寿秀=訳 2004
「海原の娘」…………安藤元雄=訳 1966
■英訳 Translation into Englsh
The child thought she was the only little girl in the world. But did she really know that she was a little girl?
She wasn't a very pretty child, because of her teeth that were rather uneven and her nose a little too turned-up, but she had a very white skin with a few gentle freckles on it. And her small person, dominated by two grey eyes, rather shy but extremely luminous, sent through you, from your body right to your soul, a sense of great wonderment, a wonderment old and deep as time itself.
A Child of the High Seas by Jules Supervielle
Translated from the French by Dorothy Baker
The Penguin New writing, Issue 37 by John Lehmann
Penguin Books, 1949
Preview at Google Books
■フランス語原文 The original text in French
L'enfant se croyait la seule petite fille au monde. Savait-elle seulement qu'elle était une petite fille ?
Elle n'était pas très jolie à cause de ses dents un peu écartées, de son nez un peu trop retroussé, mais elle avait la peau très blanche avec quelques taches de douceur, je veux dire de rousseur. Et sa petite personne commandée par des yeux gris, modestes mais très lumineux, vous faisait passer dans le corps, jusqu'à l'âme, une grande surprise qui arrivait du fond des temps.
L'enfant de la haute mer (1930)
by Jules Supervielle
E-text at Le plaisir de lire
■外部リンク External links
■更新履歴 Change log
- 2016/06/05 もう1本の短篇アニメ (1985年) を追加しました。
- 2010/12/08 短篇アニメ L'enfant de la haute mer の動画と Dorothy Baker による英訳を追加し、「外部リンク」の項を新設しました。
- 2007/06/04 三野博司=訳 1990/05 を追加しました。
- 2007/05/20 安藤元雄=訳 1966/08 を追加しました。
- 2007/05/19 石川清子=訳 1989/08 を追加しました。
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